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闇文庫

主に寝取られ物を集めた、個人文庫です。

暗黙の了解 第14回

興奮のあまり、私は大した時間持ちこたえることが出来ず、したたかにゴムの中へと放出した。不倫相手と肌を重ねるようになってから一段と、過敏になった久美の反応に情欲が刺激され、射精のタイミングがコントロール出来なかったのだ。
発射が早まった理由はそれだけではない。その頃から私は、久美が不倫へ赴いたと察知した日には、久美が帰宅するまでの間、寸止めオナニーに耽ることが癖のようになっていた。二人の交接や睦言を、あれこれ妄想しながら擦りあげ、射精寸前で抑える。その繰り返しで私の肉棒は、久美と交わる前から既に暴発寸前だった。そんな状態で久美の秘肉に締め付けられたのだ。持ちこたえられる道理がなかった。

久美はそんな私の癖に気付いていた。「私が帰るまでの間、我慢できずに自分でしてたんでしょ?」シャワーから上がってきた久美の問いに、何故わかったのかと問い返すと、含み笑いを洩らしつつこう答えた。「だって、私を迎える顔が飢えた狼みたいだったんだもの…」。

数日後、久美が不倫してきた日にまた身体を求めた。電気を消し、ブラジャーで固くガードされた上半身を抱き寄せたあと、貪るようなクンニを施し、いきり立った肉棒にゴムを被せる。ここまでは前回と一緒だった。が、脚を割り、いざ挿入しようとした瞬間、久美が秘裂を手で覆い拒んだ。「ダメ! 今日からアソコには挿れさせるなって言われたから…」。
とうとうその日が来たか、と観念した私だったが、切迫した欲望は解き放ちたくて堪らない。そんな焦りを察してくれたのだろう。久美は、私に仰向けに寝るよう促すと、シックスナインの体勢で上に跨がってきた。「フェラしてあげるから、このまま逝って…」。
久美の大胆さに驚く間もなく、肉棒が熱い口唇に包み込まれた。唇で強力にしごかれ、巧みな舌使いで舐め上げられた私は、快感に声を上げた。不倫相手に仕込まれたのか、フェラチオのテクニックが更に上達していた。絶頂を先延ばしすべく、眼前の濡れた秘裂に力いっぱい舌を泳がせたが無駄な抵抗だった。あっという間に久美の口の中、いやゴムの中へと射精させられてしまった。
私はもはや、秘裂へ挿入することも、生尺の感触を味わうことも叶わなくなった。次はどんな禁止項目が増えるのか、戦々恐々とした。

更に数日後、久美を求めると、意外な言葉が返ってきた。「今日は電気を点けといていいわよ。豆球だけど…」。
  1. 2014/11/04(火) 01:59:52|
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暗黙の了解 第13回

久美から手渡されたゴムを装着しながら、ふと思った。寝取られマゾのツボを突くように見事な寝取り方は、久美の誘導によるものではないのか?と。私の性癖を熟知している久美なら、さりげなく男をそういう方向へ持っていくことも可能だろう。(徐々に禁止項目を増やしていく方が、あなたも興奮するでしょ?)という具合に。その結果、旦那がどういう反応を示したのかと、男は久美に訊いてくる筈だ。久美はその様子を全て男に話す。興奮した男は激しく久美を犯す。強烈な肉体的刺激により、久美はめくるめくような快感に浸れる。自分の肉棒によって狂喜する久美を見た男も、歓びを新たに出来る。不倫相手にとっても、久美にとっても、いいことずくめではないか。

久美との行為に夢中になりながらも、そんな妄想が離れない自分自身に対して苦笑するしかなかった。(それならそれでいい。今夜のことも全部報告して、不倫にのめり込んでくれ!) 心の中で叫ぶと、ゴムで覆った肉棒を勢いよく挿入した。

久美が喉奥から呻きを洩らし、しがみついてきた。私も快感に突き上げられ、久美を抱き締めながら激しくピストンした。最近のコンドームは薄いから、肉体的な感触にさほど変化はない筈だが、たとえどんなに薄くても、粘膜が隔てられていることに変わりはない。久美の膣襞が直接絡み付いてくることはないし、膣奥へ向けて直接射精することも出来ないのだ。片や、不倫相手は久美に切望されて生挿入し、好きなだけ中出しできる。これほど寝取られマゾであることを実感できることがあろうか?

「どう? ゴム付きでも気持ちいいでしょ? 私のアソコ…」

「気持ちいいけど、物足りないよぉ! 生で挿れたい!」

「絶対ダメ! アソコは彼のものにするって言ったでしょ? ゴム付きだって特別なんだから…」

「ゴム付きでも挿れさせてくれなくなるのか?」

「そうよ…挿れるどころか、身体に触ることも出来なくなるの」

「嫌だ、耐えられない! 久美に触ることさえ出来なくなるなんて!」

「ダメなの! 彼が全部禁止したがってるからぁ! ああっ、もっと!」

近い将来の性行為禁止をほのめかしつつ、より快感をねだる久美。矛盾した久美の態度に翻弄された私は、やり取りが男へ報告されるのを承知の上で、私自身の矛盾する本音もぶちまけた。

「久美が欲しい、欲しい! でもセックスを禁止してほしくて堪らない! そばに居ながら、手の届かない存在になってくれ!」
  1. 2014/11/04(火) 01:58:32|
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暗黙の了解 第12回

(もっともっと久美と交わり続けていたい!) 焼けつくような執着心を抱きながら腰を送り込んでいた私だったが、異常な興奮の中、長く保つわけもない。無情にも、たちまち射精感が迫ってきた。秘唇への最後の射精をより充実したものにするため、ピストンのピッチを限界まで上げた後、思いっきり深くまで肉棒を埋め込み、亀頭の先端を子宮口に密着させた。次の瞬間、欲望が弾け飛んだ。睾丸まで飛び出したかと錯覚するほど凄まじい快感だった。炸裂する快感に呻き、夢中で久美にしがみついた。
(最後の一滴まで久美の中へ注ぎ込みたい! 一滴でも多くの精液を、久美の子宮の奥まで送り届けたい!) オスの本能に身を任せながら、断続的な射精の快感にただひたすら陶酔した。

息が整うのを待って、ゆっくり身を離した。久美が枕元のティッシュを手に取り、身体を起こした。汚れた秘裂をそっと拭っている。ひとしきり後始末を終えると、バスローブを手に浴室へと向かった。
(不倫相手の精液は中に溜めたまま帰るのに、俺のはすぐ洗い流してしまうのか…) 何とも言えない侘しさが込み上げてきた。同時に、そんな屈辱さえ快感に思えてしまう自分がいた。
大量の射精を受け止め、そのままショーツを穿く久美。帰路、奥底に溜まっていた精液がじわっと溢れ出す。すでに久美自身の淫液にまみれている薄手の股布は精液を吸収しきれず、股布の外にまで染み出し、滴り落ちる。股間はミックスジュースで溢れかえるようになり、それに刺激された久美は、情事の快感を反芻しながら更に淫液を迸らせる…。そんな妄想で興奮してしまう自分の性がやりきれなかった。せめてほんの少しでも、私の精液が久美の子宮の中へ到達し、とどまっていてほしいと切に願った。

次の週、不倫してきたとおぼしき夜、久美に迫ってみた。応じてはくれたが案の定、また制約が増えていた。ブラジャーを外さなかった。しかも、バスト全体を覆う厚手のものなので、乳房の感触を感じることもままならない。乳首はもちろん、摘まむことも吸うことも出来ない。(また久美が遠くなった…) 寂しさと興奮が渦巻く中、許された範囲内で精一杯の愛撫を施した。いざ挿入という段になって、久美から指示が飛んだ。

「お願い、ゴムを着けて…。彼に言われたの。旦那には絶対に生でさせるなって…」

先週の予感は見事に的中した。徐々に禁止項目が増えてゆく「生殺し感」は堪らない。あまりの寝取りの巧みさに感嘆すらした。
  1. 2014/11/04(火) 01:57:31|
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暗黙の了解 第11回

久美の膣襞を舌先で抉り、溢れる淫液を味わいつつも、やはり頭に浮かんでくるのは不倫相手と久美の交合シーン。肉棒と秘裂がぶつかり合う光景が、圧倒的なリアル感を伴って眼前に迫ってくる。今しゃぶりまくっているこの場所を、見知らぬ男が思うがままに征服し、精を撒き散らしているのだ。

いつしか私は、自分の舌を男の肉棒に見立てて、久美の膣奥へ懸命に打ち込んでいた。久美の内股がしきりに痙攣する。何度も気をやっているようだ。私と同じように、舌先を不倫相手の肉棒に見立ててるのだろうか? そう考えると堪らなく苦しくなった。が、肉棒はそんな気持ちとは裏腹に猛り狂い、ピクピクと脈動していた。
(久美の中で果てたい!)私は衝動が抑えられなくなった。久美の確認も得ず、肉棒を素早く秘裂にあてがい一気に挿入した。ひときわ高い嬌声。大きく仰け反り、脚を絡み付けてきた。久美の頭を抱え込み、激しく腰を打ち付けた。久美もリズムを合わせ、精一杯応えてくれる。互いのツボを知り尽くした夫婦の交合。そんな当たり前の営みが、もうすぐ許されなくなる。期待と絶望感、相反する感情が、官能で半ば溶けた意識の中で交差した。

顔を寄せ、キスを求めてみた。必死に顔をそむけ、応じてくれなかった。快楽に身を委ねている状態でも、不倫相手に操を立てることを忘れない。身も心も寝取られていることは疑いようがなくなった。私は悟った。夫婦らしい営みは今夜が最後になるだろうと。少なくとも、ナマの肉棒を直接受け容れるような形でのセックスには、二度と応じてくれなくなる予感がした。
ずっと久美とセックスし続けたいという執着。一日も早くセックスを禁止されたいという不可解な性癖。葛藤の末、後者の意識が前者を押し退けた。私は後先のことも考えず、久美の耳元に口を寄せ訴えかけた。

「今夜のことも全部、彼に話してくれ…。一日でも早く、久美のアソコを独占するよう頼んでくれ!」

言った尻から後悔し始めたが、興奮の高まりがそんな意識すら吹き飛ばした。最後の交わりなら、心の底から耽溺しよう。肉棒の隅々にまで、久美の襞の感触を刻み付けておこう。そう思い、力の限り突き立てた。

「ああっ、いいっ! そこ、そこ! 昨日みたいに突いてぇ!」

昨日は久美とセックスしていない。不倫相手との交合を想像しているのは明らかだった。嫉妬で燃え盛った。子宮を壊す勢いで亀頭をねじ込んだ。
  1. 2014/11/04(火) 01:56:14|
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暗黙の了解 第10回

久美との交わりがすぐに断ち切られることはなかったが、行為のたびごとに制約が増えていった。裸身を見られなくなり、キスが出来なくなったのに続き、股間へ指を這わせることも拒まれるようになった。下腹部へ向かって指を下ろしてゆき、繁みを越えて更に中心部へ指先を進めようとすると、脚をかたく閉じ、指先をそっと払われてしまう。

「ごめんね。彼があなたには触らせるなって…」

暗闇なので表情は窺えないが、心から申し訳なく思っていることは声音からも充分に伝わってくる。私の勝手な性癖を押し付けたことが久美を苦しめているのだろうか? そう心配し真意を尋ねたが、そうではないと言う。

「私の身体は彼のものだから。あなたには悪いと思うけど…」

実感が込もっていた。久美はすっかり不倫相手の虜になってしまったようだ。彼の命令に嫌々従ってるのでも、私の性癖に渋々付き合ってるのでもない。自分の意志で拒否していると言うのだから。
不倫相手の性癖も読めてきた。独占欲が強く、明らかに寝取り志向の男だ。そうでなければ、たとえ久美から夫の寝取られ性癖を打ち明けられたとしても、夫婦生活に制約を加えてきたりはしない筈だ。
久美はそんな男の命令に進んで従っている。この分なら制約はどんどんエスカレートしていき、夫婦の性行為そのものが完全禁止されてしまうのも時間の問題だろう。まさしく望み通りの形だった。久美もそういう形になりたいのかと、念のために再度尋ねた。消え入りそうな声で「うん…」と答えた。

久美の答えを聞き、私は引き返す道を自ら完全に遮断すると決意した。見知らぬ男に性生活を管理される寝取られ夫婦になりたいと心底願った。それまでの間、久美の身体を思う存分貪りたい。そんな衝動が突き上げてくるのを感じた。

アソコを舐めてもいいかと問うと「それはまだ禁止されてないから…」。
絶対に触らないからと約束すると、久美は脚を大きく開いてくれた。唇を寄せると、おびただしく濡れていた。彼との行為を思い出しているのだろうか? そう思うと堪らなくった。食らいつくような勢いで秘唇に吸い付いた。しこり切ったクリトリスを舌で転がし、割れ目に沿って舌先をなぞらせる。膣は激しく収縮を繰り返し、次から次へと淫液を吐き出していた。私は舌先を目いっぱい尖らせると、そこへ深々と差し込んでいった。たちまち久美の嬌声が響く。私は噴き上がる淫液で顔中をヌラヌラにしながら、久美の秘肉を貪り続けた。
  1. 2014/11/04(火) 01:54:46|
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暗黙の了解 第9回

洗濯機を回した久美は、寝室のクローゼットに上着を掛けると、いつものようにシャワーを浴びるべく、再び脱衣室へ入っていった。今度はドアをきちっと閉める。

軽やかなシャワーの音を遠くに聞きながら、久美の行動について思いを巡らせた。久美は、私が洗濯カゴを漁るのを見越して、わざと精液付きのショーツを置いておいたのではないか? そう考えると合点がいった。今までどんなにショーツを濡らしていても、精液が付着していることはなかった。今日に限ってべっとり付着していたのは、私に見せつけるためとしか思えなかった。たとえ中出ししたにしても、偶然にショーツに精液が付着したりはしない。行為後、後始末をせずにショーツを穿かない限り、精液が逆流することはあり得ない。そこにはハッキリとした意志が感じられた。私に不倫の証を見せつけようという意志が…。

この日を境に、久美は不倫してきたとおぼしき後は常に、ショーツを精液で汚して帰るようになった。洗濯カゴを密かに漁ることが、より大きな楽しみになった。久美のアソコから直接啜りたいのは山々なのだが、それでは久美が演技してくれている意味がなくなる。私に対する配慮を無にしないためにも、後始末プレイは我慢するしかなかった。

久美は性的に奔放な面があるとはいえ、性格は見た目通り従順で、性癖も私と同じM志向だ。そんな久美が女王様然として秘部への後始末を強要するなど苦痛でしかないだろう。不倫という形にも後ろめたさを感じてるようで、だからこそ演技という建前にしてくれているのだ。
私にしても、こんなややこしい心理ゲームみたいな形ではなく、公然たる寝取られ夫婦になって、久美が不倫相手に抱かれている姿を直接見せつけられたい、という願望がないわけではない。が、やはりそれは耐えられそうにない。互いに騙されたフリをして、あれこれ妄想しながら、久美は不倫にのめり込み、私は自慰に耽る。そんな屈折した寝取られ関係の方が私達夫婦には合ってる。

そんな中、久美はますます、他人の女みたいな雰囲気を色濃く漂わせるようになっていった。唇を求めても顔を逸らせ、キスを拒むようになった。彼の指示かと問うと、目を閉じ黙ってうなずく久美。俺の性癖を全て話したのか? 重ねて問うと、やはり無言でうなずく。恐らく本当なのだろう。夫婦の性生活が不倫相手に完全管理される第一歩だった。
  1. 2014/11/04(火) 01:53:42|
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暗黙の了解 第8回

週末のある日のこと、急な残業の予定が入った私は、勤め先から久美のケータイへ電話を入れた。

「今日は仕事が立て込んで、相当遅くなりそうなんだ。明日は休みだし、今夜は会社に泊まって朝方帰るよ」

「あら、そうなの? ちょうど私も電話しようと思ってたとこなの。私の方も明日、急な仕事が入っちゃって…朝早く出る予定なの」

「そうか…入れ違いになりそうだな」

(不倫相手との逢瀬ではなく、本当に仕事の予定が入ったんだな…)久美の声音からそう判断した。私は久美の声の調子や態度で、情事に出向くのか否かを判別できるようになっていた。それくらい直感力が研ぎ澄まされていた。我ながら、嫉妬の力とは恐ろしいものだと実感させられる。

翌朝、帰宅すると久美が支度を整え、ちょうど出勤するところだった。

「あ、お帰りなさい。やっぱり入れ違いになったわね。今日は予定外の仕事だから早く帰れると思うわ…。じゃあ、行ってきます」

慌ただしく出掛けていった。
久美の残り香漂うリビングにポツンと佇みながら、私は何かしら違和感を感じていた。昨夜の電話の時とは、久美の態度が微妙に違う。急いでいたから? 違う。仕事と偽り、不倫相手と逢うために出掛けていったから? それも違う。久美が用意してくれた朝食をぼんやり眺めながら、自らが感じた違和感の正体を見い出せずにいた。

(取り敢えず、ひと風呂浴びるか…) そう思い直し、浴室へ向かった。脱衣室で服を脱ごうとした瞬間、洗濯カゴが目に留まった。そこには久美の服が丸めて入れられていた。寝取られ性癖を告白してから、洗濯カゴを漁ることが習慣のようになっていた私は、反射的にカゴの中の服を取り出した。Tシャツ、ブラウス、スカート、一枚ずつ拡げてゆくと、一番真ん中にあったのが純白のショーツ。湿り気を帯び、くしゃくしゃになった薄手のショーツをそっと拡げると、そこにあったのは生々しい情事の痕跡! 股布は捩れ、薄黄色に変色し、おびただしい分泌液が付着していた。

(違和感の正体はこれだったのか!) 久美は昨夜、不倫相手に抱かれてから帰宅していたのだ。だが、それだけなら驚くには当たらない。今までにもそういうことは度々あったのだから。まだ何かある。その答えは股布に顔を押し当て、匂いを吸い込んだ瞬間に分かった。久美の甘酸っぱい淫液の香りに混じり、嗅覚に飛び込んできたのはツンとした刺激臭。栗の花の匂いだった!
[Res: 64548] Re: 暗黙の了解 裏筋舐太郎 投稿日:2011/05/03 (火) 10:52
久美の中へ吐き出されたであろう男性の白濁液を目の当たりにし、私は興奮で身が震えた。初めて目にする不倫の動かぬ証拠。妻の不倫が想像の中でとどまっていた時とはインパクトが段違いだ。
股布に精液が付着しているということは、生挿入され中出しされた証に他ならない。膣襞を直接、肉棒で抉られ、快感に仰け反る久美の姿がまざまざと脳裏に浮かぶ。

(ああっ、気持ちいい! やっぱり生だと感じ方が全然違うぅ!)

(俺も気持ちいいよ! アソコの襞がカリに絡み付いてくる! ううっ、最高だ!)

(もっと、もっと擦り付けて! 生チンポをもっと押し込んでぇ!)

(もう逝きそうだ! 中で出すぞ! 子宮に直接、ザーメンぶちまけるぞ!)

(来て、来て! 私の子宮にいっぱいザーメン飲ませてぇ!)

下品な言葉を喚き散らしながらエクスタシーを迎える久美。生の膣襞に亀頭を擦られまくり、溜まりに溜まった欲望を子宮へ向けて吐き出す男。リアル過ぎる妄想が、たちまち意識の中を埋め尽くした。

気がつくと私は、ショーツの股布を貪るように舐め、吸いながら、自らの肉棒を激しく擦りたてていた。
私にはかねてから、他の男が久美へ向けて発射した精液を啜り飲みたいという願望があった。決してそっちの気があるわけではなく、男が久美の秘肉によって頂点を極めた感覚を、間接的に体感してみたいという屈折した欲望からだ。

逝きそうになると寸止めし、更なる妄想を巡らしながら、また擦りたてる。自分で自分を焦らす、延々たるオナニーの狂演に我を忘れた。いずれ久美が完全に寝取られた暁には、こういう手段でしか欲望を満たす術はなくなる。そういった悲壮感が、更に快感を高める。

とうとう我慢の限界を越えた。ショーツの股布を急いで亀頭へあてがう。頭に閃光が走り、ドクドクと勢いよく射精した。久美と不倫相手、二人のミックスジュースに代わり、股布は私の精液で満たされた。
ベトベトになり、白濁液で溢れんばかりになった股布を再び丸め、他の服を重ねて、最初に見た時と同じような形にして洗濯カゴへ戻しておいた。

「ただいま…」

今朝言った通り、夕方に久美は帰ってきた。

「あっ、そうそう。洗濯しなきゃ!」

久美はリビングにバッグを置くと、すぐ脱衣室へ向かった。脱衣室のドアを明け放したまま、洗濯物を洗濯機に放り込むと、そのまま注水を始めた。ドキドキしながら観察していたが、洗濯物の変化には気付かなかったようだ。
  1. 2014/11/04(火) 01:52:49|
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暗黙の了解 第7回

日が経つにつれ、久美の身辺には具体的な変化が現れ始めた。残業や接待と称して深夜に帰宅することが多くなった。以前から同様のことはあったが、明らかに頻度が増した。特に週末は必ずと言っていいくらい、アフターファイブの予定を入れるようになった。

夜半、疲れた顔で帰宅した久美は、すぐ浴室へ向かう。(不倫相手との行為で汚れた身体を洗うためか、いやいや、それならホテルで既にシャワーは浴びてる筈。風呂上がりの匂いをごまかすため、敢えて二度目の入浴をしているのか…) シャワーのしぶきが飛び散る音を聞きながら、私は妄想を逞しくする。

風呂から上がってきた姿も、以前とは少し変わった。以前なら下着姿のまま、リビングに戻ってくることも多かったが、この頃から下着姿を露にすることはほぼなくなった。Tシャツなりバスローブなり、簡素な部屋着ではあるが、しっかり身体に纏うようになった。

かといって、完全に素肌を覆い隠したりはしない。胸の谷間や太股の付け根を、ちらちらと覗かせている。ほのかな石鹸の香りと、私を挑発?するような仕草に誘われた私は、狂おしいまでの嫉妬心とも相まって、堪らなく久美の身体が欲しくなる。久美を抱き寄せても「まだダメ…」と、すぐには応じてくれない。さんざん焦らされた挙句、ようやく寝室で抱ける段になっても「お願い、電気を消して…」。部屋を暗くしなければ、セックスに応じてくれなくなった。(前は明るくても応じてくれたのに…) 私の心に疑念が生じる。(あちこちにキスマークがあるから身体を見せられないのか?) 見知らぬ不倫相手に抱かれた直後であろう久美と交合を重ねた。いや、犯しまくった。

ヘアスタイルやファッションも微妙に変化してきた。清楚な中にも、セクシーさを強調した色使いやデザインが少しずつ加わるようになった。男の好みなのだろう。世間一般の旦那なら気付かないであろう僅かな変化でも、最高感度でアンテナを張っている私にはすぐ分かる。妻が見知らぬ男の色に染められてゆくのを間近に見ながら、ひとり嫉妬と興奮に悶えた。

ここまでなら、単に久美の巧妙な演技だと見なすことも出来ただろう。不倫相手は私の意識の中にしか存在しない勝手な妄想だと、考えることも出来た。徐々に制約が増えてきたとはいえ、久美との肉体関係も続いていた。表面上、私達の夫婦関係にはまだ大きな変化は現れてなかったのだ。
しかし間もなく、不倫の決定的証拠を見つけることになる。
  1. 2014/11/04(火) 01:51:29|
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暗黙の了解 第6回

それから半月もしないうちに、久美には男の影が漂い始めた。具体的に何かが変化したわけではなく、確証を掴んだわけでもなかったが、(久美には男が出来た)と確信した。

無論、私自身が望んだことなのだから、問い詰めるなどという野暮な真似はしない。ただただ成り行きを見守るだけだ。展開は予想よりも早かったが、モテるタイプである久美がその気になれば早晩、男が出来ることは分かっていた。共働きである上、営業職に就いている久美は、必然的に男性と知り合う機会も多い。恐らく、今までも誘惑は数多かったに違いない。久美の方からガードを緩めれば、あっという間に男女の関係へと進展するのは当然だった。

しかし、久美の態度は以前と変わらず、不倫に走ったことをあからさまにはしなかった。相変わらず「演技」を続けてくれている。変化したことといえば、不倫を隠すような演技が加わったことくらい。思うに(本当に寝取られてしまったら、耐えられなくなりそう)という私の言葉に配慮してくれたのだろう。あくまで夫婦関係のスパイスとして「不倫を演じる」という形に徹してくれているのだと、私なりに解釈した。
ならば詮索する必要などない。私は騙されているフリを続けることにした。公認ではなく黙認。そう、私は久美の不倫に対して暗黙の了解を与えることにしたのだ。

とはいえ、久美の不倫相手がどんな人間かは気になる。嫉妬心が沸くというのももちろんあるが、それ以上に思わぬトラブルに巻き込まれないかと気掛かりなのだ。
が、その点に関しても一切詮索しないと心に決めた。久美はおとなしそうに見えて、男心を手玉に取る術は心得ている。数々の恋愛遍歴を経ているということは、それなりに修羅場もくぐって来ているということ。男女間のトラブルに対処するスキルは充分身につけている。任せておいて間違いないと判断した。

最大の心配は久美が私のもとから去っていってしまうことだったが、それについても大丈夫だと、私の中で結論付けた。不倫は不倫であるがゆえに燃える。そのことを分かってる久美は、敢えて不安定な不倫関係を継続し続けるだろう。相手の男性にしても、人妻を寝取るからこそ興奮するのだ。完全に自分のものにしてしまっては醍醐味が失われる。
いずれも勝手な解釈だ。だが、それ以上心配しても仕方ない。寝取られにはリスクは付き物。トラブルが起きれば、その時に考えればよい。なるようになるしかない。私はそう肚を決めた。
  1. 2014/11/04(火) 01:50:20|
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暗黙の了解 第5回

寝取られマゾの性癖を告白してから、夫婦生活は格段に充実したものになった。久美も心得たもので、焦らしたり恥じらったりと、まるで「他人の女」になったかのように演じてくれる。

「やめて、私の身体はあの人のものだから、それ以上はダメ! あん、ヤだ!」

私が久美を求めると、そうやって恥じらい軽く抵抗してみせる。架空の愛人を思い浮かべながらの演技は真に迫っている。その仕草に私は燃え、久美の身体にむしゃぶりついてゆくのだった。

「今日も浮気してきたのか? そんなに好かったのか? 浮気の跡が残る身体を抱かせてくれっ!」

イヤ、イヤ、と連呼する久美。ますます燃え上がる私。これでもかとばかり久美の中心部へ分身を打ち付け、欲望を吐き出す。そんな日々の繰り返しに酔いしれた。

普段の久美の姿も変化してきた。それまで、家に居るときは色気のないジャージなどを着ていることが多かったのだが、努めて色っぽい装いをするようになった。
まずスカートを穿くようになった。丈もだんだん短くなっていった。胸元が大きく開いたタンクトップやブラウスを着るようになった。全体的に露出度がアップしていったのだ。
しかも、装いがセクシーさを増すのに反比例して、より恥じらいを露にするようになっていった。スカートが乱れて下着が見えそうになると慌てて裾を押さえるし、胸元も見えすぎないよう常に注意している。私が下着を覗こうとしたり、胸の谷間へ手を差し入れようとしたら本気で顔を赤らめ拒絶する。あまりのリアルさに(本当に演技か?)と、いぶかしく思うことがしばしばだった。

久美の名演技を堪能していた私だったが、それでも心のどこかには不満がくすぶっていた。久美の振る舞いはあくまでも演技であって、本当に寝取られたわけではない。焦らされたりはしても、久美を抱けることに変わりはない。(本当に寝取られたい! 久美にセックスを完全拒否されたい!)そんな欲求が高まってくるのに時間は掛からなかった。

久美もそんな私の心情を見透かしているようだった。私は確信した。久美が本気で不倫を考えてると…。確たる根拠はない。単なる直感だ。言葉にしなくても、その辺りのことは互いに分かる。いわゆる阿吽の呼吸だ。

その時からだった。私達が真の寝取られ夫婦への道を歩み出したのは。後悔することは分かっていたが、もう引き返すことは出来なかった。
  1. 2014/11/04(火) 01:49:20|
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暗黙の了解 第4回

その日以来、私はマニアックな性癖を包み隠すことなく、交わりを繰り返すようになった。久美もそんな私を嫌悪せず、積極的に応えてくれた。

「久美が他の男に寝取られて、身体を独占されて、夫婦のセックスを禁止されたりしたら、とても耐えられないっ!」

「でも興奮するんでしょ? 私とセックス出来なくて、オナニーだけを強要されることが…」

「そうだよ、堪らなく興奮する! けど耐えられない。久美とセックス出来なくなるなんて! 頼む! セックスを拒否しないでくれっ!」

「ダメよ! 私に彼氏が出来たらあなたにはさせないわ! あなたはオナニーだけ! 今だけ、今だけよ、私を抱けるのは! ああんっ!」

「そんなこと言わないでくれ! こんな気持ちいいアソコに挿れられなくなるなんて…考えたくない! ずっと、ずっと久美を抱きたい! ああっ!」

「イヤッ! もうすぐ私の身体は不倫相手専用のものになるの! 今日が最後だと思って私を逝かせてっ! 奥の奥まで他の男のものになるの! 子宮の奥まで全部寝取られるのよぉ! ああぁぁん!」

「嫌だっ! 久美の身体は俺だけのものだ! ううっ! アソコの中が絡み付いてきた! た、堪らないよぉぉ!」

「き、気持ちいいでしょ、私のアソコ。忘れられなくさせたげる! 最後の一滴まで搾り取ってあげる! 明日からは他の男のものを搾り取るんだからねっ! ああん、私も逝きそう! もっと、もっと、もっと、突いて! 奥まで突いて! 他の男のものになったアソコを突きまくってぇ! あああん、逝くっ、逝くっ、逝くぅぅぅ!」

睦言の内容は、世間一般の夫婦から見れば常軌を逸したものだろう。そういう異常な言葉を交わしながらの営みが、私達夫婦にとっては日常のものになった。

驚かされるのは久美の対応力。寝取られマゾである私のツボを突くようなフレーズを、的確に繰り出してくれる。理性が半ばマヒした状態で、このような反応が出来るとは恐るべきものだ。

久美は天性の娼婦ではないか? そんな風に思ったりもする。独身時代にモテたというのも納得だ。結婚した当初から、久美の性感は充分に開発されていた。テクニックも申し分なかった。天性の資質が、数多くの男との交接によって開花したのだろう。普通なら焼きもちを焼くことかもしれないが、寝取られマゾの私にとってはこの上ない条件。間接的な寝取られ気分を大いに堪能し、歓びに震えたものだった。
  1. 2014/11/04(火) 01:48:07|
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暗黙の了解 第3回

久美の快感責めに翻弄された私は、理性のストッパーが外れてしまい、問われるまま異常な性癖を洗いざらい告白してしまった。久美にどう思われるかなど、意識の中から飛んでいた。

その間にも私の快感はますます高まる。射精が迫った私は久美を正常位に組み伏せた。ギンギンに勃起した肉棒を濡れそぼった秘裂へ挿入すると、狂ったように腟奥を突き立て、瞬く間に絶頂を迎えた。凄まじい快感だった。絶頂を極めるまでの僅かの間、私は何を口走ったのか覚えていない。久美がどんな反応を示したのかも記憶にない。ただひたすら燃え上がり、快感でドロドロに溶け合ったかのような印象が残っているだけだ。

どのくらい時間が経ったろう。久美の最奥部にありったけの精を噴き上げてから暫し、放心状態にあった私は、ようやく身体を起こし久美と見つめ合った。照れ臭くて堪らない。何を話していいか分からない。恥ずかしくなった私は、身体を横にずらすと久美から目を逸らせた。顔を久美の髪に埋める。甘酸っぱい成熟した女の香りが鼻腔いっぱいに拡がる。

「本当にそんな関係になりたいの?」

沈黙に耐えられなくなったのか、久美の方から口を開いた。怒ってる感じではない。悲しんでる風でもない。若干の戸惑いを含んではいるが、どこか楽しんでいるような口振りだった。意外だったが安堵もした。てっきり変態扱いされ、愛想を尽かされるかと危惧していたのだから。

安心すると同時に、別の不安が頭をもたげてきた。久美が本当に第三者に寝取られてしまうのではないか? 久美もそういう関係を受け入れ、夫婦間の性交渉が完全に無くなってしまうのではないか?
実に矛盾する話だか、私は久美が寝取られることを望んでるのと同じくらい、寝取られてしまうことを恐れてもいる。本当にそういう夫婦関係になってしまったら、と想像するだけで強烈な嫉妬心が沸き上がってくる。その複雑な思いをどう伝えていいか分からない。だが、釘だけは刺しておかねばとの思いから、恥ずかしさをこらえつつ、久美からの問いに答えた。

「あ、いや、本当にそんな関係になってしまったら、嫉妬に耐えられなくなりそうなんだ。そういう願望があるのは確かだけど。なんか上手く説明できない。変なこと言ってゴメン…」

「ううん、いいの。人間の願望なんて不可解で訳の分からないことだらけよ。それに話すよう仕向けたのは私なんだし、謝ることなんてないわ。正直に話してくれて嬉しい。アリガト」
  1. 2014/11/04(火) 01:47:02|
  2. 暗黙の了解・裏筋舐太郎
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暗黙の了解 第2回

「ねぇ、どんな変態的願望があるのか聞かせて…」

それはまだ新婚1年にも満たない頃のこと。狂おしく愛し合っている最中、鼻に掛かった甘え声で不意に久美が尋ねてきた。

私はセックスの際に時折、興奮のまま自分の寝取られ願望を口走る癖があった。素面では言えない赤裸々な願望も、性的快楽に溺れている状態なら苦もなく口にできた。自分の言葉で興奮を高めててもいた。

「他の男と浮気してもいいよ…」

「久美が他の男に犯されてるのを想像すると興奮して堪らなくなる…」

行為の最中は私はもちろん、久美も快感に身悶えているので、その言葉をどう受け止めていたかは分からない。頂点を極め、徐々に冷静さを取り戻すにつれ、堪らないほどの羞恥心に襲われるのが常だった。事が終わるたび、興奮に任せて寝取られ願望を口にしたことを後悔したものだ。

しかし、久美はそのことを日常生活の中で問いただしたりはしなかった。セックスの最中の睦言は、酔っ払いの戯言と同類だと解釈していたのだろう。普段は私の真意を追及することもなかった。安心(油断?)した私は行為のたび、寝取られ願望の告白を繰り返すようになっていった。

「今アソコに入ってるのが他の男のモノだって想像すると気持ちいいだろう?」

「他の男にも久美の身体の素晴らしさを味わわせてやりたい!」

同時に、更なる変態的願望があることも言葉の端々に匂わせていた。私には秘めた性癖がある。単に寝取られるだけでは物足りない。愛する妻の身体を不倫相手に独占され、夫婦間の性行為は許されない。自身に認められる性欲処理の手段はオナニーのみという、いびつな夫婦関係を望む寝取られマゾ性癖の持ち主なのだ。

が、さすがにここまで告白するのはためらった。自分でも不可解な性癖だから、妻の理解が得られるとはとても思えなかったからだ。快感に痺れながらも辛うじて理性を保ち、間接的な表現を散りばめるだけに留めていた。そこへ突然投げ掛けられたのが、冒頭の問いかけだった。

返答を躊躇していると、久美はおもむろに快感責めを繰り出してきた。私の性感帯は全て久美に把握されている。股間の裏筋を爪でなぞりながら乳首を甘噛みしてくる。舌先を首筋沿いに這い上がらせたかと思うと、耳を舐め回しつつ熱い吐息を鼓膜へ吹き掛けてきた。

「ねぇ、言って…」

これでは我慢できない。私は快感に仰け反りながら、秘めてきた願望を告白し始めた。

「ううっ! 実は…」
  1. 2014/11/04(火) 01:45:56|
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暗黙の了解 第1回

私達夫婦のちょっと変わった寝取られ関係について、お話ししてみたいと思います。出来る限り、性的な部分に特化した形で書いていくつもりです。その方が書き手である私自身や、読者の方の興奮を高められると思うからです。



妻は36歳。名前は久美。夫である私よりちょうど一回り年下。結婚して3年目の夫婦だ。妻の風貌は、有名人に例えれば元おニャンコの新田恵利や、女優の永作博美、石田ゆり子などに似ている。それぞれタイプは微妙に違うが、要は地味顔ということだ。ただ、地味な顔立ちではあるのだが、いわゆるフェロモンみたいなものを全身から漂わせていて、何ともいえない色っぽさを醸し出している。地味で清楚な風貌と、内から滲み出る妖艶な色気、二つのギャップが男心をそそるのだろう。独身時代はかなりモテたらしい。上に挙げた有名人も、新田はおニャンコで人気No.1だったし、永作や石田にしても男性関係の噂がたびたび芸能マスコミを賑わしてきた。見るからに派手な女性より、ぱっと見は地味な女性の方がモテるなんてことがよく言われるが、彼女らや妻はその典型例だろうと思う。

スタイルにしてもそう。妻は決して巨乳タイプではなく、全体的にスリムなのだが、出るべき所はしっかり出ているメリハリのある体型だ。特にヒップから太股にかけてのラインは張りのある見事なもので、手前味噌ながらセクシーだと感心させられてしまうほど。本人は下半身デブだなんて気にしているが、不摂生によってたるんでるのではなく、女性ホルモンの活発な分泌によって形作られたものだから悩む必要なんか全然ない。このお尻を見ながら股間を熱くしている男は数多いだろうにと、常々思っている。何気ない表情に浮かぶ色っぽさについてもそうだが、自身がどれほど性的魅力を振りまいているか気付かない、無意識のうちに男性を魅了するとは罪作りなものだ。

このようにセックスアピール溢れる妻だから、夫である私が惹き付けられているのは言うまでもない。晩婚ということもあってか狂い咲きのようになり、新婚当初から活発に夫婦生活を営んできていた。現在進行形ではなく過去形になっているのは、お察しの通り寝取られ関係になっているから。今、夫婦間のセックスは全くない。フェラチオやクンニ、バストや股間への愛撫どころか、キスすらもない。他の女性との性交渉もなく、私はもっぱらオナニーで欲求を処理している。ただ、そこに至る経緯は一般的な寝取られとはやや異なる。
  1. 2014/11/04(火) 01:44:43|
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不倫していた人妻を奴隷に 第17回

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  1. 2014/11/04(火) 00:41:51|
  2. 不倫していた人妻を奴隷に・単身赴任男

ポチャな娘だった妻がパイパンスレンダーに、、、

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  1. 2014/11/04(火) 00:39:19|
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写真館派遣の妻 第7回

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  1. 2014/11/04(火) 00:34:31|
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写真館派遣の妻 第6回

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写真館派遣の妻 第5回

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  1. 2014/11/04(火) 00:28:26|
  2. 写真館派遣の妻・無知な夫

月の裏側 第14回

M 《ねえ、お願いだから、きょうのようなまねを学校でするのはやめて。
  もしも誰かに見られたら、私もあなたも困ったことになるのよ》


 寺島塔也に呼び出されて公園で“密会”した夜から2日後の、5月15日。月子はこんな内容のメールを送っていた。


T 《きょうのようなまねって?》
M 《昼休み、美術準備室でのことです。わかっているくせに》
T 《話をしただけじゃん》
M 《その話の内容が問題なの。もしも他の生徒や先生に聞かれたら大変なことになるわ》
T 《だって直接会って話さないと、先生、メールだとあれこれ理屈つけて逃げそうだもん》
M 《逃げるなんて…》
T 《何度も言うけど、俺、先生のこと好きだから。ちゃんと相手してもらいたいんだ》
M 《いいかげんにからかうのはよして。
  私の齢、知っているわね。38歳です。あなたのお父さんと同じ年代なのよ》
T 《そんなの関係ないって。
  先生、見た目若いし美人だもん。胸だってすごくでかいし。魅力的だよ。
  俺の周りの男子もみんなそう言ってる》
M 《やめて。そんな話聞きたくありません》


 つい数日前まで、無視し無視されていたはずのふたりの関係。それがいまや寺島塔也はいっそう大胆となり、あろうことか昼間の学校で月子を訪ねて、周囲に「聞かれたら大変なことになる」台詞まで口にしている。この前まで無視していた側の月子の方が、しどろもどろになっている印象だ。
 13日の夜、ふたりがどんな話をしたのかはわからない。明らかなのは、あの晩、夜が更けるまでじぶんを待っていた塔也を拒みきれず、ついに公園へ駆けつけてしまったときから、すでに月子には脆さがあらわれていたことだ。そしておそらくは反対に、塔也の方は自信をつけたのだ。

 それにしても――と、私はあらためて考え込んでしまう。寺島塔也の正確な年齢はわからないが、中学2年生ということは今年でやっと14歳だろう。その塔也と「38歳」の月子では、たしかに親子ほどの年齢差がある。常識的にみれば中学2年の少年が38歳の女に執着するなどありえそうにないが、単純にそうとばかりも言い切れない。
 先述したように、離婚か死別かはわからないけれども、とにかく寺島塔也はじぶんの母と別れて暮らしているらしい。月子が塔也に亡き息子の面影を求めたように、塔也もまた無意識のうち、月子に母親の面影を求めたのだと考えられなくはない。母との死別あるいは離別の経験が、少年の内面に年上の女性への憧れを育てる――とは、よく耳にする話である。
 だが一方で、寺島塔也のメールを見るかぎり、憧れなどという耳ざわりのいい言葉は甚だ似つかわしくない。明らかに彼は月子を〈母の代わり〉などではなく、ひとりの〈おんな〉として見ている。「胸だってすごくでかいし」という野卑な一文にあらわれているように、性的関心を隠そうともしていないのだ。



 15日以降も、ふたりのあいだでは似たようなやりとりが何度も繰り返されていた。日が経つにつれて塔也のアプローチはいよいよ露骨になっていき、反対に、月子の態度からはますますつよさが失われていった。


M 《あなたのことは大切に思っています。でも、それは教師と生徒としてなの》
M 《お願い、これ以上困らせないで。私だってつらいのよ》
M 《私は結婚していて主人がいるのよ。裏切れないわ。どうか、わかって》


 私は思わずため息をついた。
 月子は――これほど弱い女だったろうか。
 私が昔からよく知る彼女は、毅然とした性格の持ち主であり、言うべきことは相手が誰であれ言ってのける女だった。いちど決めたことは貫く意志の強さをもっていた。じじつ、13日の夜までは、教師と生徒の垣根を越えようとした寺島塔也に対してキッパリと拒絶の態度を取っていたのだ。にもかかわらず、それは一晩でぐらついて、いまや、あたかも懇願するような、受け身一方の物言いになってしまっている。
 いったいぜんたい、月子にとって寺島塔也という少年はどういう存在だったのだろう。
 私には想像するほか手だてがない。


 ひとりの女がいる。彼女は人並みはずれて母性愛がつよいタイプで、一粒種の息子を深く愛していたが、その子は不意の事故で急逝してしまう。女は嘆き悲しむが、やがて彼女の前に、死んだ息子そっくりの少年があらわれる。女は教師をしており、少年は彼女の勤める学校の転入生だった。息子の面影を宿す彼に、女はつよく惹きつけられる…。

 だがある日、運命の急転が訪れる。わが子と双子のようによく似たその少年が、あろうことか、彼女に言い寄ってきたのだ。
 女はおどろき、ショックを受けた。とはいえ、つい今まで少年に抱いていた好意が、それで一直線に嫌悪へとスライドしたわけではあるまい。しかし、女の〈倫理〉は彼女に拒絶を命じる。当然だろう。まず第一に、彼女には夫がいる。第二に、相手は彼女の教え子であり、まだ十代前半の少年である。第三に――少年の容貌は亡き息子と瓜ふたつなのである。
 いうなればこの少年は、女にとって三重の禁忌に阻まれた相手なのだ。

 けれども女の内面には、亡き息子への尽きせぬ哀惜の念に端を発する、少年への愛情が依然として残っている。必然的に、彼女の拒絶はどうにも徹底を欠いたものとなってしまう。
 そんな女の弱さを見抜いて、押しの強い少年の求愛はなおもつづき、しかも次第に勢いを増していく。彼女が少年に〈息子〉を見ていたのと異なり、少年は彼女を〈おんな〉として欲している。いうまでもなく、後者の視線には性的なニュアンスがある。〈息子〉に〈おんな〉として求められる――それはどういう心理状態を彼女にもたらしていったのか?


 ――わからない。それは私の貧困な想像力の限度を超えていた。

 わかっているのは、最終的に、女――月子が引き返すことのできない道をずるずると進んでいったということだ。



 月子と寺島塔也の関係にふたたび具体的な事件が起こったのは、5月23日であったようだ。メールにはその証拠がハッキリと残されていた。
 最初の一通は、寺島塔也からの《先生、いま何してるの?》という何気ないものである。それに対して、月子は《落ち込んでいます》と返している。
 ここまではいい。しかし以降の流れは、私の心臓に打撃を与えずにはおかないものであった。次の塔也のメールはこんな文面だったのだ――《きょう、キスしたことを気にしてるの?》


M 《……そうよ。それだけじゃないわ。身体もさわられました》
T 《先生がさわらせてくれたんだろう》
M 《そんな言い方やめて。あなたが、キスをしながら、無理やりさわったんでしょう》
T 《でも先生だって逃げなかったじゃん。抵抗しようとすればできたでしょ?》
M 《それは、だってあんなところでいきなりされたから、驚いて》
T 《びっくりして、力が抜けちゃったの?》
M 《からかわないでちょうだい》
T 《からかってないよ。先生可愛いって思ってるだけ》
M 《学校であんなことをしてしまうなんて……私、最低だわ。じぶんが羞ずかしい》
T 《明日もしようか?》
M 《そういうこと言うの、よして。
  家に帰ってから、私、いちども主人の顔をまともに見られないのよ》
T 《わかったよ、ごめん》


 この日のやりとりはここで途切れていた。
  1. 2014/11/04(火) 00:15:14|
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月の裏側 第13回

 そのメールは5月8日の夜に送られていた。ゴールデンウィークが明けて2日後の、金曜日である。
 送り主は月子だ。携帯でのやりとりが始まって以来、月子は寺島塔也からのメールに返信するばかりで、彼女の側から送ったものはこれが初めてだった。

《大丈夫? 熱はまだ下がらないの?》

 ゴールデンウィークの終盤あたりに、寺島塔也は風邪をひいたらようだ。それが治らず、学校を2日つづけて休んだものだから、月子は心配してメールを送ったらしい。以下、ふたりのやりとりを書き記していくが、分かりやすいように、寺島塔也のメールにはT、月子のメールにはMoonの一字を取ってMと、それぞれ本文の前に表記しようと思う。


T 《熱は38度ちょっと。まだダルいわー》
M 《きちんと温かくして寝てなきゃ駄目よ。ご飯は食べた? お父さん、明日は家にいらっしゃるの?》
T 《カップラーメン食ったよ。親父はいないんじゃないかな。土曜日とか、いつも出掛けてるし》


 どうもメールを見るかぎり、寺島塔也と彼の父親との関係はわりあい希薄なものであるらしかった。もっとも、父子家庭であることを抜きにして考えるなら、一般的な中学2年生の子供と父親なんてそんなものかもしれないとは思う。
 私の場合はどうだったろうか。息子の猛資は幼い頃から本が好きで、そのあたりはたしかに小説家でもある私の血を引いていた。中学に入ってからの猛資は、時おり私の書斎にやってきて読んだ本の話を披露したり、また、私の小説についても色々訊いてきたりと、むしろ交流の機会は増えていたように思う。もっとも、母親の月子があまり細々とかまいすぎるので、私までそうなっては息子のために良くないと思い、あえてクールに接していたところはあったけれども――。

 月子と寺島塔也とのやりとりに視線を返そう。塔也の返事は、当然ながら月子の心配を煽るようなものでしかなかった。そもそも息子に関することになると、月子はとんでもなく心配性になってしまう女だったが、わるいことにその癖は、塔也相手にも変わらず発揮されたようであった。


M 《そうなの…。困ったわねえ。お父さんに頼んで、明日くらいはお宅にいてもらえないかしらねえ》


 べつに生徒のひとりが風邪になったくらいで、本来なら月子が「困る」必要はまったくないのだが、彼女は明らかに本気でそう思っている。私にはそれが本当に腹立たしく、そして切なかった。その切なさの正体がどういう種類の感情なのか、私には判然としなかったが――。
 だが、そんな私の気持ちを逆撫でするようなことを、寺島塔也は次のメールで言い出すのである。


T 《いいよ、べつに。親父がいたら、具合がよくなるってもんでもないし。それよりさ、先生がうちに来てくれない?》
M 《それは…駄目よ。できれば行ってあげたいけど、無理です》
T 《なんで?》
M 《なんでって…私は教師だし、あなたは生徒だわ。教師が軽々しく生徒のお宅に行くというのは問題だと思うの。それも、お父さんがいらっしゃらないときに》
T 《キョーシだって生徒のお見舞いくらいしたっていいじゃん。べつに看病してほしいってわけじゃないんだよ。ここ2、3日、誰とも話してないからさー。さびしいんだよ》


 《家に来て》と頼む少年と、《できない》とためらいがちに拒否する月子の問答は、それからも数通のメールの往復で繰り返された。

(馬鹿なまねはよせ! これ以上、そいつと関わるんじゃない)

 じぶんのあずかり知らぬところで行われていたやりとりを、半年以上もあとになって眺めながら、私は胸のうちでそう叫ばずにいられなかった。けれど、月子が寺島塔也に猛資の面影を見ていたという推測が正しいならば、これは最初から結果の見えていた問答といってもいい。なぜなら彼女は、弱った息子の頼みをはねつけられるような種類の女――母ではなかったからだ。

 メールの往復の結果、私が懸念したとおり、月子はとうとう翌日の5月9日に寺島家を訪問することを承諾してしまった。

 9日は土曜日だから私も在宅だったはずだが、月子がいつ出掛けていったのか、今となってはまったく記憶にない。いつものように、書斎に籠って小説書きに没頭していたのだろう。つくづく間抜けな亭主であった――というほかない。
 ともかくも、月子は少年がひとり寝ている家を訪ねた。そして、そこで何かが起こったらしい。メールの記録だけでは、そのあたりの出来事が詳しくはわからない。
 ただ、翌10日のメールを見ると、薄々の事情は知れる。


T 《先生、怒ってるの?》


 第三者の目から見ると、いかにも唐突な言葉である。受け取った月子は、数時間後、《怒ってます》と短く返していた。


T 《ごめんって。先生にヤな思いさせる気はなかったんだよ。でも、俺、先生のこと好きだから、つい…》
M 《やめて。軽々しくそういうことを言わないで。わたしはそんなつもりじゃなかった。あなたのうちに行ったのだって、ただ、あなたのことが心配だったからなのに。それなのに、あんなことをするなんて》
T 《だからごめんって。先生が来てくれたのマジでうれしかったからさ。つい調子に乗っちゃったんだよ。ホント、ごめん》


 最後のメールに対して、月子は返信していない。
 9日に何があったのか? おそらくは見舞いに行って、あれこれと世話をやく女教師に対して、病で弱っていたはずのこの少年は何かよからぬことをしたのだ。
 塔也のメールの調子を見るかぎり、それはおそらくレイプというようなところまではいかなかっただろう。不意をついて月子の身体をさわったのか、あるいはキスでも仕掛けたのか――いずれにせよ、性的なことにはちがいない。亡き息子そっくりの少年に対して強い母性を感じていた月子にとって、その少年から性的な振る舞いをされるというのは、あまりにも思いがけない事態であったのだろう。短い文面からでも彼女が激しく動揺したことが窺える。


 この一件は、それまで教師と生徒の体裁を保っていたふたりの関係を根底から揺るがした。
 土日が明けて翌週に入ってからも、月子は、学校で寺島塔也のことを無視したらしい。寺島塔也は、じぶんが無視されているのをわかって、しばらくは月子のそんな扱いに甘んじていたようだ。携帯でのやりとりもしばらく途絶えて、次のメールは13日水曜日の夜8時頃に送信されている。


T 《いつまで無視するん? 俺のこときらいになったの?》


 つづけておよそ30分後、寺島塔也は新しいメールを送っている。


T 《いま先生の家の近くの公園で待ってる。直接会って話を聞いてよ》


 まだ関係がもつれていなかった頃に訊いたのだろうが、すでに寺島塔也は、月子の自宅の場所を把握していたようだ。それはともかく、月子はこのメールを受け取ったあとも、しばらく返信していない。単に確認が遅れたのかもしれないし、あるいは学校で無視を決め込んでいたように、今後はメールのやりとりも拒絶する気でいたのかもしれない。
 月子が次にメールを送信したのは、同じ13日の夜10時すこし過ぎ、塔也から、《まだ公園で待ってる。来てくれるまで帰らないから》という一通を受け取ってからだ。


M 《もう帰って。私、あなたと会うつもりはないの。主人だって家にいるのよ。こんな夜遅くに出掛けるわけにはいきません。あなただって、早く帰らないと、お父さんが心配するわ。だから早く帰って》


 対する塔也の返信は、《先生が来てくれるまで帰るつもりないから》の一言だった。


 ――ここまで読み進めて、ふと私の脳裏に、ある記憶がよみがえってきた。
 あれは5月のある宵だった。前日に原稿を書き終えていた私は、その晩、珍しくゆったりした気分で、酒を飲みながらレンタルの映画を見ていた。月子もかたわらに座っていたのだが、何だか妙にそわそわとした様子で、何度も席を立っては台所へ姿を消す。
 やがて彼女は遠慮がちな口調で言い出した。
『ちょっと出てきていいかしら。明日の授業で使う資料を、コンビニでコピーしてきたいの』
 たしかにその頃、自宅のコピー機は故障中で買い替えを検討していたのだが、それにしたって時刻はもう夜の11時を回っている。私は驚いて、『明日の朝、学校でコピーしたらいいじゃないか。それじゃ駄目なのかい?』と言った。

『明日の朝は別件でバタバタしそうだから、どうしても今夜中に準備しておきたいの』
『わかったよ。僕もコンビニまでついていこうか? こんな夜中じゃ心配だ』
『大丈夫。すぐ戻ってくるから』

 そうして妻は出ていき、帰ってきたのは、それからたっぷり1時間近くも過ぎてからだった。『資料の量が多くて手間取ってしまったの……ごめんなさい』と月子は謝った。
 心配して待っていた私は、珍しく彼女を叱りつけた記憶がある。いつにない出来事だったから、印象に残っていたのだ。
 正確な日時は忘れてしまっていたが、あれこそ13日の晩の出来事だったのだろう。ようするに、月子はいてもたってもいられずにとうとう出掛けていき、少年と会ったのだ。



 その夜、ふたりのあいだにどんな話し合いがあったのかはわからない。以降のメールからわかるのは、寺島塔也はこの一夜を最後に月子へのアプローチをやめるどころか、いよいよ臆面もなく彼女に言い寄るようになったことだ。
 反対に、月子はその夜を境としてハッキリと脆くなった。教師としての態度を保とうとする堅固な意志は崩れて、女としての弱さが剥き出しになっていったのだ。
  1. 2014/11/04(火) 00:13:42|
  2. 月の裏側・久生
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月の裏側 第12回

 ――気がつくと、私は立ち上がっていた。

 自覚はなかったが、おそらく、そのときの私の表情はひどいものだったのにちがいない。中学生グループのなかのひとりが近寄ってくる私に気づき、おびえたような顔をした。それが呼び水となって、少年たち、そして彼らに取り巻かれた数人の女子高生が、次々と私を見た。
 リーダー格の少年も振り返った。つい今まで、薄い笑みを貼りつかせていた顔に、訝しげな表情が広がった。

『何か用かよ、おっさん』

 突っ張った口調で少年が言った。先ほど、あの携帯動画で聞いたTの声と「よく似ている」と感じた彼の声は、もはや同じひとりの声として私の耳に認識された。私は返事もせずにいきなり少年の腕をとらえ、ぐいっと引っ張った。不意をつかれて少年はよろめいた。
『――何すんだよっ!』
 憤怒を浮かべながら、こちらを睨みつけてくる少年。間近に迫ったその顔はいよいよ猛資とそっくりだった。形容できない戦慄を覚えながら、私は、彼にだけ聞こえるような小声で囁いた。

『私は藤島月子の夫だ』

 少年の顔から血の気が引いた。



 月子の夫であることを明かした言葉は、一時的にだが劇的な効果をもたらした。喪心した少年の手を強引に引っぱり、私は彼とふたりだけで話をするためにカフェの外へ連れ出した。急に様子のおかしくなったリーダーを目にして気勢をそがれたのか、残りの中学生たちはみな、ただ呆気にとられて佇むばかりだった。
 だが、少年がおとなしくしていたのは、店の外に出るまでだった。
 表通りへ出ると、少年はにわかに我に返って、私の手を振りほどこうともがき始めた。
『離せよ、畜生!』
 膨れあがる怒りをしいて押し殺しながら、私は低い声で『そんなことを言える立場か。静かにしろ』と少年を脅した。だが、大声で怒鳴りつけるようなまねはしなかった。というよりも、できなかったのだ。時刻はすでに夕暮れ時を過ぎて夜の帳が下りかけたところ、この神保町界隈では行きかう人と車の群れが絶えることなくつづいている。路上で言い争う私たちに、通りがかった人々はハッキリと不審げな視線を向けていた。

(このまま騒ぎになって、警察でも呼ばれたらまずいな)

 そんな焦りが一瞬、私の注意力を鈍らせた。隙をついた少年はすかさず私の手を逃れ、パッと身を翻すと、そのまま一目散に表通りを駆け出した。

『ま――待て!』

 慌てて少年のあとを追いかけようとした。そのとき、走り去る少年の尻ポケットから青色の物体が落ち、カランカランと音を立てながら道路を転がるのが目に入った。持ち物を落としたことに気づかなかったのか、もしくは拾うより逃げる方を優先したのか、少年は走りつづける。その背中はすぐに小さくなった。
 私は身をかがめて、少年の落とし物を拾った。思ったとおり、それは携帯電話だった。



 *  *  *  *  *

 1時間後――。自宅へ戻ってからも、あのカフェで少年を目にしたときからの極度の興奮はまだ収まっていなかった。興奮という言い方は適切でないかもしれない。混乱という方が正しいかもしれない。夫に隠れて他の男と関係をもっていた妻が、その不倫を悟られてなお、けっして口にしようとはしなかった相手――ようやく突きとめたその相手は、まだ年端もいかぬ中学生であった! さらにいえば、妻は教師であり、少年は彼女が勤めていた学校の生徒だったのである。
 もしも月子の失踪以前にこの関係が表沙汰になっていれば、彼女はよくて懲戒免職、わるければ新聞沙汰になったかもしれない。

「女性教師、教え子の中学生と淫行」――そんな見出しが脳裏をかすめて、私は慄然とした。

(月子のやつ、何て馬鹿なまねをしたんだ!)

 今さらながら腹が立ってきた。しかし、妻の愚行を責めようにも、肝心の彼女はいま何処にいるのかもわからない。いなくなった月子は不倫相手のもとに身を寄せているのではないかという想像は、これまで幾度も頭に浮かんで私を苦しめてきたものだったが、その不倫相手が中学生となれば、同棲というのはちょっとありそうにない。

 とはいえ――あの少年が月子の現在の居所を知っている可能性は依然としてある。

 私は神保町で拾った携帯を取り出した。
 都合のいいことに、私や月子が使っていたのと同じ機種だった。これならば機械音痴の私にも操作できる。
 開けると、まず、サッカー選手らしい白人男性の壁紙があらわれた。私には誰だかわからなかったが、そんなことはもちろんどうでもいい。画面を切り替えて、所有者プロフィールを確認する。
 持ち主の名前は簡単にわかった。


 《寺島塔也》


 なるほど――
 姓・名、どちらにせよ、Tだ。

 さらに携帯を操作してアドレス帳を見たが、「藤島月子」の名前はなかった。月子がTと登録していたように、フルネームでは入れていないのかもしれない。そう思ってア行から順に見ていくうち、気になる名前を見つけた。


 《Moon》


 Moon――月である。
 詳細を確認する。Moonの欄に登録されていたのは、かつて月子が使っていた携帯番号・アドレスと同一だった。やはり、Moonは月子のことらしい。しかし、それらの番号とアドレスは、不倫が発覚した9月末の夜、月子がみずからの手で携帯を処分したときから使用不可になったものである。
 ということはつまり、この登録情報をもとに判断するかぎり、寺島塔也は私と同じく、月子の現在の連絡先を知らないことになる。その事実をはたして喜ぶべきか、落胆すべきなのか……私にはわからなかった。

 画面を切り替えて、今度はメールをチェックすることにした。
 寺島塔也から月子宛ての最初のメールは、その年の4月24日午後10時過ぎに送られていた。


 《コンバンハー

  先生いま何してんの?

  俺は退屈で死にそう》


 以前、月子の携帯で見たメールで、Tこと寺島塔也は、妻のことを「月子」と呼び捨てにしていた。だが、このときにはまだ「先生」と呼んでいる。つまり、まだふたりの関係はそれほど深まっていなかったのだ。
 対する月子の返信は以下のとおりだった。


 《今晩は。
  私は明日の授業の準備をしているところです。
  夕方も言ったけれど、アドレスを交換したからといって、あまり頻繁にメールを送ってきては駄目よ。
  本来は禁じられていることなんだから。》


 最初のうちはだいたいこのような感じで、寺島塔也のとくに内容のないメールに、月子が教師らしく落ち着いた言葉で返信をするのがお決まりのパターンとなっていた。やりとりの回数も3日に一度あるかないかというくらいである。
 それでも目を通すうち、少しずつ寺島塔也という少年についてわかってきた。どうやら彼は、4月にM中学へ転校してきたばかりらしい。学年は2年生。転校後すぐに、月子が顧問教諭を務めていた美術部に入部している。


 4月といえば、息子の死以来久しぶりに、月子の明るい表情を見る日が多くなった頃だ。メールを読み進めながら、私はようやく彼女の変化の要因に思い当たった気がした。
 その時期、月子は、死んでしまった猛資にそっくりな子供を学校で見つけたのだ。申すまでもなく、転校生・寺島塔也である。見かけが瓜ふたつなだけでなく、年齢も中学2年生で死んだ猛資とぴったり同じ。これでは気にならない方がおかしい。
 月子としては、傷口に塩を塗られるような痛みを覚えることもあっただろうが、それでも寺島塔也から目を離すことはできなかったにちがいない。そうして日々が過ぎるうち、やがて少年の存在は、月子のひそかな喜びの源泉に変わっていったのではないだろうか。あたかも永遠に失ってしまった息子が生き返ってふたたび姿をあらわしたかのように――。
 そしてこれも私の推測だが、当の寺島塔也も、じぶんの一挙一動に熱っぽいまなざしを注いでいる女教師の存在に早くから気づいたにちがいない。転校直後で友達もまだろくにいない状況ではなおのこと、わるい気はしなかったはずだ。
 カフェで見たときの印象では、寺島塔也はおよそ美術などに興味があるタイプとは思えなかった(偏見だろうか?)。そんな彼が美術部に入部したのは、顧問教諭である月子への関心が主な要因だった――と考える方が納得できる。
 ふたりの距離はこのようにしてまず縮まった。急激に縮まった、といっていい。なぜなら本来、校則違反というようなことには人一倍厳しい教師だったはずの月子が、寺島塔也に対してはその禁を犯し、知り合って間もないうちにアドレス交換まで許しているのだから――。


 とはいえ、当初のやりとりを見るかぎり、月子はあくまで一教師としての節度を保ちながら、堅くるしい態度で寺島塔也のメールに応じている。一方で、彼女の返信には、少年への隠しきれない情愛のようなものがところどころに窺えた。しかし、それは少なくとも最初のうちは、男女間の愛情というより、子供のことを心配する母親めいた感情だったようだ。


 《ちゃんと食べてる?》
 《きちんと栄養のあるものを取らなくては駄目よ。育ち盛りなんだから》
 《お父さん、今夜も遅いの?》


 どうやら寺島塔也という少年の家は父子家庭であるようだ。離婚か死別かは分からないが、ともかく彼は父親とふたりだけで暮らしており、しかもその父は毎日の帰りが遅いようである。月子がたびたび食事のことを話題にしているのは、この転校生がいつもひとりきりで夕食を取っているのに心を痛めているかららしい。
 寺島塔也に対する月子の気持ちは、そもそもの始まりから、みずからの死んだ息子への思慕が変形したものだった。私はそのように思う。そして、彼女の母性的な愛情は、偶然にも塔也が〈母のいない子〉であったことから、なおさら高まっていったのかもしれない。

 しかし――
 メールのやりとりが始まって2週間後の、ちょうど5月のゴールデンウィークが過ぎた頃だ。ふたりの関係には新たな事件が起こっていた。
  1. 2014/11/04(火) 00:12:49|
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月の裏側 第11回

『――で、月子さんはまだ帰ってこないのか』
 懐から取り出した布きれで眼鏡の曇りを拭きながら、金塚は気遣わしげな口調で言った。
 場所は新宿のとあるバーだ。私はその日、大学時代の旧友である金塚と、久々に酒を酌みかわしていた。
『ああ』
 私は短く答えた。まだ生々しい傷口がじわりと疼いた。

 月子が姿を消してから、はや2ヶ月が経過していた。
 その間、手をこまねいていたわけではもちろんない。妻の母親(先述したように月子は母子家庭で、彼女の母は再婚している)をはじめ、心当たりにはすべて連絡している。だが、月子の行方は杳として知れなかった。

『藤島にはもったいないくらいのいい奥さんだったのになあ。いったいどうしちゃったんだろう。人間、魔がさすというのは誰でもあるけどなあ』
 しんみりした声だった。同い年の金塚はいまだ独り身、テレビ局で報道関係の仕事をしている。昔から気のいい男で、就職が決まったときはこんなにおっとりしたやつが生き馬の目を抜くようなマスコミの世界でやっていけるのかと、心配になったものだ。もちろん、余計な心配であったのだが。
 大学を卒業してからは互いに忙しくて年に数回しか会えないのだが、付き合いはずっと続いていた。私の結婚式では友人代表としてスピーチしてくれたし、わが家にも、何度か遊びにきたことがある。月子も金塚のファンで、『あんなにいい人はいないわね。どうして結婚されないのかしら』とよく言っていたものだ。

『さて、どうだろうね』
 あいまいな返事をしながら、私は意味もなくグラスを揺らした。中の氷が、ちん、と音を立てた。
『やっぱり猛資君のことが相当ショックだったんじゃないだろうか。葬儀の席では気丈にしてたけど、あの頃の月子さん、ちょっと見ていられなかったもんな』
『それはショックだったろうけどね。実際、しばらく鬱状態で通院していたくらいだから……。でも、それと月子が不倫に走ったことを結びつけるのは、ちょっとおかしいだろう』
『そうかな。猛資君が亡くなっていなかったら、月子さんの心にぽっかりと穴が空くこともなかったし、不倫なんてぜったいになかったと思うよ。彼女、ずいぶん堅い人だったじゃないか。もっと細かくいえば、月子さんの心に隙間が出来ていたからこそ、どこかの悪い男がそれにつけこんだんだろう』
 そこまで言ってから、金塚はばつのわるい顔をした。
『無神経だったかな。すまん』
『いや………』
 私はふっとため息をついた。


 新宿駅で金塚と別れたあと、帰りの電車に揺られながら、私は何度となく考えたことをまたも考えた。むろん、月子についてである。
 月子は今どこでどうしているのか。あの晩、離婚してほしいと言い出した彼女は、しかし「相手の男と一緒になる気はない」と言っていた。それどころか「もう会わない」とも。
 真実である保証はない。月子はその相手――Tを庇って、どんなに責められてもTに関する情報は一切口にしなかった。それほどまでに打ち込んだ相手と簡単に別れられるはずがないし、夫のもとから離れたあとではなおさらだ。「会わない」どころか、一緒に暮らしている可能性の方が高いのではないだろうか。もちろん、Tが既婚か未婚かにも大きく関わる話ではあるけれど。
 月子の行方が知れないのと同様、Tの正体についてもいまだ見当すらついていなかった。妻が出て行った当初は、何としてでもTの首根っこをつかまえて家庭を崩壊させた責任を取らせてやる、とその一念ばかりだったが、手掛かりはあまりにも少なかった。
 とはいえ、考えるべきポイントはいくつかある。

 まず可能性は極めて薄いが、学生時代の古い知り合いという線である。しかし、当時の彼女は男嫌いで通っていたくらいだから、親しい異性がいたという話さえ聞いたこともない。

 次に、彼女が勤めていた中学校の関係者。これがもっともありそうだ。
 もともと月子は勤め先での話をあまりしなかったし、話すとしても教えている生徒のことばかりだった。同僚の教師たちとはさほど個人的な付き合いをしている様子はなかった。
 妻が家を出て行ったあと、彼女が職場でもっとも仲良くしていたらしい、内川さんという女性の数学教諭に一度だけ連絡を取った。息子に先立たれ、さらには妻まで失った私に、内川さんはたいそう同情してくれたが、しかし、月子の相手となると『まったく分かりません』ということだった。少なくとも内川さんの見たところでは、月子が職場の男性教師のうち特定の人間と親しくしていた様子はなかったという。

 最後に、月子が通っていたスポーツジムの線だ。運動とはおよそ縁のなかった彼女がジム通いを突然始めたのは、今となってはいかにもあやしい。
 Tのメールにあった文句を思い出す。

『おとといヤッたばかりだけど、すげー悶々する』

 おととい。
 あのメールが来たのは水曜日の夜だった。水曜の一昨日といえば月曜であり、月子が職場帰りにジムへ通っていたのは一週間のうちの月・木曜日である。つまり、本当ならジムにいるはずの時間にTと会っていた可能性が高い。
 私は実際にそのスポーツジムへ行き、スタッフに妻のことを訊いてみた。思ったとおりだった。入会はしていたものの、実際には、月子がジムへ顔を見せる日はほとんどなかったという。
 月子はジムへ行くと偽って毎週月木曜の夜にTと密会していたのだ。なぜそんなことをしたのか。もちろん、私の目を気にしたからだろう。その年の夏はたまたま忙しかったが、普段の私は夜8時過ぎには帰宅するし、小説を書かなければならないから週末はほとんど家にこもっている。密会のたびに口実を作って出掛けるにしても、度重なれば私の疑惑を招くと、月子は考えたにちがいない。
 しかしである。そうなると、ジムの関係者もしくは会員に月子の相手がいた、という線はほぼ消えてしまう。何しろ月子はほとんどジムに顔を出していない。ジムへの入会はそもそもTと密会する口実を作るためだった――そう考える方が自然だ。
 月子がジムに通い出したのは6月からだ。となると、彼女はそれ以前にTと知り合っていることになる。

 思い返せば、その年の春から月子の様子はどこか妙だった。息子の死からずっと塞ぎ込んでいた月子だったが、4月に入ってしばらくした頃、ふと明るい表情を見せるようになった。私は「おや?」と思い、しかしそんな彼女の変化を喜んだものである。けれども、その変化はあまり長くつづかず、ジムに通い始めるあたりの時期には、むしろ再び沈んだ顔を見せる日が多くなっていた。

 これらの現象から想像するに――月子がTと出会ったのは4月ごろであったように私には思える。
 なぜかは分からないし、それを考えるのも苦痛なのだが、ともかくTは4月のある日に現れ、どういうわけか月子の心をつよく惹きつけた(同時期、彼女の様子に浮き浮きしたものが見られたのはそのためだ)。もちろん、当初、2人の仲はただちに不倫へと結びつくようなものではなかったろう。だが、4月から6月にかけてのいつかの時点で、月子とTの関係は決定的に変わった。一度は明るさを取り戻しかけた月子の顔が次第に曇っていったのは、Tとの関係が思いがけぬ進展を見せたこと、つまりは肉体関係にまで発展していったことが影響しているのではないだろうか。私に対して不倫の罪を犯した罪悪感が月子を翳らせたのだ。しかし、それでも彼女は止まれなかった。ずるずると悪い深みに嵌まっていった――。


 私の思考はここに及んでストップしてしまう。結局のところ、Tの正体に関する手掛かりはまるでないのだ。
 同様に、月子の居所を示すような手掛かりもない。
 だいいち、彼女を見つけたとして、私はどのように行動するのか。その回答を私は持ち合わせているのか。
 月子が置いていった離婚届はまだ家にあった。夫側の欄に印は押していない。いつか、決定的な心境の変化が起こり、この欄を埋める気になる日がくるのかもしれない。だが、そのときの私はまだ決意らしきものを何一つ持ち合わせていなかった。来る日も来る日も考えつづけているばかりだった。――



 *  *  *  *  *

 金塚と会った夜からちょうど1週間後のことである。
 その日、私は小説の資料集めのために神保町の古本屋街へ出掛けた。目当てであった建築関係の専門書と、ついでに以前から読みたかった国枝史郎の『神州纐纈城』を買った。

 もう12月の半ばだった。間近に迫ったクリスマスのために、古本の街もいつもより浮かれモードである。師走の冷たい風を浴びながら、山下達郎やWham!の名曲が流れる通りを歩いて帰りの駅へと急いでいた私は、ふと気を変えて、通りすがりのカフェに足を踏み入れた。
 猛資は逝き、月子は去り、私ひとりが残された自宅。その暗い空間を思って、まっすぐに帰ろうという気が削がれたのだった。当時はこんなことがよくあった。


 私が入ったのはいまや都内の至るところにチェーン展開をしているカフェだった。
 アメリカンを注文し、カウンターでそれを待っている間、私は何気なく店の奥へ目をやり、そこにいた中学生の一群にふと注意を引かれた。
 その中学生グループの生徒たちはみんな男の子で、いずれも詰襟の学ランではなく、洒落たブレザー型の制服を着ていた。にもかかわらず、一目で中学生と分かったのは、その制服に見覚えがあったからだ。
 月子の勤め先であったM中学校の制服だったのである。M中学はそれなりに歴史ある名門の私立校で、私立中学といえばたいていそうであるように、富裕な家庭の子供たちしか通っていないらしい。
 私は月子がもっていた学校資料で同じブレザー型の制服を見、『へえ、今どきは中学校でもこんな服を着せているのか』と感心したことがあった。なので、彼らがM中学の生徒だとすぐに分かったのだ。

(中学生が学校帰りにカフェに入るのは、校則違反じゃないか)
 そう思わないでもなかったが、わざわざ注意する義理はなかった。月子が失踪した今となってはなおさらだ。だいいち、私は中学生が苦手なのである。14歳で死んだ息子のことが、どうしたって思い出されるから――。
 それきり、私は中学生たちの方を気にするのをやめた。アメリカンを受け取って、店の隅に腰掛け、買ってきたばかりの古書をぱらぱらとめくった。だが、すぐに思考は手元の本から離れて、いつものもの思いへと移っていった。

 もうすぐクリスマスがやってくる。その次は大晦日、一夜明けると正月――。猛資が健在だった頃、年末年始のイベントは家族3人の楽しみだった。
 まだ結婚する前、恋人時代の月子は、こうしたイベント事にたいして関心のない女だった。誕生日にプレゼントを贈った時、当人が自分の誕生日を忘れていたことすらあった。クリスマスだろうが正月だろうが大差はなかった。
 なのに、猛資が生まれてからは人が変わったごとく、家族で行う祝い事や季節の行事をこよなく大切にするようになった。むろん、息子のためである。彼女自身は早くに父親を失って家庭的なイベントに縁が薄かったから、余計、息子には多くの楽しみを味合わせたくなったにちがいない。
 ふと金塚の言葉が思い出された。

『やっぱり猛資君のことが相当ショックだったんじゃないだろうか。葬儀の席では気丈にしてたけど、あの頃の月子さん、ちょっと見ていられなかったもんな』
『猛資君が亡くなっていなかったら、月子さんの心にぽっかりと穴が空くこともなかったし、不倫なんてぜったいになかったと思うよ。彼女、ずいぶん堅い人だったじゃないか。もっと細かくいえば、月子さんの心に隙間が出来ていたからこそ、どこかの悪い男がそれにつけこんだんだろう』

 月子の生活の中心、生きる喜びのほとんどすべては、息子のためにあった。それは間違いない。不意の事故で猛資を失くしたあと、彼女がどれだけ落ち込んだか――私が一番よく知っている。
 だからといって、いや、だからこそ、というべきか、その妻が息子の死後、不倫へと走ったのはどうにも解せない。たとえ、亭主である私に愛想尽かししていたとしても、だ。
 Tのことを思い出す。あのいやらしい口調。卑猥な言葉。私にとっては悪夢のような携帯動画の中で、妻の髪を撫でる指に光っていた、趣味の悪い髑髏の指輪――。どう間違っても、月子のような女が不貞の罪を犯してまで愛し、庇い抜くようなタイプとは思われない。
 しかし、現実はそうだったのだ。だからこそ、私の頭は混乱している。いつまでたっても、思考の泥沼から抜け出せずにいる――。


 ――そのときだった。
 ある強烈な感覚に打たれて、私は迷宮のようなもの思いから一息に醒めた。


 瞬間、電流のように走り抜けていった感覚の正体が何であるか、自分でも分からなかった。
(今のは何だったんだ?)
 心臓がにわかに高鳴っていた。得体の知れない思いで、私は周囲をぐるりと見回した。

 近くのテーブルには数人の女子高生たちがたむろしていた。見ると、先ほどの中学生男子グループが彼女らの周囲をぐるりと取り囲むようにして、にぎやかに騒いでいる。どうやら、ナンパをしているようだ。
(名門校のわりにはませたガキどもだな)
 と思いながらも、ことさら不快の念を抱くでもなくその方を眺めた私は、あるひとりの男子生徒を見て驚愕した。

 彼が中学生グループのリーダー格であるらしいのはすぐにわかった。一番堂々とした態度で、わるくいえば、相当に女擦れした様子で、女子高生たちに声をかけている。

『なあ、いいじゃん。もうすぐクリスマスだってのに、俺たち彼女いなくて超~寂しいの』
『マジマジ、本当に彼女持ちじゃないってば』
『まずは携帯のアドレスだけでも頂戴。ね、お願い』

 子供っぽく、軽薄な口調だった。どうやら声変わりの時期らしく、甲高いその声は微妙にかすれていた。そのハスキーな声質に、私は聞き覚えがあった。
 先ほどの強烈な感覚の正体を私は悟った。少年の声はあの携帯動画で聞いたTの声によく似ていたのだ。もの思いに耽っていた私の耳がそれを聞いて、無意識のうちに神経が昂ったらしい。
 だが――私の驚愕の原因はそれではなかった。


 唇に薄笑いを浮かべて、年上の女子高生を口説いている少年の顔――
 その顔は、死んでしまった息子の猛資と、そっくりだった!


 むろんのこと、表情は全然ちがう。猛資はあんなに卑しげな笑い方はしない。品のよい、おとなしい子で、ナンパなどというまねは逆立ちしたって出来なかったろう。しかし、顔立ちだけとってみれば、世の中にこれほど瓜ふたつの顔があるだろうかと思われるほどよく似ていた。背格好までほとんど同じである。

 私は呆然自失して彼を見つめた。あたかも猛資の肉体に別の魂が宿ってよみがえったようなその少年を――。そうしているうち、私はまた別のあることに気づいた。今度こそ我を忘れて、思わず声にならない声を上げた。

 ぺらぺらと口説き文句を並べ立てながら、せわしなく動いている少年の左手。その人差し指には、髑髏を象ったリングが鈍い光を放っていた。
  1. 2014/11/04(火) 00:11:58|
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月の裏側 第10回

 私たちは日常生活において他人の悲劇をしばしば見聞きする。ときには心配げに眉をひそめながら、同情の言葉を口にしたりもする。
 17世紀フランスのモラリスト、ラ・ロシュフーコーは唯一の著作『箴言集』に「我々は皆、他人の不幸には耐えていくだけの強さをもっている」と記している。なんと意地悪な男だろう!
 とはいえ、結局のところ、同情は同情でしかない。私たちはつねに他者の悲劇を対岸の火事と思い込んでいる。こんなことが自分の人生に起きるはずはない、と――。
 私たちはたしかに「他人の不幸には耐えていくだけの強さをもっている」かもしれない。だがしかし、未来に対する想像力にはいつだって愚かしいほどに欠けている。
 「子供を亡くした夫婦の話」は、私にとってそんな対岸の火事的エピソードの一つだった。自分の現実に起きるまでは。
 そして、「妻をよその男に寝取られた夫の話」。これもまた私にとってはありえるはずもないことだった。私の知人には妻に不倫された男がいる。彼の話を聞いた時ですら、『そいつは大変だったなぁ』と労わりの言葉を発しながら、ただの一度だって、そんな出来事が自分に起こりうるなどとは想像したこともなかったのだ。
 しかし――それは現実となった。
 悲劇なるものはときにやすやすと平凡な日常へ侵入してくるらしい。とはいえ、容赦ない現実に厳しく鞭打たれても、人が賢くなるには長い時間が掛かる。少なくとも私はそうだった。さらにいえば、私の場合はすべてが連鎖的で、第二の悲劇のあとには第三の悲劇がすぐに待ち受けていたのだ。それは申すまでもない――「妻に離婚を切り出された男の話」である。


 月子から突然に離婚の話を切り出され、私の混乱と驚愕は最高潮に達した。不倫の発覚で生じた怒りすら、その一瞬には毒気を抜かれてしまったくらいだった。
『離婚って……何なんだ、それは。どういうことなんだ』
 パニックの波が引き、わずかに冷静さを取り戻したあとで、私はようやく声を絞り出した。
『言葉どおりの意味です』
 月子は言葉少なに答えた。切れた唇の血は止まっていたが、私の平手打ちをうけた彼女の左頬は赤黒く腫れあがっていた。色白なだけに余計痛々しく見えたが、もちろん、その時の私に気遣う余裕はない。それどころか、再びこみあげてきた怒りを押し殺して会話をつづけるのが精いっぱいだった。
『……僕の正直な気持ちを言おう。悪い冗談でも聞いている気分だ』
 呻くように私は言った。
『もう必要もないと思うけれど、まず確認したい。君は……僕に隠れて、よその男に抱かれていたな』
 私にとっては口にしながら自らを傷つけるような言葉だった。視線を伏せたまま、月子はかすかに身じろぎした。だが、すぐに『はい』と小さく答えた。

『……いつからだ?』
『それは……言えません』
『なぜ?』
 今度は答えが返ってこなかった。
『君の相手……そいつはいったい誰なんだ?』
 私は先ほどの問いをもう一度繰り返した。妻はやはり答えず、ただ同じように『ごめんなさい』と繰り返すだけだった。

 何となく分かった。つまりは携帯を処分したのと同じことだ。相手が誰であるかという質問はもちろん、不倫の始まりはいつかという問い掛けですら、それに対する答えはTの身元特定につながるおそれはある。月子はそう考えている。だからこそ、答えようとしないのだと。

 この瞬間、私は憎んだ。はっきりと妻を憎んだ。20年近く前にあの画廊で出会い、恋に落ち、やがて夫婦となり、子に恵まれ、その子を失い、それでもなお「健やかな時も病める時も」人生の同伴者としてともに歩んでいくものと信じ込んでいた女を――心底から憎んだ。
 むろんのこと、憎悪は妻を奪ったTなる男にも向かった。だが、私はそいつの顔も知らないのだ。知っているのは声だけ――軽薄そのものの口調で妻に淫らな振る舞いを命じているその声だけだった。ふと頭の中にあの携帯動画の映像がよみがえって、私はもの狂おしい気持ちになった。

 妻の手を引っ張って居間へ追いやると、私は台所へ行き、冷蔵庫から缶ビールを取り出した。飲まなければやっていられなかった。アルコールを流し込みながら、再び彼女のもとへ戻った。

 月子は黙然とソファに腰掛けていた。もともと小柄にはちがいないが、今宵はいつにもまして小さく痩せて見える。左頬は赤黒く腫れあがり、まだ濡れの乾かない髪は乱れたままだ。だというのに、その姿からは凄艶な趣すら感じられた。
 妻の器量の良さは結婚以来、私のひそかな自慢であった。けれど今、目の前で黙りこくっているのは、妻であると同時に不貞の罪を犯した女だった。彼女の美しさはかえって、私の憎しみをかきたてずにおかなかった。

 再びTのことを尋ねた。月子は答えず、すっと目を伏せた。唇をきゅっと引き結んだのが分かった。
 私はようやくのことで怒鳴りつけたい衝動を押さえつけた。
『じゃあ質問を変えよう。君はどうして離婚したいんだ? 僕と別れて、相手の男と一緒になる気なのか』
『そんなことは――』

 はじめて月子が鋭い反応を見せた。

『そんなことは絶対にありません。彼とは……もう会いません』
『信じられるものか』私は吐き捨てるように言った。『だいいち、それならなぜ離婚する必要がある?』
『あなたを……裏切っていたから。許されないことをしてしまったから』
『……そうだな、君はひどい女だ』
『ごめんなさい』
『謝ってすむ問題じゃない。そもそも、本当に悪いと思っているのなら、なぜすべてを洗いざらい打ち明けてくれないんだ?』
『…………………』
『分かっているさ、君の相手……携帯にはTと登録していたな。そのTとやらを庇っているんだろ』

 言いながら、私は胸のうちで灼けつくような痛みを感じていた。

『分かっているはずだが、僕はTから君宛てに届いたメールを見た。添付の動画も見た。あんなところまで撮らせて……いったい何を考えているんだ』

 強張ったままの月子の仄白い顔にさっと羞恥の色が浮かんだ。

『君があれほど淫らになれる女だとはまるで知らなかった』
『…………………』
『この1年間、僕に抱かれるのを拒んでいたな。僕はてっきり猛資のことが原因で、君がセックスを怖がるようになってしまったのだと思い込んでいた。今思えば間抜けだったな。それは――ただの口実だったんだ』
『…………………』
『君はセックス自体が厭になったんじゃない。僕という男が厭になったんだ。離婚したいというのもつまりはそういうことなんだろ。なぜだ? あの事故があった日、僕が猛資を迎えに行かなかったことを怨んでいるのか?』
『ちがう――――!』

 ずっと視線を外したままだった妻の目がはじめてまっすぐに私をとらえた。そのまなざしには必死なものがあった。

『何がちがうんだ?』
『何もかも……全部よ。私はあなたを厭になったことなんてないし、もちろん怨んだこともない。あの日のことは……二度と言わないで』
『じゃあ、なぜTには抱かれた?』

 口にした瞬間、愚かしい質問だと自分で思った。月子が言ったことのどれだけが真実なのかは分からないが、仮に私への気持ちが冷めきっていたわけではないとしよう。猛資の死がきっかけでセックス恐怖症になったという話も本当だとしよう。だからといって、彼女がTと関係をもっていたことはまったき事実なのだ。

 なぜTに抱かれた? 答えは明白だ。妻はそれだけTという男に激しい愛情を感じていたのだ。あの映像にあったとおり、Tの命令なら何であれ拒めないほどの愛情を。
 暗澹たる気分に落ち込んだ私を、突き刺すような苦痛と嫉妬が襲った。

 月子はやはり押し黙ったままで先ほどの質問にも答えなかった。顔を伏せていたが、泣いているのは気配で分かった。彼女は声を立てずに泣く女だった。私はそれを知っていた。




 ……実のところ、これ以上、長々と描写を重ねても仕方ないのである。


 激動の一夜のあとも、毎日のように同じ問答が繰り返されただけだった。私は間男について尋ねた。不倫の詳細を訊きだそうとした。問いを重ねながら、混乱し、怒り、時には激昂のあまり暴力もふるった。『すべてを明らかにするまでは、ぜったいに離婚の申し出は受けない』と言い張った。
 月子は最後まで何も答えなかった。肩を揺さぶられても、髪をつかまれ頬を打たれても、何一つ反抗しようとはしなかった。『ごめんなさい』と幾度も謝り、『私がすべて悪いの』『離婚してください』という言葉がそれにつづくだけだった。


 月子が出て行ったのはそれから一週間後であった。
 あとには妻の印だけが押された離婚届と、これまでの感謝と謝罪をつづった短い書き置き、そして、急速に温もりを失い、がらんとした家ばかりが残された。

  1. 2014/11/04(火) 00:08:42|
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月の裏側 第9回

 今になって考えてみると、Tと秘密の連絡を取り合うようになって以降の月子は、携帯電話の取り扱いに慎重になっていったようだ。それでも8月のあの夜あたりまでは、彼女が携帯をチェックしているのを家の中で時どき見かけたけれども、近頃ではまったくなくなっていた。夫の目の届くところで携帯を扱うのは危険だと、月子はもちろんそう感じていたにちがいない。

 だが、その晩の妻はよほど疲れていてうっかりしたのか、普段は切っている携帯の電源を入れっぱなしで、あまつさえ夫のいる居間に置いてきてしまった。
 月子は風呂場でそのことを思い出し、動揺したにちがいない。
 猛資が事故に遭った日もそうだったが、妻にはもともとおそろしく勘の鋭いところがあった。厭な予感がしたのだろうか。彼女はすぐに風呂を切り上げ、バスタオル一枚だけを身にまとって、居間の様子をうかがいに来たのだ。
 するとどうであろう。夫、すなわち私が、まさしく彼女の携帯を見つめて愕然としているではないか。

 月子にとっては最悪の事態だったはずだ。もちろん、私には彼女の内心が真実どうであったかということは分からない。次の瞬間、彼女が取った行動を振り返ると、妻は素早く落ち着きを取り戻したようにも、あるいはまったく取り乱していたようにも見える。
 月子はどうしたのか。そろりとした足取りで私に忍びより、私の手から、さっと携帯を取り返したのである。

 呆然自失していた私は、その時はじめて妻の存在に気づき、『あっ』と声をたてて驚いた。携帯を手にした彼女は、くるりと私に背を向けて、部屋の外へ駆け出していた。
『待ちなさい――待て!』
 私は大慌てでバスタオル一枚の後ろ姿を追った。
 月子が走っていったのは、再び浴室の方角だった。室内に飛び込むと、彼女は尋常ならざる素早さでドアの鍵を掛けた。
『開けろ開けろ!!』
 私はすでに隣近所の耳を気にする余裕もなく、がんがんと扉を打ち叩きながら叫んだ。しかし、中からは何の応答も無い。

 まったくもって不可解だった。
 不倫の証拠を見られた――妻がそう認識しているのは十分すぎるほど明らかだ。このような場合、世間一般の尋常な不倫妻――というのもおかしな表現だが――の反応はどうだろうか。顔面蒼白になってわなわなと立ち尽くすか、あるいは泣き崩れながら亭主に詫びをいれるか――私の貧しい想像力ではこれくらいしか思いつかないけれども、だいたいありそうなのはこんなところではないか。しかるに、月子のリアクションはまったく異なっていた。
 混乱の極みにありながら、私は腹の底から猛烈な怒りがわきあがってくるのを感じた。貞淑そのものに見えていた月子が実は不倫していた――という事実はもちろんのこと、それ以上に、彼女は不倫相手のTなる男に痴態の撮影まで許していたのである。映像の中の妻は、Tの野卑で淫猥な命令に対し従順そのもので、みずから望んで「男のおもちゃになっている」という表現がぴったりだった。妻を信じきっていた私には、あまりにも衝撃的であり許そうにも許しがたい裏切りであった。あまつさえ、その裏切りが発覚した月子は、天の岩戸よろしく、こうして浴室にたてこもっている。これで怒らない人間が――亭主が、いるだろうか。


 月子が浴室から出てきたのは、それから20分も経たないうちだったが、私には永遠のごとく長い時間のように感じられた。


 伏し目がちに姿をあらわした月子は、きちんと寝巻に着替えていた。白蝋のように蒼褪め、唇はわずかに震えていたが、扉を開いた時にはもう覚悟を決めて――その覚悟がまたも私を驚愕の淵に叩き落とすのだが――いたのか、抑えた表情には諦めと同時に意志的なものが漂っていた。
 私はそんな妻の様子に戸惑った。しかし、やがて彼女の唇が動き、かすかに震えながらもしっかりとした声音で『ごめんなさい』と言った時、私の中で何かが弾けた。自制の意識を働かす間もなく、右手を大きく振り抜いて、月子の横っ面を張り飛ばした。それは私が女性に対して――そして何よりも妻に対してふるった、初めての暴力であった。
 月子はのけぞり、壁にぶつかって崩折れた。唇が切れて、端から赤い血がすーっと流れ落ちた。打った私も動揺したが、しかしそれよりも収まらぬ腹立ちの方が大きかった。
 問い質すべき「なぜ?」はあふれるほどだったが、私はその時あることが気になった。
『携帯はどうしたんだ?』
 背中を壁に預けて床にへたりこんだ月子の前髪は乱れ、見下ろす私の視線から彼女の目元を隠していた。血の筋を垂らしたままの唇は、私の問い掛けには答えなかった。ただ静かに『ごめんなさい』という言葉が再び漏れ聞こえた。
 私は月子の衣服を探った。携帯を持っている様子はなかった。私は浴室に足を踏み入れ、辺りを見回した。

 携帯はあった。バッテリーを抜かれた状態で、水を張った洗面器の中に沈められて。内蔵のカードも取り外され、念入りに折られていた。

 最初は何が何だか分からなかった。徐々に思考が冴えて、「これは不倫相手を庇うためにやったことではないか」と気がついた。携帯のアドレス帳にすら、万一の場合を考えて、「T」というアルファベット一文字で登録していたくらいだ。月子にとって相手の男の本名や身元は絶対に知られたくないものらしい。だからこそ、不倫の発覚を悟ったまさにその時、何よりも優先して彼女は、Tに直接つながる情報が入った携帯の処分を考えたのだ。
 私はそう結論した。その結論は沸点を迎えていた妻への怒りをさらに煮えたぎらせた。


 浴室から踵を返した私は、まだ床に座り込んだままの月子の寝巻の襟元を掴んで、無理やりに立たせた。
『お前の相手は誰なんだ? 言え!』
 妻を「お前」呼ばわりしたのもその時が初めてだった。冷静さを失っているはずの私は、しかし頭のどこかでその事実に気づき、なぜだか冷やりとした哀しみに胸をつかれた。
 月子の顔もまたひどく哀しげだった。彼女はすでに決めていたのだ。これからどのようにするのかを。

『ごめんなさい。あなた、本当にごめんなさい』

 噛みしめるような口調だった。ひょっとしたらその言葉は、猛資の死以来、彼女が私に向かって発した言葉のうち、もっとも深く、直截に、彼女の心を反映したものであったかもしれない。

 そして彼女は言った。『離婚してください』と――。

  1. 2014/11/04(火) 00:07:37|
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月の裏側 第8回

 携帯の画面を切り替えて、受信メール一覧の頁に移った。
 先ほどのメール――その差出人は「T」と表示されていた。
 
 T――。

 「誰だ?」という疑問が浮かぶ前に、まず不審を覚えた。アルファベット一文字の登録名とは、いかにも差出人の本名を隠すための細心な配慮を感じるではないか? もちろん、そのような配慮をしたのはほかならぬ妻なのである。
 黒い雲のような不安と猜疑が胸中に広がっていく。
 居間のテレビでは相変わらずバラエティ番組の放送がつづいていた。そのにぎやかな音声も、私の耳にはまったく入ってこなかった。
 こわばる指で携帯を操作し、Tのメールを開いた。
 一瞬後、私の唇から声にならぬ声が漏れた。


 2009/9/30(Wed)
 Frm:T
 Sb:(non title)
 《おとといヤッたばかりだけど、すげー悶々する

  早く月子とヤリたい

  今日はこれ見てオナニーするわ(笑)》


 その文面からは知性というものがまるで感じられなかった。ぎらついた性欲と生臭い精液の匂いが漂っているばかりだった。何より私の気分を悪くさせたのは、もちろん、「月子とヤリたい」という一文だった。
 心臓は異常な早さで鼓動していた。眩暈のような不快な感覚に私は襲われた。携帯を握りしめた手は震え、指先までべったりと汗ばんでいた。
 しかし、本当の衝撃はすぐ後にやってきたのである。

 Tのメールには動画ファイルが添付されていた。最後の一行にあった「これ見てオナニーするわ」の「これ」とは、この動画を指すらしい。
 厭な予感がした。
 見たくなかった。
 だが、見ないで済ますという選択肢は存在しなかった。
 最悪の悪夢を見ると分かっていながら眠りにつく人のように、私はその添付ファイルを再生した。


 動画が始まり、すぐさま中心に映し出されたのは、女の顔であった。
 ただ顔というだけではない。女の眼前には勃起した男のものが傲然と突きつけられており、女はそれに唇を使っていた。

 女が月子であることは、携帯動画の貧しい画質でも明らかだった。

 場所はどこかのベッドの上らしい。上半身しか見えないが、どうやら月子は一糸も身につけていない様子だった。裸身を晒して男のものに口奉仕している月子を、当の男が上から見下ろすアングルで撮影しているようだ。
 撮られる月子には、しかし携帯のカメラもほとんど意識されていないようであった。ベッドに両手をついた姿勢の彼女は、主人を見上げる犬のように顔を上げ、薄桃色の舌を伸ばして差し出された肉柱にすり寄せていた。くなくなと頸を揺すりながら、茎胴の裏筋から雁首まで丹念に舐め上げ、鈴口を舌でくすぐるようにして、一心に奉仕している。時折、はぁはぁという熱っぽい吐息がその口と鼻から噴きこぼれた。
 そのようにして間断なく奉仕する月子が頭を前後に動かす度、華奢な身体つきにふさわしからぬ豊かな乳房――その胸乳の大きさこそ若い頃の彼女を男嫌いにさせた原因であった――がたぷんたぷんと弾み、白い珠のようなそれは柔らかくさざ波立った。

 想像を超えた淫らさだった。私は鉄槌で殴られたようなショックを覚えた。

『もっと舌出して舐めろよ。カメラもちゃんと見て』
 突然、男の声がした。この声の主が撮影者であり、Tなのだろう。メールの文面と同じように軽薄で、子供っぽい口調だが、甲高くハスキーな声質には特徴があった。
 映像の中の妻が閉じていた目を開き、カメラを見上げた。その瞳はうるうると潤み、鼻頭から頬の辺りまで紅潮している。汗の玉が浮いた額に、ほつれた前髪が幾筋か張り付いていた。
『いいぞ。あー気持ちいいわ。だいぶうまくなったじゃん』
 Tは言いながら、月子の髪を梳くように左手で撫でた。その人差し指には髑髏を象った趣味の悪いリングが鈍い光を放っていた。
 まるで子供をほめる時のようなTの仕草に、しかし妻はうっとりと目を細め、うれしげに男の手指を受けていた。気のせいか、舌の愛撫にいっそうの濃やかさが加わったように見えた。

『そろそろ入れてほしいか?』
 唇の奉仕を途切れさせぬまま、妻はうなずいた。
『じゃあ、四つん這いになれよ。後ろからハメてやる』
 剛直からようやく口を離した妻は、Tの無造作な命令に『はい……』と小さく返事をした。すぐに身体をねじって、後ろ向きになる。つきたての餅のような、真っ白な尻がカメラの前に晒された――。
 そこで、唐突に映像は終わった。


 描写すると長くなってしまうが、時間にして1分にも満たない動画だった。
 だが、それによって私の受けた驚愕と混乱は、空前のものであった。

 映像が終わってからも、私は妻の携帯を握りしめたまま、その場に座り込んで動くことができなかった。呆然自失を絵に描いたような有り様だった。不意に強烈な吐き気が私を襲い、『うっ』と呻きながらようやく喉もとでそれを堪えた。目尻に涙が滲んだ。
 考えるべきことはやまほどあるのに、私の思考回路は灼き切れる寸前で、周囲への注意力すらまったく失われていた。だから、その時すぐ近くまで歩み寄っていた月子の影にもまったく気付いていなかった。
  1. 2014/11/04(火) 00:06:48|
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月の裏側 第7回

 息子の死という悲しみの荒波に襲われ、航海中に櫂を失った小舟のごとく漂いながらも、一応は途切れることなく「家族」をつづけていた私と妻の日常。
 しかし、その日常は呆気なく崩壊してしまうことになる。再び訪れた嵐によって。
 いや、この比喩は正しくない。災害は必ずしも外からくるものではない。私たちの生活を終焉させた嵐は、ほかならぬ妻の胸の中に生まれ、私の気付かぬうちに勢いを強めていたのだから――。


 夏が過ぎ、残暑も少し弱まってきた9月の末であった。
 私は相変わらず多忙な編集者の業務と小説執筆に追われていた。中学校の新学期が始まった月子は、美術教諭としての勤めを果たしながら、やはりジム通いを続けていた。

 その日は水曜日だった。自宅に帰りつき、居間のソファに腰を落ち着けた私は、夕食の膳を運んでくる月子に『ビールも頼むよ』と声を掛けた。
『原稿を書く時は飲まないんじゃないの? 今夜はいいの?』
 妻は怪訝な顔をした。
『ああ。昨日頑張ったおかげで、ようやく終わりが見えてきた。今夜は前祝い』
『全部終わってからにしたら?』
『いいじゃないか。景気づけだ』
『前祝いと景気づけは大違いよ』
 と言いながらも、月子はビール缶とグラスを運んできた。
『君も飲まないか』
『私はいいわ。お風呂に入ってくる。私があがったら、あなたもさっさと入ってね』
 すげなく断って、さっさと浴室へ歩み去っていった妻の背中を、私は何となく物足りない思いで見送った。
 ひとり残された私は、冷奴と南瓜の煮つけをつつきながらビールをあおり、くだらないバラエティ番組を眺めた。画面の中で面白くもないジョークを飛ばす芸人を見つめながら、ぼんやりと月子のことを考えた。
 すでに夜の営みは1年以上絶えている。中年の域に入ったとはいえ、まだまだ性的に枯れていない健康な男としてはいかにも辛い。最近とみに美しくなってきた妻を持つ者ならば、なおさらのことだ。
 猛資の死以来、月子は性交渉を拒否するようになった。生殖のための行為が失った最愛の息子を直接に連想させるから――らしい。猛資の不幸な事故には私も責任を感じているだけに、「いや」と言われればそれ以上強く出ることができぬ。一方で、その妻が日に日に若返り、女としての魅力を増しているように見えるのはなぜだろう。悲しみに打ちのめされたあの日から妻はまだ立ち直っておらず、切れ長の目から暗さが消えたわけではないのに――。

 沈んだもの思いは、突然鳴り響いた携帯電話の震動音に破られた。
 ソファの上に置かれた妻のバッグ。その中で携帯が動いていた。在宅中はいつも注意深く電源を切っているのだが、今日はうっかりしていたらしかった。

 8月のあの深夜、真暗な居間で携帯メールを打っていた月子。その光景を偶然覗き見た記憶が私の中にまざまざと蘇った。
 忙しさにかまけて、以後も私はメールの件を妻に問い質していなかった。気にはしつつ、「たいしたことじゃない」と思い込んでいたのも原因の一つである。後になって振り返れば、それはまさしく救いようのない楽天家の思い込みだったのだが。

 携帯の震動はすぐに止まった。どうやらメールらしい。
(いったい誰からだろう。あの晩と同じ相手だろうか)
 8月の出来事をすっかり思い出した私は、気になって仕方なかった。

 自己弁護するつもりはないが、思いのほか酔っていたのだろう。もともと好きなわりに酒に強い方ではない。久々に口にしたアルコールは、私の理性を揺るがし、普段ならまずしないであろうことをさせた。――私は月子のバッグを手繰り寄せ、その中から携帯を取り出したのである。
 手にした携帯を開く。かつて妻の携帯画面の壁紙は息子の写真だったが、悲劇の記憶を喚起させずにおかないそれはいつの間にか取り払われ、ただ黒一色の画面に日付や時間を告げる白文字だけが浮いていた。
 いや、もうひとつ、メールの着信を告げるマークも表示されていた。私は妻の秘密を覗くために、携帯を操作してそのマークを押した。酔いは早くも醒めかけて、心臓の鼓動が早くなっていた。
  1. 2014/11/03(月) 11:15:05|
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月の裏側 第6回

 長かった梅雨もようやく明け、本格的な夏がやってきた。

 月子の中学校は夏休み期間に入った。夏休みといっても、当然ながら教師の仕事はあって、彼女も毎日出勤していた。スポーツジム通いも続けており、月・木曜は相変わらず帰りが遅かった。
 私の方はといえば、勤めていた出版社が新雑誌の創刊準備を進めており、私もチームの一員だったので、平常より忙しい日々を過ごしていた。
 忙しい原因はそれだけではなかった。同じ頃、副業である小説家としての仕事も増え始めていたのである。小さな文学賞ひとつ取ったこともなく、確固とした足場のない私のような作家にしてみれば、本業が忙しいからという理由で原稿の注文を断るのもそれはそれで怖い。出版社を退社して筆一本に生きる道も考えないではなかったが、そう決断できるほどの自信はなかった。

 そのようなわけで、もともと速筆でもない私は、編集者勤務を続けながら、依頼された原稿を書き上げるのに大わらわとなった。会社から帰った後も、深夜遅くまで書斎の机にかじりつき、パソコン画面を睨む毎日だった。
 仕事に追われる私を気遣って、月子は『あまり打ち込み過ぎると、身体を壊してしまうわ。ほどほどになさいね』とよく言っていた。当時は何も思わなかったが、しかし今から思い起こすと、その言葉にはどこか心ここにあらずの響きがあったように思う。

 *  *  *  *  *

 忙しい毎日が続いていた、8月のある夜のことである。その日も自宅に戻った私は、風呂と夕食を済ますとすぐ二階に上がり、クーラーをがんがんに効かせた部屋で、眉間に皺を寄せながら原稿と格闘していた。途中、執筆に行き詰まって、しばらく煙草をやたらとふかしたりしていたが、どうにも先が続かない。時計を見ると、時刻は深夜2時を過ぎようとしていた。
(今日は仕舞いにしよう。明日、つづきをやればいいさ)
 私は諦めて、一階の寝室へと向かった。このところ、月子には私にかまわず先に寝るように言っている。彼女を起こさぬよう、私は足音をできるだけ断つようにして、明かりもつけずに階段を降りた。
 一階について暗い廊下に立った私は、ふと居間の方に目をやり、そこにかすかな光と黒い人影を見て驚いた。

 人影は月子だった。

 消灯した部屋の薄闇の中で、月子はソファに座っていた。かすかな光と見えたものは、彼女が手にした携帯の画面から発しているものだった。
(何をしているんだ?)
 私は首をひねった。とうに眠っているだろうと思っていた妻は、私に気付かず、掌に握った携帯を操作している。こんな深夜だというのに、誰かにメールを打っているらしい。
 そんな彼女を廊下から見つめながら、私は考え込んだ。

 月子はそもそも携帯電話という文明の利器を好いていなかった。『あんなものが出来たから、社会が気忙しくなってたまらないわ』などと文句さえ言っていた。自分も使うようになったのは、あくまで私や息子と連絡を取る時の必要を考えたからであって、必要以上に携帯をいじるなどということはついぞなかった。
 しかしである。ことさら意識していなかったが、思えば数か月ほど前から、妻は思いついたように携帯を眺めることが多くなっていた。普段、家にいる時は電源を切っているらしかったが、折々取り出して、チェックしていたようである。あれは誰からの連絡を気にしていたのだろう? もともと月子は社交的な性格ではない。友達と呼べるほど親しい人は少なく、その親しい相手であっても、頻繁にやりとりをすることはなかったのである。

 以上のような思考を巡らして、私は戸惑ったのだが、かといってそうした材料がすぐさま妻への疑いに直結したわけではない。男嫌いと噂されていた学生の時分から、月子は性に対して潔癖な考えを持つ女だったし、浮気・不倫のような単語の持つイメージとはあまりにもかけ離れていた。だいいち、息子の死以来、彼女は極端にセックスを忌避するようになっているではないか。その忌避はあくまでセックスという行為に対するもので、「性交の相手が夫、すなわち私であることが厭なのだ」という風に、私は解釈していなかった。
 ただ、気になることは他にもあった。月子がジム通いを始めてまだ間もない頃のある宵、私はふと妻の若々しさに目を見張り、妖しいほどの色香を感じたが、日が経つにつれて、その印象は強まっていた。息子の死から憂愁に沈みがちだった彼女の変化は、もちろん私としても喜ばしいことだったが、しかし一方では、どこか気にかかるところがあったのも事実である。

 私が廊下に立ち尽くしていた実際の時間は、おおよそ3分くらいだったろう。月子はやがて携帯を閉じると、立ち上がり、寝室へ向かった。最後まで私には気付かなかったようだ。

 私は洗面所へ行き、歯を磨いた。磨きながら目撃したことの意味を考えたが、思考は深まらなかった。
 寝室に入ると、妻は消灯した室内で静かにベッドに横たわっていた。私に気付くと上半身を起こして『おつかれさま。今夜はずいぶん遅かったね』と言った。暗闇の中、こちらを見ている月子の瞳を、私は落ち着かぬ思いで見つめ返した。部屋の片隅で静かに首を振る扇風機の風が、彼女の髪を柔らかくそよがせていた。
『……君もまだ寝ていなかったのか』
 私は嘘をついた。眠っていなかったことは分かっているのになぜ嘘を口にしたのか。ほんの直前まで、こんな深夜に誰宛てのメールを打っていたのか、尋ねてみるつもりでいたのに。
 捗らない原稿に続いて、偶然目撃した月子の不可解な行動に頭を悩まし、私は疲れていた。と同時に、私はまだまだ愚かしいほどにのんき者だったのである。メールの件は、また朝にでも訊いてみよう。そう結論して、私は妻の傍らにもぐりこみ、夏用の薄毛布をかぶった。
『今夜は蒸し暑いね』
 傍らで、目をつむった妻が独り言のように言う。最近、彼女は夏痩せしてきたようである。それとも、ジム通いの成果が出てきたのか――。とりとめのないことを考えながら、私もまた瞳を閉じた。
  1. 2014/11/03(月) 11:14:05|
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月の裏側 第5回

 その年の梅雨はことに降水が多く、雨はほとんど毎日のように街を濡らした。

 私は雨が嫌いだ。息子の死んだ日の出来事が自然と思い出されるからだ。
 月子も同じに違いないと思う。彼女と一緒にいた間、それを確かめたことはなかったけれど。
 ――話を戻そう。
 6月のある日のことである。その日も雨だった。月子が遠慮がちな口調で『ジムに通いたい』と言い出した。

 元・美大生の月子は筋金入りの文化系といってよい。結婚する前も後も、彼女が好んでスポーツをするところなど見たことはなかった。年相応の成熟味も出てきたとはいえ、痩せ形の体型は昔とほとんど変わらず、ダイエットが目的とは思えない。私が怪訝な表情をすると、
『新しいことをしてみたくなったの』
 彼女はぽつりと言った。
 4月以降、一時期は明るさを取り戻しかけていたが、このところは再び塞ぎ込んだ表情を見せることが多くなっていた。そんな折だったから、私は良い兆候だと思い、簡単に賛成した。
 やがて、月子は最寄駅近くにあるスポーツジムへ入会の手続きに行った。通うのは週の月・木曜と決め、その日は勤め帰りに中学校から直接ジムへ向かうという。
『ひょっとしたら、私の帰宅があなたの帰る時刻より遅くなるかもしれない。朝のうちに夕御飯の用意はしておくつもりだから、私の戻りが遅い時は、わるいけれども、それを温め直して食べてくれる?』
 すまなそうな顔をする月子に、私は『了解。僕のことは気にしないでいいから』と笑ってみせた。

  *  *  *  *  *

 月子の帰宅時間は夜7時前が普通で、一方の私はといえば、おおよその場合、8時少し過ぎには会社から戻る。それがジム通いを始めて以降、月子があらかじめ示した懸念は現実のものとなった。月・木曜日にかぎって、彼女の帰宅は9時過ぎ、時によってはもっと遅くなる日も出てきた。
 一度決意したことはやり抜く。妻の生真面目な性格を、私はよく知っていた。決めた以上、律儀に通うに違いないと思ってはいたが、これはなかなかどうしてたいした熱の入れようじゃないかと、私はなかば感心し、なかば呆れる気持ちだった。

 当時を振り返って、印象深い記憶がある。
 月子のジム通いが始まってまだ間もない、ある木曜のことだ。帰宅した私は、その晩も妻が帰っていないことを確認し、ひとり、風呂を沸かして入った。
 冷蔵庫を開けて、月子が用意していった夕食を取り出し、半分ほど食べ終わったあたりで、玄関のドアの開く音を聞いた。時計を見ると、9時半に近かった。
『また遅くなっちゃって……ごめんなさい』
 居間に姿をあらわした月子は、すぐに殊勝な口調で謝った。ジム帰りの夜にはいつもそうであったが、肩先で切りそろえた彼女の黒髪は濡れ光っていた(『運動の後は、必ずジムでシャワーを浴びてから帰るの』と、彼女からは聞いていた)。
『わざわざ謝らないでいいよ。僕のことには気を遣わないでくれと言っただろう』
 軽い口調で返事しながら、ふと見やった妻の姿に、なぜであろう、私の目は吸われた。

 当時、月子は38歳であった。透けるように白い肌は肌理が細かく、しっとりと濡れたような光沢を帯びており、〈白磁のような〉という形容がよく似合った。卵形の面輪に切れの深い張りつめた眸、薄い唇も形良く整っていて、わが妻ながらまず美貌といってよい女だったと思う。
 とはいうものの、息子の死以来、悲しみは月子の容貌から確実に生色を奪っていた。私は痛ましいような気持ちでそれを眺めていたのである。
 ところがその瞬間、何気なしに見た彼女は異様なほど若々しかった。すべやかな頬はもちろん、細い頸からシャツの胸元にかけてほんのりと朱に染まり、あたかも微醺を帯びた人のようで、その鮮やかな色艶には匂うようなエロスが漂っていた。私はどきりとした。
 運動後の余熱がまだ躯のうちに残っているからだろうか――私は考えた。
『何?』
 気がつくと、目の前で月子が小首を傾げていた。
『いや、何でもないよ。少し考えごとをしていた』
 誤魔化した私を、月子はちらりと一瞥し、『そう。なら、いいけど』と言った。
『お風呂は――あ、もう沸かして入ってくれたのね』
『うん』と私は答えた。
  1. 2014/11/03(月) 11:13:04|
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月の裏側 第4回

 猛資の死は、残された私と月子の関係を大きく変えた。

 結果論には違いない。だが、もしもあの事故当日、はじめから私が重い腰をあげて猛資の迎えに行っていたら――、私たち夫婦は最愛の息子を失わずに済んだかもしれないのだ。
 どうしようもない後悔に私は苛まれた。と同時に、妻もまたそう考え、ひそかに私を責めているのかもしれないという想像が、私の心胆を寒からしめた。
 もっとも、月子はその件に関して何も言わなかった。愛息をなくした喪失感は、妻をほとんど鬱状態にまで追いやった。私は勧めて、彼女をカウンセラーのもとに通わせた。
 彼女の口数はかぎりなく減って、私といる時も沈黙しがちになった。かつて夫婦の絆の象徴であった猛資という名前を口にすることは、私たちの間でタブーに似たものとなっていった。

 タブーはそれだけではなかった。
 猛資の死以来、月子は私とのセックスを拒否するようになった。
 「拒否するようになった」という結果の前には、「恐れるようになった」という心情が先にくる。セックスという子をなすための生殖行為は、月子にしてみれば、失った息子の記憶とただちに結び付く営みでしかありえなかった。性の快楽によって生きる慰みを得たり、夫妻の絆を確かめたりといったことは、当時の妻にはあまりにも遠い感覚となっていた――ようだ。
 こうして私たち夫婦の隔たりは、精神的にも肉体的にも広がっていったのである。

 猛資の死から半分鬱状態にあった月子は、勤めていた中学校の美術教師の職も長らく休職していた。そのまま辞めてしまってもおかしくないくらいだったが、同僚の熱心な勧めで、やがて職場復帰することになった。
 私もその頃はまだ編集者の仕事と小説家という二足のわらじを履いており、日中は外で働いていた。ひとりで家にいる時間が多いほど、月子は余計に息子のことを思い出し、気分の落ち込みがひどくなるのではないか――そう心配していたから、妻の決断には一応喜んだ。ただし、月子の職場が中学校であり、彼女の教える生徒たちが、死んだ猛資と同じ中学生であることは少なからず気がかりであったが……。
 その気がかりは、しかし私の心配した事態とはまったく異なる形で、やがて的中することになる。それを私が知ったのは、月子が姿を消してずいぶんと経ってからのことだった。――
 だが、とりあえず今は順を追って、この先の出来事を語り続けることにしよう。


 猛資がこの世を去ってから一度目の、新しい春がやってきた。
 月子の表情が変わってきたのはその頃のことである。もともと月子はかなりの色白で、昼間でも月光を浴びているかのような雰囲気があったが、息子の死以来、その顔は暗く蒼褪め、生気を欠くようになっていた。それが変わってきたのである。
 うつろに宙を彷徨いがちだった目のかがやきが少し戻り、頬の色もこころなしか血色が良い。口調も以前よりはよほど明るくなった。
 私はもちろんこの変化を歓迎した。春になり、月子の勤める中学校も新学期を迎えている。新しい入学生や、新学年となった生徒らの若々しい活気にふれて、彼女にも何かしら新鮮な気持ちが芽生えたのかもしれない。このまま良い変化が続くことを私は願った。
 しかし――事態は私の願う方向には向かわなかった。

 4月が終わり、GWも過ぎて、梅雨の時期を迎えた頃には、月子はまた沈みがちな様子を見せるようになっていた。
『大丈夫かい。最近、疲れているようだけど』
 ある夜、食卓に腰掛けてぼんやりと頬杖をついている月子に、私は話しかけた。だが、もの思いに耽る妻には、私の言葉も届いていなかった。
『おい』
『あら、ごめんなさい。ぼうっとしていたわ』
『最近多いよ。疲れが溜まっているんじゃないか』
『ううん。そんなことはないのよ。ただ――』
『ただ?』
『……なんでもないわ。明日の授業のことを考えていただけ』
 妻は立ち上がると、洗い物をするために台所へ行った。私はいぶかしく思いながらも、食器を洗う彼女のパンツスーツごしに、若い頃よりずいぶん成熟味を増した臀部を眺めた。
 もう長い間、月子との性交渉は途絶えていた。当時40になって間もなかった私の欲望は妻の後ろ姿に疼いたが、その肢体を求めて拒否された記憶はまだ生々しかった。私はため息を一つつくと、小説を書くために書斎へ向かった。――

 猛資の死後、月子に対して遠慮を感じていたこと。結果として、彼女との夜の営みがなくなっていたこと。今振り返ると、これらのことは、妻に起きていた本当の「変化」を私に気付かせなかった原因といえる。とはいえ、それも言い訳に過ぎない。つまるところ、私は、小説家にしては著しく観察力の欠けた人間だったのである。

  1. 2014/11/03(月) 11:08:57|
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月の裏側 第3回

 猛資が死んだ日のことは忘れられない。
 日曜日だった。

 猛資は中学校で卓球部に所属しており、その日曜日も、練習のため午後から部活へ行っていた。私は書斎にこもって小説を書き、月子は休日になるといつでもそうしていたように、部屋の隅から隅までをぴかぴかと磨き上げる作業に余念がなかった(彼女は掃除狂いといっていいほど清潔好きな性質があった)。
 夕方5時近くになり、窓の外が暗くなってきたなと思ったら、雨が降ってきた。
 しばらくして、書斎に月子が入ってきた。
『あなた、ちょっと』
『どうした?』
『猛資、傘を持っていかなかったみたいなの。わるいけど、学校まで車で迎えに行ってくれないかしら?』
 ちょうどその時、執筆作業が珍しく快調で、本音をいうと返事するのさえおっくうだった私は、妻の言葉に厭な顔をした。
『この程度の雨ぐらいで、車はおおげさじゃないか』
『天気予報を見たけど、これから激しくなるみたいなの』
『友達の傘に入れてもらえばいいだろう。僕も忙しいんだよ』
『……同じ方角に帰る子、いたかしら?』
 私の素っ気ない返事を聞いて諦めたのか、月子は携帯を取り出し、猛資に電話をかけた。だが、その日、猛資は携帯を自室に置きっぱなしにしていたらしく、連絡は繋がらなかった。
『仕方ないわ。私が傘を持って学校まで行ってくる。今から出掛けても、練習の終わる時間過ぎちゃうけど』
 中学校へは徒歩で30分以上かかる。月子は運転免許を持っていなかった。
『そこまでしなくっていいんじゃないか。たとえズブ濡れで帰ってきたところで、その後、風呂で温まればいい話だろう』
 私が言うと、月子はため息をついて『男親ってこれだから…』とつぶやいた。私は私で『女親ってこれだからなあ…』とでも言いたいような気分だった。

 月子の過保護な心配は、しかしその日に限っていえば、間近に迫る破局を予感した胸騒ぎのようなものだったかもしれない。

 妻が出掛けていった後、私はまた意欲を新たにして小説に取り掛かった。集中して書く時、いつもそうするように、お気に入りの洋楽をヘッドフォンで聞きながら、ひたすらパソコンのキーを打ち叩いた。
 そうして、ひとり、夢想の世界に没入していた私だったが、ふと疲れを感じて、顔を上げた。気がつけば、時計の針は6時半を過ぎている。
 驚いたことに、月子が出て行ってもう1時間以上過ぎていた。だというのに、月子も、そして猛資も戻ってきていない。
 ヘッドフォンを外すと、途端、激しい雨音が窓の外から聞こえてきた。硝子の向こうはもう真性の闇だったが、部屋の明かりの届く範囲は、降水で視界が歪むほどだった。
 ふと気付いて携帯を取り上げると、妻からの着信が3度も入っていた。
(――まずいな)
 そう思った矢先、玄関のドアが開く音がした。出てみると、真っ青な唇をした月子が立っていた。雨に濡れた黒髪がしっとりと光っていた。
『さっきから何度も電話かけていたのよ』
『ごめん、気付かなかったんだ』
『猛資は帰ってない?』
『帰ってないけど……学校では会えなかったのかい?』
『私が着いた時にはもう誰も体育館にいなかったわ。今日は早めに練習を切り上げたのかも』
『それでも…いや、それなら、まだ帰ってこないのはおかしいな』
『おかしいのよ』
 珍しく強い調子で答えた妻の言葉には、不安の響きが滲んでいた。
『ともかく、ひどい雨で君も冷えただろう。僕が車で探して来るから、シャワーでも浴びたらどうだ』
『そんな気になれないわ』
『心配しすぎだよ。あいつももう中学2年生だぞ。きっと、友達の家にでも寄っているんだろう』
 私は妻を励ましながら、玄関脇に置かれた傘を手に取った。
 ドアを開けて外へ出る。陰鬱な雨の降りそそぐ団地は、まだ夜になって間もないというのに、いやにひっそりと静まりかえっていた。


 ……この後のことを書くのは、私には辛い。
 結論からいうと、その日の夕方5時40分頃、猛資は交通事故に遭っていた。

 部活が早めに終了して後、猛資は自宅の方角が近い友達の傘に入って帰ったが、途中でその子と別れてからは、雨宿りもせず走って家を目指したらしい。友達と別れがたかったのか、2人が「さよなら」を言い合った場所は、猛資の普段通る道からずいぶん外れた地点にあった(このために、迎えにいった月子とも会えなかったのだ)。
 雨はその頃にはもう本降りで、視界は大変悪くなっていた。濡れ鼠になって道端を走る中学生に、トラックは気付かなかった。――まだ成長しきっていないその身体をはね飛ばすまで。
  1. 2014/11/03(月) 11:07:44|
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月の裏側 第2回

 私たちは結婚した。
 式を挙げた時、月子はまだ22歳の学生であった。彼女は翌年、都内の中学校で美術教師の職に就いた。しかし、それも1年経つか経たずで休職をすることになる。子供を身ごもったからである。
 そして翌年、生まれたのが息子の猛資だった。

 若い頃、男嫌いで通っていた月子ではあったが、父親を早くに亡くしたためか、家庭に対する憧れは人一倍だったようだ。まだ学生のうちに私の求婚を受け入れたのは、その表れでもあったろう。そんな彼女は、はじめての我が子を得、その世話に追われることに幸福を感じているようであった(もちろん、私の喜びだって並一通りのものではなかった)。

 私たちの愛を一身に受けて、猛資はすくすくと成長したが、大きくなるにつれて、引っ込み思案な性格が顕著になってきた。母に手を引かれ幼稚園に入ってからも、おずおずとしていて、他の子供とうちとけられるまではかなり時間が掛かったようだ。その頃にはもう美術教師の職に復帰していた月子は、幼くして人間関係に不器用な息子のことを、心配げなまなざしで見つめていた。
『あんなにシャイな性格じゃ、この先、世の中をわたっていくのに苦労しそうだわ』
 などと先回りして、月子はよくため息をついたものである。
『心配するのが早すぎるよ。猛資はまだ幼児じゃないか。それこそこの先、どんなに性格が変わるかも分からない。ひょっとしたら、すごいドラ息子になるかもしれないよ』
『あら、あなたはあの子にドラ息子になってほしいのかしら』
『そんなことは言っていない。許せるのは、腕白小僧くらいまでだね』
『私はあの子に内気な性格を直してほしい――なんて、まったく思わないのよ。それは猛資の個性だし、いいところでもあるもの。シャイなのはあの子が普通以上に優しいからだわ』
『好意的な解釈をすればね』
『好意的な解釈をするのが親ってものでしょう』
 月子は冷たい目で私を見た。首をすくめながら、私は心の中で『母は盲目』とつぶやいた。毅然とした性格は変わらなかったが、若い頃の月子が漂わせていたある種の鋭さはいつの間にか薄まり、彼女は、息子と家庭の幸福を第一として生きる女へと変わっていた。

 猛資の成長以外にも変化はあった。私は若い頃から小説が好きで、編集者の仕事をつづけながら、ある時思い立って、小説の執筆を始めた。海外ミステリの影響が色濃い、趣味的なサスペンスだったが、完成品を月子に読ませたところ、『面白いわ。どこかの出版社に送ってみたら?』と勧められた。
 私自身、編集者であるし、業界のことはそれなりに分かっているつもりだった。だからこそ、そううまくいくはずがない、とは思ったのだが、原稿を持ち込んで数ヵ月後には、なんと向こうから『本にしたい』と言ってきた。嘘みたいな本当の話である。
 以来、私は忙しい仕事のかたわら、小説家を副業とすることになった。月子はとても喜んで、『ほらね。私の勘は鋭いでしょう』と、普段見せないような得意げな顔をした。
『感謝してるよ。君に勧められなければ、とても原稿を出版社に持ち込もうなんて気にはならなかった』
『そのことじゃないわ。いつだったかしら、初対面のあなたを見て「面白い顔をした人だなと思った」という話をしたでしょう』
『ああ、あったね。……すると、何だい。君は、あろうことか初対面の時から、僕の中にある小説家の素質をひそかに見抜いていた――とでも言い出す気なのかい?』
『そこまでは言わないけど』
『言ったようなものじゃないか。呆れたね』
 ふざけた会話の応酬をしながら、私たちは笑い合ったものである。

 話を戻そう。盲目な愛情を子に注ぐ月子の心配は半分当たっていて、猛資の引っ込み思案はその後も治らなかった。とはいえ、それが原因で損をすることはあっても、いじめられるところまではいかなかったようだから、のんきに構えていた私の態度もある意味正しかったと思う。ひとり息子を中心として、私たちの家庭は、父の楽観と母の悲観とでバランスが取れていたのだ。そう、あの時までは――。

 バランスが崩れたのは、猛資が中学2年生となった春のことだった。生まれて以来、私たちの家の中心であり、汲めども尽きぬ幸福と心配の種であった息子。
 その猛資が――死んでしまったのだ。
  1. 2014/11/03(月) 11:06:49|
  2. 月の裏側・久生
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月の裏側 第1回

 私はこれから妻について語ろうと思う。正確にいえば、元・妻である。彼女――月子は2年と少し前に家を出て、私たちの夫婦関係は終焉を迎えた。

 決定的な破局の訪れる以前から、私たちの仲は危うかった。
 きっかけは私たちの一粒種であった息子、猛資の死である。
 今も私の心に深い傷を残すその出来事を語る前に、まずは私自身と月子について、もう少し説明を加える必要があるだろう。

 私は藤島厚夫という。千葉県銚子市の生まれで今年43歳。長く出版社で編集の仕事に携わっていたが、30代の半ばから小説の筆を取り、現在は専業作家としてどうにか暮らしている。月子は私より2つ下だから、今年41歳を迎えるはずである。
 月子との出会いは20数年前に遡る。当時の私はある出版社に就職し、駆け出しの編集者として働き始めたばかりの、まだ顔に幼さの残る若造だった。

 最初に月子と巡り会ったのは5月のある日だった。よく覚えているのはその日、仕事上で一悶着があったことだ。その少し前、さる著述家に雑誌の原稿を依頼していたのだが、連絡の食い違いで、こちらの意図と異なる文章が仕上がってきたのである。私はその著述家の家を訪ねて、不機嫌な顔をした彼に平謝りし、何とか原稿の書き直しに応じてもらった。
 とりあえず問題は解決したものの、こちらもまだ分別のつかない若造のことだから、「何だい。俺の話を向こうがきちんと聞いていなかっただけじゃないか」と不貞腐れる気持ちがあった。
 くさくさした気持ちで最寄り駅へ向かう途中の道、ふと小さな画廊が目に入った。自分では絵など一つも描いたことがないくせに、私は昔から絵画を見るのが好きだった。むしゃくしゃした心をわずかでも静めようと、こすい考えで、店内に飛び込んだ。

 画廊では、M美術大の学生有志による展示会が開催中らしかった。油彩、水彩、彫刻、何が何やら分からぬ現代アートまで、よくもわるくも学生らしい熱気に満ちた展示物の数々は、芸術的感興によって心の平穏を得ようという俗な目的にはそぐわぬものであったが、面白いことは面白かった。が、それ以上に、受付にぽつねんと座っていた女性が気になった。

 若造だった私よりその女はまだ若かった。受付に座っている以上、まずM美大の学生であろうことは間違いない。
 白色の質素なサマーセーターに、これまた地味な黒のスカートで膝まで隠していた。ぱっと見、非常に細作りの身体つきをしていたが、セーターの胸の部分は目を引くほど盛り上がっている。
 癖の少ない、さらりとした黒髪。切れの深い大きな目に鋭い印象がある。肌が蒼いほど白く、時刻は昼間だというのに、彼女の周囲にだけは月の光が降り注いでいるような、妙な雰囲気を漂わせていた。
 これが月子との出会いであった。

 その日、私が何と言って彼女に話しかけたのかはよく覚えていない。もしかしたら、何も話し掛けなかったかもしれない。とはいえ、3日後の休日に私は再びその画廊を訪れているのだから、彼女によほど心を惹かれ、どうにかして知り合いたいと思っていたのは間違いない。
 ただし、3日後のその日、月子は画廊にいなかった。私は受付にいた男子学生から彼女の名前と、次に受付を担当する日を聞き出し、三度目の来訪をすることにした。
 私の尋問にあった男子学生は、さっそく仲間うちにそのニュースを広めたらしく、ようやくデートに漕ぎつけたあとで、月子からぼそりと文句を言われた。『あれからずいぶん迷惑したのよ』と。

 話をするようになってみると、月子はその容貌から漂わせていた印象どおり、若さに似合わぬ落ち着いた話し方をする女だった。2歳という年の差、そして社会人と学生という立場の違いもさほど意識することなく、私たちは付き合いを深めていった。
 月子は仙台の生まれ。小学校に上がる前に、公務員だった父を亡くしたらしい。母親はまだ幼い月子を連れて、実家のある東京へ戻ったが、数年前に再婚。その再婚相手も前妻と死別しており、月子と同年齢の息子がいた。相手方の家族に遠慮するところがあったのか、母の再婚後も月子ひとりは同居せず、祖父母の元で暮らしていた。
 そのような家庭の事情もあって、彼女は年齢より精神的に成熟していたのかもしれない。ただ、私と付き合うようになるまで、男性経験は無かったようだ。という以上に、私と出会う頃までの月子には男嫌いの気があったらしく、それがなぜかといえば、原因は彼女の胸なのである。

 あたかもきりきりに冴えた三日月のように、月子の容子にはどこか鋭いものを感じさせるところがあったが、外見においてその印象をただひとつ裏切るのは、服の上からでもハッキリと分かる、豊かな胸のふくらみだった。身体の成長は早かったらしく、中学生の頃からその弾むような胸の大きさは、周囲の男たちから好奇の視線を集めていたようだ。ばかりでなく、実際、痴漢被害に遭うことも多かったという。このような過程を踏んで、月子は男という生き物の獣臭さを感じ取り、意識的に拒絶するようになったらしい。母の再婚後も先方の家族と同居しなかったのは、おそらくは相手方に同年の息子がいたことが主な原因ではないか。

 そんなわけなので、彼女は大学でも男嫌いで通っており、だからこそ件の男子学生は大喜びで仲間たちにニュースを広めたのだろう。「どこぞの馬鹿な男が、それと知らず、男嫌いで有名な月子にモーションをかけている」というわけだ。疑問なのはむしろ、私のようなぽっと出の、得体の知れぬ男の誘いに、なぜ彼女が応じたのかということだろう。

『そうね。考えてみると、自分でもよく分からないわ』
 後になって、月子は、初対面の時のことを振り返り言った。
『ただ、私も、あの時、画廊にふらりと入ってきたあなたのことは印象に残っていたから』
『変な奴だと思っていたんだろう。なにしろ、僕は美術とも芸術ともまるで縁の無さそうな顔をしている』
『馬鹿なこと言わないの』彼女はくすくすと笑った。その頃にはもうずいぶんと、私たちはうちとけて話すようになっていた。『変なヤツとは思わなかったけど――面白い顔をした人だな、とは思ったわよ』
『平然と非道いことを言うね!』
『非道いことを言ったつもりはないわね』
 月子はそれこそ平然と言い返したものである。
  1. 2014/11/03(月) 11:05:48|
  2. 月の裏側・久生
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● 宵 待 妻 【終わりに】

【終わりに】

狭い小部屋で、三人一緒に過ごした半日・・・ それは、私の喜怒哀楽が激しく揺れ動いたひと時でした。



いろんな感情が湧いたり消えたりしましたが、

それらの想いの中で私の心を大きく占めていたものを一つ挙げるとすれば、やっぱり嫉妬だったように思えます。



いくら自分の心を整え、わきまえたたつもりでいても、その場に臨めば、想像以上の狂おしいものが湧いてくるのです。



そして、それは、所有意識や信頼感など、相手への想いが強ければ強いほど抑えが利かなくなってきます。



妻との日々の生活では、どちらがリードしているのかわかりませんが、間違いなく歩調を合わせられるのですが、

今回のような道ならぬ男女のことになると、自分の感情だけが先走りや空回りをして、

合わせることができない想いのズレに苦しめられました。



このように、嫉妬というのは、それを覚える当の本人ですら御し難いのですから、

傍目にみっともなく映っても仕方がないのでしょう。



ただ、私たちはこれからも夫婦関係を続けたいと思っているので、お互いに許し合うことにしています。



妻の場合は、交わりが終わった直後に全ての咎が帳消しにされ、許してもらえるのですが、

私の場合は、無償で許してもらえる訳がなく、妻の自己犠牲に報いる代償を天秤の反対側に乗せなければなりません。



この後、気遣い、労わり、献身など、あらん限りの努力を傾けた後に、恩赦が待っています。



でも、これは私の愚痴なのであって、これまで私に求められるまま他人に体を開いた妻の心中を思えば、

それくらいのことは、為して当然なのでしょう。



このようなことを続けながら、それでいて変わらぬ夫婦愛を保っていきたいのなら、

「 自分のことを分かってほしい 」ではなく、「 相手のことを分かってあげよう 」と、

自分の方から歩み寄ることが大切なのですから・・・




終わりに、どなたの作品か知りませんが、ネットで見つけた、私のお気に入りの詩をご紹介します。



愛…… それは、時に美しく、時に人を狂わせる。

君と過ごした、幾つもの夜。

瞼を閉じれば、色褪せない思い出が、今も鮮明に蘇る。

然し、あの頃の君は、もう此処には居ない。

あるのは、君が残してくれた、温もりと、香りだけだ。

She Is My Wife ……

愛、夢、希望

君と過ごした日々を、俺は、決して忘れはしない。



いつの日か、私にもこんな日が訪れて・・・ She Is … が、She Was … に、変わってしまいそうな気がする。



―完―
  1. 2014/11/03(月) 10:51:11|
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第九章 【小さな喘ぎ】

朝方になって、別に、表通りがうるさくなってきた訳ではありませんが、どことなく妙な気配を感じます。



隣のベッドで、何やら、もそもそ動き出したような・・・ 時計の針を見ると、まだ朝の六時ちょっと前です。



眠ったふりをしている耳に、小声が聞こえてきます。



「 そのままにしておきますか、それとも、起こしましょうか? 」



「 困るわ。 そんなこと、訊かれても・・・ 」



薄目を開けて見ていると、妻が、隣のベッドで南さんに抱きすくめられながら、こちらの方を振り返っています。



「 困るわ 」というその言葉遣いから察するに、再び抱かれることには戸惑いはなさそうですが、

私に悟られないままに、事を済まそうかどうか迷っているように思えます。



( じっとこのまま、狸根入りを装うか? でも、それでは・・?  

南さんは、誠意をもって妻を愛してくれた。 そして、妻も私の期待に応えてくれた。


このまま寝たふりなんて、やってできないことはなかろうが、そんなことをすれば後で自分が後悔するだけだ ) 



私は、布団を押し払って起き上がり、二人に声をかけます。



「 お早いですね。 あっ、別に気にしなくていいですよ。 そのまま、続けていただいて・・・ 」



「 やっと、お目覚めですか?  でも、そんな風に言われるとつらいなあ。 

奥さんの気持ちも、私以上だと思いますが・・・ 」



「 そんなこと 気にせず、なさってください。 せめてものお礼ですから・・・ 」



「 ですが、日付けが変わったんですよ。 “一夜だけ”っていう約束だったと思いますが・・・ 」



「 ですけど、“何回でも”っていうのも約束だったでしょ? 理香、別に構わないだろ? 」



「 いいわ。 好きなようにしていただいて…… 」



この後、妻は南さんと三回目の関係をもった。 もう、目を釘付けにして見入るような気は起こらない。


しばらくすれば、妻が自分のところへ戻ってくるという安心感がそうさせるのか、

ゆったりとした気持ちで眺めることができます。



昨夜と違っていたのは、妻が、「 わたしの言うことも聞いてね 」と南さんに頼んで、

交わりを側臥位にしてもらったこと、それに、ゴムつきのセックスを求めたことだけだ。



隣のベッドで、南さんが妻の後ろに腰を持っていく・・・ こんな姿勢になると、妻の背後の動きが全くわかりません。



( もしかして、私が寝入っている間にも、二人だけが知っている何かがあったのでは・・・? )



一瞬、何の根拠もない猜疑が頭を過りますが、その疑心を打ち消すように、私も横寝になって妻と向き合います。



これで、南さんの抽送の様子はわからなくても、それを受け入れる妻の表情の全てを眺めることができます。



横寝の姿勢で、互いに顏を合わせ、じっと見つめ合う。 

幾分、距離が離れているものの、たまに行う私たちのセックスの時と同じだ。



悦びを届けてくれる相手が変わっても、程度の差こそあれ、妻のセックス時の表情に変わりはありません。



南さんの抽送が始まると顏の表情がうっとりとなってきて、速さが加わってくると多少その顔が歪んできますが、

今朝は声には出さず、じっとこらえています。



南さんから送られてくる腰の動きに応えているのは疑うべくもないのですが、

胸元で小さく手を合わせ、両膝は固く閉じられたままです。




でも、そのうち感じてきて、乱れてしまいそうな妻…… 

悦びが高まってくると、目元を歪ませながら懸命にこらえています。



「 あぁ…… ぁん、ぁん、ぁん …… 」



こんな風に、喘ぎを押し殺している妻の表情を見ていると、可愛さ、健気さ、たまらない愛おしさが湧いてきて、

思わず、胸元で微かに震えている両手を握ってあげたくなりますが、

そんなことをすれば、返って妻の心を乱すだけです。



南さんのスラストを受けているうちに、甘美なものが否応なく湧き立ってくると、

縋りつくような目で私を見つめる妻……



しかし、切なげに送られてくるその眼差しは、私に許しを乞うたり、私を責めたりするものではなくて、

ありのままの自分の姿を、しっかり見届けてほしいと願う妻の思いの表れであることがよくわかります。 



久しぶりに、温かい眼差しを送ってくれた・・・ 


夫の顔が至近距離にあり、じっと見つめられているのだから、あからさまに喘ぐこともできない。


しかし、体の方は素直で、徐々に昂ぶっていく……



すぐ傍に私さえいなかったら、体をよじって悦びの深さを表したいところでしょうが、

今の妻にできることと言えば、体が感じるままを、私の目を見つめることによって訴えることだけなのです。



じっと堪えているうちに、悦びがもうどうにもならないところまできているのでしょうが、

眉根を寄せながら、それを押し隠す妻……



( 我慢なんかしなくていいんだ。 もっと乱れてもいいのに・・・ )



こんな時、じっと耐えるしかないジェンダーを思うと、あまりに可哀そうで、切なくなってきます。



「 ぁぁ…… あっ…! 」



しかし、時おり、急激に襲ってくる快感を扱いかねて、苦し紛れに洩らすよがりの声……



その中に、予想を超えた快感が押し寄せたサプライズがこもっている。




そのうち、交わりもフィニッシュを迎えます。


やっぱり、モーニングセックスは、昨夜のそれと比べるともう一つだったのでしょう。

私とじっと顔を突き合わせていたせいかもしれませんが、妻が昨夜以上に乱れることはありませんでした。



朝方の交わりで、私が驚いたこと・・・

それは、妻が南さんに、避妊具つきのセックスを求めたことです。



私からしてみれば、昨夜・・・ あれほど頑なまでに拒んでいた“最後の一線”の堰を切って、

修復不能のところまで行ってしまったのですから、今さらゴムを付けなくてもいいように思えます。



しかし、前もって、自戒の一線を崩しても「 その日だけ・・・ 」と、固く心に決めていたのでしょう。




その後、私たちは下へ行って、バイキングの朝食をとりました。


三人が、それぞれ気ままな席を選んでテーブルにつきましたが、妻が選んだ席は

昨夕、レストランで待ち合わせした時と同じ・・・ 私の隣です。



朝食の合間に、私が南さんに話しかけます。



「 うちのやつ、どこで習い覚えたのか知らないんですが、自家製味噌を作ってるんですよ 」



「 へぇ~ そうですか? 料理がお上手なのは知っていましたが、そこまで豆々しいんですか? 」



「 どう、理香? こんな味気ない味噌汁じゃなくて、もっとおいしいアサリの味噌汁、

南さんに、つくってあげたいと思うだろ? 」



「 そうね・・ どうします? ほんとにそんな日がやってきたら・・・ 」



「 どうしますかって・・・ 

本当にそんなことにでもなったら、今よりもっとお腹が出てきて、毎日遅刻しそうですよ 」



「おい、おい、南さんの奥さんを追い出してしまうのか? 

それじゃ、その間だけ、俺がお相手させてもらうことにするか 」



こんないい加減な会話が交わされていましたが、それもしばらくの間だけで、

三人そろって無理していることは明らかです。



その後は、そんなに会話が弾むはずがなく、時おり 思い出したような片言の会話が交わされるだけでした。



途中、妻がご飯のお代りを勧めてくれますが、尋ねる順序は南さんが先です。

こんな妻の姿を見ていると、心のスイッチを切り替えて私との生活モードに入ったことがわかります。



帰り際、男二人になった時、南さんがそっと私に言った。



「 昨夜からずっと・・・ つらかったでしょ? 」



「 自分で蒔いた種ですから・・・ おかげ様で、これまでにない経験をさせてもらいました 」



「 でも、これくらいがちょうどいいんじゃないですか? こんなこと、頻繁に行ったら長続きしませんよ 」 



「長続き・・」という言葉が、南さんと私の間柄を指しているのか、妻との関係を指しているのかわかりませんが、

お腹がいっぱいになり、ゆったりとした気分になると、彼の言っていることが正しいように思えます。



「 妻の方は、とても悦んでいたと思いますが・・・ おっしゃる通りかもしれませんね 」



「 あの後、奥さんから・・・ 『 昨夜と違ってごめんなさい 』と言われた時、そう思ったのです。


また、その気になったら声をかけてください。 何より、貴方との仲を壊したくありませんから・・・ 」



「 私の方こそ・・・ また、これに懲りずによろしくお願いします 」



「 それから、前々から貴方に誘いかけていることですが、心が決まりましたらいつでもご連絡ください。

何なら、先程の言葉通りにしていただいても構いませんよ 」



「 いや、決して、奥様のことが気に入らないという訳じゃないのですが・・・

また、そのことについては、いつものところでお話しましょう 」



この言葉を最後に、私たちは別れた。

  1. 2014/11/03(月) 10:49:22|
  2. ● 宵 待 妻・小野まさお
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第八章 【妻の所有権】

南さんが、妻のお尻を股間の方に引き寄せながら、ゆったりしたリズムでピストンを行っていく。



妻は、腰に添えられた手が為すがまま、南さんに下半身を預けきっていますが、

その表情が、何とも言えないほど気持ちよさそうに見えます。



私は、酔いが回ってきたせいもあって、隣のベッドに体を投げ出したい気分ですが、そんな横着なこともできません。

ベッドから少し離れた所にしゃがみ込みながら、二人の姿を見守るばかりです。



「 いいんですよ、理香さん、そのままで…… ご主人が帰って来られたようですけど、気にしなくても・・・ 」



「 はっ、はぁ…ぁ…  また、イっちゃいそう…… 」



愛しい男に言われるままに官能に身を預けていると、うっとりしてきて、ますます感じてしまうのでしょう。


元々、ずっと遡って、抱かれたい男の名を口にした時から、罪の意識や抵抗感なんてあろうはずもないが、

今夜に限っては、すべての行為を受け入れてしまう。



「 あぁ~ぁん、 あぁ……ぁ  いぃ……っ 」



体の奥底から湧きあがってくる快感を堪えきれずに、苦し紛れに洩らす喘ぎの声……



そのうち、しなっていた腰が崩れて、下半身がベッドに沈みそうになりますが、

南さんの両手がそれを許しません。



こんな風に、恍惚の表情で愉悦に浸っている妻の顏を見ていると、私も堪えられなくなってきて、

行き場のない嫉妬と興奮が、そうさせるのでしょう。 

手先が、自然に自分の股間の方に行ってしまいます。



そして、南さんのものが女陰に分け入っていく様に、手指の動きを合わせながら、同じリズムで慰め始めます。



( 妻が、私のこの姿を見たら、どのように思うだろうか?

夫を、そうせざるを得ない状態に追いやってしまったのは自分なのだと罪の意識をもつとは考えにくい。


今は、官能の虜になっていて、私のことなど眼中にないだろうが、きっとそのうち、

失望と蔑みの一瞥を送ってくることだろう。


でも、例え、そうなったとしても構わない。 

妻が、自慰に耽る夫の姿を目にして、さらに妖しく心を震わせてくれるなら・・・ )



南さんが、緩やかな律動を送りながら妻に話しかける。



「 理香さん、今 どんなこと、思っているんですか? 」



「 気持ちよすぎて、あぁ…… 何も考えられないの 」



「 どんな風にいいのか、教えてくれなくちゃ・・・ 」



「 体の芯が痺れてきて… もう、どんなことでもしてあげたくなるの

ん…… あぁ… いぃわ…… すっごく いぃ……… 」



「 どんなことでもしてくれるって本当ですか? どこかで部屋を借りれば、いつでもできますよ 」



「 いつでもなんて…… それは、だめぇ…… 」



「 それじゃ、これから時々逢ってくれますか? 」



「 そんなこと、できっこない… 

もう、しゃべらないで……  このまま、ずっとこうしていたいの 」



今はもう、他人に恥態を晒す羞恥、人倫を踏み外した行為への慄き、すべての煩いから解放されて、

官能の赴くままに悦びを表す妻……


否応なく湧いてくる甘美な快感が、妻の顔を淫らに染めていく・・・



南さんは、妻とのこんな会話を愉しむように、後ろからゆっくりとピストンをしていましたが、

すでに何回かの絶頂を迎えた妻が、より刺激的なセックスを求めているのを感じたのでしょうか、

やがて、緩やかな抽送の合間に荒々しい刺突を加えていきました。



「 あぁ…っ、 わたし、もう、だめ…ぇ  おかしくなっちゃう…… 」



時おり抉るように深く肉茎を突き込むと、膣奥が熱を帯びて締まってくるのがわかるのか、

その蠢きに逆らうように、さらに勢いよく突き立てていく。



「 いっ、いやぁぁぁ…… あぁっ… んんぁぁっ……! 」



情けない話ですが、私はこれまでの妻との営みから、数回浅く突いた後に深く抉るように押し込むリズムが、

妻が一番感じるものだと思っていました。



しかし、今夜の妻の様子から、性感が極まった女には連続して突き立てる荒々しい刺突が、

また別の感覚をもたらすことを思い知らされました。



そうこう思っている間にも、南さんが放つ手荒な抽送は止まりません。


体の芯を太い杭に貫かれるような圧迫感を覚えるのでしょうか、妻の眉根のしわが次第に険しくなってきます。



でも、半開きになった口元を見ていると、顏の表情とは裏腹に、熱く熔けた媚濘は男の貫きに否応なくうねり、

存分に快感を貪っているように見えます。



( あぁ… そんな風にされると、おまえの体の奥からは熱いものがとめどなく溢れ出てくるだろうに………


おまえの体に火をつけ、淫らな女に変えてしまったのはここにいる私なのだ。

おまえが、すべてを忘れ、火照った体を悦びの坩堝に蕩かしたいと願っても是非もない・・・ )



「 んん~っ、あっあぁ…… もう、だめぇっ、 こんなの、続けられたら~っ! 」



「 また、イッちゃうんですか? これから、もっとヨクなると思いますが・・・ 

でも、こっちも、理香さんのが気持ちよすぎて…… 」



( こんなに妻が感じてしまうということは、私がこの部屋に入ってくる前にも、別の体位で交わっていたに違いない。

そうだとすると、南さんもそろそろ限界だろう )



妻自身も願っていることなので、「蹂躙」という言葉は相応しくありませんが、

手ひどい刺突を悦びに変えてしまう妻の姿を目にしていると、私のものも滾ってきて・・・

これ以上は無理だというほどに擦りあげてしまいます。



「 いいっ、いっ…… んぁっ、だめぇっ… また、いっちゃうぅ……!」



南さんも、官能でとろけた媚肉の味わいに性感が急激に上昇していくのか、

欲情を漲らせた男根を突き込む速度を増していく。



その迫力に、かけがえのないものが壊されていくような気がして、息をするのが辛くなってくる・・・



「 小野さん、もうすぐですから、貴方もいっしょに・・・ 」



半端なものを淫している友人に目を向けた南さんが、声をかけてきた。



今まで、長時間の刺突に耐え続けてきた女体も、限界だったのでしょう。

更に、十数回の刺突の後・・・

始末に負えない快感が押し寄せた叫びがあがった。



「あぁぁ……っ ひっ、ひ……ィっ! 」



妻の口から、極みに辿りついた刹那の悲鳴があがると同時に、南さんの両手が妻のお尻を引き寄せ、

自分の股間にぴったり密着させます。



南さんのお尻が固く引き締まり、窄まっていく・・

そして、じっと動きを止め、僅かに引き抜いた後にさらに押し込む。

妻の膣内で、熱いものを噴走らせているのを想像するに充分です。



茎が見えないほどぴっちり嵌め込まれて、私ではない男によって為される射精……


奥深いところが見えないだけに一層なまめかしさがつのり、男の肉茎を受け入れる時以上に、

胸が締めつけられる思いがします。



私の目の前で、埋もれていた怒張が、“ひだ”を押し分けながらそろそろと抜き出されていく・・・


口を覗かせた、小さな秘孔……



途方もない悦びを撒き散らしていたものが抜き去られていくと、妻の体がぐったりとベッドに沈んでいきます。



「はぁ、はっ、はぁぁ…… 」 男が放った精液を、柔らかな膣奥に留めながら余韻に浸る妻……



( あぁ…… おまえは、その名残りをいつまでもそこに留めておきたいと願っているのか?


そのままの姿勢でおれば、私のものとは全てが異なる体液が、

おまえの体に溶け込んでしまうことがわかるだろうに…… )



もう、妻が叫んだ卑猥な言葉を取り立てて、云々する気はありません。

思いを寄せる男と一つに結ばれ、夫の“手染め”とは別色に染め上げられる悦びは、格別のものなのだ。



貫きを受けた痕跡が顕わなのに、その徴が隠蔽された数秒・・・

それは、放たれたものを受け取った妻の悦びと同じくらい、私にとっても、

体の芯が沸騰するかと思われるような数秒でした。



( さぁ、今度は俺の・・・ そこに馴染きった男の射精を受けとってくれ・・ )



私は、傍まで行って、限界に達した肉茎を思いきり引き絞り、想いの精を妻の背中に走らせました。




そのうち、妻の荒かった息が治まり、安息の吐息が漏れてきます。


ベッドに突っ伏しているその姿を見ていると、

何だか、残り火を始末してくれるものを欲しがっているように見えてしまいます。




空白の時間が過ぎ去り、理香がバスルームに向かう。


先程とは違って、一人で浴室に入っていく妻の姿を見ていると、

心を整理する時間を与えてあげようとする南さんの配慮を感じます。



しばらくすると、まだ私が一度も目にしたことがないインナーを身に着けた妻が浴室から戻ってきて、

湯上りの髪を整えます。



そして、すっかり寝支度を整え終えると、南さんが待っているベッドに体をすべらせていく。



前夫であることを自分に言い聞かせている私にとっては、とてもつらい瞬間です。



南さんが待ち受けているところに体を寄せていく妻の仕草が、急ごしらえの夫婦ではなくて、

堂に入っているように見えてしまう。



「 小野さん、そんなソファベッドは止めて、こちらのベッドを使われたらどうですか?

私たちは、ここで一緒に寝ますから・・・ 」



「 こんなところで意地を張ってもつまらないから、そうさせてもらいますか 」



私が隣のベッドに身を横たえると、三人が二つのベッドに分かれて足を伸ばすことになりますが、

妻を真ん中に「川」の字にしてくれたのは南さんの優しさなのです。



おそろいの枕を並べている二人の姿を見ていると、流石に三度目はなさそうに思えますが、

手を伸ばせばすぐ届く距離に愛しい女性がいるのに、手を伸ばせない・・・



私に背を向けて南さんと抱き合っている妻の寝姿を見ていると、胸が押し潰されそうなほどの苦しさを覚えます。



これは、その場を迎えた者だけにしかわからない苦しさで、

お酒が入っているものの、とても“白川夜船”なんて気にはなれません。



有り余るほどの思いが胸に溢れ、語りかけたいことも山ほどあるのに、それを表すことができないのです。



こんなに仲睦まじい二人を隣にすると、別に聞き耳を立てている訳ではありませんが、

二人が交わす小声の会話が妙に耳につき、

何だか、自分の心を鍛えるための修行を積まされているような気さえしてきます。



時折、南さんの手が妻のお尻の方に回ってくるのも気になります。

そして、それ以上に、妻の手がそれをそっと抑えているのはもっと気になります。



私の僻みのせいなのでしょうが、その手の重なりが、南さんの手の動きを止めるためのものではなくて、

火照ったところを手当てしてもらうお礼のように見えてしまう。



こんな経験は初めてで、流石に寝つけません。


交わりはつかの間ですが、一夜ずっと抱きしめて・・となると、妻の所有意識がはたらき、

何だか既得権を奪われたようで、交わりの最中を凌駕した 焼け付くような嫉妬を覚えます。



きっと、夫婦関係と言うのは、ある程度の独占欲があってこそ成り立つ関係なのでしょう。



( こんな二人の間に割って入って、言葉を投げかける勇気なんてとても無い。

朝までまんじりと、時が過ぎるのを待つだけだ )



胸の動悸をゆっくりした呼吸で抑え、苦しさに耐える私を他所に、隣では小声での夫婦の会話が始まります。



「 隣にいるご主人に、話したいこともあるんでしょ? 」



「 あっても、今は 嫌っ…… 」 



「 どうですか? 理香さんさえよければこれから隣へ行って、ご主人を慰めてあげても構いませんよ 」



「 そんなこと、言わないで。 ねっ、このままじっと…… 朝まで抱いていて… 」



「 そう、していてあげますけど、どうせ、朝になったら離れていくんでしょ?

さっきも言ったように、また逢ってもらえますか? 」



「 だって、隣にいる人の前で、うん なんて言えないわ。 南さんも、奥様が待ってるんでしょ? 」



枕を並べてこんな話をしている二人の姿を見ていると、その話に割り込んで、


「 腕枕をしてもらえよ。 そうすると、ぐっすり眠れるんだろ? 」


と、一言、言ってみたい衝動に駆られますが、喉元まで出てきた言葉をぐっと飲み込みます。



それからもしばらく小声の会話が続き、胸が掻きむしられるような想いに苛まれましたが、

慣れない部屋での寝泊まりの上、夕方からの気疲れが拍車をかけたのか、私は瞼が重くなり、

そのうち、睡魔に引きずり込まれるようにうとうととなっていきました。
  1. 2014/11/03(月) 10:47:24|
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第七章 【ほろ苦い酒】

「 理香さん、そんな風にしていると、体が冷えますよ。 一緒に、お風呂に入りましょう 」



歓喜の後に気怠さが訪れてくるのは、男女とも同じなのでしょう。 

二人が連れだって、バスルームに消えていきます。



私はすることもなく、しばらく一人でぼんやりしていましたが、

そのうち、再び三人の顏が揃うと、部屋の中に重苦しい雰囲気が充満します。



南さんとは、お互いがそう思っているように気楽に話せそうなのですが、いざ、妻に対してとなると・・・

遠慮、気遣い、わだかまり等 何だか躊躇われるものがあって…… 気軽に話しかけられないのです。



こうして、一つの部屋に男女三人が籠りっきりになると、都合が悪いことが少なからずあるように思えます。



一つは、温泉場だったら室内がゆったりとしていて、そんなこともないのでしょうが、

狭いホテルの小部屋では、この息づまるような空間から逃げ出したいと思っても、

適当なスペースがないということです。 



それから、もう一つ、三人一緒ってのもどうも・・・ 何をするにしても、具合が悪い。



この部屋の中にはもう一人、妻が思いを寄せる男性がいるのですから、

妻の心中を思うと、今しがた 目にしたことをあからさまに尋ねる訳にもいきません。



いつもだったら、「 想いが叶って、本望だろ? 」と、皮肉交じりの言葉を投げかけたいところですが、

南さんの前で旦那風を吹かして、妻を揶揄することは躊躇われます。



気拙さを振り払うために、冷蔵庫からビールを取り出して、テーブルを囲みます。


時たま、降ってくる南さんの問いかけにも、うつむき加減で答える妻……

南さんの傍らに寄り添ったまま、私と目が合うことを避けるかのように、視線の先をあらぬ方に向けています。



風呂上りで幾分上気したうなじまで、どことなく、いつもと違って見える。



私と言葉を交わそうとしない妻の胸中を察するに・・・ 

私が思っているのと同じように、私に話しかけたいことがあってもためらいがちに遠慮しているのだろうか?



それとも、まだ夜は長いのだ。 

この後も抱かれるに決まっている男性と二人きりになれる時を心待ちにしているのだろうか?



前者の方であってほしいと願いますが、その心の中までは読めません。



部屋の中で、時折、ぽつり、ぽつりと、思い出したような会話が行き交いますが、

それが交わされるのは南さんと妻の間だけで、たまらなくなった私は、二人の話に割って入ります。



「 どうですか? もう少し、飲みましょうか? 」



「 いえ、これ以上飲んで、酔った勢いでというのは、奥さんはもちろん、貴方も望んでおられないでしょう? 」



すぐさま、南さんから明確な返事が返ってきた。 

如何にも、回りくどいことを好まない南さんらしい歯切れの良さだ。



( 確かにその通りだ。 しかし、この重苦しい雰囲気がずっとこのまま続くことには耐えられそうもない。


やっぱり、ここは、私の方から何か切り出して・・・

私の求めに応えてくれた妻に対して、例え、二言、三言でも、労わりの声をかけなければ・・・ )



「 理香、だいじょうぶ? 体の方…… 」



「 う~ん、何とか、もどったみたい…… 」



「 かなり、乱れていたようだけど、あまり無理をするなよ。 次があるんだから…… 」



「 ・・・・ 」



「 どうした? 急に黙りこくって・・・ 気持ち良すぎて、舌が回らなくなったか? 」 



「 そんなこと訊かなくても、ちゃんと見てたんでしょ? 」



「 見てるだけじゃわからないこともあるからな。 

はっきり、言ったらどうだ? “純生”がよかったって・・・ 」



「 そんなこと、聞きたいの? 南さんの前で…… 」



「 南さんだって、おまえの本音を聞きたいと思ってるさ 」



「 私のことでしたら、別に構いませんよ 」



「 じゃ、言ってあげる。 何だか、中の方が温かくなってきて、とっても気持ちよかったわ…… 」



「 ひょっとして、ピル飲んでなくても中に出してもらいたいって思ったほどじゃないのか? 」



「 そうよ。 この前言ったこと、もう、どうでもいいように思えてきたから……

あなたもよかったんでしょう? 思いが叶って…… 」



「 あぁ、存分に愉しんだよ。 今までにないおまえの姿を見させてもらったから 」



「 まあ、まぁ、その辺りにして・・・ 

こうして、三人そろって、以前と同じ時を迎えられたんですから、そのことに乾杯しましょうか? 」



妻との会話が長続きしないのを見かねた南さんが、取りなしてくれます。 



重苦しい雰囲気を振り払おうと、無理して妻に声をかけてみたが、取って付けたような上辺だけの優しさが、

妻の心に響く訳がない。



これは私の横恋慕なのであって、妻にとって今夜の私は、無視されても仕方がない赤の他人なのだ。



しばらくすると、ドアをノックする音が聞こえてルームサービスの軽食が届きますが、

口にする果物の甘みが足らないような気がします。



「 先ほどは、どうも・・・ いい思いをさせていただきました。 

こんなこと、貴方に言うまでもありませんが、奥さんが素敵な女性だってことが改めてわかりましたよ 」



「 そのお礼は、妻に対して言った方がいいでしょう。 随分と、貴方のことが気に入っているようですから 」



「 でも、貴方だからこそ、恥ずかしさを捨てても構わないって思ったんじゃないですか? 」



「 そうですかねぇ? ご本人に聞いてみないと・・・ 」



「 理香さん、ご主人に言ってあげたらどうですか? やっぱり、あなたの方がいいって・・? 」



「 二人して、私を困らせたいのね。 そんな意地悪言って……  

でも、今夜はわたし、ずっと南さんと一緒よ…… 」



こんな妻の言葉を聞いていると、この後、確実に待っている二度目の交わりのことが頭に思い浮かんできて、

不安こそありませんが、胸が塞がれたような重苦しさを覚えます。



どうも、こうして三人一緒にいても・・・

何だか、余り親しくない知人の家に止む無く泊ったような感じで、居心地が良かろうはずがない。



( 二人にとって、私の前では話しづらいこともあるだろうし、私にしても、二人が仲睦まじくしている姿を

これ以上見たくない。


ここは、アルコールの力を借りて、頭を麻痺させてしまうに限る )



「 南さん、妻が思っているように、今夜は私、あなた方にとって他人ですので、好きなようにさせていただけませんか? 

ちょっと、下へ行って飲んできたいのですが・・・ 」



「 そうですか? そんな気持ちになるのも当然でしょうから、無理に引き留め
はしませんが・・・

何時頃 戻ってこられます? キーをお渡しておきますから 」



「 多分、十一時過ぎになるかな? そんなに、深酒するつもりはありませんから・・・ 」



二人が私の存在を気にせず、心ゆくまで過ごせるように、私は妻への未練を断ち切りながら部屋を出た。




ホテルの二階にあるバーに行って、一人でカウンターに座る。

「 何に、なさいます? 」・・・ 声をかけてきたママの言葉が耳に優しく響きますが、

胸に渦巻く狂おしい想いを静めるには至りません。



冷酒のグラスをじっと見つめていると、先程まで部屋の中で繰り広げられていた淫らな光景が

断片的に思い浮かんできます。



私が読んだ“物の本”には、「男の欲望は、一体化と所有を最終目標とする」と書かれていた。



その通りだとすれば、男のセックスは、女の体に所有者としての刻印を刻むことになる。

そして、この論理を対極の性に当てはめれば、女性のセックスは所有されることに悦びを覚えなければならない。



しかし、都合の悪いことにそれは複雑極まりなく、このまま死んでもいいと思うほどの快感から、

二度と思い出したくない嫌悪まで、限りなく深い感受性の広がりをもっている
らしい。



いずれにせよ女性は、結ばれている男と一つになって、うっとりとなっている時に所有される幸せを感じるらしく、

その思いの深さは、相手によって大きく左右されるようだ。



余り、喜ぶべきことではないが、妻の性感はとりわけ感度がいいのだろうか?

所有したいし、されてみたい・・・ それほど、南さんとは体の相性がぴったりなのだ。



それから、一つ、妻にわかってほしいことがある。 


交わりの最中は当然ながら、交わりが終わった後も、私が妻に声をかけないのは、

もし、そんなことをすれば、妻の方が困ってしまうだろうと思うからだ。



確かに、二人が互いの距離を縮めてしまって、そこに私が割って入る隙間がないのも事実だが、

それ以上に、妻のことが愛おしく思えるから、優しい言葉をかけられないのだ。



しかしながら、私のこの思いは、一方通行の片思いのようなもので、どんなに妻のことを思っても・・・

本人が舞い上がってしまっているのだから、私の沈黙が、愛しさに起因していることなんてわかろうはずがない。



歓びの風に吹き流されている間は、想いの矢印が、生活の匂いがする男の方へ向くなんてことは有り得ないのだ。



「 一人で飲むのが、お好きですか? 」



「 えぇ… 急に、飲みたくなっちゃって・・・ 」



「 でも、その割には、余りお酒がすすんでいないように見えますが・・・ 」



カウンターの片隅で、ひっそり、グラスを傾けている私をママが気遣ってくれますが、

気もそぞろに、思いは二人が籠る愛の部屋へ翔けていく・・・



相棒もおらず、一人で飲む酒のほろ苦さ・・・ あれこれ、物思いに耽っていると時間がたつのが思いのほか早い。



そろそろ切り上げ時だが、私が部屋を出てから一時間半は経っている。


私は、明日になればまた、これまで通りの夫婦に戻れるが、南さんにすれば一夜限りの契りなのだ。



彼に、そのことをお願いした際、



「 何回でも、奥さんを抱かせていただいてよろしいのですね 」



と念を押されたことを覚えているが、二度目の交わりが始まっていても別に不思議ではない。 


明日の朝まで、妻は、一体 何回抱かれるのだろう?



先程から随分と・・・ これだけ気を揉んでしまうと、多分、明日の朝目覚めても、

以前、隣室のドアから現れた妻の顏を見た時のような胸の震えは感じないだろう。



( 自分で決めたことだから、仕方がない。 さぁ、部屋に帰って・・・

しばらく寝苦しいひと時を過ごすとするか。


今の二人がどんな風になっているのか知らないが、二度目の行為が行われている覚悟だけはしておかなければならない )



私は足取りも重く、元妻がいる部屋へ向かいました。




ルームナンバー309…… 部屋の番号を確かめる。 この部屋が今の二人の閨室なのだ・・・

ベージュ色のドアが閉ざされて、来訪者の侵入を固く拒んでいるように見える。


部屋の前で足を止め、一呼吸 整えてからカードを差し込む。



そっと履物を置き、絨毯が敷かれた床を足音が立たないようにして、ドア口のスペースを進んでいく



室内灯の照度が落としてある。 

最初に、私の耳に入って来たのは、低く、尾を引くように洩れる甘美な喘ぎ……

部屋の中が、香水と体臭が混じりあったような甘い香りで満ちている。



ベッドが見えるところまで近づいていって眼をやると、妻がベッドに顔を伏せており、腰だけがあがっている。


そのお尻を、南さんが手元へ引き寄せています。



ほんのりした灯りの下で、腰骨をがっしりと掴まれ、ゆらゆら揺れる白い肢体……



こんな光景を目にすると、前もって予想していたこととは言え、五感のいくつかを一度に襲ってきた衝撃は例えようもなく、

私は、固唾を飲んで見守るばかりです。



淫らな艶を帯びた肉茎が、やや下向き加減の角度をとって、双丘の谷間に抜き差しされていく…



こんな南さんの姿を見ていると、二度目の交わりを私の帰りに合わせたのでは・・?と思ってしまいます。



私の帰りに気づいた妻の視線がチラリと私の方へ向けられましたが、無言のうちに顏が背けられ、

すぐさま、その顔が髪の間に隠されていきました。



( こんな場面は、妻にとっても、初めてのはずだ。 

突然、侵入者が枕元に立ち、恥態のすべてがその目に晒されたのだから、

少しくらい狼狽えてくれてもよさそうなものだが・・・・ )



「 戻られましたか? 悪いんですけど、好きなようにさせていただいています 」



私の帰りに気づいた南さんから声が届くが、返す言葉もない。 



( 今夜は、お情けで“他人妻”の傍に居させてもらうのだ。

何を言われても、この先どんなことが起ころうとも、文句は言えない )
  1. 2014/11/03(月) 10:46:07|
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第六章 【白い痕跡】

初めに、お許しをいただきたいのですが、前章から此処に至るまで中途のことは割愛して・・・

と言うのは、妻が、私とは全てが異なる他人から施された射精……



長い間、持ち望んでいたことが現実になり、

私の目の前でなされた最終行為は、強烈過ぎるインパクトをもって私の心に焼きつきました。



確か、途中、体位を変えたぐらいのことは覚えていますが、傍で見ていた私が興奮し過ぎたせいなのでしょうが、

そこに至るまでのことをはっきりと覚えていないのです。



それに、私がこの件を書いているのは、その日から二週間ばかり経ってからです。

めくるめく興奮も日が経てば冷めてきて、その時の場面も色あせてきます。



とにかく、これまでよく似たことを経験してきて、

その都度、妻が異なる音色を奏でてくれることも嬉しかったのですが、

愛する妻の秘口から零れ堕ちる他人の精液を目にした時の興奮は、これまでの比ではありませんでした。




その後の部屋の中の場面を辿っていきますが、此処に至るまで、当事者たちと傍観者との会話は全くなく、

私は、蚊帳の外から見守るばかりです。



セックスとは、本来、心を許し合う男女が体を一つにして情けを交わすものですから、

第三者がこうなってしまうのもやむを得ないのでしょう。



このような状態になることは、予め、自分でも予想できたことで、恨みがましいことを言うつもりはありませんが、

それでも一抹の淋しいものがあります。



( 淫らな女になりきってほしいと妻に言いきったのだから、未練がましいことを言えた筋合いじゃないが、

せめて、形ばかりの言葉でいいから、戸籍上の夫に声をかけてほしい・・・ )



そう願いながらも、男に身を委ね、ただ、ひたすら耐えるしかない受け身の性のことを思えば、

そんなところにまで思いが及ばなくても当然かもしれないと思い直します。



( 昔、ふと立ち寄った辻角の本屋で立ち読みしたことがある。

その本の内容通りだとすれば、女性がセックス時に感じる幸せは、結ばれている相手からのみ感じるもので、

本能的に、他者による支配や所有は拒絶したくなるらしい。


そう考えれば、妻が悦びの最中に、私のことなど思い出すはずがないのだ )




性交という生殖行為の最後に行きつくところ・・・

それは、必然的に、結ばれている男の精を受け入れること。



ぴったりと体を重ね、男の貫きに身をまかせながら、頂に昇りつめていこうとする妻・・・


正常位なので腰を打ち付ける音こそ聞こえませんが、鈍い白色灯の下で、切ない喘ぎだけが聞こえてきます。



「 はっ、あぁ……んっ、すっごく… いぃ……っ… 」



「 そんな風に言ってくれると嬉しいですね。 でも、もっとよくしてほしいんでしょ? 」



「 んくうぅ…… そう、してぇ~ 」 



大きく開かれた妻の股間に動きを刻む南さんの肉茎が激しさを加え、その刺突の回数を増やしていくと、

交わりも佳境に入ってきます。



「 あぁぁ…… やっ、こんなの、いやぁ……! 」



今、感じているものよりも更なる高みへ辿りつきたいと、ぬめった襞で男のものを絞め上げていくと、

極めつけの…… 予想を超える快感が生まれるのでしょう。


口から出てくる言葉とは裏腹に、理香が、オルガスムスへ昇りつめていく。



「 小野さん、そんな所におられないで、こちらへ来られたらどうですか? 遠慮されずに・・・ 」



私を労わる優しい声が、南さんから届いた。



私が近くに来るのを待っていた南さんが、枕を妻の背中に押しあてる。

そして、折れ曲がったひざの間に肘を立てると、そのまま、体を前につんのめらせていく……



こんな格好になると、結ばれている男女の性器が丸見えになります。

十分な溜めをつくり、斜め下に向かって打ち込まれる剛茎・・・



「 ああぁ……っ、 ちょ、ちょっと待って……っ、 そんな風にされたら…… 」



南さんが、妻の言葉などお構いなしに、律動の合間に大きく抉るような抽送を繰り返していくと、

否が応にも官能が増していく。



急激に高まる快感をこらえきれなくなった妻は顏を左右に振っていますが、南さんの動きから察すると、

そのまま絶頂を迎えることはまだ許されないようです。



南さんが、さらに力強く男根を突き込んでいく。

すると、妻が、もはや耐えきれないとばかりに「 だめっ! 」と叫び、南さんにしがみつく。



際限なく沸き立つ甘美な快感……  宙に浮いた両脚が揺れている。



「 理香さん、ここに来て心変わりはないでしょうが、一応、念のために・・・ 

本当にいいんですね? このまま中に出しても・・・ 」



「 あぁ…ぁ いいの…  出してっ、そのまま、出してぇ……! 」



「 どの辺りか、ちゃんと言ってくれなくちゃ・・・ 」



「 奥の、奥の方の感じるところでぇ……  ぁあぁぁ…… そこ… 」



「 理香さん、ご主人が傍にいるのに、そんなに感じてしまっていいんですか? 」



「 あぁ……っ、 あなた、わたし、もうだめ… いっちゃう、イッちゃう─ぅっ! 」



妻は、すぐ傍にいる私のことなどお構いなしに、淫らな言葉を口にした。

それほど、上せあがっているのだ。



それに、“あなた”とは、いつも聞き慣れた言葉だけに、私のことを指しているのだと思いたいが、

深く折り曲げられた体を男に預けて、喜悦を届けてくれる男の貫きを余すところなく受け入れている姿を見ていると、

そうではないように思えます。



体の奥にズンとこたえる貫きが、ゾクゾクした怖気混じりの快感を運んでくると、夢中でシーツを掴んでしまう。



こんな風に、頭も体も快感一色に塗りつぶされると、このまま絶頂が続くこと以外、

何も考えられなくなってしまうのでしょう。



「 あぁ…ぁ~ ください…… お願い、もう出してぇ…… 」



快楽と哀願が入り混じった 切羽づまった声…… 

私の耳には、その声が絶頂を嚥下しているように聞こえます。



( あぁ… そんなに感じてしまって…… 恋火を燃やす男から受ける貫きは、それほど極まりないものなのか… )



よくよく、自制しているつもりなのに、妻のこんな言葉を聞くと恨めしくなってきます。



そのうち、妻の上体が ピクっ、ピクっと震えだし、まるで酸欠状態に陥ったかのように、

唇がわなわなと震えてくる。



私が、今まで妻に与えることの出来なかった愉悦…… 妻は今、自分を貫いている男からそれを感じているのだ。



この甘苦しい至福のひと時が続くためなら、私は今、どんな大きな代償をも惜しまないでしょう。



「 ああぁ…っ もう、だめぇ……! お願い、早く出して~ぇ…… 」



妻が、射精を求める言葉を叫んだ。

きっと妻にも、南さんが全精力を込めてスラストしていることから、程なく射精の瞬間を迎えることがわかるのでしょう。



その言葉を聞いた南さんが、妻の名前を呼びながら、怒張したものをひとしきり激しく熔濘の中に打ち込んでいく…



( もうすぐだ…  寸時の後に、私のものとは全くかけ離れたDNAをもつ精液が、妻の膣奥深く放たれるのだ。


そして、それを妻は……  悦びの極みの中で、受け入れてしまうのだ… )



「 あぁ~… もう、我慢できない… 」



「 ああ……ぁっ…… きて、きてっ… いっぱい出してぇ……! 」



南さんが、妻の下半身を押し潰すように、ぐうっと、ひと際深く腰を入れた。


気が遠くなるほどの快感で、数度に及ぶ絶頂を余儀なくされた女陰が、ほぼ、すべてを収めきり、

受精モードに入っていく。



「 あぁ… ぁっ…… あぁぁ…… 」



その刹那、妻が歓喜とも困惑ともつかない窮境の声をあげた。


のど奥から洩れるその声が、強張りが最奥まで届いたのを伝える声なのか、

あるいは、数限りなく擦り上げられた膣奥にどっと熱いものがあふれ出るのを感じた声なのか、

男の私にはわからない。



初めて、近くで目にする他人の射精…… 

艶めかしいフレームに収まったものが、じっと動きを止める。

ビクっ、ビクっ…… 陰茎の裏が特有の収縮を繰り返すと、海綿体を伝う管が時に太くなる。



( 私が求めてやまなかったものが、 あぁ… ここから理香の膣内に……



放心のひと時……  頭の芯が痺れるような真空の時間…… 



「 さぁ、小野さん、これが見たかったんでしょ? ゆっくりと抜きますから・・・ 」



( はっ、はぁ…… もうすぐこの後に、私が待ち望んでいた光景が…… )



不承ながらも、私の申し出を受け入れてくれた妻に対して、今の私ができることと言えば、

胸が張り裂けそうなほどの想いで、他人が果てた残痕を見つめることしかないのです。



息を殺し、その秘口から吐精の滴りが尾を引くことを予想しながら、結合部をじっと見入る。



筋を際立たせた強張りが、そろそろと引き抜かれていく……

次第に茎の全長が露わになってきて、最後に大きく張り詰めた亀頭が現れた。



媚肉の合わせ目が、広がっているのがはっきり見て取れる。

その間にできた小さな穿ちを食い入るように眺めていたが、暫くは何の兆しもない。



やがて、南さんに促されて妻が背中を起こすと、下向き加減の秘口から、丸みを帯びた滴りが垂れ落ちてきた。



小さく穿たれた秘孔から、一筋、緩やかな尾を引きながら垂れ落ちる他人の精液…… 

これまで幾夜も睦み合い、愛着のほど計り知れないものが、完膚なきまでに壊された証だ。



私の興奮は頂点に達しています。 

胸が切り裂かれるような現実を目の当たりにして、本音を言えば、もっと真近に行って

妻の秘所を大きく広げてみたいほどです。



しかし、そんなことはいくら夫婦と言っても憚り多く、できることではありません。



南さんにしても、そんなことをして妻にそっぽを向かれ、想われ人の特権をふいにするのは、

ご免こうむりたいに決まっています。



そのうち、南さんが妻の耳元でそっとささやいた。



「 さぁ、理香さん、ご主人が待ち望んでいたものですよ。 貴女も見てあげなくちゃ・・・ 」



南さんに促された妻が、荒い息を次ぎながら、視線の先を自分の股間に向けますが・・・

その目は虚ろで、そんなこと、どうでもいいように思っている風に見えます。


まるで、自分の体液の一部が流れ出ただけと言わんばかりに・・・



私にとっては、胸を掻き毟られるほどに狂おしい痕跡ですが、妻にとっては自分を慈しんでくれた印なのです。



我が身に随喜をもたらしてくれた愛しい男の体液を、妻が自分のものと思っても不思議ではないのでしょう。



今、この時ばかりは、互いの思いが大きく乖離していることは間違いなさそうです。



( ああ…… これが、私の待ち望んでいたことだったのだ…… 


妻に、気が遠くなるほどの悦びをもたらした他人の精液… それを、おまえは恍惚の悦びの中で受け入れたのか?



私のものとは似ても似つかぬ体液が、一旦、おまえの体の中に沁み込んだとなると、

最早、私と他人を識別するものは、何もない…… )



妻が随分と遠くへ行ってしまったような気がして心が痛みますが、この感情の中には

決して後悔の気持ちは含まれてはいません。



私は、垂れ落ちた白い跡形を見つめながら、

妻と他人の間で行われた、金輪際、消すことが出来ない事実を噛みしめていました。




しばらくは、息が詰まるほどの極度の興奮に見舞われましたが、崩悦の訪れは意外に早く、

歓びは徐々に遠ざかっていきます。



その刹那、胸が押し潰されるほどの興奮を覚えたものが、あれほど、狂おしい思いを込めて見届けたものが・・・ 

今は単なる残渣にしか思えない。


決して、想いが叶った満足感や本懐を遂げた成就感なんてものはありません。



今 私の心に溢れるものは、これまで大切に温めてきたものを失ってしまったという喪失感、

そして、妻にポツンと見捨てられたような疎外感、

それでいて、妻に対する溢れんばかりの愛しさなのです。



頭の中で、このようなことを思っている間も、心地よい脱力感に身を委ね、

退廃的な妖しさを漂わせている妻の姿が目に入ってきます。



俗に、「去る者は、日々に疎し」と言われますが、今この時、二人の傍に呆けたようにしゃがみ込んでいる私は、

間違いなく妻から遠ざけられ、そして、疎まれているように思えます。 



今風の言葉で言えば、妻にとって今の私は“ウザい”存在なのだ。




欣幸のひと時が過ぎ去り、部屋の中に静寂が訪れますが、

二人は猶も、火照った体を癒し合うように抱き合っています。



微かな言葉を交わしながらの抱擁には、悦びを共有した者だけがもつ気やすさがあふれていますが、

私は、そんな二人の姿を見ても、何だか、燃え尽きてしまったような感じで、全く嫉妬を覚えません。



とりわけ、南さんに対しては、寛大な気持ちになれます。 極端に言えば、感謝の気持ちすら覚えてしまうのです。



( この前、私が、南さんに言った言葉……


「 あなただったら、『どうぞ、お好きなように・・』って言っても構わないような気がしてきますから不思議ですね 」


こんな思いの延長線上に、今の思いがあるのかもしれない )

  1. 2014/11/03(月) 10:44:45|
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第五章 【夜に咲く花】

甘い口づけを交わしていた二人の体が解れ、離れ際に、南さんが妻にささやきかけます。



「 そろそろ始めましょうか… 」


「 だって、お風呂に入ってからじゃないと…… 」


「 いいじゃないですか? 後で、ゆっくり入れますから・・・ 」



南さんのこんな妖しい言葉を聞くと、胸が震えてきます。

かけ布団をベッドから摺り下ろした南さんが、「 さぁ、こっちへ… 」と妻に声をかけます。



その声に促され、ブラウスとスカートを脱ぎ終えた妻が、私のことなどそ知らぬ風で、

南さんが待ち受けているベッドへ歩んでいく。



南さんの隣に身を横たえると、白いキャミソールの中で、女体の徴を示す胸とお尻のふくらみが際立って見えます。



( あれほど願ってやまなかったことが、今から始まるのだ……

時を経ずして妻は、その下に包み隠したものを露わにして、男の愛撫に身を委ねるのだ…… )



やがて、南さんの手が、夫にしかできないような自然体で肩ひもを外し、その手が下の方に伸びていく……

すると、妻が、もどかしそうにキャミを下ろし、脚を抜きあげていきます。



そのうち、お腹を這っていた南さんの手が、ショーツを掻い潜ってさらにその下に滑り込んでいく。



「あっ、 あぁ…っ 」



薄布で覆われた谷間のことはよくわかりませんが、恐らく、潤んだところをなぞられたのでしょう。


その声とともに、妻の首がガクンと後ろに仰け反って、

早くもこんな前戯の段階から感じてしまうことに慄くように、短い叫びをあげました。



しかし、見ていると、自分でも気づかないうちに妻の手が、それを拒むというよりその続きを求めるように

南さんのそれに重なっていきます。



追っつけ、妻のショーツが足首から抜け落ちると、ふっくらした陰丘が露わになっていきますが、

こんな風に、普段は見ることができない女の徴がベールを剥がされるのを見ていると、

それが、いつもは慎ましやかに隠されているものだけに、妻のものと言えども煽情をそそられてしまいます。



秘芯に顔を沈めている南さんの愛撫に腰をくねくね動かしながら、内腿の筋をピーンと張らせる妻……


早くもその目にしわが寄ってきて…… 

こんな妻の姿を見れば、更なる愛撫を待ち望んでいることが一目でわかります。



やがて、南さんの指先が、秘芯の合わせ目にのぞくパールピンクのつぼみをまさぐっていく……



「 あぁっ…… だめぇ~っ! 」



最も敏感な部分から、急激に湧き立つ快感を抑えきれなくなった妻が、小さな悲鳴をあげた。



「 理香さんも、やっぱり、ここが…… 一番、感じるんですか? 」



「 ああぁ… そんな風にすると… ねっ、そっとさわって 」



「 もっと前から、弄って欲しかったんじゃないですか? 」



「 うぅ~ん? わかんない…… 」



「 でも・・・ 腰がこんなに動いていますよ 」



「 そんなこと、言わないで…  あっ、あぁぁ……っ! 」



妻は、程なく貫きを受ける男の目に恥部を晒す淫らさに恍惚となっていて、

後ろの方で、しゃがみ込んでいる私の方など見向きもしません。



私にしても、波打つ白い下腹に続くふくよかな稜線をのぞくなんてことは、ここしばらくなかったことです。



( ゾクゾクするような怖気混じりの快感に身を委ねているうちに、

それが、まだ何もされていないところにまで伝わっていって、膣奥に、

じわ~っとした熱いものを感じているのだろう )



「 何だか、この前より、更に感度がよくなったようですね 」



「 そんなことない…… 南さんのせいよ。 あぁ… そんな…… 」 



「 “南さん”じゃないでしょ? 今夜は、“あなた”って呼んでほしいな 」



誰に憚ることもない正銘の夫が、興奮しきっている妻の淫裂をゆっくり押し広げ、その窪みに舌を這わせていく・・・



妻の切ない喘ぎが甲高い叫びに変わったのは、南さんの舌先が股間の上の方に移った時でした。



「 ん~うぅっ… あぁ…… だめっ、あっ、あぁぁ……! 」



こんな風にされると、女体のツボを抉られるような甘い痺れが下半身いっぱいに広がっていくのか、

妻の口から、快感が急激に昂じてくる時の叫びがあがり、身体を浮き上がらせようとします。 



( 女性の陰核の快感が、異様に強いことはわかっている。

そこを舌先で愛撫されると、もう抗おうとする意思はすべて掻き消えて、

男に支配されるまま、ただひたすら絶頂に向かって昇りつめていきたいと願ってしまうのだろう )



狂おしげに股間をよじっている妻の姿を見ていると・・・

『 こんなこと続ければ、妻の関心が別の男に移っていくだけですよ 』


南さんが言った言葉が、ずっしりと私の胸に圧しかかってきます。




そのうち、ひとしきり妻の股間に唇を這わせていた南さんが、体を起き上がらせ、妻に囁きかけますが、

流石に、そのことを心得ていて、フェラを要求しません。



「 理香さんも、そろそろ欲しいんでしょ? 

ご主人の前で気が引けるでしょうが、私のものも馴染むようにしていただけませんか? 」



「 うぅ~ん、もう、こんなになってるのに…… これ以上、大きくなるとこわいわ… 」



「 男は、みんな・・・ 好きな女性の手で弄ってもらうのが嬉しいんですよ 」



「 そ…う?  ちょっと、待ってね… 」



いそいそと、南さんの下半身の方へ体を寄せていく妻……

その裸身が、適当に足を開いた南さんの股間に入ると、妻の姿勢が私から見て後ろ向きになります。



ひざまずき、前屈みになっていく後ろ姿を見ていると、お尻の谷間に色づく縦長の経線が目に入ってきます。



長い間待ち望んでいたことがもうすぐ我が身に施され、先程をはるかに凌ぐ悦びを期待しているのか……

そのぷっくりした切れ込みが息づいて、嬉々としているように見えてしまう。



男の印を手にした妻が、緩やかな上下の動きをフレナムに加え始めました。 

まるで、これから自分の中に押し入ってくるものを愛おしむように……



愛しい男に言われたことともなると、夢中になってしまうのか、

後ろにいる私のことなど、全く思いの中に入っていないようです。



もし何か、妻が思い浮かべるものがあるとすれば、それは・・・ 

今、手にしているものを我が身に迎え入れ、体をくねらせている自分の姿だけなのでしょう。



丸めた手指を動かす度に、茎と一線を画すグランスの彫が深くなっていく。

次第に硬さを増す肉茎と、妖しい艶を帯び、赤黒く張り詰めていく亀頭……



(あぁ…… もうすぐ、あれが理香の中に……… )



次第に猛々しくなっていく他人の勃起が私の目の先で誇示されると、

流石に胸が押し潰されそうな気持ちになってきます。



やがて、南さんが膝を折り曲げ、股間を目いっぱいに開きながら、下腹部を陰所に近づけていく。


自分の方へ覆いかぶさってくる南さんを下から見上げる妻の視線も、心もち潤んでいる。



「 挿れますよ。  いいですか? 」



「 いいゎ…… 」  



理香が、ぽっつりとつぶやいた。


二人の恥態を眺めている私の位置は、ベッドのやや斜め後ろ・・・ 


この位置からでは、南さんが上体を起こしている限り、逞しい上半身だけが際立って殆んど何も見えません。



それでも、南さんが妻の腰脇に手をついて上体を前に傾けていくと、

股間の隙間から、膨れあがった睾丸とそこに根を張る陰茎、それに女陰の一部が見えてきます。



南さんが、片手で肉茎の角度を整えながら、大きく張り詰めた亀頭をゆっくりと秘口に宛がっていく……


すると、妻もその緩慢な動きに応え、膣口で感じるものを迎え入れようと僅かに腰を浮かせる……



傍で佇む私に、「 しっかり、手を握っていて…… 」と囁いたのは、かなり以前のことだ。 

潤んだような眼差しで、私の許しを求めてきた姿も今は無い。



( 愛しい男に抱かれ、ましてや、夫がそのことを望んでいるとなると、すべての恥じらいが消えてしまって、

夫への背徳を自責する気持ちなんて、これっぽっちも残っていないのだろう )



やおら、南さんがギュンと反り返った強張りを突き出していくと・・・

理香が、小さくひとつ、切ない音色の喘ぎを洩らした……



「やっ、 あぁっ…… う… くぅぅ…… 」



声にならないような喘ぎを聞けば、強張りがゆっくりと膣口を押し開き、

奥深いところにまで達したことは 容易に想像できます。



(この、入ってくる瞬間・・ もどかしさを覚えていたところに、やっと待ち焦がれていたものが届いた感じ・・・

それこそが、妻が待ち望んでいた瞬間なのかもしれない )



「 あぁ… 動かないで、そのままじっとしててっ… 」



私の目には、南さんの背中にしがみつこうとする妻の手が、泣きたいほどの幸せを訴えているように映ります。



そのように繋がったままでじっと動きを止めているのは、これから始まる交わりで、

我を忘れてしまうのが嫌なのでしょう。



相愛の男性と体を一つにする歓び…… じんわり伝わってくる肌の温もり……

陶酔の時が、つかの間であってほしくないと願っても当然です。



「 理香さん、もうちょっとだけ、つながりを深くしましょう。 じっと、そのままでいてくださいね 」



南さんが、妻の体の奥深いところまで、じわじわ茎の先を滑らせていく。


苦しいほどの大きさのそれも、幾多の悦びを知った妻の性器は徐々に受け入れてしまう。



「 はぁ……ん 入ってくる~ぅ… おっ、おっきい…… んくっ、あぁぁ…… 」



胎内に収めきってしまった肉茎に圧倒的な量感を感じるのか、妻が、苦痛混じりの喘ぎを漏らしました。



「 だいじょうぶですよ。 もう、ほとんど入りましたから・・・ 」



「 はあぁ…… はっ、はぁ~…… 」



一つに結ばれた相手を確かめるように、体を起き上がらせ、両手を伸ばして南さんの肩を抱きしめる理香……


口を半開きにしながら、熱い喘ぎを繰り返しています。



しかし、程なく、大きく広げられた両脚の中心に向かって南さんの抽送が始まると、

しばらくの間はその動きに耐えることができますが、

そのうち、肉茎の絶妙な抉りに官能を掻き立てられると、首を左右に振りながら喘ぎ始めます。



「 ぅう~ん…… あぁ…ぁ、 南さん、いぃ……… 」



南さんの体の陰に隠れて、私が眺めている位置から二人の交わりの接点を見るのは不可能ですが、

妻が、極端に両脚を開かれた姿勢を気にも留めず、抽送の動きに合わせるようにしているのを見れば、

肉茎を少しでも深く受け入れようとしていることがわかります。



そのうち、体の奥深いところから蕩けるような快感が湧いてくるのか、腰がひとりでによがりはじめていく……



こんな妻の姿を眺めていると、自然と私も、じ~っと息を潜めていることが多くなってきて、

時々、大きく息を吸い込みます。



「 ああ…っ、 だ、だめぇ…… 体がおかしくなっちゃう…… 」



( 女体の深奥はよくわからないが、あんな風に腰をくねらせてしまうのは、

今味わっている快感が凄すぎて、さらなる高みへ昇るのが怖いのだろうか?


それとも、今のそれよりもう少しだけ・・・ 

より、甘美な快感が駆けあがってくるのを待っているのだろうか? )



イギリスの思想家、サティシュ・クマールの言葉に因れば、

「 もっと心地よく…… もっと満足したい…… 」という人間の利便性追求には限りがなく、

その欲望の起こりは、すべてエゴにあるらしい。



セックスにおいても、まったく同じように思える。


想像する限りですが、自分の意志では抗い難い快感が膣内に広がると、

一度、堰を切った快楽のうねりはもう止められず、

腰を合わせる度に、とろけるような心地よさが全身を覆っていく……


するとまた、より強い刺激への渇望のエゴが湧いてくるのでしょう。



こんな風に、男の刺突に喘いでいる妻の姿を目にしていると、

これまでだったら、狂おしいばかりの嫉妬、胸が押し潰されるような圧迫感を覚えたものですが、


今夜は、南さんが、“夫”であることを、何度も自分に言い聞かせている所為でしょうか、


思っていたよりもすんなりと、妻の恥態を受け入れることができます。

  1. 2014/11/03(月) 10:43:08|
  2. ● 宵 待 妻・小野まさお
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第四章 【宵 待 妻】

南さんとの打ち合わせが終わってから一週間が過ぎ、私にとって念願の日が訪れます。 


今日は土曜日。 朝起きて外を見やると、あいにくの雨模様・・・ しとしと、細かい雨が降っています。



先日来、全国各地で大雨注意報が出ていたので仕方ありませんが、部屋の中にいても肌寒いほどです。


うっとうしい鈍色の空に、じと~っとした湿っぽさ・・・ 

何だか、心の中で引き摺っている私の後ろめたい気持ちにぴったりのような気がします。



窓を開け、新聞を広げていると、台所から匂ってくる焼き魚とネギの香り・・・

相も変らぬ朝食前のひとコマですが、トントンという包丁の音にしみじみとしたものを感じます。



( 二 ~ 三日前に食べた魚もおいしかったが、今日の朝食はシメサバの炙りか、 ハマチ焼きか?

いつもながら食べ物は、どこで誰と食べるよりも、やっぱり、妻がつくってくれた手料理に限る・・・ )



でも、心なしか、台所から聞こえてくる包丁の音が、普段より小気味よく感じられるのは気のせいでしょうか?



まさか、うきうきルンルンではないと思いますが、私が思っているのと同じように妻にしても、

今夜のことが、ふっと脳裏をかすめているに違いありません。



しかし、面と向かって、そのことは口にしない方がいいのでしょう。

今夜のことは、もう十分に、お互いが合点しているはずなのですから・・・




待ち合わせの場所は、私たちの住んでいる所から車で一時間ばかり離れた街の住宅街。


ここにあるレストランで夕食を済ませてから、その後車をちょっと走らせて、ホテルへ向かうことになっています。



南さんを待っている間、色々、妻が私に話しかけてきますが、心の中には重たいものがあって、

口からは生返事しか出てきません。


ホテルの部屋に入ったら、今、私の隣にいる妻の傍には南さんがいることになるのだと思うと、

自然と、黙りこみたくなってしまうのです。



恐らく、妻にしても、気になることがいっぱいあると思いますが、

あれこれ 無理して私に話しかけてくるところを見ていると、私より数段、人間ができているとしか思えません。




妻との時間を持て余しているうちに、

「 やあ、お待たせ 」・・・ ようやく、南さんがにっこり笑いながらやってきました。



パールライラックのシャツに、バイオレット色のジャケットをひっかけています。 

妻好みの色をさらっと着こなしているところを見ると、密かに期するところがあるのでしょう。



「 お久しぶりです。 お元気そうで・・・ 」



私たちの向かいの席に着いた南さんが、妻に声をかけてきました。



「 こんばんは… 」



南さんの顏を見ないまま、妻が、遠慮がちに小さな会釈をおくる。


かって、体を重ねたことがある相手と久しぶりに再会できる喜び・・・

妻の心がときめいていることは間違いないでしょうが、

これまでの疎遠が故に、最初にどんなことを話そうか迷っている風に見えます。


きっと何か、あの時の二人に戻れるきっかけになるような言葉を探しているのでしょう。



「 久しぶりですね。 こうやって、三人で話すのも…… 」



「 そうですね。 南さんも、お忙しいんでしょ? 」



「 貧乏 暇なしですからね。 たまには、あなたのような綺麗な女性の顏も見たくなりますよ 」



「 まっ、もっときれいな方が周りにいっぱいいらっしゃるんでしょう?

でも、そんな言葉聞くの、何年ぶりかしら? 」



「 何年ぶりってことは、ないでしょ?  時々、聞いてるんでしょう? 」



「 うふっ、 勝手に、そんなこと想像するのっておもしろいでしょ? しばらく、楽しめますものね 」



どきっとするようなことを言われて、顏に動揺の色が走るかと思ったら、さらっと受け流す妻・・・


そのような受け答えができるということは、一度ならず関係を結んだ相手なればこその安堵があるのでしょう。



「 この前お会いしたのは、確か・・・ 梅の花が咲いている頃でしたから、あれからほぼ一年半ぶりですか? 

長い間お会いしていないと、何だか体つきまで変わってきたような気がしますが・・・ 」



「 そう思われても仕方ありませんわ。 いつまでも若くはないんですから… 」



「 でも、色っぽさだけは変わっていませんよ 」



「 相変わらず優しいんですね。 まだ、そんな風に見てくださるなんて……

南さんも、その後いろいろ おありだったんでしょう? 」



逢瀬も三度目ともなれば、次第に会話が滑らかになっていきます。

互いの気心が通い合っているのを確かめ終えた二人の会話が、しっとりしたものに変わっていきました。



「 ご主人からお聞きしていると思いますが、今夜は三人一緒ってことで、だいじょうぶですか? 」



「 さあ~ どんな風になるか知れませんが、心に決めています。 すべて、南さんにお任せしようって・・・ 」



「 そんなこと、おっしゃってはだめでしょう。 ご主人の前で・・・ 」



「 ですけど、この前、念を押されましたの。 お部屋に入ったら、南さんがわたしのご主人なんだって・・・

きっと、後悔なんてしていないと思いますわ 」



南さんの前だからでしょうか、何だか、遣う言葉の口調まで改まったように思え、

耳に入ってくる言葉が、白々しく聞こえます。



二人の話を聞いていても、私が口を挟んだり、相槌を打ったりするような隙間がなくて、

何だか、傍らに“ほってけぼり”にされている気分です。



この場のように、心の中に負い目とときめき…… それぞれ、異なる心持ちの男女が顔をそろえると、

これから始まることに、胸をときめかせている者どうしの会話が幅を利かせても仕方がないのでしょう。



それに、私の方が取り違いしているのかもしれないが、南さんが言った「だいじょうぶですか?」という言葉は、

多分、私のことが気がかりじゃないかと尋ねているのだと思う。



でも、今夜、枕を並べることになる男の口から出た言葉ともなれば、

妻が、その労わりの言葉が自分の方に向いていると思っても不思議ではありません。



妻に対するそんな僻みが、言葉になって表れるのでしょうか、

食事中 妻が私に相槌を求めてきても、ついつい、見捨てたような… 妻を困らせるような返事しかできません。



そうこうしているうちに、気まずい感じの食事が終わって、私たちはホテルに到着します。


宿帳には南さん夫婦の名前を書き、続柄は関係ないが、車二台でやって来たので、

もし、何か言われた時は、私は妻の兄ということにしてある。



南さんが、ホテルのフロントで、チェックインの手続きをしている間、

やっと、妻と二人だけになれる時間が訪れます。



( 妻と二人っきりになれる時間…… そんな貴重な時間は、この先あるはずもない・・・・


妻と話すことに制約があるという意味では今もそうかもしれないが、

私たちに与えられた部屋に足を一歩踏み入れた時から、夫という私の肩書は、完全に消え失せてしまうのだ )



「 もうすぐ、部屋に入るんだけど、心の準備はできてんの? 」



「 う…ん、あなたの方こそ、だいじょうぶ? だって、今夜、三人一緒よ 」



「 その場になってみないとわからないけど、我慢するさ 」



「 そ…う? わたしは、多分…… そうなっても、我慢できないと思う。

きっと、あなたにつらい思いをさせるわ 」



「 そんなこと、気にしなくていいよ。 体が感じるまま、素直になれば・・・ 」



「 ほんとに、どうなっちゃうか 自信がないの…… それでもいい? 」



「 いいさ。 それが、俺の願いなんだから・・・ 」



「 でも、約束 …… ちゃんと守ってね 」



「 おまえの方こそな・・  今夜は、南さんが旦那なんだってこと、忘れるなよ 」



「 そんな風に思えるかなぁ。 だって、これまで、いい人は一人だけだったもん 」



「 俺のことは忘れて、再婚したんだって思えよ 」



「 うん、そうする。 でも、そんな言葉 聞くと、何だか胸がどきどきしてきたわ 」



実際に、妻が再婚するようなことにでもなったとしたら・・・

心にぽっかり穴が開いたような状態になることはわかりきっているのに、そんな言葉を妻に投げかける私・・・


そして、私のことを愛おしく思いながらも、

私との夫婦生活では味わえない、別次元の悦びに身を任せようと心を定めた妻・・・



私たちの会話はほんの片言でしたが、これから後に妻との間で交わされた会話に比べれば、

とても満たされたものでした。



間もなく、チェックインを終えた南さんが戻ってきて、私たちはラウンジからエレベーターに向かいます。

南さんの手が妻の腰に回り、優しくエスコートする。


狭い空間で三人一緒に佇んでいる間も、交わす言葉なんてあろうはずがなく、

妻は南さんの方に寄り添いがちです。



部屋に向かう間も、南さんから少し距離を置いて後ろに続く妻の姿が、お似合いの夫婦のように見えてしまう。



南さんがドア口にキーカードを差し込むと、小さく灯る緑色のランプ……


それが、二度と後戻りできない世界へ足を踏み入れることへの警報のように思え、

急に、胸の動悸が激しくなってきます。



浴室とクローゼットを横目に、ツインルームに入る。 

室内を眺め渡すと、ベッドだけがトリプルユースになっている。


数十センチの微妙な距離で隔てられた、ダブルベッドとソファベッド・・・

ソファベッドの方は、二台のダブルベッドの足元に据えられ、それよりも九十度、向きを変えてあります。



( この大きい方のベッドが、妻が男の全てを受け入れるところ…  

あぁ…… ここで、その白い脚を開くんだ…… )



その傍の小さなベッドで、妻の恥態をひっそり眺めることを思うと、隣のベッドのかけ布団のしわまでが

艶めかしく見えてきます。



あれこれ思いながらも、南さんの傍にちょこんと座っている妻の姿を見ていると、

また別の一コマが思い浮かんできます。



あの時、相手の男は南さんではなかったが、男がシャワーを浴びている間、妻と二人きりになれた。

私は、敢えて私から遠ざかろうとする妻のことがとても愛しく思え、思わず抱きすくめようとしたものだ。



「 だめっ、お願い、あなたらしくして…… 」



( その時、返ってきた言葉を今も忘れない・・・ 今夜は、その時以上にその思いは強いはずだ。 


これから朝までは南さんと妻が夫婦なのであって、私は、夫という立場を捨てた、ただの傍観者なのだ。


これから朝まで、三人一緒に過ごすことになるが、

今となっては、それぞれの想いが叶えられればそれでいい・・・ )



こんなことを思いながら、その後しばらく、部屋の中でくつろいでいましたが、

どうも、二人とも私に遠慮しているのか、事に及ぶタイミングを掴みづらいように見えます。



ここはしばらく私が消えた方がいいのでしょう。 先にお風呂を使わせてもらうことにしました。



バスタブに身を沈めながら、一人、物思いに耽る。


( とうとう、くるところまで来てしまった。 

これから先、どんな展開が待ち構えているのか知れないが、先程聞いた妻の言葉から察するに、

私の願い通りに・・・ いや、自分の想い通りに、妻が振る舞ってくれることは間違いなさそうだ。


問題なのは、妻の恥態を見た時の私の心構えなのだ。


きっと、息づまるような胸苦しさ、狂おしいほどの嫉妬、その他に、失望や孤独感など・・・

ありとあらゆる感情が止めどなく溢れてくると思うが、後悔だけはしたくない。


『・・・我慢するさ 』と妻に公言したのだから、自分の心に蓋をして、その通りにしよう・・・ )




瞑想の時間が過ぎて部屋に戻ってみると、早くも半裸の肢体を南さんに預けている妻の姿が目に入ってきました。



ベッドの端に腰掛けながら、お互いが引かれ合うように唇を合わせ、貪るような口づけを交わしています。


傍目から見ても、南さんの思いの丈が伝わってくるのか、妻の体から力が抜け落ちていくのがわかります。



( もう随分と前のことになるが、二ケ月の海外出張を終えて帰ってきたあの時と同じだ。

しばらく会えなかった淋しさを癒し、相手の存在を確かめるには、じっと深く抱き合うことに優るものはない。


あんな風に舌を絡み合わせ、うっとりと目を閉じていると、肌から伝わってくる温もりが心地よくて、

『離したくない…… 』 きっと、そう思っているのだろう )



そのうち、自分が気づかないままに、南さんの背中に手を回していく妻……

ほどなく受け入れてしまう膨らみを下腹に感じながら、今夜はこの男性の妻なんだと、

自分に言い聞かせているにちがいない。



南さんにしても、温かい柔肌を抱きしめながら、久しぶりに味わう女体の感触を確かめているのでしょう。



( きっと、とろけるような感覚が体中に伝わっていって、甘い痺れが全身を覆っていることだろう。


こんな二人に言葉はいらない。 

そして、これはまだ、私の描いた脚本のプロローグに過ぎないんだ・・・ )



お互いの存在を確かめ合うように抱き合っている二人の姿を見ていると、胸が締めつけられるような圧迫感を覚え、

巡らす想いも千々に乱れがちですが、念願がもうすぐ叶う胸の高まりは止まず、

私は、魅入られたように二人の姿を眺めていました。
  1. 2014/11/03(月) 10:41:23|
  2. ● 宵 待 妻・小野まさお
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第三章 【馴染みのスナック】

第三章 【馴染みのスナック】

それから、数日たって、私と南さんは馴染みのスナックで落ち合います。

勝手な目論みですが、今日は南さんにそのことを了承してもらって、大まかな日取りを決めるつもりです。



お店の中は、平日だからなのでしょうか、カウンターに数人の客がいるだけで、ボックス席の方は閑散としています。

私と南さんは、その片隅に腰を下ろしました。



「こうして、南さんと一杯やるのも久しぶりですね。 

まぁ、仕事が忙しいってことは、それだけ幸せなことかもしれませんけど・・・ 」



「そうですね。 この前、ここでご一緒してから三ケ月ぶりですか。

こんな風に向かい合っていると、以前、貴方から相談を受けた時のことを思い出しますよ。

訊きにくいことなので敢えて尋ねなかったのですが、その後、いいお相手は見つかりましたか 」



(南さんにしても、妻が自分に想いを寄せていることは、それとなく気づいているだろうが、

あれから後にもう一人、妻の心の中に新たな男性が棲むようになったことを打ち明ける訳にはいかない。


ましてや、その後、その男性と二度までも関係をもったなんてことは、口が裂けたって言えない・・・ )



「なかなか、そんな匂いがする男性には、巡り合えなくて・・・ 」



「そうですか? そんなに長い間ご無沙汰ってことになると、貴方も辛いんじゃないですか?」



「それは、そうですが・・・ ところで、南さんこそ、どうでしたか? 

あの時 言っておられたサークルの集まり 」



「そんなこと、貴方に誘いかけたこともありましたね。 家内と一緒に参加して、愉しんできましたよ 」



「でも、そんなパーティって、求められると拒みづらいんでしょ? 奥さん、大丈夫でしたか?」



「いや、気に染まない男だったら、断ってもいいっていうのがルールですから・・・


それに、女性の場合、セックスにどれだけ積極的かってことが関係してくるみたいですから、

その気になればどこまでもいけますよ。


まぁ、個人差もありますし、相手の男性によって感じ方も違ってくるでしょうから、一概には言えませんけど・・・ 」 



「奥さん、積極的なタイプなんですか? 」



「貴方もご存知だと思いますが、こんなこと繰り返していると、後ろめたさと言うか、

罪の意識が薄らいでいって、私のことなど眼中にありませんでしたよ。 


きっと、お互いさまって割り切っているんじゃないですか? 

今度、小野さんに紹介しますから・・ そのうち、そんな日が訪れてもいいでしょ? 」



「嬉しいお誘いですけど、せっかくお会いしても、がっかりするだけでしょうから・・・ 」



「いやいや、所詮、男のものなんて似たり寄ったりで、こんなこと、一度始めちゃいますと関係なくなってきますよ。

妻の関心が、別の男に移っていくだけです 」



改めて、南さんからそう言われると、その道に関しては 私より長けた方の言うことですから、

説得力をもって響いてきます。



(そうか、「次第に、関心が他の男に移ってしまう 」という言葉には共感できる。

多分、現在の妻の状態も同じなのだろう。


それでも、妻が私の伴侶であって良かったと思うことがある。

“最後の一線”なんて、普通はそこまで考えない。 


このようなことを繰り返しているうちに慣れきってしまい、罪の意識が麻痺してしまって、

気を病むなんてことはこれっぽっちもなくなってしまうのが当たり前だ。


自分の心に縛りをかけてまで、私に尽くしてくれる妻のことがとても健気に思える )



そこまで私のことを思ってくれている妻に対して申し訳なく思いますが、

せっかく、ここまで時間をかけ、繋げてきた計画をご破算にする気にはなれません。



「実は、たってのお願いがあるのですが・・・」



「そろそろ、本題ですか? 貴方からのお願いとなると大体わかりますよ 」



「すっかり、お見通しって訳ですか? どうせ、二つに一つって、言いたいんでしょ?」



「ははは、よく、そんなことまで覚えておられますね。 

それで、私に奥さんを抱いて欲しいのか、奥さんのお相手を紹介してほしいのか、どっちですか? 」



「それで・・・ 最初に言われた方を、お願いできないかなと思って・・・ 」



でも、久しぶりにこんなお誘いを受けたとなると、何かいわく付きのことでもあるんでしょ?」



「こんなこと、貴方にしか頼めなくて・・・ 

手っ取り早く言うと、ゴムをつけずにお願いしたいんです 」



「私の方は願ってもないことですが、女性ってなるとそうもいかないことは貴方もおわかりでしょ?

その辺りのことは、ちゃんと道筋つけられたのですか?」



「私が平気でこんなことを考えていると思われるのも無理はありませんが、妻と話し合って、お互い納得済みです 」



「そうですか。 でも、そこまで漕ぎつけるには、色々とご苦労されたでしょ?」



「どうも、彼女にとって、どうしても譲れないものがあったようで・・・

“最後の一線”なんて言ってましたが、それを翻意させてしまったんですから、私も罪が深いですよね 」



「それはそうですよ。 何てたって、他人の精液を直に受け入れるんですから・・・

貴方のことを思えば思うほど、罪悪感に苛まれますよ。 


一つ、お聞きしたいのですが、相手が私だってこと、奥さんはご存知なのですか?」



「多分、貴方だったら間違いはないと思って・・・ 順序が逆なのかも知れませんが、言い含めてはあります 」



「そんな風に、私の名前が枕元を飛び交ったとなると、その時の奥さんの反応が気になりますね。


あなた達、ご夫婦のことに口出しするつもりはないのですが、

小野さんの方から一方的に、私の名前を出されたんじゃないですか?」



私には、こんなことを尋ねてくる南さんの気持ちがよくわかります。


仮に、私が南さんと同じような立場だったとして、ある女性と一夜を過ごすことをその夫から懇願されたとすると、

その女性のお相手をするのはやぶさかではありませんが、

当の本人が、どのような経緯でそのことを納得し、そして、どれくらい関心をもっているのか、

平たく言えば、どれくらい乗り気なのかは、やっぱり気になります。



「いや、無理を言ったと思っていますが・・・ そのことを妻に納得させた後で、貴方の名前を言わせたのです。



「そうですか。 言わせたんですか? 最後の一線なんて言葉、如何にも理香さんらしいですね。


でも、小野さん、どう思われます? 仮にですよ、私がこっそり理香さんに声をかけたとして・・・ 

奥さん、貴方に内緒で私に抱かれると思いますか?」



「私に黙ってですか? 妻のことですからそれはないと思ってますが・・・」



「いやぁ、これは私の当てずっぽうですが、何となく女の弱みを感じますよ。

余り、奥さんに気を回し過ぎたり、買い被ったりすると、返って気の毒ですよ 」



(そうか、以前、妻を南さんの待っている部屋へ一人で送り出したが、その時 そんな匂いを感じたのかもしれない。


私への手前、露骨に妻を誘い出すことは控えているが、声をかければ落ちそうな手応えを感じているのだろう )



「ところで、ホテルの部屋のことどうします? 

別部屋をとりましょうか? それとも、三人一緒に・・ってことにしますか? 」



「そんな厚かましいこと、私の口から言えませんよ。 あなたが決めることじゃないですか? 」



「それはそうですけど、貴方の方が色々と・・・ この道には詳しいでしょうから 」



「一部屋ってなると、朝までずっと三人一緒に過ごすことになる訳ですから、

小野さんが、それを我慢できるかどうかでしょうね 」



「もちろん、そうなった時の覚悟はできています。 南さんのお望みのようにしていただいて結構です 」



「お望みのようにですか? じゃ、好き勝手なこと 言わせてもらいますが、

貴方の目の前で、奥さんを何回抱かせていただいても構わないってことですね 」



「私も、断られても仕方がないようなことを、貴方にお願いしているのですから、

その辺りのことは、心得ているつもりです。 

そうしていただいても、一向に構いません。」



「そこまでお考えなら、別部屋を予約しないでおきましょうか。 

それから、こんなプライベートなこと、貴方に尋ねるべきじゃないこともわかっているのですが、

理香さん、アレ、口にするの、できるようになりましたか? 」



「いや、まだです。 多分、何か心理的なものが影響しているのだと思いますが、

そんなこと、改まって話すこともできなくて・・・ 」



「そうですか。 でも、大事なことですから、貴方の方から切り出して二人で話し合われた方がいいですよ。



南さんのみならず、誰が考えてもそう思うでしょう。

別に、セックスに対して否定的な訳でもないし、普通の夫婦では考えられないようなことまで経験しているのに、

男のものを口にすることだけができないなんて・・・



しかし、セックス時の感じ方や愛の表し方は人様々、生来のものですから、

カウンセリングを受けたり、心療科へ行ったりすればすぐに解決できるというほど単純なものでもなさそうです。



あくまで、推測の域を出ませんが、妻が口淫や精飲ができない原因として、

幼少時に出くわした思わぬ体験、自分が育った家庭のこと、

それに、思春期に交際したであろう男によって植えつけられた男性不信など・・・


あるいは、考えたくはありませんが、過去の性体験がトラウマになって影響している可能性だってありそうです。



しかし、こんな要因は、自分に都合よく、私が勝手に邪推しているだけで、

ひょっとして、私が妻に隠し通している密かな被虐願望と同じように妻の方も、

理不尽なことを強いる夫への不審や不満が、口淫の拒絶という形になって表れているのかもしれません。



色々な思いが頭を過りますが、この間、私と南さんの会話は途切れています。

きっと二人とも、ここまで話し合ったことを自分の腑に落とすための時間が必要なのでしょう。



こうして、粗方、準備が整ったとなると、後は一週間後にその日を迎えるだけで、

早くも、その時のことが私の頭にチラつき始めます。



(南さんと出会ってから、かれこれ三年目か? 

そして、妻との関係も三度目ともなると、お互いの想いもまた格別のものがあるだろう。


初めて、南さんに妻のお相手をしてもらった時、ブリーフから露わになった並外れのペニス・・・ 

その先が、臍に届かんばかりに反り返っていた場面を思い出す。


あの狂おしいものの先から、白い飛沫が妻の膣奥深く放たれるのももうすぐだ・・・ )
  1. 2014/11/03(月) 10:39:23|
  2. ● 宵 待 妻・小野まさお
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第二章 【妻 物 語】

心の中に燻り続ける邪な想いを我慢できなくなった私は、それから数日経ったある夜、

妻にそのことを切り出します。 



こうして、実行に向けての第一歩を踏み出してしまうと、

頭の中だけで思い描いていた絵空事がより現実味をおびてきて、妖しい胸の震えを覚えます。



「あれから、しばらく経つんだけど・・ また、俺の我儘を聞き入れてほしいんだ 」



このようなことを妻にもちかける私の態度も、何かしら説得調になっていることに、自分では気づきません。



「えぇ~?… わたし、今、仕事がとても忙しいの。 すぐには無理よ。

でも、もう、そろそろ、そんなこと言われるんじゃないかって思ってた 」



「いつでもいいんだ。 ただ、前もって、おまえの許しを得ておこうと思って・・・ 

仕事が一区切りついた時でいいから、頼むよ 」



「わたし達の約束通りって、こと・・? 

仕様がないわ。 だって、『今後のことは、あなた次第よ』って、言っちゃったんだから・・・

でも、ちょっと、早すぎるんじゃない? 」



「そんなこと、ないだろ?? この前は、おまえ一人で愉しんできたからな 」



妻は、そんなに深く思い悩む様子もなく、意外にあっさりと私の申し出を受け入れてくれた。



こんな風に素直に受け入れたということは、『あなたが、無理言ったから・・・』なんて、

後で、言い訳や申し開きをするつもりもないのでしょう。



いとも簡単に私の願いが通ったことを思うと、何だか、気抜けしたような 淋しいような・・・ 

複雑な気分になってきます。



妻に対して、これまで色々な無理難題を持ちかけ、結果的にそのことを受け入れさせてきました。



夫の求めに対する妻の態度も、私以外の男に抱かれる前までは、頑なに首を横に振っていたものですが、

夫婦の一線を越えてよく似た体験を重ねているうちに、段々と、私の求めを拒むことも少なくなってきました。



(想像する限りだが、私との交わりでは味わえなかった官能の記憶が体の奥深くに刻み込まれ、

そのうち、他人に体を開く慄きが薄らいでいって、彼女の倫理観が歪んでしまったのかもしれない・・・)



「随分とすんなり、聞き入れてくれたところを見ると、

おまえもあの時、『今夜のこと、記念にとっておきます。』って、言ったほどだから、

時々は、そのことを思い出して体が疼くこともあるんだろ? 」



「あなたほどじゃないと思うけど、たまには…ね 」



「朝岡と、昼風呂に入って・・・ そそり立ったもので、突きあげられた時のことか?」



「どうして、そんなイヤらしい言い方するの? あなた、この頃、変よ。 

昔は、そんな言い方しなかったのに・・・ 何だか、変わったみたい 」



「お互い様だろ? こんなことを続けていると、変わってくるのは・・・

でも、これから先も俺達ずっと一緒なんだから、本音で答えてくれてもいいじゃないか? 」



「朝岡さんと一緒に、お風呂に入った時のこと…? 

だって、実際にあったことでしょ? 正直言うと、たまに思い出すことはあるわ 」



「あの時、『今日は、だめっ!』って、答える気にはならなかったのか? 」



「そんなの無理よ。 だって、昨夜抱かれた男性と今日も一緒なんだなぁと思うと、すごく幸せな気分になってきて・・・

それに、『もう一度、抱かせていただけませんか?』って、あんな風に優しく言われると、

どんな女の人でも、そうなっても構わないと思ってしまうわ 」



「それじゃ、いよいよという時は、もう 堪らなかっただろう? 」



「う……ん、何だか、体がじ~んとしてきちゃって、それが、行き場を失ってびくびくしてる感じかな?

頭がぼ~ぅとなってきて、夢中で彼の背中を抱きしめていたわ 」



(そうか・・・ それほどまでに、よかったのか? 心を開いた男性と二人っきりで性戯に浸る悦び・・・ 

そうなっても構わないと私が了承したことだから、それを非難することはできないが、

胸がうち震えるような悦びは、夫が傍にいないからこそ感じられる邪淫の悦びなのだろう )



妻が、本来 夫に言い難いようなことを、気恥ずかしさを捨てて語ってくれると、夫婦の情が細やかに通ってきます。

そろそろ、本題をもち出してもいいのでしょう。



「それでさぁ、言いにくいんだけど・・・ 今度は、アレをつけずに“生”でしてくれないか? 」



「それは、だめっ! 前にも言ったでしょ? わたしにとって、“最後の一線”なんだって・・・ 」



「もう、ここまで来て元に戻れないことも、急にストップできないこともわかっているはずじゃなかったのか? 」



「確かに、あなたの願いどおり、これからもそのことを受け入れようって、心に決めたわ。

でも、それとこれとは別なの。 わたしにとっての“最後の一線”って意味、わかる? 」



「俺なりに、考えてはみたよ 」



「そ~う? ・・で、答えはどうだったの? 」



「そんなこと話すと、ますます頼みづらくなるじゃないか? 

俺のこと、思っていてくれるんだなって、幸せに思ったよ 」



「そこまで考えてくれているのなら、わたしの言ってること、わかるでしょ? 」



「でも、ゴムなしでするの、今回が初めてって訳でもないだろ? 」



「あの時は別よ。 だって、あなたと雅彦さん、二人して強引だったもん。 

初子さんにまで無理言って・・・ わたしだけが避妊具つけてっていう訳にもいかなかったわ 」



「しかしな、俺の妄想は段々とエスカレートするばかりで・・・

おまえが、何もつけずに射精される姿が、頭から離れないんだ 」



「そんなこと言われても困るわ。

あなたは男の人だからわからないと思うけど、そんなことをしたら、赤ちゃんができちゃうのよ 」



「ちゃんと前もって予防するんだから、その心配はないだろう? 」



「わたしは、精神的なことを言ってるの。

あなた以外の人の精液がわたしの中に入るってことが、どんなことだかわかる? 」 



「わかっているつもりさ。 後から、それを責めたりしないから・・・」



「う~ん、そんなこと、言ってほしいんじゃないの。 あなたのことだから、いろいろ気を遣って… 

どっちみち、お相手はわたしが抱かれてもいいと思えるような男性なんでしょう?


その男性とそんなことしたら、本気で好きになってしまうわ。

ひょっとして、ずっと一緒にいたいって思うかもしれない…… 」 




「そう思っても、仕方がないだろうな。 

そんな風におまえが、相手の男と身も心も一つになりたいと願う姿がたまらないんだから 」



「でもね、それって…… あなたにとって、わたしが限りなく遠い存在になるってことよ。

あなた、この前わたしに 『もしかして・・・?』って、離婚のこと尋ねてきたけど、

本当にそうなった時の覚悟はできているの? 」



「そうなってほしくないけど、こんなこと、おまえに持ちかけたのは俺だから、

そんな風になっても自業自得だって思ってるよ 」



「そ……う、 わたしのこと、それほど大切に思ってないのね。

わたしが出て行ったら後悔するくせに、そこまで考えているのなら、もう、これ以上言わない 」



最終的に、妻は、私の申し出を聞き入れてくれたが、今夜は、夫としての評価を下げてしまった。


妻がそれほどまでに、頑なに守り通したいもの・・・ 

それを、そうしてあげたい当の本人によって無残にも壊されたのだから、心に負った傷は深いものがあるだろう。


きっと、理不尽なことを強いる夫の姿に失望したと言うより、幻滅を覚えたに違いない。 



それに話は遡るが、妻が、配偶者が隠していた思わぬ性癖に出くわしたのは、結婚してかなり経ってからのことだ。


今はどう思っているのか知れないが、初めてその話を耳にした時は、

きっと、戸惑ったというより、情けなく思ったことだろう。


近い将来、大きな代償を支払うことになるかもしれない・・・



このように先のことを考えると、妻の“我慢の糸”が切れてしまうのでは・・?と不安になりますが、

心の奥底で次第に膨らむ欲望は、揉み消すことができない麻薬性の疼きを伴って、私を後押しします。




再び、夫婦の会話に戻りますが、人間誰しも、自分の主張したことを否定されて、

本来 望んでいない方向に引き摺られていくことを、不快に思わない人はいないでしょう。 

しばらく、夫婦間に重苦しい雰囲気が漂います。



(きっと妻にしても、私の場合と同様に、今回のことがわだかまりとなって胸奥深くしまい込まれ、

これからの私たちの夫婦生活に、影を落としていくのかもしれない )



そんなもやもやした想いを振り払うように、私は、妻を自分の布団に抱き寄せます。



「ごめんよ、無理なことを言って・・・ ちゃんと、“約束”は守るから。

それで、お相手のことなんだけど・・・」



「次は、当然、その話になると思ったわ。 さっき言ったように、どなたか、お目当ての人がいるんでしょ? 」



「おまえが、『もう一度、抱かれてもいい』って、思っている男性だよ。 

これ以上、危ない橋は渡りたくないからな 」



「はっきり、言って。 大体、想像はつくけど…… 」



「南さんか朝岡だったら、構わないだろ? 

お互い、また機会があったら逢いたいって、約束し合っているんじゃないのか? 」



「そんなこと、ない。 あなた、ずっと前にわたしが言った言葉覚えてる?

『ずるずるいきそうな自分が怖い』って・・・


南さんも朝岡さんも、わたしが憎からず想っている男性よ。

このまま関係を続ければ、わたしがどうなってしまうか、わかりそうなことでしょ? 

本当に、そうなってもいいのね 」



「あの二人だったら、長いつき合いをしてもいいと思ってるよ。 おまえにも異存はないだろ? 」



「“あの二人”って、まさか、二人一緒になんてこと、考えているんじゃないでしょね?」



「本当にそうなったら、困るのか? 」



「もし、そんなことになったら、もう、あなたにはついていけないわ 」



「だって、これまでも色々・・ どきどきするような場面、あっただろ? 」



「こんな言葉使って悪いんだけど・・・

好きな人とセックスしている姿を、もう一人の素敵な人に見られるなんて、想像するだけでも嫌よ 」



「俺だって、その素敵な男の一人なんだろ? 」



「えぇ~っ、まさか、本気でそんなこと 考えているんじゃないよね。

あなたはわたしの夫だから我慢できるけど、好きな人に恥ずかしい姿を見せるのは一人で結構よ 」



当然、そうだろう。 話の成行きで水を向けてはみたが、傍で見ている男が夫だったらいざ知らず、

好きな男に愛されている生々しい姿を、もう一人の気を引かれる男性の目に晒すなんてことは耐え難いにちがいない。



「わかったよ。 それで、どっちにする? 」



私に寄り添いながら横寝になっている妻は、思い悩むように目を閉じた。



(夫から突きつけられた難問・・・ 

それを解くために、官能の履歴をひも解いて、艶めかしい記憶を反芻しているにちがいない )



しばらくして、妻から答が返ってきた。



「南さんが、いい……… 」



やっぱり、そうか? どっちみち、夫以外の男性に抱かれて、直に射精を受け入れざるを得ないとなれば、

人柄や気心だけでなく、相手から寄せられる想いの深さや体の馴染具合など、

すべてがフィットする男の方がいいに決まってる。



「また、朝岡との、“最高のセックス”を、願っているんじゃなかったのか? 」



「いろいろ思っているうちに、頭に思い浮かんできた顔が、南さんだったの。


こんなこと決めるのに、普通の女の人だったら余り思い悩まずに、すぐにその男性の顏が思い浮かんでくるものよね。 


こんなこと続けているうちに、何だか わたし、変わっちゃったみたい……  悩んじゃうわ 」



(自嘲気味に言っているが、そんなはずはない。 私に訊かれた瞬間、二人の顔が思い浮かんできたはずだ。 

そして、両方の男を天秤にかけていることに気づき、そんな自分に嫌気がさしてきたのだろう )



「そんなことないさ。 俺が願っている淫らな女になるってことは、

頭の中にある煩わしいものを、すべて捨て去らないとそうなれないだろ?


普段、おまえが仕事や家事をしっかりやってる証拠じゃないか? 

たまには、アバンチュールを楽しめよ。 」



「そんなに、持ち上げてもだめよ。 それほど感謝してくれてるんだったら、もっと心を込めて言わないと・・・

何だか、他人事みたいに聞こえるわ 」



元より、腑に落ちた訳ではないだろうが、最終的に、妻は私の申し出を受け入れてくれた。

妻の了承を得たとなると、後は、南さんにそのことをお願いするだけです。



(一度、彼と会って・・・ 別部屋をとるか、それとも朝まで三人一緒に過ごすか、話さなければならない )
  1. 2014/11/03(月) 10:38:15|
  2. ● 宵 待 妻・小野まさお
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第一章 【季節の巡り】

はじめに、タイトルについて、少しばかりふれておきます。

この先、どのような展開が待ち受けているのか不透明で、お読みの方の目を汚すような内容になるかもわかりませんが、

表題を、それぞれの細章の見出しから一つとって「宵 待 妻」にしました。



そのようにした訳は、  

夕方に開花して、夜の間だけひっそりと咲き、翌朝には萎んでしまう今宵待草……


植物学的には「マツヨイグサ」と名づけられ、初夏から咲き始め、冬には枯れてしまう越年草らしいですが、

妻にとって一夜限りの秘め事が、陽を見ることがないその花の風情によく似ているように思えたからです。




季節は初夏・・・ 六月になると梅雨入りを控え、水田の苗が青々としてきて、

散歩がてらに辺りを眺めると、紫陽花が薄緑の小さな花をつけています。



すっきりした気分で、食卓で妻と向かい合って、二人でいただく朝食・・・ 

そんなに取り立てて話すつもりもありませんが、私にとって幸せなひと時です。



今朝のメニューは、大根おろしのシラスあえ、ヒラメの素焼き、それにアサリの味噌汁・・・



とりわけ、妻に感謝しなければならないのは、手作りの味噌と梅干し・・・


料理教室で習い覚えたのでしょうか。

毎年然るべき時期になると、妻は近所の主婦連中と連れ立って“自家製味噌”をつくってくれます。

梅干しの方は、遠方の友達から青梅を送ってもらい、漬け込みます。



このような手づくり味を堪能できるのも、妻のおかげなのですが、

人は余り幸せすぎると、些かな心尽くしの中に大きな幸せが宿っていることに気づかず、通り過ぎてしまうのでしょう。



しばらくそのことから遠ざかり、平凡で単調な毎日が続くと、何やらまた、変なことを想像してしまいます。



例えば、妻がクローゼットの奥に仕舞い込んだ探し物をしている時など・・・

膝這いの姿勢で、下段の奥隅にまで手を伸ばすと、お尻をこちらの方に向ける格好になります。


そんな姿を見ていると、ごく自然で何気ない動作なのに・・ 

何だか、枕元にある避妊具をとりに、後ろを向いたときの姿を想像してしまいます。



それに、朝の着替え・・・ 

別に、意図して見ている訳ではありませんが、出勤前に、片脚を伸ばしながらパンストを身につけている姿を目にすると、

交わりが終わった後、無言でそれを身に着けている妻の姿を思い起こします。



普段、見慣れているはずの妻の姿を見て、こんなことを想像してしまうなんてことは、

いつもの性癖が鎌首をもたげてきた証拠です。



(段々とその回数は減りつつあるが、そろそろ、心に伏せている想いを実行に移す頃合いになってきたのかも・・・)



しかし、私の胸に蔓延るこの想いは此処までくると、もう妄想や性癖といった類のものではなく、

体の奥深く巣食った“腫瘍”のようなものだろう。




目下、私が切に願ってやまないこと、それは、この次、妻が他の男性に抱かれる時は避妊具なしで・・・ 

愛おしい女が自ら体を開き、そして、完全に他人のものにされた証・・・ 


その秘口から、欲望の滴が垂れ落ちるところを見てみたい、ということなのです。



私とは比べようがないほどの他人のペニス…… それが、妻の性器と、何に隔てられることなく直に結ばれ、

互いが恍惚とした快楽に酔いしれながら果てる瞬間を見届けたい・・・



これまで馴染み慈しんできた妻の秘部に、何を宿しているか知れたものではない白濁液が注ぎ込まれ、

そして、それを、妻が悦びの極みの中で受け入れる。 

私にとって、これほど甘苦しく切ない瞬間はないのです。



一旦、このようなことを考え出すと、しばらくの間は、寝ても覚めてもそのことばかり頭に纏わりつき、

そのうち、胸が苦しくなってきます。



多分、この何かに憑りつかれたような呪縛感は、同じようなことを考えたことがある方にしか理解できないでしょう。


このような状態から逃れて、普段通りの生活に戻るには、一日も早く動き出すしかないのです。



(この前、妻の恥態を目の当たりにしたのは、昨年の・・・ 確か、金木犀の香りが漂う頃だった。 

あれから、早 一冬 過ぎたのか ) 



その後も、妻を他の男に抱いてもらいましたが、私はそのことを後で妻から聞いただけです。


妻こそ想いが叶って満足したでしょうが、実際にその場におれなかった私が、

無性に性の渇きを覚えるのも無理からぬことかもしれません。



こんなことを思っていると、自然と、これまでに妻から返ってきた言葉の端々が浮かんできます。



「でもね、何もつけない方が感じるのは本当だけど、わたしの心の中では最後の一線なの 」



妻が言う“最後の一線”とは、何を押し止め、何を守るための線引きなのか? 


此処に至るまで、すでに十指を超える他の男に抱かれてきたのだから、

彼女の意識の中には、もう、私に対して操を立てたり、背徳や罪業に慄いたりするような感情はないはずだ。



あくまでも、想像の域を超えないが、それら以外のことで妻が守り通したいものがあるとすれば・・・ 

それは、夫の存在を、自分の心の中で 他人と識別すること。


その手段として、自分と夫以外の男を隔てる薄膜をつけることが、

妻としての“一分”だと思っているのかもしれない。



遮られていた薄膜が無くなってしまえば、それまで築き上げてきた大切なものが失われてしまうように思えるのだろう。



それほどまでにして守り抜きたいもの・・・ “最後の一線”とは、私に捧げる妻の愛情なのだ・・・


こんな風に解釈すれば、妻に対する堪らない愛しさが湧いてきます。



なのに、私は何故・・・ 妻が他の男に抱かれ、射精を浴びる瞬間を見てみたいと思ってしまうのか?



自問の答えは、よくわかっています。


互いの性器を交合わせているうちに、やがて蕩けるような快感がやってくる。

すると、二人の体が熔け合って、甘く恍惚とした一体感が心を蝕んでいく・・・

そして、妻と男が精神的にひとつに結ばれる。



その時こそが私にとって、最も切ない胸が締め付けられるような瞬間なのであって、 

夫の存在を忘れきって、至福の悦びに浸る妻の姿を眺めながら、“幸せ”が壊れていく喜びを味わいたい。



突き詰めれば、このように妻の体だけでなく、心まで堕としてしまいたいと願うのは、

自分自身に、例えようがない程の苦痛を与えてほしいと願う被虐願望の顕れなのです。



頭の中ではこのように自分を客観できますが、かといって、この欲望に歯止めをかけることはできません。


思い悩んだ挙句も、一旦、心を決めたとなると、実行に向かってまっしぐらに突き進んでしまうタイプが私なのです。



話を先に進めますが、私のこの想いを実行に移すには、何をおいても先ず、妻にそのことを納得させなければなりません。


それから、いくつかの条件を折り合わせ、筋書きを整える手順になるでしょう。



最初に、妻と話し合って決めてあること・・・ 

ネットを使って、相手を選ばないこと、 一度に、複数の男性とはしないこと、これらのことは守らなければなりません。



このように決めた訳は・・・ 

実は、私たちがこのような道に踏み込んだ初めての体験は、ネットを手掛かりに辿りついたグループセックスでした。



その時分は、夫婦仲が倦怠期を迎えていた頃で、二人ともまだ味わったことがない刺激とスリルに魅入られて、

恐る恐る未知の世界に足を踏み入れた訳ですが、まだ慣れていない所為もあったのでしょう。

妻の立場からしてみると、どうやら散々な結果だったようです。



余り、詳しく語りたくありませんが、とにかく それ以来、ネットを利用して複数の男性と交わることは止めました。



次に考えられることは、秘密裏に行われる近場のパーティに参加すること。

若しくは、遠出して観光地や温泉宿など、旅先で出会った見ず知らずの男にそのことを持ちかけることです。



でも、これらの選択肢にも難があって・・・ 某所で行われるパーティといっても、何だか不気味で、

偶然、私や妻の知人と顔を合わせた時のことを思うと二の足を踏んでしまいますし、

温泉場で、行きずりの男性と・・と思っても、まさか、得体が知れない全く見ず知らずの男に、

避妊具なしでのセックスを許す訳にもいきません。



今、私が心底から望んでいること・・ それは、妻が頑なに拒んでいる避妊具なしでの交わりなのです。


この想いを、すべてのことに優先させたい・・・



こんな風に、錯綜する条件を整えてみると、どうしても旧知の男性に的を絞って、妻を抱いてもらうしか術がありません。



(しかし、これ以上、関係する男性の数を増やす訳にもいかない。 

そうなれば、やはり、南さんか朝岡に、妻のお相手をしてもらうのが自然な流れだろう。


妻にしても、この二人なら嫌とは言わないはずだ。

寝物語で二人の男の名前を挙げて・・・ 果たして、妻が、どちらの男性の名を口にするのか聞くのも悪くない。


一番厄介なのは、“最後の一線”を踏み越えることを、妻に納得させることかもしれない・・・ )
  1. 2014/11/03(月) 10:37:09|
  2. ● 宵 待 妻・小野まさお
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● 宵 待 妻 【はじめに】

私の名前は、小野まさお、妻の名は、理香・・・ 世間のどこにでもいそうなごく普通の夫婦です。


子ども達は親元を離れて都会暮らし・・・ 鄙びた田舎で、妻と二人だけの毎日がゆったりと流れていきます。



世の人と比べて私が変わっているのは、ただ、妻が他の男に抱かれることに異常な興味を覚えることだけ・・・



良人が見ている前で、他人と交わる不貞・・・ 

背徳の怯えに心を震わせながら、やがて、怒張しきったものが押し入ってくると、

甘い悦びが兆してきて喘ぎの声を洩らす妻・・・



このようなことを意識し始めたのは、もう三 ~ 四年ほど前・・・ 


それまで妄想の中でしか思い描くことができなかった光景が、

実際に目の前で繰り広げられた時の衝撃と興奮は語りようがないほどで、

今なお、その時のことがしっかりと脳裏に焼き付いています。



でも、こんなこと、一度経験してしまうと段々とエスカレートしていって、それだけでは満足できないようになってきます。



(男の腰がひと際深く沈み込むと同時に、妻の膣奥深く放たれる他人の精液…… 

それが、妻の性器から零れ落ちるところを見てみたい……… )



こんなことを想像するなんて、性癖が昂じて理性が麻痺してしまっているとしか言い様がありませんが、

頭に蔓延る妄想を抑えることができず、ひたすら、欲望の実現に向かって突っ走ってしまう私・・・



序章を書いている現在は、頭の中で思い描いていることを実際に行った訳ではありませんが、

妻さえうんと言えば、遅くとも一ケ月以内に、そんな日を迎えるでしょう。
  1. 2014/11/03(月) 10:35:55|
  2. ● 宵 待 妻・小野まさお
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その後も優しい妻 第2回

 妻を問い詰めて、今の生活が壊れることを恐れた私でしたが、嫉妬と怒りを堪えて一週間が過
過ごすのがとても苦痛でした。
 土曜日の朝になり、いつものように私は仕事に行く振りをして家を出ました。12時間くらい
に近所の賃貸マンションの駐車場に車を止めて我が家を見張っていました。何とか来客があれば
確認はできる距離でしたが、さすがに盗聴の電波は無理のようでした。ひたすら家のほうを見て
いましたら、1時ちょっと前に隣の息子が友達を連れて我が家に入っていきました。
 私は、震える手でハンドルを握り、電波の届くところまで近づきました。どうやら居間にいる
ようで会話が聞こえてきました。

 妻「コウジ君って言ったっけ? 何回か見かけたことあるみたい・・・」
 コウジ「よくケンジのところにに遊びに来てるから・・・」
 ケンジ「遊びにだけじゃないよね・・・」
 コ「よせってば・・・」
 妻「何?」
 ケ「この前言ったでしょ? 覗いたりしてたって・・・」
 妻「え~ そのこと? 本当にコウジ君も覗いたりしてたの?」
 コ「うん・・・  ごめんなさい・・・」 
 妻「下着も取ったことあるの?」
 コ「何回かあります・・・」
 妻「二人とも、そんなこともうしちゃだめだよ」
 ケ・コ「はい・・・」
 
 三人は、しばらくの間、なんてことのない会話をしていたのですが・・・

 ケ「あのぅ・・ 」
 妻「どうしたの?」
 ケ「今日、コウジのを見るって・・・」
 妻「えっ・・ 本当に見るの?」
 コ「見るの嫌ですか・・・」
 妻「嫌ってことじゃないけど・・・ じゃあ、ちょっとだけだよ・・」
 コ「でも、まだ大きくなってないから・・・ ちょっと恥ずかしい・・・」
 妻「どうすればいいの?」
 ケ「コウジ、奥さんが白衣を着てるのを想像したら興奮するって言ってたよ・・」
 妻「それで大きくなるの?」
 コ「たぶん・・ あっ・・できれば下着もいつも穿いてるっていうエッチなのを・・・」
 妻「ケンジ君って、そんなことまで教えちゃったの?」
 ケ「うん・・・」
 妻「う~ん、じゃあ、ここだと誰か来たとき困るから、2階に行きましょ・・・」

 三人の移動する足音が聞こえなくなり、受信機を2階のに切り替えました・・・
 
  1. 2014/11/03(月) 10:31:06|
  2. 仲のよい妻が・・・まぬけな夫
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その後も優しい妻・・・

 前回は、文章をまとめるのが下手なうえに、録音したものを聞き返しながらだったので、何回
にも分けての投稿になってしまい申し訳ありませんでした。
 あの時は、妻の淫らな姿を見てしまい、それも隣の家の高校生の息子だったので、半狂乱のよ
うになっていました。
 妻と隣の息子に対しての怒りをどうして決着つけるべきか悩みました。でも、翌日以降も普段
と変わらぬ優しい妻の様子を見て、問い詰めることにより現在の生活が壊れるのを恐れてしまい
ました。
 しかし、次の土曜日に隣の息子が、電話をしてから友達を連れてくると言っていたのが気にな
りまして、仕事の合間に無線機屋にてコンセント型の盗聴器を2台買ってきました。1台を居間
に置き、もう1台を寝室にセットして置きました。
 金曜日に家に帰ると、妻が、明日の予定を聞いてきました。私は単純に会話を聞き様子を探る
つもりでしたが、やはり会えないようにするべきだと思い、土曜は休みだと告げました。すると
妻は来週はどうなの?と尋ねてきたので、来週は仕事であるといいました。本当は翌日は仕事だ
ったので、翌朝会社に電話したいが悪いと・・・
 さて土曜日になり、電話がかかってくるのを受信機片手に2階で待機していると、11時過ぎ
に電話が鳴りました。

 妻「もしもし・・  おはよう。 あのね、主人今日休みなんだよ・・  来週の土曜日なら
  仕事でいないから・・・・ うん・・  1時においでよ。  うん・・   でも、この
  間はすごかったね・・・  えっ・・夜に自分で出したの?  ここで4回も出したのに?
  来週は、そんなの楽しみにしてるわけじゃないよ・・・  う~ん・・ちょっとだけ・・・
  じゃあ来週ね・・・」

 さすがに相手の声は拾えませんでしたが、話の内容から間違いなく隣の息子です。私は、来週
も仕事を休み妻を探ることにしたのですが・・・
  1. 2014/11/03(月) 10:29:26|
  2. 仲のよい妻が・・・まぬけな夫
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序破急 - 破の25 「差し出した夫」

暫く静寂が続いた。 準備室に入った者と園田とどちらが先に動くか根競べをしているようである。 女は誰に見られているかを考えると無意識のうちに膣の筋肉を収縮させた。 園田はペニス全体を締め付けたり離したりする膣壁の動きに満足し、カリに纏わりつく女の愛液から引き出される快感を更に増す誘惑と戦っていた。 ここで腰を動かせば更に快感が湧くのは長年の経験で得ていた。

園田は誘惑に負けた。 息を吸い込むとと腰をゆっくり律動させた。 するとテーブルが軋む音がし、その音に準備室の入口の物音がかき消された。 その音に紛れ、準備室に侵入した者は慎重に廊下へ出ていった。 園田のカリに纏わり付いた愛液が陰茎全体を覆い快感を助長させた。

「誰が覗いているのかな?」
園田は腰をゆっくり動かしながら女の耳元に囁いた。
「う、うう」
女は涙目になりながらも感じずにはいられなかった。

「もっと、見てもらおうか」
園田は腰の動きを止めた。 女はほっとしたように口を塞いでいる手を離し、大きく息を吸った。
園田は女の上体を起こしトレーナーを首まで捲る勢いで上げるとブラジャーも上にずらし、胸を露わにした。 そして上体を更に起こし両手で乳房と乳首を揉んだ。 丁度女の胸辺りにカーテンの隙間からの光が当たっていた。

「あ、あ、ああ」
女は胸を揉まれながら喘いだ。 もう聞かれても仕方ないと覚悟でもしたのであろう。
「乳首硬くてコリコリじゃないか」
園田が腰を一回突いた。
「あっ」
女は叫びそうになりまた口を塞いだ。
「うん、逝ってしまおうかな?」
「だっ、ダメ」
女は顔を思い切り園田の方へ向け首を振りながら懇願した。

「しょうがないなあ~、持って来たのか?」
女はジャンパーの内ポケットからコンドームを出して、園田に差し出した。
「じゃ、着けろ」
園田は女の耳元でそう囁くと腰からペニスを抜いた。

女は園田の方に向き直り、コンドームの袋を切り中身を取り出し、園田のペニスに被せた。 すると園田は女の胸を押しテーブルへ腰掛けるように導いた。 そして両脚が園田の手にによって開かれた。

「ほら、自分で持つんだ」
園田は女自ら太腿を持って脚を開くように要求した。 園田はその開かれた脚の中心に向かって腰を進めた。 女はテーブルに仰向けに寝て脚を開き、園田のペニスを再び迎えた。
「あ、うっ」
園田はペニスを挿入すると、上体をテーブルの女に被せた。 そして女の耳元で囁いた。

「どうだ、気持ち良いか?」
「・・・」
「生の方が良いだろ?」
「・・・・」
「そうか、言葉にならないほど良いか?」
「う・・ぐ」
女は口硬く結んだまま首を振った。

「検査部の奴等には生でやらせたんだろ?」
園田は腰を少し引き、勢い良くペニスを打ち付けた。
「あ、うっ」
女は咄嗟に口を手で塞いだ。 園田はそのまま耳に舌を出し女の耳の中へ舌を入れた。 すると耳の穴を舌で愛撫するのに同調してペニスが締め付けられるのを感じていた。 園田はその快感をしばらく貪った。

女の両耳が園田の唾液で十分に濡れると園田は口を塞いでいる女の両手を掴み万歳をする恰好でテーブルに押さえつけた。 そして無防備になった女の唇に舌を這わせた。
女は少し首を左右に振り園田の舌を避けていたが直ぐに唇を割られ、園田の口で塞がれた。

女は既に抗うことはせずに園田の動きに合わせるように舌を吸いあったり、転がしたりした。 その動きに合わせ自分の下腹部が無意識に痙攣するかのように動いているのを感じていた。

女は明らかに自ら感じていた。

女はペニスを挿入されたままディープキッスをするセックスは初めてでは無い。 しかし、新しい刺激のように身体が反応している。 それは、脳が誰かに見られながら園田に抱かれているという指令を受けているからである。 しかも、それは一番見られたくない相手に他ならない。

女は一時消えていた人の気配を入り口の方に感じていた。

園田は女の唇から離れる代わりに腰を動かした。
「あ、あっ」
手は園田に依って押さえられているのでもう口を塞ぐくとは出来ない。

「うん? それでど~だったんだ、検査部のチンポは? うん?」
園田が強く腰を打ち付けた。
「う、うう」
「良かったのか・・・、そうか・・」
園田は腰をグラインドさせた。 女は必死に口を開けずに喘いでいた。
「ふうんうん、んん」
「この俺様より良いとは、けしからんな~ じゃあ、何処かへ飛ばす算段でもするか、ほれほれ」
園田の腰の動きが早まり、テーブルの軋む音と女の喘ぐ声とが協調していた。 そんな音の中に廊下を台車が移動して行く車輪の音が混ざっていた。

「なんだ、あの観客は、もうすぐいいところだっていうのに」
園田の腰の動きが一層早くなると
「あ、あ、だめ、い、いくっ」
女が喘ぎなからも言葉を発した。 女にも廊下の台車の音が分かったのだろう、急に快感が込み上げてきたようであった。
  1. 2014/11/03(月) 10:26:47|
  2. 序破急・中務
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序破急 - 破の24 「差し出された妻」

女はIDカードを受け取ると携帯メールで指示された通りに4階のプレゼン準備室へ向かった。 入り口のカード読み取り機にIDカードを近づけると緑色のLEDが点灯した。 そして扉を開け中へ入った。

準備室の中は光が届かないのか入り口の扉を閉めると暗闇になった。 暫くその場に佇み目を慣らすと奥の部屋へ続く扉を見つけメールの指示通り中へ入った。 奥の部屋に入った女は窓際へ手探りで進みカーテンを開け部屋に光を入れた。 部屋に光を入れると今度はカーテンを調整し、テーブルの一角だけに光が当たるようにした。

女はメールの次の指示に従った。 作業用のエプロンを外し、デニムのミニの中へ手を入れると下着を外した。 それを光の当たっているテーブルに置き傍らのソファーに座り、脚をソファーに上げM字を作り脚を入り口に向けて開いた。 そして開いた脚の根本へ片手を這わせ、もう一方の手で作業用ジャンパーのチャックを器用に下げて外すと前を開き厚手のスウェットのシャツの中へ手を入れた。

女はメールで指示されて自慰をしているのである。 しかも、その部屋に入って来た者にその様子を晒す体勢を強いた。

準備室入り口のカード読み取り機がIDカードを認証した音を発した。 誰かが部屋に入ってくるのである。 女の手の動きが止まった。 部屋に入って来る者によって女の運命が変わるかも知れないのである。

扉が開き閉まる音がするとカーテンから差し込む光の帯に一人の男の姿が現れた。

「ちゃんと、指示を守ったようだな」
男は購買部の園田であった。

「俺以外の者だったらどうする? 警備員だったら? 万一旦那だったら、うん?」
女には反論することは出来ない。 仮に痴態を隠したら、今度は指示を守らなかった事を責められることが分かっていた。
「旦那にもここへ来るようにメールをしたとは思わなかったのか? 助平な女だな」
女は泣きそうな顔になった。
「誰が手を止めて良いと言った」
園田の声は小さいがドスを効かせていた。
女は仕方なくといった感じで再び指を動かした。
「返事が無いな」
「すいません」
初めて女が口を開いた。
「それだけか?」
「・・・・・」
「うん?」
「助平な女です」
「うん、分かってるじゃないか」

「そうか、助平か、 助平な女はここで何をしていた?」
「・・・・」
「うん? 答えられないくらい感じていたのか?」
「・・・・」
「気持ちいいか? うん?」
「はい」
「そうか、気持ちいいか、自分だけ」
「・・・・」
「それはまずいだろう」
園田はそう言うと、女を手招きし、自分の前に膝まずかせた。 女を何をすればよいか十分理解していた。
「安心しろ、ここは私と君達しか入れないようになっている」

女は園田のズボンと下着を降ろすと、半立ちになった園田の陰茎を手で軽く扱くと膝立ちになってそれを咥えた。


袴田友布子が何故このような状況に屈するようになったかの経緯は分からない。 ただ、それは友布子が望んだものでは無いのに違いない。



園田は50歳を過ぎているだろう。 しかし、その陰茎は女のフェラチオで十分硬くなっていた。 園田は女にテーブルに手をつくように仕草で命令した。 そしてデニムのミニの中に手を入れた。
「ほう、濡れているじゃないか、助平だな」
「ああ」


園田は女の背を押し胸をテーブルに押し付けた。 すると女の尻が突き出たようになった。 さらに足で女の足を払い開くようにした。
女は次に何をされるか分かっている。 園田でなくても女を弄ぶ男のすることは大体同じである。 女陰が微かに潤んでいるのが誰にでも分かるくらい尻を突き出されていた。

園田は片方の手の中指を立てると女の尻の割れ目に沿ってそれを進めた。 女が僅か胸をテーブルから上げ仰け反った。 そして割れ目の中へ指を埋め込んだ。 完全に膣口は指で塞がれた。 そしてもう片方の手で女の腰を押さえて固定した。

「あ、ああ」
「ほう、こんなになって、どれどれ」
園田は掌で尻を包む角度で指を入れていたが、それを180度回転させ、掌が床に向く恰好で深く突き入れた。 女の膣は園田の指で満たされた。
「ああ、うっ」
女が声を上げそうになったのを自ら手で押さえた。 園田は中指に絡みつく女の愛液を感じて顔をニヤつかせた。

園田は突き入れた指を少し引き戻し、女の膣の中で曲げたり伸ばしたりして膣壁を掻いた。 そこが女の感じる所であることを十分に知っていることを見せつけた。
「ああ、だめっ」
女は声を押し堪えて訴えた。 しかし、園田の指の動きは止まらない。 堪らず女は自らの口を手で押さえて堪えた。 その様子を見ているだけで園田の陰茎の硬直は維持出来た。 それは女を征服している満足感からであろう。

と、その時、準備室の入り口で物音がした。 誰かが準備室に入って来たに違いないのだ。 女にとっては狼狽する出来事であるが、園田にとっては想定内のことである。
「お客さんだ」
園田はそう耳元で囁くと手を抜いた。 抜いた指に纏わりついた愛液を自分の亀頭に塗り付けるとそれを女の尻の割れ目に当てがって、ゆっくりと陰茎を挿入した。
「んぐ、うう」
女は込み上げてくる快感に堪えようと口を更に強く押さえた。
  1. 2014/11/03(月) 10:26:00|
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序破急 - 破の23 「プレゼン準備室」

英生はメールの確認やら、準備を終えると調整棟へ向かった。 しかし、調整棟は鍵が掛かっていて開いていなかった。 いつもならこの場所が縄張りの検査部か物流部の誰かが開けているのであるが、流石に三連休の最終日で、しかも早い時間ということで開いていなかった。

英生は警備室へ開錠を依頼すべく向かった。 以前は鍵を貸し出していたのだが、鍵がなかなか返ってこなかったりというトラブルがあってから、警備員が同行して開けることになっていた。

英生は警備室の窓口で開錠依頼の記帳をした。
すると、奥から
「俺行きますよ」
と、声が聞こえた。 英生が声の方向へ視線を向けると先ほど守衛所で会話した警備員だった。 警備員は時間で受け持ちをシフトしているらしい。 守衛所でのシフトが終わり警備室で次のシフトまで待機していたのであろう。

英生は警備員と一緒に調整棟へ向かった。
「あんたも、派遣なんだ、大変だね、休みだって言うのに」
「はい」
「社員は派遣に仕事を任せて、ゴルフだもんな」
警備員は英生が同じ派遣と分かって親しみを感じたのであろう。 それに、設計部がこの3連休のどこかでゴルフコンペを行っているということも知っていた。 警備員には色々な情報が入るもんだと英生は感心した。 それと同時に情報通であれば落書きの事も知っているのだろうと思った。

「あんた、設計部に派遣されているのだったら、プレゼン準備室へ行くことあるか?」
「いえ、行きません」
「そっかー、それなら安心だ」
「どうしてですか?」
「あそこの開錠レベルを変更するようにと購買の園田が来ていたらしいから」
「それが、なにか?」
「自分の部門と出入りの業者のみに変更させたんだ、なんか、やってるかもね?」
「え?」
プレゼン準備室とは発表等を隣接する会議室で行う時に使用する機材を保管している部屋である。 元々は発表時の資料を作成する部屋であったが、パソコンで作成し、プロジェクターでスクリーンに映すようになった今では機材置き場になっていたのである。
そうは言っても椅子や机等はそのまま残されており、数人なら会議が出来る広さは保っていた。

本館の出入り口の殆どがIDカードによるセキュリティーが掛かっている。 配布されているIDカードの権限で入れる場所を制限しているのである。 警備員の話から推測すると、購買部と出入りの業者のみが、プレゼン準備室に入れるように変更されている。
休日出勤しているのは購買部では園田だけで、出入りの業者がわざわざ準備室には来ない。 となれば、園田と花屋だけが入れるようになっていることになる。

「いや、ちょっと前まで、あの園田はサ、花屋が来る休みの日は物流部の資材置き場の部屋へ花屋を連れ込んでいたらしいんだ」
「はぁ・・・」
「物流部も殆どが運送会社からの派遣だろ? 見て見ぬフリしていたんだけど、運悪く検査部の誰かに見つかったらしい」
「はあ、でも私には何のことか・・・」
「あ、あんた、設計部だったか、それじゃあまり園田の事は知らないか・・・」
園田は出資銀行から邪魔者同然にシステム・インテグレーション産業に出向させられているが、それなりに改革らしき事をやって来た。 それは以前の出向先で優秀な銀行マンがやったリストラを真似ただけであるが、それでもそれなりに効果を出していた。
手始めに物流部を外注化しコスト削減の効果を出した。 そして次々と手を伸ばしていったが、設計部だけは執行取締役製品企画部部長の山田が居るので手が出せていないのである。

「ま、そう言う訳で、場所を準備室に変えたんじゃないかな?」
「そうなんですか」
「だから、クビになりたくなかったら、準備室には行くな、もっとも中には入れないけどナ」
「はい、もともと、そこには用はないですから」
「そっか」

「あの花屋もここに売り込みに来なければ、園田に捉まることも無かったろうにな」
警備員は憐れむように声を落とした。
「あの、園田ってヤツは職権使って業者の女誑し込んでやがるのサ」
「え?」
「あんた、設計部だったら知ってるか?」
「何をですか?」
「甲陽精密なんとかとう会社の女が良く出入りしていただろう?」
「えっ?」
「その女も結構そそるんだよナ」
英生は柚布子のことを警備員が知っていることに驚いた。

「あの女なんか園田の好みだと思うよ。 絶対機会があれば物にしているサ」
英生は弥勒亭別邸での手打ち式の時の園田の印象を柚布子があまり良く言ってない事を思い出して心臓の鼓動が速くなるのを感じていた。 すでに園田の毒牙に妻が捕らわれたのではと・・・

「でも、最近来なくなったので一安心サ」
警備員は調整棟の入り口の鍵を開けると、最終退場者カードを英生に渡し、警備室に戻って行った。

英生の頭の中には園田の蜘蛛の糸に引っ掛かってもがいている半裸の柚布子とあの女がいた。 そして、一匹の蜘蛛があの女へ迫って行った。 女と同じ体格の蜘蛛である。 その蜘蛛の足が女の胸を押さえる。 昆虫の棘のある足に抑えられた乳房は蚯蚓腫れのような跡を付け苦痛の叫び声を上げる。
やがて蜘蛛は女の手足の倍の数の足で女の手足を広げると尻尾の先を女の股間に当てがい胴体を震えさせた。 女は絶命したかのように動かなくなった。
英生の妄想癖はエスカレートしていった。  



英生は警備員の「準備室へ行くな」というのは「準備室へ行けば面白いものが見られるぞ」と言っているように思えて仕方なった。


英生はシステムの調整しながらもプレゼン準備室の事が頭から離れなかった。 警備員の言うことが本当であれば、園田と花屋は何かをしているハズである。 何をしているか警備員は言わないが、言い回しから想像がつく。 しかし、一方で会社の一角でふしだらな行為が行われているという事も怪しいと思った。 準備室には入れないが、近くで様子を伺うことくらいしてみたいとも思った。

調整を初めてから資料の一部を持って来るのを忘れたことに気が付いた。 それが無くても調整は続けられるが、本館へ行く口実が必要であった。 英生は本館経由で設計部へ戻ることにした。 本館に着くとロビーを台車に観葉植物を乗せて曳いている男性が目に入った。 軽トラックを運転していた人に違いない。 あの女と同じ柄の作業用エプロンを付けていることから、同じ会社の同僚に思えた。 男性はロビーの観葉植物と台車の物とを交換すると、再び来た通路を戻っていった。 英生は軽トラッククに積むのだろうと思った。


英生は自然と抜き足差し足になって階段を4階まで上がりプレゼン準備室の近くの通路へ出た。 通路の陰からプレゼン準備室の前辺りを覗った。

プレゼン準備室の前の通路には観葉植物の鉢が一つあり、その脇には水遣りの道具が置かれていた。 そこにあの女が居ることを示す目印になっていた。

準備室の前で中を窺うと微かに男女の話声が聞こえる。 話の内容は分からないが、時折女が喘いでいるようにも聞こえた。 と、その時入り口のカード読み取り機の赤色のLEDが消灯し、緑色が点灯した。 英生が首から下げているIDカードに反応したらしい。
派遣である英生のIDカードの大分別は外注であった。 設定は大分別で行われていたので英生が準備室に入れる設定なっていた。

英生は過去に数回手伝いで準備室に入ったことがあった。 準備室は奥にもう一部屋あり、手前が機材置き場になっていて会議室へ直接入れる扉がある。 英生は意を決して中へ入った。 そこに園田達が居れば一貫の終わりである。 しかし、そこには誰もおらず、会話らしい声は奥の部屋から洩れていた。

奥の部屋へ続く扉は半開きになっておりそこからは信じられない光景が目に飛び込んで来た。 テーブルに突っ伏すような恰好で尻を突きだしている女にズボンを降ろした男の股間が押し付けられていた。 まるで、半開きの扉からわざと見えるような位置であった。
  1. 2014/11/03(月) 10:24:40|
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序破急 - 破の22 「落書きのモデル」

脳裏に焼き付いた記憶より、実物の方が勝っていた。 英生は仕事はキツイがその分あのトイレを覗く事が出来るのが楽しみだった。 散歩の振りして数分覗くだけである。 そして、それを脳裏に焼き直すのである。

落書きは時に加筆されていた。 英生が最後に見たそれはエスカレートしていて文字も増えていたが、何より男根が追加されていたのには興醒めだった。 その男根は小陰唇の上に亀頭が描かれて先端からは精液が流れていた。

今まで芸術的なタッチだったそれは一気に公園の便所の落書きに格下げされたように下品なものとなり、英生にとっては驚愕より落胆の方が大きかった。

しかし、英夫はそれでも見たいと思い周りを気にしながら調整棟のトイレを覗いた。 しかし、そこの個室の内側は新しいペンキが塗られていて落書きの跡すら無かった。

それと同じくして職場には節約を呼びかける回覧と一緒に「トイレを大事に使いましょう」という回覧が回っていた。 更に設計部の者は設計棟のトイレ以外は使わないようにと口頭で伝達されていた。

英生にはなんとなく落書きの事のような気がしていた。 落書きのことは噂で広まった。 それは「設計部の者は設計棟のトイレ以外は使わないように」という意味有り気な伝達から引き出された。



落書きは総務部のお堅い人の耳に入り、直ぐに消されたらしい。 その内容は兎も角誰が書いたかということが部長会での話題になり、その場所に関わる検査部、物流部、設計部が互いに他の部を犯人だと言い合いをしたらしい。 その結果、設計棟以外のトイレは使うなという伝達になったということである。

噂では設計部でその落書きを見たものは居ないらしい。 英生は派遣なのでそういった社内の恥に関することの聴取は行われない。 仮に行われたとしても見ていないと答えるであろう。 設計部員とて同じであろう。 と、言う事は設計部で見た者は居ないということも確かではない。 

しかし、設計部で落書きの内容について噂を聞くことは無かった。 社員と親交のある派遣仲間でさえ落書きの内容は知らなかった。 そして、この物語に磯貝が登場しなくなった今では、彼が悪戯書きの何処に参加したのかも分からないままとなってしまった。



この日は三連休の最終日で、英夫は休日出勤をした。 それも普段より早く出勤した。 それは、トラブル対応の為に地方へ出張する柚布子が朝早い新幹線に乗るのを見送ったからである。

平日なら守衛所の警備員にIDカードを示せば入館出来るが、休日に入館する場合は守衛所で記帳する必要がある。 英生が守衛所に着くと、車両の停止線に一台の軽トラックが停まっていた。 荷台には幌が掛けられていて何が積まれているか分からなかった。 そして、守衛所にはその軽トラックの人らしい女性が警備員と会話しながら記帳していた。

その女性はデニムのミニスカートにトレーナーの上にジャンパー、作業用の長い前掛けといったいでたちである。 英生からは後ろ姿ではあるが艶香を感じた。 入館票を左手で押さえて記帳している、その左手の薬指には結婚指輪が光っていた。
「人妻か」
英生はそう心で呟いた。

英生が守衛所の窓口に近づくと会話の一部が聞こえて来た。

「・・・円ならいいだろう?」
「また、また、冗談ばっかり」
「冷たいな、俺にもいい思いさせてくれよ、はずむからさぁ」
「うちは花屋ですよ、花は売っても、春は売らないの」
女は悪戯っぽく笑いながらバッヂを2つ掴み軽トラックの助手席に乗り込むと、軽トラックは発進し本館の方へと向かった。

その女が方向を変える時に英生に女の顔立ちが一瞬見えた。
「いい、おんな」
英生は声が出そうになった。 そして何処か妻の柚布子に似た雰囲気を感じた。 英生は軽トラックに乗り込む女の後ろ姿を視線で追った。 デニムのミニが艶っぽい、歳の頃は34、5歳に見えた。
デニムのミニから伸び脚はそれを覆う透けた被服が見えないことから生脚である。


既にIDカードを持っている常駐者と持たない出入りの業者とでは記帳が異なる。 英生は記帳簿に指名、カード番号、行き先と入退館時間を書くだけであるが。 出入りの業者は入館票に記入するのである。

英生が記帳簿に記入しようとすると、女が記帳した入館票が目に入った。 女をニヤニヤしながら目で追っている警備員がまだ片づけていないのである。 英生をそれを見て思わず目を疑った。

業者名:江南フラワーガーデン
氏名:袴田友布子 他1名

システム・インテグレーション産業にレンタルで鉢植えの観葉植物等をレンタルしている業者で、この日はその一部を入れ替えたり、水遣りや簡単な剪定をしに来たのである。 英生はそう云えば、その名前の花屋が駅前にあることを思い出した。

もしかしたら落書きのモデルはあの女だったのか・・・

もし、そうだとすると聞こえて来た会話は;
「なあ、検査部の連中に犯られているらしいじゃないか」
「何のことですか?」
「皆知ってるよ、検査部の若いのと嵌めたって噂だぜ」
「まあ、厭らしい噂ですのね」
「しかも、生で、羨ましいなぁ、中にたっぷり出させたらしいじゃないか」
「そんな、誰がそんな、馬鹿馬鹿しい・・・」
「検査部じゃ5人も同じ穴兄弟になっちまったって、いくらならやらせて貰えるんだい?」
「何言ってるんですか、もう」
「3万円ならいいだろう?」
「また、また、冗談ばっかり」
「冷たいな、俺にもいい思いさせてくれよ、はずむからさぁ」
「うちは花屋ですよ、花は売っても、春は売らないの」


「おい、おい、アンタ、ちゃんと枠の中へ記帳してくれよ」
警備員の注意する声で我に返った。
「す、すいません」
あの女と守衛との会話を妄想しているうちに枠からはみだして記入していた。
「アンタもあの女に見惚れたのか? よせよあの女は、これのお手付きだからさ」
警備員はそう言うと記帳簿の上の方を指で叩いた。 そこには「ソノダ」と雑に書かれていた。
「名前くらいちゃんと書けってんだよ」
「顔パスしよとしてた頃に比べれば良くなったサ」
奥のもう一人の警備員が割り込んで来た。
「俺たちも警備会社からの派遣だからさ、いちゃもん付けた仲間はここクビにさせられたサ」
窓口の警備員は渋い顔して頷いていた。
「花屋が来る時は、休みというのに出て来てサ、あの女と乳繰りあってるらしいよ、今日も」
「おい、おい」
奥の警備員が喋り過ぎだぞといった顔をして制した。

「私も派遣なんで、それに、そういう話興味無いんで」
英生はそう言うと、守衛所を後にした。 勿論興味は有り有りである。

  1. 2014/11/03(月) 10:23:33|
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強気な嫁が部長のイボチンで泡吹いた (4)
ハイト・アシュベリー・対 (10)
罪と罰・F.I (2)
浮気妻への制裁・亮介 (11)
一人病室にて・英明 (10)
復讐された妻・流浪人 (8)
1話完結■報復 (2)
■罠 (87)
ビックバンバン・ざじ (27)
夏の生贄・TELL ME (30)
贖罪・逆瀬川健一 (24)
若妻を罠に (2)
範子・夫 (4)
1話完結■罠 (0)
■レイプ (171)
輪姦される妻・なべしき (4)
月満ちて・hyde (21)
いまごろ、妻は・・・みなみのホタル (8)
嘱託輪姦・Hirosi (5)
私の日常・たかはる (21)
春雷・春幸 (4)
ある少年の一日・私の妻 (23)
告白・小林 守 (10)
牝は強い牡には抗えない。・山崎たかお (11)
堅物の妻が落とされていました・狂師 (9)
野外露出の代償・佐藤 (15)
妻が襲われて・・・ ・ダイヤ (6)
弘美・太郎棒 (11)
強奪された妻・坂井 (2)
痴漢に寝とられた彼女・りょう (16)
1話完結■レイプ (5)
■不倫・不貞・浮気 (788)
尻軽奈緒の話・ダイナ (3)
学生時代のスナック・見守る人 (2)
妻・美由紀・ベクちゃん (6)
押しに弱くて断れない性格の妻と巨根のAV男優・不詳 (8)
妻に貞操帯を着けられた日は・貞操帯夫 (17)
不貞の代償・信定 (77)
妻の浮気を容認?・橘 (18)
背信・流石川 (26)
鬼畜・純 (18)
鬼畜++・柏原 (65)
黒人に中出しされる妻・クロネコ (13)
最近嫁がエロくなったと思ったら (6)
妻の加奈が、出張中に他の男の恋人になった (5)
他の男性とセックスしてる妻 (3)
断れない性格の妻は結婚後も元カレに出されていた!・馬浪夫 (3)
ラブホのライター・され夫 (7)
理恵の浮気に興奮・ユージ (3)
どうしてくれよう・お馬鹿 (11)
器・Tear (14)
仲のよい妻が・・・まぬけな夫 (15)
真面目な妻が・ニシヤマ (7)
自業自得・勇輔 (6)
ブルマー姿の妻が (3)
売れない芸人と妻の結婚性活・ニチロー (25)
ココロ・黒熊 (15)
妻に射精をコントロールされて (3)
疑惑・again (5)
浮気から・アキラ (5)
夫の願い・願う夫 (6)
プライド・高田 (13)
信頼関係・あきお (19)
ココロとカラダ・あきら (39)
ガラム・異邦人 (33)
言い出せない私・・・「AF!」 (27)
再びの妻・WA (51)
股聞き・風 (13)
黒か白か…川越男 (37)
死の淵から・死神 (26)
強がり君・強がり君 (17)
夢うつつ・愚か者 (17)
離婚の間際にわたしは妻が他の男に抱かれているところを目撃しました・匿名 (4)
花濫・夢想原人 (47)
初めて見た浮気現場 (5)
敗北・マスカラス (4)
貞淑な妻・愛妻家 (6)
夫婦の絆・北斗七星 (6)
心の闇・北斗七星 (11)
1話完結■不倫・不貞・浮気 (18)
■寝取らせ (263)
揺れる胸・晦冥 (29)
妻がこうなるとは・妻の尻男 (7)
28歳巨乳妻×45歳他人棒・ ヒロ (11)
妻からのメール・あきら (6)
一夜で変貌した妻・田舎の狸 (39)
元カノ・らいと (21)
愛妻を試したら・星 (3)
嫁を会社の後輩に抱かせた・京子の夫 (5)
妻への夜這い依頼・則子の夫 (22)
寝取らせたのにM男になってしまった・M旦那 (15)
● 宵 待 妻・小野まさお (11)
妻の変貌・ごう (13)
妻をエロ上司のオモチャに・迷う夫 (8)
初めて・・・・体験。・GIG (24)
優しい妻 ・妄僧 (3)
妻の他人棒経験まで・きたむら (26)
淫乱妻サチ子・博 (12)
1話完結■寝取らせ (8)
■道明ワールド(権力と女そして人間模様) (423)
保健師先生(舟木と雅子) (22)
父への憧れ(舟木と真希) (15)
地獄の底から (32)
夫婦模様 (64)
こころ清き人・道明 (34)
知られたくない遊び (39)
春が来た・道明 (99)
胎動の夏・道明 (25)
それぞれの秋・道明 (25)
冬のお天道様・道明 (26)
灼熱の太陽・道明 (4)
落とし穴・道明 (38)
■未分類 (571)
タガが外れました・ひろし (13)
妻と鉢合わせ・まさる (8)
妻のヌードモデル体験・裕一 (46)
妻 結美子・まさひろ (5)
妻の黄金週間・夢魔 (23)
通勤快速・サラリーマン (11)
臭市・ミミズ (17)
野球妻・最後のバッター (14)
売られたビデオ・どる (7)
ああ、妻よ、愛しき妻よ・愛しき妻よ (7)
無防備な妻はみんなのオモチャ・のぶ (87)
契約会・麗 (38)
もうひとつの人生・kyo (17)
風・フェレット (35)
窓明かり ・BJ (14)
「妻の秘密」・街で偶然に・・・ (33)
鎖縛~さばく~・BJ (12)
幸せな結末・和君 (90)
妻を育てる・さとし (60)
輪・妄僧 (3)
名器・北斗七星 (14)
つまがり(妻借り)・北斗七星 (5)
京子の1日・北斗七星 (6)
1話完結■未分類 (1)
■寝取られ動画 (37)
■失敗しない為のライブチャット格安攻略 (5)

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