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闇文庫

主に寝取られ物を集めた、個人文庫です。

春が来た 第1回

 私の名は江島晃一55歳、ある県の技術職員である
就職直後の上司と衝突してから、県の出先施設を転々と異動し
ここの支所で4年目を迎える
同一職場で4年目を迎えることができるのは、今回が初めてである
理由ははっきりしている
それは今の職場が余りにも田舎で、地域の人がのんびりしていてクレームがでないこと
そして、他の同僚も病気持ちか、癖のある者か、退職目前の年寄りばかり
要は、そんな職員ばかりを集めた職場なのである
私もここで退職を迎えるか、もう1度、異動があるかというところである

この春の異動で新しい所長が赴任した
この所長はいいとこのボンボンで、まだまだ出世する男である
少なくとも2年経てば、再び本庁に昇格して戻るとの噂である

もう一人、女性の事務員が赴任してきた
私好みで、色気のある一癖ありそうな女、人妻である
着任早々、暴走族の乗るような車に乗り、派手な服装で出勤し、ギャーギャー
喋り捲る・・・・・・・・変わった女だ

私の席は所長の目の前、女の事務員の席は私の前
否が応でも顔を上げると女の顔が見える
この女、やはり癖がありそうだ


「おう・・伊藤よ、お前、昔ヤンキーだろ?」


女事務員は手の甲にクリームを塗り、摺りあわせていたが

「そんなことないです!あの車は旦那の車、私、背が高いから軽四は嫌なんです」

「ほう・・それに、お前の化粧と着ている物、派手じゃないか?」

「そうですか?私、まだまだ女、捨ててないですから・・・」


江島は笑った
こいつは面白い
これで1年間は楽しめそうだ
  1. 2014/11/10(月) 09:39:52|
  2. 春が来た・道明
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春が来た 第2回

私の名は伊藤瑞希32歳、旦那の名は一介34歳、両親と同居で男の子が一人いる
この春の異動で本庁からこの支所に転勤
前の職場では、病気で半年間休職
その後、職場復帰したものの仕事らしい仕事はさせて貰えず
臨職の女性たちとお喋り三昧
そうしたら、こんな異動に・・・・・ああ、面白くない
遣っていけるかしら?

それにしても、目の前のこの男、ヤクザのような話し方
この支所の臨職の女性と金曜は飲み会をしているらしいし、その人のお尻もさわる
年は55歳のおっちゃんで、役職は係長
派手なスーツに髭を生やして、ほんとに変なおっちゃん
ボウーとしていて扱いやすそう
でも、早くこんなところから脱出しないと
年寄りばかりの職場なんて
私の魅力が発揮できない

所長の席の前というのがちょっと気がかり
この所長、やり手の人らしいし、真面目そう
ちょっとカラかってやれ


「新藤所長、私たちメルアドの交換しません?」

「えっ?」

「江島係長と三人で互いのメルアドを登録しておきましょうよ
 緊急時に電話するより安いし、助かると思うんですが・・・・」

「ああ、そうだなぁ・・・」

「じゃ、決まり!所長と係長の携帯だして下さい
 私がみんなの分、登録しますから」


瑞希は所長席に向かった
「所長!なんですかコレ・・・活けてないですう」

新藤所長の携帯は多機能の最新鋭だが
裏に、太字で携帯番号を印字した太目の白いテープが貼られていた
  1. 2014/11/10(月) 09:41:08|
  2. 春が来た・道明
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春が来た 第3回

私の名は新藤進50歳、定年まであと10年
この春の異動で幸運にも本県の幹部に昇格
まあ、私の実力からすれば遅すぎるぐらいだ
昇格とは言え、こんな支所に配属なんて思っても見なかった
まあ、いいや
1年、英気を養って本庁に戻ればいいんだから
それにしても、目の前の男
厄介な部下だ

県職員の中で札付きの怠け者
上司の命令に従わず、勝って気ままのやり放題
態度も横柄でこの地域住民の評判も悪そう
電話の受け応えを見ても、まるでヤクザ
今日も本庁の技術職員を怒鳴りつけていた
まったく困ったものだ
何か問題でも起こされたら、私の管理能力が問われてしまう

女の方は特に何も聞いていない
なんか幼くて可愛い感じがする
とても、子持ちの人妻とは思えない・・・まるで世間知らずのお嬢さん風
化粧は濃い目だが細身で長身、それに長い髪
時々見せるあの髪を掻き揚げる仕草には
ぞくっとくる
顔は色白で・・

あっ、いかん、いかん
何を考えているんだ、私は!


それにしても、この部屋の座席のレイアウトは何だ
支所窓口の方から見えなくなっていて、まるでこの三人の専用空間だ
それに、なぜ彼が所長の私の前の席にいるんだ?
これと言って仕事もないし
前の二人の雑談ばかりが、嫌でも聞こえてくる
何かすることを見つけないとコレじゃぼけてしまうぞ
しっかりしろ!新藤進よ
ああ、1日が長い・・・・

新藤の視線の先には瑞希の横顔が見える
  1. 2014/11/10(月) 09:43:11|
  2. 春が来た・道明
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春が来た 第4回

 伊藤瑞希が前任の事務員との電話で騒いでいる

「なぜ私が、そんなことをしなくちゃならないんですか?」


 どうも前任者から
 毎朝、職員のために珈琲を準備して出すように言われているらしい


「インスタントの珈琲ぐらい
各自で好きな時に入れて、飲めばいいのではないですか?」

 相手が好きなようにしなさいとばかりに電話を切った


「もう!ほんとに!いきなり切るなんて」

「おう、伊藤よ・・・どうしたんだ?」

「いえ、前任者の方がいろいろと・・・」

「あの馬鹿ブスのことは放っておけ・・俺の言うことも完全に無視しやがった
 今度何か言ってきたら、俺に代われや、ばしっと言ってやる」

「よっ!係長・・・頼もしいわ」

 瑞希が江藤にVサインを出した



「それにしてもお前、今日も服装が若いなぁ・・歳はいくつだ?」

「まぁ・・20代と言いたいところですが、32歳でーす」

「ほうう、32か?・・・32にしては細くて長い外人のような、良い足してるなぁ」

「そうですか・・・?」

「それに肌の色が、透き通るように白い」

「まぁ・・係長ったら」

 瑞希は白い長い腕を耳に近づけ、長い髪を掻き揚げる
 江島はその仕草を目を細めて正面からじっと見つめている
 所長の新藤も読みかけの新聞をデスクに置き、眼鏡の奥から瑞希に視線を送る
 それに気づいた瑞希は


「あっ、そうそう・・所長、所長にお話ししときたいことがありまして」

 瑞希が座ったままで新藤に話しかける

「ああ、うん・・伊藤さん、上司に話すときは机の前まで来て、話すのが礼儀ですよ」

「あっ、すみません」


 瑞希が新藤の机の前にやって来た
 新藤の鼻に瑞希の香水の匂いが届き、うっとりとした気分になる


「あら?・・所長、うーん・・少し良くなりました」

「ええー?」

「この携帯・・携帯です」

 新藤の机の上の携帯電話には
 新らしく番号が印字された細めのテープが貼られていた
  1. 2014/11/10(月) 09:44:00|
  2. 春が来た・道明
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春が来た 第5回

今日も瑞希と江島が朝から雑談している


 「お前、その爪、職場でつけてて大丈夫か?俺はかまわないけどなぁ」

 「そう?これ、高かったのよ」

 白く細長い指先の爪には、模様の付いた長い爪が光っている


 「ふーん・・それに、その服も・・センスがいいし、白い肌に似合っている」

 「係長・・・上手なんだから・・」

 「どうだい・・一度飲みに行くか?」

 「うーん、どうしようかなぁ」

 「よう・・いこうぜ」


 新藤が舌打ちをした
 此れといって仕事がない新藤には、二人の雑談は自然と耳に入ってくる


 「ちょっと考えさせてね・・・係長」

 「ああ・・・」

 江島はいつものように、別室に休憩にいく
 休憩にいくと30分から1時間は戻ってこない
 新藤が瑞希に話しかける

 
「えーと・・・伊藤さん、知ってるかなぁ」

「何ですか、所長」

「江藤係長のこと・・・」

「係長のことって?」

「彼、いつもあんな態度だろう
 だから、県庁内では上司に反抗する怠け職員というレッテルが貼られていて
 それに、女の子のお尻をさわるしセクハラの常習犯でもあるという噂なんだ
 気をつけたほうがいいよ」

「でも所長
 係長は職員のゴルフ同好会の代表をしていて、メンバーにいろいろ指示したりして
 面倒見もいいし、しっかりしていますよ
 この間も、ここにメンバーが訪ねてきて、私、お茶を持って行ったら
 その人たち、係長を親分のように立てていましたし・・・
 それと・・うふ!」

「なんだい・・・それと?」

「うーん・・その人たち、私のことを褒めてくれて」

「君を褒めた?」

「もう・・係長ったら、みんなの前で私のことを可愛いとか、美人だとか・・」

「はぁ!・・・もういいよ、伊藤さん
 とにかく、彼には用心したほうがいいと思うよ」


新藤は溜息をついた

自分が席を外したとき、この二人はいったいどんな風に執務しているのか
まさか、雑談三昧?この伊藤さんが江藤係長の暇つぶしの相手方に?
こんな女性職員とやくざ係長など今までの職場で見たことが無い・・・・

新藤は再び天井を見て大きな溜息をついた
  1. 2014/11/10(月) 09:44:45|
  2. 春が来た・道明
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春が来た 第6回

 今日の瑞希の服装は白いワンピースに黒のバンド
 ワンピースの下裾には黒のフリルが付いている
 
 瑞希はいつもの雑談相手が珍しく現場に出かけて居ないこともあって
 落ち着いた雰囲気でパソコンの画面に向き合ってキーボードを叩いている
 背筋を伸ばし、まるで大企業の重役秘書のようだ
 その横顔に新藤は見とれていた
 不思議な娘だ・・・・・・・いや奥さんか


「伊藤さん、ちょっといいかな」

 瑞希が新藤の顔を見る
 瑞希の目が悪戯っぽい少女の目つきになった


「実は先週の金曜日なんだけど・・退所時に、江島係長が臨職の女性の車に乗っていたんだ
 確かその前の金曜日にも同じ様に
 彼はあの奥さんに、駅まで送ってもらっているのかなぁ?」

「えー・・所長は知らなかったのですか?みんな言ってますよ
 花の金曜日!江島係長はあの奥さんとご飯を食べたり、飲みに 行ったりしてるって」

「えっ!そうなの・・・
 まさかとは思うが、二人とも所帯持ちなんだから
 余り疑われるような行動は、慎んだほうが・・・」

「所長・・・心配し過ぎですよ・・食事やお酒を飲むぐらいで」

「うーん、そうかなぁ」

「江島係長は、私の車にも乗せろって言うんですよ」

「君の車にも?」

「はい
 係長は、電車通勤でしょう
 だから、朝の出勤途上で拾ってほしいと
 でね・・この頃、駅付近で車を留めて待っているんです」

「そ、そんなことしていると・・・他の職員から同伴出勤していると言われるぞ」

「同伴出勤って?・・そんなんじゃありません!
 出勤の途中で拾っているだけです
 へへん・・・でね、所長
 それをする代りに、係長には重い荷物を運んでもらっているんです
 私、荷物を持つのは苦手でしょう・・・・助かるんです」

「そ、そう言えばそんなことが・・・」

「そのほかにも・・両手が塞がっていればドアを開けてくれるし、優しいでしょう?
 なので、パソコンが苦手な係長に代わって私がしたりして・・」

 新藤は呆れた顔になった、そして厭味を言った


「そうなんだ・・あなた達、二人はもうそんな仲に・・・
 彼は仕事をしないで、女の扱い方ばかりを磨いているからなぁ
 お昼は必ず対面していつも決まった席に座り、あなたが彼の御茶を入れる
 そして、ワイワイ話をしながら楽しく食事をする
 周りの職員の気配すら感じないかのように・・・・・・
 まるで、新婚の夫婦だ・・いや、あつあつの恋人同士かなぁ
 もしも私の妻がそんなことをしていたら、私は我慢ならないし、即・・離婚だ
 あなたのご主人は平気なのかな?それとも家では上手くごまかしているのかな?
 それに、荷物を運ぶのも、パソコンを操作するのも
 私にはいちゃつくための口実としか思えないけどねぇ」


 瑞希の目が遠くを見つめるように細くなり、新藤から視線をそらした
  1. 2014/11/10(月) 09:45:30|
  2. 春が来た・道明
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春が来た 第7回

 新藤は久しぶりに本庁に来ている
 常任委員会終了後、瑞希の異動前の所属課に顔を出した
 そこの課長は新藤と同期の桜だ


「よう、新藤・・・昇格しての新部署はどうだい・・もう慣れたか?」

「おう、慣れるも何も・・・自ら手がける仕事らしい仕事が無いからなぁ」

「それは、良いご身分で結構なこと・・・
 そらそうと、この間お宅の伊藤さんがここに来ていたが
 彼女、何かあったのか?」

 同期の桜が目を細めてにこやかに新藤を見る


「何かって?」

「見たところ・・凄く元気そうに活きいきして
 ここを出るときとは大違い、まるで別人のようでさぁ」

「えー・・・彼女、ここではそんなに元気がなかったのか?」

「ああ・・1日中パソコンの画面をボーとみているとか
 そうそう、確かここに配属された年は半年ぐらい休職していたなぁ
 職場復帰後も無気力感が漂っていて、担当の係長がぼやいていた」

「そうなの?
 私のところでは、毎日喧しいぐらいに話をして元気一杯なんだけど
 その話題がなぁ・・・・」

 新藤の顔が崩れている


「休憩時間もお昼休みも
 ファッション、車、グルメ・・・
 係長の江藤を相手に喋りまくるんだ、係長も奇声を出す始末 で・・・・毎日だぞ
 私は、弁当を食べると嫌になって直ぐに部屋を出るんだけど
 二人とも話す声が大きくて
 係長が下ネタの話をしだすと、回りの職員も同じようにガヤガヤと
 彼女、長身だろ、短いスカートで係長の目の前で足を組みかえるんだ
 すると、係長は覗く様な格好をして、それをまた回りの職員が一緒になって
 囃し立てる・・・・・・・・全く私の職場が安キャバレーのようで」

「おい、新藤・・・お前は人事管理は苦手なようだから
 早めに人事に相談しておいたほうがいいぞ
 その江藤係長は昔からなにかと有名だし、伊藤のことも情報を入れておくことだなぁ
 伊藤も厄介だが、それに加えて江藤係長もいるのか・・・」

「えっー!なに伊藤さんも厄介?」

「ああ・・早く相談をしておくことを薦めるよ」


 新藤は着任してまだ日が経っていない
 地域団体への挨拶回りや本庁の会議が重なり、人事への相談はもう少し先のことになる
  1. 2014/11/10(月) 09:46:22|
  2. 春が来た・道明
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春が来た 第8回

5月末となり、新藤はイライラが募る

江藤係長は仕事もろくにせず
午前1回、午後1回決まって珈琲タイムを取る
それも約1時間
その休憩に、瑞希が付き合っている
瑞希は江藤の分まで珈琲を用意し、楽しく談笑の世界に入っている
机の上の電話が鳴ろうとお構い無しだ
話し声が大きくて、新藤の気分を苛立たせる
この間も、新藤が休息室に入ってみると
深い応接セットに二人は対面に腰を掛け
瑞希は丈の短いスカートから覗く長い足を何度も組みかえる
その都度、柔らかそうな太腿が新藤の位置からでも見えてしまう


(なんだ、この雰囲気は?まるでピンクサロンじゃないか!)


二人は、新藤の存在が無いかのごとく、自分達の世界、自分達の会話に没頭している
離席する時も、支所の外へ出る時も何も言わずに出て行く
まるで所長の新藤を無視しているようにも思える・・・・・・・
ある時、瑞希が本庁に用務で出かけ、江藤も一緒に出かけた
帰ってきた二人の様子が、何時もの馴れた雰囲気と異なり距離間がある


(おや・・・なんかおかしい、何時もと違う)


新藤は、江藤が女性職員のお尻を触るのを何度と無く見ていた
それとなく、セクハラ行為は特に公務員には致命傷になると話したことがあるが
江藤はお構い無しで、何処吹く風


(はーん・・・江藤め、手を出したなぁ)


しかしその後、二人の雰囲気は元に戻り、執務状況は益々おしどり夫婦のようになり、他部署の職員もその雰囲気にあてられて行った


(何か手を打たねば駄目だ・・・・もう春は過ぎたというのに色気づく雄と雌)


新藤は外から見えない三人だけの事務室でイライラが益々募る
この支所での最高責任者と言えども、素直に言うことを聞かない二人
1人対2人の構図の執務室ではなんとも手の打ち様が無く、頭を抱え込む

ここで漸く人事課へ相談を持ちかけたのだ
  1. 2014/11/10(月) 09:47:07|
  2. 春が来た・道明
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春が来た 第9回

人事課長と新藤は真剣な表情で話し合っていた


「課長・・・全く困ったよ、あの二人・・」

「はい」

「男はヤクザのような言葉遣いの怠け者
 女はピンクサロンにいるエロ事務員
 この二人がエロ話に花を咲かせ、他の職員が影響を受け
 男性職員は落ち着きがなく、競ってエロ事務員のご機嫌取りになってしまっているようだ
 ただ、幸いにも今のところ業務にはまだ失態はないが、いずれ出るだろうし
 何よりも、私の神聖な職場の雰囲気が壊されて、緊張感を欠いているのが心配だ」

「ええ・・」

「課長・・・ここだけの話だが、あの二人は普通じゃない・・・
 ひょっとして・・・もう特別な関係にあるのではと思えてしまうぐらいなんだ」


人事課長は新藤の率直な問いかけに、暫くして

「それは無いと思います」

「えっ?私の目の前で二人だけの世界を作っているんだぞ
 それに、お昼も一緒、休憩も一緒
 話す話題はくだらないことばかり、特に男と女のアノ話に夢中なんだ
 パソコンの操作を教えてくれと言っては
 伊藤さんを側に寄せて、いちゃいちゃしながらキーボードを操作する
 肢体が触れ合っているんだ」

「うーん、でも・・彼女には別の男がいて、まだ・・・」

「なに!!今、何と言った?」

「所長がそこまで仰るので話すのですが
 彼女は以前の職場でも前歴があるのです
 相手は江藤とは別の男ですが、やっていることは全く一緒です
 その課の親睦旅行に
 この二人、もっともらしい理由をつけて参加しませんでしたが
 別のところにいるのを、職員に見られているのです」

「なんだと!」


新藤の目が怒りに溢れる
  1. 2014/11/11(火) 07:18:16|
  2. 春が来た・道明
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春が来た 第10回

人事課長は更に続ける


「その相手の男性職員もだらしの無い男で
 確か、最近・・・理由はわかりませんが離婚をしています
 その男とまだ彼女は続いていると私は思っているのですが」

「確かか?それは!
 その相手の職員は、何処の部署の誰なんだい?」

「・・・・うーん、県民・・課の・・・という男です。だらしの無い職員です」

「そ、そうなんだ・・・」

「それに、江藤係長の方も・・・・
 少し昔になりますが
 今、・・・課にいる女性職員をアッシーにしていたんですが、ある時、その女性とホテルから出てくるところを職員に見られています
 その女性職員とは、今はもう切れているようですが・・・」

「なにー!それじゃ、あの二人は・・・」

「ええ・・不道徳極まりない屑の職員です
 何処の職場にも馴染めず迷惑を掛け、組織からはみ出し、好き放題を続けています
 まるで、職場に遊びに来ているとしか思えません
 異動できる職場が見つからず、人事課もこの二人には苦慮しています
 県民にとって不要な職員で、どこかで潰れて辞めてくれるか・・事件でも起こして処分できればいいのですが・・」

「おい、おい!そんな二人が目の前の席にいるんだぞ」

「私もまさか・・伊藤さんの配置先に、江藤係長がいたとは・・」

「はぁー?」

「これまで、異動のたびに、それぞれの上司が人事課に相談に来られました
 今、所長が仰られたことと、ほとんど変わりません
 その二人が向かいあわせとは、申し訳ないことでした」

「うーん」

新藤は天井を睨みつけた、そして言った


「課長・・再度聞くが
 江藤係長と伊藤さんは特別な関係にはなりえないと言うんだな」

「ええ・・伊藤さんは前の男と続いていると思いますから
 江藤係長が手を出しても肘鉄をくらうでしょう」

「そうか・・それでこの前そんな気を感じたんだ
 でも、あの二人の馴れ馴れしい関係は何なんだろう
 周りの人を二人の間に入れないというか、周りが目に入らないという感じで
 どうして、そんな二人だけの世界を創りだせるのか・・・不思議でならない
 ああ、そうそう、課長・・
 江藤係長はうちの支所の臨時の・・という奥さんを今、アッシーに使っている
 めしを食べたり、酒をのんだりしているらしい」

「そうですか?それは初耳ですが江藤のやりそうなことです
 それで所長、人事課が手を出せるのは人事異動の時、つまり来春になりますが
 それまでは、相談しながら所長のほうで対応をお願いしたいと思います
 必ず、来春二人とも異動させますので、思い切った手を打たれてもかまいません」

「よーし・・分かった
 私の思うようにだなぁ
 あの二人は県民の敵だ、真面目に働く職員の恥じさらしだ
 全体の奉仕者という崇高な精神、県民の公僕たる使命を忘れた公務員
 私の職場に本来あるべき秩序と執務環境を構築して、部下に徹底させてみせる
 それに、自分の妻や夫を裏切って快楽に溺れる男女・・・
 天に代わって、私が可能な限りの仕置きをしてやる!」

新藤は、人事課長から聞かされた情報を鵜呑みにして、自分を鼓舞していた
  1. 2014/11/11(火) 07:19:00|
  2. 春が来た・道明
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春が来た 第11回

  新藤は人事課からの帰りに
  以前の課で上司と部下の関係でプロジェクトを推進した女性課長の部署に足が向いていた
  このまま、苛ついた感情のままで支所に帰れなかったのだ


 「よう、課長・・お元気そうだね」

 「まぁ、新藤所長・・昇格、おめでとうございます
  お茶をお入れしましょうか?」

 「そう?じゃ・・頂くか」

 新藤はこの女性課長がお気に入りだ
 仕事はもちろんできる
 45歳でまだ独身
 気の許せるパートナーであった
 自然と話は、新しい職場の話題になっていった
 新藤はここでも、瑞希と江藤係長の様子を
 見たまま、感じたままを、率直に話していた


 「所長・・・ご熱心ですね」

 「そうかなぁ」

 「ええ、間違いなく・・・
  その話に出てくる伊藤さんという方が、羨ましい」

 「なんで?」

 「うーん
  所長がその女性に夢中なんですから」

 「えっ!私が伊藤さんに夢中?」

 「はい
  話を伺っている感じからして、所長が伊藤さんに関心を寄せていると」

 「私が伊藤さんに関心を?そんな馬鹿な
  彼女とは年も離れているし、彼女に何もしていないし、話してないし・・
  それに、彼女は子どもがいる人妻だよ・・・そんなことあり得ない」

 「いいえ
  男と女のことに、年齢差も家庭も関係ありません
  世の中にそんな例は沢山あります
  所長とは1年間、同じ職場でしたけど・・・・
  所長は私のことを女として見てくれてなかった
  なのに・・・・伊藤さんという女性にはこんなに」

 「待って!
  私があなたを女性として見ていなかったなんて、違うよ
  あなたは素敵な女性だし、仕事もよくできる良きパートナーと
  いつも思っていた・・・ただ、私は女性にそんな態度や感情を見せない男なんだ」

 「そうなんですか
  私も仕事上の感は鋭いほうですが、男女間のことは素直になれなくて・・」

 「あなたは、本当に素敵な女性で・・・私は大好きだよ
  それに、何と言ってもあなたと話していると心が和む」

 「有難うございます
  でも、その伊藤さんにはちょっと心配ですね・・所長」

 「うーん・・・
  実は、私の家内もあなたと同じ事を言った
  “あなた、ちょっとおかしいわよ”って」

 「やっぱり!それが女の感ですよ
  所長・・・奥様の言ったこと
  当たってますよ・・・・・・気をつけないと」

 「ああ、ここに寄ってよかったよ・・・有難う」


  新藤は自分自身、気が付いていない心の奥底を見通されたことに驚いた

 自分が瑞希に魅かれている?
 そのことに起因して、私が江藤に嫉妬して厳しくあたっている?
 これは厄介だ・・そんな風に他の職員に思われては大変なことになる
 本来の人事管理上の問題が、一人の女を間にした男二人の喧嘩になってしまう
 気をつけなければいけない・・・あくまで、上司からの指導なんだから
  1. 2014/11/11(火) 07:19:48|
  2. 春が来た・道明
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春が来た 第12回

 江藤は4月から休暇を取っていない
 毎日、職場に出てくるのが楽しみになっているからだ
 目の前に可愛い女がパソコンを叩いている
 頸を傾げ、合間に自分の方にちらっと視線を投げかけてくる時がある
 視線が交わると、ドキッとする・・久しぶりだこの感覚は
 いい女だ・・・・いい雰囲気を持っている
 その女の顔を今日も眺めている


 あれは・・4月の歓送迎会のお開きの後、二人で駅まで歩いた

「おい、伊藤よ・・所長のことどう思う」

「所長ですか?」

「俺は今まで、職場を転々としてきた
 そして、いろいろな上司を見てきたが
みんなほぼ同じ行動、考え方、タイプだった・・・公務員気質そのもの
 俺を怖がり、無視を決め込み、裏で早期の異動をさせることを考えていた
 だが、今度の上司、新藤所長は全く違う
 俺にも声をかけ、仕事の内容を聞いてくるし
 俺を怖がらず、同じ目線で対応してくる・・・そして、仕事の指示までしてくる」

「そうですね・・・
 ただのエリートのぼんぼん所長ではなさそうですね」

「お前もそう思うか?」

「ええ・・・見ていないようで、聞いていないようで、寛大なようで
 でも、鋭く観察しているし、情報も集めているし、細かいことも言う
 何よりも、正義感が強く、誠実で潔癖、人と家庭を大事にして
 本当に、公務員の鏡とでも言えそうな人かな・・」

「俺にとっては、大変な上司が来たもんだ・・・ああ、お前にとってもかな?」

 江藤はさり気なく、瑞希の腰に手を伸ばしたが
 瑞希はその手を払いのける


「俺はこんな人間だし・・ここの職場はみんな傷のある職員ばかりいる
 お前もそうなんだろう・・・ええ、伊藤よ」

「いいえ・・私は何にもありませんよ」

「ふん、そうかい・・・だが、お前とはウマが合いそうだ
 まあ、宜しく頼むわ・・・なぁ、伊藤」

 今度は、江藤の手が瑞希のお尻に向かう
 瑞希は立ち止まり、江藤の目を見据えて言った



「係長!私はあなたが思っている様な女じゃないです」

「ふん!そうですか・・・・
 だが、伊藤よ・・・・俺たち、職場ではタッグを組んでおこうぜ
 恐らく、それが身を守る強い武器となる・・・・いいな」


 江藤は椅子にふんぞり返ったまま、再びパソコンを叩いている目の前の女を見る
 美しいだけでなく、芯のしっかりした・・・いい女だ
 ここのみんなに見せているのは・・・創りものの偽りの姿か?
 瑞希・・お前の正体なんてどうでもいい、先ずはその肢体、どんな味がするか
 俺が試食してやる
  1. 2014/11/11(火) 07:20:50|
  2. 春が来た・道明
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春が来た 第13回

瑞希は新藤所長への対応が上手くつかめない
学生の頃に両親にこっ酷く叱られた、水商売のバイトの経験を以ってしても
新藤の心を掴めないのだ
大概の男は振り向かせる自信がある瑞希だが、新藤はどうも勝手が違う

4月は、大らかで、明朗・・・そして何よりも優しさが溢れていた
ところが、5月の連休明けから様子が変わってきた
あれほど寛大であった所長が、細かいことまで叱ってくる
机の上には「上司が鬼とならねば部下は・・・」の本
時々見せる鋭い視線
江藤係長との休息時の会話に割って入って、私を馬鹿にする

優しかった所長
私のセンスを褒めてくれた所長

「今日の伊藤さん・・・素敵だよ」

所長が朝、私が席に着いた時、何気なく言ってくれたことがある
驚いたし、嬉しかった


「伊藤さんの家族は?・・・ご主人とは恋愛かい?
 へぇー、お子さんは小学4年?そんな子がいるお母さんには見えないよ」

思いやりがあり、親しく接してくれた


「これお土産・・お守りだよ、身体が弱いと聞いていたから」

それは、どこで調べたのか私の干支のお守り
ほんとに優しくて、いい人、安心できる上司・・・・・・だった
それが、今は違う
私を完全に無視している・・・・なぜなの?


そして、こんなことも・・

江藤係長が言った

「おい、伊藤・・お前、この支所で美人だとの評判が立っているぞ
 そのスタイルとその顔、その服装のセンス・・ここの男性職員の噂の的だ」

所長が口を挟む

「そうかなぁ・・人の良し悪しは外見じゃない
 人柄や知性など内から滲み出るもので決まるものだと思うけど
 見栄えで逆上せる男もいるだろうけれども
 私は、伊藤さんはちょっとなぁ・・・・」

ショックだった
人の前で、あの優しかった所長のこの言葉・・・・・忘れられない

なぜ?なぜなの・・・・所長

そして
「伊藤さん・・・いくら暇でも、することはあるだろう?
 暇な職場に移った時こそ、英気を養う絶好の機会だ、勉強したまえ
 あなたは、休憩が長すぎるんだ・・他の職員が汗を流して働いているのに
 サボリの係長と程度の悪い話題で会話に夢中とは情けない
 あなたはまだ若いんだ、メリハリをつけて休息したまえ」

「なんだ、今日のその服装は!仕事をする気がないなぁ
 ここへ、遊びにきているのか?公務員に相応しい身だしなみを考えろよ」

酷い、酷すぎる・・・・所長
  1. 2014/11/11(火) 07:21:43|
  2. 春が来た・道明
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春が来た 第14回

そして、その時がきた


その日の午後の休憩のとき
私と江藤係長は何時ものように珈琲を飲み談笑し
つい、私は会話に夢中になり時間を忘れていた
突然、休息室のドアが開いた


「そこの二人!いつまで休憩しているんだ!
 この時間、窓口の対応で休み無く働いている職員もいるんだぞ
 おい、江藤係長・・・所長命令を無視しているな
 前に言ったが一度も実行していないだろう!
 エリア内の公共施設の点検をしに巡回に出ろと、それが君の職務だろ
 忘れたか?」

「忘れていませんよ、私は・・・・行きますよ、必要なときにね
 でも、あなたも毎日、暇そうに本を読んでいるだけで
 何も、していないじゃないですか?
 あなたの本音は
 ここでこうして二人でお茶しているのが、気に入らないだけだ」

「馬鹿か?お前は!」

「お前と言うな!お前と!」

「それは悪かった、係長と呼べばいいのかな
 だが、私の命令をはっきりと理解していないようなので
 改めて、再度命令するよ
 毎日1回、必ず巡回に出なさい・・・計画を立て、1年以内に全ての施設の点検を
 所長命令だぞ、江藤係長!
 それと、労働基準法が改正されて、以前のような休息時間は無くなったんだよ
 あるのは、手待ち時間のみ、要は待機時間だ
 君たちが毎日、午前と午後の2回、1時間近く珈琲タイムを取ることは許されない
 それに、私が読んでいるのは職員管理の本だ
 私の職務のための勉強だよ
 私の仕事はね、県民の期待に応えられるように部下を育成し、個々の持てる能力をいかに発揮させるか
 つまり、君や君の前で色気を振りまいている事務員を働かせるのが私の仕事なんだよ、係長・・分かったかい!」

「ふん!ここではあんたが一番えらいからなぁ・・」

「一番えらい?・・・この捻くれ者が」

この時、怒鳴り声を聞きつけた他部署の職員が駆けつけてきた


「所長・・どうかされましたか?」

「いや、ご免、ご免・・大声をだして悪かった
 今、江藤係長に再度、仕事の命令をしたところなんだ、  さぁ・・・仕事に戻ろう」


この時、私はただ、ただ・・・小さくなって震えていた
  1. 2014/11/11(火) 07:24:59|
  2. 春が来た・道明
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春が来た 第15回

その日の退所時刻の直前
瑞希の携帯にメールが届く・・・江藤からだ

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
いつものように車で待っていてくれ、少し話しがある
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 瑞希は新藤のいう・・・江藤のアッシーを続けていた
 瑞希にしてみれば、所長を含めた三人の執務空間
 電車通勤のヤクザ係長のご機嫌をとることで、自分の仕事がやりやすくなり
 時には食事も奢ってくれるし、愚痴も聞いてくれる
 まさに、自分を持ち上げてくれる頼もしい男になっていた
 しかし・・・
 そこにもう一人いる所長の存在を軽く考えていた
 今日の新藤のような対応をした上司は、瑞希の知り得る限り誰もいない
 直属上司の逆鱗に触れるというピンチだ・・大変な大ピンチに直面してしまった
 なぜ、こんなことに?



「あのボケ所長・・・全く、俺たちを馬鹿にしやがって、なぁ、伊藤」

 江島の第一声だ


「でも、係長・・私、所長が分からない・・
 なぜ、所長はあんなに厳しくなったんでしょうか?」

「そんなこと、知るか!」

「でも・・」

「俺が思うに・・・あれは、俺たち二人の仲がいいのを妬いているんだ、きっと」

「えっー!所長がですか?」

「おう、そうよ・・・どうだい、もっとイライラさせてやろうじゃないか」

「そんなこと、私は・・」

「まぁ、俺に任しとけって・・・伊藤よ、時々、あいつの前でこんなことをさぁ」


 瑞希の全身が硬直した
 江島の手がすっとスカートの中へ潜り込んだのだ
  1. 2014/11/11(火) 07:25:53|
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春が来た 第16回

「やめて!クラクション鳴らすわよ!」

江藤はビクッとして手を引っ込める



「おお、怖い・・・お前という女は・・職場とここにいるお前は別人だ」

「そうかしら」

「ふん・・・でもなぁ、伊藤よ
 このままじゃ、俺たちの職場での生活が益々暮らしにくくなるぞ
 あいつをギャフンと言わせて、守ろうじゃないか今の暮らしを・・
 その対抗手段として、あいつの命令に従っている振りをする
 そして、俺たちのイチャツキ作戦で脳天を叩き、イライラさせ
 あいつに“もう、言っても駄目だ”と諦めさせる
 どう思う?・・・・・この作戦、二人の強力なタッグで上司と対抗するんだ」

「まぁ待って、係長
 私、一度・・・所長と話し合ってみる」

「なに!まさかお前、俺を」

「そうじゃないのよ、係長
 私は、よく分からないから確めたいだけよ
 今のままじゃ、所長の考えていることは掴めないでしょう
 何か、あったのよ所長に・・・・それさえ分かれば
 対応はもっと的確になるでしょう、係長」

「ふん!なら、あいつが言ったことはつぶさに教えろよ
 もし、裏切ったりしたら・・・・承知しないぞ」

「ええ、もちろん・・・何!えっ!!」

 江藤が瑞希の口に軽くキスをした


「伊藤よ、キスぐらいどうってこと無いだろう・・・お前、子持ちの人妻なんだから
 タッグを組んで闘う同志が、裏切らないように約束するんだ・・・な」

 と言うと、江藤は瑞希に被さり、再び瑞希の唇を塞ぎにかかる
 だが容赦なく、瑞希の強烈な張り手が江藤の頬に炸裂した
  1. 2014/11/11(火) 07:26:46|
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春が来た 第17回

次の日の朝、新藤が出勤すると
瑞希が自席で既にパソコンを開いている
今朝の瑞希は紺のビジネス・スーツ姿に長い髪を束ねていた
スカートの丈は短く
網のストッキングに包まれた白い美脚が新藤の目に飛び込んでくる


「おはようございます、所長」

「へぇ・・珍しいなぁ、こんなに早くに
 朝の挨拶なんて、久しぶりだ・・・いや、おはよう、伊藤さん」

新藤が席に着き、新聞を広げると瑞希が席の前に来る


 「所長、今日お時間がありましたら、少しお話ししたいことがありまして」

 「話が?そうだな・・
  今日は、本庁の人事課に要件があって、帰ってきてからならいいけど」

 「はい、ではお待ちしています」

席に戻る瑞希の後ろ姿を、新藤の目が再びチェックする

 (昨日の今日だ・・・少しは薬が効いたかなぁ・・服装も清楚だし)



本庁で、人事課長と新藤が顔をつき合わせている
昨日の顛末を新藤が話している

「課長、以上が昨日の顛末だ・・・
 しかし、江藤係長は見かけによらず案外、気の弱い人間で、威勢を張っているだけの胆の小さな男かもしれないな」

「ええ、彼については、強引な住民が訪れたときや地域代表者との交渉時など
 肝心な時には居なくなるとの情報もありました」

「なんだいそれは・・・・弱い女性職員とぺこぺこする男性職員だけに強い男か?
 それなのに、これまで何人もの上司が、あの男を指導しなかった訳か」

「かもしれません・・・あの江藤係長を怒鳴りつけたのは、恐らく新藤所長が初めてだと思います」

「ふーん・・・
 ところで、私は座席の配置転換を考えているんだ
 あの二人の席を離す・・・・併せて
 窓口に来られた県民の目が私の席まで見えるようにしたい
 それで、私の執務室と隣接する前の部署との間にある仕切り壁を取り除くつもりだ
 そうすれば、県民の視線もあり江藤も横柄な座り方ができなくなる」

「それは、いい考えだと思います」

「同時に、公務員としての・・いや一般社会人としても基本的なこと
 朝夕の挨拶、相応しい服装、メリハリをつけた休息の取り方など職務専念の徹底を
 文書にして所員に周知するつもりだ」

「はい・・・ただ所長
 伊藤さんは以前に休職の前歴があります・・・心の病とかで」

「心の病?・・・それは知らなかった
 じゃ、今考えているカウンター近くの席への移動は難しいな」


人事課長は暫く考えて、強く進言した

「いえ、所長、移動させましょう」

「課長!そんなことをしたら・・伊藤さんは病気が再発して・・」

「いいんですよ、所長・・・・彼女は問題ばかり起こす必要のない職員なんですから」

「しかし、家族の方からもクレームがくるんじゃ」

「その時は、職務に耐えられるように、家でしっかりと身体を直してくださいと
 決まり文句で対応すればいいと思います」

「課長・・・我が県の人事も鬼になったな
 職員を我慢強く育てないで潰すのか?
 本当にそれでいいんだな」

「ええ、やってください・・所長!彼女は治りません」

「ああ、気が重いなぁ・・・男は兎も角として、女の方は・・・」


しかし、人事課長の次の言葉が、新藤の人情を完全に消し去ってしまう

「それと所長、今朝・・匿名のメールが届いたんです
 昨日、車の中で江藤と伊藤がキスをしているのを見たと・・あれは不倫だと」

「何だと!!あの二人・・・救いようのない、まさに社会の屑だな」
  1. 2014/11/11(火) 07:28:14|
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春が来た 第18回

新藤が支所に戻ってきたのは午後7時、もうとっくに退所時刻は過ぎていた
支所全体は消灯されていたが、所長の執務室は灯がともっている


「あっ・・伊藤さん!残っていたの?」

「はい、お待ちしていました・・・所長は必ず戻ってこられると思いましたので」

「それは待たせて御免なさい・・・食事はしたの?」

「いえ、まだです」

「お家の方は帰らなくて大丈夫なの?話しは明日でもいいよ?」

「心配いりません・・夕食は、義母さんがいますし、主人の帰りはいつも12時ぐらいですから」

「そう・・遅いんだね、君のご主人・・」


新藤の目の前に、昼間では見ることのない妖艶な女がいる
その女が頸を少し上げ、長い髪を後ろで纏める仕草をする
新藤の目は、その女の横顔、髪を撫でる指先
そして姿勢を正した胸の膨らみへと吸い寄せられていた

(この娘には不思議な魅力がある
 清純なのに、妖艶なオーラが漂う・・見ては駄目だ)


「所長・・私の話、聞いていただけますか?」

「ああ・・・いいよ、でもお腹が空いただろう?
 伊藤さん、良かったら食事をしながら話そうか?奢るよ、どう」

「そうですね・・・食事をしながらですか? ありがとうございます、では私の車で・・・・」


瑞希は帰り支度を始める
その姿を新藤が眺めている・・細い肢体が揺れる、そして白い腕が舞う

(この娘が、この女性が不貞をはたらく不埒な妻、悪女で職場を乱す職員?
 本当にそんな女だろうか・・そして、私が壊す、この私が?)
  1. 2014/11/11(火) 07:29:02|
  2. 春が来た・道明
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春が来た 第19回

 夜の波間に月光が揺れている
 海は穏やかだ
 新藤と瑞希は食事を終え、珈琲を飲んでいた
 そして、瑞希が話し始めた


「所長・・実は私、ある病で月1回カウンセリングを受けています
 その病で過去に一度、休職したことがありました」

「その病って・・・心の?」

「はい・・・ストレス性の心因反応とかで」

「それが心配で・・・毎日、テンションを高くしているんだ
 そのことは、もちろんご家族の方はご存知なんだね?」

「はい、知っています
 家族は、再発しないかと心配してくれています
 それに、この不況で主人もリストラにあってしまって
 私の実家の手伝いをしているのですが、あまり元気がありません
 休日も、主人といると息が詰まりそうで、仕事があると言って家を出て
 ストレスの解消をしたりしているんです・・・・・・・・」

(ご主人と上手く行ってないんだ・・・それで、別の男と遊んでいる?)


「そう・・・大変なんだ
 でも伊藤さん、心の病なんて、必ず治るよ、心配しないで
 ご主人がリストラにね・・・でも、頑張らなくっちゃ、お子さんのためにも」

 瑞希は遠くの夜景を眺めている
 少し憂いを帯びた30代の女性の横顔が、ブルーの照明に映える


「私に話しておきたいことというのは、健康のことだったのかい?」

「はい・・それと、所長とは余りお話しする機会が無かったものですから」


 新藤は自分の妻との会話では得られない安らぎの世界の中にいた
 こんな美しい魅力のある若い女性と話をする機会はあまりない
 楽しい、実に楽しい・・心もウキウキとする
 時々見せる女性特有の仕草は、この男を若返らせ
 この女を自分に振り向かせたいという男の欲望が芽を出す

 ところが、この女とキスをしていたという男の顔が浮かび
 自然と、この男女の間に楔を打ち込もうとした
 それが、新藤を現実に引き戻していく


「そうだったのか・・・確かに、あなたとはこんな話をしていないなぁ
 ところで伊藤さん・・あなた、江藤係長とは仲がいいが
 彼は、どんな経歴の職員か知っているんだろうね?」

「私はよくは知りません
 この4月からのことしか
 でも、私の愚痴を聴いてくれて私は何かと助かっています」

(甘えているんだ、50代の男に・・でも、それで、キスをしたりするのか?)


「私もあなたや、彼のことをよく知らないから
 本庁でいろいろ聞いてきた・・・余り良くない話だったよ」

「どんなことをお聞きになったのですか?」

「それは言えない・・・余りにも酷い話で、当人にはとても話せない
 ただ私は、自分の目と耳で実際に感じたことしか信じない人間だし
 今の職場でのあなた方の執務態度を見て自分で判断しているんだが・・・」


 新藤に、人事課長から聞かされた情報が蘇り、徐々に熱くなりだした
 もうこの時点で、美しい妖艶な女との楽しい会話から完全に現実に戻ってしまった
 そして、とうとう瑞希をだらしのない部下として話し始めた
  1. 2014/11/11(火) 07:30:20|
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春が来た 第20回

「駄目だよ、江藤係長は・・・全く駄目だ
 君たちは示し合わせて、休憩を取る
 まるでここの休憩室は君たち二人の休息の場、雑談の場だ
 あなたが席を立つと、彼があなたの尻を追っかけていく
 私を留守番にしてね・・・・よくやるよ、私の神聖な職場でね」

「所長、私は示し合わせてなんてしていません
 確かに、二人で休憩を取るケースは多いですが
 それは、係長がついて来るので・・・・・・・」

「なにを言うんだい・・・・見え見えなんだよ
 私が係長を怒鳴りつけた後も、二人で車の中で相談したんだろう?」

「そんなことしていません」

 この一言が、新藤の倫理観と潔癖性を更に掻き立てる


「そうなの?
 私は、嘘をつく人間は大嫌いだ
 そんな人間、当てにできないし、信用できない
 信頼関係があってこそ、協働や組織が成り立つんだ
 あなたは、人間として持たなくてはならない大事なものを失っている
 先ほどのあなたの話は全部信用ならなくなった
 どこまでが、本当の話やら・・・」

「そんな・・・所長!、勝手に決め付けないでください」

「覚悟しておきたまえ・・・
 秋には執務室の模様替えを行う・・同時に
 あなたには、県民が来られているカウンター近くの席に移ってもらう
 どうせ、江藤係長へはあなたがご注進するだろうから私からは言わない」

「所長、無理です
 私は、変化の多い窓口近くの席では健康が維持できませんし
 それに私は、窓口事務の職員として配属されたのではありません」

「それなら休職して、まずは職務に耐えうる健やかな身体にしなさい
 併せて、素直な心も取り戻して欲しい・・・
 それと・・・支所内の職員の職場配置の権限は所長の私にあるんだよ
 そんなことも知らなかったのか?
 じゃ、私はタクシーで帰るから・・・あなたも気をつけて帰りなさい
 あなたの子どもとご主人、それにご両親が待ってる・・・ふらふらしないでね」

 新藤はこれまでと、捨て台詞を残して席を立とうとした時、瑞希が呟いた



「所長の意地悪・・・」

「なに??」

「私のことをよく知らないで、そんな自分勝手な・・・所長の意地悪!」

 瑞希は、超一級の奥の手を持ち出した
  1. 2014/11/11(火) 07:31:14|
  2. 春が来た・道明
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春が来た 第21回

 瑞希はテーブルの上にある珈琲カップを見つめたまま席を立とうとしない

 新藤は瑞希が言った「意地悪」という言葉に動揺していた
 かつて、初恋の女性から同じ言葉を言われたのを思い出していたのだ
 分別のある大人の管理者の心を、思春期の若者特有の赤裸々な感情が襲っていた

「伊藤さん!私があなたに意地悪をしているって?」

「そうです・・・
 あなたは、何時も私を眺めているだけで、偶にでるのは私への指示や忠告ばかり
 初めて所長にお会いしたとき、私は素敵な上司に巡りあったと思っていました
 それなのに・・・・環境の変化に弱い私に、窓口へ移動しろなんて」

 瑞希は新藤の腕を両手で縋るように抱え込む
 すると、新藤の腕は自然と瑞希の乳房の間に挟まっていく


「所長、お願いです・・もう少し話しを聞いてください」

「あっ・・・でも、家に帰る時間が遅くなって、家族の方が心配されるんじゃ」

「私にとって大変な事を聴かされて、時間なんて気にしておれません!」

 新藤と瑞希のテーブルの近くには、他のお客も沢山いる


「わかった、わかったよ、伊藤さん・・・とにかく外へ出よう
 此処では人目もあるから・・・落ち着いて、ね」

 瑞希は新藤の腕を離そうとはしない
 腕を組み乳房を押し付けながらレジへと向かいながら
 携帯を取り出した・・・そして

「あなた・・私、瑞希
 今日、仕事で大変な間違いをしちゃって・・今夜、徹夜になりそうなの
 それで明日は休暇をもらって休養するから・・・お義母さんに宜しく言っておいて
 急なことでご免ね、あなた」

「おい、瑞希・・県は女性職員を徹夜させるのか?」

「あなた、今は男女雇用機会均等法ができて、妊娠していない限り、男も女も関係ないのよ
 それに、今度のことは私のミスだから、私が始末をしないと申し訳ないわ」

「そう、わかったよ、瑞希・・・でも、無理はするなよ」

「ありがとう、あなた・・・・じゃ」

 瑞希は電話を切ると、新藤の顔を見た
 その目は、天真爛漫な少女の目だ

(似ている・・あの娘と
 そうだったんだ・・・・初恋のあの娘と似ていたんだ、伊藤さんは・・)
  1. 2014/11/11(火) 07:32:14|
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春が来た 第22回

 100万ドルの夜景の見える高台の駐車場に1台の車が止まる
 男がフロントガラスから見える街の灯を眺めながら、タバコの煙をふぅーと吐いた
 サイドブレーキを引いた女の手が、そのまま男の右手に触れる
 その右手を自らの左太腿の上に導いていく
 女は言った


「どんな人なのか?
 理解する一番の方法は、スキンシップ・・・」

「止めないか・・伊藤さん、あなたは人妻だろ
 こんなことをして、ご主人に申し訳ないと思わないのか?」

「・・・・所長、私、時々我慢ができなくなるの」

「えっ?」

「私、したくて堪らなくなってしまう時があるの・・・でも、誰とでもじゃないわ」

「う・・嘘を言っちゃ」

「嘘じゃない!
 所長は係長とのことを疑っているんでしょう?
 係長とは何もない
 いきなりキスをしてきたけど・・・引っぱたいてやったわ」

「えぇっ!」


 瑞希は新藤の右手を太腿の内側に導いていく
 新藤の手のひらに、ストッキング越しに女の柔らかい肉の感触が伝わってくる
 男の指がピクッと動く
 女の生の肌を指先が感じたのだ
 女は半身になり、向きを男の方に寄せると
 自然と男の手が、女のパンティに届く


「所長は、私が嫌いですか?」

「・・・・あなたは、私の大事な部下だ」

「こんな私・・・嫌ですか?」


 女は男の横顔を見つめ、男は空ろに正面の街の灯を眺めている
 男は返事をしない
 女は焦れて、両の太腿で男の手を挟み込み、そっと右手を男の太腿の上に忍ばせた

「止めるんだ、伊藤さん・・・そんな、風俗の女のような真似」

「風俗の女?」

「ああ、そうだ
 あなたには、毅然としたキャリアウーマンの姿が似合う
 あんな、ヤクザな係長とふざけあってる姿など見たくはない」

 瑞希の目が優しく微笑んだ
(この人、少し本音が・・・・・ふふ)


 そして、人肌で暖められた男の指先を口に含んでいく
 もう既に、殿様蛙は白蛇の術中に翻弄されだしていた
 女のしなやかな指先が男の股間へと延びていく

「あっ・・何を?」

「いいの・・そのままで・・・すべて、わたしが・・」


 男の固くなった塊を手で確めると、男の胸に顔を埋めた
 男の汗の匂いが女を雌に変えていく
 男の胸元から顎を突き出して、男に囁く


「あなたの男が、私としたいと言ってる」
  1. 2014/11/11(火) 07:32:58|
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春が来た 第23回

 翌朝、JRの中央コンコースから出てくる男を待つ瑞希の車があった
 江島は瑞希の車に乗り込むと

 「どうだった?所長のこと何か分かったか?」

 「・・・・うーん・・いいところまで行っんだけど」

 「空振りか?」

 「うーん・・堅物?・・違うわね
  私、やっぱり怖くなった・・あんな人、初めてよ
  何か、凄いものを持っていそうなの」

 「ふん!だから言ったろう
  あいつは、普通の公務員と違うと
  なにせ、この俺を初めて怒鳴りつけた上司なんだ」

 「そうね・・・確かに
  でも・・・優しいところも見えたんだけど
  所長はどうやら、私たちに厳しい措置を考えてるの」

 「へぇー
  じゃあ、こちらももっと強力なタッグを組まないとなぁ・・・瑞希」

 「そうね・・・係長」
 


 新藤は一人、執務室で昨夜のことを思い返していた

 瑞希の運転する車が、六甲山麓のラブホテルに滑り込む
 人間を理解するには、話し込み?・・そうじゃない!
 男と女の場合は、セックスが一番の相互理解の早道だと女は言った

 自らビジネス・スーツを脱ぎ、下着だけになるとベッドに横たわった
 そして、男に見せ付けるように大胆に自慰を始めたのだ
 男の分別や理性が飛んでいく
 考え方は、天真爛漫な少女
 しかし、肢体は出産経験のある女盛りの人妻

 何としなやかな肢体なんだ・・・・・それに、この脚の肉付きの美しさは
 堪らない、触れてみたい・・・・いや、触りたい
 男が唾を飲み込む音が聞こえる

 女が目を瞑り、自慰に集中している
 形の良い乳房と女陰を細い白い指が旋律を奏でいている

 「うっ・・うん・・・うーん」


 女の目が薄く開いて、男を捜す
 其処には、男の怒張が聳えていた

 「所長・・・私を抱いて・・私の中に入ってきて」

 
 痛い、痛いぐらいに怒張が天を突き上げている
 自分の怒張を突き入れたい衝動が繰り返し襲ってくる

 「ねぇ・・私を狂わせて、ねぇ所長」

 女が手を差し延べて、男の怒張を己が女陰の入り口に誘う
 そして、怒張の先端を押し当てたところで男の意志を誘発する


 「所長・・・私をあなたの女にして、さぁ・・・あなたのものにして
  この肢体をあなたの自由にして・・・・・・・」

 男の手が女の乳房を力任せに握り潰す

 「あーん・・痛い・・・・あぁぁぁ、うぅぅぅぅ」

 先走りの露で濡れる新藤の怒張が、瑞希の女陰の奥へ突進していた


 「あん・・痛い・・・ねぇ、優しくして・・・痛い、痛いの、ねぇ・・」

 無言のまま犯すように、がむしゃらな突きを繰り返す
 ベッドの軋む音が激しく続く

 「うーん・・・あっ・・・ふぅーん、あぁぁ」

 男の腰の動きが緩やかになった
 男は女の両足首を手で持ち上げ、怒張と女陰の結合を確める
 愛液で黒光りする槍で、初恋の女性の女陰を突きまくる快感が襲ってくる
 男の舌が透き通るような白い女の脹脛から足首を舐めた

 「いやぁーん・・・もう、ねぇ・・・来て、ねぇ」


 男と女の目が交差する
 女は顎をあげ、薄目をしながらも男の目の奥を見つめている
 (来て、所長・・・・これが、私・・・・ねぇ、来て)
 そう、女の目が言っている

 新藤の怒張が一段と膨らみを増して、瑞希の女陰の奥へと突き入れられた

 「ああぁーん・・・うぅぅーん・・逝く」



 ふぅ・・危なかった

 あの時、妻から携帯に電話がかかって来なかったら・・・恐らく、このようなことに
 しっかりしろよ!新藤進よ
 相手は男女の関係に長けた強かな女だ・・・
 男を虜にする妖艶な美女だ
 一つ間違えば・・・・お前は破滅だった
 完全に、この女の手の上で遊ばれていただろう
 お前には、まだまだ何か足りない

 
 新藤は休暇が出ている二人の部下の席を睨み付けた
  1. 2014/11/11(火) 07:34:02|
  2. 春が来た・道明
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春が来た 第24回

 新藤のデスクの電話が鳴る

「はい、所長の新藤ですが・・」

「所長ですか?こちらは受付ですが・・・
 職員の伊藤さんの家族の方が是非、所長にお目にかかりたいと来られているのですが」

「伊藤さんの家族の方?」

「はい・・ご主人で伊藤一介さんと仰っていますが」

「ご主人が?
 分かった、私がそちらに行きますから、そのように伝えてください」


 二人は支所近くの喫茶店にいる
 新藤は珈琲を飲みながら、瑞希の夫である一介を観察している
 一介は真面目な設計技術者そのものだ
 確か、瑞希の実家の仕事を手伝っているとか言っていたが

「伊藤一介さんでしたか・・・今日はどのようなご用件なんでしょう?」

「はい、瑞希のことが心配で・・ご相談をと」

「奥さんのこと?・・で、どの様な」

「はい、もうご承知かと思いますが
 瑞希は健康を害して、一度休職しております
 この度の異動で、本人が頑張っているのは承知しているのですが
 昨日のように、自分に原因があったとしても徹夜して仕事をするというのは
 いくら責任を感じたとしても、無理をしているのではと・・・・
 それに、5月以降は土曜日も出勤しているようで
 仕事に一生懸命な姿勢はいいのですが、妻の健康が心配で・・・」

「そうですか・・・彼女は土曜日も出勤して県民のために働いていると
 あなたに、言っているのですね?」

 新藤はやれやれといった顔を見せた



「そうじゃないんですか?所長さん」

「うーん」

「瑞希は今日も、昨夜は徹夜できなかった分を取り戻すといって、朝早くからでかけているんですよ」

「へぇー・・今日も出勤ねぇ・・」

 一介は新藤の返事に腹が立った



「所長さん!その言い方・・少し、失礼じゃありませんか!」

 この一言で、新藤の腹は決まった


「一介さん・・・あなたは、妻思いの良いご主人だ
 奥さんを大事に思っていらっしゃる・・・・・しかし」

「所長さん、何なんですか・・・怒りませんから、はっきりとわかるように」

「いや、御免なさい
 どのように、お話ししたらよいかと迷っていたのです
 あなたを傷つけたくないし、あなたは私の話を信じないだろうと・・」

「所長さん!はっきりと仰ってください
 瑞希は、弱い身体に鞭打って働いているんですよ
 それなのに、上司のあなたは妻を良くは思っていないらしい」

「判りました・・・じゃ、事実だけをお話ししましょう
 伊藤さんの上司である私は、土曜日はおろか彼女に時間外勤務を命じたことなどありませんし
 実際、土曜日に彼女が出勤していた形跡もありません
 それに、今日は休みたいと今朝方、電話があったようです」

「そ、そんな筈は・・・」

 新藤は、ショックで顔色が青くなる一介を哀れに思った
  1. 2014/11/11(火) 07:34:58|
  2. 春が来た・道明
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春が来た 第25回

「私は職場での服装や執務態度など非常に厳しくやりました
 それが原因で、伊藤さんには敬遠されたようですが・・・
 公務員として、信用を失墜させる行為も処分の対象であると
 不倫などの疑いを持たれることのないように、それとなく忠告したつもりでしたが
 一介さん・・・あなたは、優しいご主人だ、妻思いの良い旦那さんだ
 恐らく、奥さんを疑うことなどしたことがないのでしょう
 ですが、伊藤さんの前の職場でも交友関係で、芳しくない情報も聞かされました」

「それは・・・瑞希が不倫していると?」

「そこまでは、判りません
 ここの職場でのことでは、
 朝夕毎日、特定の男性職員を車に乗せて駅と職場を送り迎えしている
 毎日、向かい合わせで決まった場所で昼食を取り
 必ず、二人で休憩するんですよ・・・ごく自然に、堂々と
 相手は、女性関係に悪い噂のある札付きのサボリ職員
 周りの職員を無視し、二人だけの世界を創っている
 そんな男と、このようなことを良識ある人妻がするはずがない」

「そんな話・・・あり得ない!瑞希はそんな女じゃない」

「そうですか・・・そうですよね
 あなた方夫婦のことを、私はとやかく言うつもりはありません
 私の使命は部下の能力を引き出し、県民のために全力で職務を遂行する集団を築き上げること
 そして、そのような職場集団にしていくために、害となるものは叩き潰すつもりです
 それでなければ、県民の付託に応えられません
 その対象に、あなたの奥さんにならねばいいのですが・・・」

「瑞希は、瑞希は・・・そんな仕事ぶりなんですか?」

「はい
 厳しいことを言うようですが・・・
 これまで、伊藤さんの上司であった者の評価も散々なものです
 仕事の質も量も・・・そして、執務態度も」

「そんな馬鹿なことがある筈はない!
 家では、困難な仕事に全力で取り組んでいると
 上司や同僚とも信頼関係があって、和気藹々とした職場でやりがいがあると・・」

「そう、そのようにありたいものです
 ・・・でも、現実は違う
 一介さん、あなたは本当に正直で良いご主人だ
 そう、私が感じたから言ってはならないことを話してしまいました
 気を悪くされたら、お詫びします
 伊藤さんを立派な職員に育てていくのが、私の仕事
 決して、見放したりはしません・・・これが、私の信条であり責務です
 あなたは、あなたの家庭を守り、良き妻、良き母に育ててあげてください
 あぁ・・出すぎたことを言いました・・・・・」

肩を落とし、去っていく男の後姿を見送る、新藤

(あぁぁぁ・・俺もまだまだ若い、軽率に話し過ぎた
 あのご主人が、正直だけが取柄だったら・・・私も危ない)
  1. 2014/11/11(火) 07:35:52|
  2. 春が来た・道明
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春が来た 第26回

 瑞希は映画館の中にいた

 大帝国の丞相が一人の妙麗な夫人を奪いとるため
 80万の兵を引き連れ、自己の力を見せ付けるが如く、大河に大船団を浮かべた
 己に逆らう者を叩き潰し、女を我が物にする
 当然、勝てるはずだった・・
 美女を手に入れて帰れる筈だった

 しかし、今、呉の水軍が魏の大軍を火責めにしているのだ


(さぁ・・・どうするの?瑞希
 所長は曹操、それとも劉備?・・・孫権ではないわね)


 隣にいる男の手がそっと、瑞希の白い細い手を握る
 瑞希は憂いのある瞳を男に向けた

(この男との関係はどうするの?瑞希
 私との関係が奥さんにばれて、離婚しちゃって・・・もう!不器用なんだから)



 シャワーの音が止んだ
 瑞希が裸のまま男に近づいてくる
 そして、男に纏わりついていく

 男の乳首に口を這わす
 男の顔を下から仰ぐと
 男の目に女の艶かしい首筋から乳房のラインが飛び込んでくる
 女が男にじゃれている

 「こんな私に、あなたは夢中になったのね?」

 「・・・・」

 「夫もいる・・子どももいる・・・でも、私は私・・・私は女」

 「瑞希・・・君は江藤係長ともこんな関係を?」

 「いいえ、お喋りしているだけ・・それで、私たちの関係の隠れ蓑になるの」

 「そう?でも、心配だなぁ、あの人のことは悪い噂がたくさんあって
  特に、女性には手が早いし、暴力を振るうとも聞いているよ」

 「有難う、気をつけるわ
  係長とは厳しい上司に対抗する職場でのパートナーで、私のボディガード
  それだけの人・・・あなたとは違う」


  女と男は互いの目の奥を見つめ合う

  男は思った
  (この瞳に夢中になった・・妻を忘れた、仕事も忘れた、俺だけの女にしたい)

  女も思った
  (今まで楽しかったわ、でも・・そろそろゲームオーバーよね)

  男の手が女の乳房に伸びる
  指が乳首を転がし、撥ねる・・・・
  女の扱い方はこの男も天性の才を持っていた
  男の唇が女の唇を覆う
  もう・・・遠慮はしないぞと、男が攻め、女がそれに応えて逝く
  女の反応は凄まじい・・・・・これが最後の契りだとでもいうように
  1. 2014/11/11(火) 07:36:43|
  2. 春が来た・道明
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春が来た 第27回

夕暮れ時というのに
濃いサングラスの似合う美女が運転する車
その車が、勢いよくラブホテルの門を駆け抜ける
助手席の男は、シートを深く倒し姿が見えない
男の手は運転する女の生の左太腿を擦っている
女は、何も感じないかのようにスピードを上げ、市街地へと車を走らせる


江島が駅前をぶらぶらと歩いている
今日はゴルフ仲間との飲み会であった
その集合時刻にはまだ少し、時間がある

江島は、今朝の瑞希との話し合いで、所長へ対抗するため
二人がかりで所長を無視し、今まで以上に仲の良さを見せ付け
イライラを募らせ、堅物所長の脳天を叩く・・・という作戦を瑞希に了承させた
そして、二人の間には確たる信頼の同盟の証が必要だと持ちかけ
少なくとも、瑞希の肢体を拝めるようにと、口説き続けた
しかし、瑞希に上手くかわされてしまっていた

(俺としたことが・・・あんな小娘に手こずるとは
 上手くいったのは、不意をついたあの時のキスのみ
 あれから、伊藤のやつ、防御が堅くなった)


その江島の横を
見覚えのある車が走り抜け、30メートル先の横断歩道の手前で停車した

(あれは、確か・・伊藤の車・・・・あれ?)


助手席側のドアが開き、30代の男が車から降りる
男は車中の瑞希となにやら会話をし、再び上半身を車内に入れた
別れのキスをしているようだ
男がドアを閉めると、車が猛スピードで立ち去っていく
男の目が名残惜しげに車を追っていた

(確かあの男は・・・県の福祉局の・・・
 は、ははん・・・はははは
 いいものを見せて貰った・・・天は、やはり俺にあの女を抱かせてくれるのか?
 伊藤よ、あぁぁ待ちどおしい・・・はっ、肢体をようく手入れしておいてくれ
 まずは・・・・仲良し作戦でお前の肢体をゆっくりと楽しんでからだ)

江藤の脳裏には、しなやかな裸の瑞希の肢体が浮かんでいる
もう・・・口内は、唾が溢れていた
  1. 2014/11/11(火) 07:37:34|
  2. 春が来た・道明
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春が来た 第28回

 瑞希が帰宅すると、珍しく夫の一介が先に帰宅していた
 瑞希は、リビングのソファに座っている夫の背に声を掛けた


 「あなた、今日は早かったのね」

 「ああ、たまには早く仕事を切り上げて、瑞希といる時間を持たないとなぁ」

 「そうなの、有難う・・あなた」

 瑞希は、優しい夫、一介に笑みを送る


 「それで、昨日の徹夜できなかった分の仕事、取り戻せたのか?」

 「ええ、それはもう十分にね・・・所長も驚いていたわ」

 瑞希は話しながら、着替えに向かう
 一介は、ソファから立ち上がり寝室へ向かう瑞希の後を追っていく


 「あなた・・私、着替えるから少し待ってて、直ぐにお茶を入れるから」

 「いいよ、お茶なんて・・・それより、早く裸になれよ」

 「えっ?今、なんて言ったの」

 「裸になれと言ったんだ・・・確めてやるよ、今日の瑞希の仕事の成果をさぁ」

 一介が瑞希の上着に手を伸ばす


 「嫌!やめて!あなた・・どうしたの?」

 一介は容赦なく、瑞希の頬を張る
 そして、身につけている衣服を剥ぎ取っていく
 逆らう瑞希の頬を何度と無く、一介の張り手が襲う
 その手が、もう逆らうことを諦めた妻の下着を剥いでいく
 ベッドの上で裸体を震わせ、豹変した夫に涙を浮かべる瑞希

 「本当にどうしたの?あなた」

 「何度も言わせるなよ、瑞希
  今から、お前の今日の仕事の成果を確めるんだよ!」

 「なら、どうして叩いたり、裸にするの?」

 「俺を今まで騙しやがって!
  仕事をしてきたんだろう?女のあそこを使ってさぁ!
  夫の俺が妻のあそこの仕事ぶりを確めるんだよ」

 「何を言ってるの?あなた・・・何のこと」

 「ふん・・・この雌豚が!俺をコケにしやがって」

  夫婦の寝室から、瑞希の泣き叫ぶ声が響き渡った
  今まで優しかった夫が、瑞希の最も恐れる暴力を振るう男になった
  1. 2014/11/11(火) 07:38:28|
  2. 春が来た・道明
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春が来た 第29回

 女が抵抗できないように、ベッドの上に大の字に両手、両足を縛られている
 女が何度も頸を左右に振る

 「あなた・・やめて
  なぜ、こんなことをするの?
  ねぇ、あなた、やめて・・縛りを解いて」

 「うるさい!黙れ!」

 男が女の首筋から乳房そして括れた細腰へと、匂いを嗅ぎまわる


 「シャンプーの匂いがするぞ、瑞希
  お前の職場はシャワー室でもあるのか?」

 「シャンプー?・・そ、そうなの
  今日は・・・・・動き過ぎて汗がでて、気持ち悪くて、それで」


 男の手が女の女陰を弄りだした・・・愛情の欠片もない冷たい動きだ

 「嫌!やめて!」

 「愛撫もなしで、簡単に2本の指を飲み込むなんて!
  お前、縛られると興奮する性質だったのか?
  それとも、男根との摩擦の余韻が残っているのか?」

 「あなた!馬鹿なことを言わないで・・・変よ、今日のあなた」


 「瑞希、瑞希・・・頼むから・・もう嘘をつくのはやめてくれ!」

 一介の指の動きが止まった
 そして、目には涙が溢れている


 「嘘じゃない!今日は汗をかいたので職場でシャワーを使っただけのこと
  あなた、本当にそれだけよ」

 「そうなんだ!そうなんだ!・・悪かったよ、瑞希、疑ったりして」

 「・・・そうよ、あなた・・わかってくれたの?あなた」

 「ああ・・でも、瑞希の言うことが本当だとすると・・・」



 一介は、涙が溢れる目を瑞希に向けた

 「嘘をついているのは、あの所長さんだ!」

 「あなた今、何んて!所長?」

 「ああ・・所長さんに今日会いに行ったんだ
  健康に不安のある妻に無理をさせないでくれと頼みに
  その時、お前は朝から休暇を出しているって言ってた
  それに、土曜日はおろか時間外勤務を命じたことなどないってさ
  そんな筈ないよなぁ、瑞希!確か、毎週土曜日にお前は出勤していた
  俺の稼ぎの少ない分を、私が稼いでくると言って」

 一介の目から流れる涙が、瑞希の透き通るような白い肌
 形の良い二つの乳房の間に、零れ落ちた
  1. 2014/11/11(火) 07:39:23|
  2. 春が来た・道明
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春が来た 第30回

その頃、新藤は馴染みの料理屋にいた
いつもの奥の座敷に通され、女将を待っている
流石に今日は自分自身が嫌になった
なぜ、あんなことを瑞希の夫、一介に言ってしまったのか
新藤の心は暗く、重く沈んでいた

すっと襖が開く

「進ちゃん、ご免ね・・・今日は、お客さんが多くて」

「いいよ、お恵ちゃん・・いつもの料理とお酒があれば、一人でやってるから」


女将が幼馴染の新藤の顔を見ている
優しい笑顔だ

「進ちゃん・・・何か悩み事でもあるの?」

「いいや、そんな風に見える?・・・・今度の異動で、少し疲れたのかな?」

「疲れた?・・・進ちゃんが疲れた?」


女将は改めて新藤の顔を見た
今夜は、少しこれまでの雰囲気と違う、そして直感した・・・
(進ちゃんのこんな苦い瞳を見たのは二度目、・・・これは、きっと女ね)

女将は盃を口に運ぶ新藤の横顔を、確めるように見つめて言った

「後で、話しを聴いてあげる・・・待っててね
 その間、お願いなんだけど、今夜から、お店に新しい人が入ったの
 それで、まだ何も知らないので、進ちゃん、相手をしてあげてくれる?」
 
「ああ、いいよ・・お恵ちゃん」


女将が出て、暫くして若い女の声がした

「失礼します」

「・・・失礼します??・・・か、ははは・・・どうぞ」

着物の似合う・・・30歳ぐらいの女が入ってきた
襖の開け、閉めの作法はできている
三つ指をつき、お辞儀をした
その動作を新藤は見つめ
そして、女が顔をあげて新藤を見た

(似ている・・・伊藤さんに?いや・・・私の初恋の娘に!)
  1. 2014/11/11(火) 07:40:12|
  2. 春が来た・道明
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春が来た 第31回

 女将が襖の外で立っている
 歳の離れた男と女の楽しそうな話し声が、襖越しに聞こえてきた

「進ちゃん・・・御免なさいね、少し遅くなってしまって
 お世話様でした、遼子さん・・・代わりましょう」

「はい、女将さん」

 部屋から出て行く女の耳元で、女将が何か囁いた
 女の顔が明らかに動揺している
 女将が再び囁くと、女は頷いた


「新藤様・・・・有難うございました」

 女は来た時と同じように、お辞儀をして新藤の顔に眼差しを向けると
 新藤は名残惜しげに、笑みを送った



「進ちゃん・・・どう、今の遼子さん?」

「どうって・・・いい人じゃないか
 若いのに、淑やかで、落ち着きがある・・うーん、それに会話も上手い
 久しぶりに楽しかったよ、それに、彼女はなんというか・・・・・」

 女将は、遼子のことを話し続ける新藤の様子を微笑んで聴いている



「進ちゃん・・・どう、抱いてみる?遼子さんを」

「えっ!?・・いきなり何を言い出すんだい
 彼女はそんな女性じゃないだろう!冗談はよせよ」

「冗談じゃないわよ、進ちゃん
 あの人は少し事情があってお金が必要なの
 だから、今の遼子さんはお金で何とでもなる女よ」

「なに!?・・・お恵ちゃん、私がそんなことをする人間じゃないことは・・」

「よーく知っているわ、子どもの頃からの長い付き合いだもの
 でも、私ずっと思っていたのよ・・・進ちゃんは潔癖すぎると
 時には羽目を外す男にもならないと、潔癖だけでは世の中は渡れない
 いいチャンス、遼子さんは了解しているのよ
 気に入ってるんでしょう!あの人を!
 さぁ、遼子さんが待ってる・・・・思いっきりあの人と好きなことをしてきなさい」

「でも、やっぱり・・・」

「進ちゃん!あなた、女性のことで悩んでいるでしょう!」

「えっ?!」

「そんなことぐらい、私には直ぐにわかるの
 進ちゃんは、女性に盲目的に惚れてしまうところがある
 でもね、その相手が、女の私から見ると、とんでもない相手にね
 分かるでしょう・・初恋の人もそうだった
 二度と、同じ過ちをしては駄目!それこそ奥さんが不幸になる」

「うーん」

「あなたは女を知らな過ぎる
 世の中には、大勢いるのよ素敵な女性が!
 心が清い人、肢体に魅力のある人・・・・いっぱいね
 遼子さんも、その内の一人・・・素敵な女性よ
 なにをグズグズしているの!早く行きなさい」


 女将の目を口を開けて見ているのは、子どもの新藤
 女将は、新藤が甘えて、困らせていた優しい母親の顔だ
  1. 2014/11/11(火) 07:40:53|
  2. 春が来た・道明
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春が来た 第32回

伊藤家の寝室では
夫の一介が妻の瑞希を犯している?
そうだ、夫が妻を陵辱していた

瑞希は休暇を出していたこと、土曜日の出勤はしていなかったことは認めたものの
何のためにそのようなことをしたのか?の問いに
「ストレスの解消のため」と言い張り、男関係は完全に否定した
納得できない一介が、凶行に及んでいるのだ


その瑞希の目からは涙が零れ
ぼうと天井を見つめている天井の白いクロスに
忌まわしい過去が蘇り、映し出される

当時、瑞希は21歳、宴会のコンパニオンのアルバイトを始めての最初の夜だった
初心で、細身の女の周りには、酔客が集まってくる
男たちは、経験のないコンパニオンに酒を注ぐ
ノースリーブから伸びる白くて長い腕
その滑るような若い肌を男の手が擦っている
休むことなく飲まされたアルコールが、若い女の警戒感を麻痺させていた
いつの間にか、50歳代の恰幅の良い男が、しっかりと右腕で女を抱きしめ
左手でミニの奥へと手を忍ばせている

男が耳元で囁いた

「瑞希ちゃんだったっけ、先に、外へ出ようか」

「外へですか?勝手にそんなことをしては・・・」

「大丈夫だよ・・・少しの時間だ、お駄賃はずむよ!
 おーい、チーフ、構わないよな?」

男がチーフにそっとお金を握らせ、瑞希に見えないように片目を瞑る
チーフは意味ありげに告げた

「それじゃ、瑞希ちゃんを最上階のラウンジに連れて行ってあげて
 そこなら、大丈夫・・・・きっと楽しいから」

瑞希は酔いがまわって頸がふらふらしている

「瑞希ちゃん、チーフのお許しがでたよ、さぁ、行こう」

・・・・・この後、ラウンジで更にアルコールを飲んで酩酊する瑞希に
この男は遊びと称して、有らん限りの陵辱を加えたのである


今、まさにこの時の陵辱を夫の一介が実行している
夫の両手が瑞希の細い頸を絞めるように、当てられた

瑞希が言った

「信じて!あなた
 私は、あなた以外の男と関係を持ったことは絶対にありません
 優しいあなたが大好きで結婚をした
 そして、子どもを産んだ
 あなたのご両親と一緒に暮らせて、幸せだと思っています
 だから・・・・あなたを裏切ったりは絶対にしていません
 信じて、あなた・・・・・」


一介の顔が歪む
大粒の涙が、一介の目から零れ落ちる
そして、瑞希の頸に当てられた男の手が緩んだ

(私にこんな目を合わせた所長・・・上司の立場をいいことに、私をこんな目に!
 許さない、絶対に・・・・・思い知らせてやるわ)
  1. 2014/11/11(火) 07:41:48|
  2. 春が来た・道明
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春が来た 第33回

新藤が本庁の知事室で面談の順番を待っていた
なぜ、知事に呼び出されたのか知らされていない
新藤は知事に面識はなく、不安が胸をよぎっていた

「新藤所長、お入り下さい」

新藤が知事室へ入っていく
広い執務室には豪華な応接セットが置かれていた
知事がデスクに座って、書類に目を通している


「君が新藤君か?・・忙しいのに、呼び出してすまなかった」

「いえ、お呼びがあれば何を置いても駆けつけて参ります」

「うん・・君の職員人材育成プログラムの提案書、読ましてもらったよ」

「はい?」

そうだった、知事命令で県の幹部職員全員にリポートの提出を求められていた
確か、テーマは「あるべき県職員の姿」だったか


「私は、この100年に1度といわれている未曾有の経済危機の時こそ
 県は率先して県民に範を示さなければならないと思っているんだ」

「はい、そのように私も」

「しかるにどうだ・・・職員のモラルは、地に落ちている
 社会の動静すら何処吹く風、やる気があるのかも疑わしい
 無気力で、自己中心の職員が多く、全く情けないと思っているんだ
 地方公務員法で身分が保障され、よほどのことをしないと首にならない
 それを、いいことに、働くこと、いや夢を持たない職員の多いこと
 私は、この際、徹底的に職員の脳ミソを改革したいんだ!
 やってくれるか?君」

「はっ、はい・・・」

「それで、知事直轄の新部署を組織する
 そこの最高責任者に君を充てるつもりだ
 君のプログラムは良くできている、しかし大事なことが一つ欠けているぞ!
 いいか、君の作成したプログラムにもう一つ付け加えて実施するんだ
 それは、命令に従わずやる気のない職員を合法的に退職させることだ
 そのやり方を考えろ・・・・・いいな、不要な職員には県を去ってもらう」

「合法的に職員を退職させる方法・・・
 知事、それはいつ頃を目処にと?」

「今の県の財政、職員構成を考えると猶予はない
 来月、組織を立ち上げる・・・必要な人材は人事局長に言って揃えてもらえ
 執務場所は、知事室の隣だ、私が今最もやりたい事だ、頼んだぞ」


余りの急な展開に、新藤は戸惑いながらも決意を固めざるを得ない
ノーと言えるはずがない・・・・


「どうした?怖くなったか?同僚を、職場の仲間を叩くのは嫌か?」

「いいえ、知事
 ここに就職した時から、私は県民に対して忠誠を誓っております
 県民の為にならない者を整理していくのは、当然のこと
 民間では、先の不況の時には生き残りを賭けて、実施されたことでもあります
 身命をとして全力で取り組む所存です」

知事が新藤の顔を見て、目を細めた

「期待しているよ、新藤君・・・・我が県にも君のような職員もいたんだ
 実は、人事局長が君のことを私に話したんだ
 君が怒鳴りつけた江島という職員には、私も人事局長時代に手こずってね
 苦い思い出があるんだ・・・・・確か、あの時も女性職員が絡んでいた
 気をつけろよ、新藤君・・・・・敵も死に物狂いで向かってくるぞ」

「心得ております、知事
 悪に、私は決して屈しませんし、許したり致しません」

「・・・悪に屈しないか・・・強い、いい言葉だ」

県庁舎の外は激しい雨が降り始めた
新藤の頭の中で、瑞希の顔が浮かぶ

(これは・・・・家族をも巻き込んでの激しい戦となる)

知事室の窓を打つ雨の音が、新藤の耳の奥で砲火となって鳴り響く
  1. 2014/11/11(火) 07:42:42|
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春が来た 第34回

・・ロダンの「接吻」

逞しい男の手が裸婦の腰をしっかりと引き寄せている
男の背の筋肉は緊張気味だ
裸婦は男の頭に、そのしなやかな手指を回し、自ら男の舌を求めている
次第に、男の性欲が高まってくる
男の手が豊満な裸婦の乳房を握りつぶす

「・・・痛い」

そう叫んだ女は、再び激しく男の舌を吸いはじめる
ひたすら男の口を求める女の顔を
感情のない男の目が眺めている

目の冷たさと異なり、男の怒張は歳を感じさせないほど精力が漲っている
それに気づいた女は、怒張に両手を添え頬擦りし
唾を塗し、舌で筒先の天辺を舐め始めた

男の手が女の肩から頸そして乳房へと動き回る
怒張を喉元深く差し込まれた女は、上目がちに男へ媚を送る

(・・・・この人の目・・なんて冷たい眼差しなの?)


男の指先が既に勃起している女の乳首を撥ねる、捻る
そして、乳房全体を揉み、その柔らかさを手に吸い込ましていく

「あーん・・・お願い、もう私」

女の女陰は既に蜜が滲み出し、雌が雄に肉交をせがんでいた


「まだだ・・・遼子、もう暫く我慢しろ」

「いやーん・・・・・私、我慢できない」


これで、遼子とは何度目だろう?
歳の離れた女との遊びを覚えた新藤は、もう数えきれないくらいに嵌っている
社会も、家庭も、仕事も忘れ・・
五十歳を過ぎて初めて知った、ひたすら快楽を求める男女の肉宴

30歳の遼子もまた、性の快楽の虜になっていた
既にこの世にいない優しかった夫との性行為
それでは得られなかった快楽を、新藤から与えられていた

(この人・・・強いし、持続力もある、それに・・・大きい、ああ、堪らない!
 あぁぁん・・逝く、逝くわ・・・・・いつものように、私が先に)


遼子は妊娠しないようにピルを服用している
二度、三度と必ず遼子を逝かせた後、新藤は膣奥深く射精する
今夜も、遼子に最初の絶頂が近づいていた
  1. 2014/11/11(火) 07:47:26|
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春が来た 第35回

今日も、新藤がデスクに着くと
示し合わせたように、江藤と瑞希がイチャツキ作戦を開始した

瑞希が江藤の側近くでパソコンのキーを叩いている
そして江藤が、そのしなやかなに踊る女の指に手を伸ばす

「イヤーン、係長・・・打ち間違えるじゃないですかぁ」

「おぅ・・・すまん、すまん
 つい、どうしてそんなに指が動くのかとおもってなぁ、伊藤」

江藤の手は、瑞希の指先から離れると、今度は肩を抱くように伸びていく

(へっ!所長のやつ・・・・こちらを見ているのだろう
 もうちょいと、見せ付けてやるか・・・・・・)



新藤が席を立ち上がる、そして言った

「えぇーと
 江藤係長は伊藤さんから、もう聞いていると思うが
 事務所内の模様替えと席替えのことだ・・・・・・・・」
 
二人とも、ほうら来なすったとばかりに
瑞希はそ知らぬ顔をして前方を睨みつけ
江藤もまるで新藤の言葉を聞き流している

「取りやめることにした、だから・・・・」

(えっ!!取りやめる・・・・・ふん、諦めたか)


「だから・・そんな見え透いた子どもの飯事はもうやめたまえ
 もう終わりだ・・・・そう、此処ですることは、はもう終わりだよ」

「どういうことでしょうか?私にはさっぱり」

「分からなくていいよ、江藤係長
 それより、伊藤さん!
 これまでの此処での仕事の整理・・・・あっ、すまない、何もしていないか
 化粧とファッションに専念していたもんなぁ
 とにかく、君は来月、本庁へ異動だ・・・嬉しいだろう?
 そのファッションを大勢の職員が見てくれるぞ
 それに、間違いなく残業がある、もちろん土、日の出勤もな
 君のご主人も安心?!・・・・・・・・・・・・・・・・」

恐ろしいほどに睨みつける夜叉の視線が、新藤の言葉を遮る

「所長、こんな時期に人事異動ですか?それって・・」

「ああ・・・今朝、内示が出た
 君は、新設される意識改革推進本部への異動だ」

「私が?・・そんなところに!それは、所長、もしかして
 私を潰す・・・・」

「馬鹿な、そんなことを行政が考えると思っているの、伊藤さん
 知事の特命による新組織だ、県の精鋭が集まってくる
 やろうとしていることは、職員の意識改革と人材育成だよ
 君は、健康不安もあることだし、私の目の届く席にしている」

「はい?」

「私もそこへ異動なんだ、本部長としてなぁ
 君には私の秘書として、能力を発揮してもらうつもりだ
 これは知事の命令だ、嫌なら退職届を出しなさい」


再び憎しみを帯びた夜叉の視線が、新藤の顔を刺す
しかし今度は、冷ややかな視線を投げ返す新藤
視線の先は、瑞希の顔ではなく・・・この女の肢体
ミニのスカートから見える、しなやかに伸びる長い脚

「言っておくが、新職場は女性も男性も区別しない厳しい職場だ
 したがって、執務時間中、女性はスカートを禁止する
 いいね、瑞希君」

江藤が、カラスに油揚げを奪われた狐のように、口をあけていた
  1. 2014/11/11(火) 07:48:35|
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春が来た 第36回

始業時刻の1時間前、こんな時間に出勤してくる職員はまだ少ない

瑞希が県庁舎本館のエレベータのボタンを押す
行き先は知事室がある同じフロアー
長い髪をなびかせ、スラックスをスマートに着こなし
ヒールのピンの音が、人気のない廊下に響く

新部署の意識改革推進本部の自動扉の向こうは
まだ薄暗く照明が燈されていない

(恐らく、私が一番ね・・・・)


瑞希は、推進本部の事務室を通り抜け本部長室に向かう

(あの新藤本部長の秘書だなんて、さてさて面白くないわ
 あの人は私の魅力を理解できない人、細かいことを言うつまらない上司
 だけど、県職員の精鋭が集まる部署への異動、さて、どんな男性がいるのか
 そちらが楽しみだわ・・・・・・・・・・・・・)


瑞希が本部長室のドアを開けた

「おはよう、瑞希君」

「お、おはようございます、本部長・・・・」


新藤の目線が瑞希の足元から上に昇っていく

(あーあぁ、この人・・私よりも早く出勤していたんだわ
 早速、私の服装をチェックしているようだし・・・ほんとにもう!!)


瑞希は新藤の目を気にせず、自席に向かっていく
その横顔、後姿、歩き方を男の目が追う
髪が揺れている・・・・・・女の香りが男の周囲に漂う

(思ったとおりだ・・・スラックスになると清楚なイメージになる
 いい歩き方だし、セクシーなお尻をしている・・まるでファッション雑誌のモデルだ
 色香があり、男心を擽る話し方・・・本人は、半端な男たちと楽しんでいるだけだが
 私から見れば・・・まるで、宝の持ち腐れだ、全く勿体無い)


瑞希が席につき、姿勢を正すと
新藤がポツリと言った

「瑞希君・・・素敵だよ」

「はぁっ?!」

瑞希は新藤の意外な言葉に、息をのんだ
以前に一度、この人から言われた記憶が蘇る
確か、前の人事異動早々の頃だったかしら
この人、ほんとに???
  1. 2014/11/11(火) 07:55:04|
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春が来た 第37回

その日の午後
知事が陣中見舞いに事務室を覗いていた

「君たち、いいか
 どこの自治体もやったことのない大リストラを君たちが実行するんだ
 君らにとって気持ちが弱くなるのが一番の敵だ、常に明るく、明るくだ
 私は支援を惜しまない、安心して、全力をつくしてくれ、頼んだぞ」

知事はそう声を掛けると、ノックもせずに新藤の部屋に入る

部屋の中で、新藤は腕まくりをし、書類に真剣に目を走らせていた
瑞希は、新藤に言われた書類の作成に得意のパソコンを叩いていた
新藤も、瑞希も知事が来たことに気づいていない
仕事に夢中になっている二人の様子を知事が眺めている

(二人ともが、一心不乱に仕事に没頭・・・・か?・・こうでなくっちゃ)


「頑張ってるな・・新藤君!」

「はっ!これは・・知事・・失礼しました」

「いや、いいんだ・・それで、いいんだよ」


「瑞希君、知事に珈琲をお出しして」

「はい、ただいま直ぐに」


「構わんでいいよ、イベントの挨拶に直ぐに出かけるんだ」

それでも、瑞希は珈琲の準備をしに席を立つ
その後姿を二人の男の目が追う


「新藤君、君が秘書に選んだ女性を見に来たんだが・・・」

「はい?」

「彼女も確か、ブラックリストのA級の職員に入るのだろう?」

「はい、これまでの勤務成績からして恐らく」

「そうか・・・それを承知で秘書に
ははは、君はそういう男なんだ・・・ただ・・・・・」

「ただ?・・何でしょうか」

「いや・・・いい・・・気にしないで、君の思うようにやりなさい
 辛い、厳しい仕事になるということを、私はよく理解しているつもりだ
 それじゃ、時間がないので失敬する、頑張ってくれ」
  1. 2014/11/11(火) 07:56:07|
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春が来た 第38回

知事が部屋を出て行くと
新藤はふうーと息を吐き、窓の外の景色に目を移した
その窓ガラスに女の顔が浮かんでくる

(駄目だ、また瑞希のことを考えている)



瑞希が部屋に戻ってくる

「すまないね瑞希君、知事は出かけられた
 折角だから、休憩しよう・・・君も一緒に」

瑞希は、煎れたての珈琲を応接テーブルに置くと新藤の斜め向かいに腰を降ろす

「あのう・・本部長」

「なんだい?」

「服装のことなんですが・・・・スラックスでないと駄目でしょうか?」

「うーん、そうだなぁ
 暫くはそのままの方がいい
 その服装、似合っているよ、君に
 細身で、背も高く、スタイルがいいから
 それに何よりも、暫くは忙しく動き回ることが多いので実用的でもあるしね
 そうだ、そこの大きい方の花瓶をあそこに移してごらん」

その花瓶は大きくて少し重量がある、瑞希は踏ん張る姿勢をとると
スラックスのお尻の部分にパンティラインが浮かぶ
新藤の視線がその細くなったところに吸い寄せられる
新藤は瑞希に近づき、腰の部分に手を添える

「ほら、ふらふらしないで、ここに力を入れる!」

「はぁっ!?」

瑞希の両手は花瓶を持ち上げたままであるのをいいことに
新藤の手は、そのままパンティラインに沿ってゆっくりと動く
瑞希の耳たぶが朱に染まる

「本部長・・・」

「えっ?
 あっ、ごめん・・・
 こんな動きにしても、スカートだと少し無理があるだろう?」

新藤の手は臀部の感触を楽しみ、太腿に移る
無遠慮な男の両手は、バックから瑞希の腰を捕まえる

「ゴルフスウィングの構えのように、膝を少し曲げて踏ん張ると
 このように、上下左右の動きを止められてしっかりと安定するんだ」

男の手は瑞希の臀部、太腿を押したり突いたりして動き回る
瑞希は一層、耳たぶを赤くする
その恥らう耳たぶに、新藤が息を吹きかける

「うぅぅん・・・本部長」

「さぁ、そのままで、あちらに運ぼう・・・・ゆっくりと、そう、そうだ」

瑞希が歩き始めると、新藤の手のひらにしなやかな女性の筋肉の動きが伝わってくる
・・・なんて、しなやかなんだ!この感触・・・・あぁぁぁ



「本部長、本部長・・・新藤本部長、珈琲いかが致しましょうか?」

「えっ!うん、瑞希君か・・そう、一つは私の机に」

珈琲の香りが、妄想の世界から新藤を現実に引き戻す
新藤は、珈琲を差し出す女の透き通るような白い指
その指が視界から消えると、再びふぅぅと息を吐いた
  1. 2014/11/11(火) 07:56:53|
  2. 春が来た・道明
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春が来た 第39回

「あっ!・あぁぁん・・うぅん・・強い、強すぎる」

壁に両手を付き、下半身を丸出しにした女が叫ぶ
男に脱がされたパンティは膝の辺りに引っ掛かり
白い艶やかな光を放つ女の尻肉を
抱え込むように、男の腰が張りつき
怒張を突き入れたまま、先端で子宮口を擦っている


「遼子・・・立ちバックはそんなに気持ちいいのか?」

「ええ・・あなたのモノが硬くて大きいからなおさら・・・・あぁぁ・・ん」

男が揺れる女の乳房を鷲?んでいる
男の動作はゆっくりとしたピストン運動に変化した


「ねぇ・・・私、もう・・もう・・逝っていい?」

「そうか・・もう逝くのか、遼子」

「ああぁーん・・・もう、あなたったら
 逝く、逝く・・・・逝くう」

男は女の膣奥深く、ゆっくりと怒張を打ち込み続ける・・・


 深夜遅くまで逝かされ続けた女が、男の胸で寝息をたてている
 強い男は既に目覚めている
 そして、男の片手が女の黒髪を撫で、もう一方の手が背中から臀部を擦っていた

 もうこの男には、妻以外の女を抱くことの不安や迷いは微塵もない
 50歳を過ぎてから初めて知った女遊びにのめり込んでいる


 「そろそろ起きるんだ・・・遼子」

 女は、地位も財産もある逞しいこの男
亡夫では感じることの無かった快感を与えてくれた男
そんな男に、愛のような感情さえ芽生えはじめていた


 「うーん・・・・もう、朝ですか」

 「ああ、朝だ」

 新藤は遼子を下にして被さっていく
 女の首筋を唇でなぞる
 しげしげと女の顔を覗き、唇を重ねる
 女が男の唾液を飲み込んでいく

 「はぁぁん・・・」

 新藤は遼子の豊満な乳房を握りつぶす


 「痛い・・・・あん!!」

 「遼子・・・昨夜は何回逝ったんだい?覚えているか」

 「わからない」

 「ふん!・・・よーく、分かったよ、君がどんな女かがね」

 「どんな女なんですか?」

 新藤はそれに応えず、再び唇を求めていく
 女は、自分を何度も昇天させた逞しい男の塊に手を添え
自らの女陰に導いていく
 窓から差し込む朝の光が、性の快楽を貪る二人の男女を浮かび上がらせる

 「あはーんんん・・・・素敵・・・あぁぁぁ・・また、逝くぅ」
  1. 2014/11/12(水) 11:21:46|
  2. 春が来た・道明
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春が来た 第40回

 瑞希が夫の一介のためにキッチンでモーニングを作っている
 なにやら鼻歌が聞こえてくる・・・ご機嫌だ
 その妻の後姿を一介が眺めている

 ミニのスカートから見えるすらりとした白い美脚
 特にふくらはぎの形が良く、足首が締まり女の魅力としては十分だ
 瑞希は妻、母・・・ではなく、まだお嬢をしている


 「あなた、今日ね、私・・仕事の整理を少ししたいので出勤するわよ」

 「えー?また・・気分転換か?」

 「違います!出勤の命令はされてないのだけど
  知事さんも覗きに来るし、本部長は何か思案中の様子だし
  私は、いままでまともな仕事をさせてもらってないでしょう
  だから、まだ今の職場が何をするところなのかも良く判らない
  でも何故か・・・じっとして居れないの」

 「ほう・・お前が仕事をする気になった?
  本部長って、確か・・あの新藤さんだろう」

 「そう、前の所長の新藤さん
  知事がお気に入りの様子だし、まだ50歳だから、出世しそうね・・」

 「お前、その新藤さんの秘書なんだろう?
  で、どうなんだい・・新藤さんとは上手くやれているのか?
  以前お会いした時の感じでは、相当お前に悪い印象をもっていたように・・」

 「ええ・・前の職場ではそんな感じもあったわ
  でも・・うーん・・良く判らない
  今は少し、何と言うか・・落ち着いたと言うか、大人になったと言うか」

 「馬鹿か?お前
  年下の若い女の秘書が、上司のことを大人になったって?」

 「ふふふ・・好いじゃないの、家の中での話だし
  大人といっても・・・・いろんな意味があるから」


 こんな夫婦の会話をしながら、朝食をとるのは楽しい
 一介はこれも新藤のお陰かも知れないと思った

 久しぶりに妻が着ていくワンピースを鏡の前で選んでいる
 やはり、女だ・・・・
 瑞希が元気に前向きに明るく出勤する
 このことは、夫の一介にとってもとても嬉しいことであった
  1. 2014/11/12(水) 11:22:51|
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春が来た 第41回

 瑞希の車が県庁舎へ向かう
 朝方は晴れていた天候が、下り坂となり雨が降り始めている
 瑞希は今朝の夫との会話を思い出していた
 
 (新藤本部長と上手くいってるか?って
  ほんとにどうなのかしらね・・・・・・・はぁ?)

 瑞希の目に二人の男女の相合傘
 歳の離れたカップルだ
 若い女性が紳士の腕を手繰っている

 (まあ・・・仲がよろしいこと・・ふふっ)

 女性が親しげに男性の耳元でなにやら囁いている
 横断歩道のところで立ち止まり、別れのキスを男性の頬にした
 女性が傘を広げ、男性を見送っている

 (・・・いいわね、ほんとに・・・仲が良くて)

 瑞希は別れると決めた、遊び相手の男のことをおもい浮かべた
 その男が離婚した時からもう遊びではなくなっている
 彼とは夫に気づかれないうちに別れなければ
 あの人、遊びなのに本気になっちゃって・・・もう
 
(彼とは今が潮時ね・・・・・・・あっ、あれ!?)


先ほどのカップルの男性が、瑞希の車の前を横切っていく
落ち着きのある、スマートな紳士
傘を持ち正面を見据えて歩く男、その横顔が瑞希の目に映る

(えっ・・本部長!新藤本部長・・・・まさか!)


先ほどの女性は、年齢からして奥様ではありえない
前を通り過ぎていく紳士の行き先は県庁舎の方向だ
その姿を凍るような視線で見続ける瑞希がいた
  1. 2014/11/12(水) 11:24:23|
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春が来た 第42回

 休日の県庁舎は警備員はいるものの閑散としている
 瑞希は警備室のカウンターで入館チェックを済ませると本部長室へ向かう

 「あっ!本部長・・おはようございます
  今日は、ご出勤ですか?」

 「やぁ、瑞希君、おはよう
  少し整理しておきたいことがあってね、それで出てきたんだ
  それより、君はどうして?」


 今日の瑞希はダーク系のワンピース
 それに、ノーストッキングだ
 肌の白さが一層際立ち、その白い腕と両脚が眩しい
 手を後ろに組んで、背筋を伸ばすと自然にバストのラインが強調される
 男の視線がそこに向いているのを、この女は当然に意識していた


 「えーと・・・そう、ひょっとしたら本部長のお顔が見れるかと思って」

 「えぇー?なんて?」

 瑞希はふざけてウインクをした


 「それより、本部長は熱心に何をされているんですか?」

 普段の瑞希でない女が新藤に近づいてくる
 天真爛漫な少女の感覚
 まるでお茶目な女生徒が真面目なクラスの学級委員に接するように
 瑞希は新藤の肩に手を添え、机の上を覗きこむ
 自然と艶やかなストレートの長い髪が新藤の肌に触れ
 この女の香りが男の周りに拡がる


 「あ、あっ・・・これは見ちゃ駄目だ」

 「何でしょうね?それは・・・今、人の氏名と所属が少し見えましたけど」

 「えっ!見たの?」

 「はい!もしかして、それって・・・・・・・」

 「君が気にするようなものではないよ、忘れなさい」


 瑞希はお父さんに構ってもらえない娘の拗ねた顔をした
 そして鼻を新藤に近づけると

 「あれ?うーん、なんでしょうね、この香りは?」

 「香りって?」

 「はい・・本部長のこの辺りから少し香水の匂いが・・これって、女性のつける・・」

 瑞希のしなやかな指が、新藤の襟元を遊んでいる
 新藤は固まった


 「それに・・・本部長、これは口紅の色でしょうか?」

 瑞希の指が新藤の首筋で遊びだした
  1. 2014/11/12(水) 11:25:18|
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春が来た 第43回

 (まさか!この娘に・・・見られていた?)

 瑞希の指先が新藤を玩具にしている
 そして、女の胸元が男の顔に近づいてくる


 「本部長・・・あなたと私・・・同じ匂いがしません?」

 「同じ匂い?」

 瑞希の指が新藤の襟足の髪を撫でている
 ワンピースから見える生肌の白い太腿が
 もう手を伸ばさなくても触れそうなところまで近づいていた


 「同じ匂いって・・どういうことかな?瑞希君」

 「そうですね・・お互いにアレが好きってことかな
  それで・・・ふふん・・配偶者以外に遊び相手がいる?」


 新藤は顔をしかめた

 (やはり・・今朝の遼子といるところを見られたんだ)


 新藤は平静を装い

 「言っていることが良く判らないなぁ
  でも、君にはご主人以外に遊び相手の彼氏がいるんだね」

 「まぁ・・・本部長ってズルイ」

 瑞希にとって言葉のやりとりなどどうでも良かった
 この機会に何としても、この男を自分の庭に引きずり込むことだった

 「本部長、この前、主人と大変だったんですよ
  あなたが、主人にいろいろとお話しされるから・・
  これからは、あなたもそうそう話せないでしょうけど
  あなたは口が軽くてその何というか・・安心できないんです
  それで・・・絶対に私のことを話せないような事実をつくれば・・・・」

 瑞希の左手が新藤の太腿の上に伸びていく

 

 「瑞希君、事実っていっても・・・」

 「ふふ・・・以前、奥様から電話がかかってきて
  中途半端な終わり方・・・私の車の中で・・・お忘れですか?」

 瑞希は男と女の関係においては自分の方が上手だと思っている
 当然、テクニックも駆け引きも・・・・・
 あの時電話さえなければ、この男を簡単に落とせていたと


 「ああ、そうだった・・・確か、席替えの話をしたんだっけ」

 「もう、またそんな
  本部長、いいんですか・・・あなたの女遊びが奥様に知られても
  私は家庭を大事にしているし、あなたもそうでしょう
  お互いに家庭円満が一番大切なんだし、遊びと割り切っている
  だから・・・上司と部下の相互理解と互いの安心のための約束を・・」

 「・・・・・・・・・わかったよ、瑞希君」

 「そう?良かった・・・私、今日は出勤して本当に良かった
  じゃ・・本部長、私の車で何処かいいところへ」

 「いや、ここでいい」

 「ここで?」

 「ああ、そうだ
  一度きりだろうし、愛情のない単なる肉の交わりだ
  私はなにも心配などはしていないが、
  君が心配なら、ここで思うようなところまでの事をすればいい」

 「まぁ・・なんてデジタルな人」

 (ふふふ・・・私と契って平気でいられるかしら、本部長
  甘いわ、あなた・・・・脅迫や金銭などと比べられない担 保・・・ふふふ)


 瑞希は大胆にも新藤の膝に跨りキスを始めた
  1. 2014/11/12(水) 11:26:08|
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春が来た 第44回

女と男が互いの唇を貪るように吸い合っている
男は自分の膝の上に跨った女の太腿を撫で擦っている
女は男のネクタイを外し、ワイシャツを脱がし乳首を甚振る
舌が絡み合い、互いに唾液を相手に送り込む
女が先に飲み込んだ

「あぁぁ・・美味しい・・・」

女が上目づかいに男の顔を見る

(この人、キスは上手だわ・・・・私の送った唾液も合わせて私に送り返してきた)


女は自らワンピースを脱ぎ捨てる
白く輝くスレンダーな女体が男の目に飛び込んでくる
女は背伸びをし、髪を掻き揚げ胸を反る
男の怒張が跳ねた

女はゆっくりとブラを外した
小さいが、可愛いお椀型の美乳が揺れている
男の怒張はズボンの中で膨張を続ける

男はズボンを下ろし怒張を女に見せる

(凄い・・お歳のわりには元気そうな息子さん
 そう、きっとそうなんだわ・・・あの女性、この息子さんに惚れたのね・・)


女が男の前でひざまずく
目の前の男の怒張を口に含んでいく
亀頭部分を丁寧に舐め
竿に舌を走らすと
男の指が乳首を転がし撥ねる
そして乳房を包み込むように揉みたてる
男の怒張は益々固くなり、反りの角度をあげる

(立派だわ・・・太さといい、固さといい・・・何といってもこの色!
 この人見かけによらず・・・・遊んできたのかしら・・・・・・・・)


男は女を見下ろし
女は男を見上げている
女の手がしっかりと男の腰に回されると
既に走り水で濡れる男根を、口内深く味わうように飲み込んでいく

(本部長・・・直ぐに抜いてあげるわ・・うふ、さて・・どんなお味かしら
  1. 2014/11/12(水) 11:27:05|
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春が来た 第45回

既に時刻は正午になろうとしている

「ねぇ・・・お願い、今度こそ一緒に・・お願いします」


女は何度も絶頂を味わっていた
男はまだ一度も果てていない
男は逝きそうになると体位を変化させる
今この男は、好みの立ちバックスタイルで女を突き上げている

「瑞希君、一緒に逝って欲しいんだな?」

「はい・・私、もう・・これ以上は・・・あーんもう」

「なんと、だらしのない女だ、君は!
 この契りの条件を出したのは君の方だよ
 もっと頑張るんだ、我慢したら・・・」

新藤は、遼子との肉交で鍛えあげた怒張で、余裕を持って瑞希の女陰の蹂躙を続行する


「あぁぁぁ・・・もう駄目、駄目です・・・お願い、終わらせてください」

「終わらせる?・・・なんと味気ない言葉だ
 それじゃ終れない、もっと誘うように言ってごらん」


瑞希は頸を振り続け快感に耐えているが、目は朦朧としている
新藤は漸くもう頃合いと判断した
そして、女の耳元でなにやら囁く
すると・・・

「お願いです・・・私を最後にもう一度逝かせてください
 そして、あなたの精をたくさん、たくさん・・・私の中に出して
 お願い、お願いです・・・私と一緒に、一緒に逝って・・・・ねぇ、お願い」

「よく言えたね・・・瑞希君、案外と優秀なんだ君は
 それじゃ、私も君に応えよう・・・・瑞希君、今度は一緒だ
 私の精を感じて、逝くんだもう一度、いいね・・さあ、呼吸を合わせて・・・」


男の突き上げが一段と激しくなる
強く、強く、さらに強く

「あぁぁぁ・・・もう駄目です、あふ・・早く、お願い早く、ください」

「もう直ぐだ・・もう少し待って」

「駄目・・あああっ・・・逝く、逝く、逝きますぅ・・・あぁ」


前かがみに倒れかける女体
それをしっかりと引き寄せ、留めの打ち込みをする男
男の額からも汗が流れ、恍惚となった女の腰をしっかと抱き寄せる
渾身の突きとともに、女陰深く男の白濁の精が放たれた
  1. 2014/11/12(水) 11:27:56|
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春が来た 第46回

 携帯の着信音が鳴る
 瑞希はその音で目覚めた

「遼子か?私だ・・・どうした?
 えっ、今夜も逢いたいって?
 そんなに、度々は・・・・うん、わかったよ
 じゃ、いつものレストランで6時に・・・・」

 (あの女性、遼子さんていうんだ・・この人、こんな優しい声を出して)

 瑞希は聞き終えると、再び目を閉じた
 新藤はソファーで眠り続ける瑞希の顔を覗く



「気持ち良さそうに眠っているな・・・いい娘だ」

 ソファーの上で横向きに眠る美女
 女体が男の精を受け、一層艶やかに白く輝いている
 男の手が女の息づく乳房から臍、太腿へと滑る
 そして唇を合わせた


「ううーん・・・」

「おや、やっとお目覚めかい・・・瑞希君」

「はい、本部長・・・・・あら、もうこんな時間に」


 瑞希は起き上がり、散らばっている衣服を集める
 そして、下着から一つひとつ、衣服を身につけていく
 新藤は自分の精を受けた女がする身支度
 それを眺めているうち再び下半身が疼きだした


「瑞希君・・・」


 瑞希は振り返ると、新藤の頸に腕を回して男の目を見る
 男の手が女の腰に回ると再びキスを始めた
 女の下腹部に男の腰が押し付けられ、女に男の気持ちが伝わる
 女はキスを解き、男の目を見つめて頸を横に振る
 しかし、男の手がワンピースの裾を捲くり、パンティを下ろしにかかる
 女は観念したように再び男の口に唇を合わせた
 初めて種付けをした雌に、雄がその味が忘れられずに二度目の種付けを始めた

 

 陽が西に傾いている
 男が女から離れ、衣服を身につける

「すばらしいよ・・・瑞希君
 一日に二度の射精なんて・・久しぶりだ」

「・・・・・・・・・これからどちらに?」

「ああ・・たまには家庭サービスをと思ってね
 あまり、妻を放っておくと疑われては困るからなぁ」


 新藤はそう言って部屋を出て行く


「あっそうだ・・君、妊娠しないように頼んだよ」

「ええ、ご心配なく・・・・大丈夫です・・今日は」


 にこっと笑って男が出て行く
 行き先は妻ではなく別の女のところへ
 自分に何度も絶頂を極めさせた強い男が、背筋を伸ばして部屋を出て行く
 その姿を目で追う女
 瑞希に今までに経験したことのない感情が生まれはじめていた
  1. 2014/11/12(水) 11:28:52|
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春が来た 第47回

県のトップである知事の肝入りで組織化された意識改革推進本部
その成果が見え始めていた
通称「一番隊隊長・沖田課長」が新藤のところに報告に来ている

「本部長、私の担当している職員は口先ばかりのインテリばかりですが・・
 第1号の依願退職の申出者がでました」

「いいぞ、沖田君
 その第1号は誰なんだい」

「福祉局の・・・・・・です
 どうも一人よがりの思い込みで女に走り、妻から離婚され
 相手の女からも見放されたようで・・・・これまでと思ったようです」

新藤の目が瑞希に向く
瑞希は表情も変えずにパソコンを叩いている


「ご苦労様・・・それで、次のターゲットは?」

「はい、支所勤務の江島係長とその仲間
 今、内定を進めています
 あの男は叩けば必ず埃がでる男
 上手く行けば、関係した役立たずの女性職員も一網打尽にと」

「そうか・・・慎重にな、彼は暴力を振るう可能性もある」

「心配いりませんよ、本部長
 私の見るところでは
 あの男は、女や弱い男には嵩にかかって攻め立て、風を吹かしますが・・
 強い男には靡いてしまう、全くなんと言うか
 女の腐ったチンピラやくざのような男・・・絶対に叩いてやります」

「そうだ沖田君・・・その意気だ、頑張ってください」


沖田が出て行くと
再び新藤が瑞希の様子を見た
パソコンを叩く手が止まって、画面を空ろな目で見ている

「瑞希君、どうしたんだ・・最近、少し元気がないようだが」

「いえ、そんなことはないです」

「ご主人とはさぞ上手くいっているんだろう?」

「はい、ご心配なく・・・」

「そう・・・ならいい
 判っているだろうが、先ほど沖田君が話した事、他言無用だぞ
 君に関係した職員だが、知らぬ存ぜぬを通せばいい
 それが・・・・・・君のためだ」


そう言って新藤は瑞希の席の前に来た
大きく胸の開いたブラウス
頸から胸への輝く白いラインに自然と目が走る

「今から出かけますが・・・昼過ぎには戻ります、じゃ」

部屋を出ていくこの部屋の主
この主との情事から一ヶ月
その間に前の男と縁を断ち、瑞希は服装を少し派手目にして
無意識に、この主の気を惹こうとしていた
しかし、この主は全く気にとめない
服装のことも、情事のこともまるで関心がない様子
きっと、あの遼子さんのところへ行ったに違いない
瑞希の胸にチクチクと針が刺さったような痛みが走る
  1. 2014/11/12(水) 11:29:50|
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春が来た 第48回

新藤は夕刻近くに戻ってきた
瑞希がお茶を持っていくと、自分の香水と異なる香りが漂っている
気だるそうに、窓の外を眺めている新藤


「本部長、今日も早く帰って家庭サービスされるんですか?」

「うん・・そうしようかなぁ
 昼間に神経を尖らせているから、家に直行してもバタン・キューの生活だけど・・ね」

「ふふ・・本部長
 神経じゃなくって、体力の消耗し過ぎの間違いじゃないですか?」

「言うね・・瑞希ちゃんたら」


瑞希の顔が明るくなった
自分とこの主としか交わせない会話
それを今している・・・

「知事がねぇ・・・
 気分転換に、研修会に行けと言うんだ、関東での1週間の大研修会なんだ
 そこで、今やっていることの実践発表をしろとね
 どう?アシスタントとして君も行くかい?」

「それには、他の職員の方も参加されるんでしょうね?」

「いいや、二人だけだよ・・・初めは沖田君と、と思っていたんだが
 彼、今忙しいから・・・・」

「では・・・主人と相談して、それからでいいでしょうか?」

「うん、それでいいよ」


再び新藤は窓の外を眺めている
既に退庁時刻は過ぎ、隣の事務室は物音がしなくなった
今日の瑞希は白のブラウスに紺のタイトミニだ
その容姿を男にアピールしている

「本部長・・・今日は大変お疲れのご様子ですね
 ・・・少しはお歳のことを考えて、わざわざ出向いてご無理なさらないように」


その言葉に、新藤は目の前の女を射すように見つめ出した
あの時以来だ・・・このムードは
雄が雌を手招きする
瑞希は待っていた・・・
久しぶりに、この男が女としての自分に振り向いている


「随分遠まわしな言い方だな、瑞希君・・・して欲しいのかい?」

「・・・・・・・」

新藤の手がタイトミニから伸びる女の太腿を、ストッキング越しに擦っている
女は甘えるように男の膝に腰を寄せている


「君のこの華奢な肢体を抱きしめ、甘い声を聴き、匂いを嗅ぐと生気が蘇る」


「・・そ、そのようですね・・もう、あなたが、あなた自身が、私をこのように・・・」


「君はなんとも駆け引きの上手な女だ・・・だが、欲しがっているのは君の女だ」


「ええ、そうです・・・もう、もう、これ以上私は待てない」


「ふん・・・やっと素直になったか」


瑞希は男の膝から降りると
本部長の広いデスクの下に潜り込み、男のズボンのチャックを引き下ろす
思ったとおり、あの黒光りしたこの男の怒張が反り返り飛び出してくる
二人の目が交差する
女は匂いを嗅ぎ、舌を這わす
男の怒張が、天を貫くかのようにそびえている


(瑞希、どうだ・・この怒張で先ほどまで、遼子がよがっていたんだよ・・わかるか)

(あなた・・これで、あの女を突いてきたのね・・ここに私がいるというのに)
  1. 2014/11/12(水) 11:30:40|
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春が来た 第49回

新藤の妻は世間知らずのおとなしい女性だ
資産家の一人息子の新藤とは、お見合い結婚
スポーツが万能で学力優秀な若い青年が、生花、お茶系の淑やかな女性を見初めたのだ
妻の実家も裕福で、親戚には経済界の人が多く、県会議長を務める叔父さんもいる


「あなた・・今日、叔父さんにお食事をご馳走になったの」

「叔父さんて・・・県議会議長の?」

「ええ、あの叔父さん
 その叔父さんがね・・・内緒だといって教えてくれたの
 今の筆頭副知事さんが今期の任期で勇退されるそうなのよ」

「ああ、その噂なら私も聞いている・・・この9月末だそうだ」

「それで・・・その後任にあなたの名前があがっているって」

「本当か?それは初耳だ
 でも、いくらなんでも早すぎるし、先輩がたくさんいるんだから
 きっと、面白おかしく他人が法螺を吹いているんだろう」

「でもね・・どうも、知事さんがその気らしいって」

「知事が!」

「知事さん、今2期目でしょう
 叔父さんが言うには、今の知事は次の選挙には出ないって
 それで、自分の後継を選んでいるらしいの
 知事さん、あなたのことをこれからの人物だとおっしゃていたそうよ」

「そんなこと・・・」

「それで叔父さん、あなたによく言っておけって
 くれぐも、身辺は油断無く、清潔にと
 政治家で成功するには、家庭円満が第一条件
 地盤、看板、鞄と言っていたころと異なり
 今は、女性とのスキャンダルなどは命取りだぞ・・って」

「う、うっん・・・・女性とのスキャンダルだって?
 そんなことできる男で無いことは、君が一番良く知っているだろう」

「そうね・・・あなたは若い頃からそんなことは一度もなかった
 でも、男の人って・・・・最近のあなた、少し・・」

「ば、馬鹿を言うな・・・君は、私を疑っているのか?」

「いいえ・・・だだ、県の幹部になってから少し変わったかなって
 あなた、私たちには結婚前の娘が二人います
 たとえ、遊びであっても私は絶対に嫌よ
 あなた、お願いしますね・・・くれぐれも女性に迷わないようにね」

言いたい事だけ言うと、新藤の妻は寝室に消えた
そう言えば・・遼子と遊びだしてから、妻を抱いていない
それで、妻は・・・・・・

新藤は大きな溜息をつく
新藤は洒落たワイングラスに高級ワインを注ぐと、寝室の妻に声をかける

「おーい、ワイン飲むだろう・・・今、そちらに行くから」

新藤の妻は、45歳・・・清楚で貞淑な女の魅力を備えた熟女だった
  1. 2014/11/12(水) 11:31:28|
  2. 春が来た・道明
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春が来た 第50回

一方、伊藤家では瑞希が一介の男根を扱いている
夫の一介は、もともと性欲の強い男ではない
妻の不倫を疑ったあの時は、疑心暗鬼で特別な興奮状態であったと言える
普段の精神状態に戻ると、以前にも増して性行為に興味を示さなくなっていた
それが、瑞希の欲求不満をますます助長している


「あなた・・・」

「すまない、瑞希・・・今夜もその気になれないようだ」

「いいのよ、あなた
 私は、あなたの優しさが好きなんだから・・・
 無理しないで、その内に元気になるから・・・ね」

「ああ、そうだね」

瑞希は夫の頭を抱きしめる



「ああ、そうそう・・
 新藤本部長が関東で開催される研修会で、事例発表をされるの
 それで、私に一緒に行って欲しいって
 私はあなたに相談してからと、返事をしていないんだけど、どうしようか?」

「あの新藤さんだろう・・優秀なスタッフも行くんだろうし
 秘書のお前が、お手伝いするのはあたりまえじゃないか」

「でも、あなた・・・1週間もよ、炊事や洗濯・・・いいの大丈夫?」

「何を心配してるんだ?
 こんな時こそ、親と同居の意味があるんじゃないか」

「じゃ・・・行くって返事するね」

瑞希は夫の髪を優しく撫でる



「新藤さんか・・・あの人はいい人だ、きっともっと偉くなる
 そうだ、一度お前の手料理でも召し上がってもらったらどうだ
 瑞希は、仕事はからっきし駄目だろうけど
 料理は上手い・・・そうしよう、あの人にはこれからもお世話になるだろうし」

「よく言うわね
 でも、この家に来てもらうの・・・来てくれるかなぁ
 本部長は資産家の一人息子でお金の苦労とは無縁の人
 豪邸に住み、一般庶民の私たちとは別の世界の人なのよ」

「心配しないで、あの人を誘ってごらん
 あの人は、そんなこと全然気にしない人だと思うよ
 一度しかお会いしていないが、真っ直ぐで気持ちのいい人だった」

「・・・・あなたが、そう言うんなら誘ってみるわ」


瑞希は再び夫の髪を撫でる
そして、優しく夫の頬にキスをした
  1. 2014/11/12(水) 11:32:15|
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