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闇文庫

主に寝取られ物を集めた、個人文庫です。

ビックバンバン 一章 寂れた会社の保養所にて 第1回

 緑濃く繁茂する広葉樹の葉間を縫って、初夏の木漏れ日が車のウィンドウを抜けて目に眩しい。
 幹の太い鬱蒼と茂る木々の間を一台の白いライトバンが、譬えるなら忘れられたリゾート地とも言えるこの別荘地街の道路の、所どころに顔を出す痘痕のような陥没をよけながら、曲がりくねった登りの傾斜を奥へ奥へと進んでいく。
 舗装の途切れた林道をさらにしばらく進み、ようやくたどり着いた先は、別荘地の終点とも言える山懐という形容がピッタリと当てはまるような場所の、僅かばかり開けた土地に建てられた随分と古びた山小屋の前である。
 車を降りた数人の男女には旅行者らしい弾んだ会話も笑い声もなく、ふた言み言の言葉があったのだろうか、くすんだ感じのその古びた山小屋にやがて吸い込まれるように入り込んだ。
 正面の山容は、滑らかにうねる稜線が微かなもやを谷間に含み、横臥する女体を想像させた。


 
 「ええ、おそらくね、そうだったと思います」
「そ、それじゃあ、主人は不正なことを」
「ええ、それに不正というよりも危ない話といった方がいいと思います。不安定な仕手株にヤクザを乗っからせ結局大損をさせてしまった」
佐古田の話を聞きながら、気丈な母が思い詰めたような視線を膝の上の握り拳に落としている。
ふっくらとした頬を紅潮させながらも額のあたりが妙に青ざめたような顔で、心なしか震える声で母は一番気がかりなことを聞こうとした。
「それで、い、今、主人はいったい」
「お教えする事はできません」
「なぜ、なぜなの」
まだ三十前で父の部下でもあった佐古田は緊張した面もちで母の目をのぞき込むようにしている。
「たとえ奥さんであっても教えることはできないんです。今は課長にとって一番危ない時期なんです。意趣返しにヤクザがもう動き始めています。奥さんも危ないんですよ」  母はもっと何か問いかけたそうに潤んだ目で佐古田を見ている。父がもっとも信頼し家にもよく遊びに来ていた部下が、今悲痛な現実を伝えている。
会話がとぎれると、山間の別荘はミンミン蝉の声に一瞬のうちに包まれた、今まで鳴いてなかったかのように。
 次の瞬間、母は「うっ」と口を押さえながら俯いて肩を振るわせ始めた。
部屋の空気の重苦しい暑さが体を包み込む。
「母さん」、それ以上の言葉は思い当たらない。横に座っていた僕は母の顔をのぞき込んだ。
両手で泣き顔を包み、母は小刻みに肩をふるわせている。
今テレビで人気のマンガキャラクターが、Tシャツの背中で笑っている。初夏らしいジーンズのミニスカートからは素足のままの肉づきのよい太股を見せていた。
母の様子を伺いながらも佐古田は太股から股間、さらには尻の方へもなめるように視線を這わせた。
顔なじみの佐古田の前だからこそ、母も思わず気を許して泣き姿を見せてしまったのであろう、だが普段から気の強い母である、ほんの短い時間声を上げて泣いた後はすっとスカートのすそなど身仕舞いをただすと、「ごめんなさいね、見苦しいとこをみせちゃって、こういうときこそしっかりしなくちゃね、ごめんね太郎」と、それまでの思い詰めたような表情から一転、にっこりと健気な笑い顔を見せた。
ほんとに気の強い女だなあ、だけど母は佐古田が自分の肉体にひどく興味を持っていることにまだ気づいていない。男っぽい分、女としてはおおざっぱなところがあるから、自分のみっしりと肉の付いた尻を佐古田が時折しつこく凝視していることに気ずかない。
まるで父の忠実な部下らしく振る舞っちゃいるが、僕はてんで信じちゃいない。母はこんな時でも佐古田さんだけは力になってくれると感謝の念ひとしおみたいだけど、ああ、今も気を取り直してお茶を入れてるな、どうだかね。
 とにかく佐古田の話では中二の僕なりの理解しかできないけれど、父は仕事の不手際で行方をくらましている。追っかけているのはヤクザでその上、勤めている証券会社も傾きかけているらしい。だが父のおこなった仕事自体は会社も心得ていたことで、というよりむしろ会社の指示だったみたいだね、それで会社が父をかくまっている、そして佐古田が残された僕ら家族とのつなぎ役だってことなんだ。
そんなわけで僕と母もいったん都心の社宅を離れて、何せやくざも絡んでいるっていうからね、危害を加えられかねないというわけで、こんな山奥の忘れかけたような会社の保養所というにはおこがましいほどのログハウスにきているわけさ。
ログハウスというとなんだかしゃれた感じがするけれど、とんでもない、まあいってみれば大きめのほったて小屋、マッチ箱を立てたみたいな総二階で、二階に上がるにはまるで梯子みたいな階段を使わなくちゃいけない。
何とか地下水を掘ってあるので水は使える、頼りなげな木製の電柱が電線を這わしているので電灯は点く、でもガスなんて来ていないから調理なんてできやしない、キャンプで使うような小さなガスタンクの付いたコンロで、母はお湯を沸かしている、慣れない手つきで。
きょうは、ここへ来ての初日ということで佐古田が弁当やら水やら缶詰め、そのほか衣類など買ってきてくれたが、いったいいつまでここにいるのかわからないし、着の身着のままで逃げるようにしてきた身にとってははなはだ心細い。
ここはいわば寂れた別荘地の一番奥まったところにあり、舗装をしていない道もこのログハウスの前で途切れている。ログハウスの後ろはもう林で、緩やかな登り勾配で緑濃い山並みへとつながっている。
  1. 2014/07/06(日) 17:27:58|
  2. ビックバンバン・ざじ
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ビックバンバン 一章 寂れた会社の保養所にて 第2回

先ほどからもう一人、佐古田が連れてきた男がいる。
 男といってももう六十は越えていると思われる年頃で、頭ははげ上がり唇は厚く、額や頬に深いしわを何本も刻んでいる。しかし小さな目は人が良さそうで顔色も血色がよく、体格も大柄でがっしりとした肩幅をしている。
彼が佐古田の後から調度品を運んできたのだ。
今は風呂場の方でなにやらゴソゴソとやっているようだ。
佐古田は母の入れた茶を飲みながら思い出したようにいった。
「ああ、奥さん、紹介が遅れちゃいましたね。あの人は熊さんといいましてね、もっとも本当は熊谷さんというんですが、もともと会社の独身寮の寮管を二十年近くやられていましてね、信用のおける人です。なにぶんこんなところで静かな分、物騒とも言えますのでね、彼にはここでのしばらくの間の奥さんたちの生活一般雑用を勝手ながらもう頼んであるんですよ」
母は少々不安そうな目で風呂場の方を伺う。
しかしその不安というのはなにも佐古田の紹介とはいえ、初対面の男に生活を任せてしまうという不安ではなく、あのような老人に果たしていざというときの対処ができるのであろうか、いや、せめてそのような事態に陥ったとき一緒になって協力してくれるのだろうかという気丈な母らしい気持ちであったろう。
佐古田はそんな母の気性を知り抜いている。
「大丈夫ですよ、熊さんにはある程度事情もはなしてあるんです。もちろん核心に触れるような部分はさすがにはなしてはいませんがね、ただ奥さんにえらく同情しているんですよ」。
「同情、というと」、母はいぶかしげに問い返す。
佐古田は紙コップのお茶を飲み干した。
「実は、熊さんには生きていれば奥さんとちょうど同じ年ぐらいの娘さんがおりましてね」
「まあ.......生きていればというと」
「娘さんの嫁いだ先が小さな町工場をしていたらしいんですが、数年前バブルがはじけた後、ご多分に漏れず資金繰りが苦しくなっちゃいましてね、それがここへ来て銀行の貸し渋りです、従業員の給料を払うのさえままならなくなり、私財を抛ち、挙げ句の果てが倒産の憂き目、倒産してから従業員に何とかわずかばかりの金を払った三日後、一家全員が」
「......それじゃあ」
「ええ、まだ子供さんは小さかったらしいです」
「なんてこと、かわいそうに」
「そんなわけでしてね、熊さん、奥さんのことがとてもひとごとには思えないらしいんですよ。奥さんの窮状を話したら、いちもにもなくという感じで快く引き受けてくれたんです」
「そうでしたの、そんなことが」
「それに彼は若い頃は柔道で相当ならしたそうですから、いざというとき案外頼りになりますよ」
「今のお話で熊谷さんのご心情がよくわかりました。やはり子供と二人だけではどうしてもいざというとき機転が利きませんものね、是非熊谷さんにお願いします」
佐古田の話から、熊谷に対して親近感が生まれたのか母はきっぱりとした口調でいった。
「いやあ奥さん、熊さんでいいですよ、さんずけされるとなんだか自分じゃないみたいで」
そう言うと、いつの間にか熊谷は僕らの後ろにたっていて、白いタオルで汗を拭きながらアハハハと大声で笑い出した。
その顔が何とも人の良さそうな顔で、思わず僕らもつられて笑い出したほどだ。
「いやあ、全部聞かれちゃったみたいだね、熊さんに」
佐古田がいたずらっぽい顔で熊谷を見返す。
「いや、なになに、佐古田君がいったとうりですよ、わしはとても人のこととは思えん。ここはひとつ気を強く持って、奥さんもわしのことは他人とは思わずに、何なりと用事を言いつけてくださいよ」
熊谷の言葉に大きくうなずきながら佐古田も母を説得するように言う。
「本当にそうですよ奥さん、ただの手伝いではない、熊さんのことは家族同様に接してください。今回のような場合、守る側は一致協力しなければ対抗できるものではありません。 何しろ相手はなにをやってくるかわからない連中です。熊さんも私も奥さんと一心同体のつもりでやっていきます。ですから奥さんも変な気取りを捨てて、我々の指示に従ってほしい」
佐古田の真剣な口調に、改めて現在の家族の危機的状況が思い起こされたように、母は思い詰めたようなまなざしで佐古田を見返した。
やがて自分自身の心に決着をつけるかのように承諾の返事をした。
「わかりました。私は夫を信じていますし、佐古田さんのご厚意も熊谷さんの私たちに対するご心情もわかりました。私にとっては夫の安全がだだ一つの願いです。どうか一緒にお願いいたします」
きっぱりした口調だが、母の目には涙が溜まって今にもこぼれ落ちそうな感じだ、不安、そして佐古田たちの気持ちに対する感激がない交ぜになった涙かもしれないが、なんだか危なっかしいなあ、さっきから熊さんまでさりげなく母の後ろに回って腰のあたりに視線を這わせているよ。
本当かね、熊さんの身の上話ってのは、それはともかく母の体つきはどうも男から狙われやすいようだね。上半身は割と華奢でオッパイなんかも小さいもんだ、だからその分三十五歳の今でも形は崩れていないし、僕の手のひらでも十分包み込めるぐらいだ。
なぜ知っているかといえば、中二の今になっても、僕は母と一緒に毎日風呂に入るからさ。
男の子の一人っ子だから、よほど僕のことがかわいいんだろうね。僕もそうだけど母も何の違和感もなく一緒に入ってるよ、身体を洗いっこしたりね。だから母のオッパイの大きさも知ってるし、男だったら捻り上げたくなるような小さなグミのような乳首も知っている、僕ももう中二だからね。
男勝りの性格だから、母は僕に対してちっとも女を意識していない。僕にとっては最近結構目の毒なんだ。顔なんかも小作りで口もおちょぼぐち、でも目も眉も切れ長でキリッとしてて気の強さがよくでてる。だけど腰から下、尻から太股にかけての熟れ具合がすごいんだ。
尻は華奢な上半身には似合わないほど大きくて、パンパンに張っていて、皮膚自体は薄い感じで、はち切れそうという表現がピッタリなんだ。
肌理が細かい肌で、色白の尻たぶのてっぺんあたりが少し赤みがかっている。友達といつか回し読みしたエロ本に、禿頭の毛むくじゃらの白人が同じ白人の若い女を横抱えに膝の上に乗せて、手形がついて真っ赤になるほど尻を叩いている写真を見たことがあるけれど、マニアが見れば母の尻はほっとけないんじゃないかな。
風呂場でいつだったか、湯をかき混ぜるのに屈んだ拍子に、いたずらに母の尻を下から見たことがあったけど、肉付きが良いせいで尻の穴も見えなかったよ、でも尻の割れ目の中心からちょっと長めの産毛が放射状に広がる感じでね、何てったって主婦だから尻の毛の手入れまではしてないよね。
  1. 2014/07/06(日) 17:28:54|
  2. ビックバンバン・ざじ
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ビックバンバン  一章 寂れた会社の保養所にて 第3回

「うまくいったかな佐古田」
「いやあ、さすがは熊さんだ、演技がうまいよ、あれじゃあ誰だって騙されちゃいますよ、へへへ」
「なに言ってやがる、おまえの方こそまじめな面しやがって、あの女にゃいつもそんな顔して近ずいていたんだな」
佐古田がひとまず帰るのを見送ると言って出てきた熊谷、二人は佐古田の車の前で笑い声を押し殺している。
「それにしてもおまえの言ったとおりだよ、あの女は掘り出し物だ。あれだけの見事な尻の持ち主はなかなかいねえな」
「珠恵の尻は最高ですよ、熊さんだから言っちゃうけど、二年前、会社で一泊の海水浴
があってね、そのとき珠恵も来てたんでずっと気をつけていたんですよ、明け方そっとトイレに立ったんでね、後を付けましてね、そのときの民宿のトイレはトイレというより昔風の雪隠で戸の下が少しあいててさ、へへへ、這ってのぞき上げれば珠恵の方から尻をむき出してくれる寸法でね、へへへ」
「悪いやつだな、それじゃあおまえ、ええい、もったいぶるなよ」
「ええ、一部始終をね、あの尻をパックリと割って、かわいい尻の穴をやがて膨らませてね、うんちをひり出すための、いきむ吐息が忘れられませんよ」
「たまんねえな、いい思いしやがって」
熊谷は生つばを飲み込む。
「そんなこと言っちゃって、熊さんもこれから腕の見せ所ですよ、珠恵はすっかり信用していますよ、だけどあの女は気が強い、なかなか一筋縄ではいかないね」
「ああ、そこだな、だけどな、気の強い女を落とす醍醐味というやつがまたこたえられなくてな。今までのしょうもないあばずれ女とは違う、正真正銘の熟れきった素人女だ、じっくりと攻めてみたいよ。気持ちが不安定になっているのもこっちにとっちゃ有利な条件だ、つけ込むチャンスもあるってもんだ」
「しかし、熊さんが会社の寮管だったなんて大嘘で、実は旦那を陥れた張本人と知ったら、珠恵は腰を抜かすだろうね」
佐古田の下卑た含み笑いに、熊谷も珠恵に見せた人の良さそうな笑い顔が信じれないほどの狡猾そうな顔で、ニヤリとしてみせた。
「まあ、かわいそうだがあの旦那にゃすべてひっかっぶってもらわにゃならねえな、女房の方は思ってもみなかった余録だが、旦那の方はきっちりけりを付ける必要がある」
「じゃあ中川さんの方はそろそろ」
「ああ、そこだ」
熊谷はふと考え込む顔つきになった。
「おまえのところの会社には相当稼がせてもらったが、もう倒産も時間の問題だ。その前にだ、責任を感じて自ら命を絶ってもらう計算なんだが」
「今一緒にいるのは」
「精二と銀次さ、組のあぶれものだがこと荒事に関しては一流さ、始末をつけるのは問題ないが、どうも奴らも珠恵に興味があるみたいでな、中川を生かしといて、テメエの女房がケツの穴に指でも入れられてるのを見せてやるのもおもしれえんじゃねえか、なんてことを言ってるよ」
「あくどいな、ヤクザってのは」
佐古田が思わずつぶやく。
「あくどいのはお互いさ、人のことはいえない。ただ奴らが手を着ける前にこっちもたっぷり珠恵を楽しんでおかなくちゃな」
「で、今夜どうするんです?」
 「気が弱くなっているときだ、強引にいってみるのも面白いかもな、ふふふ......どうも年を取ると気が短くなってな」
 佐古田と熊谷は目を合わせるとお互いほくそ笑んだ。
  1. 2014/07/06(日) 17:30:34|
  2. ビックバンバン・ざじ
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ビックバンバン  一章 寂れた会社の保養所にて 第4回

中小証券会社ながら堅実な経営で業績を伸ばしていた五洋証券であったが、バブル崩壊、株価暴落の荒波は容赦なく押し寄せてきた。太郎の父である中川は上場会社であるB社を得意先にしていたが、株価の暴落によって投資有価証券に評価損が発生した。
中川は会社の命により損失補填を行うこととなったが、そこへどう情報が入ったのかヤクザグループが喰いついてきた。
熊谷たちだ、熊谷自体はやくざではない。もともと大物総会屋の下働きをしていたのが、五洋証券の損失補填に目を付けて、おこぼれちょうだいと脅しをかけてきたのだ。
日頃つき合いのあった暴力団の精二と銀次を脅し役に伴い、社長の女関係と損失補填を絡めて会社に出向いたのが最初だった。
そうなると会社というものは仕方のないもので、汚いものは常に上から下へ流れる。
会社の命令だった損失補填も、書類が残っているわけではない。しかし書類の通達などなくても、上司の指示とあれば従ってしまうのが会社員の悲しさである。
挙げ句の果てが、社長はじめ幹部連中は会社の清算処理、そして自分自身の有利な身の処し方に汲々となり、もはや一社員のことなどかまっちゃいられない。それどころか損失補填の責任を中川一人に押しつけて少しでも会社自体は身軽になろうとする有様、熊谷たちも、会社からもうかなりの金を引き出しているとはいうものの、まだ欲がある。しかし会社もこう傾いてくると我が身が追求されかねない。
そろそろ引き時かと考えていた矢先、かねて手なずけておいた佐古田から中川の女房に自分が横恋慕しているという話がでた。
最初は笑っていた熊谷だったが、社内旅行の海水浴で佐古田が隠し撮りしてきたビキニ姿の珠恵の写真を見るに及んで熊谷の目つきが変わった。
佐古田は、珠恵が一緒に来ていた子供たちと水遊びに興じるうちに、腰を屈めたり、座り込んだりする瞬間をかなりの枚数カメラに収めていた。
佐古田にとっては珠恵の写真を熊谷に見せることによって、なかなか手出しできない珠恵の身体を何とかおこぼれちょうだい的にモノにできないか、という思惑があった。
そして、その写真はもともと女の尻やアナルに尋常ならぬ興味を抱いている熊谷とって、捨てがたい珠恵の魅力が映し出されていた。
細面の知的な顔立ち、髪はボーイッシュなショートカット、小顔で切れ長の目が気の強さをよく表している。
そして細い首から華奢な感じの上半身につながる。が、それから腰のあたりから尻へかけての充実ぶりが、アンバランスささえ感じさせるものだった。珠恵はミッシリと肉を張りつめた見事な尻をその写真で熊谷に披露していた。
写真では遊んでいるうちにいつの間にかよじれたのか、ビキニのパンツの右半分が珠恵の尻筋に食い込んでいる。
ビーチバレーでもしていた瞬間を佐古田に狙われたのであろう、張り切った尻を思い切りよくカメラに向けている。
「これは、何とも」熊谷が思わず絶句する、「すばらしい」、珠恵自身は気ずいてはいないが、尻マニア、スパンキングマニアを煽り立てるほどに挑発する、見事な尻の持ち主である。
会社からは金は吸い上げた、熊谷にとってバブルの仕上げは珠恵をとことんなぶり尽くすことになったのだ。
また、それこそが会社から見捨てられた、珠恵の夫である中川をも抹殺することにも通じていく。
 色欲、金欲に目が眩んだワルどもにとって一石二鳥の話だった
  1. 2014/07/06(日) 17:31:19|
  2. ビックバンバン・ざじ
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ビックバンバン 二章 浴室での陵辱 第1回

「奥さん、風呂が沸いたよ」
 外から熊谷の胴間声が響いた。
ここでの初めての夜、とは言っても午後七時過ぎ、初夏の今時分はまだほの明るい。
用意された材料で簡単な手料理を作り、熊谷を交えてできるだけお互い明るく振る舞った食事を終えて、母もその片付けがすんだところだった。
「熊谷さんこそ、薪まで割ってもらって汗をかいたでしょうに、どうぞ先にお入りになって」
 母は洗い物を終えた手を布巾で拭きながら答えた。
「火加減は私が見ますから」
「なにを気を使っていなさる、疲れているのは奥さん、あんたなんじゃ。遠慮なんかせんでゆっくり湯船で身体を伸ばしなされ。何度も言うようじゃが、わしを他人と思わんでくだされ、どうかウンと甘えてくだされや」
母のありがとうという声が小さく聞こえた。
「それじゃあ熊谷さん、お言葉に甘えましてよ」
 こういうときの熊谷の優しさが胸に染みたのだろう、母の目には涙が溜まっている。
「太郎ちゃんも一緒に入ろう」
「うん、着替えをとってくるよ」
 僕の着替えは確か二階においてあるスポーツバッグの中だ、二階へ上ったところがなかなかそのバッグが出てきやしない。
「お母さん先に入ってるわよ」
 下で母の声が聞こえたものの、いったいどこにいっちゃったんだろう、見つかりゃしない。ようやく着替えが見つかったときは僕も汗だくになっていた。 旅行用のトランクにTシャツなんかと一緒にスポーツバッグまで詰め込んであったので、なかなかわからなかったのさ。
さあ、僕も風呂へ入ろうと階段を下りかけた足が止まった。いつの間にか熊谷が家の中に入っている。それどころか、今さっき脱いだばかりの母の衣類を入れた脱衣かごの前にかがみ込んでいる。
風呂場と脱衣場を仕切っている引き戸の磨りガラスに、母がかけ湯をしているシルエットが映っている。
階段の上から斜め下にその情景が見える。
僕は思わず身を潜めた。
熊谷は磨りガラスごしに母の様子をうかがいながら、脱衣かごへ手を伸ばすと、衣類の奥へしおらしく忍ばせてあった、母の縮こまっているベージュのパンティをすっと引き抜いた。
暑かった今日一日の汗をたっぷりと吸った、まさしく脱ぎたてホヤホヤのパンティである。
熊谷は湿気と温もりを楽しむかのように、丸まっちくなった母のパンティを両の手で包み込み転がしながら、いやらしく頬をゆがめて笑い顔になった。
そして今度はくるっとパンティを裏返すと、母の股間をキュッとくるんでいた部分にやおら鼻を押しつけていった。
恥丘から尻の割れ目まで続く女の縦筋に沿って、母の秘められた野生の匂いをじっくりと丹念に嗅ぎ取っている。
陰毛に飾られた恥丘を覆っていた部分から、尿道口、陰門、尻の穴に密着していた部分にまで、飽きることなく鼻を擦り寄せて母のパンティを何度も往復させる。
心を許した男にだけ唯一知ってもらいたい、そしてそれ以外の男には絶対知られたくはない、自分の汗を含んだ恥ずかしい独特の淫臭を、今日会ったばかりの男にじっくりと楽しまれていようとは、母は知る由もない。
それどころか、熊谷は母の尿の匂いや尻の穴の匂いまで、丹念に布地を引き伸ばしながら嗅ぎ分けようとしているかに見える。
ああ、思った通り熊谷は母を狙っているよ、何ともしつこそうな男に見込まれちまったもんだね。
ようやく母のパンティを脱衣かごに戻すと、熊谷はまた外へ出ていった。
しばらくすると、「奥さんどうだね湯加減は」と、なに喰わぬ調子で声をかけた。
「ええ、とってもいいお湯です、ありがとうございます」
 なにも知らない母が答える。
「疲れているだろうに、ゆっくりとお湯に浸かっていなさいよ」。
「ありがとうございます」。
風呂場の壁を隔てた外で熊谷は薪をくべている。
浴槽はコンクリートを固めた旧式な造りで、底が釜になっているため板敷きが引いてある。
しかし結構広くて、畳二畳分ぐらいはありそうだ。
保養所として、一応は大人数が入る想定をしたのだろう、母もゆったりと身体を伸ばしているはずだ。
「奥さん、なんだったら背中でも流してあげようかね」。
のんびりした感じで熊谷が言った。
「と、とんでもない、そんなことまでお願いできませんわ」
 明らかに少し躊躇したような母の声だ。
「なにを遠慮していなさる。ここでしばらく一緒に暮らし、苦楽をともにする仲じゃ、遠慮も、まして恥ずかしさなんかなんも感じんでいいんじゃよ、どおれ待っていなさい」 どうやら熊谷は好々爺を装おい、母のくつろいでいる風呂場へ半ば強引に侵入する気配だ。
「ちょっ、ちょっと待ってください、お願いですから、お願い、あぁどうしょう」。 母のうろたえている様子が手に取るように分かる。
熊谷は先程ののんびりした口調とは裏腹に、玄関の戸を乱暴に開けるとさっそく作業上着を脱ぎながら脱衣所へ小走りに向かう。うかうかして、母に浴室から逃げ出る暇を与えたくなかったのだろう。
作業着を脱ぎ、シャツも脱いだ熊谷の上半身は六十を越えているとはとても思えないくらい無骨な筋肉を付けている。赤銅色の肌が汗でじっとりと濡れて光っている。
「熊谷さん、お願いです、ちょっと待って、わたし今上がりますわ、ですから」、母は浴槽から出たものの、磨りガラスごしに熊谷が見えるため浴室から出るに出られない。  「ゆっくり浸かっていなされ、裸のつき合いというものが一番人間にとっていいんじゃよ」
 熊谷はそそくさとズボンを下ろしながら口調だけはゆったりとしてみせた。
「でも、でも、熊谷さん堪忍してください。わたし、やっぱり恥ずかしいんです」
 気の強い母だがさすがに最後は泣き声になっている。
 親切を尽くしてくれる熊谷に対して無下に断れもせず、かといって今日会ったばかりの初老とはいえ異性に、生まれたままの姿を見られることは身を切られるほどに恥ずかしい。 思っている間に、熊谷はもう最後に残った褌を脱ぎ捨てて風呂場の戸を開けてしまった。
「あぁ、いゃあ」
 熊谷を見て背中を丸めてしゃがみ込んでしまった母だが、とっさに僕の名前を呼んだ。
「太郎ちゃん、太郎ちゃんも早くいらっしゃい、一緒に、早く」
母は、藁をもすがる思いで僕を呼んでいるのだ。
熊谷はなんでもないかのように肩を抱きかかえると、小柄な母を持ち上げるようにして浴槽へ入ろうとしている。
「太郎ちゃん早く来てぇ、あぁん早くぅ、あぁ熊谷さん、いゃぁ、そこいゃあ」
 母の今まで聞いたこともない、せっぱ詰まったような泣き声に急いで風呂場へいくと、母は浴槽に引きずり込まれながらも、なんとか縁に手をかけて上半身を起こそうとしているのだが、後ろから肩越しに熊谷のごつい右手で袈裟懸けに左の乳房を鷲掴みにされているのだった。
  1. 2014/07/06(日) 17:32:43|
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ビックバンバン 二章 浴室での陵辱 第2回

母は唇をキュッと噛みしめ、体の芯からジーンとわき上がるような感覚を小振りの乳房を付け根から絞り上げられて、薄紅色の乳首を否応なしに勃起させられている、その上、熊谷の左手は母の左脇腹から湯の中へぐいっと突き入れられている。
 おそらく母は恥丘をも鷲掴みにされ、揉みこまれているのではないか、それで思わず泣き声を上げたのだろう。
「奥さん、どうしたどうした、いい年をしてそんなに恥ずかしがらんでいいんじゃ、これ、背中を流してやると言うに」。
開け放たれた扉の前で呆然と立ちすくむ僕の方を上目使いで見ながら、熊谷の口調はやさしい。
それどころか僕の顔を見て一瞬嫌な顔をしたものの、すぐ気を取り直したように、「そうじゃ、太郎君も入ればお母さんも落ち着くじゃろうて、今日はいろいろなことがあってお母さんは気がたかぶっているんじゃ、心配せんでええから太郎君は身体でも洗え」、と熊谷はあくまでも落ち着いている。
僕が入ってきたため、ようやく熊谷は母の乳房から手を離したものの、今度は母の細い首の付け根を両手でガッチリと押さえ込んで、動きを制している。
「かわいそうに、気を強く持たにゃあいかんぞ奥さん、こんなことぐらいで慌ててしまって。わしはマッサージが得意でな、奥さんの心を揉みほぐすためにも、ひとつじっくり身体を洗ってやりながらマッサージでもと思ったんじゃが、親切心が裏目にでたようじゃな。あんなにうろたえてはこれから乗り切っていけん。なにも心配はいらん、だから、な」 熊谷の太い指が母の白い首筋をなぞる。
母の左の乳房には熊谷の指の跡が、色白の餅肌に赤くクッキリと生々しく刻まれている。
 かなりの力で揉み絞られたようだ。
「奥さん、落ち着いてきたかな。なあにわしもな、あんまり暴れられるもんじゃで、つい荒療治をしてしもうたが、落ち着いたならどうじゃ、任せてみんかなわしに、うん、どうじゃ、ほれどうじゃな」
首筋から肩へ、そして背筋をなぞられながら母はまだ荒い息を押し殺せずにいる。
無理もない、恩人と思い心強い味方とも思っていた人物にいきなり浴室に侵入され、今まで普通の主婦として堅実な生活を営んできた母にとって、かって経験したことのない有無を言わさぬ厳しい責めを仕掛けられたのだ。
母は頬を火照らせ額と小鼻に玉の汗を浮かべている。
 への字になった下唇をワナワナと震わせ、まるでいじめっこにいじめられている少女が、今にも泣きそうになるのを懸命にこらえているかのように、目線もまだあちこちを彷徨い、気持ちと同じくなかなか定まってくれないようで、両の目尻からは、ツー、ツーと涙の糸が止まらない。
耐えきれないほどの恐怖心との戦いがあったろうが、なによりも母にはこの場を何とかうまく切り抜けなければ、という思いが強かったに違いない。
なにせ、今の母は非常につらい立場に立たされている。
 夫の仕事上の不祥事による失踪、そのことから波及してくる困難に、身ひとつでもって立ち向かわなければならない。僕を守り父をなんとしてでも救いたい。だが父の行方は家族にさえまだ証すことは出来ないという、そんな八方ふさがりの中で危険を省みず手を貸そうという佐古田と熊谷である。邪険に扱えるはずがない。
 まして、やり方は荒いが熊谷の親切心は嘘ではないかもしれない、それどころか、女子高生のようにうろたえ喚き立てた自分が恥ずかしくさえなってきたんじゃないのか、こんなことぐらいで熊谷の気分を損ねてはいけないと。
「熊谷さん、ごめんなさいね、わたしマッサージなんて経験がなかったもので、あんまり急でびっくりしちゃって、堪忍してくださいね、ぜひマッサージをお願いしますわ、もう暴れませんから、でもさっきみたいなことは勘弁してくださいね」
 ついに意を決したように、後方へ身をよじり熊谷の目を見つめ、震える小さな涙声ながら自分の気持ちをしっかりと熊谷に伝えたのだった。
 僕の見ている前で、親としてもうこれ以上うろたえる姿は見せたくはない、ましてやここで熊谷に気まずい思いをさせて、自分たち親子を見放されたくない、ここは熊谷を信じよう、そう思ったのではないか。母の気持ちを考えると痛々しいが、それが唯一母に出来うる選択だったのだろう。
「おおそうか、よう決心してくれたな、始めは誰しも戸惑うんじゃが、じき慣れるもんだ、マッサージなんてそんなもんじゃ。それに奥さん、あんたのためじゃからの」。
熊谷は母の健気な決意に心底うれしそうな顔で答えると、「どれ、さっそくじゃが」と、母の両脇から手をこじ入れ、ごつい金の指輪をはめた太い指で左右から小振りの型良い乳房を胸の中央へ寄せ集めるように、ギュッギュッと揉み込み始めた。
いきなり自由になぶられ始めた自分の乳房にびっくりして、始めはまた泣きそうになっていた母だったが、やがて唇を噛みしめ目を閉じると、僕に見せまいとするかのように胸の上に手をそっと交差させた。
  1. 2014/07/06(日) 17:33:32|
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ビックバンバン 二章 浴室での陵辱 第3回

母の健気ともいえる承諾に、熊谷は乳房への責めを一層強めることで応えた。
左右から乳房を絞り寄せ、あばら骨が浮き出るほど下から押し上げたりもする。
乳房を押し上げられると、母の細長いグミのようなチョロッとした乳首が、揉み上げのリズムに合わせて突き立てられるように、すでに最高のとがり具合を見せ、肩越しにのぞき込む熊谷の目を楽しませている。
「あひゅっ」という母の小さな悲鳴は、熊谷が尖りきった細長い両乳首を親指と人差し指の腹で挟んだ瞬間だった。
つまみ上げてくださいと言わんばかりの屹立を熊谷が見逃すはずもなく、いままで乳房に加えていた力強い責めとは打って変わって、つまんだ指の腹で乳首の先へ向けてさらに堅くしてやると言わんばかりに、ゆっくりとなぞり上げたり、親指の腹で一旦は乳うんに埋め込んだ乳首が、指を離すと勢いよく飛び出す様を楽しげに愛でている。
母は唇をキュッと噛みしめ、体の芯からジーンとわき上がるような感覚を必死に押し戻そうとしてはいるが、神経の集中している尖りきった乳首をこうも弄られると、「うきゅ」、「うきゃ」と時折小さな悲鳴をどうしても上げざるを得ない。
 噛みしめていた口を半開きにして声にならない声を上げるかのように、頭を振ってイヤイヤをするほど追い上げられてきている。
それでも母は成熟した男と女の静かなせめぎ合いのなかで、上半身を汗でヌラヌラにさせられながらも懸命に応戦している。
そんな母を焦らすようにいたぶりつつ熊谷は様子を窺う。
小振りの乳房を骨ばったごつい手でギュウッと揉み込んだかと思うと、今度は乳首を手のひらで軽く擦り上げる。
 昨日までは顔も知らない男と女が、今日は寂れた荒屋で、こうしてネットリと肌を合わせて湯に浸かっている。そんな状況を母に改めて思い起こさせるかのように、ねちっこく母の乳房をなぶる。
白い乳房の下へ赤銅色の右腕を差し入れ母の上体をぐっとせり上げると、可愛らしい縦長の小さな臍が湯玉を跳ねながら顔をのぞかせる。熊谷はその臍を摘み、太い指をぐぅっとこじ入れる。指の先を底までとどかせると、くりぃくりぃと母の臍を歪に踊らせる。
母は熊谷の太い指を臍一杯でくわえながら「ふっ、ふぅ、ふうぅ」と不規則なため息を吐いた。
母の上体をせり上げる力加減によって、股間の柔毛が湯面にふぅぁと漂う。
臍を弄られ乳房を揉まれながら、やがて小鼻から、まるで深呼吸をしているような、荒い棒のような息を間断なく吐き始めた母を横目で見ながら、熊谷はニヤリとした。
「ふうぅん、ふうぅん」、と淡いピンク色に上気した上半身を堅くして、時折、ビクビクッと体を震わす母をゆっくり湯に戻すと、熊谷は母の感情の高ぶりを見計らったように両乳首をクイッと摘み、一気に乳房ごと捻り伸ばした。
「うきゅうあぁ、おうおう、あぁ、ああぁ」
 泣き声がほとばしった。
母は可哀想なほど身を曲げ反らし、熊谷の方へ顔を捩り、「はうぅ、はうぅ、おぅおぅっ」と、必死の形相で我が身の苦境を訴えかけた。
熊谷は母の苦悶の表情に、楽しげに「ほれほれ、どうした」と、囃し立てるような笑い顔を返しつつ、なおも容赦なく小振りの乳房ごと引き千切るかのように乳首を引っ張り上げる。
「うわぁ、ああ、あんあん、いゃぁん、いゃぁん」
 母はそれでも熊谷の手首を必死で押さえながら、言葉にならない声で、泣き声を上げなければならないほどに追い詰められた自分の姿を体裁を繕うこともせず、大きな口を開けて訴え続けている。
熊谷は母を許す素振りも見せず、今度は小振りの乳房を無理に引き寄せて乳首と乳首を擦り合わせてみせる。
「ほれほれ、これはどうだ」。
「ひっひっ、ひえぇ、ひきゅう」。
 どうにも堪らなくなった母は、浴槽から立ち上がろうとした。
そのとき、「あおおぉぅ」という泣き叫ぶような悲鳴と共に、母はまたどっかりと熊谷のあぐらの上へしゃがみ込んでしまった。
熊谷は、母のグミのような乳首を無慈悲にも捻りつぶしたのだ。
瞬間、左の乳首からプッと朱が小さくほとばしった。
熊谷の指先は、母の乳首の返り血で赤く滲み始める。
「こら、マッサージの最中に逃げてどうする。奥さん、耐えるんじゃ、耐えてこそ効果が出るんじゃ、こらえ性のない奴だ」。
熊谷は胴間声と共に母の頬を左右から太い指でガッチリと掴むと、揺すりながら怒ったようにたしなめた。
「あう、あう、ごめんなひゃい、ごめんなひゃい」。
母は自分の狼狽ぶりを必死で詫びる。
熊谷は恐い目で睨み付けて、なおも頬を鷲掴みにした手で母の顔を二度三度と揺すぶる。
母のすっかり濡れそぼったショートカットの髪から、湯玉となった汗が飛び散る。
「ゆるひてぇ、ゆるひてぇ、堪忍ひてくらさい、堪忍してぇ、してぇ」
挟み込まれた不自由な口で、母は必死に自らの非礼を詫び続けた。
「よし、今度こそ本当に決心をつけたんじゃな、これ以上はもうこらえんぞ」
熊谷の厳しい口調に母は小さく頷いて見せ、ようやく頬から手を放してもらった。
心が動転したままの母は両手で顔を包むと、泣いているのだろう、熊谷の胸の前で肩を震わせている。
  1. 2014/07/06(日) 17:34:21|
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ビックバンバン 二章 浴室での陵辱 第4回

ごく普通の家庭で、父と共に健康で朗らかな生活を営んできた母にとって、突然の父の失墜による生活の激的変化、ましてや母は今、考える余裕すら与えらず、今日会ったばかりの男に浴槽で体を弄られ続けるという状況に陥っている。
普通の人妻ならとっくに逃げているはずだが、母の気丈な性格はどんな窮地に陥っても、我が身が耐えてすむならば、と考えてしまうようだ。
しかし、その性格を熊谷は見抜いていると同時に、実に巧みにギリギリのところまで母を追い詰めて楽しんでいるように見える。
「よしよし、奥さん可哀想なことをしたな、誰でも始めは泣いてしまうもんじゃ、奥さんはよう耐えた方じゃ、ようし泣かんでええ、どうれ今度は痛くないからの、ほら、縁に手をついて、ゆっくり尻を上げてごらん、尻のマッサージが疲れを一番取ってくれるんじゃ、恥ずかしいことはひとつもない、あくまでマッサージじゃ、ほれ、上げてごらん」  気丈で男勝りの母のプライドを強引にへし折り、一転、今度は童女をあやすように優しくしゃべりかける。
「ほれ、尻を出してごらん」
強烈な乳責めからようやく解放されたという安心感で、かえって普段の理性を失わせている母は、涙を溜めたキョトンとした目で心配そうな顔をしながらも熊谷に小さく「うん」とうなづき、手を浴槽の縁に掛けると、オズオズと尻をもたげ始めたのである。
 やがて湯の中から、薄紅色に綺麗に染まった見るからに重たげな、肉のパンパンに詰まった尻を熊谷の鼻先へ、ぷくぅぁと浮かべて見せた。
「おうおぅ、立派な尻をしおって」
母は振り向いて、はにかんだような、それでいて少しでもからかわれると今にも泣き出しそうな切ないほどの愛想笑いを熊谷に見せている。
母のこんな笑い方を見るのは初めてだった。
 あの気の強い母が熊谷の言うがままに。
「それそれ、もそっと上げてごらん、うんうん、そうじゃそうじや、力を抜いて尻をくつろげて、そうして尻肉が割れるほど自分で突き出してごらん」
母は心配げに首を捩り熊谷を窺おうとするものの、なんとか満足してもらおうと突きだしている自分のムッチリとした尻が邪魔で、熊谷の今にもよだれを垂らしそうな顔を見ることが出来ないようだ。
「ほらほら、もそっと突きだして、あと少しじゃ奥さん、尻の割れ目を盛り上げる位のつもりで突き出すんじゃ」
言われた通り、とうとう母はやっと顔が湯から出ているぐらいに上体を沈め、重量感のある尻を思い切りよくせり上げ、さらに尻肉を割るために足をじりじりと開いていった。
「おう出てきた出てきた、赤い可愛らしい蕾じゃのう、情の深そうな尻の造りじゃ、蕾の周りまで、いやいやもっと上の方までも柔毛を生やしおって、さすがに主婦の尻じゃ、商売女とは違う牝本来の野生の尻じゃ」
熊谷は、ようやく思い通りに擡げられた母の量感たっぷりの尻たぶを下からすくい上げるようにしながら、指に吸い付くような触感を楽しむ。
「なぁに、なんなの、熊谷さん珠恵のなにが見えるの、いゃぁん」
 言われるままに尻をせり上げ全身を薄桃色に染めて、特に突き上げられた尻は発情を誇示するかのように赤く上気し、湯気を立ち上らせている。
「いや奥さん、マッサージじゃ、心配せんでいい」
しかしどこを弄られるのか、「あっあっ、あぁん、あんあん」と時折、母は湯しぶきを上げながら熊谷の顔の間近で激しい尻振りを見せる。
しぶきを浴び顔を拭う熊谷が弄りの手を休めると、母は不安そうに熊谷を窺いながらも、またじんわりと腰の方から背筋を反らすように、柔らかい体を十分に使って、熊谷の顔の前に重たげな尻をせり上げ、合わせ目を剥き出すように踏ん張ってゆく。
もう母は完全に自分を失っている。いつもは冷たいほどの理知的な光をたたえている瞳が、今は涙を溜めて半熟卵のようにトロンとしており、半開きの口の端からは荒い吐息に合わせて水飴を思わせるトロリとした涎がのぞいている。
このままでは、これ以上なにをされるか分からない。なにをされても、もはや母には拒むだけの余力が残っているようには見えない。
成熟した男と女のせめぎ合いに、なんの用意もなく怒濤のごとく突入させられた只の一主婦でしかない母にとって、熊谷の強引で巧みなきつい責めは冷静に耐えきれるものではない。
逡巡しながらも堪え忍ぼうと決心をした人一倍気丈な母は、そんな気性を見事に見透かした熊谷に乗じられ、尻の割れ目を自ら剥き出して見せるほど感情をコントロールされている。
どうにかしないと、なんとかここから母を助け出してやりたい、そうしないと母は熊谷の奴隷にされてしまうのではないか、時折小さな泣き声を上げながら、熊谷に尻をしつこく弄られている母のあまりにもエロチックな姿も僕の心臓の動機を早めてくる。
なんとかしてやりたい、でもどうすれば、蛇に睨まれた蛙のように僕は躰全体がすくんでしまって息をするのさえ苦しい。
 そんな焦る様子を熊谷は感ずいたのか、母の尻から顔を起こして僕を正面から見据えると、鬼のような赤い顔をして「へへぇ」とだらしなく笑い、「そうじゃ、太郎君を忘れておったわい、どれ太郎君にも見せてやろう、おまえのママがどんなに可愛いか、女の尻の奥がどんなに可愛いものか、ひとつ勉強じゃ、ママの尻で勉強するのもわるくない。ほれ奥さん、今度は反対じゃ尻を太郎君に向けるんじゃ」
「えっ、やゃっ、なにをするの、えっ、いやいや」
 むずかるようにする母を下から支えると簡単に湯の中でくるりと回し、思わず沈めそうにする尻を左右からバシッと叩くように掴むと、グイィと脚をしっかりと立たたせて、「あひぃ」と怯えた母の声に間髪を入れず、ぴったりと閉じた肉厚の尻の割れ目に 両の親指をグッと突き入れる。そしてまるで裂けよとばかりに、むにいぃと尻たぶをこじ開けた。
「ひゃやあ、や、や、なになに、いゃぁん」
いやがる母は尻を振り立てて逃げようとするが、熊谷の太い指が埋まるほどガッチリと尻肉に食い込んで、母の尻を制している。
「太郎君、これが女の尻というやつじゃ、お前のママはこんな大きな尻をしおって、ほれ見てみろ、奥の造りのこのこじんまりした様子を」
熊谷がいかにも嬉しげに無造作に割り裂いた母の尻を見せられ、僕は気を飲まれた感じで母の淫靡な尻の造りに思わず見入ってしまった。
掻き広げられたたっぷりとした薄紅色に染め上げられたの尻肉の狭間に、鮮紅色の縦長の楕円形がヌラヌラと滑り光っている。
股間の下で尖ったようになっている陰毛からそのぬめりが幾筋か糸を引いている。尻でいやいやをする母の動きで、湯が時折そこを洗う。
「ほれ可愛いじゃろう」
 熊谷が親指でこじ開けているその間に、苦しげに引きつれている更に赤みの強い母の尻の穴があった。
「えっ、なぁに、どうなってるの、太郎ちゃん、太郎ちゃん見ちゃ駄目ぇ」
母が泣き叫ぶ。
 自分の尻の狭間が著しく潤みを増しているのを感じてはいるものの、尻肉をこじ開けられてそれを息子に見せつけている、そんな想像すらしたことのない姿を今熊谷という男に強いられながら、すでに前後不覚の状態に陥っている母は熊谷に弄られ、苛まれるのを気の強さをむしり取られた、ただただ雌の本能のみで対応している。
「よし、もっと面白いものをみせようかな、奥さん息んでごらん、そらそらいつもウンチをするときみたいに、息むんじゃよ奥さん」
熊谷の声が母の小刻みな荒い吐息を覆い包むように浴室に響く。
「これもリラックスのひとつのやり方でな、遠慮もなにもいらん、ウンとここを膨らましてごらん、おぅおぅそうじゃそうじゃ、可愛いぞ」。
言われるまま母は上半身を堅くさせて息をクッと詰めると、火照った頬を更に紅潮させ息む表情に入っている。
熊谷に露わにされている母の可憐な蕾が内側から盛り上がるように膨らみ、小さく口を開けてモムモムと赤ん坊の口のように動いている。
熊谷はその小さく開いた蕾に鼻を押し当てると、まるで深呼吸するように母の匂いを楽しみ味わう、状況を把握出来ないまま母は蕾を膨らませようと、更に息みを強める。
「どれ太郎君、今度はこうだ」
熊谷はいままで嗅いでいた鼻を上げ、それまで懸命に盛り上げていた母のフジツボのような蕾にまるで押し込むように両の親指を突き入れると、グニッとばかりに剥き上げた。
赤い蕾から薄桃色の肉が花開くように剥き出された。
「あっあっ、なんなのぅ、いゃぁん、太郎ちゃん母さんお尻が変よぅ、気持ちが悪いわぁ、あぁんなに、なにされてるのぉ」
取り乱す母、同時にいままで散々息まされ、挙げ句尻の穴を剥き出された反動か、プシュッと堰を切ったかと思うと、母は排尿が始まってしまった。
「あぁ」、たまらず尻を湯に沈めようとする母に、「馬鹿者、まだわからんか」、と熊谷は一喝、ぐっと尻を引き上げると、バシィッと平手で打ち据えた。
「ひゃぁん」、尻を窄め、引っ込めようとする母、「上げろ」、厳しい熊谷の声、「いゃぁんいゃぁん、許してぇ許してぇ」、泣きながらも必死でまた尻を上げる母、そこへまたバチィン、バチィンと両の尻たぶを容赦なく打ち据える熊谷、母は激しい打ち込みに重たげな尻を湯しぶきを上げて震わせながらも、熊谷の手形で張り染められていく尻を更に叩きやすくするかのように、止め切れない尿を滴らせながら歯を食いしばって持ち上げる。
鬼が笑っているような、そして酔いしれているような赤い顔をして、熊谷はもはや逃げる気力の失せた、それどころか打たれる度に持ち上がる従順な母の尻肉を心地良さげに飽くことなく打ち据える。
母は振り子のように打ち下ろされる腕を必死に目で追いかけながら、か細い泣き声を上げ、熊谷の憐憫の情を待つ以外に道をなくしていた。
あぶねえ、もうこりゃだめだ。
「かあさん、かあさん、しっかりするんだ」
僕は居ても立っても居られなくなり、おざなりに洗っていた体にシャボンを付けたまま浴槽に飛び込むと、母の肩を掴んで揺さぶった。
「あぁぁ、あぁん、助けて助けてぇ」
僕は思わず母の頬を打っていた。
「かあさん」
母の酔ったような目に一瞬光が戻った。
そして改めて見た、自分ののた打つ尻を今また打ち据えようと身構える熊谷の姿、わずかに正気の戻った母にいったいどう映ったのか。
「いや、いやああぁ」
母は激しい泣き声を残して浴槽から飛びだし、体も拭かず風呂場から逃げ二階へ駈け上った。
振り返ると、浴槽にあぐらをかいたままの熊谷の目が僕を捕らえた。
額から汗をダラダラと垂らしながら熊谷は、「小僧」と言ってニタリと笑った。
その夜、熊谷はどこかへ消えた。
  1. 2014/07/06(日) 17:35:22|
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ビックバンバン 三章 やくざのアジトでの陵辱 第1回

バブルの崩壊は、それまで実体のない金の価値に狂奔し踊り狂った老若男女の欲望を全て飲み込み、引き潮となり速やかに去った。
ある者は自分がいかに善良で、こうなったのはきっと他の誰かが悪いと怒り、ある者は怯え、ある者は泣き、ある者は逃げた。
目算が狂った者は当たり散らし、得した者は今は静かにしている。
都心を離れた郊外、かってバブルの後半に(都会で働き週末はゆったり自然にくつろぐ)を謳い文句にして低山を切り崩した広大な土地がある。
側溝が掘られアスファルト道路が敷かれ、しかし区画整理半ばで放棄された。
バブル後半、無理に事業拡大を進めていた中堅不動産業者が事業半ばで倒産したのだ。
計画倒産の噂も流れたが後の祭りである。
半分以上を占める整地されただけの土地は、初夏の今はもう雑草の海となりかけている。 それでも建てかけのものを含めてわずかに三軒家屋が建っている。夕暮れになると二軒の家に明かりが点く。瀟洒な家々が立ち並ぶと思われていたはずの雑草の海を見ながら、どういった気持ちで生活をしているのだろうか、遠くでかすかにヒバリの鳴き声が聞こえる。
雑草群を越えて一番奥まった場所に、忽然と八階建て四十数世帯用に建てられたマンションがもう既に風化したように立っている。
バブル時代の名残の派手な造りが、場違いな感を一層高める。
住む者はいない。
その一部屋に今日の夕暮れ、ポッと灯が点った。


「君たちはいったい僕をどうするつもりなんだ」
男は後ろに交差した手首をガッチリと太いビニールロープで括られ、簡易イスに固定され座らされている。
足首にも同様のロープが三重に巻かれ、これもイスに固定されている。
白いワイシャツはよれて、背中の部分がひどく汚れている。
趣味の良い紺のネクタイも捩れている。
「目的は何なんだ、それに君たちはいったいどこの誰だ」
「うふふふ」、安っぽい事務机に戦闘ブーツを履いたまま足を投げ出している男が、漫画雑誌を読みながら含み笑う。
スキンヘッドと剃り上げた眉、かわりに細いつり上がった眉を墨で彫り込んである。
ダボシャツでイスに反りくり返るようにして漫画を読み耽る。
もう一人、少し離れてイスに足を組んで座る男がいる。
仕立ての良さそうなスーツを着込んで、どこかの青年実業家然としている。
ウェーブのかかった長髪は軽くうしろで括られて、何か考えを巡らすかのように口元をなぞる指には大きなダイヤが光る。
痩せ形で尖った顎には品よく髭が刈り整えられている、一見裕福な好紳士、に見える。 だが目が違う。なにも信じていない目だ。言葉ではなく言葉の裏ばかりを読んできた目だ。冷たく感情を表さない。
「君たちはいったい」
「私らが何者かってことですか、中川さん」
顎髭をいじりながら男が初めて口を開いた。
「そ、そうだ」
ここへ連れさらわれてきて一時間ほども経ったろうか、初めて口をきいた。
ガランとしたマンションのこの一室には事務机とイスが三脚きりないのだ。
「中川さん、おそらくあんたが思っている通りですよ、やくざです、私らは」
中川はごくりと唾をのみ込む。
「な、なぜやくざが僕を。なんの関わりがあるんだ」
「関わりですか、私らは単なる雇われ人でね、そうこの名前ならご存じでしょう、熊谷、どうです知ってるでしょう」
「熊谷なら知っている、総会屋だ」
「そう、ケチな脅し屋です、そいつに雇われてましてね、あんたがここにいるのは熊谷の希望なんですよ」
「兄貴」、スキンヘッドの男が遮るように割り込んだ。
「いや銀次、かまわねえんだよ」
「でも兄貴」
「いやいいんだ、熊谷に頼まれたのはこの人をここへ拘束しておく、それだけのことだ、口をきくのは俺たちの裁量さ、ふふ、中川さんそういうことでね、熊谷の計画ですよ」
「わからん、なぜ熊谷が僕を」
面食らったように中川が言う。
「それはね中川さん、あんたの女房のせいですよ」
「珠恵が、珠恵が何をしたというんだ」、中川は呆気に取られたような顔つきで聞く。
「何もしちゃいませんよ、ただ熊谷があんたの女房に惚れ込んじまったんだよ」
「なんだって」
「なんかの拍子であんたの女房を知っちゃってね、あのヒヒ爺どうにもたまらなくなって自分のモノにしたくなったんだろう、それで邪魔なあんたはここにいるわけさ」
銀次が兄貴と呼んだ男、精二である、精二はいたって気の無さそうに話を進める。
「珠恵をどうする気だ」
「さあね、だが熊谷はその珠恵さんともう一緒に居るんだぜ」
「なに、どういうことだ」
中川は驚愕の色を隠せない。
「まっ、話が長くなっても仕方がねえな。中川さん、あんたは損失補填の責任を引っ被って失踪中ということになっていてね、途方に暮れる家族を親身になってかくまっているのがヒヒ爺という寸法さ。これみな熊谷が描いた面白くもおかしくもねえ、ただ意地汚いだけの計画でね」
「馬鹿な、そんなことのために僕を誘拐までしたのか、お前たちだってもうただではすまないぞ。それに会社だって黙っちゃいない。いますぐ僕を放せ、今なら君たちのことだけは」
「言わないで置いてやるってわけか、ふふふ、中川さん有り難いお誘いだが甘いな。もしこの一件会社が重々承知だとしたらどうかな」
精二を見返す中川の表情が変わった、あっけにとられたような顔をしている。
「会社の足元はぐらついているらしいね。今は大変な時期だけにつまらない損失補填の話なんかウヤムヤしたいもんだろうよ。あとから突っつかれて引き際にケチを付けられるのは会社も避けたいだろう」
「だが僕は、ただ」
「ふふ、あんたの気持ちは分かるよ、しかし甘い」
「僕はただ会社の指示に沿って、仕事のひとつとして、き、君にそんなことを言われる筋合いはない」
中川はイスをガタつかせながらムキになって言う。
「確かに、あんたは努力もし、ある程度出世もし、上司や部下の受けもいい模範的な会社人間だったのかも知れないねえ。だがね、言わせてもらえればあんたはだからうまくゆくと思っていた、そこが間違いだ」
「なんだと」
「つまりね」、精二は細巻き煙草をシガレットケースからすぅっと取り出す。
「あんたは私のことをやくざだと蔑んでいるんでしょう、いやいや否定しなくていい。うふふ、私もそう思いますよ、悪人ですよ私は、でもね、こうと決めたらどんなことでもやる、誘拐でも殺しでもね、言わば確信犯さ、悪い、そうそんなことは重々知りつつなおかつやるのさ」
精二は呆然として聞いている中川の顔を真正面から見据える。
「ところであんたはどうだい、真面目な面して仕事に精出すのはいいが、その後ろには死屍累々てなぁことじゃあなかったのかい、ふふん、あんたも知らず知らずの内に沢山の人間を苦しめてきたんじゃないかい」
「い、言いがかりだそんなことは、僕はあくまで会社の発展を思えばこそ、株の取引に損得はつきものだ」
精二は煙草の火を付ける。
「そうかな、アンフェアな損失補填の金はいったい本当は誰の物なんだい、ふふふそのまたピンはねしている私らが言うことじゃないがね、ただ中川さん、あんたはいまや会社からも見放されちまったということだ、大いに忠誠を尽くしていた会社からね」
「そんなことが」、中川の視線は宙に浮いたようになっている。
「現実だよそれが、熊谷があんたをそしてあんたの家族を蹂躙することは、会社にとっても好都合というわけだな、それにあんたは女房の心配をした方が良いんじゃないかな、熊谷は女に関しては巧みなもんだぜ、今頃はもう、ふふふ、熊谷に組み敷かれているんじゃないかな」
中川の顔がはっと上がった。
「内の女房は、珠恵はそんな誘惑に乗る女じゃない」
「言い切れるのか」
「な、なに」
中川は挑むように精二を睨み付ける。
「言い切れやしないだろう、あんたの女房は今や不安の渦中だ、どうしようもなく心細いだろうよ、そんなときにふっと助けの手を差し伸べる奴が現れりゃあ、誰でも気を許すもんだぜ」
「あり得ないそんなことは、あり得ないんだ」
中川はまるで自分に言い聞かせるように呟く。
「どうかな、熊谷って奴は女の尻となると目の色を変える男だからな、今頃奥さんは尻をこじ開けられてしゃぶり尽くされよがり泣き、かもな」
「くそぅっ、ほどけ、ロープをほどけ、くぅっ珠恵」
中川は括られた両手をブルブルと震わせ歯ぎしりをする。
「いったいどうする気なんだ、家族は僕はどうなるんだ」
精二は煙草を床へ投げ捨て踏みつぶした。
「熊谷はあんたを消したいんだろうね、さあて私はどうするかな」
忘れられたマンションの周りはすでに寂寞とした夕闇が垂れ込み始めている。
  1. 2014/07/06(日) 17:36:51|
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ビックバンバン 三章 やくざのアジトでの陵辱 第2回

「きょうは熊谷さんはおられないんですか」
「えっ、ええ」
佐古田の問いかけに母は少し戸惑ったように答えた。
佐古田は、またいくらかの日用物資を運んで来たのだ。
それは食料品が主で段ボール箱に二箱、すぐに片づいた。
居間の作り付けのテーブルで佐古田は買ってきた缶ビールを開けた。
「どこへ行ったんでしょうね、そうですか昨晩からですか、それはそうとどうです奥さん、ここも殺風景ながら一晩寝たら少しは落ち着いたんじゃないですか」
昨日、母が熊谷から受けた傍若無人な振る舞いを知ってか知らずか佐古田が聞く。
「ええ、そうね」
 一言ずつ区切るように母がそれでも微笑んで答えた。
熊谷のむごいほどのマッサージ責めから這々の体で逃げ出した母は、僕が二階に登ったときには濡れた身体のまま布団を頭から被り、まだ嗚咽が止まらない様子だった。
あのとき熊谷があるいはそのまま二階まで追い責めを仕掛けてきたら、母は思うままにされていただろう、それこそ一睡も出来ないほどに。それでなくても昨晩の母は何度も寝返りを打つ中で、時折体を震わせて鳴き声を押し殺しているように見えた。
一度下へ様子を見に行った母が、熊谷がいないのを確かめたあとは幾分落ち着いたようには見えたが、熊谷から受けた責めに対する怒りはもちろん、自ら演じてしまった醜態に対する悔しさ、しかしそれもどうしても仕方がないという今の自分に対する歯がゆさ、心渦巻く御しきれない思いになおも寝付かれないようで、結局僕の方が先に寝てしまった。
「主人はどうなの、佐古田さんは昨日会わなかったの」
母は悔しさを断ち切るように父のことを聞いた。
「ええ、心配いりません元気にしておられますよ、まだ詳しい居所は教えることは出来ませんが、事態は順調に推移してると言って良いと思います」
「まあ良かった」
母はホッと胸を撫で下ろしたようだ。
「会社がやくざとの折衝を続けております。大分良い方向へ進んでいますからあとは金銭面で折り合いがつけば、中川さんが戻ってこられるのもそう遠くないと思います」
「元気でさえいてくれれば、でも一日でも早く会いたいわ」
母はのどを詰まらせる。今すぐ父にむしゃぶりついていきたい、そんな気持ちで居ても立ってもいられないのかも知れない。
ここに居ることは曲がりなりにも守ってもらっている負い目から、熊谷の執拗な責めを凌いでいかなければならないことを意味する。
昨日初めて受けたマッサージ責めからすでに、ああまで追い込まれてしまっては、この先わずかの気の緩みを見せれば、たちまちつけ込まれ責め落とされてしまうのではないか。 熊谷の肉棒を挿入されてしまう予感が母を怯えさせているのかも知れない。
  1. 2014/07/06(日) 17:38:08|
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ビックバンバン 三章 やくざのアジトでの陵辱 第3回

「奥さん、今日はちょっと変ですよ、なんだか少し顔色もすぐれないような」
「あら.......そうかしら」
 佐古田に言われて珠恵はあらためて胸の内に不安が蘇った。
昨日のことである。
(あれは夢だったのでは)とさえ思う。それほどこれまでの珠恵の送ってきた日常とはかけ離れた出来事が、熊谷との間で確かに行われた。
熊谷の暴力的とも言える肉体への仕打ちは、珠恵に熊谷に対する怒りと悔しさを植え付けるに十分なものであった。
しかし、あのとき別の奇妙な感情の芽生えを珠恵は密かに感じていた。
あのとき、熊谷に痛いほど乳房を揉み込まれたとき、熊谷の目の前へ自分の尻を高々と持ち上げて見せたとき、そして容赦のない尻打ちを受けたとき。
朝起きてからも尻には熊谷の手による刻印が幾重にも赤い腫れとして残され、左の乳首には痺れるような痛みが続いている。
起き抜けに昨日の記憶を洗い流したいとばかりに、温い残り湯に飛び込もうとした珠恵だったが、思う様打ち据えられ腫れ上がった尻は容易には湯に入れ得なかった。
それほどまでの仕打ちを受けたはずなのになぜ、今の珠恵には容易に理解しがたいこの奇妙な感情がふつふつとわき上がってくるのか、哀しいほど投げやりになりそうな、それでいて濃密な甘さを予感させるような。
見事に熟れた肉付きをしながらも、あくまで無垢な一主婦でしかない珠恵にとって、一人の男がこれほどまでに自分の肉体を楽しげになぶる姿に驚愕を禁じ得なかった。
珠恵はたった一夜で熊谷に抑制の効かない自分の肉体という物を教え込まれ、あまつさえ男の管理下で肉体をのた打たせることによる、哀しくも妖しい甘みを胸に刻まれた。
しかし珠恵はそんな感情の高まりをないものと否定したい、普段の男勝りともいえる気丈さの裏返しとして、ある一線を越えた、男の厳しい肉責めに対する意外なほどの我が身の脆さを本能的に感じているからであろう。
「佐古田さんちょっと伺ってよろしいかしら」
「なんでしょう」
「熊谷さん、なにかこうマッサージみたいなことなさるんでしょうか? どう言ったらいいか専門的にと言うか」
珠恵はどうしても顔を赤らめてしまう。
「あっ、やってもらったんですか」
「えっ、と言うと」
「ええ熊谷さんはマッサージ師としてちゃんとした資格を持った人ですよ」
珠恵は意外な思いがした。
「熊谷さんあれでいて結構お客さんを抱えているらしいですよ、ただ療法的にかなりキツイらしくて、受ける人にとっては普通のマッサージと違ってある程度の苦痛は伴うらしいですけどね」
「苦痛......というと」
「いわゆる荒療治というやつですか、特に女性は最初は泣き出してしまったり、逃げちゃう人もいたというのを聞いたことはありますねえ」。
「ええ、でも」
珠恵は自分が浴室で、しかも全裸で熊谷の言うところのマッサージを受けた事実までは、さすがに言い出しにくかった。
「たとえばお風呂なんかでやったりもするんですか」
「マッサージですか、ええそれが一番効果があるとも聞いたことがありますよ、あっ奥さんもひょっとしてお風呂でやってもらったんですか」
珠恵はうつむき加減に一層顔を赤らめた。
「ええ、でもマッサージって言えるのかしら、本当に苦しいのよ、それに急でびっくりしちゃって」
ついつい怒ったような口調になってしまう。
「へええ、やってもらったんですね」
 佐古田はうつむき加減の珠恵の姿態に視線を這わせる。
「どうでした? 受けとめ方によっては女性は特に意識しすぎてというか、エロティックに受けとめすぎて泣いてしまう人もいるらしいんですが」
佐古田は探るような表情で珠恵を窺う。
珠恵は少し考え込むようなはにかんだ表情を見せる。
珠恵は佐古田に対しては夫の部下と言うよりも、これまでどこか姉が弟に対するような接し方をしてきていた、その分気を許しているところがある。
それに、頼りの夫が渦中の人とあっては、相談できるのは唯一佐古田だけという現状もある。
「少し泣いたわ」
クスッと笑って佐古田を見上げる。
「佐古田さんは知らないからそんなこと言うけど、熊谷さんてとっても無茶だわよ、いきなりお風呂に入り込んでくるんですもの、それにエッチ過ぎるわあのマッサージ」
珠恵は口を尖らせてすねたように言う。
「どういう風にやられたんですか、ひとつ詳しくお聞かせ願えませんか」
佐古田は缶ビールをテーブルに置き、さも心配げに身を乗り出す。
「言えないわそんなこと、それに途中からはよく覚えていないのよ、どんな格好させられていたのかも、最後は逃げちゃったから」
「それはよくないなあ、断りもなくですか、うーんちょっと失礼だなあ」
悲鳴を上げて逃げたことまでは言えない。
「すべからく熊谷さんは好意でなさっていることでしょうからね、それを今の奥さんの立場で無下に断っては駄目でしょうね」
「佐古田さんは知らないから、とっても恥ずかしいのよ」
「その方法が熊谷さんの療法にとって一番効果のあるやり方なんですから、それに熊谷さんは奥さんを見たときからぜひマッサージを施して上げたいと、それは楽しみにしてらしたんです。ここは奥さんも大人の女性として、小さな女の子じゃないんですから、熊谷さんの好意を真剣に受けとめてくれませんか」
「楽しみにしてるって言われても、ええ熊谷さんの好意は分かっているのよ」
それは分かっている、だからこそ昨日あそこまで耐えて見せたのだ。
「でも......」
「奥さん、ひとつのスキンシップとして考えられませんか」
「スキンシップ?」
「今の私たちはあくまで一心同体の気持ちでいなければいけないと思うんです。それを熊谷さんは奥さんに身を持って教えようとしたんじゃないでしょうか心を鬼にして、ところが奥さんは逃げてしまった、そんなことでは連帯力は生まれません。ぜひスキンシップと考えていただければ、と言うより考えていただかなければ」
佐古田の予想外の強い口調に、珠恵はさすがにためらいを見せる。
「......そうね、私も自分勝手だったのかも知れない」
少し間をおいて珠恵は不安を押し隠して絞り出すように言う。
「でも、やっぱりちょっと恐いわぁ、どうにか別のスキンシップの取り方がないかしら」 「熊谷さんの気持ちを考えるとそれはちょっと、それではこうしましょう今度は僕も一緒に入浴しましょう。そうしてもし行きすぎがあれば僕が責任を持って熊谷さんを止めるということで、どうですか一番良い方法だと思いますが」
「そ、それもちょっとどうかしら、私はなんだかいやだなぁ」
珠恵は明らかに戸惑いの色を見せているが、佐古田はいよいよ身を乗り出してきた。
「でもそれしかありませんよ、熊谷さんの好意を無にすることは出来ないんですからね。僕がマッサージを受ける奥さんを間近に見ることによって、初めて奥さんを救うことも出来るんですから」
そう言う佐古田の好奇心にあふれたような眼差しが珠恵を脅かした。
たしなめるように見返してみるが、まるで熊谷との昨日の情景を想像しているかのようないつもと違う佐古田の目つきに、珠恵の方がうつむいてしまう、(いやだわ、男の人ってみんなこうなのかしら、佐古田さんまで、でもそれしかないのかしら)、珠恵の逡巡する気持ちがどうしても返事をためらわせている。
その時佐古田の上着の胸ポケットで携帯電話が鳴った。
「ちょっと失礼します」
佐古田はいったん外へ出ていった。
  1. 2014/07/06(日) 17:38:59|
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ビックバンバン 三章 やくざのアジトでの陵辱 第4回

熊谷が戻ってくれば楽しみにしているという以上、浴室でのマッサージという名の裸の責めぎ合いの続きを、珠恵の精神的に不利な条件下で応じざるを得ない。
責めぎ合いは、回を重ねるごとに最後の一線を越えてしまう危険が高まるであろう、それは避けたい、かと言って佐古田に熊谷から施されるであろう淫靡なマッサージに脂汗をしたたらせている姿を見られるのも、想像するだけで耐え難い恥ずかしさを感じてしまう珠恵である。
しかしそれしかないのか。
佐古田が小走りに戻ってきた。
「奥さん、熊谷さんからでした」
佐古田が咳き込むように言う。
「まあ、いったいどこから」
「御主人を狙っているやくざのアジトだそうです」
「えぇっ」
珠恵は驚愕した、なぜ熊谷がそんなところに。
「熊谷さんがどうして」
「実は奥さんには余計な心配を掛けまいと黙っていたんですが、熊谷さんはかってわが社の内務調査官をしておられたんです」
「内務調査」
「ええ、わかりやすく言えば会社直属の探りのプロ、会社にとってのあらゆる不利な案件を揉み潰していく用心棒のような役割をこなしてきた人なんです。だからこそ今回の中川さんの件に関しても、引退しても尚お呼びが掛かったということなんです」
熊谷がやくざのアジトに潜入している、その上熊谷がただ自分たちの隠れ家での世話役だけではないもっと重要な任務を受け持っていることがうかがい知れ、珠恵は言葉を失っていた。
呆然とする珠恵へ佐古田は更にたたみかける。
「そのアジトというのが借金苦や今の奥さんのような立場の女性を捕らえてきて、無理矢理に男客への饗応の場へ引き出している場所らしいんです」
「.......」
「熊谷さんが言うには是非奥さんに客として一度見に来てもらってくれと、見に来て冗談ではない身の危険を目に焼き付けてほしいと、確かに刺激が強すぎるかも知れませんが僕も見ておいて損はないと思います。奴らは奥さんの顔まではまだ把握してないでしょうし客として訪れるぶんには危険はありません」
「.......」
珠恵はあまりの話の展開に、あたふたはしても言葉が出ない、そんな珠恵の気持ちを急かすように佐古田がたたみかける。
「行ってみましょう、奥さん」
「でも、...........こ、恐いわ」
「大丈夫、僕がついています」
  1. 2014/07/06(日) 17:39:41|
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ビックバンバン 三章 やくざのアジトでの陵辱 第5回

珠恵が佐古田に連れてこられたところは、隠れ家であるログハウスから車を一時間ばかり走らせた、おそらくここ数年で世帯数を増やしたと見える新興住宅地であった。
都心まで二時間弱、地価下落と言われているがまだまだ条件のいい場所に自宅を構えることの出来るサラリーマンは少ない。
自然このような住宅地が都心を中心に放射状に拡がっていく。
そんな二百世帯ほどの新しくできた町の一番奥まったところに、その店があった。
スナックの看板を掲げている。
 珠恵が店の前まで来たときには夕暮れの帳が降りかける時間になっていたが、まだ灯りは点いていない。
周辺の家々は室内に灯りが点り夕餉の支度をしている気配を感じさせるが、そこには生活の気配はなかった。
 二階建てで安普請のアパートのような造りをしており、元々はこの住宅地の事務所だったのかも知れない。
スナックの看板は一階部分に掲げられており、ブラインドが閉まり中は見えないが、わずかに灯りの点いているのが分かる二階への階段を、珠恵は佐古田から背を押されるようにして登っていった。
珠恵は入り口の扉の前で思わず立ち止まった。
「なんだか恐いわ、どうしても入らなきゃ駄目?」、足がすくんだようになっている。
夫の失踪から、またこの二、三日にかけての生活の急変に身体だけが踊らされている感じで、それに珠恵の心がついていけないのだ。
やむを得ないと思えばこそ、それこそ必死で荒波に身を投げている感のある珠恵だが、この扉の前で足がすくんだ。
ここには珠恵のような境遇の女が囚われている。熊谷がその状況を目に焼き付けて危機感を持てということで、とうとうここまで来てしまった。
ここまで来て、得体の知れない不安に膝頭が小刻みに震えてくるのを珠恵は感じていた。 「佐古田さん」
振り向いたとき、佐古田は扉の横の小さなブザーを押した、(ああ、どうしよう)恨めしげに佐古田を見つめながらも珠恵は必死で心を落ち着かせようとしていた。
しばらくして扉が中から開かれた。
珠恵に、「どうぞ」という男の低い声が聞こえた、男の顔を見ることが出来ない、佐古田に押されるようにして中へ入った。
扉を開けてすぐに目隠しのためか仕切板がある。しかし煙草の匂いと男たちの野次るようなガヤガヤとした喧噪が、すぐに珠恵の耳に飛び込んできた。
仕切を過ぎると異様な光景が、いやが上にも珠恵の身体を鳥肌立たせた。
その部屋の広さは二十畳ほどだろうか、中央に円形のステージがこしらえてある。
そこから足場が部屋の奥へと通じ、厚いカーテンで仕切られてある。カーテンの向こうにまだ部屋があるのであろう、場末のストリップ小屋のような風情を漂わせている。
円形のステージの真上に安手のシャンデリアが、無造作に、という感じで取り付けてあり他にもいくつか照明はあるが、今はそのシャンデリアだけが灯りをステージへ落としている。
ステージを囲むように、これも円形のテーブルが三脚しつらえてあり、すでに先ほどの野次の主たちが各テーブルに陣取っている。どれも一癖ありそうな顔をそろえている。全部で七、八人というところか、珠恵の姿を見て一瞬野次が止んだが、珠恵と佐古田が空いている席に着いたのを見て、またすぐに目をステージに移し野次り始める。
そしてステージでは席に着いた珠恵を愕然とさせるほど、そしてそれ故に目が離せないような男女の狂態が演じられていた。
  1. 2014/07/06(日) 17:40:31|
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ビックバンバン 三章 やくざのアジトでの陵辱 第6回

珠恵はひとりでに息が荒くなっていくのを感じていた。
そこには、二人の屈強な男になぶり尽くされる霰もない女の姿があった。
男は全裸に近い。初老だが恰幅の良い方は褌を締め上げている。もう一人若い方はボディビルダーのような体つきに派手なビキニブリーフを着けている。
その二人から責められている女は、まるで今し方まで家の台所に立っていたかのような、ジャージパンツに白いTシャツの三十前後の主婦らしき女である。
若い方の男が女を後ろから抱え上げるように、ちょうど幼児におしっこを促すような具合に膝の裏から持ち上げ、初老の男はジャージを膝までずり上げて、女の正面からがっしりと尻を支え、パンティの上から股間をしゃぶり回ししている。
「うぅぁ、くぅくぅ、はあぁぁ」、女のか細い声は時々聞こえても、「脱がせろ、ええい早く取っぱらっちまえ」、「もういいんだよ前儀は、中身を見せろ」、男どもの野卑な声にすぐにかき消されていく。
珠恵が来るまでにどれくらい責められていたのか、女はやっと首を振るだけしか、あらがう力も残っていない。
やがて初老の男がパンティをゆっくりとずり上げていった。
剥き出しにされた股間はヌメヌメとした潤みを見せている。
 初老の男はさらにそれを太い指で掻き広げていく。
 見物人共は一斉にどよめきを上げる。
イスを蹴りステージ脇へへばりつく男たちに、文字通りかぶりつくように尻の下から見上げられても、「あぁぁ、あぁぁん、いゃぁいゃぁ」、女は為すすべもなく、秘部を広げられるままか弱い泣き声を絞り出すのが精一杯だった。
(なんていうこと、なんてひどいことを)、だが珠恵にはどうすることも出来ず、それどころか責められる女の顔がだんだん自分の顔に見えてきた。まるで自分が男に抱え上げられ、秘部をさらけ出しているような、ヌラヌラと股間を滑らせながらのたうつ女体がまるで昨日の自分のような、熊谷に操られるまま醜態をさらした自分の姿が、今更ながらにありありと思い起こされ、着の身着のままで飛びだしてきたノースリーブの脇の下に、じっとりと冷たい汗をかいていた。
心臓が早鐘のように打ち始めた。息苦しくとても悲惨な現場を正視できなくなり、珠恵はとうとううなだれるように目を伏せてしまった。
「佐古田さん、もう十分だわ、そろそろ帰らせて下さらない。もう出たいわ」
佐古田は珠恵の顔をのぞき込むようにした。
「奥さん、よく見て下さい。分かりませんか」
「.....なにが?」
「ほらよく見て下さい、あの人を」
佐古田はステージを控えめに指さす。
「あぁ、.....あれは」
佐古田に促されるまま、ステージに目を注いだ珠恵に戦慄が走った。
「どういうことなの、.....あ、あれは...くま.....たに」
今の今までなぜ気付かなかったのか、女の尻肉を広げながら見物人どもに卑猥な冗談を返している初老の男こそ、まさしく熊谷ではないか。
(まさか熊谷が)、まさに想像だにしなかったことである。目を大きく見開いて、あまりの驚きで呆けたように注がれる珠恵の視線に気付いたのか、熊谷も珠恵を見つけると女の股間をくつろげながらニイィと笑って見せた。
はっとして目を伏せる、(わからない)珠恵にはこの状況を判断する術はない。予想も出来ないことだからこそ、佐古田に言われるまで珠恵は熊谷に気付かなかったとも言える。 女を苛む熊谷独特の仕草が知らず知らずの内に、珠恵に昨夜の生々しい記憶を女の顔が自分に見えてくるという形で思い起こさせたのかも知れない。
「分かりましたか、そう熊谷さんですよ」
「でも......、なぜ」
珠恵はやっとの思いで聞く。
「驚かれたようですね、無理もありません。僕も熊谷さんも奥さんを大変驚かせてしまうであろう危惧は拭えませんでしたが、しかしその目で見てほしかった」
「どうして....、どうしてこんな」
「つまり、敵のアジトへ潜入すると言うことは、危険を承知であそこまで食い込まねばならないということなんです」
「危険というと.....」
怪訝そうに尋ねる珠恵に、佐古田は少し慌て気味に「そ、それはもう危険ですよ、やくざの組織にああまで食い込むには、それ相当の苦心を払い、危機をかいくぐってきたということなんですよ」
毒気に当てられたような珠恵の表情に、佐古田は勝手に不信感を読みとったのか、弁解するかのような言葉を継ぎ足していく。
「分かってくれますね、僕たちの気持ちを。熊谷さんだって決して好きでやってることじゃない、心を鬼にしてあんなことをやっているんです。これもひとえに奥さんに今の現状を知ってもらい危機感を持っていただくためなんです」
分かってくれますね、とさらに念を押すように言い、何も余計なことは言わなかったはずだがと、自分の今の言葉を反芻しながら佐古田は心配げに珠恵の反応を窺う。
しかし珠恵は佐古田や熊谷に不信感を抱いたのではなかった。ただあまりの事の成り行きに今の自分の置かれている状態を認識するには、しばし呆然と時をやり過ごさなければならなかったと言える。泣いても逃げても仕方のないことなのだから。
「分かったわ、もう充分よ、とにかく出たいわ、なんだか酔ったみたいで気分が悪いわ、出ましょう佐古田さん」
珠恵は幾分落ち着きを取り戻していた。
ステージにはいつの間にか熊谷と女の姿はなく、ボディビルダーのような若い男だけが客となにやらゲラゲラと笑いながら残っている。
「そうですね、ではちょっと待っていてください、熊谷さんと少し話をしてきます。奥さんはここにいて下さい、すぐですから」
佐古田は席を立ち、ステージの奥へ入っていった。
珠恵は喧噪が収まったところで改めて部屋を見回した。合板に安っぽい壁紙を張り付けただけのところに、取って付けたように所々照明が備えてある。
テーブルもイスも新しい物ではない、どこからか寄せ集めてきた、そんな感じがする。 珠恵の座っているテーブルも食べこぼしの跡が目立つ、そのテーブルへ「どうぞ」とオレンジ色の飲み物が、つぃと差し出された。
「ごゆっくり」、何か言おうとする珠恵に、さして愛想もなく立ち去った男が銀次であることは、無論珠恵は知らない。
 最初に部屋の扉を内側から開けたのも、精二の手下、銀次である。
察すれば、珠恵がここへ連れられてきたのはまさしく珠恵の顔見せであって、けして珠恵に危機感を持ってもらうという類の物ではないと言える。
が、それは珠恵にとって想像外のことである。
ちょうど喉の渇きを覚えていた珠恵はオレンジ色の液体に唇をつけてみた。
(甘い)柑橘系の甘さにアルコールもさして多いようには感じられず、半分ほどの量を割に簡単に飲めてしまった。
(なんだか......少しからだが軽くなったような気がする)ふと目を上げると向かいのテーブルに座っている男と目があった。
珠恵は目をそらした、向こうはまだ見ている気配だ、思いの外若い男のように見えた、(そうだわ、ここはとても危険な場所、佐古田さんはなにを......)視線を合わさないまでも男が手を振っているのがわかる。まだ二十歳そこそこのようにも見える。しかしスキンヘッドで鼻や耳や眉、あちこちにピアスをはめ込んで、その上ニョキッと突き出た二の腕には、青みがかった入れ墨も彫り込んである。
  1. 2014/07/07(月) 20:40:53|
  2. ビックバンバン・ざじ
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ビックバンバン 三章 やくざのアジトでの陵辱 第7回

ああどうしよう、それに.....頭がなんだか重い、さっきのカクテルのせいだろうか)珠恵は時折、ふぅと意識が遠のきそうな目眩を感じ始めていた。
(なんなんだろう、体がだるい.......)珠恵は突っ伏すように徐々に頭をテーブルへ落としていった。
部屋に入ってすぐにある先ほどのついたての陰に、いつか精二と銀次が立っていた。
「量は大丈夫か」
精二は癖だろうか顎髭をさする。
「へい、加減してあります。しばらくは頭がぼやけているような状態でしょう、寝込んじまったら泥みたいに明日の朝までグッスリでしょうよ」
「ふん、熊谷も手の込んだことしやがる、よほどご執心なんだろうね」、精二はつまらなさそうに笑う。
見られているとも知らず、珠恵の方はどうにも重くなる瞼を仕切りに擦ってみるが、眠気は去らず、酔ったような胸の悪さも変わらない。
(あぁぁ駄目よ駄目、このまま眠っちゃ......あぁだれかが背中をさすってくれてるのぉ、だれぇ、佐古田さん........佐古田さんなのぉ)、珠恵は今にも閉じてしまいそうな瞼を懸命に開けて、背中の手が誰かを確かめようとする。
(佐古田さん、佐古田さんなのね)、隣に座る誰かの顔の輪郭が見えるものの、なかなか焦点があってくれない、(佐古田さん......えっ、だれ、だれなのぉ....えっ、ぁいゃぁ、あぁんいゃぁん)、何とかぼやけながらも合ってきた顔の輪郭は、紛れもなくスキンヘッドのアイツである。
「だいじょうぶぅ、おばさん」
スキンヘッドは珠恵の肩を抱きながらにやついた顔でのぞき込む。
「あぁん、大丈夫、大丈夫よ、だから放してぇ」
虚ろな目で必死で答える珠恵。
「そうかい、そうは見えねえぜ、俺が看病してやるよ」
スキンヘッドの手は肩からノースリーブの脇の下へ差し入れられ、すでに乳房へ達している。
「あぁんもう、駄目よだめぇ、お願い放してぇ」
珠恵は効かない身体で拒んでみるが、どうにも力が入らない。
「へへえぇ、おっぱいは小さいが、どうしてどうして太股はムッチリしてるぜえ」
スキンヘッドの片方の手が珠恵のスカートの中に侵入し、内股をじんわりと掴みさする。 「うくぅっ、くぅっ、もぅ駄目よぉ」
 押しとどめようとする珠恵の手もただ添えられているだけのようなもので、力を込めることが出来ない。
「へへ、おばさん可愛いぜぇ、心配するこたぁないんだぜ、じゃあこれでどうだい」。 「うふぅぁん、あっぁぁ、くふぅふぅっ」
珠恵はパンティ越しに秘部を鷲掴みにされていた。
(くぅぁあ、ああ誰か、佐古田さん早く来てぇ)、珠恵は足を浮かせてみるものの、かえって相手の手を股で締め付けるばかりで、秘部は相変わらず面白いように揉まれるまま。
スキンヘッドは二十歳を越えたか越えないかの若さながら、その若さからくる残忍性を剥き出しにして、股間を鷲掴みにした手でグイグイと身体全部を揺さぶって珠恵の苦悶の表情を楽しんでいる。
「おほぅ、おばさんなんだか湿ってきたぜ、へへぇ」
珠恵はたまらず陵辱者の顔に爪を立てた。
「いてっ、くそっ」
 スキンヘッドは頭を振ってかわすと、「これでどうだ」、珠恵の口に太い指をつっこむ。「うむぅ」悲鳴にもならず、無理矢理舌を引き出されていた。
舌を掴み出された苦痛で珠恵の目から大粒の涙が吹きこぼれ始めた。
「くふぅん、ふぅぅぁ」
 声も出せず眉間にしわを寄せ、泣きながら必死に首を振る珠恵の顔をスキンヘッドはさも楽しげに見つめながら、「うふふふ、ふふふふ」と含み笑う。
たちの悪い子供が小動物をいじめて面白がるように、スキンヘッドの残酷な若者は熟れきった三十半ばの珠恵を苛むことに、言い様のない快感を感じているらしい。
やがて分厚い唇を寄せて、珠恵の小さな舌を吸い取りにかかった。
「うふぅ」、珠恵の小さな口はスキンヘッドの厚い唇にぴったりと塞がれ、巧みに舌を吸い取られた。
ディープキスなどほとんど経験のない珠恵にとって、若いとは言え散々遊び尽くしてきたであろうスキンヘッドの男に太刀打ちできるはずもなかった。
珠恵は痺れるほど可愛い舌を吸われ、また荒々しい男の舌で唾液を絡め吸われ、珠恵の口の甘みを充分に楽しまれた。
珠恵の小さな鼻の穴から吐き出される棒のような息を顔に感じながら、スキンヘッドは珠恵の腰からスカートの中へ手をにじり入れ始める。
珠恵は小さな口一杯に頬張らされた、根太い舌を無理を承知で押し戻すことに精一杯で、はっと気ずいた時はスキンヘッドの若者の太い指が、すでに珠恵の尻の穴に縫うように押し入ろうとしていた。
「うぷふぅぅ、くふぅぅ」
 珠恵は座ったままで懸命に尻を振ってみせたが、汗ばんだ餅肌の尻にスキンヘッドの太い指が蜘蛛のように食い込んで、容易に取ることは出来ない。 それどころか、珠恵が必死で窄めようとする尻の穴の感触を指の腹で確かめるようになぞってみたり、ふっと尻の穴の括約筋が緩んだ瞬間に、ぐぐぅーと太い中指を押し込む素振りを見せ、珠恵が大慌てで尻の穴を絞り、指を押し出そうとする様を楽しむ余裕すら伺える。
スキンヘッドの男は珠恵の未熟な性経験を見抜き、おそらく処女地であろう尻の穴に的を絞り徹底的にいじめ抜く構えで、そうなると若い欲望は歯止めが利かない。
ちゅぽん、と音をたてて珠恵の口から舌を抜くと、「おばさん大きな尻の割には、ちっちゃい可愛い尻の穴してるんだねぇ、俺気に入っちゃったよ、これからもつき合ってくれないかなあ、もう手放したくないなあ、おばさんの尻の穴」
 言いながら今度は本気で指を突き入れに掛かっている。
「やめなさい、やめるのよ、うぅぁ、もぅいゃぁぃゃぁ、ひいぃぃ、だれかぁ、誰かぁたすけてぇ、助けて下さい」
珠恵の救いを求める声も、にやつきながら事の成り行きを楽しげに見物している男たちが相手では、どうしようもなかった。
「ほうら入るよおばさん」
 今はもう薄れる意識の中で必死で尻を振りたくる珠恵の肛門に、当てがった指を一気に突き入れる機会をスキンヘッドは窺っている。
  1. 2014/07/07(月) 20:42:04|
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ビックバンバン 三章 やくざのアジトでの陵辱 第8回

汗と淫水を巧みに混ぜ込まれた珠恵の尻穴は、もうニチャニチャでいつでも突き入れられる状態になっている。
スキンヘッドに弄くられ、薄れる意識の中で懸命の抵抗を見せていた珠恵の尻振りも次第に弱まってきた、(ここだ)スキンヘッドはすかさず太い中指を突き入れた。
「うふぅぁあ」
 珠恵は一気に意識を引き戻されると共に、イスを蹴りつま先立ちにされてしまった。
それほどまでに強烈に尻穴を突き入れ上げられていた。
「あふぅあ、ふぅぅぁ」
 無様なバレリーナのように、つま先立ちのまま小刻みによろけ歩く。
「きゅぅはぁぁ、ぁぁんとってぇ、いゃぁん、抜いてぇ抜いてくだぁさぁいぃ」
 珠恵の崖っぷちの懇願もただ周りの男どもの哄笑を誘うだけで、助けようとする者など一人もいない、それどころかスキンヘッドはますます調子に乗り、もう片方の手で前から恥丘を鷲掴みにして尻穴に突き入れてある指と一緒に、グゥーと、つま先立ちでよろけている珠恵の身体を浮かせにかかった。
「いゃぁんぃゃいゃあ、やめてぇやめてぇ」
 スキンヘッドの若者は小柄な珠恵をとうとう持ち上げて見せた。
辛うじてテーブルに手を突いて身体を支えながら足をばたつかせた珠恵だったが、それがかえって尻の穴に痛みをもたらし、奇妙な屈服感さえわき上がってきた。
持ち上げられたときにスカートはパンティごとずり下がり、小柄な身体からは想像もつかなかった、熊谷に刻まれた赤い手形を残す珠恵の大きな尻の出現に、周りの男たちは一様にどよめいた。
「へえぇ、あんた誰かに尻を叩かせているようだね。こいつぁ嬉しい発見だなぁ」
スキンヘッドの舌なめずりに、「ちがうぅ、違うのぉ違うのよぉ」、珠恵は痛みも忘れて足をばたつかせ必死に否定したが、脂をたっぷりと乗せた両の尻たぶに刻まれた手形は、ごく最近男のごつい手で尻をさんざんに打ち据えられた事実を克明に語っている。
「なんだいなんだい、そうならそうと言ってくれりゃあいいんだよ。ここにゃあ女の尻を叩きたくてウズウズしている連中がいっぱい居るだからさぁ」
男たちが珠恵の尻へ向かって身を乗り出してきた。
「いやいやいゃゃあ」
 恐怖感で赤く腫れた尻を盛んに振る珠恵だが、それが一層男たちの欲情に火を付けることに気づかない。
「誰か叩いてやってくれねえか、見ろよ、こりゃあ叩かれるために生まれてきたような尻だぜ、誰かいねえか」
スキンヘッドの誘いに、「俺だ、俺にやらせろ」、人を押しのけるように出てきた男がいる。
屈強な中年の、労務者風の男だ。
珠恵の剥き出しの尻の前に陣取ると、「たまんねえな、こんなうぶな女の尻を叩けるとはついてるぜぇ、それになんてぇ肉付きだぁ......よおし奥さん良い声で泣いてくれよぉ」、手を振り上げた。
「やめてぇやめてぇ、いやだぁいゃぁんいゃぁあ」
 哀願を尻目に目を血走らせた男の手のひらが、鈍い音を立てて無慈悲に珠恵の尻に打ち込まれた。
「きゅぅぁぁん」
動物的な悲鳴が、部屋の澱んだ空気に響いた。
「そぅれ、もうひとつだぁ」
 男は続けざまに二発、三発と珠恵の尻に鉄槌をくわえていく。
横合いからたまらず別の男が飛びだしてきた、「俺にもやらせろぉ」、と言うなり、珠恵の尻を割れ目を中心に半分に分ける形で、労務者風の男と交互に叩き始める。
「はひぃぃぃ、きゅぅはぁ、はひぃはひぃはひぃ」
 尻の穴で持ち上げられ、男二人に左右から尻を叩きまくられては、さすがに珠恵ももはや男たちのなすがままになった。
「おお、締めてきた締めてきた、いいぜぇおばさん、ほぅれもっと喰い締めてぇ、ほぅ、こりゃ叩かれると締まってくるみたいだな」
 叩かれるごとに尻を緊張させる珠恵は、必然的に尻の穴で指を喰い締めることになり、スキンヘッドを有頂天にさせる。
降ってわいたように珠恵を襲った残酷なショーは、いつ幕が下りるのか、珠恵を主役に抜擢したまま飽くことなく続きそうな気配だった。
その時.......ガシィという音とともにスキンヘッドがもんどり打った。
珠恵も同時に支えを失い床に崩れ落ちた。
倒れたスキンヘッドの若者は、「うーん」と顎を押さえたまま立ち上がることが出来ない。
「貴様ら、この人は客で来ているんだぞ。見境のつかん奴らだ」
吐き捨てるような声がした。(この声は.......)虚ろな視線で珠恵が見上げると、熊谷が仁王立ちで男たちを睨み回している。
「奥さん、悪かったのぉ」、威圧感で男どもを後ずさりさせると、熊谷は珠恵を優しく抱き起こした。
その時の珠恵のホッとした顔といったら.......。
「いゃぁん、もうもう、ばかぁばかぁ」
 珠恵はこみ上げてくるものに耐えきれず、熊谷の膝にしがみつき泣き崩れた。
熊谷は赤く腫れ上がった尻を出したままの、珠恵のスカートを直してやると、「帰してやってくれ」と、かたわらの佐古田に促した。
「もう大丈夫ですよ」
 佐古田は、また意識が虚ろになり始めた珠恵を横抱きにして店を出た。
  1. 2014/07/07(月) 20:43:00|
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ビックバンバン 三章 やくざのアジトでの陵辱 第9回

「なるほどそそる女だな、熊谷がよだれを垂らすのも分かる」
閉め切られていた窓のブラインドが開かれている。
佐古田に抱きかかえられながら、車に乗せられる珠恵を見下ろしているのは精二と銀次。 「熊谷は....?」
「へい、証券会社の幹部と込み入った話があるそうで、もう出ましたよ」
「ふぅん、込み入った話ねぇ、おっさん今度は整理屋でもやるつもりかな。ところで熊谷の女はどう言ってた」
「だいぶ嫌気がさしているようですよ」
「と、言うと?」
 精二が銀次をのぞき込む。
「ああいう親爺ですからね、女癖は悪いわ暴力はしょっちゅう振るうわで、こっちの誘い水を聞いて、まあ後腐れなく消してくれるんなら....、一億でどうかということでした」
「ふふん、熊谷に目腐れ金で捨てられるよりも、こっちの誘いに乗ってきたか.....、幾らぐらい持ってる?」
「現生、債権、株券、合わせてざっと三億という話で、女が隠している分を合わせれば.....まあ四億」
「いや、まだあるな、あの女なら別口座にてめぇのへそくりをこしらえてあるよ.....まあそこに一億、合計五億、ようし銀次、女を絞ってこい、取り分はてめぇのへそくりだけだ、残りは全て吐き出させろ、容赦する必要はない」
珠恵を乗せた車は急発進をして、住宅街の辻へのみ込まれた。
「あの男は.....?」
「熊谷の使い走りですよ。たしか佐古田、とか言いましたかね、中川と同じ会社の」 「ああ、裏切った部下か」
精二はつまらなそうな顔で窓のブラインドを下ろした。
「佐古田はどうします」
「ほぅっておけ、ところで中川は」
「へい、政が見張ってます」
「様子はどうだ」
「大分落ち着いたようで、おとなしいもんですよ。ただ先行きが気になるみたいでね」 先ほどの男たちはもう姿を消している。そうなるとここは人の生活臭のない、廃品を集めた倉庫のような趣になる。
精二は壁際のイスに埃を気にするように座った。
「まな板の上の鯉も、料理のされ方は気になるみたいだな」
銀次がつられるように笑う。
「とにかく、今中川を逃がすとこちらの計画がやりにくくなる。事が済むまでは逃がすんじゃねえぞ」
「それじゃあ熊谷の女と話が付けば、熊谷の方は.....」
「うむ、そうだな。それまではあの珠恵とかいうこってりした奥さんには悪いが、しばらく熊谷の相手をしておいてもらおうか」
昼間の蒸し暑さを孕んだまま、今夜は熱帯夜を予感させた。
  1. 2014/07/07(月) 20:44:05|
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ビックバンバン 四章 第1回

何時頃だろう、玄関の扉を閉める音で目が覚めた。
枕元の目覚まし時計は十一時を回ったところだった。
階下を見下ろすと、夕方、
「今日中には帰ってくるから、太郎ちゃんは先に寝てなさい。あんまり外へ出ちゃ駄目よ」 と言い置いて出かけた母が、今は佐古田に抱きかかえられながら部屋へ入ってきた。
ソファへ横たわる格好で下ろされた母の、うなされるようなくぐもった声が聞こえてくる。
(どうしたんだろう、なにがあったのか)、佐古田は昼間運んできた荷の中からマットレスをそそくさと取り出すと、母をうつ伏せにそこへ抱き下ろした。
今夜は暑い、じっとしていてもじわじわと汗が噴き出してくる。
特にここは木々に囲まれて、ただでさえ湿気が多く、窓を開け放してはいるが今日は典型的な熱帯夜になりそうだった。
うつ伏せの母は夕方出ていったままの服装で、白の無地のノースリーブに膝上の綿の柔らかなスカートを穿いている。
内股になった、母の白い足の裏が闇に映える。
佐古田は居間の電灯のスイッチを入れると、うつ伏せの母の後ろへ慌てて駆け寄り、その後思い直したようにゆっくりとあぐらをかいた。
スカートの上からでも、張り切ったたくましいばかりの盛り上がりを見せる母の尻を、上からあるいは横合いから、佐古田は舐めるように観察する。
やがて身体をずらせるように母のスカートの中を覗き込む。
(なにをされたんだろう、飲めない酒を佐古田に無理に飲まされたのだろうか)
肩を上下させる佐古田の荒い息づかいが、夜の静寂に二階まで伝わってくる。



前後不覚の珠恵がうつ伏せで横たわる、それは佐古田にとっては胸躍らせる光景である。
珠恵のふくらはぎをそっと持ち上げると、足の指を一本一本、丁寧にくわえしゃぶっていく、むずかりながらも正気を戻せない珠恵の状態を確かめるように。
つい先程、陵辱され尽くす寸前まで追い込まれた珠恵を舞台の緞帳の陰から見ていた、佐古田である。
珠恵のカクテルに盛られたクスリは、体は動くものの意識が朦朧としてしまい強烈な眠気を誘う、そういう熊谷の話であった。
 確かに、普段の珠恵を知る佐古田にとって、チンピラの強引な責めをまともに受けてしまう姿は意外であった。
いたずらを仕掛けられれば、男の腕をねじ上げかねない珠恵なのである。それがなんと見ず知らずの男にたやすく尻の穴に指を入れられ、挙げ句二人の男から、両の尻たぶをかわるがわる強烈なスパンキングさえ施されたのである。
クスリの効果のほどは十分に分かった、(しかしこのままでは珠恵の体が傷つきはしないか)、珠恵が責め込まれている途中、何度も止めに入りかけた佐古田であったが、その都度熊谷に制せられた。(やくざに対する珠恵の顔見せ)、それは佐古田にも薄々分かっていた。熊谷がようやく動いたのは、珠恵の尻が散々打ち据えられ、血が噴き出すかと思うほど赤く腫らされた後であった。
男どもに蹂躙される姿をやきもきしながら見つめていた佐古田にとって、その珠恵を連れ帰れという熊谷の指図は心躍らせるものであった。
(クスリは半日は効いているというはなしだ)、珠恵を押し込んだ車を猛スピードで、佐古田は走らせてきたのだ、今夜こそは珠恵の体をじっくりと......。
今は白いふくらはぎにゆっくりと舌を這わせながら、佐古田は珠恵の腰回りに視線を巡らせている。
 珠恵を知ってから、長年密かに思い描いていた夢が、今まさに叶おうとしている。
 半覚醒状態のままの珠恵が、肉付きの良い尻を上に、俯せになり佐古田の愛撫を待っている、有頂天になっている佐古田にはそう見えてしまう。
ふくらはぎから太股へにじり上がった佐古田の手は、やがて珠恵のスカートを捲り上げながら、その豊満な尻を剥き出し始めた。
ゆっくりと捲り出された珠恵の尻は、
 (これが人の尻か)
 と思わせるほど大きく、しかもネットリと脂を乗せ、薄い皮膚と相まって、鈍い白さを湛えている。
薄れゆく意識の中で抱え運ばれる内に、主婦らしい白い無地の綿パンティはすっかり捩れて尻肉に喰い込んでいる。
(ああ、奥さんの尻だぁ、尻だよぉ)
 佐古田は両側から珠恵の尻肉を寄せ集め、揉みしだきながら頬ずりをする。
 じっとしていても汗がにじみ出すような夜。
 しっとりとした珠恵のぷるぷるの尻は、指に吸い付くような感触を佐古田に楽しませた。 湿り気を含んだ尻肌が、心地よく掌に馴染んでくる。
両の親指を尻の割れ目に差し入れて、そっとくつろげていく。よれたパンティを尻筋に喰い込ませ、はみ出した飾り毛が甘い汗臭を放ちながら、佐古田の鼻先でもわっと花開いた。
  1. 2014/07/07(月) 20:45:58|
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ビックバンバン 四章 第2回

佐古田にとっては、まさに夢にまで見た珠恵の生尻である。今夜のような光景を幾たび想像したことか。上司の中川に取り入っていったのも、珠恵の存在が大きい。
仕事の用件であっても、遊びに行くのであっても、中川の家へ行くことは佐古田にとって、珠恵に会うということが第一の目的であった。
珠恵の体を見たい、躍動感のある珠恵の尻の動きを見たい、出来るだけ近寄って珠恵の体臭を嗅ぎ取りたい、そういう思いが積もり積もって佐古田をここまで駆り立ててきたと言って良いだろう。
無論大きく傾いた証券会社も要因の一つではある。
刻苦勉励の末にようやくたどり着いた、当時隆盛を誇った花形企業、五洋証券である。 際だった個性もなく能力もない学生にとって、一流と世間が認知する企業に潜り込むことこそが、人生に勝利する唯一の道である、そう信じていた佐古田だった。
そうして学生時代は入社試験のための勉強を怠ることなく精を出した。またそれ以上にあらゆるコネクションを捜しだし、手繰り寄せ接待し、けして裕福ではない親からせびり倒した金も使った。 無思考にただ遊びに精出す他の学生達を尻目に、佐古田は一流会社就職という美酒の甘さに多大なる羨望を持って、多様な若い欲望を押さえ込んだ学生時代を送ったと言える。
確かにいったんは手にした勝利の美酒、当初は就職浪人に甘んじる友人達を前に、酒を飲ませるかわりに大いに自分の優位性を吹きまくったものだ。相手の辟易した顔さえも良い酒の肴になった。
それがどうだ、入社して十年も経たない内に会社の存続が危うくなっているのだ。
こうなるとサラリーマンは弱い、打つ手がないのだ。世間一般に通じる資格でもあればまだしも、なければ会社倒産後の身の振り先を足を使って探し出すより手はない。
年収横滑りなら大成功、八割、六割は当たり前、下手をすると今までの生活がとても立ちゆかなくなる。
だが佐古田はまだ三十前の若さであり、再就職には一番有利な年齢といえる。
再就職後も年収維持という目もないではない。現に大手証券、外資からも密かに個人に対して誘いの手が伸び始めている。優秀な証券マンに対しては年収倍増というはなしさえある。佐古田はそれほど仕事が出来るという男ではなかったが、それでも年齢的には大いに有利と言えた。
しかし佐古田にはある達観が芽生えていた。
所詮再就職がかなったところで、現状維持を狙うのならまた証券マンである。これからいよいよ厳しさが増すであろう株の世界で、外資の進出、規制の強化、リストラの強行、会社合併......果たして、また同じようなことは起こらないという保証は誰にも出来はしないだろう。
(ノルマや上司の目を気にする生活はもううんざりだ、勝手気ままに暮らしたい)
 何も佐古田一人の気持ちではない、いわば全サラリーマンの心の奥底にこだまする響きとも言える。
その怨念とも言える響きが、佐古田に対して極めて現実的に聞こえてきたのは、会社倒産の危機に遭遇したからだけではない、熊谷というアウトローの生活に仕事の上で接したことが大きい。
 間近に見た熊谷の存在が、安定して見えたサラリーマンという地位の、一皮剥けば実にもろい立場を浮き彫りにして見せたと言える。
学歴も何もない熊谷が、小さな瑕疵を恐れる、まるでサラリーマン個人をそのまま大きくしたような会社に対して脅しをかけ、平気で莫大な金をかすめ取っている。
佐古田は既にすっかり熊谷に私淑している。
今は熊谷の使いっ走りでもかまわない、いやずっと子分のままでもいい、おこぼれちょうだいであってもサラリーマンよりはずっとましだろう、佐古田にはもうサラリーマンというものになんの未練も感じなかった。
物心ついてから、良い会社に入るためだけに努力してきたと言っていい佐古田にとって、いったん自分の世俗の夢が破れた後は理念も何もない、ただただ楽して儲けたい。
 脆弱な精神はひたすら助け船を求める。
 佐古田の学生時代の努力も、元々は人より良い暮らしがしたい、優越感を持ちたいということが基本であり、世の中のために働くなどという気持ちは更々ない、熊谷が頼れる助け船に見えてくる所以である。
あるいは、熊谷が佐古田の気持ちの揺れを見抜き、巧妙に利用しているとも言える。
ともかく.....今は、目の前の珠恵の尻に釘付けの状態である。
  1. 2014/07/07(月) 20:47:23|
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ビックバンバン 四章 第3回

佐古田は、開きくつろげた珠恵の尻の合わせ目からほのかに立ち上る、独特の甘い汗臭をしつこく嗅ぎ味わっている。
 (まだ、まだだ、夜は長い、じっくり、そうだ今夜はじっくり珠恵を楽しめるんだ)
 そんな思いが佐古田を有頂天にし、ふつふつとはやる気持ちが、尻をくつろげる指を震わせている。
こじ開けられた尻の合わせ目に、玉の汗をいくつも浮かべ、無意識のうちに開かれた尻を閉じようとするのか、珠恵は肛門の収縮を何度も繰り返して見せている。
佐古田はよれたパンティにそっと指をかけると、珠恵の肛門を直に確認すべく脇へ引っ張り上げる。
「うむぅ、ぅぅ」
 わずかに身を捩らせる珠恵。佐古田の眼前に、可憐な赤いおちょぼ口が微妙な収縮を見せる。散々揉み掴み回された尻肉は、火照り薄赤く染まっている。そしてその奥に、婚姻色のようにさらに赤く染め上げられた珠恵の肛門が、恥ずかし気に生きずいている。
虚けたような顔で佐古田は、思わず人差し指の腹を珠恵のヒクついている肛門に押し当てる。押し込む指を珠恵の肛門は、思わぬ弾力で押し返した。
と同時に
 「いゃぁ、ぁんぁん」
 珠恵の声に佐古田はビクッと身をすくめた。
うつ伏せのまま珠恵はむずむずと尻を上下させる。
 (意識が戻ってきたのか?)
 怪訝そうに見下ろす佐古田の危惧の念を珠恵のやや呂律が回らない言葉が打ち消した。
「あぁん、いゃぁいゃあ、あなたぁ、あなたぁ、そこぉ駄目ぇ」
 得体の知れないクスリの幻覚作用のせいか、混濁する意識の中で、佐古田の欲望の所作をもっとも受け入れやすい夫の愛撫として受けとめたのは珠恵としては当然といえる。
(意識が戻ったのではない)
 ホッと気を取り直した佐古田は、珠恵の反応を確かめるべく、むずかるように上下させる大きな尻をなだめるように撫で開けると、もう一度肛門にそっと指の腹を押し当ててみた。
「あぁん、ぁんぁん、あなたぁ、ぃゃぁぃゃぁ、珠恵、ぃゃだもぉんそこぉ」
 夫と思えばこそ、恥ずかしくてたまらない箇所を弄られても、甘え声で応じる珠恵。
 (こりゃあいいや)
 佐古田がますます有頂天になるのも無理はない。上司と、憧れていたその上司の妻との秘密であるべき夜の睦言、それどころかうまく行けば、珠恵の夜の生態を夫としてつぶさに味わい、観察することが出来るのだ。
このような千載一遇のチャンスに、佐古田ならずとも、喜びに身も心も打ち震えるのが男の心情というものだ。
 こじ開けた、尻の合わせ目に浮かぶ玉の汗を丹念に舐め取りながら、佐古田は口元がどうしようもなく緩んでくるのを押さえられない。
しろうとらしく、奔放な茂りを見せる柔毛が、びっしりと珠恵の肛門を縁取っている。 柔毛に小さな木の実のように付着した汗も、佐古田は丹念に舐め、吸い取っていく。
舐め取りつつ、酸っぱいような尻汗の匂いと、どこか甘い珠恵の尻の穴の匂いを存分に楽しんでいく。
「いゃぁん、もう、もう、ぁっぁっあぁぁん」
 尻を震わせて、小さな声で反応する珠恵の声が楽しい。
ひとしきり尻の穴の周辺の汗を舐め取ると、佐古田はうつ伏せの珠恵の下腹に両手を回し、ぐいっと持ち上げるようにして、今度は本格的に尻の穴を舐め味わう体勢を造る。
せり上げてみると、今更ながらに重量感あふれる充実した珠恵の尻である。
  1. 2014/07/07(月) 20:49:26|
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ビックバンバン 四章 第4回

あぐらをかいた自分の鼻先に尻がくるように、佐古田は母を膝立ちにさせた。上半身はうつ伏せでマットレスに密着させたまま、尻だけを高々と持ち上げさせられた母は弱々しく首を振っている。
ノースリーブが捲れ上がり、少女のように華奢な母の背中が見える。そして対照的に、佐古田の眼前に持ち上げられた尻は、これが実に大きいんだな。
本当は水を入れた風船のようににぷるぷるで雪白なんだけど、叩かれたみたいに赤い斑模様が尻肉に浮いている。熊谷に叩かれた跡だろうか、佐古田に剥き出しにされた尻が痛々しい。
あれあれ、佐古田が尻を舐め始めたよ。母の尻筋に沿って鼻も口も埋め込んじゃってるよ。
「あぁん、いゃぁぃゃぁ、だめぇ、あなたぁ」
 可愛そうに母は勘違いしちゃっているんだね、完全に甘え泣きになっている。
「珠恵、動いちゃ駄目だ、もっと尻の力を抜いて」
 まるで夫婦気取りの佐古田がピシリと母の尻を打った。
「だってぇ、動いちゃうもぉん」
 少女のように母は答える。夫と思えばこそ、母は泣き声を上げなければしょうがないようなところを舐められながらも、持ち上げられた尻を佐古田の目の前で妖しくくねらせさえする。
 気の強い女ほど、気を許した男にはとことん尽くすのかも知れないね。
 佐古田の嬉しそうな顔といったらないね。よだれを垂らさんばかりにして、いやもう垂れてるよ、母の尻たぶがもう佐古田の唾液だらけになっている。
 「うぅ、ぅふぅぁん、ぁぁ、ぁぁ、ぅきゅぅぁ」
 佐古田が母の尻肉をこじ開けて口先をにじり入れたと思ったら、とたんに母は尻を跳ね上げるようにして甲高い啼き声を上げた。
なにをされたんだろう、顔を母の尻で跳ねつけられても相変わらず佐古田はだらしなくにやついている。
「駄目じゃないか珠恵、力を抜いて、可愛いところをもっと見せておくれ」
 佐古田が小声でささやくように言う。
「あぁぁん、ぁんぁん」
 振り向く母の目はほとんど閉じているが、たまにうっすらと見開くことがあってもまるで夢遊病者のように虚ろである。
「ここはいったいなんだい、珠恵」
 佐古田は母の尻の奥をツンツンと指で突つく。
「あっぁっ」、尻を小刻みに上下する母。
 「いゃぁぃゃぁ」、弱々しく頭を振る。
「恥ずかしがることはないんだよ、ほらここだよ」
 再び尖らせた舌が母の尻の合わせ目に差し込まれる。
 「おおぉぅ、ぅきゅぅ」
 尻を盛んに振る、だが、今度は腰をガッチリと挟み込み、佐古田は母に猶予を与える気は無さそうだ。
腰が浮き上がるほど男の腕で抱え込まれながらも、何とか舌先をかわそうと本能的に尻をくねらせる母だったが、
 「ぉふぅぅ、ひっひっ、ひきゅぅぅぅ」
 ひときわ甲高い、語尾の長い啼き声を上げるとブルッブルッと尻を震わせている。
佐古田の顔は、まるで埋め込まれたように母の豊満な尻に食い込んでいる。
「あはぁんはぁん、ゆるしてぇ、ゆるしてぇ、もぅもぅ」
 必死に後ろを振り向こうとする母は涙を虚ろな目に一杯溜めて、責め込みを増す佐古田を窺おうとしている。無論、あくまで夫と思ってのことだろうが。
調子づいたように、なおも顔全体をじわじわと押し入れてくる佐古田に対して、母は尻の動きを止められた今、悲鳴のようなかすれ声で、頭を振って汗を飛ばしながら、佐古田の責めに懸命に応戦している。
「ひいぃぃぃ、ひっひっ、ひきゅぅぅ」
 母の追い詰められた啼き声だけが夜の静寂に響きわたる。
大きな尻を包んでいたのが不思議なほど、小さくくるくるっと丸まった綿のパンティが右の足首に絡まっている。
 色白の華奢な背中が、泣きじゃくる子供のみたいにひくついている。
 ふうぅぅ、ふうぅぅと、小刻みな吐息を吐きつつ、時折、
 「うふぅぉぉ」
 華奢な背をのけぞらせて汗を飛び散らせる。
ちゅぽん、と小さな音と共にようやく佐古田は母の尻から顔を上げた。
佐古田は虚けたような笑いを浮かべて、「はぁぁぁ」、と母が腰を落としかけるのをなおも持ち上げ直す。
「どこを舐められたのか言ってごらん」
 佐古田は荒い息を吐く母を背中越しに窺う。
 「ほら言ってごらん、珠恵はどこに舌を入れられたんだい」
 言いつつ、佐古田は赤い腫れを残す母の尻にねっとりと舌を這わせる。
虚ろな目でようやく首を擡げる母。
「ここだよ、ここ」、舌がつつく。
 つつかれた瞬間ぶるっと尻を震わす母。気だるげに後ろを振り向き、
 「おしりぃ.....」
 小さく絞り出すように答える。
「おしりのなんだい、おしりじゃ分からないよ.....ちゃんと答えないとこうだよ」  そう言うと、佐古田はまたじんわりと尻肉を開け、今度は突き立てた人差し指を母の尻の暗がりに押し入らせる。
「ぁっぁっぁっ」
 とたんに泣きが入り、慌てて後ろへ手を伸ばす母。
 「さあ、言わないと入れちゃうよ、珠恵の口から聞きたいんだよ」
 佐古田の声があくまでも優しい。
「ぁっぁっ、珠恵のぉ、珠恵のぉ.....お尻のぉ......」
 うつ伏せの身を捩らせ、必死に手を尻の方へ伸ばしながら、声にならない。
「聞こえないね珠恵、仕方がない、こうだ」
「いやぁ、いやぁぁん」、ひときわ高く母が啼いた。
 だが佐古田は指を突き入れる素振りを見せて、まだ入れてはいない。母の慌て振りに佐古田が含み笑う。
 「最後だよ珠恵、言いなさい」。
うつ伏せの姿勢で、汗と唾液でオイルを塗ったような尻を高々とせり上げさせられ、じっくりと尻の造りを楽しまれている母、膣や肛門の位置、色合い、匂い、陰毛の生え具合、夫の部下である佐古田に、そうとは知らず構造をさらけ出している。
「お尻の......あなぁ」
 顔をマットレスに押しつけて、やっと小さく答えた。
  1. 2014/07/07(月) 20:51:48|
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ビックバンバン 四章 第5回

やはりそうか、予想通りだな、熊谷もそうだったが佐古田も一番の狙いは母の尻の穴らしい。
 それにしても何を飲まされたのか、嗅がされたのか、佐古田を父と間違うほどの人事不省ぶりはどうだ......、あるいは何らかの薬品か、もしそうだとしたらいよいよ佐古田、熊谷の二人は怪しい。
 苦難に陥った我が家にさも親切そうに押し掛けながら、実は隙あらばと、不安に苦しむ母に乗じてその肉体をいじめ抜こうとしている。
熊谷に打ち据えられた手の跡を豊満な尻に痛々しく残しながら、今また佐古田の手によって、肉体を弄り尽くされようとしている。熊谷と佐古田が現れてたった二日間の出来事だ。それまでの平凡という安穏とした生活から一転、我が家は奈落の底に落ち込んでいる。
特に母は、その奈落の底の苦渋を残忍な男達によって一身に背負わされている。平和な性生活の中では経験することのない淫靡な責めを受け、驚き狼狽する様を堪能されながら。 「あきゃぁ」、母の悲鳴が響きわたった。
舌まで入れられた排泄器官の名前をようやく言えた母を無視して、佐古田は無慈悲に尻の穴に指を突き入れたらしい。
「とろとろになっていたから、スムーズに入ったよ珠恵」
 佐古田はうろたえる母を見下ろし楽しんでいる。
「ぁっぁっ、あぁぁん、くっくっ」
 訴えかけるように泣きながら、責めを受ける自分の尻を見ようと首を伸ばす母。
 「ぁははぁぁぁん、いゃいゃ、ぅぅんぅぅん、くぅー」
 か細いが空気をつんざくような悲鳴。
 佐古田が深々と没入させた指一本で、母の大きな尻を引き上げようとしているのだ。
 「はっはっはっ」
 荒い息を吐きながら、ダイナミックなほど尻をくねらせて痛みと羞恥に母は耐えている。
尻を下げようとすると、佐古田は容赦なく指一本でしゃくり上げてくる。そのままでいると、指が尻の中を探るようにこねくり回る。高々と上げた尻をくねらせながら、定まらない意識の中で、舌足らずに泣き叫ぶ母の姿は何とも言えずエロチックである。
佐古田は調子に乗って母の牝陰に手を伸ばす。
 正常な意識を取り戻していない中で、しかも今まで微妙な性感帯である尻の穴に責めを受け続けていたとあっては、牝陰への刺激が加わることは、もはや押しとどめる理性を失っているだけに、うぶな母をたちまち快感の絶頂に昇らせてしまう。
「はひぃはひぃ、ひぃぃ、ひぃぃ、きゅぅぉぉ」
 母は乱暴な扱いに怯えながらも、夫と思えばこそ、今は必死になって昇り詰めてしまおうと佐古田の指を尻の穴で千切れよとばかりに絞り込み、牝陰にあてがわれた手の動きに応えるように、肉を震わせながら大きな尻を上下左右にくねらせる。
母にこれほどすさまじい牝の本能が潜んでいたとは。
 骨細の体格には不釣り合いな大きな尻を沸き起こる本能のままに、振りくねらせる母の動きに、佐古田の顔からは驚きの色さえ伺える。
 しかしあくまでもだらしない笑みは消えない。
やがて佐古田は母の尻からすっと手を離した。
 離すと両手を床に着き、あぐらをかいている上体を反らすようにする。
 糸を引くかと思えるほどの潤みを見せる秘孔を分厚い尻肉で包みながら、憎らしくも手を引いた佐古田に対して、あたかも非難するかのように尻を盛んに上下させる。
「あなたぁ、あなたぁ、なぁになぁに、いゃぁょぅ、いゃぁ」
 昇りきった状態で突き放されたことを恨めしそうに、そして救いを求めるような大尻。
佐古田がそっと汗まみれの母の尻たぶをくつろげる。
 「あぁっ、あっあっぁっ」
 恥ずかしさで顔を真っ赤にしつつも嬌声が抑えられない。
母の今の心の動きは分からない。時々不安そうに、遊ばれる我が尻を振り返る目は、潤んだ半眼である。たぶん母にとって男の経験は父しかない。相変わらず定まらない意識の内で、佐古田を夫と思っていることだろう。
普段の生活の中で、母が父に頼り、甘える様を中学生の僕はよく知っていた。それはほんのちょっとした仕草や態度、二人の言葉の端々からもうかがえた。
けして目立つ仕草ではない、外では気丈な社交性のある母が、父の前では泣いて拗ねて、意固地になったりした。そんなことが母の甘えと分かる、そろそろ僕はそんな年頃になっている。 ただ、二人がどういう風に夜を過ごしていたかまでは分からない。しかし熊谷のような激しさや、佐古田のようなねちっこい性技を母が父から受けることはなかったろう。
だから戸惑いを見せる。可哀想に、虚ろな意識の中でも。
佐古田は、恥ずかしげに、そして戸惑いながらも、一生懸命指の動きに応えようとする母の尻を一頻り弄り回すと、いよいよ自分の股間に手を持っていった。
せわしげにスラックスから引き出された男根は、すでに怒り狂っている。
あぐらから膝立ちの姿勢になると、うねる母の大きな尻をがっしりと両手で掴み、猛りきった一物を牝陰へ挿入させていく。
「うぅぅふぅぁぁあ」、「おおおぅ」、母と佐古田が同時に発する声。
「んん、くぅふぁあ」、怒張をすっかり潤みきっていた秘孔に挿入されると、母は激しく尻を震わせ上下させる。まさに本能のままに。
それに合わせて佐古田も腰を動かせ始める。
 あまりの母の激しさに始めこそ持て余し気味の佐古田であったが、やがて改めて膝立ちの腰を据え直すと、オイルを塗ったような飛び散る汗もかまわず振りまくる大尻に、リズムを合わせて小気味よく剛直を打ち込む。
ショートカットの髪を額にへばりつかせて、懸命に、そして凄絶なまでに、佐古田から打ち込まれる剛直になんとか呼吸を合わせようと振るわれる尻、虚ろな目で奥歯を噛みしめた表情が左右に揺れる。
 剛直で肉の絡みを十分に味わいつつ、佐古田は後ろ髪を捩るように引っつかむと、母の顔を自分の方へねじ曲げその喘ぐ表情をも楽しむ。
いかに恥ずかしい顔でも、どれほど悩ましい姿態の動きであっても、夫の前では甘えきることが出来るのであろう。母にとってはあくまで夫とのセックスである。だが今はそんな意識さえあるのだろうか、ただただ牝として奔放なまでに性をむさぼる。奥歯を噛みしめ眉間にしわを造りながら、絶頂をひたむきに追求するように振るわれる大尻からは、意識を越えた凄まじいばかりの本能的なものを感じる。
「いいよぉ、いいよぉ珠恵、もっと、もっと、激しく」。
天を仰ぐようにさらに促す佐古田に応えて、母の尻にまるで痙攣するような蠢きが加わった。
 「きゅふぅぅ、きゅぅぅ、くふぅぅ」
 母の絞り出される涕泣。
直後佐古田の激しい挿入運動が止まり、うねる母の尻をぐいっと引き寄せるのと同時に腰を突きだし、肉棒を秘孔の最奥を目指すかのように埋め込む。
「おおおぉ、......うむんんん」
 佐古田は下顎を震わせて果てた。
「おふうぅぅ....うぅぅん」
 力尽きたようにマットレスにへばりつく母の上体。
だが、あっけなく果てた佐古田を問いつめるごとく、尻だけがまるで別の生き物のように肉棒を吸引しようとくねる。
「くうぅー、おお、凄い、凄いよ珠恵」
 せり上げるようにくねる尻、いったんくわえたものを離すものかという、吸い上げてくる肉の絡み、佐古田の尻がブルブルと震える。
 「あぁ珠恵、そんな、くぅぅ、んむうぅ」
 肉棒に残るほとばしりの残液を母の尻は貪欲に絞り切った。
チュパッ、尻が肉棒を振りはずした音、ふうぅーとため息を洩らしてどっかりと佐古田が腰を落とした。
しばし呆けた顔で母の尻を見る佐古田、その尻は小さくひくつきながら、やがてマットレスに落ちた。
  1. 2014/07/07(月) 20:53:43|
  2. ビックバンバン・ざじ
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ビックバンバン 四章 第6回

痺れたような余韻が頭の芯に残っている。臍から下が無くなってしまったような妙な感覚を覚える。しかし、確かに珠恵の愛液を十分に吸った肉棒が、眼下に嬉し気に濡れ光り、揺れている。
嬉しい誤算といえる、思いも寄らぬ珠恵のダイナミックな性技を味わい、今その情景を反芻することによって、ムズムズとわき上がる昂揚感を抑えることが出来ず、だらしなく口元が緩んでくるのをどうしようもない。
昏々と眠る、珠恵の小さな寝息が聞こえる。
うつ伏せの華奢な背中からなめらかに、しかし体格とは不釣り合いにたくましい盛り上がりを見せる臀部が、マニアックな男の欲望を刺激して止まない悩ましさをムンムンと伝える。
熊谷や野卑な男達によって、容赦なく受けたスパンキングの跡を未だ生々しく残しながらも、熟れた水蜜桃を思わせる珠恵の尻は瑞々しく、大の字にうつ伏せにさせられながら、容易には尻の穴を見せないほどの張りのある肉付きを見せている。
(見事な尻だ。それに今夜の珠恵はどうだ、あれほど男どもになぶられ叩かれたというのに、クスリのせいで意識が定まらないとはいえ、何ともすばらしい尻使い、あの普段怜悧な珠恵とはとても思えん)
 珠恵についに欲望を放つことが出来た、その喜び、それに伴う欲情感がまたふつふつと佐古田の胸に沸き上がる。
吐き出したばかりの佐古田は、今また股間に新たなる屹立を感じていた。
  1. 2014/07/07(月) 20:54:53|
  2. ビックバンバン・ざじ
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ビックバンバン 五章 第1回

(ああ.....頭が重い)
 目覚めた珠恵は全身を気だるい感覚に包まれていた。
快い気だるさではない、まるで鉛をのみ込んだような重苦しい感じ、腕を上げるのさえ億劫な。
(いったい私は?)
 やっと、布団から引き剥がすように上半身を起こした。昨日佐古田と出かけたときのままのノースリーブがじっとりと汗ばんでいる。スカートも穿いたままだ。
窓から射し込む光は、蝉の声と共にじわじわと暑さを伝えている。
(何時だろう?....昨日はいったい....、ハッ)
 昨日の出来事が珠恵の脳裏に思い起こされ、一瞬のうちに鼓動が早まったような気がした。
(そうだわ昨日、あれから....私は....、どうやって戻ってきたのだろう?)
 暑さのせいだけではない冷たい汗の玉が、額にプツプツと浮かぶのが分かる。
佐古田に連れられるままに行ったあの部屋、思いも寄らない熊谷の登場、哀しそうな女の顔、スキンヘッドの男の顔、ぼんやりとしてはいるが恐怖感と共に記憶に刻まれた、よってたかって尻を打たれた情景、下唇の震えを珠恵は止められない。
(あれからどうなった、なぜわたしはここで寝ていたのだろう)
 細切れに、しかしいやに鮮明に浮かんでくる記憶の糸も、残酷に尻を打たれた情景から先のことはふっつりと途絶えてしまう。
(わからない.......ともかく体を....洗いたい)
 強烈な便意の催しを感じたのは、まだふらつく足取りで階段を下りかけたときであった。
手を添えた下腹が、中でキュルキュルと鳴いているのが分かる。
いったん意識をすると、一段一段階段に足を踏み出す度に、便意の増幅を覚えた。
(あぁ、くっ)、今にも噴き出しそうな突き上げを尻の穴を引き絞ることで懸命に耐え、知らず知らずスカートの上から尻の穴を押さえながら、ようやく階段を降りた。
「奥さん、起きましたか」
 振り返るとソファに座る佐古田がいる。
「あっ、さ、佐古田さん」
 連れ帰ってくれたのが佐古田だとすれば、ここにいるのはなんの不思議もない。まして前後不覚に陥った珠恵を運び、寝かしつけたとすれば、目を覚ますまで見守っているのは自然である。
しかし、下腹と尻を押さえながらへっぴり腰でよろめき歩く姿を見られては、恥ずかしさで真っ赤な顔で俯くしかない。
昨夜、貪欲な性欲を引き出され佐古田の目の前で醜態を演じてしまっていることは、珠恵は知らない。今はまだ、珠恵にとって佐古田は弟のような、夫の部下でしかない。
「どうしたんですか」。
「ぇっ、えぇ、ちょっとトイレへ」。
「あっ、もしかしたらうんちですか」。
佐古田の無遠慮な問いに顔を一層赤らめながらも、動揺を見せたくないという気持ちが先に起つ。
 「えぇ、どうしたのかしらね、急になんだか」。
「ああやっぱり、それ、浣腸のせいですよ」。
「.....えっ、かんちょう」
 珠恵はとっさに意味が理解できない。
 佐古田は、珠恵の便意を耐えながらの怪訝そうな顔を含み笑う。
「つい二時間ほど前ですよ、奥さんがおなかを押さえてあんまり悶え苦しんでいるもので、きっと、あのとき飲んだカクテルと、それにあのとき受けた乱暴な扱いでおなかを壊したんですよ。それで失礼かとも思ったんですが急なことでやむを得ず、浣腸をやらせてもらいました。ええ、いゃあへへ、よかったですよ」
珠恵は息をのんで佐古田を見つめた。
 佐古田の笑い顔が何とも言えず下卑たものに映る。
(浣腸ってまさか.....)
 それまで恥ずかしさで赤らめていた顔が、今度は不安と怒りからくる恥ずかしさで青醒めてゆくのを感じる。だがそうこうしていても便意は否応なしに珠恵を襲ってくる。
 恥ずかしさと怒りを抱えたまま、珠恵は逃げるようにトイレへ駆け込んだ。
スカートをまくり上げパンティを膝まで下げてしゃがんだと同時だった。派手な放屁音と共にブバッと軟便が便器に飛び散った。
「はあぁぁぁ」
 ホッとしたような珠恵の吐息を佐古田が扉越しに聞いている。
ブピュ、ピュルルと可愛い音を放ちつつ、珠恵自身が驚くほど尻の穴はうねうねと便の排泄を続けた。放屁の音が佐古田に聞こえてはいまいかという危惧もわいたが、我慢の限界に達していた便意を排泄により解放することが出来、珠恵はまずは安堵感に包まれている。
まさか排泄音、放屁、微妙な息づかい、安普請の薄い扉越しに全て佐古田に聞かれていようとは思いも寄らない。
  1. 2014/07/07(月) 20:56:29|
  2. ビックバンバン・ざじ
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ビックバンバン 五章 第2回

佐古田は宿便まで排泄させる、医療用の特別の浣腸液を手に入れて、昨夜珠恵の尻に打ち込んでいた。
いつもとは違う便の量に驚き、珠恵が目を丸くしたのも無理はなかった。
くみ取り式の便そうに、ぽとぽとと響き落ちる便の音を薄い扉一枚、ほんの三十センチ後ろで聞き耳を立てられていようとは。
「奥さんどうですか、出ましたか」
佐古田の声で、はっと珠恵は後ろを見た。
 「えぇ、ぁぁ」
 下から尻を覗き上げられているような錯覚を覚えて、やっと返事をした。
「いいうんちが出ましたか」
佐古田の楽しげな調子に珠恵の尻に鳥肌が立った。
「ど、どうして、佐古田さん」
「ええ、僕は奥さんの健康管理も任されていると思っていますから、ど、どうです、是非便の状態を見たいんですが、直に確認したいんですよ」。
「........!」
佐古田の思いも寄らぬ申し出に絶句する珠恵。
「いいんですね、開けますよ」
珠恵のうろたえぶりを見透かすように佐古田の無理な要求。
「あわぁ、わぁ、ま、ま、まって、ちょっと」
身を捩り珠恵は慌てて扉のノブへ手をかけた。
ガチャリ、だが外側からノブが思い切り引かれた。
「いゃぁぁぁ」
 泣きそうな珠恵の悲鳴、だが扉は開かない、フック式の鍵が辛うじて掛かっていたのだ。
「あぁ、くそっ鍵か」
扉の外から忌々しそうな佐古田の舌打ちが聞こえる。
諦めきれないようにノブを乱暴に掴み揺すりながら、扉ごと引き剥がす勢いでなおも開けようと腐心している。
「どうしたんですか奥さん、お願いです開けて下さいよ、僕を信じて下さい。飲まされたカクテルに何が入っていたかわかったもんじゃない。それにあれほど乱暴を受けて、体調が悪くないはずはないんだ。何を警戒しているんですか」
猫なで声の佐古田の説得も、最後は焦りから叱責調になる。
「も、もしですよ、何とか御主人にお引き合わせすることが出来ても、奥さんの体調が思わしくなかったらせっかくの我々の好意が、意気込みが無になってしまう。そこまで考えてくれていますか奥さん」
「..........」、丸出しの尻を中腰にして、不自然な格好で珠恵はノブを両手でギュッと押さえている。 理不尽とも言える佐古田の要求に唇を噛みしめながら。
執拗にノブを回し扉ごと揺する佐古田に、珠恵もノブから手を放すことが出来ない。
どうかすると、本当に扉ごともって行かれるのではないかと思えるほどの佐古田の勢いであり、またちゃちなトイレの造りなのだ。
「待ってください佐古田さん、わたし、わたしどうしたらいいの」
「分かります、分かりますよ、恥ずかしいんですね、でも信じて下さい。わたしは奥さんのことだけを思っているんです。奥さんの安全と体調のことだけを。だから、前にも言ったように、身も心もわたしに委ねていいんですよ」
扉をギシギシいわせながら佐古田は早口になる。
佐古田にすれば(昨夜珠恵の体を十二分に慈しんだ)
 という思いがある。
 精を吐き出した後も、昏々と眠る珠恵を表にし、裏にしと、明け方近くまでそれこそ体の隅々まで舐め、嗅ぎ楽しんだ。もはや他人ではないという抜きがたい、しかし身勝手な思いがある。
勝手にそう思われてしまったことは珠恵にとっては災難でしかない。
昨夜の蒸し暑い夜のことは記憶にはないのだ。ましてや一晩中佐古田の慰み者になっていたことなど。
それだけに........今のこの強引な佐古田の行状が珠恵には理解できず、普段とは別人のような佐古田に恐怖すら感じる。(浣腸をやらせてもらいました)と、言ったときの佐古田の歪んだ笑い顔が、まざまざと脳裏に浮かぶ。
「だからねえ、開けて下さいよ」
佐古田はもう扉を強引にこじ開けようとはせず、歪んでほんの少し開いた透き間から中を窺いながら狼と赤ずきんちゃんよろしく、しつこく珠恵の籠絡を試みる。
「そ、そこまで、佐古田さん何もそこまでしてもらわなくても.....そ、それはもちろん佐古田さんの親切には感謝しているわ、でもだからって」
「違う、違うんだよ奥さん。僕は決していやらしい気持ちで言ってるんじゃないんですよ。本当に奥さんの体を心配して言っているんです。それが分かってもらえないなら.......我々と一緒にやっていけるんですか。本当に一心同体という気持ちがあるんですか」
「でも、こんなところを」
「だから言っているじゃないですか、あくまでも奥さんのためです。僕にしても熊谷さんにしても奥さんのために危ない橋を渡っているんですよ。ひいては太郎君のためにも、御主人のためにも」
脅したりすかしたり、懇願混じりのわざとらしい佐古田の物言いだが、それを言われると珠恵はつらい。
「た、太郎はどこに」
そういえば......佐古田の言葉で、まだ今日は一人息子を見かけていないことに気ずいた。
「太郎君には使いを頼んであります。隣町のコンビニまで、簡単な総菜とおやつを。おこずかいは渡してあります。だから心置きなく....おくさん」
「大丈夫でしょうか」
「このあたりはもう大丈夫ですよ、心配いりません。まだ三十分くらいは戻ってきませんよ。少し恥ずかしいでしょうが太郎君に見られることはない」
顔を押し当てるようにして扉の隙間から覗き見える珠恵は、鍵に手をかけながら、なおも逡巡している。しゃがんでいる尻がさらに大きく見え、まさに排便中の女の姿が何とも艶めかしい。
「奥さん」
はっとして手を引っ込める珠恵。
「あっ、心配ないですよ。大丈夫、ほら開けて」
顔を覆ってしまった姿を、わずかな覗き見られていることも気ずかない。
 夫の年若い部下に排便を見られることは死ぬほどに恥ずかしい。しかし子供のため、夫のためと言われれば気の強い分、珠恵は拒めない。我々を信用していないのかと言われれば、身の振り方を佐古田と熊谷に委ねている以上、信用して行くしかない。
 唇から血が出るほどの含羞を、珠恵は噛みしめ押し殺した。
鍵は開けられた。
ゆっくりと扉は開いた。
  1. 2014/07/07(月) 20:57:32|
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ビックバンバン 五章 第3回

一瞬佐古田の顔を見た珠恵は.......しかしすぐ視線を逸らし俯いてしまう。
佐古田は舌なめずりをして珠恵の後ろへあぐらをかいた。
こうすると珠恵のしゃがんでいる床が一段高くなっているため、少し首を傾げれば尻に付けた見事な肉をパックリ割っての、本来秘められるべき排便作業をつぶさに観賞できるであろう。 昨夜飽きるくらい舐め回した尻の穴が、再び催してきた便意に震えおののいている。
珠恵は後ろに陣取った佐古田の気配を強烈に感じながらも、あまりの突き抜けた恥ずかしさに振り向くこともできない。
(なぜ、こんなことに)
 口から飛びだしてきそうなほどの、心臓の震える鼓動を感じながら、しかし珠恵は今の状況を必死に把握しよう、納得しようと努めていた。
(そうでなければ気が変になってしまう)
 夫の部下に、今まさに排便をつぶさに見られようとしている。こんな尋常でない光景を演じなければならない自分を納得させるには、熊谷や佐古田に殺し文句のように突きつけられてきた、家族のため、妻としてその責任を全うせよという金科玉条を自分で自分に科すしかない。
そうでなければ、佐古田の要求は到底飲めるようなものではない。
まして眠っている間に浣腸させてもらいましただのと、得々と語られるのを平気ですまして置くわけには行かない。
だが(我慢しなければならないのだ)珠恵は必死で自分に言い聞かした。
(今すがれるのは、この佐古田と熊谷のみ)
 唇のわななきを止めれらずにおそるおそる振り向く先には、目を皿のようにして、珠恵の排便直前の肛門の状態、ひくつきを明らかに楽しんでいるとしか思えない佐古田の顔が、尻に引っ付かんばかりに覗き上げている。
 「あぁん、いゃぃゃぁん」
 たまらず声を上げ腰を上げかけた珠恵であったが、たちまちがっしりと佐古田に腰を押さえ込まれて、あろうことか後ろから回された手が珠恵の下腹を無慈悲に押し揉むのだ。
「あぁあぁ、あぅぅん」
 いやが上にも増幅していた珠恵の便意を強引に後押しする佐古田の無慈悲な行為は、珠恵の下半身に熊谷から責めを受けたときと同じ甘い疼痛と、懸命に引き絞っていた尻の穴の脱力を生じせしめた。
「構いません、いいんですいいんです、さあさあ思い切って......ぁぁああ、ほぅら出てきた出てきた、可愛いですよ奥さん」
「あぁあぁ、うぁぅぁ、いゃぃゃぁん」
 身を捩りながら見えるのは、恥ずかしいほどの震える大きな尻である。便が排泄されているのは分かるが、自分では確認できない。
確認できずに、排便中の両の尻たぶを佐古田にさらに剥きこじ開けられている。
小指ほどの太さの細い便が、憧れの上司の妻の尻から、ぽとりぽとりと次々に排泄されていく様は、佐古田に身も心も痺れきるような、 凄まじい快感を引き起こしていた。
「奥さんすばらしい、いい便です、いい便ですよ、あぁ奥さんの匂いを嗅げるなんて」
 「いゃあいゃぁ、見ないでぇ、見ちゃぃゃぁ」
 珠恵は弱々しい泣き声を上げて、健康な便を佐古田に披露していった。
 ようやく排泄を終えると珠恵は放心したように、和式便器の金隠しを抱え込むように床に膝をついた。
震える息を吐いている。
甘い疼痛が今では全身に伝わって、息の震えが体中に及んでしまいそうだ。下半身が甘く痺れている。
( あぁ、どうしたんだろうこの体の疼きは.........なぜ、どうして、こんなことをされているのに)
「はぅ」
佐古田が排便を終えたばかりの、敏感になっている肛門の汚れをトイレットペーパーで拭き取り始めた。
佐古田に便を拭き取られているという生々しい現実が、珠恵の尻を、尻の割れ目に息ずいている可憐な部位をじんじんと疼かせる。
「あぁ、あっあっ、いゃいゃいゃぁ、佐古田さぁん、そこ、あぁぁ」
「遠慮は禁物ですよ、ええもっと体を楽にして、僕は嫌でやっているわけじゃないんですから」
佐古田は丹念に、それは執拗に珠恵の便をふき取っている。
拭き取った後も尻たぶを開きくつろげて、今にもしゃぶりつきそうにまじまじと珠恵の大尻を見上げている。
「僕がこれからどうするか分かりますか」
珠恵は訳も分からず、しかし今度は何をされるのかという不安に襲われている。
「あぁ、いゃいゃぁ」
「ふふ、こうですよ」
「ふぅは、うきゅぅぅぅ」
珠恵の腰を身動きが出来ないようにがっしりと抱え込み、佐古田はぶっちゃりと唇を尻の穴に吸い付かせた。
「ふぅぁあ、あんあん佐古田さぁん、汚いよぉ、汚いよぉ、もぅ堪忍してぇ」
「まだまだ、これくらいじゃあ許しませんよぉ、それに僕は奥さんのだったら喜んで、汚いなんてちっとも思いませんよ」
佐古田はしわの一本一本に舌を這わせて、やがては棒のように尖らせた舌を珠恵の鮮紅色に震える尻の穴へ、嬉しげに突き入れた。
  1. 2014/07/07(月) 20:58:41|
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ビックバンバン 五章 第4回

昨夜とは違う、忍び鳴きながら責めに耐え、わななきつつ尻を震わせる珠恵の姿はまた格別であった。
 涙を堪えて擡げられる尻は、佐古田の陰湿な欲情を無性にそそる。
「あぁ、おぉぉぅぅ」
尻の穴の中まで舌が這い回り、すでに濡れそぼっている陰裂を太い指がなぞり上げる。 クリトリスを乱暴に摘み上げてくる。
「うきゅぅぁあ」
たまらず悲鳴を上げながら、珠恵は確かに、酔っている自分をひしひしと感じていた。
何に酔っているのか。知らぬ間に、佐古田の目の前で尻をくねらせる自分が居る。
「はぁぅ、おぉぅ、ぃゃぁぃゃあ、そこわぁ、はあぁぁん」
珠恵の突き出されたような格好の尻。 その尻の穴の両脇に親指を食い込ませ強烈に剥き上げ、舌を這わせ、こじ入れ、飽くことなく舐めあげる佐古田。
「ああ、おいしいなあ、おいしいですよ奥さん、それに、それになんて可愛い尻の穴なんだ。ほんとにたまらないなあ」
「そ、そんないゃあ」
「いいですよ、恥ずかしがることはありませんよぉ、尻がこんなに大きいのに、ちっちゃな可愛らしい尻の穴をしているんですよ奥さんは」
「そんなぁそんなぁ、もういゃぁん」
尻の穴を舌で遊ばれ、言葉で揶揄される。腹立たしいくらいの恥ずかしさに唇を震わせながら、探り回る佐古田の舌を拒むことの出来ない今の自分に.......確かに酔っていた。
(今だけ、今だけ我慢しよう。そうすれば、きっとまたいつもの日々が戻ってくる。それまでは、佐古田に、そして熊谷に賭けてみるしかない。たとえ......彼らがそれに乗じてわたしの体を狙っているとしても.......)
珠恵の細い肩に覆い被さる苦難を利用して、苦悶する珠恵を楽しみながら、無理難題を吹っ掛けてくる佐古田と熊谷。拒むことの出来ない珠恵、執拗な男二人の責めを何とか凌いでいくしかないのか。
淫靡な密室と化した熱気のこもるトイレで、珠恵の大きな尻は、緊張からくる汗でオイルを塗ったように、ぬるぬるになってしまっている。
 珠恵は覚悟を決めたのだろうか。
 放心したみたいな丸出しの尻を下から上へ、佐古田は汗を弾きながらゆっくりとすくい上げていく。
柔らかな張り切った尻肉は、汗を含んで吸い付くように佐古田の指に馴染む。
「さあ、もう一度いきますよ奥さん」
「えっ、あっ、あっふうぅぅ」
尖った舌を再び尻の穴に突き入れられた珠恵が啼いた
  1. 2014/07/07(月) 20:59:34|
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夏の生贄 第一章 「夏の夢」

空は果てしなく青く澄み渡っている。
時期は七月の中旬。照りつける陽光はすでに真夏のもので、このT海水浴場にひしめく水着姿の男女たちの肌に健康な焼印をあてている。
砂浜には白いビーチパラソルがいくつも並び立ち、その向こうに広がる海では若者や家族連れが笑顔でバチャバチャやっている。ビーチボールが飛び交い、ビキニ姿の乙女たちがかしましい嬌声をあげる。
夏の楽しさ、ここに極まれりといった情景だ。
砂浜から少し離れたところに幼児用のごく浅いプールが設置されている。そこではまだうら若い親たちが我が子とともに水に浸かっていた。ある親は怖がる子をなだめすかして、水に入れるのに懸命になっている。またある親は、子供が際限なくはしゃぎまわるのを横目で眺めながら、疲れてぐったりしている。
その中に一人、その一箇所だけぱっと花が咲いているかのように華やかな雰囲気を漂わせている女性がいた。
黄のおとなしい花柄のワンピース水着をつけたその女の年齢は、三十より少し前くらいだろうか。背が高く、すらりとした体型だ。背筋がきりっと伸びていて、凛とした印象を与える。ストレートの美しい黒髪は肩までの長さで、前髪が眉の上で切りそろえられているのが、少し童顔気味の顔の印象と相まって女をいっそう若々しく見せている。
形のいい鼻梁。小造りのきゅっとした口元。何より、切れ長の美しい瞳の溌剌とした輝きが、女を周囲の誰よりも魅力的に見せていた。
女―――高島夏海は幼児用のプールに膝まで浸かりながら、四歳になる我が子晴喜が浮き輪に助けられながら、初めての水泳を楽しむ様子を眺めている。
晴喜は生まれつき度胸がいいのか、さして怖がりもせず水に入ると、浮き輪につかまってぷかりぷかりと浮かんでいる。その顔はいかにも楽しげで、夏海が時折、浮き輪をつかんで動かしてやると、きゃっきゃっと声をあげて喜ぶ。我が子の無垢な笑顔を見つめる夏海の顔も、幸福そのものといった表情だ。
「ハルくん、楽しい? 泳ぐの好き?」
「すき~!」
晴喜の返事を聞いて、夏海はまたにっこりと微笑む。
陽光きらめく夏の日。波音と若者たちの騒ぐ声に包まれながら、プールで戯れる幼子とそれを優しげに見つめる母親の姿は、絵画の題材になりそうなほど可憐で、詩情あふれる光景だった。
と、そこへ海パン姿の男が駆けて来た。夏海の亭主、昭文である。
「わるいわるい。車のトランクひっかきまわしてようやく見つけたよ」
そう言って、昭文は右手のビデオカメラを持ち上げた。
「もう。せっかく高いお金を出してやっと買ったカメラなんだから、大事にしまっておいてよね」
「わるかったって。ほら笑って笑って」
私はいいから晴喜を撮ってよ、と小さく言いながらも、夏海はすっと背を伸ばして、ビデオカメラを見た。口元にはにかんだ笑みを浮かべている。
「いいねえ。夏海はまだまだいけるよ。やっぱりビキニにすればよかったのに」
「まだ言ってる。もうそんな年じゃありません。まったく・・・ほら、私はもういいからハルくんを撮ってよ」
「はいはい」
昭文が言うと、水に浮かびながら両親を眺めていた晴喜が、
「はいはい」
とオウム返しした。
夏海と昭文は顔を見合わせ、それから弾けるように笑った。

そんな幸せな家族の情景を、プールサイドで二人組の男が眺めていた。日陰に設けられた長椅子に寝そべり、煙草を吹かしながら、男たちはサングラスの奥の瞳を光らせて高島一家を、その中でも夏海を見つめている。
低い声で男の一人が言う。
「たしかにすげえ上玉だな。お前が何年も馬鹿みたいに岡惚れしてるってのも分かる」
「何かこう、上品な色気があるでしょう。男なら誰でもあの女の水着を引きちぎって、好き放題に犯してみたいと思うはずですよ」
「相変わらずてめえの発想は下衆だな。上品さのカケラもねえ」
男はそう言って鼻で笑うと、煙草をもみ消した。
「それでどうですか? あの女。礼の件に使えそうですか?」
もう一人の男が尋ねる。
「ああ、いけそうだな。ちょっと見ただけだが、ただ美人なだけじゃなくてなかなか芯も強そうだ。礼の件にはぴったりの人材かもしれん。藤岡の兄貴には俺から言っておこう」
「それはよかった。でも、あの女を例の奴のの生贄にするのはちょっと惜しい気もしますがね」
「今更、何言ってやがる」

夏。
空はどこまでも青く、不吉なほど果てしなく広がっていた。
  1. 2014/07/09(水) 14:34:00|
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夏の生贄 第二章 「雨の予感」

高島夏海は今年で二十九歳になる。二十四歳の時に現在の夫、昭文と恋愛結婚し、翌年に長男の晴喜を出産した。
昭文は大学のサークルの先輩だった。あっけらかんとした性格と天性の愛嬌の持ち主で、多少頼りないところもあるが、夏海は知り合ってすぐに彼が好きになった。
ひとは自分と似た人間に好意を抱くこともあれば、まったく違う性格の人間を愛することもある。夏海の場合は後者だった。結婚して以降の平穏な暮らしのなかでだいぶ改善されてきたものの、もともと夏海は不器用で神経質な性格だった。愛想を言うことが苦手で、誰にでも気安く話しかけることなど出来ない。曲がったことが嫌いで、ひとの些細な過ちを忘れられない。なまじ美人なだけあって、若い頃の夏海は周囲からつんと澄ました性格だと思われ、陰口を叩かれたことも多かった。
そんな夏海の性格は子供の頃の家庭環境が影響しているのかもしれない。夏海の両親は不仲で、子供の前でも平気で度々激しい夫婦喧嘩をやらかした。父は母に愛想を尽かし、女遊びに金をつぎこんでは何日も家に帰らない。母は母でそんな父への反発か、よその男を自宅に引っ張り込んで、子供の前だというのに男にしなだれかかり、媚びた振る舞いをする。
父と母は幼い夏海に向かって、よく同じことを言った。
「お前がいるから離婚しないんだよ」
夏海はそんな両親が大嫌いだった。
こんなふうに子供を言い訳にして、自分のエゴを押し通しながら偽善的な営みを続けていくのが夫婦というものなら、夏海は結婚などしたくもなかった。
昭文と付き合うようになって数年が経ってからも、夏海は次第に現実味を帯びてくる「結婚」の二文字にまだ違和感と、そして少しの恐怖を感じずにはいられなかった。
昭文が初めて「結婚」を口にしたとき、夏海はしばらく黙り込んでしまった。次にようやく口を開いたとき、夏海はプロポーズへの返事ではなく、自分の過去のことを話した。過去のこと、両親の結婚生活への嫌悪。
そのときまで夏海は昭文にすら、そうした過去の暗い記憶を喋っていなかった。それは夏海のもっとも深い部分、誰にも話せなかった心の傷口だった。昭文に話しながら、夏海はいつしか涙を流していた。
昭文はいつもと同じように、穏和な表情で夏海の話を聞いてくれた。
すべてを昭文に打ち明けた後、夏海は心が少し軽くなったのを感じた。今まで自分ひとりの胸に抱え込んできた痛みや苦しみ。それは夏海の心の闇でもあったが、その闇を愛する男の前にさらけだすことで、夏海ははじめて自分以外の人間と真正面から向き合うことができたのだった。
愛する人間に心を開くこと、委ねること。それが出来なかったことが、夏海の両親の夫婦生活が破綻したことのもっとも大きな原因だったのだと、夏海は気づいた。
やがて夏海と昭文は結婚し、夫婦となった。
そして生まれた晴喜は、夏海に母となることの喜びを教えてくれたのだった。
子を持つことで、夏海はまた変わった。母となったことの自信と責任感が、夏海をより強く優しくさせた。
夏海は穏やかに笑うようになり、それとともに穏やかに暮らす術を覚えた。
今の夏海は以前のように、始終気を張りつめてぴりぴりしてはいない。ゆっくりと深呼吸をするように、愛する夫と息子との暮らしを味わっている。
夏の空を彩る入道雲のように、ゆったりと成熟しながら。
しかし―――
誰もが薄々知っているように、幸福な時間はいつまでもは続かないものだ。やがて運命の歯車は回り始め、思いがけない試練のときがやってくる。

夏は他のどの時期よりも美しく楽しい季節だ。だが、夏の天気はしごく変わりやすい。
  1. 2014/07/09(水) 14:34:46|
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夏の生贄 第三章 「暗転」

雨の日だった。
その日も夏海は晴喜を幼稚園へ送り出してから、いつものように家事にいそしんでいた。
高島一家がいま住んでいる家は、もうあと一ヶ月で引っ越す予定になっている。昭文は個人でリフォーム業の会社を経営しているのだが、今度その仕事場に近い場所に、いまの家よりも大きな家を新築したのだった。
「新しい家は親子三人で住むのはもったいないくらいの広さだな」
「そうね」
「家族を増やそう。子供は多ければ多いほどいい。ぼくも頑張るから」
「何を頑張る気よ。へんなひと」
「へんじゃないだろ。相変わらず妙なところに気を回すね、君は」
「それよりもお金の余裕あるの? 今回だって相当無理してお金を作ったでしょう。家のローンだってあと何年もあるし」
「どうにでもなる。分不相応に欲張らなければさ。家族が幸せに暮らすだけのものがあればいい。それでぼくの分は十分」
「・・・へんなひと」
夫婦の寝室で夫に腕枕されながら、夏海が昭文とそんな会話をしたのはつい昨日のことだ。
建設中の新しい家を、夏海も何度か見に行っている。最初はただの更地、その次に行ったときは家の土台が出来ていた。二週間前見たときにはもう家の骨組みは、ほとんど完成していた。
そうして家が次第に造られていく様子を思い返していると、夏海はわくわくした気持ちになってくる。これからどれほどの思い出が、あの家での暮らしの中から生まれてくるだろう。どれほど楽しいことが待っているだろう。
(新しい家族か・・・わたしも頑張ってみようかしら)
夏海が洗濯物を折りたたみながら、そんな想いに耽っていたそのときだった。
夫の昭文が数時間前、交通事故に巻き込まれたことを告げる電話が鳴った。

取るものも取らずに夏海が電話で指定された病院に駆けつけたとき、昭文はすでに手術を終え、面会謝絶の病室で麻酔を打たれ、眠りについていた。
医師の話では肋骨を二本と右腕を折っているという。幸いに内臓や血管に重大な損傷はなかったようだが、それにしても大怪我であることには間違いない。医師は手術後の経過を見て、これからどのような処置をするかを詳しく説明してくれたが、夏海の耳にはろくすっぽ入ってこなかった。

「高島昭文さんの奥さんですか?」
顔面蒼白で病室の前に立ちつくしていた夏海に、スーツ姿の中年男が話しかけてきた。
「そうですが・・・?」
「私は警察のものです」
男はそう言って背広のポケットから、警察手帳を取り出して見せた。豊田という名前の刑事だった。
「この度はとんだことになりまして・・・心からご同情申し上げます」
「主人は・・・どうして・・・」
「轢き逃げです。ご主人は仕事の合間に近くのレストランで食事をとりに行き、また仕事場へ戻る途中の裏路地で何者かの車に轢かれたようです」
「・・・・・」
「視界のわるい、細い道路でした。悪天候でしたし、ご主人が道を渡ろうとしていたのに気づかなかったのかもしれませんが・・・あいにく目撃者もいませんで。逃げていく車を見たものもいません。ゆえに事故なのか、それとも違うのかがまだ分からないのです」
「それは・・・誰かが」
夏海はやっとの思いで言葉を吐いた。声が震えているのが自分で分かった。
「故意に主人を轢いた可能性もあるということですか?」
「心当たりがあるんですか」
豊田の目がきらりと光る。だが、夏海は首を振った。
「そんな・・・主人は他人の恨みを買うようなひとではありません」
夏海は本心からそう言った。夏海の知らないところで、昭文が仕事上のトラブルに巻き込まれていたことはあるかもしれないが、それにしたって轢き逃げされるほどのことを昭文がやるはずはない。そんな男ではない。
「そうですか・・・・。捜査が進展したら、また何か新しい情報が出てくると思います。ご主人の意識が回復したら、また話を伺うことにもなるでしょう。すみませんが奥さんの連絡先を教えていただけませんか」
夏海が自宅の電話番号を告げると、豊田はそれを手帳にメモし、
「それでは、またいずれお会いすることもあると思います。くれぐれもお気を落さぬように、頑張ってください」
豊田は一礼して去っていった。
夏海はその背中をぼんやりと見送った。
何も考えられなかった。
(どうしてこんなことに・・・)
ただそれだけが、頭の中を駆け巡る。今朝自宅を出て行ったときの、昭文の笑顔が脳裏に蘇り、胸を痛ませる。
医師の話では死に関わるような怪我ではないということだったが、夏海はもう二度と夫の元気な姿を見られないのではないか、という恐怖を感じていた。
それまでなぜか出てこなかった涙が今頃になって溢れ出し、夏海は嗚咽した。
そのときだった。
「義姉さん」
呼びかける声がした。振り返るとそこには、昭文の弟の礼二がいた。
  1. 2014/07/09(水) 14:35:41|
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夏の生贄 第四章 「義弟」

高島礼二は久しぶりに兄嫁を間近に見て、あらためてその美しさに瞠目した。
ただ容姿が美しいとか、ほっそりとした端正なスタイルをしているというだけではない。内面の清らかさ、純粋さがそのまま外側に浮きでているような女だ。
「礼二さん・・・」
そう言った後で夏海はしばし黙って、礼二を探るように見つめた。
(警戒しているな・・・)
当然だろう。礼二は出来のいい兄の昭文の陰で、放蕩三昧の生活を送ってきた典型的な遊び人だった。数年前にはついに親から勘当を言い渡されている。
その後は遊ぶ金欲しさに、ちょくちょく兄の家へ行き、小遣いを無心してきた。昭文は昔から人の好い性格で、さらに言うならば極めて鷹揚な性格で、不出来な弟に舌打ちしながらも、いつも金を包んでよこした。
礼二はそのとき、昭文の傍らにいた夏海の咎めるような視線を覚えている。潔癖な性格の夏海には、三十近くにもなってまだ金をねだりにくる礼二も、甘やかす昭文も不純なものとして映っていたのだろう。単純に兄一家の経済状況がそれほど余裕のある状態でないこともあっただろうが。
礼二がしつこく兄の家に行ったのは、金欲しさということもあるが、この魅力的な兄嫁の姿を見たいという気持ちもあった。兄の結婚式で初めて会ったときから、礼二は夏海に魂を奪われていた。もちろん、その後の行状の結果、この兄嫁が自分を嫌っていることも承知していたが、それでも数ヶ月に一度はその顔を見なくては収まらなかった。
だがこの半年、礼二は兄の家を訪問していない。自分から連絡もしていないし、兄から連絡がくることもなかった。
夏海が不意に現れた礼二を見て、いぶかしげな表情になったのはそういう経緯からだった。
「実家から兄さんが事故に遭ったと知らせがあって飛んできましたよ。本当に大変なことでしたね」
嘘だった。実家とは絶縁状態で知らせなどくるはずもない。それに実家のほうでは、まだ兄の事故のことなど知りもしないのではないか。
だが、夏海は素直にそれを信じたふうで、礼二に頭を下げて礼を言った。
「それで兄さんの怪我はどの程度のものなんですか」
「お医者様の話では、命に関わるようなことはない、と。当分の間は入院して絶対安静でいなければならないようです」
「そうですか。兄さんも義姉さんも、本当にお気の毒なことです」
礼二は夏海の叙情的な美しい瞳を、真正面から見つめながらそう答えた。
「ところで義姉さんはこれからどうします?」
「いったん自宅に帰ります。晴喜を幼稚園に迎えに行かなくてはならないし。それに病室は面会謝絶になっていますから、ここでわたしが付き添っていてもどうにもなりません」
「それならぼくが義姉さんの家まで車で送りますよ」
夏海は少し考えたようだが、
「ありがとう。お言葉に甘えさせてもらいます」
と、言った。
「じゃあ病院の駐車場へ行きましょう」
「ちょっと待ってください」
そう言うと、夏海は昭文の眠る病室のドアを振り返った。少しうつむきかげんの姿勢で、瞳を瞑っている。おそらくは昭文の回復を、神仏に祈ってでもいるのだろう。
悲嘆に暮れる妻の敬虔な祈り。だが、それを見つめる礼二の視線は邪悪な色に濁っていた。
  1. 2014/07/09(水) 14:36:20|
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夏の生贄 第五章 「妻の心配」

新しい生活が始まっている。夫のいない生活が。
と、いっても夏海の生活自体は大きく変わったわけではない。それまでと同じように、朝になると晴喜を幼稚園に送り出し、あとは家事をしながら日を過ごす。夕方になれば晴喜を幼稚園に迎えに行き、二人で夕食をとる。
ただひとつの変化は、夜になっても夫が帰ってこないことだった。普段は床についてから夫婦で今日一日あったことを話し(その話題の多くは晴喜のことだった。今日の晴喜がどれだけ可愛い顔で笑い、どんなことに熱中していたか、幼稚園の先生の話を交えながら夏海が熱心に話すのを昭文が笑いながら聞いていることが大部分だった)、ときにはその後で夫婦の夜の営みを交わし、幸せな眠りについて明日を迎える。それがどれだけ大事なことだったが、どれだけ自分に毎日を生きる活力を与えていたことか、夏海は思い知った。

夫の昭文とは、三日前にようやく面会することが出来た。
あのときに見た、包帯やギプスに厚くくるまれた状態で病室に横たわる昭文。思い出すだけで胸が痛む。
「大丈夫、大丈夫。すぐによくなるよ」
夏海の心配をよそに、昭文はそう言って笑った。だが、笑っている途中で痛そうに顔をしかめたところを見ると、そんな言葉はただの気休めなのだろう。
傍にいた晴喜は、まだ父親が陥った事態を理解しているはずもなく、ただベッドの上の昭文を見て目を丸くしていた。
「おとうさんがミイラ男になってる!」
「はは、ミイラ男か。それはいいや。おいで、晴喜」
昭文が瞳を細めながら、右手でベッドの脇を弱々しく叩く。玩具を抱えた晴喜は、嬉しそうに父のもとに駆けていった。
それを見ているだけで、夏海は瞳に涙が滲むのを感じた。最近、とみに涙もろくなっている。こんなことではいけない、今はわたしがもっともっとしっかりしていなくてはいけないのに。そう思ってはいるのだが―――。
「駄目よ。安静にしていなくちゃ・・・お医者様も仰ってたわ。少なくとも三ヶ月は入院して、じっとしていなければいけないって」
「三ヶ月! そんな長いこと、このベッドに寝ているなんて、考えただけでもおかしくなるな。絶対にもっと早く、ここから抜け出してやる」
「馬鹿なこと言わないの」
「だって、現実問題、仕事の都合もあるからね。とりあえず刈谷さんに、ぼくがいない間も会社をいつもどおり運営していくようお願いしたんだが、実は来週までに必ず仕上げると契約した家があったんだ。知ってのとおり、うちの会社は人手が少ないし、多くはアルバイトでまかなっていたから、ぼくが抜けたら仕事がちっともはかどらない。たぶん違約金を数十万円払うことになるだろう」
「数十万・・・・」
重い金額だった。ただでさえ、家を新築したことで家計は火の車のなのだ。それに加えて昭文の入院費用、さらにその違約金も重なれば、乏しい家計は決定的な打撃を受けるだろう。
夏海はうつむいて、何も分からずはしゃいでいる晴喜の頭を撫でた。
「そういえば、この前、豊田さんという刑事がぼくに会いにきたよ」
暗くなった空気を追い払うように、昭文が明るい声で言った。
「ああ・・・わたしも前にお会いしたわ」
「今度の轢き逃げは故意にぼくを狙った可能性もあるから、話を聞きたいと言ってたな。たしかに出会い頭に轢かれたという感じではなかったけどねえ。たとえ本当に最初からぼくを狙ったとしても、いったい誰がどんな目的でしたというんだろう」
「心当たりはあるの?」
昭文はベッドの中で肩をすくめて見せた。
「分からない。轢き逃げされるほど、アコギな商売はやってないと思うんだがなあ」
「呑気なことばかり言ってないで、本当に気をつけてよ。もしもあなたが・・・・」
「ぼくが?」
「・・・なんでもないわ」
不意に黙り込んだ夏海を、昭文は優しい目で見つめた。
「あまり深刻に考えすぎないでくれよ。君は昔から根が生真面目だから・・・・」
そう言ったときの、昭文の慈愛に満ちた声音が今も耳に残っている。
しかし―――
どちらかと言えばマイナス思考に傾きがちな自分の性格を自覚してもなお、今度の事態はそれほど楽観的な問題ではない、と夏海は思う。さしあたっては緊迫する家計の問題だ。
どこかへ働きに出よう、と夏海は決意した。晴喜のいない昼の間にパートで働こう。たとえ微々たるお金でも、少しは家計の足しになるだろう。
そんなことを考えていたとき、玄関のチャイムが鳴った。
  1. 2014/07/09(水) 14:37:15|
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夏の生贄 第六章 「罠」

不意の来訪者は礼二だった。
病院での久々の再会から、礼二はしばしば連絡をよこしてきている。最初は警戒していた夏海だったが、自分たち一家を心配する礼二の真摯な様子に、次第に心を許すようになっていた。このような心細いときには、普段は不仲の義弟といえども心配してくれるひとがいるというのは素直にありがたかった。
「今日はどうなさったのですか」
礼二をリビングに通し、自分は台所でコーヒーを沸かしながら夏海は聞いた。
「この前の電話で義姉さんは、働く場所を探したいと言っていたでしょう。ぼくの勤めている会社の関係でそれに関してよさそうな話があったので、お知らせにあがったのです」
夏海は礼二の仕事を知らない。それどころか、礼二がいまはきちんと定職についていると知って、ちょっと意外な気がしたくらいだ。
「・・・・それはどのようなお話なのですか?」
入れたてのコーヒーをテーブルに置きながら、夏海は礼二に聞く。礼二はまず一口、うまそうにコーヒーを啜ってから、ゆっくりと話しだした。
―――礼二の持ってきた話とはある企業の製品開発研究所で、新製品のモニターを務める仕事への誘いだった。その研究所では主婦向けの衣類や様々なグッズを開発しているのだという。
「モニターなんて・・・わたしは流行には疎いですよ。ファッションセンスもないし」
「いや、その研究所ではごく普通の主婦を求めてるんですよ。特別な素養など必要はありません」
礼二は無駄のない言葉で、はきはきと答える。
「・・・・仕事の時間帯はどういった感じなのですか?」
「それなんですがね、義姉さん」
礼二は手に持っていたコーヒーカップを下ろし、義姉の顔を見た。
「たった一ヶ月です。そのかわり、期間中はずっとその研究所で寝泊りしなくてはならないですが」
「それは―――無理ですわ。わたしには晴喜の世話もあります」
「でも、晴喜君の幼稚園はもうすぐ夏休みに入るでしょう。晴喜君はその休みの間にご親戚の方に預かってもらうというのは出来ないのですか?」
「でも・・・父親がいない生活であの子も淋しがっていますし・・・このうえ、わたしとも離れて暮らすとなったら・・・」
「たった一ヶ月の辛抱です。言い忘れていましたが、その期間の労働に支払われる賃金は―――」
礼二が口にした金額は一ヶ月の短期労働としては破格の高賃金だった。
「そんなに・・・。でも新製品のモニターをやるだけなのでしょう? それなのに一ヶ月も泊りこんで働くというのはなぜ?」
「もちろんモニターの仕事がないときには、研究所の宿舎などで掃除や洗濯などの雑用業務に従事してもらうことになります。ですがそれにしたって、この支払いのよさは異例です。こんなチャンスはそう何度もあるものではありませんよ」
夏海は少しの間黙りこんだあとで、「しばらく考える時間をください」と言った。
「分かりました。でも躊躇していられる時間はあまりありませんよ。明後日の夕方四時が期限なので、それまでに必ずお返事を聞かせてください」
それではまた来ます、と言って礼二は去っていった。

礼二が夏海からの電話を受けたのは、その翌日のことであった。
「件のお誘いをお受けしたいと思います」
夏海は先日の迷いを振り切るように、きっぱりとそう言った。
「それはよかった。お役に立ててわたしもうれしいです。今後の日程については、近いうちにまたお知らせしますよ」
電話を切った後で、礼二は傍のソファで煙草をふかしている栢山ににっと笑ってみせた。
「あの海水浴場で見た奥さんだろ。うまくいったのか」
「はい。今後ともよろしくお願いします、と殊勝な声で言ってましたよ」
「あ~あ、可哀相にな。自分がどんな『モニター』をさせられるかも知らないで」
礼二と栢山がいるこのオフィスは、杉浦商事の本社ビルの七階にある。
杉浦商事は表向きには様々なイベントや新製品の企画開発を請け負う会社だったが、裏では他企業への強請りや乗っ取り、非合法な商品の流通・販売を行う、ヤクザの隠れ蓑的会社だった。裏ビデオの製作や数多くの風俗店の経営などその活動は多岐に及び、『社長』の杉浦幹春はこの市の政財界に隠然たる勢力をふるうほどの権力を集めている。
礼二は栢山の向かいのソファに座り、煙草をくわえた。盛大に煙を吐きながら、
「ところで本当に大丈夫なんですかね、寺元とかいうあのマッドサイエンティストは? 今までにも相当問題を起こしてきているんでしょう?」
と栢山に言った。
「まあな。だが藤岡の兄貴によれば、寺元博士が本物の天才であることは間違いないそうだ。専門の深層心理学以外にも、医学、数学、物理学、薬学、化学その他あらゆる学問に通じ、その知識は博学にして多彩。彼が学会で最初に認められだしたころは、百年に一人の天才が現れた、ノーベル賞も夢じゃない、とずいぶんな騒がれ方をしたらしい。だが、その後すぐに研究内容が危なすぎて学会から異端視され、あげくには完全に追放されてしまったがな」
「その研究内容というのが人間の『人格改造』ですか」
「ああ。もっとも博士によれば、自分の学問はそんなものじゃないということらしいが、とにかく研究者たちにはそういう受けとめられ方をされた。我らが会社が寺元博士に期待しているのは、まさにその『人格改造』の実現だからな。あの奥さんはその実験の被験者となるわけだ」
「常識や倫理観を強く持っていて感情も豊か、そして家庭を持っている普通の人間。それが博士の依頼した被験者の条件でしたね」
「俺たちの側からも条件を付け加えたがな。実験の後で別の人間に生まれ変わっても『リサイクル』できるようになるべく美しい女がいい、と。お前が見つけてきたあの奥さんはまさにぴったりというわけだ」
「あの奥さんを罠にかけるために、こちらは兄貴を車で撥ねとばすという危ない橋まで渡っているわけですからね。寺元博士にも頑張ってもらって、早いとこ生まれ変わった奥さんに会いたいですな。もっともそのときには奥さんなんていう上品な呼称の似合わない女になっているんでしょうが」
欲望に瞳をぎらつかせながら、礼二と栢山は顔を見合わせてくつくつと笑った。
  1. 2014/07/09(水) 14:37:57|
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夏の生贄 第七章 「夏の日の出発」

夏海は叔母夫婦に晴喜を一ヶ月間預かってもらうことにした。叔母の陽子は夏海の母親の妹だが、夏海と両親の不和をよく知っていて、子供の頃から夏海を可愛がってくれていた。夏海にとっては、夫以外でもっとも心を許せる相手である。
「でも大変ねえ。夏海ちゃんは外で働いたことがないでしょう。それで一ヶ月の間、休みなしに働くのだもの」
「大丈夫よ、叔母さま。わたしはもう子供じゃないし、こんなときくらい頑張らないと夫に申し訳ないわ」
夏海はそう言って笑った。
(この子は変わったわ)
その顔を見て、陽子は思う。不仲の両親の間で板ばさみになっていたころは、笑っていてもどこか淋しそうな子だった。だが今の夏海の笑みは、成熟した女性らしい穏やかな笑みだった。結婚して子をなしたことが、夏海に自信と安定を与えたのだろう。女性にとって結婚・出産・育児は、それほど大きな意味を持つことなのだ。
(それにとても美しくなった・・・)
子供の頃から美少女ではあったが、それにしても近頃の清楚な色香の漂う美しさは夏海の幼少時代を知る陽子でさえ目を見張るほどだ。普段は夜の床でさぞ夫にかまわれているのだろう、と無意識に考えて陽子は人知れず赤面した。

「ハルちゃん」
夏海は叔母の家の居間で西瓜を頬張っている晴喜に声をかけた。
「もうお母さんは行くわ。しばらく会えないけど、淋しくなったらいつでも電話するのよ。それから叔母さんたちに迷惑をかけないように、行儀よくしてね」
「うん!」
晴喜は夢中で西瓜を食べながら、母の言葉に元気よく答える。といって言葉の内容を十分に理解しているわけではないだろう。何しろ四歳児なのだ。陽気で明るい子ではあったが、一ヶ月もの長い間母に会えないとなれば、そのうちに夏海を恋しがって泣いたり騒いだりすることもあるだろう。その情景を想像しただけで夏海は涙ぐみそうになる。
「じゃあね、ハルちゃん。バイバイ」
「バイバイ」
 夏海は哀切な気持ちでいっぱいになりかけた心に鞭を打って、愛しい我が子のもとを離れた。それでも未練を断ち切れずにすぐに振り返り、西瓜を食べる晴喜の小さな背中をしばらく見つめていたが、やがて早足にその場を駆け去った。

病室の開け放した窓から吹き込む風が、レースのカーテンを揺らしている。窓の外に目をやると、夏の太陽が支配する街並みが見える。
「それにしても、今度の話は礼二が持ってきたんだと君から聞いたときには意外だったよ。
あいつもなかなかいいところがあるんだな」
そう言って昭文は明るく微笑んだ。入院生活も二週間を越え、もとからひとなつこい性格の昭文は医者や看護婦ともすっかり打ち解けている。
「ええ。わたしも礼二さんには感謝しています」
夏海は林檎の皮を果物ナイフで器用に剥きながら、夫の言葉に答えた。
「うん・・・本当によかった。かといってこれから君に苦労をかけてしまうのは、ぼくには本当に心苦しいことなんだが」
「そんなこと言わないで」
夏海はベッドに横たわる昭文の枕元に寄り添った。顔を近づけて、頬にキスをする。
「こんなときには頼るも頼らないもないの。わたしたち夫婦なんだから」
キスの後で夏海は少しはにかんだ微笑を浮かべつつ、優しい口調で夫をたしなめた。
昭文はそんな妻の姿を心から愛しく感じながら、穏やかに笑う。
「そうだね。でもくれぐれも無理だけはしないでくれよ」
「分かったわ、あなた」

病室を出て病院の玄関のロビーへ行くと、そこで礼二が待っていた。
「お待たせしました」
「兄さんは元気そうでしたか」
「だいぶよくなってたけど、まだ少し辛そうね」
夏海はその手に衣類や最小限の持ち物の入った鞄を抱えている。今日これから新たな勤め先である研究所へ向かうことになっていた。
「それでは―――行きましょうか」
夏海はきっぱりした声で礼二を促して歩き出した。その声には夏海の妻としての、また母としての決意がこめられていた。
出発の日。それは夏海と昭文、そして晴喜が本当の意味で家族であった最後の日でもあったことを、そのときの夏海はもちろん知る由もなかった。
  1. 2014/07/09(水) 14:38:38|
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夏の生贄 第八章 「研究のための前準備」

寺元博士の研究所は高島家のある神戸市から車で三、四時間の距離にある、奈良の山奥にあった。ふもとに車を停めた後で、礼二に連れられて山の小さな道を歩いた夏海は、やがて目的の研究所を目にした。
それはもともと杉浦商事の社長、杉浦幹春の私有する別荘を改造したもので、鉄筋コンクリートの小さな四角いビル建築である。白塗りのそのビルの周りには、鉄柵が張り巡らされていた。
人里離れた山深い土地にいかにもそぐわない人工的な建築物である。
(でも、こんな不便な山奥でどうして新製品の開発などするのだろう)
夏海のそんな疑問を感じ取ったのか、礼二は振り返って、
「最近は企業スパイが多くてね。新製品の情報が洩れないように、とうとうこんな場所に研究所を建てたんですよ。でもこれは流石にやりすぎだと思いますがね」
と、囁くように言った。
それから礼二は研究所の鉄の門の前に立ち、インターフォンを押した。
「はい」
男の声が出る。
「先日ご連絡した第二課の高島礼二です。例の女性をお連れしました」
「お待ちしていました。どうぞ」
しばらくして、門がゆっくりと開いた。向こう側には誰もいない。研究所の中から電動で開け閉めが出来るようだ。
礼二と夏海は門をくぐった。

「ようこそ、いらっしゃいました。私が当研究所の責任担当者の寺元恭次です」
あらゆる感情がまったく欠けた、少し耳障りな金属質の声―――。
夏海は「こちらこそ、よろしくお願いいたします」と丁重に挨拶を返しながら、なぜか背筋が寒気立つような思いに囚われていた。
目の前には寺元博士が座っている。年齢は四十も半ばを過ぎたくらいだろうか。声と同じく、無機質で生気を感じさせない風貌の男だった。汚れがまるで見当たらない真っ白な白衣を着ていて、少し長めの髪を七三にぴっちり撫でつけている。黒ぶち眼鏡をかけているが、その奥に炯炯と光る瞳は視線の先にいる夏海に恐怖の念を起こさせるほど、異様な迫力を湛えていた。鼻は彫刻刀で彫ったように高く、鋭い。
 寺元博士の隣には博士のアメリカ人の妻、クリスティがこれも白衣を着て座っている。年齢は博士と同じくらいだろう。美しい女だった。かがやくブロンドの髪をショートにまとめている。
「お会いできてうれしいわ。わたしたちの研究所にはあと四人の所員がいるけれど、皆、男性なの。あなたのような素敵な女性のお友達が出来てとてもうれしい」
クリスティはにこやかに笑いながら、流暢な日本語でそう言った。
「わたしもうれしいですわ、奥さま」
「クリスティと呼んで。わたしもあなたのことは夏海、と呼ばせてもらうわ」
「わかりました。これからよろしくお願いしますね・・・クリスティ」
「そうそう」
楽しそうにクリスティは笑った。

「それでは、ぼくはもうそろそろ帰ります。義姉さん、一ヶ月の長丁場ですけど、くれぐれも身体に気をつけて頑張ってください」
そう言って礼二が去った後で、博士夫妻は夏海を彼女のために用意された部屋へ案内した。研究所は三階建てでそのうち一階は所員たちの研究用の施設、二階は住居部分で、三階は寺元博士個人の研究室となっている。夏海の部屋はほかの所員たちと同じく二階にあった。狭い空間にベッドと物書き用の机だけのごく簡素な部屋である。
荷物を部屋へ置いた後で、夏海は二階の食堂へ行った。ここで所員たちは日に三回、皆で集まって食事をとる。
食堂ではクリスティがお茶の用意をしていた。夏海が手伝おうとすると、「いいから座っていて」と言う。食堂の席に戻ると博士が座っていた。夏海は軽く会釈をして、同じテーブルに座った。
クリスティがお茶を持ってくる。
「それにしても殺風景な部屋でごめんなさいね」
「いえ、そんなことはありませんわ。皆さんが寝食を惜しんで、熱心に研究に打ち込んでいらっしゃるご様子が伝わってきます」
「ふふふ。そんなおおげさなことでもないのよ」
笑うクリスティの隣で、寺元博士は黙ってお茶を啜っている。

「・・・ここでのわたしのお仕事は、どのような予定で進んでいくのでしょうか?」
しばらく三人で話した後(といっても口を開いたのは夏海とクリスティだけで博士は一言も喋らずに、じっと夏海の顔を見つめていた。その度に夏海は息が詰まるような思いを味わって、顔をうつむけずにはいられなかった)、夏海は遠慮がちに尋ねた。この研究所に来て以来、博士もクリスティも、夏海の今後の具体的な仕事内容をまったく説明しようとしていないのだ。
夏海の問いに、クリスティはなぜか黙り込んだ。黙って夫の顔を見る。
「仕事ですか」
博士が口を開いた。
それだけで部屋の空気が変わる。
博士の異様な凄みを持った眼光が、夏海を射抜いた。その瞳を見返すだけで、夏海は眩暈がしそうな気になる。
―――いや、気のせいではなかったのだ。
(え・・・・・?)
そのとき夏海の視界の中で、世界がぐにゃりと折れ曲がった。
「あ・・・・」
嘘のように夏海の身体から力が抜けていく。胸の奥から不快な感触が沸き起こってきて、ぞわぞわと夏海を犯していく。全身ががくがくと激しく震える。
すぐに身体を支えていられなくなり、夏海は崩れ落ちるように目の前のテーブルに突っ伏した。
そんな夏海の様子を博士夫妻は静かに見下ろしている。
「茶に仕込んだ薬が効いてきたようだな」
「ええ。なかなか効き目が現れないので、配分を間違えたのかと思いましたよ」
博士とクリスティの声が、きーんという耳鳴りの音に混ざりながら夏海の頭に響く。
(これは・・・どういうこと・・・!?)
ぐったりとなりながら、夏海は弱々しく博士の顔を見上げる。感情の読み取れないその顔に、心の底から恐怖を覚えながら。
まぶたひとつ動かさずに、博士は口を開いた。
「仕事の話が聞きたいと言ったね。貴女の仕事はわたしの研究の手伝いをすることだ。ただし、それは新しく開発された製品の感想を述べるといった無意味な作業ではない。もっと簡単で、かつ貴女にとっても有益な仕事だ。詳しいことはゆくゆく分かってくるはずだがね・・・・」
博士は一度言葉を切り、改めて夏海を足の先から頭までゆっくり眺めわたす。その視線はまぎれもなく、実験動物を目の前にした研究者のものだった。
「とりあえずの貴女の仕事は、自らのすべてをわたしに委ねること。それだけだ。あらかじめ伝えておくが、あと三分もしたら貴女は意識を失う。その後でわたしと家内は貴女を裸にしてその肉体の特徴を細かく記録することになる。髪の毛の性質から肌の具合、首筋から背中にかけての骨格の張り出し方、胸や尻の肉付き、女性器の構造、さらにはクリトリスの大きさ―――これは平常時と勃起時の両方で計測するが―――まで、ありとあらゆることを観察させてもらう。その後、きみが意識を取り戻した後で、今度は精神活動の方面の観察に入っていくことになるが、これはなかなか時間がかかるだろうから、きみにも気長に付き合ってもらうことになろう」
何を言っているのか、まるで分からない―――。
この男は正気じゃない―――。
底知れない恐怖に駆られ、夏海はパニックになりながら、食堂の入り口へ向かおうとする。しかし、薬物を投与された身体は本人の意思を裏切って、すぐに床に崩れ落ちてしまう。
(逃げなきゃ・・・逃げなきゃ・・・・)
頭の中でそう繰り返すものの、もう身体はぴくりとも動かせない。
(どうしてこんなことに・・・・)
自分の身に突然襲い掛かった夢魔のような出来事に、夏海の現実感は跡形もなく消え去ってしまっていた。
「諦めるのだね。少なくとも一月はここから出られはしない。いざここを出るときには、きみは新しい自分と生活を手に入れていることだろう」
鉄槌のような博士の言葉が終わらないうちに、夏海はもう意識を失っていた。
  1. 2014/07/09(水) 14:39:30|
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夏の生贄 第九章 「データの収集」

開け放した病室の窓から、心地よい夏の風が入ってくる。
子供の歓声が近くで聞こえる。病院のすぐ脇にある市民球場では、今日も少年野球チームが汗だくになりながら、快活に白球を追いかけている。
その練習風景を、高島昭文は病室の窓から眺めていた。
「またベッドから出て・・・ちゃんと寝てなきゃ駄目ですよ」
病室に入ってきた看護婦の由紀子が、苦笑しながら昭文をたしなめた。
「ごめんごめん。でも寝てばっかりだと身体もなまるし、なにより退屈でしょうがないんでね」
昭文はひとなつこい表情で、由紀子に微笑み返す。
「まったくもう・・・。そう言えば、今日はあの美人の奥さまはお見えにならないの? 噂を聞きつけて内科の本島先生まで高島さんの奥さまを一目見たいと言ってるわ」
「なんだい、それ。病院も暇だねえ」
由紀子の言葉に、昭文は苦笑いした。
「残念ながら当分の間は来ないけど、夏海に伝えとくよ」
「そうそう、夏海さんだったわね。でもなんで夏海さんは当分いらっしゃらないの?」
「働きはじめたのさ。ぼくがこんな状態だし、家計もあまりよくないからね」
「そう。大変ね」
いつも明るい昭文の表情にふっと陰がさしたのを見て、由紀子もしんみりした声になった。
「いや、働くことは夏海にとってもいい経験になるだろうからね。いつもいつも家庭にいて、子供と見飽きた亭主の顔を見ているより楽しいかもしれない」
暗くなった空気を振り払うように、昭文はまたいつものおどけた口調で言う。
「また、そんなことを言って・・・少しは真面目に出来ないんですか」
「はは・・・・」

寺元博士の研究室―――。
様々な機材や書物などが所狭しと並べられている部屋の中心に、病院で使うようなベッドが据え付けられている。
その上に意識を失った夏海が寝かせられていた。健やかな寝息をたてながら、夏海は深い眠りに陥っている。
「始めよう」
博士の指示でクリスティが、夏海の衣服を脱がせにかかった。
上半身の白いシャツのボタンが解かれ、夏海のすべすべとした滑らかな肌が次第にあらわになっていく。やがてシャツは剥ぎ取られ、その下に付けていたピンクのブラジャーのホックにクリスティは手をかけた。
「可愛い・・・」
呟きながら、クリスティはブラジャーを外し、夏海の上半身を裸にした。
「ふむ。美しい乳房をしているな」
はじめて夫以外の異性の目に晒された、小ぶりだが形のよい乳房を見て、博士がそんな感想を洩らした。
「ええ。形も崩れていないし。自然で健康そうだわ。うらやましい」
うっとりとした瞳で、クリスティも相槌を打つ。
「乳輪が小さいな。乳首もまるで子供のようだ。一児の母というのは本当か」
「あまり旦那さまに可愛がられていなかったのかしら。そんなことはないわよね。こんなに綺麗な身体をしてるのに」
クリスティは陶然とした表情で、夏海の剥きだしの乳房に手を伸ばす。慎ましい人妻が服の下に隠していた宝玉。そのまろやかな手触りを楽しみながら、握り締めたお椀型の乳房をやわやわと揉みしだく。
「ん・・・・・」
無意識状態の夏海が切なそうに顔をゆがめ、色っぽい吐息を洩らした。
「ふふふ。寝ながら感じてるわ」
「いいかげんにしろ。それよりも早く裸にして、夏海の肉体データを収集するのだ」
寺元博士は相も変わらず血の通わない声で、夏海を玩弄して楽しむ妻をせかした。
  1. 2014/07/09(水) 14:40:10|
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夏の生贄 第十章 「夢」

寺元博士の理論では、個人の人格などというものは、まったく不確定で問題とするに値しないものである。
多重人格という精神の病理がある。一人の人間に複数の人格が宿り、それが交互に表に表れてくるというものだ。巷間信じられているように人格が確固不動のものならば、なぜ複数の人格が同時に並立して存在できるというのだろう。
一人の人間の奥底には、一つの宇宙といってもいい広大な世界が広がっている。人格はその中に浮かんでいる惑星のひとつに過ぎない。我々が普段自分の人格と受けとめているものを地球とすると、我々はその地球を飛び立ってみてはじめて、それまでいた場所がただのちっぽけな惑星に過ぎなかったことに気づくことが出来るのだ。
それはともかく我々が個性と呼ぶものは、そんな脆弱な土壌の上で成り立っている。寺元博士はそんなものを認めない。一人の人間の個性は肉体にこそ現れる。
―――そして今、博士は高島夏海という一女性の個性の極みを観察している。
夏海はすでに全裸である。その両足は大きく広げられた格好で膝を立てさせられている。夏海の意識はいまだ回復していない。無防備に自身の肉体のすべてを博士夫妻の目に晒したまま、深い眠りについている。
「それにしても夏海のここは綺麗ね。とても子供を産んだとは思えないわ。花びらも美しいピンク色だし」
かがみこんで夏海の股間をまじまじと見つめていたクリスティが嘆声を洩らす。
「うわつきというやつだな。大きさも標準より小さめだ」
「日本人は全体に小造りだけど、たしかに夏海のカントは小ぶりだわ。ペニスが挿入されたときはきついでしょうね。男にとっては気持ちいいでしょうけど」
「女も同じじゃないかね」
「ふふふ。そうね、でも」
クリスティは医療用のピンセットを手にとって、夏海の女性器に息づくクリトリスを摘まみあげる。ピンセットがそれに触れた瞬間、夏海が、
「あ・・・・」
と小さく声をあげた。
「クリトリスは標準より大きめね。それに感度もよさそうだわ」
摘まみあげたそれを見つめながら、クリスティは淫蕩な笑みを洩らした。
「見て。もうこんなに勃起しているわ。あらあら、乳首のほうも勃ってきちゃったわね。この子、おとなしそうな顔をして、意外と好きなほうなのかもしれないわ」
「おしゃべりはそこまでだ。さっさとデータを取るぞ」


・・・夏海はプールの中で立っている。
目の前では晴喜が浮き輪につかまって、水浴びを楽しんでいた。その顔は本当に楽しそうで見ているだけで心が和む。
「本当にハルくんは水が好きね」
夏海も泳ぐのは好きだった。昭文と結婚してからは毎年、海へ泳ぎに出かけている。
その昭文はビデオカメラを取りに車へ戻ったまま、なかなか戻ってこない。
(遅いわね・・・)
そう思って夏海が駐車場のほうを振り向いた、そのときだった。
晴喜の悲鳴が聞こえた。
「ハルくん!?」
振り返ると、そこに晴喜の姿はなかった。ただ浮き輪だけがぷかぷかと浮かんでいる。
「ハルくん、どこ!? どこにいるの!」
動揺のあまり、夏海は大声でそう叫びながら、周囲をばちゃばちゃと探し回る。水に潜って息子の姿を捜し求めるが、どこにもいない。
「ハルくん!!」
夏海は恐怖に背筋を凍らせて、消えてしまった我が子の名を力のかぎりに呼んだ。

夏海は絶叫とともに目を覚ました。
(夢だったの・・・よかった)
心からの安堵とともに夏海がようやくそのことを悟ったときも、まだ脈は異常に早いままだった。瞳に涙が滲んでいる。身体中にびっしょりと汗を―――
夏海はどきりとした。
彼女は全裸でベッドに横たわっていた。
「お目覚めのようね。もの凄いうなされかただったから心配したわよ」
不意に声がして夏海がそのほうを見ると、クリスティが部屋の隅に座っていた。
「ここは・・・?」
「貴女の部屋よ」
  1. 2014/07/09(水) 14:41:18|
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夏の生贄 第十一章 「闇の中へ」

裸の胸と股間を両手で必死に隠しながら睨みつけてくる夏海を面白そうに眺めつつ、クリスティはゆっくりと近づいてきた。
「そんなに隠しても無駄よ。夏海が寝ている間に、身体のほうの検査は済ませておいたわ。胸もお尻もヴァギナの中まですっかり見せてもらったわよ」
その言葉に夏海の顔がさっと紅潮する。
クリスティは悪戯な表情で夏海を見つめた。
「本当に綺麗な身体ね。とても来年三十歳を迎えるとは思えないくらい、おっぱいもお尻もぷりぷりしててとても若々しいの。うらやましくなっちゃう」
「こんなこと・・・」
夏海は拳をぎゅっと握り締めた。
「こんなことして・・・許されると思っているの?」
「許すも何も夏海が警察へでも訴えないかぎり、こんなこと問題にもならないわよ」
「わたしは訴えるわ!」
「そう。ここを出るときまで、その決意が続けばいいわね。さ、お夕食の時間よ。この服に着替えなさい」
そう言ってクリスティは下着と白のシャツ、そして同じく白のスカートを渡した。
「わたしの荷物はどこ? あの中に着替えが」
「あの荷物は夏海がここを出るときまでわたしたちが預かっておくわ」
「何を言ってるの・・・!? 早く返して!」
「聞き分けのない子ねえ。そうだわ、あなたの荷物に携帯電話があったわね」
クリスティは酷薄な笑みを浮かべた。
「いい考えが浮かんだわ。さっきわたしたちが撮った夏海の恥ずかしいところの写真を、その携帯に転送しましょう。そうしたら夏海のお知り合いの方たち全員に、その写真を見てもらえるわね」
「・・・あなた、正気じゃないわ」
「うふふ。あなたのご両親だって、娘のあそこの写真なんて見たことないでしょうから、ご両親にもきちんと送ってあげるわね。『あなたたちの娘はこんなに立派に大人の身体になって、毎日夫とのセックスに励んでいます。ご心配はいりません』なんてね。どう? 本当にそうしてほしいの?」
「・・・・・」
夏海は下唇をきゅっと噛んだ。あまりにも理不尽な言葉に、夏海は燃えたぎるような屈辱と怒りを感じている。出来ることならこの場で目の前の女の頬を引っぱたいてやりたかったが、暴力とは無縁の世界で生きてきた女の悲しさで結局は手を出すことが出来ない。ただただ瞳に怒りをこめてクリスティを睨みつけるのみだ。
「写真を送ってほしくないなら、さっさと着替えなさい。あと十五分もしたら食堂で夕食よ」

クリスティの用意した白づくめの衣装に着替え、夏海が食堂へ行ったのはそれから三十分後だった。食堂にはすでに博士を除く研究所の所員全員が座っていた。彼らは少し怯えた顔で食堂に入ってきた夏海を無関心な目で見た。
「こちらが前に話した夏海さん。今日から研究所で働くことになったの」
クリスティがそう言うと、所員たちはひとりづつ自分の名前を言い、それから「よろしくお願いします」と言った。それ以上のことを話すものは誰もいなかった。彼らのあまりの生気のなさは研究所の異様な雰囲気のなかではしごく正常なものであるのかもしれない。だが、「異邦人」の夏海の目には、彼らは明らかに「異常」な人々だった。
「博士はどうしたの? わたしは彼に話があります」
夕食がはじまってしばらく経った頃、夏海はクリスティにそう言った。
「とりあえず食べなさいよ。あなた、一口も食べてないじゃない」
「いりません。わたしは今日中にここを出ます。博士に話をつけてくるわ。彼はどこ?」
「そんなに急がなくても、博士は夕食後にあなたに研究室へ来るようにと言っていたわよ」
夏海はそれを聞いて、無言で立ち上がった。食堂から出て行く夏海を、残りの所員たちは誰一人見ようともしなかった。

三階の研究室のドアをノックする。すぐに、
「お入り」
という博士の声がした。
ドアを開けると、博士は部屋の机でパソコンを開いていた。
「お話があります」
「そこにかけたまえ」
博士が指差した椅子に腰掛けようとした夏海は、博士のパソコン画面に映し出されているグロテスクな女性器のアップ画像に一瞬ぎょっとした。すぐにその画像が自分の局部を映したものであると悟り、夏海はあまりの恥辱と怒りで我を忘れた。
「いいかげんにしてください! 薬を飲ませてひとのそんな写真を撮るなんて・・・あなたたちには常識というものがないの!」
「ほう。性器の画像を見ただけで、それが自分のものと分かるのか? 夏海はそんなに自分のアレを見慣れているのかね」
「はぐらかさないで・・・・この件についての処罰は、いつか必ずあなたたちに受けさせるわ。とりあえず、わたしをこの研究所から出しなさい。今すぐによ」
「君の労働期間はあと三十日も残っているはずだがね。契約書にサインしたのだろう」
「・・・そんなの無効だわ」
そう言いながら、夏海は別の思いにとらわれていた。そもそもこの話を自分に持ってきた礼二への疑いだ。礼二の言っていた今回の仕事の話はすべてが嘘だった。モニターが聞いて呆れる。現実にモニターをしているのは向こうで、こちらはやって来た途端に理不尽な「吟味」をされたのだ。
「礼二さんもグルだったのね・・・。あなたたちが皆で共謀してわたしを・・・。なぜ?
 永久にわたしをここから出さない気なの? あなたのイカれた研究のために?」
「一度に複数の質問をするのはよしたほうがいい。とりあえず二つ目の質問答えよう。きみは一ヵ月後にはここから出ていく。それだけは保証する」
「いやよ・・・わたしは今すぐここから出て行くわ。夫や子供が待っている場所に帰るの」
博士夫妻への怒り、裏切った礼二への怒り、そして今現在自分が置かれている状況に対する不安で、夏海はなかばパニックになりながら子供のようにいやいやと首を振った。
「夫や子供か。彼らがそんなに大切なのかね」
「当たり前でしょ・・・、でもあなたのような人には分からないかもしれないわね」
「ふむ。それではわたしもひとつ話をしよう。きみにとっては少々不愉快な話になるだろうが」
博士はその作り物めいた瞳を、まっすぐに夏海に向けた。
「きみの夫の高島忠明氏は少し前に轢き逃げ事故に遭ったね。大事には至らなかったが、肋骨二本と右腕を折るという大怪我を負った」
「・・・・・・・」
夏海は不可解極まりないものを見る目で、博士を見つめ返す。
「じつはその轢き逃げ犯は礼二くんなのだ。きみをこの研究所に送り込むために、杉浦商事の幹部が指示したのだよ。きみは知らなかったかもしれないが、あそこは相当荒っぽいことも平気でやるようなヤクザ企業なのだ。本当は昭文氏はあそこで轢き殺されてもおかしくなかったのだよ。さすがに肉親だけあって礼二くんも手加減したのだろうか、ともかくも幸運だったな」
まったく抑揚のない口調で事実を告げた後、博士は黙って夏海の表情を観察する。
博士の言葉があまりにも唐突で、夏海は最初はその意味が分からなかったらしい。瞳を大きく見開いて、ぽかんとした表情である。
「あの事故・・・・」
呟く。
それからすぐに夏海の顔が―――
歪んだ。
「あああああ!!」
何やら獣のうなり声じみた叫びをあげながら、夏海は椅子から飛び出すように立ち上がり、博士のシャツの胸元を掴んだ。激しく泣き叫びながら、その細腕で力のかぎり博士を揺さぶる。
「殺してやる・・・殺してやる・・・」
暴れ狂う夏海になんとか抵抗しながら、博士は部屋のブザーを押した。すぐにドアが開き、数人の所員たちが駆けつけてきて、夏海を押さえつける。
「やれやれ・・・身体が若々しいだけでなく、力も強いのだな」
そう独りごちながら博士は立ち上がり、備え付けの戸棚から薬瓶と注射器を取って戻ってきた。
注射器の針をを薬瓶に差し込み、中の薬液をたっぷりと抽出しながら、博士は夏海の顔を冷酷な瞳で見つめる。
夏海は所員たちに取り押さえられながら、まだ荒い息をついている。注射器を見ても、博士を睨む瞳の力の強さはいっこうに衰えない。思ったよりも強い女だ、と博士は思う。これは取り組みがいのある実験になろう。
「また薬を使う気? でもわたしは負けない・・・あなたたちみたいな連中に負けるものですか。ぜったいにここから出てやる。そしてあなたたちの犯罪行為を世間に知らしめてやるわ!」
「がんばりたまえ」
夏海の言葉を軽くいなして、博士は注射器の針をその細腕に近づける。ぶすりと注射針が白肌を突き破り、薬液を夏海の身体に容赦なく注入していく。
・・・すべてが終わり、夏海は呆気なく深い眠りに堕ちていった。
その寝顔に残る涙の後を指でなぞりながら、寺元博士は久しぶりに心から楽しそうな顔でわらった。
  1. 2014/07/09(水) 14:42:08|
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夏の生贄 第十二章 「記憶」

研究所に夏海を残して去ったのち、礼二は夜も眠れない日々を過ごしていた。
礼二は寺元博士が具体的にどのような「改変」を夏海の精神に施しているのか、知らない。だからこそ妄想は無限に膨らみ、礼二の眠りを夜毎に妨げるのだ。
そして二週間後。礼二は再び研究所の門をくぐった。
一階の応接室でしばらく待たされた後、礼二は博士の研究室に通された。
部屋には何に使うのか分からない無数の機材や膨大な資料で溢れていたが、そのどれもがきちんと整理され、ほこりひとつ見当たらない。
「凄い部屋ですね」
礼二が言うと、博士はにこりともせずにうなずいた。
「今日は何をしに来たのかね」
「ちょっと、義姉さん・・・例の女性の様子が気にかかっていまして」
「夏海か・・・、研究は順調に進んでいる。安心したまえ」
「具体的にどのようなことをしているのですか?」
「夏海にはあの日以来、催眠薬を日常的に射ち、常に深い催眠状態にあるように精神誘導している。そうした状態の夏海と日々対話し、彼女の人間性――笑止極まりない言葉だが――の理解に努めているのだ。精神の改変にはまず被験者の精神の奥底までもを知らなくてはならないからな。最近ではそうした深い催眠状態が、夏海にとっての常態となっている。ゆえに意識が本来の状態に覚醒し始めると、夫や子供のことを考えたりして、かえって様々な現実の不安が洪水のように襲ってくるようだ。この前などは夜遅くに自らわたしのもとへやって来て、早くいつもの薬を射ってほしいと涙まで流して懇願したよ」
「まるで麻薬中毒の患者ですね。危険はないんですか?」
「わたしは医者でもあるのだよ。可愛い患者の身体を危険に晒すような真似はしないさ」
博士はうっすらと凍りつくような笑みを浮かべた。
「つい最近の夏海との対話を記録した画像がこのパソコンに入っている。しばらく待ちたまえ。きみに見せてやろう」

パソコンの画面に画像が映し出された。
礼二にとっては二週間ぶりの義姉の姿がそこにあった。白のシャツに白のスカートを履いた奇妙ないでたちで椅子に座っている。
だが、何より衝撃的だったのは画面のなかの義姉の表情だ。きらきらと輝くようだった瞳はまったく生彩をなくし、まるで夢の中にいるようなとろんとした表情になっている。夏海の全身からいつも醸し出されていた凛とした雰囲気はその影すら残っていない。
「夏海」
画面の中で博士が呼びかける。夏海はきょとんとした表情で、呼びかけた声のほうを見た。
「そろそろいつものお喋りを始めよう。昨日は夏海が子供の頃から両親を嫌っていたという話を聞かせてもらったっけな。それでは、今日もその話をもう少し詳しく聞かせてもらおうか」
「はい」
夏海は素直にそう返事した。その口調はいつものはきはきしたそれではなく、まるで幼子のようにあどけない感じだった。
「昨日の話では夏海のお母さんは浮気性で家に帰らないお父さんへのあてつけで、次第に自分も他の男との浮気にはしるようになっていった。そうだったね?」
「そうよ。知らない男を家にまで連れてきて、わたしの前でもベタベタしてたわ。わたしはそんな母が本当に嫌だった。毎日学校が終わってからも家に帰るのが嫌で、遅くまで図書室なんかで時間を潰していたわ」
催眠状態にある夏海は聞かれたことに対してなんら躊躇することなく、すらすらと答えていく。たとえ質問者があれほど憎んだ博士であっても。
「きみが家に帰りたくなかった理由はそれだけかい? 他にも何か原因があったんじゃないのかね? たとえば母の浮気相手の男たちの誰かに身体を触られたとか」
「そんなことはなかったわ・・・・いつもいやらしい目で見られていたけど。わたしが家に帰りたくなかったのは・・・」
夏海は戸惑った表情でうつむいた。やがて、
「見てしまったから」
ぽつりと言った。
「何をだね?」
「母と浮気相手が・・・セックスをしているところ」
夏海の顔にはっきりと苦痛の色が現れた。いまの夏海の告白は夫の昭文にさえしていないものだった。誰にも言えはしなかった、夏海のもっとも辛い記憶である。
「それはきみがいくつのときだ?」
「十三歳のとき。わたしは中学生になりたてだった・・・。ある日、わたしは具合がわるくなって学校を早退したの。それでいつもより早くに家に帰ったら・・・」
「お母さんと浮気相手がセックスに耽っていたわけか。そのときお母さんはどのような格好で男を受け入れていたのだね? 正常位、それとも騎乗位かな?」
「騎乗位・・・・。母はすごく興奮していて、甲高い声をあげていたわ。わたし、そのころはまだセックスを知らなかったの。でも、母がわたしにまったく気づきもせず、夢中になって男にまたがって腰を振っているのを見て、もの凄くどきどきして・・・とても嫌な気分になったわ。見てはいけないものを見てしまったと思ったの。でも」
「でも、なんだね?」
「男―――渡辺という名前の男だったけど―――渡辺はわたしが襖のかげから見ていることに途中で気づいたの。わたしのほうを見て、ぎょっとしたような顔になった。わたしもびっくりして逃げ出そうと思ったけど、腰が抜けてみたいで身体がちっとも動かなくて・・・。
渡辺のほうはすぐに落ち着きを取り戻したようだった。それどころかわたしに向かってニヤニヤ笑いかけた後、もっと力をこめて母を貫きだしたの。渡辺が腰を動かすたびに、母は蕩けたようになって悦びの声を出していた・・・・」
そこまで言ったとき、夏海の瞳から涙がぽろぽろと零れだした。
「そんなお母さんの姿を見て以来、夏海はなるべく遅く家に帰るようになったのだね」
「そう」
  1. 2014/07/09(水) 14:42:49|
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夏の生贄 第十三章 「心の内側」

画面の中では異様な対話が続けられている。
博士が聞く。
「お母さんのそんな姿を見てしまったことは、きみのセックスに対する考え方に何か影響を及ぼしたと思うかね?」
「セックスというものに嫌悪感を持ったわ。男性に対しても。大きくなるにつれて何人かの男性に声をかけられたり、誘われたりしたこともあったけど、どうしても心を開くことが出来なかった」
「夫の昭文さんとはどこで?」
「彼は大学で入ったサークルの先輩だったわ。明るくてかっこよくて、皆から好かれてた。わたしも憧れてたわ。でも、わたしは皆から男嫌いだと思われてたし、自分でもそう思っていたから、彼にうまく声をかけることも出来なかった。それで一人でいじいじして、子供みたいに拗ねて・・・・、だから彼が『好きだ』と言ってくれたときは本当に嬉しくて、思わず泣いてしまったくらい」
夏海はそのときのことを思い出したのか、瞳に幸福そうな色を浮かべてかすかに微笑んだ。
そんな義姉の姿を画面越しに熱心に見つめていた礼二は、今更ながら兄の昭文に対して灼けるような嫉妬を感じた。
そんな礼二の想いとは無関係に対話はつづく。
「そうして結ばれた彼と初めて一夜をともにしたのはいつ?」
「付き合って一年くらいした頃」
「きみは処女だった?」
「そう。だから、そのときはもうこわくてこわくて。でも怯えるわたしに彼は優しくしてくれて・・・・それでやっとできたの」
「その後は彼と頻繁にセックスを?」
「そんなでもなかったけど・・・処女でなくなってからも、セックスはちょっと苦手だった。彼としてて気持ちよくないとか、そんなことじゃなくて・・・、セックスの最中にあのときの母の姿が浮かんでくることがよくあって・・・。自分もあんなふうにいやらしい、はしたない姿になったらどうしようと思ってしまうの。わたしも母の娘だから、そういう血をひいているから・・・」
「自分も淫乱な女になる可能性があると思っていたのか?」
「そうかもしれない。だからわたし、どんなに気持ちよくなっても、絶対に声を出したりしなかった」
「行為の最中でも声を出すのをこらえてた?」
「そう。彼にはもっとリラックスしたらいいのに、とよく言われていたけど、どうしてもダメで。・・・今はだいぶリラックスできるようになったけど」
「いまは彼との行為は週に何回くらい?」
「週に二回くらいかしら」
「彼はきみとのセックスについてどんな感想を持っていると思うか?」
「・・・彼が満足しているかどうかはわからない。時々不安になるけど・・・。彼はよくわたしの身体について誉めてくれるわ。でも・・・」
「でも?」
「彼に昔、『夏海のクリトリスは大きめで、凄く感度もいい』と言われたときには、ちょっと落ち込んだわ。他の女性と比べられたのがイヤということもあるけど、何より自分の身体のそんな部分がひとより大きいということが気になって・・・母のことも頭にあって、わたしの身体もあんなふうに淫らに出来ているんじゃないかって・・・」
「それ以来、クリトリスの大きさが夏海のコンプレックスになった?」
「そう。ほかのひとのものなんて見たことないから、分からないけど」
「わたしも一度、夏海のクリトリスを見せてもらったことがあったな」
「どうだった? ひとより大きい?」
催眠状態にあるとはいえ、あまりにも無邪気に心配気な声で聞いてくる夏海に、画面の中で博士は笑った。
「そうだな。たしかに大きめだった」
「やっぱり・・・・」
「だが、それはよいことなのだよ。ご主人も誉めてくれたのだろう? 大きな、感じやすいクリトリスを持っていることは恥ずかしいことではないし、むしろ女性にとっても男性にとっても喜ばしいことなのだよ」
「・・・・ほんとに?」
「本当だとも。よく言うだろう、大きいことはいいことだとね」
「・・・・・」
黙って何か考えている様子の夏海に、博士は促す。
「言ってみなさい。大きいことはいいことだ」
「・・・大きいことはいいことだ」
博士の言葉を呪文のように繰り返し、夏海は―――
にこっと笑った。
それを見て礼二は眩暈がしそうだった。とてもこれが現実にあったことだとは信じられなかった。


そこで博士はパソコンの画像を止めた。振り返って礼二を見る。
「どうだったね?」
「いや、驚きました。あのシャイな義姉がここまで自分のことを、しかも夫とのセックスのことまで話すなんてね。催眠とは凄いものですね」
「彼女はついこの間まで、わたしのことを激しく憎んでいたのだよ。殺してやる、とまで言われたくらいだ。ふふふ」
「・・・・・」
「そうそう、彼女はきみのことも憎んでいるぞ。きみに騙されたと知ったうえ、きみが昭文氏を轢いたこともわたしが告げたからな」
「どうしてそれを・・・彼女に!」
礼二は声を荒げた。自分で画策して夏海をいまの状況下に置いたとはいえ、心底惚れこんでいる女なのだ。「憎まれている」と聞いていい気はしない。
「心配するな。愛憎という言葉があるだろう。愛と憎しみは表裏一体。それこそ感情の回路を少しいじっただけで、両者は逆転する。さっきの画像がその証拠だ。安心したまえ、きみにわるいようにはしない。それどころか、わたしはきみに素晴らしいご褒美をあげることになろう」
意味深な言葉を吐きながら、博士は立ち上がって隣室のドアを開けた。
  1. 2014/07/09(水) 14:43:34|
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夏の生贄 第十四章 「供物」

「少しの間、ここで待っていたまえ」
博士は礼二にそう言って、隣室に入っていく。ドアは開けたままだ。
礼二は中をそっと覗き見る。
夏海がいた。全裸でベッドに横たわっている。
剥きだしの両手は頭上で、両足は少し開いた格好で金属製の強固な器具で固定されていた。さらに首筋から顎にかけても金属のマスクのようなもので固定されており、これでは夏海は頭を少し動かすことも出来ない。
そのように固定された夏海のこめかみの両方に、直径五センチほどの円盤型電磁器のようなものが貼り付けられている。その電磁器は細い銅線でベッドの脇にある長方形の黒い装置につながっていた。その装置のモニター画面には円グラフが映し出されており、絶えずその形を変化させている。
あの装置はいったい何のためのものなのか―――。
科学知識に乏しい礼二だったが、博士が自身の開発した装置を使って行っている得体の知れない「実験」を目の当たりにして、おぞましい予感を感じずにはいられない。
再び、ベッドの上の義姉の姿に目を移す。
ピンで刺し留められた美しい蝶―――。
礼二はいまの夏海の姿を見て、そんなイメージを抱いた。
それにしてもその蝶はなんと蟲惑的な身体をしていることだろう。
決して大きくはないが、椀形の綺麗な乳房。はっとするほど白く、肌理の細かい薄肌の下に、細い血管が透けているのが生々しい。その真っ白な丘の上に、若々しい桜色の小さな乳首がちょこんとのっている。
夏海の呼吸に合わせて穏やかに隆起するその乳房の下で、滑らかな線を描く白肌が室内灯の光を柔らかく弾いていた。
さらに下に目をやると、少し開き気味にされた両足の付け根に、萌え出たばかりの若草といった趣の淡い恥毛が輝いているのが見える。夏海の気性そのままの上品な生えぶりを示すその若草の中心がそっと割れていて、その中から清らかな薄桃色の花園がのぞいている。
礼二はごくりと息を呑む。初めて目の当たりにした義姉の肢体はあまりにも美しく、あまりにも無垢な清らかさを保っていた。とても人妻とは思えない、この清廉な処女雪のごとき肢体をたった一人で占有していた男がいるのだ。その男が兄の昭文だということが、いまこの場でも礼二により狂気じみた嫉妬の感情を呼び起こした。
子供の頃から出来のいい兄の影で、比較されて惨めな思いになるのはいつも礼二だった。そのことにひねくれ、歪んではより深く堕ちていく礼二を尻目に、昭文はさっさと一流の大学へ行き、極上の妻をもらい、幸せな家庭を築いていった。
礼二が兄の昭文を轢く、という乱暴極まりない命令を上司から受け、素直にそれを実行したのも、子供の頃から積もりに積もった兄へのコンプレックスの噴出だったのかもしれない。
そして今、兄のもっとも大切なもの、もっとも愛する女が、自分の目の前で無防備な姿を晒している。
様々に捻じれた感情の波に揺られながら、礼二はどろどろと濁った欲望で満たされていく。

博士は夏海の傍らに近寄り、彼女の顔の下半分を覆うマスクとこめかみの装置を外した。
「苦しくなかったかね?」
「はい。ああ、でも変な気持ち・・・」
夏海は妙に締まりのない、ゆるい口調でうめくようにそう答えた。
「それでいい。きみは徐々に変化を遂げているのだ。蛹のなかにいる蝶の気分を今のうちに味わっておきたまえ」
博士はそう言った後で、ちらりと礼二のほうを見た。
「夏海。今日はきみにお客さんがいるのだ。―――入ってきたまえ」
博士の言葉に促されて礼二は部屋の中へ歩み寄った。
「だれ・・・・?」
夏海はまだ頭がはっきりしないのか、ベッドに固定されたままの全裸を恥ずかしがる様子もなく、とろんとした視線で礼二を見つめた。
礼二の鼓動が高鳴る。
「あ・・・・」
夏海はかすかに声をあげた。
「ああ・・・・」
夏海の顔つきがゆっくり変わっていく。幻覚の中を彷徨っているようだった瞳に、感情の炎が揺らめきはじめた。
不意に夏海は弾かれたように身体を起こそうとした。が、四肢をきつく固定された身体はびくともしない。それでも夏海は頭を狂ったように振り回して、ベッドから抜け出ようとする。
礼二はそんな夏海の反応の物凄さに完全に気圧された。
博士が夏海の顎を右手で掴んだ。そして言う。
「暴れるんじゃない、夏海。ただの礼二くんじゃないか」
「離して・・・このひとは悪魔よ・・・・何の罪もないわたしの主人を傷つけた男・・・それで何食わぬ顔でわたしをだました男よ・・・・ぜったいに許さない・・・!」
「やれやれ、まだ早かったか」
言いながら博士は注射器を取り出し、夏海の左腕に素早く針を突き刺した。
「あうう・・・・ゆるさない・・・わたしは、わたしは」
薬物が久しぶりに蘇った夏海の生気を急速に奪っていく。それでも夏海は弱々しく身体をよじりながら、うわごとのように怨嗟の言葉を吐いている。
博士が今度は黒いアイマスクを取り出し、夏海の両の瞳を覆った。
「あ・・・・」
先ほどとは違う声音で、夏海が小さく声をあげた。
「落ち着いてきたかね。さあ、いつものお楽しみの時間だよ」
博士は視力を奪われた夏海の耳元で妖しく囁きかける。
「部屋の明かりは消えた。もうすぐ夏海の大好きな旦那さまが、ベッドへとやってくる。ほら、もう入り込んできたようだよ」
「あう・・・・ああ、あなた・・・昭文さん」
礼二は耳を疑った。さきほどまであれほど自分を憎み、罵っていた夏海が、不意に甘い声で夫の名を呼んだのだ。
博士は夏海の四肢を固定していた金属の器具をすべて外した。
「いつものように旦那さまをたっぷりと悦ばせてあげたまえ。もちろん、きみも誰に気兼ねすることもなく、快楽に耽るがいい。恥ずかしがることは何もない。きみたちは夫婦なのだから」
博士は夏海の四肢を固定していた金属の器具をすべて外した。
「ああ・・・・あなた、うれしい」
夏海は幸福そうな笑みを口元に浮かべながら、まるで本当に誰かにのしかかられているかのように肢体をのけぞらせた。
「あ、ああ・・・・・んんっ」
「ひっ・・・そこはいや・・・舐めちゃいや」
一人でベッドに横たわりながら夏海はくねくねと身体を蠢かせ、時折、嬌声をあげている。
揺れ動く乳房の上で、桜色の乳首がぽつんと勃起しているのが見えた。
「あ、あ、ああん、いい・・・あなた・・・・」
呆然と夏海の痴態を眺めている礼二に、博士が近寄ってきた。
「どうだ、いい眺めだろう」
「博士、これは・・・・?」
「ふふふ。夏海はいま幻の中で、夫との夜の営みに耽っている。ここ最近は毎日、この実験を行っているから、そろそろアイマスクを付けただけで反応するようになってきた。条件づけは完璧だな」
「こんなことも出来るのですか・・・凄いものですね」
「最初は夏海もここまで声をあげたり、身体を動かしたりなどということはなかった。あの子にとっては、セックスはひとつのトラウマに近いものだからな。わたしが熱心に『治療』をしてやったおかげで、やっと自由に性の快楽を心から楽しめるまでになったのだ。
さしずめわたしは、彼女のセックスカウンセラーというところだな」
ブラックな冗談を吐いて、博士は薄く笑った。
「ふふふ、そろそろ本番が始まるようだよ」
ベッドの上では夏海が両足をカエルのように広げていた。空想の夫のペニスを迎え入れているのだ。
「んんん・・・・」
切ない声で夏海が啼いた。
「どうだね、夏海。ご主人のものは?」
ベッドの中で大きく股を広げ、腰を蠢かせている夏海に博士はまた近寄り、その耳元で囁きかける。
「あ、あん、おっきい、すごくいい・・・・きもちいい」
「それならもっと激しく腰を動かして、ご主人を悦ばせてあげなさい。夏海ならもっともっと激しく出来るはずだよ。ご主人を愛しているのだろう?」
「あ、愛してる、あ、あはぁん、ひっ、ひっ」
幻のペニスを喰い締め、子宮深くまで受け入れながら、夏海は激しく腰を使う。張りのある乳房がぷるんぷるんと揺れ、滑らかな腹が隆起する。うっすらとかいた汗で夏海の肌はぬめ光っている。
「あうう、あ、あんっ、も、もう」
細く高く啼きながら、夏海は頭を右左に揺すって絶頂の近いことを知らせた。
「いきそうなのだな。いくときは力いっぱい大きな声をあげるのだ。そのほうがご主人も悦ぶ」
博士は悪魔じみた笑みを浮かべた。
「―――さあ、自分を解放するのだ、夏海」
「んあああっ、い、いくぅ、あなた、いきますっ、あ、あ、あ」
いっちゃうっ、と最後に一声高く啼いて、夏海の身体がぶるぶると激しく痙攣した。

「今日の夏海は最高のオルガスムを迎えたようだな」
博士は礼二のもとへ行き、そう囁いたが、不意に苦笑いの表情になった。
「なんだ。きみまでいってしまったのかね」
礼二は顔を真っ赤にした。激しく恋焦がれてきた義姉の、あまりにも扇情的な痴態を目の前にして、礼二はズボンの中で射精してしまったのだった。
「夏海は気持ちよさそうに眠っているよ。気をやった後は、いつもすぐに眠くなってしまうのだそうだ。子供のような女だな」
博士はそれから真面目な顔になって、礼二のほうに向き直った。
「あと三週間も経てば、彼女を完全に作り変えられるだろう。その最後の仕上げはきみの力を借りることになる。いずれまた来てもらうことになろう」
「それは・・・どういうことですか?」
「時が来れば分かる」
博士はベッドに視線を移した。礼二もつられてそのほうを見た。
ベッドでは夏海が絶頂の後で弛緩した肢体を晒したまま、すやすやと寝入っている。
礼二にはそんな義姉の姿が、祭壇に捧げられた供物のように見えた。
「もうすぐ彼女は生まれ変わる。そのときを楽しみに待っていたまえ」
博士は呟くように言った。
その言葉に、礼二は今更ながら背筋に冷たい寒気が走るのを感じた。
  1. 2014/07/09(水) 14:44:27|
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夏の生贄 第十五章 「Call」

夢の中で、夏海はいつものようにプールの中に立っている。
晴喜は消えてしまった。プールには誰もいない。
カメラを取りに行った夫も戻ってこない。
夏海は途方に暮れてプールから上がろうとするが、どれだけ歩いても陸には辿りつけない。
涙はとうに枯れ果てている。それでも夏海はのろのろと歩きだす。
歩きながら思い出している。あれは去年の夏だったか。昭文とひどく口論になったことがあった。
結婚した後も夏海は依然として、両親と疎遠であった。晴喜が生まれてからは特に、父母は夏海と親子関係の修復がしたいと言ってきていた。だが、夏海はそんな気にはなれなかった。今でも両親を許せなかった。
情に厚く、親戚関係などはことに大切にする昭文には、夏海の両親と疎遠になっていることは気がかりであったようだ。それまでも度々、自分も協力するからもう少しだけ両親に歩み寄ってはどうかと夏海を諭していた。
その日の昭文はことさら熱心だった。だが、いくらなだめてもすかしても夏海が言うことを聞こうとしないので、さすがに昭文も呆れ顔になって、
「なんできみはそう頑固なんだ。ご両親だってかなりの年なんだし、きみや孫の晴喜の顔をもっと頻繁に見たいという気持ちを察してやれよ。それくらいの優しさがあってもいいじゃないか」
夏海は何も言わなかった。黙って昭文に背を向け、台所に行きかけた。
「逃げるなよ!」
昭文のいつになく厳しい声が飛んだ。
夏海は胸がかっと熱くなった。振り返って、昭文を睨みつける。
「いい加減にして! わたしと両親との問題はあなたとは関係ないわ」
「関係なくはない。きみはぼくの妻で、ご両親は義理でもぼくの親だ」
「・・・知らない、そんなこと」
「何を子供みたいなことを・・・もっと大人になれよ」
夏海は昭文を睨みつけたままで、硬直していた。
心底、口惜しかった。知ったようなことを言う昭文が憎くてたまらなかった。
瞳が燃えるように熱い。そう思ったとき、涙がぽろぽろと零れ落ちてきた。
「あなたには分からないわ・・・・わたしの気持ちなんて」
そう言い捨てて、夏海は振り返った。そのまま玄関へ向かう。
「勝手にしろ!」
昭文の怒声が後ろで聞こえた。
家を出ると、外は曇り空だった。昂ぶった気持ちを抱えたまま、行く当てもなく歩き出したとき、後ろから晴喜が追いついてきた。滅多にない両親の喧嘩を怯えながら聞いていた晴喜は、母が不意に家を飛び出したのを見て、心配でたまらなくなったのだ。
「おかあさん・・・」
いつもにこにこと笑っている晴喜の泣きそうな表情を見て、夏海もまたたまらない気持ちになった。手をつなぎ、二人で泣きながら歩いた。道行くひとが何事かと好奇の目を注いできたが、夏海はそれでも立ち止まらず歩いた。
途中で雨が降ってきて、二人は商家の軒先で雨粒をしのいだ。
もう夕暮れの時刻である。辺りは徐々に暗くなってきていた。心細くなったのか、晴喜が夏海の手をぎゅっと握った。そんな幼い我が子の姿があまりにも可哀相で、夏海はかがんで晴喜をぎゅっと抱きしめた。
雨のしとしと降る音と晴喜の胸の鼓動が混ざり合って聞こえる。初夏だというのに、夏海は自分たちがマッチ売りの少女になったような気がした。
「かえろ・・・ね、おかあさん。もうかえろうよ」
晴喜が細い声で言う。夏海はただ黙ってうなずいた。新しい涙がまたその頬をつたっていた。
濡れ鼠になって家に帰り着くと、昭文が玄関の外で立って待っていた。
「風呂は沸かしてあるから、まず入ってきなさい」
うつむく夏海に、昭文はまずそう言った。それから小さく、「ごめん」と―――。
夏海は無言で家に入った。何も言えなかった。

―――プールを歩きながら、夏海はそのときのことを考えている。
わずかな時間だったが、それでもまだ消えない胸の痛み。愛するひととでも、分かり合えないことがあると知った哀しさ。
孤独。
―――もういやだ。
生まれてからずっと孤独な思いを味わってきた。また一人になるくらいなら、死んだほうがましだ。
枯れ果てたと思っていた涙がまた滲み出てきて、夏海の視界をぼかす。切なくて切なくて、夏海はいつしか駆け出している。
「昭文さん・・・・晴喜・・・・!」
走りながら、夏海は声のかぎりに夫と子の名を叫んだ。いつまでも、いつまでも叫びつづけた。


「この子、泣いているわ」
クリスティが呟く。その視線の先には、夏海が横たわっている。
視覚、聴覚、嗅覚のすべてを器具で封じられた状態で、夏海は今までよりも深い眠りについている。もう一週間も眠ったままだ。
睡眠の間にも博士の『治療』は続けられている。そのカリキュラムもほとんどが終了し、残りはあとわずかとなっている。
「家族を失う夢でも見ているのだろう」
博士がぽつりと言う。
「そうなのかしら」
「・・・もうすぐ夏海の記憶はすべて消去される。そのときには夫のことも子のことも、その名前すら思い出せなくなるのだ。哀しみを感じることもなくなる」
博士はむしろ陶然とした口調で言った。
「その日が夏海の新しい誕生日となるのだ」


晴喜はふと目を覚ました。
母がいなくなってからも、晴喜は母を恋しがって泣くこともなく元気に遊びまわっていた。もう近所に友達も数人出来たようで、晴喜を預かる夏海の叔母陽子は晴喜のわんぱくぶりに手を焼きながらも、これなら心配いらないと胸を撫でおろしていた。
その日も晴喜は朝から近くの公園へ行って、友達と鬼ごっこやかくれんぼに精を出し、帰ってきてからは座敷で昼寝していた。

目を覚ました後、晴喜はぼんやりと辺りを見回した。
「おかあさん」
そう呼んでから、いまは母がいないことを幼い頭で思い出した。
おかあさんはどこに行っているんだっけ?
考えていると、不意に鼻の奥がつんとなった。なぜだか哀しい気持ちが、胸のうちでどんどん大きくなる。母の優しい声が聞きたくてたまらなくなる。
「おかあさん・・・・」
もう一度、そう呼びかけた。そのうちに晴喜の瞳にみるみる涙の珠が盛り上がってきた。
「あら、ハルちゃん、どうしたの?」
ちょうど様子を見に来た陽子はそんな晴喜の姿を見て驚き、駆け寄ってなだめたが、晴喜は容易に泣き止まず、ただただ母の名前を呼び続けていた。
  1. 2014/07/09(水) 14:45:17|
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夏の生贄 第十六章 「目覚め」

目覚めた瞬間から、哀しい気持ちでいっぱいのときがある。
寝ている間に自分が世界にただ一人取り残されてしまったような、奇妙な喪失感――。
その日、研究室のベッドで久々に覚醒した夏海も、そんな気分だった。
何か哀しい夢でも見ていたのだろうか。
こんなことは初めてではない。夏海は漠然とそう思う。今までにもこんな瞬間は、何回もあった気がする。気がするだけで、それがいつだったかは思い出せない。何も思い出せない
なんだか、とても不安になった。誰かの姿を探して、夏海はベッドから出て隣室に向かう。裸のままだったが、気にならなかった。
寺元博士がいた。いつものようにパソコンに向かっている。
「やあ、目覚めたのか。気分はどうだね?」
夏海に気づくと、博士は振り返ってそう言った。
「とても変な気分。すごく哀しいの。どうしてか分からないけれど」
「そうかね。じきに落ち着くだろう」
博士は内線の受話器を取り上げた。
「熱い紅茶を持ってきてくれ」

やがてクリスティが紅茶の入ったポットを持って現れ、それから三人は博士の研究室でささやかなお茶会を開いた。もっとも、テーブルを囲む一人は裸の女性なのだから、普通に見れば異常な光景なのだが、博士もクリスティもそんなことには微塵も気を取られていないようだった。
夏海の意識にも羞恥の感情はなかった。温かいアールグレイを啜っているうちに、先ほどの哀しい気持ちは薄れていき、平穏が再び彼女の心を満たした。
「きみががんばってくれたおかげで、わたしの研究もかなりの進捗をみることができたようだ。ありがとう」
博士が珍しく穏やかな口調で、笑みすら浮かべながらねぎらいの言葉を述べるのを、夏海はきょとんとした表情で見た。
「わたしは何もしていないわ」
「そんなことはない」
「でも」
「感謝の言葉は素直に受けるものよ、夏海」
夏海の傍らに座っていたクリスティが口を挟む。そしてにっこり笑いながら、夏海の手を取る。
「わたしもとても感謝しているわ。だから、あなたにお礼をあげたいと思うの」
クリスティは悪戯に微笑んで、博士を見た。博士がうなづくと、クリスティは着ていたセーターを脱ぎ捨て、ブラジャーも取った。
突然目の前に現れた白く豊かな乳房に、夏海は驚きながらその視線を釘付けにされた。
「きみは生まれ変わったのだ、夏海」
神官が託宣の言葉を告げるように、博士はなめらかに言う。
「これからは思うがままに生の喜びを受け取り、何に縛られることもなく自由に生きられるのだよ」
博士の落ち着いた言葉が、夏海の精神をゆっくりとさらっていく。
「きょうがきみの誕生日だ。さあ、遠慮することなく、母の乳房に吸い付くがいい。それはきみの当然持つべき権利なのだから」
夏海は目の前に開陳された乳房を見つめている。
クリスティの胸にずっしりと実り、ぶらさがっている豊かな果肉。その先端では大きな乳輪が、生々しい芳香を放っている。
とても魅力的だった。
夏海はおずおずと上目遣いにクリスティを見た。
「いいのよ」
クリスティの優しげな言葉に誘われて、夏海はそろそろと右腕を伸ばして乳房に触れた。その肌の温かみを掌に感じながら、ゆっくりと乳房を握り締めていく。ずっしりとした肉の感触が、なぜか夏海の気分を高揚させる。
何かに憑かれたように、夏海は乳房の先端に顔を寄せていった。そのまま赤黒い乳首を口に含む。
母の味がした。
「ん・・・・・」
夢中で乳首に吸い付き、しゃぶる。
その瞬間、夏海は幼子に還っていた。
「そんなにがっつかなくても大丈夫よ。これからはあなたが望むときに、好きなだけ吸わせてあげるわ」
夏海を見下ろしながら、クリスティが歌うように言う。
博士はそんな二人の姿を見て、満足そうな笑みを浮かべた。
  1. 2014/07/09(水) 14:45:58|
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夏の生贄 第十七章 「リセット」

「TVゲームをやったことはあるかね」
その日、二週間ぶりに研究室を訪れた礼二は、会ったそばから博士にそんな質問を受けた。
「学生の時分はずいぶんやりましたが・・・それが何か?」
戸惑いながら礼二は答える。
「じつはわたしも昔、TVゲームに熱中したことがあるのだよ。といっても、最初にファミコンが出たくらいのときだがね」
「それは意外ですね」
「わたしはロールプレイングゲームが好きだったな。いまはどうだか知らないが、当時のゲームのコンピュータはいい加減なものでね。カセットに少しの衝撃を与えただけで、記録されたデータが消えてしまうのだ」
博士は虚空を見ながら、抑揚のない口調で続ける。
「すると次にゲームを開始したときに、画面にメッセージが現れる。『あなたのデータは消滅しました』とね。しょせんくだらない暇つぶしと分かっていても、いや、それが分かっているからこそ、そんなときにはむなしい気持ちになるものだ。今まで自分がそれに費やした時間がまったくの無駄になってしまうのだからね」
博士はそこで言葉を切って、コーヒーを啜った。
「だが、わたしはそのむなしい感覚が好きだったな。せっせと時間をかけて造ったものの、不意の風にあっという間に崩れ去っていく砂の城のような、あのうんざりする気分がね」
あれから義姉はどうなっただろう―――そればかり考えて眠れない日々を過ごしてきた礼二に、いまこの場で聞く意図の読めない博士の言葉は苛立ちしか呼ばない。その気持ちを隠すように、礼二はうつむいてコーヒーを啜った。
そんな礼二の姿を見て、博士は薄く笑った。そして短く言う。
「夏海の砂の城はわたしが崩してやった」
礼二は一瞬かたまった。
「それは・・・どういうことですか?」
「夏海の記憶をすべて消したのだ。彼女の脳は過去の記憶に関するデータのすべてが消えた。夫や子の姿ももはやない。いまや彼女自身が一人の大きな子供に還っている」
「何も―――記憶は残っていないのですか?」
「もちろん言語や身体の記憶とも言うべき基礎的な生活習慣のようなものは残っているが、精神の記憶は消滅した。リセットだ。本来ならこれからわたしが新たな記憶や価値観を夏海の脳に上書きしていき、彼女の新しい人格を形作ってやるのだが、きみたちとの契約期間は一ヶ月でもはや間がない。ゆえにその役目はきみに託す」
博士は奥深い深淵を感じさせる瞳で、礼二を見つめ返した。
「きみを彼女の価値観の最上位に置いてやる。これからはきみが彼女にとっての絶対主になるのだ」

博士とともに部屋へ入った礼二は、義姉の外見上の変貌にまず息を呑んだ。
かつて義姉の頭を美しく飾っていた艶やかな黒髪。それが影も形もなくなっていた。
「体毛は眉を残してすべて剃った」
博士は淡々と語る。
「儀式のようなものだ。幼子に還った夏海に擬似的なイニシエーションを経験させるのだ」
博士の言葉はまるで分からなかったが、礼二は眼前で眠りについている義姉の姿に目を奪われている。
すべての記憶を奪われ、頭髪や股間の繊毛すらも剃り取られてしまった義姉。形のよい頭を小坊主のように丸められているのに、その肢体は女らしい優美な曲線を描き、裸の胸や尻には肉の谷間が魅惑的な陰影をつくっている。無毛となった股間は、童女のようにすべやかな肌を晒し、中心には深い切れ込みがはしっていた。
しかし―――
礼二は驚嘆する。すべてを失ってもなお、義姉はあまりに美しかった。
もともと無垢な雰囲気を持ち、透明な少女っぽさのような不思議な魅力を漂わせていた義姉だったが、眼前の無惨ともいえる変形を強いられた姿は、その変形ゆえにいっそう清らかさ、無垢さを増していた。その美しさはもはやこの世のものではないような気がした。
自らがここまで追い込んだ義姉の凄絶な姿を目にして、しかし礼二は激しく欲情した。
「クリスティ」
夏海の傍らに座っているクリスティに博士が呼びかけると、彼女はうなづいて夏海を揺さぶった。
「起きなさい。きょうはあなたの大切な日なのよ」
  1. 2014/07/09(水) 14:46:48|
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夏の生贄 第十八章 「破瓜」

クリスティに揺り起こされ、ようやく瞳を開けた夏海は醒めきらない意識のまま、ぼんやりと上体を起こした。
醒めきらない意識? いや、そうではないのかもしれない。夏海がいま感情のこもらないぼやっとした表情なのは、眠気のためではなく、博士の施した精神改造で記憶をすべて抹消されたからなのかもしれない。疑うことを知らない犬のようなあの無垢な瞳は赤子のものだ。
その赤子の瞳がゆっくりと動き、はじめて礼二と目が合った。そのときだった。それまでまさに動物のように感情のなかった瞳に、さっと怯えのようなものがはしった。
「いや・・・・」
「どうしたの? 夏海」
クリスティが優しく呼びかける。
「いや、あのひと・・・こわい。きらい」
そう言ってぶるぶると震えながら、夏海は両手で顔を覆った。
「おやおや、これは驚いた。以前の記憶は完全に消去したと思っていたが、きみのことはまだ意識の片隅にひっかかっていたようだ」
驚いた、とは言いながら態度には少しもそんな様子は表さずに博士はつぶやいた。それから礼二を見てにやりと笑う。
「夫や子供のことももう覚えていないというのに。ふふふ、きみもたいした嫌われ方をしていたようだな」
義姉の豹変を呆気に取られて見ていた礼二は、嘲るような口調の博士の言葉にかっとなった。怒りで身体が震えた。
自分がはじめて心底から惚れこんだ女―――。
顔を見るだけで気分が浮き立ち、嫌われていると知りながらも惨めな思いを抱えて会いにいかずにはいられなかった女―――。
その女がすべてを失った哀れな姿を晒しながら、それでもなお自分を嫌悪し、顔を背けている―――。
憎かった。殺してやりたいと思うほど憎かった。
礼二はもう一度博士の顔を見た。博士はうなずいて言った。
「行きたまえ。きみが彼女を女にするのだ」

溢れかえる愛憎の念を抱え、凄惨極まる表情の礼二が近寄ってきたのを見て、夏海は震え上がった。必死でベッドから身を起こし、逃げようとしたところをクリスティに押さえつけられた。
「駄目よ。言ったでしょ、きょうはあなたが破瓜を迎える日。あのひとにあなたの処女を貰っていただくの」
擬似的なイニシエーション―――。
先ほど博士が言った言葉を礼二は思い出す。そのなかに破瓜の体験も含まれていたのか。新しく生まれ変わった夏海が礼二とのまぐわいであらためて処女を失うことも、博士のプログラムに組み込まれていたのか。
だが、礼二にとってはそんなことはもはやどうでもよかった。
いまはただ、眼前にいるこの哀れな、美しい生き物を思いのかぎり凌辱し、自分のなかに積もりに積もった愛憎の念を叩きつけてやることしか礼二の頭にはなかった。
ベッドに上がりこみ、じたばたともがく義姉ににじり寄る。
睨みつけながら、その乳房を右手でぎゅっと掴んだ。夏海はひっと悲鳴をあげた。礼二は乳房を握る手にますます力をこめる。
柔らかい餅のような肌の奥に、たしかに息づく温かい血潮の感触。この女は生きている。礼二はそう感じる。これは夢幻などではない。この女は生きて、ここにいる。
今度こそおれのものだ。
「いたい・・・いたい!」
強く乳房を握りつぶされて悲鳴をあげている夏海の唇を、その肢体にのしかかった礼二が強引に奪う。
異形の処女貫通儀式が始まった。

高島昭文は読み飽きた本を投げ出して、また病室のベッドに身を沈めた。
まったくいつになったらここを抜け出せるのか。呑気にいつまでも寝ていられるような状況ではないのに。
きょうは昼間に夏海の叔母の陽子が見舞いに訪れた。彼女の話では、最近、晴喜は母の夏海を恋しがって泣いてばかりいるらしい。一、二度困りきって夏海の携帯に電話したが、つながらなかったという。折り返しの電話もなかったというから、夏海はいま電波の通じない場所にいるのだろうか。それにしても電話の一度もないのはおかしい、と陽子は話した。昭文のところにも夏海からの連絡はまだ一度もない。
陽子が帰ってから、楽天家の昭文もさすがに心配になって、弟の礼二に渡された連絡先に電話をしてみた。電話に出た礼二の上司だという男は、礼二は仕事の用件で二、三日留守にしていると言った。
いまこうしてただ寝転びながら、病室の天井を眺めていると、思い出されてくるのは妻のことばかりだった。
結婚してから五年ほどたつが、一ヶ月もの間、お互いの顔を見なかったことなどかつてなかったことだ。夏海は大丈夫だろうか。おとなしげな顔に似ず、頑固で不器用で意地っ張り、些細なことにも傷つきやすい繊細な女だった。大学時代からの付き合いだが、いまでは夏海のことならたいていのことは分かる。頑なに拒否されながら、昭文があれほど夏海と彼女の両親との仲を修復しようとしたのも、夏海が心の底では両親の愛情に飢えていることを知っていたからだった。
子供が出来てからは、夏海は少し変わった。少々甘すぎると思えるくらい、息子にたっぷりと愛情を注いだ。あたかも自分にはなかった幸福な幼少時代を晴喜には存分に味合わせてやろうとしているかのように。
そんな夏海の姿は昭文にとって愛しくもあり、痛々しくもあった。
―――あいつだけは不幸にしたくない。
昭文は今まで何回も思ったことを、また心の中で繰り返す。
そのためにも自分が頑張らなくては。
眠りに誘い込まれながら、昭文は安らいでゆく身体に逆らうように、心にそう鞭をくれていた。
  1. 2014/07/09(水) 14:47:31|
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夏の生贄 第十九章 「征服」

寺元博士の研究室はいま、普段の静謐な雰囲気とはかけ離れた生臭い肉の祭典が行われている。
部屋の中央に置かれたベッドで、裸の男と女が睦みあっているのだ。
いや、それは睦みあうなどというような和やかな単語の似合う光景ではない。
猛り立つ欲望を思うさま女体にぶつける男の姿は、まさに獣だ。体中にびっしょりとかいた汗をふり飛ばしながら、女の美しい白肌を舐めまわし、乳房を揉みしだきながら、そそり立つ肉柱を女の優しい口元に強引に突き入れているその様は、凶暴というよりもいっそ凄惨であった。
男の荒々しい行為を受けている女のほうも、最初は嫌がって泣きわめいていたが、もはや涙も枯れ果てた態で、なされるがままに肢体を嬲られ、口中を荒らされている。
男女二人の赤裸々な性行為を、少し離れた場所で博士は冷徹に見守っている。
男―――高島礼二が、女の口に突き入れていた肉棒を抜き取ると、兄嫁―――かつては兄嫁であった女をどんと突き飛ばした。女―――夏海はベッドに叩きつけられ、仰向けに倒れこむ。礼二はその細腰を両手でつかむと、夏海をうつぶせの格好にして、柔尻を抱え上げ、自分のもとに引き寄せた。
「やめて・・・・」
夏海がか弱い声を上げて、抵抗の姿勢を見せる。たった一ヶ月足らずで、それまでのささやかな人生でようやく掴み取った幸せのすべてを根こそぎ奪われつくした女。その彼女がうるみきった哀れな瞳で、礼二を見つめている。しかし昂ぶりきった礼二には、その哀れさすら「ひたすら続けろ」というサインでしかない。
染みひとつない清らかな尻を自らの腰に引きつけると、礼二は後ろからずぶりと夏海の陰部に怒張を捻じこんだ。
「あうう」
夏海が苦しげな声をあげて、眉根を寄せた。かまわず礼二は激しく腰を動かして、長年積もりに積もった欲望の塊を、夏海の女の源泉に打ちつける。腰と腰が激しく衝突する度に、夏海の桃尻がばこんばこんと軽快な音を立てる。
「よかったわねえ、夏海。これであなたも一人前の女よ」
自分のセリフのおかしさに自ら笑いながら、クリスティがうつぶせた夏海の顎をくいっと持ち上げた。夏海は額にびっしりと汗をかきながら、はっはっと荒い息をついている。礼二が怒張を打ち込むたびに、その切れ長の瞳が切なげに細められ、鼻から熱い息がふきこぼれる。
「ふふふ、あなたもまんざらでもない気分みたいね。色っぽい表情をしているわ」
ハンカチで顔の汗をふき取ってやりながら、クリスティが冗談っぽく言う。
「ああ・・・いやぁ・・・・」
顔を激しく揺さぶって儚げな抵抗をする夏海。その様に欲望を掻き立てられた礼二がことさら激しい一突きを尻にくれる。
「あんんっ」
悲鳴なのか喘ぎ声なのか分からない声を上げ、夏海はのけぞった。その姿は傷ついた小鳥のように可憐で弱々しく、それゆえに男の嗜虐心をそそってやまなかった。
「あっ、あっ、あっ、おかしくなる・・・ダメッ」
誰に向かって言っているのか、夏海はしきりに「ダメ、ダメ」と訴えながら、くねくねと肢体を揺すって身悶えている。
「駄目じゃないのよ。もっともっと悦びなさい。好きなだけ声を出したらいいわ。恥ずかしいことなんて何もないのよ」
行為の最中で礼二は肉棒を抜き取ると、今度は夏海を仰向けにした。その細やかな足を両手で掴み、大きく開かせる。
夫の昭文以外には、いや、その昭文ですらこれほどはっきり見たことはないであろう、夏海の股間に隠された秘密の場所が衆目に晒される。礼二の荒々しい行為に、しかし快感のツボを刺激されたそこはしっとりと潤み、めくりだされた端整な肉の花びらは生々しい芳香を放っている。
「ほうら、見て。夏海のクリトリス、大きいでしょ。ここをいじられるとすぐに気持ちよくなって、いきそうになるのよ」
クリスティの言葉に誘われるように、礼二は広げきった夏海の股間に顔を埋めていき、ぴんと勃起したピンクの肉粒を舌でざらりと舐めた。
「ひぃっ」
電撃のように走った快感に、夏海の腰がびくっと跳ねる。礼二はとり憑かれたように愛らしいクリトリスを口に含み、舌でしゃぶり、唇できつくしごきたてた。
「はああ~ダメぇ、そこはダメぇ!」
「うふふ、可愛い。ほんとに夏海はここが弱いわねえ」
からかいながらクリスティは、汗をかいたお椀型の乳房をやわやわと揉みしだき、勃起した小さな乳首を指先でころころとまさぐっている。
「ふああ、へんなのぉっ、あ、あ、あ、へんになっちゃう、たすけて!」
「そろそろみたいね」
呟いて、クリスティはそっと身を離した。
陰部から顔を離して、礼二も夏海を見つめた。汗と鼻水で汚れたその表情は、あどけない子供が突然沸き起こった災難に混乱して、助けを求めているようだ。そんな稚い表情とは裏腹に、股間の付け根ではぱっくりと開いた女陰が、生々しい赤肉が濡れ濡れとぬめ輝いている。
その開いた女陰に礼二は再び指を入れた。膣襞をまさぐり、しこりきったクリトリスをこりこりと揉み潰す。
「あ、あ、あ」
途端に流し込まれる快楽に、夏海の顔が再び切なく歪む。形のいい唇によだれがだらしなく垂れおちる。
「お前はおれの女だ」
礼二はどすの効いた声で言った。怯えた夏海の瞳が大きく見開き、礼二の顔を見つめる。
「分かったな」
またクリトリスを強く、握りつぶす。「ひい~っ」と甲高く啼いて、夏海はがくがくとうなずいた。
―――やった・・・。
―――ついに・・・、
―――ついにこの女をおれのものにした。
入道雲のように沸きあがってくる達成感を噛み締めながら、礼二は夏海の腰を引き掴み、自らの股間に乗せあげた。
「あはあっ」
再び子宮に侵入してきた野太い肉塊に、夏海が切なげな声を洩らす。
それからはもう滅茶苦茶だった。自分の身体にまたがらせた夏海を、礼二は思うさまに揺さぶりたて、繋がったままでさんざんに躍らせ、気をやらせまくった。
「いくっ―――あ、またいくぅっ」
「も、も、ダメェッ―――いっちゃうっ」
何度も絶頂に押し上げられながら、夏海もいつしか愉悦の波にひき攫われ、自分から腰を揺さぶりたて、礼二の唇を求めては『初めて』経験する喜悦の行為に沈み込んでいった。
そんな夏海の姿を寺元博士は深沈とした表情で静かに見つめていた。
  1. 2014/07/09(水) 14:48:19|
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夏の生贄 第二十章 「不穏な旅立ち」

新しく生まれ変わった夏海の「破瓜」から三日後、礼二は再び博士の研究所を訪れた。
夏海が研究所に入ってちょうど一ヶ月がたっている。夏海を引き取りにやってきた礼二を、その日は珍しく博士がじきじきに出迎えた。
「わたしの研究もだいぶはかどったよ。これもきみがいい素材を連れてきてくれたおかげだな」
博士はそう言って笑った。
しばらく待っているとクリスティが夏海を連れてきた。夏海はここにやってきたときに身に着けていた服装で、剃られた頭髪を隠すように白い帽子をかぶっていたが、それ以外はまったく以前と変わらないように見えた。
だが、礼二は知っている。いま眼前に立っているのはかつての高島夏海という女ではない、まったく別の人間だ。
やや不安げな表情で歩いてきた夏海は、礼二の顔を見ると、ぱっとクリスティの背後に隠れた。
「何をはにかんでいるの? あなたのご主人さまがお見えになっているというのに」
クリスティは歌うようにそう言うと、夏海を無理やり礼二の前に立たせた。
「夏海・・・・」
長い睫を震わせながらうつむく夏海を目の前にして、礼二は呟くようにその名を呼んだ。我知らず身体が動き、その細やかな肢体を抱きしめ、口を吸った。
「あ、あ・・・・」
夏海は抵抗しなかったが、礼二に抱きしめられ、唇を合わせられると、呆けたような表情で、うわごとめいたうめき声をあげた。肢体が小刻みに揺れ、その心拍の激しさが礼二まで伝わってきた。
礼二が身体を離すと、夏海はそのままがくっと床に崩れ落ちそうになった。クリスティが傍らに寄ってその身体を支えてやると、夏海はクリスティにしがみつくようにした。
その様子を驚きの表情で見つめる礼二に、クリスティは悪戯な笑みを向けて、
「この子、いま軽くイッてしまったみたい」
と言った。
(そんな馬鹿な・・・ただキスをしただけで)
礼二は思うが、いまクリスティにしがみつくように立っている夏海の瞳は潤み、そのなかにはたしかに恍惚の色があった。
「わたしは彼女をその根底から作り変えるべく様々なことをしたが、最後にそれを成し遂げたのはきみだ。いわばきみは彼女の創造主なのだ」
博士は低い声で、ゆっくりという。
「創造主を愛さない者がこの世にいるだろうか? 神の御手に抱かれて恍惚に酔わない者がいるだろうか?」

礼二が夏海を連れて、研究所のある山奥から麓へ降り、そこに停めていた車に乗り込むまで、クリスティはついてきた。
「さようなら」
いよいよ別れの際にクリスティはそう言って、夏海を見ながら少し泣いた。
いったいクリスティはどういう女だったのか。どんな気持ちで夏海と関わっていたのか。礼二にはよく分からない。
よく分からないといえば寺元博士もそうだが、彼は見送りにも来ないで、研究室の玄関でさっさと背を翻し、自身の研究に戻っていった。
そして今―――
礼二は不可解な博士夫妻の新たなおとし子を乗せ、車を走らせている。
この女にはもはや何もない。ただひとつすがるものがあるとすれば、それは彼女を現在の運命に叩き落した礼二だけだ。
そんなことを知ってか知らずか、助手席に乗り込んだ夏海は不安げな表情のままで、窓の外に目をやっている。ときどき、礼二の顔をちらちらと窺っているのが分かる。
「夏海・・・・」
礼二はまたその名を呼んだ。心の底から湧きあがってくる奇妙な高揚感を噛み殺しながら。

車は林道を走り抜けていく。もうすぐ町に出るだろう。
  1. 2014/07/09(水) 14:48:59|
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夏の生贄 第二十一章 「春の家族」

春―――。
縁側に座って、我が子が庭の蟻の巣を食い入るように見つめている様を見ながら、高島昭文はぼんやりと縁側に座っていた。
日差しが暖かい。もう冬は終わったのだと思う。
だが、昭文の心の内で冬は終わっていない。終わるわけがない。
いなくなった妻が見つかるまでは。
「お茶はいかかがですか」
妻の叔母の陽子が傍らにやってきて茶を勧める。ありがたく湯飲みを受け取って、昭文は温かい茶を啜った。
「夏海ちゃんはいまどうしているんでしょうか」
陽子がポツリと呟くように言った。
「あれからもう半年以上経っているわ」
昭文の妻、夏海がいなくなったのは、去年の夏だった。一ヶ月住み込みで働く短期の仕事に就くといって家を出たきり、連絡もないまま、そのまま家に戻ってこなかった。
当時、昭文は交通事故に遭い、入院していた。
慌てて夏海に仕事を紹介した弟の礼二に連絡を取ろうとしたが、もはや連絡はつかなかった。消えたのは夏海だけではなく、礼二もだった。
後の調べで分かったことだが、礼二が持ってきた仕事の話というのも、まったくの虚偽架空のもので、そんなものは存在しない、とこれは礼二の上司が証言した。

常識的に考えれば、夫のいぬ間に二人して駆け落ちを図ったと考えるのが、妥当な状況かもしれない。だが、昭文には信じられない。夏海は礼二を嫌っていたし―――それに何より、彼女は自分の夫と息子を愛していた。自惚れなくそう思う。
その息子は父親は入院で不在、母親も消えてしまったという苛酷な状況で、陽子の家に預けられている。昭文が退院してからも、それは変わっていない。昭文には仕事がある。いつまでも休んではいられない。
だが、夏海のほうも放っておく気はむろんなかった。
先年の事故をきっかけに知り合った豊田という刑事がいる。警察は事件性がないとして夏海と礼二の失踪の捜査をとっくに打ち切っているが、昭文は個人的に豊田に度々相談に行っている。豊田自身も今度の事件に不審なものを嗅ぎ取っているようで、昭文の話を熱心に聞き、それから知り合いの探偵を紹介してくれた。
つい昨日、その探偵から連絡がきて、今度の週末に会って報告することがあると言ってきた。昭文はいまから武者震いしている。

「本当に心配だわ。晴喜ちゃんのこともあるし」
陽子は庭で遊んでいる晴喜を見つめながら、そっと瞳をうるませている。親戚だけあって、涙もろいところは夏海とよく似ている、と昭文は思った。
「大丈夫です。夏海は必ずぼくが見つけだします」
昭文は傍らの陽子にきっぱりと言って、立ち上がった。
「おーい、晴喜。何を見ているんだ? おとうさんも混ぜてくれよ」
  1. 2014/07/09(水) 14:50:04|
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夏の生贄 第二十二章 「変貌」

杉浦商事第三課課長室。
栢山秀明は、その日半年ぶりに目にした高島礼二の変貌ぶりに瞠目した。
変貌といっても、外見が変わったわけではない。ただ、かつての礼二には見られなかったような貫禄や凄みが、その内面から滲み出ているように感じるのだ。男ぶりが上がったというよりは、何か違うものに変質したような礼二の変化だった。
その隣には、これは完全なる「変化」を遂げた高島夏海の姿がある。半年前に寺元博士から受け取った報告書に添付されていた写真では、その美しい黒髪を剃り上げられた無惨な姿を晒していたが、いま眼前にいる彼女は艶やかな黒髪を肩まで垂らしている。
栢山はかつて一度しか、夏海を直接目にしたことはない。そのときも美しい女だと思い、何よりその全身から匂い立つ無垢な雰囲気に惹かれた。
だが、いま栢山の目の前で、ソファに腰をかけ、隣に座った礼二にしなだれかかっている女は、無垢とは程遠い妖艶な女だった。服装からして水商売の女が着るような、胸元の大きく開いた黒のドレスを着ている。その変貌振りに呆気に取られた栢山が、しばらくその姿を見つめていると、夏海はそれに気づいて栢山に媚びた目つきで艶やかに笑んだ。淫蕩な笑みだった。
柄にもなくどぎまぎして栢山は目を逸らし、煙草の火をつけた。
「潜伏先の台湾での生活はどうだったんだ」
「何事も問題なく・・・と、言いたいところですが、二、三度身体を壊しかけましたよ」
「なぜだ?」
栢山が聞くと、礼二はにやりと笑って傍らの夏海を見た。夏海も細やかな右手で口元を覆い、くすくすと忍び笑いを洩らしている。
なんとなく淫靡なものを感じさせるやりとりに、本来なら不機嫌になるはずの栢山だったが、雰囲気にのまれたいまは何も言えなかった。
「ですが、仕事はきちんとしましたよ。警察が動いたのかどうか知りませんが、動いていたとしてももうわたしや夏海の捜索は打ち切られていることでしょうし、これからは自由に動けます。必ず会社の役に立ちますよ」
礼二はよどみない口調で言った。
「それに今回の件のために、会社にずいぶんお金をかけさせてしまったことですしね」
「それはそうだ」
栢山はうなずき、夏海をちらりと見た。夏海はまるで自分とは無関係な話がされているかのように、礼二の腕にしがみつき、愛しげにその顔を眺めている。
その視線に気づいて、礼二は薄く笑い、夏海に何事か囁いた。
夏海はすぐにこくりとうなずいて、すっと立ち上がり、栢山のもとへ近寄った。
「な、なんだ?」
思わずうわずった声でそう言った栢山に、色めいた流し目をくれて、夏海は栢山の膝元にしゃがみこんだ。
「研究の成果をお見せしますよ」
どこか皮肉な響きを含ませた声で礼二が言う。だが、栢山はそれどころではなかった。
夏海は栢山のズボンの前を優雅な手つきで二、三度撫ですさると、ジッパーを開け、中のものを掴み出した。朱唇を近づけ、ちらりと覗かせた舌で亀頭の先を丁寧に舐めた後で、ためらいもせず含んだ。
「お、おい・・・ここは社内だぞ」
自分の声を他人のもののように聞きながら、栢山は自分の股間に跪いた美女の姿から目が離せない。栢山の怒張を唇でしごく度に伸びる白い頸の線が、妖しいほどなめらかだった。
くちゅ・・・くちゅ・・・。
室内に響く淫猥な音。栢山は急速に現実感を失っていく。
夏海が肉棒を口に含んだまま視線を上げ、栢山を見た。媚びを含んだ瞳、淫らに歪んだ口元で笑みを作っている。
「どうだ、夏海。課長のモノは?」
ソファに座ったまま、礼二がふざけた口調で聞くと、夏海は栢山の顔を見つめたまま、肢体をゆっくりとくねらせながら、「おいしい・・・」と小さく言った。
その瞬間、たまらず栢山の怒張が膨れ上がり、夏海の口中で爆ぜた。夏海は慣れた仕草で、流れ出た精液を飲み込んでいく。そればかりか、怒張に残った精液まですべて舐めとろうと、萎みかけたそれに吸い付いている。商売女のように細やかなフェラチオだった。

「どうでした課長? 満足しましたか?」
「あ、ああ・・・・とてもあの奥さんだとは思えないな。これは期待できそうだ」
栢山は心底からそう言った。
「研究所の報告あったが、彼女はお前の言うことならなんでも聞くのか?」
「そうです。それに夏海自身も様々な経験を経て、肉の悦びに目覚めています。いまでは男なら誰でもよろこんで奉仕しますよ。そんな女になっているんです」
栢山はもう一度、夏海を見た。夏海はまだ栢山の肉棒の亀頭や裏筋を、可愛らしい舌で清めている。その瞳は潤み、長い睫の先は男に奉仕する愉悦で震えているように見えた。
「これは・・・期待できそうだ」
栢山はもう一度そう呟いた。
  1. 2014/07/09(水) 14:51:12|
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夏の生贄 第二十三章 「暴露」

高島昭文は新居の寝室で一人、仰向けに天井を見つめている。その周囲には家財の入ったダンボール箱がそここに置かれている。
去年の夏に昭文が事故に遭わなければ、すでに家族三人で越してきているはずの家である。事故を理由に不動産会社に手をまわして、売りに出していたもとの家にしばらくは住み続けることにしたのだ。幸い、買い手がまだついていなかったこともあり、それは可能だったが、今度は妻が失踪してしまった。
とはいえ、いつまでも新居をほっぽりだしておくわけにもいかず、先月に昭文は会社の人間に手伝ってもらい、ここに引越してきたのだ。
当たり前のことだが心は侘しかった。家族三人、ここで幸福に暮らすはずだったのに、妻はいなくなり、息子も妻の叔母のうちに預けたままなのである。
それに―――昭文にはもうひとつ、心残りがあった。失踪した妻がまず帰ってくるとしたら、この家ではなく、数え切れないほどの思い出の染み付いた古い家であろう。彼女が現在どのような境遇にあるのかまだ分からないが、やっとのことで戻ってきた妻があの懐かしい家にいまは赤の他人が住んでいるのを見たら、それだけでたとえようもない喪失感に襲われることだろう。その光景を想像すると胸が痛む。
引越し前の数日間、昭文は妻の夏海の持ち物を自分の手でダンボール箱に梱包したのだが、それは辛い作業だった。どの品を見ても夏海を思い出す。どの品にも夏海の残り香を感じる。
ごろり、と昭文は寝返りをうった。ベッドがかすかに軋む音がした。
夫婦のベッド。昭文は事故に遭った前の日に、このベッドで夏海とともに床につきながらかわした会話を思い出す。

『新しい家は親子三人で住むのはもったいないくらいの広さだな』
『そうね』
『家族を増やそう。子供は多ければ多いほどいい。ぼくも頑張るから』
『何を頑張る気よ。へんなひと』
『へんじゃないだろ。相変わらず妙なところに気を回すね、君は』
『それよりもお金の余裕あるの? 今回だって相当無理してお金を作ったでしょう。家のローンだってあと何年もあるし』
『どうにでもなる。分不相応に欲張らなければさ。家族が幸せに暮らすだけのものがあればいい。それでぼくの分は十分』
『・・・へんなひと』

夫の言葉にいつものように素直じゃない反応をして、夏海は昭文の腕に顔を埋めたのだった。
あのときは幸せだった。家族の未来は希望に満ちているように感じた。
それがたった半年で跡形もなく崩れ去ってしまった。
過去・現在・未来。様々なことを考えながら、昭文はその夜、一睡も出来なかった。

豊田刑事に紹介された探偵は秋山という名で、まだ三十を少し過ぎたばかり若い男だった。
くりっとした瞳の童顔で、ひとなつこい顔をしている。探偵と聞くとこわもてなイメージがあったが、現実にはこういう顔のほうがひとに警戒されないだけ探偵向きだといえるかもしれない。
豊田刑事の大学の後輩だというその男が衝撃的な話を持ってきたのは、その翌日のことだった。
「この写真を見てください」
挨拶もそこそこに秋山は不器用な手つきで、茶封筒から数枚の写真を取り出した。
それを見て、昭文の顔から血の気がひいた。
写真には二人の人間が写っていた。
まず弟の礼二。
そして礼二の傍らで腕を組んで歩いている女。
その女は―――
夏海だった。
以前の彼女からは想像もつかない派手な装いで、濃いメイクをしていたが間違えるはずもない。
昭文にとってより衝撃的だったのは、夏海の表情だった。
写真の中の夏海はじつに幸福そうだった。その笑顔は明らかに愛する男とともにいる幸福の相だった。
  1. 2014/07/09(水) 14:52:01|
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1話完結■不倫・不貞・浮気 (18)
■寝取らせ (263)
揺れる胸・晦冥 (29)
妻がこうなるとは・妻の尻男 (7)
28歳巨乳妻×45歳他人棒・ ヒロ (11)
妻からのメール・あきら (6)
一夜で変貌した妻・田舎の狸 (39)
元カノ・らいと (21)
愛妻を試したら・星 (3)
嫁を会社の後輩に抱かせた・京子の夫 (5)
妻への夜這い依頼・則子の夫 (22)
寝取らせたのにM男になってしまった・M旦那 (15)
● 宵 待 妻・小野まさお (11)
妻の変貌・ごう (13)
妻をエロ上司のオモチャに・迷う夫 (8)
初めて・・・・体験。・GIG (24)
優しい妻 ・妄僧 (3)
妻の他人棒経験まで・きたむら (26)
淫乱妻サチ子・博 (12)
1話完結■寝取らせ (8)
■道明ワールド(権力と女そして人間模様) (423)
保健師先生(舟木と雅子) (22)
父への憧れ(舟木と真希) (15)
地獄の底から (32)
夫婦模様 (64)
こころ清き人・道明 (34)
知られたくない遊び (39)
春が来た・道明 (99)
胎動の夏・道明 (25)
それぞれの秋・道明 (25)
冬のお天道様・道明 (26)
灼熱の太陽・道明 (4)
落とし穴・道明 (38)
■未分類 (571)
タガが外れました・ひろし (13)
妻と鉢合わせ・まさる (8)
妻のヌードモデル体験・裕一 (46)
妻 結美子・まさひろ (5)
妻の黄金週間・夢魔 (23)
通勤快速・サラリーマン (11)
臭市・ミミズ (17)
野球妻・最後のバッター (14)
売られたビデオ・どる (7)
ああ、妻よ、愛しき妻よ・愛しき妻よ (7)
無防備な妻はみんなのオモチャ・のぶ (87)
契約会・麗 (38)
もうひとつの人生・kyo (17)
風・フェレット (35)
窓明かり ・BJ (14)
「妻の秘密」・街で偶然に・・・ (33)
鎖縛~さばく~・BJ (12)
幸せな結末・和君 (90)
妻を育てる・さとし (60)
輪・妄僧 (3)
名器・北斗七星 (14)
つまがり(妻借り)・北斗七星 (5)
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