主に寝取られ物を集めた、個人文庫です。
高校の同級生で付き合って、二十三歳で子供が出来て、慌てて籍を入れてから二十六年が過ぎた時の事だった。
ここまで二人で頑張ってきたのに、どうしてだと人生を怨んだ。
俺が会社のOLから貰った誕生日プレゼントのネクタイを、初めて締めて出勤しようとした時に泣いて怒った紗代。
その娘には色々相談に乗ってやり、お礼も兼ねたプレゼントだったので貰った時は「素敵なネクタイね」と言ってくれたが、本当は彼女の相談に乗っていること自体嫌だったのを我慢していたんだな。
弥生のミニバスを初めて俺が見に行った時の事を覚えているか?
俺が急に思い立って練習を見に行くと、紗代は体育館の隅でコーチと二人だけで親しげに話していたよな。
でも俺が二日間も不機嫌でいたら、ようやく俺の気持ちに気付いて抱きついてきて「ごめんね」と謝ってくれた。
浮気が発覚する半年前に桜子も嫁に出し、その夜俺が酒を飲みながら泣いていると「やっとこれで、お父さんが私だけのものになった」と優しく微笑んで頬にキスをしてくれた紗代。
そんな紗代が、その半年後には浮気した。
これは絶対に夢だと何度も何度も自分に言い聞かせた。
しかし泣いている紗代を見ていると、事実だと認めざるを得なくなってしまう。
それは紗代の携帯を、何気なく覗いてしまった事から始まった。
そこに書かれていたメールの内容は、今でもはっきりと覚えている。
“主人を見ていると耐えられないの。別れて下さい”
“何を言っている。今更別れられるか。旦那と別れて俺のところに来い”
“それは出来ない。私は主人を愛しています。お願いですから別れて下さい”
“昨日もあんなに感じてくれたじゃないか。俺のチンポをしっかりと締め付けながら、厭らしく腰まで動かしていただろ”
“これ以上主人を裏切るのは嫌なの。仕事も辞めますから別れて下さい”
“俺から離れられるとでも思っているのか?どうしても別れると言うのなら、紗代のオマンコと俺のチンポは、どれだけ相性が良いか旦那に話しに行く。紗代の身体がどれだけ俺を求めたかを話す。紗代はもう俺の女だと”
“そんな酷い事を話しに来ないで。主人だけは苦しめたくないの”
“旦那に話されたくなければ明日も来い。来なければ明日旦那に会いに行く。明日は出社して来たらすぐにホテルに行こう。二度と別れるなどと言えないように、朝からたっぷり可愛がってやる。旦那を愛しているなんて二度と言えないように、退社時間まで責めて責めて、責めぬいてやるから覚悟しておけ。どうだ。想像しただけでも濡れてくるだろ?”
俺は頭に血が上り、すぐに紗代を問い詰めたよな。
その時どうして認めたんだ。
これは架空の言葉遊びだと言って、どうして最後まで否定し続けてくれなかった。
- 2014/08/05(火) 18:37:44|
- 待っていてくれる紗代・呑助
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俺は今まで、あの時は携帯を何気なく見てしまったと思い込んでいたが、本当にそうだったのだろうか。
浮気が発覚する半年ほど前から、紗代の様子が変だと気付いていたような気がする。
そうだ。紗代だけを見てきた俺には分かっていたんだ。
紗代に限って浮気するなんて有り得ないと自分に言い聞かせながらも、本当は心配で仕方がなかったんだ。
真実を知る勇気が無かっただけで、食欲も落ちて体重まで減っていた。
紗代が会社の慰安旅行だと言った時も、実は何か様子が変だと感じていた。
それなのに俺は、その事から目を背けてしまう。
凄く怖くて、ずっと脅えていたような気がする。
不信感を抱いていたはずなのに優しく理解のある夫を演じてしまい、笑顔で送り出してしまった俺。
そう考えると、やはり俺は故意に紗代の携帯を覗いたんだ。
耐えられなくなって、紗代の携帯を覗けるチャンスをずっと伺っていたんだ。
「このような事をしてしまった私には、何も言う資格などありません。全てあなたに従います」
どうして素直な女になった。
どうして捨てないでと縋りつかなかった。
泣いて騒いで狂ったふりでもしてくれなければ、男のプライドが邪魔をして、許すなどとは言えなくなるじゃないか。
「私のような女と一緒にいては、あなたは幸せになれない。私のような酷い女と」
後で思えば、これは紗代の本心だったと分かるのだが、その時の俺は悪い方に受け取ってしまった。
紗代は俺と別れて、半年前に女房を亡くした奴と一緒になりたいのだと。
奴と再婚すれば、小さい会社ながらも社長婦人。
俺といてお金や時間に追われた生活などしなくても、お金もあれば昼間からホテルに行けるほど自由な時間もある。
奴とのセックスは良かったか?
二人で仕事を抜け出して、週に三日もホテルに行っていた紗代。
理由はどうであれ奴を体内に受け入れていた時間は、奴のセックスの虜になっていたのは事実だろ。
新婚当時は毎日していたセックスも、その頃には月に一度か二度まで減っていた。
身体の繋がりよりも心の繋がりを重視して、セックスをして眠るよりも、手を繋いで眠るほうが安らげた。
それが浮気の原因だとは思いたくないが、全く関係が無いとも思えない。
だから俺は発覚してからは毎晩紗代を裸にしたが、罵るだけで抱かなかった。
でもあれは抱かなかったのではなくて、抱きたくても抱けなかったんだ。
奴の匂いを消したくて、紗代の中を俺の体内から出る物で一杯にしたかったが、身体が言う事を利かなかったんだ。
俺の自慢の紗代の大きな乳房が、奴の上で波打つ光景が浮かんでしまう。
少し肉はついてしまったが、まだまだ括れている腰が奴の上で円を描くように、怪しく動く様子まで見えてくる。
しかし俺達には歴史があるからセックスなど出来なくても、いつかはまた元の夫婦に戻れると思った。
セックスなど出来なくても、長い年月で培った心の繋がりは切れてはいないと信じていた。
奴とは今後一切連絡は取らないと誓約書を交わし、仕事も辞めて実質奴とは会えなくなった紗代を、一応これで取り戻せたような気になっていたが、あっさりと慰謝料を支払った奴の反撃が始まる。
奴に一応制裁を加えたつもりでいたので、後は紗代と俺との問題だけだと思っていたが、奴にとって百万などは、おそらく一ヶ月の飲み代ぐらいにしか思っていなかったのだろう。
ワンマン社長の奴には社会的制裁も加えられず、お金など何の制裁にもなっていなかった事を知る。
結局何の痛みも被らなかった奴は、俺が紗代を抱けなくなった事を知っているかのように、その事をあざ笑うかのような反撃を仕掛けてきた。
本当は奴から、毎日のように手紙が届いていたんだ。
俺宛に、得意先を装うような架空の会社名で届いていたから、紗代は気が付かなかっただろ?
奴はそこまで紗代に未練があったのか。
あれだけの財力があれば、いくらもうすぐ還暦だと言っても、もっと若くて美人の女を抱けただろうに。
紗代の事が、本当に好きだったとでも言いたかったのか。
セックスが目的ではなく、セックスは紗代を繋ぎ止めておくための手段だったと言いたかったのか。
これは俺と紗代との仲を引き裂くための手紙だと分かっていても、俺の知らない紗代を知りたくて読まずにはいられなかった。
そこに書かれていた事は、全てが真実では無いと分かっていても、読めば悔しさで息苦しくなってくる。
だから封も開けずに握り潰し、ゴミ箱に捨てた事も何度かある。
しかし結局はそれを拾って読んでしまう。
そこには奴と紗代とのセックスが、毎回赤裸々に綴られていたから。
やはり書かれていた内容が全て事実だとは思わなかったが、それを読むと紗代の息遣いまで聞こえて来るような気がした。
最初関係を結んだ日、紗代は休日に出勤を命じられて誰もいないオフィースで後ろから抱きつかれ、首筋にキスをされても全く抵抗しなかったと書いてあった。
信頼していた奴の豹変振りと、恐怖に身がすくんでしまって動けなかったのだと思いたかったが、奴によれば紗代が抵抗しなかったのは、紗代も奴に抱かれる事をずっと望んでいたからだそうだ。
その後来客用の狭い応接室に連れて行かれ、ソファーに座った奴の膝の上に乗せられて、首を後ろに捻って熱い口付けを交わす紗代。
キスをされながら制服のボタンを外されて、ブラウスを全開にされてブラジャーを押し上げられ、奴に乳首を摘まれて大きな乳房を揉まれる。
やがて奴の手は下に下がり、タイトスカートの中に潜り込む。
すると紗代のそこは既に蜜を溜め込んでいて、少し触っただけで大量に外に流れ出し、真っ白なパンティーだけでは吸収しきれずに、パンストを通してスカートにまでも染みをつくってしまう。
蜜の多さに気を良くした奴はタイトスカートをたくし上げ、紗代の足が自由に開くようにしてから自分の膝を目一杯開く。
そのような事をされては膝の両側に置かれた紗代の足はそれ以上に開いてしまい、奴はパンストの中に手を突っ込んで、開いて触りやすくなった紗代の俺だけの秘密の場所を思う存分指で弄ぶ。
“下着の上からだけで直には触ってもいないのに、紗代はそれだけで二度も達してしまいましたよ”
奴によると二度も達した紗代は目付きも変わり、普段の清楚な紗代とは別人のようになって自ら奴の硬くなり掛けていた物を口に含み、十分に硬くなったところで勝手に跨ってきて腰を使っていたと書いてあった。
それでまた独り勝手に達してしまった紗代は、今度はソファーに手をつかされて、お尻の穴までも晒した獣の交わりのような格好で責められる。
そして最後は上から押さえつけられた格好で終わるというフルコースを味わって、普段の声よりも1オクターブも高い可愛い声を上げ続けながら、この日最大の絶頂を迎えてしまった。
- 2014/08/05(火) 18:43:57|
- 待っていてくれる紗代・呑助
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その後はちょくちょく仕事中に連れ出され、ホテルに連れて行かれては気が遠くなるほどの快感を与えられ続けていた紗代。
その間に紗代は、俺でさえ現物は見た事の無いような玩具による快感まで教え込まれ、最初は怖がっていたが発覚する頃には見せられただけでも、それによって与えられる快感を期待して濡らしていたと奴は自慢げに書いてきた。
社内では次第に紗代と奴との仲は公然のものとなり、仕入先の担当者などは奴を喜ばせるために、紗代の事を奥様とまで呼んでいた者もいたそうだな。
紗代の身体を自由にされ、俺が教えてやれなかった快感まで教え込まれたことも悔しかったが、俺には奴の奥さんのように扱われていた事の方が重く圧し掛かり、経験した事の無いような猛烈な嫉妬で気が狂いそうになっていた。
紗代は俺の妻で、それ以外の何者でも無い。
しかし一歩家を出れば奴の妻で、夫である奴の性欲処理という、妻としての務めまで果たしていたのか。
しかしこれらは全て奴の一方的な告白で、紗代に限ってそこまでは酷くなかったと信じたかったが、どちらにしても半年の間、俺とよりも遥かに多く奴とセックスをし、俺とでは得られなかったような快感を与えられ続けていたのは事実だと落ち込む。
気持ちまでは奴の妻にはなっていないと信じようとしたが、身体は完全に奴の妻になっていたと失望してしまった。
その時も紗代は反論しなかったよな。
どうして何も言わずにただ謝った。
俺はあくまでも勝手な想像だと言って話したのだから、全て否定すれば良かったんだ。
本当は奴の手紙による告白だったから、紗代が否定しても信じられなかったかも知れないが、紗代が否定してくれたなら俺は無理にでもそれを信じたぞ。
ところが反論しない事で、やはり全て事実だったのだと落胆してしまったじゃないか。
だから俺は手紙を読む度に、手紙の事は告げずに紗代を責めた。
その後は最愛の紗代に右手まで振り上げて、徐々に俺は奴の術中に嵌っていった。
そして終に、決定的な手紙が届く。
それは会社の慰安旅行だと嘘を吐いて、奴と泊まった旅館での話が書かれていたが、同封されていた紗代が眠った隙に撮られた写真を見た時に、俺は紗代との別れを余儀なくされた。
旅館の台帳に奴の名字を書いた紗代。
夫婦でも無いのに家族風呂に入り、幼い子供を洗ってやるかのように奴の身体の隅々まで洗ってやった紗代。
しかし子供を洗ってやるのとは大きく違い、大事な部分は特に念入りに洗うように言われる。
“私が「これが紗代を気持ち良くしてくれるのだから、感謝の気持ちを込めて洗いなさい」と言うと、紗代は「今夜はいっぱい気持ち良くしてね」と言って大事そうに両手で洗い、泡を洗い流すと我慢出来なくなって口に含んできたぞ”
それが終わると今度は攻守交替し、奴が紗代の身体を隅々まで洗う。
“中は特に念入りに、指を入れて洗ってやったが、私の太いチンポに馴染んでしまっていた紗代は「一本だけでは寂しいです」と言って腰を振ってお強請りしたぞ”
広くは無い風呂の中には紗代の卑猥な声だけが響き渡り、奴に命令されて湯船の縁に手をついて、奴に向かって白いお尻を突き出す紗代。
奴と紗代のセックスは、したくなったらいつでもどこでも自由に出来た。
それは避妊などしていなかったから。
“私が「欲しいのならお尻を振ってお願いしなさい」と言うと、紗代は素直に尻を振って催促した。しかしそれでも入れてやらないでおくと、自分の指で開いて「早くオチンポ入れて下さい」だと”
奴はそのような格好でお強請りしろと命令しておきながら、お尻を振って催促する紗代を焦らして喜んでいたのか。
さぞかし惨めだっただろ?
死にたいほど恥ずかしかっただろ?
しかし奴が入って着た時、じっとしている奴に痺れを切らして、先に動き始めたのは紗代だったそうだな。
毎回身体の奥深くに奴を受け入れさせられていたが、お互いの年齢からか幸い妊娠はしなかった。
しかし奴の分身が紗代の分身と結びつこうと、毎回紗代のお腹の中で動き回っていたかと思うと吐き気がする。
旅館の豪華な料理には、鰻や山芋の料理もついていただろ?
それらは特別に頼んだ料理だったと自慢していた。
あれは紗代を朝まで責めるために、奴が体力をつけようと頼んでおいた料理だったと知っていたか?
鰻が利いたかどうかは分からないが、夜通し責め貫かれた浴衣姿の紗代。
そして朝日が昇る頃には、紗代の手首には浴衣の紐が巻かれていた。
“感じ過ぎるのか「もう出来ない。許して」と言って暴れたので縛ったら、縛られて余計に興奮したのか涎まで垂らしていたよ”
その行為がどれだけ激しかったかは“まさかこの歳で、一晩に四回も射精してしまうとは思っていなかった。でも紗代はもっと凄かったぞ。仲居さんはシーツを見て、オネショをしたのかと思っただろうな”と奴が書いていた事からも想像出来、朝日の差し込む明るい部屋で、紗代は写真を撮られている事など全く気付かないほど、精根使い果たして死んだように眠ってしまう。
- 2014/08/05(火) 18:46:07|
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その時撮られた写真が二枚同封されていたのだが、一枚は下半身にピントを合わせてある写真で、奴の形に大きく口を開けたままのそこからは、白い液体が流れ出していた。
当然それもショックには違いなかったが、俺が紗代との別れを決断したのは上半身が撮られた写真の方だ。
その顔はいかにも満足げで、奴との行為でどれほど深く達したかを物語っていた。
それを見た時、俺の気持ちは大きく離婚に傾く。
別れる事が最善かどうなのかなど、考える余裕も無いほど紗代の寝顔は満足そうで、まるで眠りながら微笑んでいるかのようだった。
「別れよう」
その短い言葉を聞いた紗代は泣き崩れたが、どうして離婚だけは許して欲しいと言わなかった。
すんなり離婚を受け入れて、離婚届を一緒に提出しに行った日に、少な目の財産分与から更に慰謝料を引いた額の、アパートを借りれば当面の生活費ほどしか残らないお金だけを持って出て行ってしまった紗代。
その時俺はすぐに紗代は帰ってきて、復縁出来ると思っていたからあんな条件を承諾したんだ。
そうでなければ慰謝料なんて貰う気も無かったし、紗代が生活出来るように全てを置いて俺が出て行っていた。
何故俺が復縁出切ると思ったか分かるか?
それは紗代との最後の夜。
やはりセックスまでは出来なかったが、二人とも泣きながら裸で抱き合って眠っただろ。
「長い間、世話になったな」
「もう一度あなたが好きになってくれるように、いつかあなたに迎えに来てもらえるように、生まれ変わったつもりで一から頑張ります」
その時俺は、出て行くなと言いたかった。
独りで頑張らなくても、また二人で頑張ろうと言いたかった。
しかしそれを、あの写真の寝顔が邪魔をした。
「俺が迎えに行かなくても、十分反省したら帰って来い。復縁までは分からないが、ここに住むぐらいは許してやる」
復縁は分からないと言ったが、あれは俺の意地だったんだ。
帰ってくれば復縁するつもりでいた。
「もう一度あなたに愛してもらいたい。もう一度あなたと・・・・・」
紗代のこの言葉で、俺は復縁出来ると確信した。
しかし女が独りで生きて行く事の大変さを知った時、紗代は楽な方へ流されてしまう。
俺も意地になって連絡もしなかったが、一向に帰って来ない紗代が心配になって、離婚してから半年が経った頃、初めて紗代のアパートを訪ねてみた。
すると紗代はポロポーズした時にも見せなかったような、凄く嬉しそうな顔をしてくれたよな。
目から大粒の嬉し涙をポロポロ溢してくれて。
向かい合って座った二人に会話は無かったが、それでも俺には十分だった。
心の中で紗代を強く抱き締めた。
しかし紗代はお茶を煎れてくれると言って立ち上がり、暗くなった狭いベランダに目をやった途端、急に表情が曇って固まってしまう。
俺も釣られて外に目をやると、そこには人目につかない夜にしか干せないような洗濯物。
それはまるで街に立って男を誘う娼婦が身に着けるような派手な下着で、それを見た瞬間に俺は全てを悟った。
部屋に入った瞬間に違和感を覚えた、紗代の収入には似つかわしくない、小さいながらも当時は高価だった液晶のテレビが置いてあった訳も。
- 2014/08/05(火) 18:47:02|
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俺が何も言わずに立ち上がり、部屋を出てドアを閉めた途端、中から紗代の呻くような泣き声が聞こえてきた。
俺を見た時の喜びようからも、紗代が奴を愛しているとは思わなかったし、紗代から奴に連絡して、アパートを教えたとも思えなかった。
おそらく何らかの方法で住処を見つけた奴が、何度も押し掛けて来たのだろう。
近所迷惑になるぐらい、何度もドアを叩いて大声を出したのだろ?
しかし紗代もただの弱い女だった。
奴に強引に抱き締められた時、寂しさと将来の不安から、結局負けてしまったのか。
俺は車のドアを閉めるや否や叫んでいた。
「苦しければ、どうして俺に縋らなかった!寂しければ、どうして俺に抱き付きに来なかった!」
それから更に半年が過ぎ、まだ紗代を忘れられずに寂しい夜を過ごしていた俺に、紗代は電話して来てくれたよな。
「突然電話してごめんなさい」
「どうした?」
「あなたの声を聞きたかったの」
「そうか・・・・・・・・・・・・・じゃあ」
俺はただそれだけ言って受話器を置いてしまったが、本当は凄く嬉しかったんだ。
そしてそれと同時に紗代の寂しそうな声が耳から離れず、何をしていてもずっと気になっていた。
それで一週間考えて、紗代のアパートに行ってみたが紗代はいない。
次の日もその次の日も行ってみたが紗代に会えず、車に乗り込もうとした時に、隣の部屋から若い娘が飛び出してきて声を掛けてくれた。
「昨日も来たよね。もしかしたら、おばちゃんの別れた旦那さん?」
「そうだけど」
「おばちゃんが、優しい目をした人だと言っていたからそうだと思った。おばちゃんなら胃潰瘍で入院したよ。凄く世話になったから一昨日お見舞いに行って来たけれど、元気そうだったから心配ないみたい。でも行ってあげて。おばちゃんは今でもおじさんの事が好きなんだよ。おばちゃんはいつも言っていたもの。私は酷い女で自慢出切る物は一つもないけれど、主人のような素敵な男性と結婚していた事が唯一の自慢だって」
どうしてあんな状態になるまで我慢していた。
我慢する事が償いとでも思っていたのか?
痛みに耐える事が神から与えられた罰とでも思っていたのか?
「奴は見舞いに来るか?」
「来ません・・・・・・・半年前から会っていないから」
前回俺がアパートを訪ねてから、奴とは会わなくなったのだ。
「入院費用はどうしている?」
「実家の兄に無理を言って」
「手術の日は誰か来てくれるのか?」
「義姉さんが来てくれると言ってくれたけれど、独りで大丈夫ですと断わりました」
どこまで自分を追い込む。
俺はそのような事を望んではいない。
「会社を休んで俺が付き添う。いいな」
紗代の病室には花が無い。
花が大好きだった紗代の病室に、一輪の花も無い。
もう紗代とは夫婦でもないのに、そのような細かなところまで気に掛かる。
結局俺が入院費用と手術代を支払った時、紗代は仕切に悪がっていたが、俺は退院した紗代を家に連れて帰れる事が何より嬉しかった。
- 2014/08/05(火) 18:48:07|
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その後の紗代は俺が聞いてもいないのに、何かに取り憑かれたかのように何でも話してくれた。
それは俺の知らない紗代の幼い日の出来事から、忘れたかった奴との関係の真実まで。
奴との切欠は、頼みたい仕事があるから休日出勤してくれと騙されて、オフィースで無理やり犯された事。
ダンボール箱に隠してあった、その時に着ていた制服を見せてくれたが、それは抵抗の凄まじさを物語るかのようにブラウスは破れ、ボタンは全て千切れ飛んで無くなっていて、タイトスカートのファスナーも壊れて使い物にならなくなっていた。
その後は奴がその事を俺にばらすと脅して、逆らえなくなった紗代を夫婦気取りで連れ回す。
「どうして言ってくれなかった」
紗代は俯いてしまったが、これは愚問だったと反省する。
紗代は言えなかったんだよな。
言えるような内容なら、とうに話してくれていた。
私に言えないような酷い扱いをされていたのは明白で、俺はその話題から逃げようとしたが、顔を上げた紗代はどうして言えなかったかを話し出す。
犯されながらも奴の目の前で何度も達してしまい、最後はもう許して欲しくて、奴に命じられるままに「中に出して」と言わされてしまう。
そして終わって欲しいばかりに言ったその一言が、更に妻を追い込んでしまってその後もその事で脅されて、ホテルに連れて行かれると最初は嫌だと拒んでいても、結局は感じさせられてしまって、また恥ずかしいお願いをさせられてしまう。
「世界中の誰に知られても構わないと思いました。ただ、あなたにだけは知られたくなかった。あんな事をされても感じてしまい、あんな恥ずかしい言葉を何度も言わされていた私を」
どのように知ったのか俺達が離婚した事を知ると、奴は調査費用など何とも思わず、興信所を使って紗代の暮らしていたアパートを探し出す。
「紗代が満足そうに眠っている間に撮った写真がある。調べたところによると、旦那は相当往生際が悪いようで、まだ紗代に未練が有るようだから諦めがつくように、これを送ってやって俺が止めを刺してやる」
奴は知っていた。
俺がまだ紗代を愛していて、紗代もまた俺を愛していたのを。
そして紗代は知らなかった。
俺が既にその写真を見てしまっていた事を。
紗代には言わなかったが、それを聞いた俺は奴を殺したいと思い、ナイフを忍ばせて一度奴の会社に行ったんだぞ。
すると奴はその二ヶ月前にクモ膜下出血で倒れ、意識が無くてずっと危篤状態が続いていると言われた。
他人の不幸を喜んだ事はないが、その時ばかりはこれは天罰だと喜んだ。
このまま死んでしまえとさえ思った。
俺が手を下さなくても、悪い奴には天罰が下ると神に感謝した。
しかしその天罰は、最初無理やり犯されたにも拘らず、そのあと快感を貪ったからか最愛の紗代にも下ってしまう。
紗代と過ごした退院してからの四ヵ月の間、新婚当時に戻ったかのように幸せだった。
人生の中で、一番幸せな時間だったかも知れない。
どうして本当の病名を教えてくれなかった。
いや、あれだけ痩せてしまっていたのに、どうして俺は気付かなかったのだろう。
紗代とまた一緒に暮らせる喜びで舞い上がっていた俺は、紗代の身体の中でそのような事が起きていたとは夢にも思わなかった。
変な意地を張って、半年も連絡をしなかった事が悔やまれる。
いくら紗代との約束だったにしても、娘達にアパートを教えなかった事が悔やまれる。
あの時厭らしい下着を見ても、なぜ強引に連れ帰らなかったのだと悔やまれる。
そうしていれば、こんな手遅れになるまで放っておかなかった。
そして何より悔やまれるのが、強引にでも籍を入れなかった事だ。
再入院してからの紗代は早かった。
「今からでも籍を入れよう」
「ううん。こんな女と、二度も結婚しては駄目」
顔では必死に笑顔を作っていたが、余程痛いのか額には脂汗を掻いていた。
どんなに痛くても、俺の前では最後まで笑顔でいてくれた紗代。
「夢を見ているみたい。あなたの腕の中で死ねるなんて、こんな幸せな事は無いわ」
激痛に耐えながら、笑顔でそんな事を言うなよ。
辛ければ辛い顔をして、我侭を言って欲しかった。
だってそれが夫婦だろ。
それは籍が入っていなかったからなのか?
その時の俺達には、そんな紙切れ一枚には書き切れないほどの繋がりがあったはずだ。
しかしそうは思っても、法律上も俺の妻で最後を迎えて欲しかった。
いや。紗代の最後は、全ての面で紗代の夫でいたかった。
その時は紗代に天罰が下るのではなくて、どうして紗代を信じてやれなかった俺に下らなかったのかと神を怨んだが、今思えばこれが俺に対する天罰だったのだ。
紗代と違う世界に残されるほど、こんなに辛い罰は無い。
娘達の嗚咽が夜の病院内にこだまする中、紗代は俺だけのものになった。
紗代を育ててくれた両親には悪いが、紗代と二人でいた時間は誰よりも長く、紗代との思い出だって誰よりも多いから。
俺と紗代が共に過ごした歴史からすれば、奴との事などほんの一瞬の出来事で、奴の存在など無かったに等しい。
「毎晩こんなところでメソメソしながら飲んでいないで、早く素敵な彼女でも見つけて一緒に外で飲んで来なさい」
仏壇の前に小さなテーブルを置き、2人分のご飯を用意して紗代の写真を見ながら飲んでいると、毎日決まってそんな紗代の声が聞こえてくる。
「大きなお世話だ!俺はここで独り飲むのが好きなんだ!」
そして俺は、いつも大声でそう言い返している。
俺の心配などしなくても良いから、独りが寂しくても今度は待っていてくれよ。
そちらの世界はどうだ?
もう痛くはないか?
奴も死んだと聞いたが、まさか一緒だという事は無いだろうな。
まあいいか。
紗代が知らない世界に孤独でいると思うと辛いから、悪い奴でもいないよりはましか。
ただ俺が行ったら何があっても返してもらう。
今度こそは絶対に引かない。
でも本心はやっぱり一人で待っていて欲しい。
俺も紗代との思い出だけを胸に生きていくから、お願いだから紗代も今度こそは俺が行くまで待っていてくれよ。
- 2014/08/05(火) 18:49:48|
- 待っていてくれる紗代・呑助
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