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闇文庫

主に寝取られ物を集めた、個人文庫です。

水遣り(前書)

そろそろ40代も後半の夫婦です。今までお互いに信頼しあいここまで来ました。その妻が浮気をしました。浮気ではなく相手の男に恋をしたのかも知れません。真実は妻の心の中にだけあります。 

こんな事は誰に話せる訳でもなく、一人で悶々としていました。私と同じ様な人が居るかも知れない。又、その方達はどんな思いをしていらっしゃるのか、ウェブを検索してみました。”愛妻の浮気”、”妻の不倫”等色々な言葉で検索しました。今ではどの言葉がヒットしたのか覚えていませんが、”妻物語”に出会えました。

BBS1-結婚後の妻の性体験とあるではないですか。過去ログから一気に読ませて頂きました。奥様と会社の上司、社長との不倫物語は特に念入りに読ませて頂きました。私だけではないんだ、沢山の方が悩み、闘っていらしゃるんだ。感銘を受けました。闘う勇気を頂けたような気がします。 

誰に話せる訳でもありません。書いてみる決心をしました。書いている中、自分の気持ちを見つめ直したいとも思っています。過去の事も現在進行形で書いていきます。 後で妻から聞いた事、相手の男から聞いた事、私の想像等織り交ざっています。特に妻と相手の男との性描写はそれぞれから聞いた事に私の思いをぶつけ、実際より相当濃いものに成っているかも知れません。実際にはなかった行為をも書いているかも知れません。

未だ終わった訳ではありません。私達夫婦はこれから何処へ行くのか。今までの事、これから起こるであろう事、出来る限り最後まで書いていこうと思います。お断りするまでもありませんが、登場する固有名詞は全て仮名です。

読んで頂いて、ご意見、お叱り、励まし等頂ければ、これ程嬉しい事はありません。
  1. 2014/08/11(月) 02:15:05|
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水遣り 第1回

いつまでも無垢だと信じていた妻、死ぬまで私一人のものだと信じていた妻。私一人が信じていただけなのでしょうか。昔の妻はもう戻ってこないのでしょうか。

私、宮下圭一49歳、妻、洋子46歳と今年大学を卒業した娘、明子の3人家族です。千葉北西部のターミナル駅の郊外に一軒家を借りています。これで二度目の転居です。社会人として一人歩きを始めた娘は東京で暮らしています。妻には苦労を掛けました。これからは充実した夫婦の時間を過ごせる筈でした。

33歳で先輩、同僚数人で会社を興し、時流にのり成長しましたが手形事故から民事再生、私が代表を務めていた子会社は倒産、私自身は破産し家屋は担保に取られ手放しました。破産したのは5年前のことです。電子材料の輸入販売が主な生業でしたが、台湾の一社が、私個人に商権を引き継がせてくれる事になり、借家住まいで何とか夫婦が食べていけるだけのものは確保出来ました。一人会社を設立して営むことになります。暫くし、少し余裕が出来、借り直した大きめの庭のある一軒屋が今住んでいるところです。 

妻は娘が小学校高学年になり手を掛けなくてすむ頃からパートに出ています。近郊では名門会社で食品検査の補助、検査データの作成が主な仕事です。その会社での妻の評判は私には伝わってはきませんが、妻と寛いでいる時に度々会社の話題がでます。楽しそうに
話していますので、妻としても居心地が良く、回りの人からも好感を持たれているのがうかがえます。 

会社倒産、個人破産を告げた時も「そうですか」と一旦落胆したものの「貴方なら復活出来るわ、私信じている。私も頑張るから」と逆に励ましてくれます。妻の励まし、頑張りが私を再生させてくれました。4年を経て会社の業績も上がり生活費以上のものを妻に渡せるようになります。妻もパートに出始めて10数年経ちます。そろそろパートを辞めてもらって楽にさせたい、そんな事を考えていました。

半年程前の事です。4年間駆け抜けた仕事も一段落し妻と夕食を共にする機会が増えてきます。そんなある金曜日の夕食後、居間でウィスキーのロックを飲んでいますと、妻も軽いカクテルを片手に私の横に座ります。

「貴方お話があるの。私の仕事の事ですが、いいですか?」

「うん、僕もだ。丁度良かった」

パートを辞める相談だと思ったのです。

私は言葉を続けます。

「君も随分頑張った。もう辞めてもいいんじゃないかな。そうすれば次のシーズンにはクリスマスローズの展示も出来るかも知れないじゃないか。好きな趣味に時間を使えばいい」

そうです。 妻は花の中でもクリスマスローズが好きなのです。品種の中にフラッシュダークネクタリー系のものがあります。咲いてみなければ解らないのですが、色は白、ピンク、黄色の3種類があり育てる人の気持ちの掛け方で鮮やかにもなり、又くすんでしまう事があります。花の中心、蜜腺部の色が濃いネクタリー色でその周囲にフラッシュと呼ばれる星型のブロッチが散りばめられています。この部分の鮮やかさも愛情の掛け方で変わります。その可憐で艶やかな表情は妻に似ていると思うときがあります。妻の化粧はいつも控えめです。ふっくらとした唇に薄く引かれたルージュ、二重ですが切れ長な目、つんと尖った鼻、控えめな物腰。

「ううん、違うの。早く自分達の家が欲しいの。昨日、部長さんとお昼ご飯をご一緒させて頂いた時、正社員登用の道もあるかも知れない、って言われたの」
「歳の事は言いたくないが、君ももう40半ばだよ。そんな話があるわけないじゃないか。それに僕はもう君に仕事は辞めて欲しい。今の貯金を併せれば、後4,5年で少しはましな家も持てるだろう」

破産した私は、今相応の収入があってもローンが組めません。貯金して買うしかないのです。

妻が切り込んできます。

「私のパートの収入が年100万円くらいでしょ。正社員になると年400万円にはなるそうなの。それに正社員になると、私の名義でならローンが組めるかも知れないのですって」
「そんな事、誰が言うんだ」
「部長さんよ」
「君の勤めている会社はこの辺では名門じゃないか。人事部があるだろう。部長個人で何とか成るものでは無いと思うが」
「部長さんは社長の甥なの。力も人望もあるし、殆どの話は通るわ」
「君が正社員になるのは筋が通っているとは思えない」
「まあー、馬鹿にしないで。私、これでも農学部を出ているのよ」
「知っているさ。それより・・・」

それより歳の事を考えろと言いたかったのですが、付け足せません。

「解った。話は明日にしよう。久しぶりにゆっくり出来る金曜日だ」

私は妻を抱きたかったのです。この2ヶ月間、中国、台湾への出張続きで妻を抱いていません。昔は出張中、現地の女を抱いた事もあります。どの女も妻の代わりにはなりません。ましてや、この4年間は他の女を抱こうと言う気にもなりません。

サイドボードの上の時計の緑のLEDが12時を告げます。

「もう寝ようか」
「はい」 
  1. 2014/08/12(火) 16:54:37|
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水遣り 第2回

私の横に妻がすっと滑り込んできます。抱き寄せるとまだ下着を着けたままなのが解ります。40歳を過ぎた頃から灯りを点けさせてくれません。”おばさんだから、恥ずかしい”と言うのです。 枕元の小さな常夜灯だけは許してくれます。その仄かな明かりを頼りに久しぶりに妻の裸身を見ます。お椀のような乳房、この灯りでは色までは良く解りませんが小さく尖った乳首、すっと括れたウェスト、張り出した尻、薄い恥毛。 私の情欲を掻き立てます。 

妻を抱きます。いつも通りの行為です。妻は私のものを口に含むだこともありません。私も妻のクリトリスを手、口で愛撫したこともありません。新婚時代に試した事はあるのですが、やんわり断られて以来、そういう習慣になってしまったのです。敏感な乳首を攻めるだけです。一通りの行為が終わった後、妻はもう軽い寝息を立てています。妻の寝顔を見ていると妻の言う通りにしてあげようと思うのです。

明くる日の午後、妻が話し掛けてきます。

「仕事の話ですが、如何ですか?」
「条件付でOKだ」
「条件て何ですか?」
「君の趣味の時間を削らない事。それとなるべく早くやめて欲しい」
「有難う。解りました。月曜日に部長さんに話して良いですか?」
「うん、良いんじゃないか」

この結論が夫婦の行く末を大きく変えてしまいます。

翌月、月初から正社員として勤めだします。真新しいスーツに身を包んでいます。パートの時はラフな普段着でしたが、スーツ姿の妻には新鮮な女の香りが漂っているようです。2ヶ月が過ぎたあたりから妻の帰宅時間が遅くなりだします。時には12時を過ぎる事もあります。パート時代はそんな事はなかったのです。私が帰宅した時は何時も食事の用意がしてありました。食事の用意も週に2,3度になります。

「最近、遅い日が多いが正社員はそんなに大変なのか?」
「はい、会議もあるし、時々は付き合いもね」
「会議はしょうがないが、付き合いは程々にな」
「はい、でもこれでも半分以上は断っているのよ。どうしてもの時だけ出ているの」

これ以上は深く聞きません。そういう事もあるのでしょう。

正社員として勤めだして3日目の昼前の事です。部長に声を掛けられます。

「宮下さん、歓迎会の代わりと言っては何だが、課員と一緒に昼飯を食べよう」
「私なんか、新入社員でもないし、恥ずかしいですわ」
「そんな事は無い。立派な新入社員だよ。ちょっとした所を予約しておいた。さあ行こう」

部長の名は佐伯俊夫。佐伯が長を勤める部は食品部、佐伯は常務の肩書きです。妻の課はその下部組織の食品検査課になります。総勢10名位の小さな組織です。 

「はい、解りました。遠慮なく頂きます」

妻は佐伯の心使いが嬉しいのです。眩しそうに佐伯の顔を見上げ、後に従います。佐伯52歳、スーツの上からでも鍛えられた体がわかるスポーツマンです。

3週間経った木曜日、佐伯は妻に声を掛けます。

「明日、仕事が終わってから少し時間をくれないか。打ち合わせしておきたい事がある」
「仕事の話でしたら、業務時間中ではいけないのですか?」
「課長には未だ話を通していない。先ず君に了解を得てからだと思っている」
「でも」
「明日家で用事があるのなら、無理にとは言わない」
「いいえ、大した用はありません。お聞きします」
「じゃあ、明日仕事が終われば内線する」

次の日の夕刻、佐伯から内線が掛かってきます。

「宮下さん、先にA亭に行っていてくれないか。僕の名前で予約してある」
「えっ、会社で打ち合わせるのではないのですか?」
「会社で男と女が居残って打ち合わせなど無粋な事は僕の趣味ではないので。それに、会社で時間外に君と打ち合わせしている所を見られたくない」

A亭はこの地方一番の料亭です。全て個室です。何か違うと思いながら妻はA亭へ向かいます。

A亭に着き、佐伯の名を告げると、ここでも最上級の部屋へ案内されます。常務と二人きりと思うと、妻は緊張を強いられます。20分ほど遅れて佐伯が来ます。

「やあ、宮下さん、悪い悪い。待たせてしまったな」
「いいえ、それよりお話って何でしょうか?」
「いや、大した話ではない。この間の様な歓迎会で申し訳ないと思っている。今日はその代わりだと思ってくれればいい」
「そんな、私なんかに勿体無いですわ」
「そう言わずに、僕の気持ちだと思って受けて欲しい」

豪華な料理、ワインが食卓に並びます。
  1. 2014/08/12(火) 16:55:57|
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水遣り 第3回

仕事の話は直ぐに済みます。3ヶ月位経って慣れたところで他の課員と同じ様に出張にも出て欲しいとの事です。他の課員は一週間に一度位の頻度で出張に出ます。時には一泊する事もあります。食品の仕入先に出向くのです。検査結果の報告と今後の仕入計画を掻い摘んで話してきます。検査結果の報告はメール、Faxですむ事です。仕入れの話は専門の仕入れ担当が居ます。この出張は、仕入先に対しきちんと検査をしていますよと言う姿勢を見せる為です。それと良い仕入先を確保しておく為、出来るだけ多くの人間を会わせておきたいのです。経営の基盤もしっかりしていると聞いています。会社の経営姿勢が見えてきます。

妻は自分だけ特別扱いされるのもおかしいと思い、出張を受けてしまいます。

「さあ、どんどん食べて。取って置きのワインもあるし」
「ええ、でもこんなに食べられません。それにワインは、車で来ていますから」
「代行を頼めば済むことだ。さあ、やろう」

結婚以来、夫以外の男性と二人で料亭の個室で食事、妻にとって始めての経験です。
そんな緊張も食事とワインが進むにつれ徐々に解れてきます。

「宮下さん、ワインを注いでくれないか。さあ、僕の横に来て」
「はい」

妻に断れる理由などありません。

「宮下さん、君も飲んで」

佐伯が妻にワインを注ぎます。さりげなく妻の体に触れます。ワインの酔いも手伝っているのでしょう、妻も拒否しません。手の甲で乳房を押すように触れます。

「部長さん、だめっ、悪戯が過ぎます」

乳首をも押したのでしょうか。ほんのり酔った顔が益々、ピンクに染まります。敏感な乳首です。感じもしたのでしょう。

「ごめん、手が吸い寄せられたみたいだ」

佐伯はすっと引きます。女の恥ずかしがる事は無理強いしません。女の扱いに慣れているのです。妻は佐伯に誠実さを感じてしまいます。若干の物足りなさも残るのです。

「そうだ宮下さん、君の車は先に代行に頼んで返しておこう。考えてみれば僕も代行を頼まなければ
いけない。 君は僕の車で送って行こう」

少し考えればおかしいのが解る筈ですが、妻は佐伯の好意として受け取ります。

帰りがけ、佐伯から小さな包みを渡されます。

「社用の携帯電話だ。仕事の連絡用に使ってくれればいい。僕の番号とメールアドレスはインプットしておいた。後は自分で必要な分インプットすればいい」

どうして佐伯が直接、手渡すのか。妻はその不自然さに気がつきません。業務用なら、課から支給される筈です。佐伯が個人で妻との連絡用に用意したものなのです。

食事が終わり、車に乗り込みます。佐伯が乗ってきた車はリムジンタイプの社用車です。運転席からは後部座席の様子は見えません。
  1. 2014/08/12(火) 16:59:10|
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水遣り 第4回

乗ってみると後部座席は密室になるのが解ります。会議も出来るスペースです。運転席からは完全に遮断されています。クーラーボックスも付いています。A亭から自宅へは20分位の道程でしょうか。妻は安心しきっています。酔いが手伝い、シートにもたれ目を閉じ、少し頭を佐伯の方に傾げています。

妻は眠ってはいません、又眠れる状態ではありません。密室にお互い悪く思っていない、しかも酔った二人だけが居ます。妻は何かを期待しているのかも知れません。どれ程走ったでしょうか、佐伯が突然、妻に接吻をします。佐伯の胸を手で押します。ほんの小さな力です、形だけの抵抗は佐伯に悟られてしまいます。「いやっ」と言う声も佐伯の唇に塞がれ吐息に変わります。

妻の小さな唇の形が変わるほど吸われ、佐伯の舌が妻の舌を誘い出します。 初めはおずおずと舌を預けます。舌を舐め合っているうちに自分を忘れてしまうのです。妻の舌を十分味わった佐伯は唾液を流し込みます、それも大量に。妻はゴクリと喉を鳴らし飲み下します。食道を通り胃の腑へと流れ落ちていきます、それは乳首と女陰に電撃を放つのです。乳首は硬く尖り、女陰は濡れそぼります。佐伯の手はブラウスのボタンを外し、ブラジャーの下にある乳首を捉えます。掌でさわさわとこすり上げ、親指と人差し指で摘み捻ります。ワインを口移しで飲ませ舌と舌を絡めながら、それは強弱をつけて続きます。苦しくなったのでしょうか、溜息と共に顔が離れます。佐伯はブラジャーを取り乳首を口に含みます。舌で転がし甘噛みします。妻はもう忘我の境地です。顔を佐伯の肩に預け、半開きの口からは甘い善がり声と共に「あぁ部長さん」と声が漏れるのです。妻は乳房への愛撫だけで達してしまったのです。

突然の佐伯の声に、妻は我に帰ります。

「宮下さん、そろそろ君の家だ」

山の頂から麓に下ろされた様な気分です。何と答えて良いのか解りません。

「少し手前で降りたほうが良いだろう。人の目があってはいけない」
「はい、そうします」

妻はこれも佐伯の心使いだと受け取ります。

「僕は来週月曜日から一ヶ月位本社を留守にする。大阪支社の立ち上げがいよいよ本番だ。留守中は宜しく頼む」

出張は以前から決まっていた事です。佐伯は、妻に男としての印象を残す為に食事をわざわざ今日にしたのです。 

『洋子はもう落ちたな。完全に俺の女にしてやる』

「部長、今日はご馳走様でした」

車を見送り家に向かいます。100メートルばかりの距離をどんな風に歩いたのか覚えていません。はずれたブラジャーはハンドバッグの中です。一歩送る度、佐伯に愛撫され敏感になった乳首がブラウスに擦れ先程の快感を呼び起こします。しとどに濡れた女陰は歩く度にくちゅくちゅと音を立てているようです。

玄関が見えると一気に現実に戻ります。居間の灯りが点いていません。夫は未だ帰宅してないのです。ほっとしました。シャワーを使います。シャワーの飛沫が乳首にかかり快感を弾き出します。女陰からは止めどもなく愛液が流れ出します。 

『どうしてしまったのでしょう私の体は?』 

この体の変化が不思議なのです。妻は膣に手をやります。クリトリスは自分の手でも、夫の圭一にも愛撫してもらった事はないのです。右手は膣に左手は乳房に。膣口を擦り上げ、乳房を揉みしだき夢中でオナニーをするのです。妻にはオナニーの習慣はありません。 結婚前に数度、その程度です、勿論結婚してからは一度もありません。

オナニーで絶頂に達します。一度では体が満足していないのが解ります。達した後も手が膣に乳房に伸びてしまうのです。佐伯の名を呼びながら、何度も何度も絶頂に達しやっと体の火照りから解放されます。こんなに体が求めるのは佐伯への思いが強いからだと妻は信じ込んでしまうのです。

佐伯は媚薬を使ったのです。ワインに混ぜて飲まされたのです。佐伯は焦ってはいないのです。今日、行為まで及ばなかったのは、妻に佐伯を恋焦がれる思いを十分にさせたかったのです。金曜日には私の帰宅が10時以降になる事も妻から聞いて知っています。妻がオナニーをする時間は十分あります。そして佐伯の計画はまんまとその通りになったのです。

3時間程の持続性のある媚薬です。食事を始めたのが6時半、今は10時、そろそろ薬の効果が切れる頃です。着替えが終わり居間のソファーに座ります。 

『さっきまでの私は何だったのでしょう? 今の私は夫にどう映るのでしょうか?』

媚薬の効果が薄れ平常に戻った妻は急に心に痛みを覚えます。
  1. 2014/08/12(火) 17:00:15|
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水遣り 第5回

金曜日の夜はほぼ毎週、得意先と懇談を兼ねた食事会です。本当
は早く帰りたいのです。たまには金曜日の夜、妻とゆったりと過
ごしたいのです。自然と帰り足が早くなります。
 
「只今」
「貴方、お帰りなさい。お疲れ様でした。お風呂にしますか?」
「そうしてくれ。飯はいい。客と食べてきた」

仕事から帰れば先ず風呂です。妻と過ごす時は清潔でいたい、そう
言う気持ちがあるからかも知れません。妻は常に私の後です。結婚
して以来の習慣です。

バスルームに入ります。

『うん?』

タイルが、誰かが風呂を使った後の様に濡れています。一瞬、女臭の様なものを嗅いだ気がしましたが、石鹸の強い匂いに紛れてしま
います。

『気のせいか』

「洋子、お風呂使ったか?」
「はい、今日棚卸しのお手伝いで汗をかいたの。先に使って御免なさい」

私の何気ない言葉に妻の表情が変わります。小さな事でも嘘が嫌いな妻です。嘘をつくのが辛いのでしょう。私はその嘘が気づきませ
ん。

「いや、良いんだ。タイルが濡れていて気になっただけだから」

妻はその話題から逃げたいのでしょう、話を逸らします。

「貴方、ビールにしますか、それともウィスキー?」
「今日はワインが飲みたい。ワインにしてくれないか」

妻は目を伏せます。

「はい、解りました」

ワインの言葉で佐伯を思い出したのでしょうか、顔が朱色に染まり
ます。鈍感な私にも妻の様子の変化が解ります。ふっと物思いに沈
んだ顔の中に、いつも以上の色気を漂わせています。

「顔が赤いが、どうかしたか?」
「棚卸しで疲れたみたい。でも大丈夫です。私もワイン頂こうかし
ら」

私にこれ以上詮索されたくないのでしょう。顔の赤みをワインで相
殺させます。

私は性への欲求は強い方ではありません。いや、妻がセックスに興
味が無いものと思い込み自分の衝動を抑えているだけかも知れませ
ん。しかし今日の妻の表情を見ていると抱きたい衝動が湧いてきま
す。 

妻を寝室に誘います。 

「おいで」
「疲れてるの。その気になれないわ」

私のベッドに体を横たえたものの、やんわり拒絶します。ほんの1
時間ほど前に4度も5度も達した体です。後には何も残っていないのでしょう。

それでも強引に口を吸い、乳房を愛撫します。少しは感じたのでしょうか、妻の口から甘い香りが漂ってきます。妻は感じ始めると甘
い吐息を漏らすのです。膣の中に自分の物を収めると何か違う感じ
がします。いつもより熱く、少し緩い感じがします。愛液も多い様です。しかも、いつもは私の背中を抱く妻の腕がありません。だら
りとベッドの上に伸びたままです。10数分かの結合の後、妻の膣に
精を放ちます。妻は達していない様です。今時の高校生ならもう少
しましな事をするでしょう。自分でも随分稚拙だと思う時がありま
す。

『妻は達していなかった。どうして背中を抱かなかったのだろ
う?』

ふと疑問が湧きますが、仕事の疲れから睡魔に襲われ直ぐに眠って
しまいます。 

自分のベッドに戻った妻は眠った私の横で冴え冴えとしています。
  1. 2014/08/12(火) 17:01:31|
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水遣り 第6回

『勝手な人。私を置いていって。もう少しだったのに』

考えずとも、妻は私と佐伯の愛撫を比べてしまいます。

佐伯には乳首を愛撫されただけで達してしまう。乳首がこんなに感じるとは思ってもいなかったのです。夫のそれは雀が啄ばむ程度にしか感じません。佐伯の接吻はストレートグラス一杯にも余る量の唾液を流し込まれ、全身に疼きを走らせたのです。舌と舌を絡み合わせ、痺れるほど思い切り吸われ、長い舌を差し込まれた時は脳を焼かれる思いでした。佐伯の唾液、長い舌は、その経験が無い妻にとっては、ザーメン、男根に匹敵、いやそれ以上のものだったのです。夫とのそれはただ唇と唇を、舌と舌を合わせるだけです。勿論、唾液を飲んだ事もありません。 愛する人との人との行為はそれでも快感をもたらします。しかし、佐伯の行為は次元が違います。妻のメスの本能を掘り起こすのです。

夫に対し酷い事をしてしまった、すまないと言う思いはあります。しかし、まだ抱かれた訳ではありません。そんな思いより、佐伯に植えつけられた快感の残滓の方がはるかに大きいのです。たった一度、口を吸われ、乳首を愛撫されただけでこんなにも変わってしまった。もし佐伯に抱かれたら、またどう変わっていくのでしょうか? 

『佐伯に抱かれてみたい』

佐伯のまだ見ぬ男根に思いを馳せてしまうのです。

明くる朝、目覚めて暫くすると昨夜の事が蘇ってきます。あれが現実の事だとは信じられません。初めての食事で唇と乳房への愛撫を許してしまった、それも会社の上司にです。自分がそんな事をする女だったとはとても信じられません。今考えれば、代行の件にしても、何故断らずに佐伯の車に同乗してしまったのか、普段の自分からは想像も出来ない事です。夫に抱かれた後、佐伯と比較してしまった事、佐伯を思い描いてしまった事、そんな自分を恥じ入ります。

媚薬を使われたとは知る由もありません。何も知らない人が媚薬を使われても大した効果はない様です。その状況と”媚薬を飲んだ”と言う本人の意識が効果を高めるのです。妻の場合は ”媚薬を飲んだ”意識はなくとも、最高級の料亭の個室での食事、佐伯による体へのタッチ、その後のリムジンでの帰宅、それも頼れる上司と二人きりです。どんな女でも気分が高揚し何がしかの期待感も生まれるでしょう。佐伯の接吻がトリガーになり後は頂まで駆け上るだけだったのです。

媚薬の体への効果は3時間程度のものです。精神の高ぶりはもう少し続くようです。しかし、精神への影響も無くなった今、妻は激しく後悔し、夫の顔を見る事もできません。

その日の朝食が終わった後、二人でコーヒーを飲んでいます。妻が淹れたコーヒーはいつもの休みの朝と同じ様に、変わらぬ朝の寛ぎを与えてくれます。

「洋子、今日は何か用事はあるか?」
「いいえ、有りません。何か?」
「うん、付合って欲しい所がある」

二人は車で出掛けます。県立公園です。公園の中にグリーンセンターの建屋があり、その中に入ります。

「ネットで検索していたら、花の無料展示スペースが出ていたんだよ。この建屋の中にあるらしい」

この公園は県下でも大きな公園で、近い事もあり二人で時々遊びに来ます。グリーンセンターの中に入った事もあります。以前はそういうスペースは無かったのですが、つい最近、中の一部を開放したようです。

「あら、ここが展示スペースだわ。 バラが沢山出ているわ」

今は遅咲き薔薇のシーズンです。 薔薇の鉢には出品者の名札が貼ってあります。床に直置きしてあるもの、テーブル上に飾られてあるもの色々あります。 

案内パンフレットを読んでみます。

「うーん、ここは一人5鉢まで、って書いてあるな」
「5鉢じゃ少なすぎるわ。20位あるわ、見てもらいたいなぁと思う鉢は」
「タダなんだから、あまり無理を言ってもしょうがない気がするが。もう一か所探しておいたから、そこへ行ってみよう」
「嬉しい。私の為に探してくれたの?」
「そうだ。僕の頭の中は何時も洋子の事で一杯だ」
「まぁ、そんな事を言って」

冗談めかした事を言っても妻は嬉しいのです。朝、出かける時は沈んでいた顔が明るく笑っています。次の場所は大きな民家に手を入れて展示館として市が管理しているものです。20畳位のスペースを1週間貸してもらえます。しかも無料です。予約は2か月前から早い者勝ちです。管理人の方から上手い予約の方法を教えて頂きました。予約は問題ないでしょう。

「ここが良いわ。ここに決めた、貴方、有難う」

帰途、クリスマスローズの素晴らしさを延々と私に話して聞かせます。本当に嬉しそうです。

帰ると妻はクリスマスローズの鉢一つ一つに話しかけています。

「貴方達、展示会に出してあげるからね。 一生懸命、水遣りするからきれいにお花を咲かせてね」

それから1週間は何事も無く過ぎて行きます。
  1. 2014/08/12(火) 17:05:54|
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水遣り 第7回

次の週の土曜日の朝、夫は午前中出勤です。出勤と言っても自分一人の会社です。先週忙しかったらしく、整理をしに出かけただけです。

佐伯から渡された携帯に着信があるのに気がつきます。会社を出れば、マナーモードにしておくように言われています。発信者はTS、佐伯のイニシャルです。着信時間は昨晩の11時になっています。 

『何かしら?』

休み前のしかも遅い時間に用もない筈なのにと思いながらも、発信します。

「佐伯だ」
「宮下です。昨晩は電話を頂いたのに気がつかなくて申し訳ありません」
「なにも誤ることはない。あんな遅い時間に電話した僕の方がいけない」
「済みません。何かご用ではなかったのですか?」
「いや、用は何もない。ただ、昨日こちらで良い話があったので、君に真っ先に聞いてもらいたかった」
「私なんかにですか?」
「君にだからだよ。女房がいれば、女房になんだろうが、生憎僕にはそう言う女性は居ない」

佐伯は5年前に離婚しています。離婚の理由は知りません。 

頼れる上司からそう言われれば、悪い気はしません。

「お仕事うまく行ってるのですね。良かったですね」
「君にそう言ってもらえると、本当に嬉しいよ」
「昨晩は寝不足なんだ。君から電話がいつ来るかと待っていたんだ。少々、辛かった」
「これからは直ぐ出れる様にします」

就業時間外の、しかも社用でもない話、そんな電話に本来直ぐ出る必要はないのです。しかし、正社員してもらったと恩を感じています。直ぐ出なければと思ってしまうのです。妻は佐伯の仕掛けた罠に又一つ自分から嵌まってしまいます。この時から妻は佐伯の携帯
を肌身離さず持ち歩くようになります。

自分の携帯に着信音がなります。

「はい」

思わず、部長と言うところでした。

電話は夫からです。 

「洋子、昼飯の支度は終わったのか?」

佐伯との電話の後暫くぼうっとしていました。 食事の支度どころではありません。

「いいえ、まだです」
「そうか、それでは外で済まそう。これから帰るから」

「ただいま、食事に行こうか」
「どう言う風の吹き回しですか、お昼を外でなんて」
「うん、仕事の延長の積もりで君に聞いてもらいたい事がある。
それには外の方が良いと思ってね」

私は妻とUホテルと言う割と大きなビジネスホテルで食事をします。洒落たレストランが併設されています。

「また一つ良い話が纏まった。台湾の新しいメーカーの日本代理人になれそうだ。営業的な事は僕一人で大丈夫だが、処理とか書類の整理とかちょっと手に負えなくなりそうだ。それに経理もそろそろ中でやりたい」
「新しいお仕事がまた出来たのですか。良かったですね」

今経理処理は定期的に税理士さんを頼んでいます。この機会に書類、帳簿の整理を含め経理も任せる人を一人雇おうと考えているのです。それを妻にと思っています。

「一人雇おうと思っているのだが、どうだろう、君がやってくれないか。そうすれば、外に金が出ないし、君とずっと一緒に居られる」
「どれ位お給料払う積もりなんですか?」
「うーん、月10万円位かな。そんなに忙しい訳でもないし、パートで良いと思っている。」
「経理もでしょう? 10万円じゃ無理よ。誰も来ないと思います」
「そうか、でも君なら大丈夫だろ10万円でも」
「私は経理の知識もないし、それに今の所を辞めればその差は大きすぎます」
「経理は少し勉強すれば慣れるさ、そんなに処理件数は多くないから。15万円ならどうだ」
「大差ないわ。今のお仕事も面白くなってきたし辞めたくないの。もう少し頑張れって言ってくれたじゃない。とにかく一日でも早く自分の家が欲しいの」

家の事を出されれば、それ以上反論出来ません。結局、妻に押し切られます。

次の週、二人の女性と面接します。32歳と38歳の方、二人共独身です。余り若い方はどうかと思い38歳の方を採用します。 松下由美子さんと言います
  1. 2014/08/12(火) 17:08:02|
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水遣り 第8回

直ぐ電話に出ますと言ってから、佐伯は一日に一度は必ず電話をして来ます。決まって6時頃です。この時間なら夫は未だ帰宅していないと考えての事でしょう。内容は他愛のない事ばかりです。

話の内容は妻の身近な事が多いようです。夫の仕事が忙しくなり38歳の女性を一人雇うようになった事。その女性が来週火曜日から出社予定である事。夫の昼食はコンビニで買った弁当かUホテルのレストランで取り、それは隔日の周期である事等です。佐伯が妻の辺を探りたく、それとなく聞き出した結果でしょう。それがとんでもない事になるとは妻は知る筈がありません。

今日は金曜日、7時になっても電話はありません。不思議なもので電話がないと寂しさが湧いてきます。何かあったのかとも思います。8時を少しまわった頃です。
着信マナーがズボンのポケットで震えます。発信が途切れない様にと慌てて出ます。

「洋子です」

何故、洋子と答えたのか解りません。待っていた電話に思わずそう言ってしまったのです。徐々に佐伯に感化されているのです。

「嬉しいな。洋子と言ってくれたね。これからも洋子と呼ぶよ」
「はい」
「ところで僕の事を何と呼んでくれる。部長さんじゃいかにも味気ない。」
「何とお呼びすれば?」
「ご主人の事は何と呼んでる?」
「貴方です」
「そうか貴方か。僕も貴方と呼んで欲しい」
「貴方ですか?」

一度快感を与えてくれた相手とは言え、”貴方”では違和感があります。逡巡します。貴方では夫を裏切っている様な気になるのでしょうか。もう既に裏切っている事に気がつきません。

「貴方は無理か。ご主人と間違ってしまうものな。俊夫でいいか。”貴方”は呼べる時が来たらでいい」

呼べる時とは何を意味するのか、妻は考える間もなく答えます。

「はい。俊夫さん」
「ところで洋子、君宛に小包を送ったのだが」
「今日夕方受け取りました」
 
夕方着く様に佐伯が送ったのです。妻に開けるよう指示します。

「葡萄の瓶詰めですか?」
「高級葡萄を何時でも食べれるように瓶詰めにしてもらった。缶詰は缶の匂いが残りそうで嫌なんだ。旨ければ店で扱おうと思っている」
「それがどうして私に?」
「君は農学部の修士だ。君の意見を真っ先に聞きたい」

こんな時には君と呼びます。仕事と私事を使い分けします。

妻が正社員になれたのは、院を出ている事に負うところが大きいのです。妻の会社はこれから農産物を大きく扱おうとしています。人事部でも修士が評価されました。以前から妻を正社員にとの声はあったのです。それを妻は佐伯のお陰だと勘違いしています。

葡萄の瓶詰めを扱う計画があるのか、どうかは解りません。只、佐伯が送った瓶詰めは佐伯自身が瓶詰めしたものです、媚薬を溶け込ませて。

梱包を開けると大きめの葡萄が3粒入った瓶が出てきます。蓋には丁寧にビニールテープが貼ってあります。蜜が大目に入っています。
  1. 2014/08/12(火) 17:09:21|
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水遣り 第9回

「それを食べて感想を聞かせて欲しい」
「今ですか?」
「そうだ。蜜も残さずに頼む」

蜜も飲み干すと少し薬品臭さが残ります。

「どうだ、旨いか?」
「うーん、正直言っていいですか?」
「それが一番有難い」
「スーパーで売っている物の方が美味しい気がします」

その時、佐伯の電話の向こうから、ホテルの館内電話の呼出音が聞
こえます。

「悪い、お客さんが来たようだ。又後で電話する」
「遅くまで大変ですね。お待ちしています」

館内電話は佐伯がフロントに頼んでおいたものです。この時間に電
話するようにと。

媚薬が効き出すまでそれ相応の時間が掛かるのです。目安は飲んで
から30分位でしょうか。

妻は佐伯の電話を待っています。佐伯が妻の体を媚薬に馴染ませる
為に仕組んだとも知らずに。暫くすると動悸が早くなってきます。
そして、乳首が微かに疼き、女陰が熱くなるのが解ります。

丁度30分後、携帯が着信を知らせます。

「はい、洋子です」
「君の顔が見たい。これからはテレビ電話モードにしてくれない
か」
「解りました」
「どうかしたのか? 息が荒いようだ」

媚薬が効いているのが解ったようです。

「ええ、何か体が熱くって苦しんです。」
「それはいけない。 胸をさすってごらん」

妻は胸をさすります。手が乳首に触れたときふっと快感が走りま
す。

「うっ」
「どうした」
「何でもありません。」

思わず漏れた声を佐伯に聞かれ恥ずかしいのです。

「楽になるまでさすればいい。僕が聞いててあげるよ、洋子」

洋子と呼ばれ触発されます。T-シャツを脱ぐと、ブラジャーを着け
ていない乳房がこぼれます。片手で乳房を揉みしだき、乳首を捻り
あげ、爪で掻きあげます。もう一方の手は電話を掴んでいます。

「あぁ、俊夫さん、気持ちがいいんです」

快感を与えてくれる佐伯に伝えずにはいられません。

「両手を使ってごらん。電話はテーブルに置いて、口を近いづけれ
ばいい」

命令されているのです。妻は言われた通り両手で乳房、乳首を愛撫
します。

「気持ちいいか、洋子」
「はい、逝きそうです。逝っていいですか」
「早すぎる。まだ駄目だな。それに洋子はオッパイだけで感じるの
か?」
「いいえ、こんな事は部長さん、いえ俊夫さんが初めてです」

喘ぎ、喘ぎ妻は答えます。

実際、自分の乳房への愛撫が始まってからものの5分も経っていま
せん。
  1. 2014/08/12(火) 18:53:50|
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水遣り 第10回

妻は自分でも快感の源泉が何なのか解らないのです。佐伯に与えら
れたものだと信じてしまいます。

「苦しいです。もう、もう逝かせて下さい」
「そうか、じゃあ一度逝きなさい。」
「あぁ、有難う御座います。俊夫さん、好きです。あぁ、今逝きま
す」

又、乳房だけで逝ってしまいました。思わず好きですと言ってしま
いました。快感を与えてくれる相手に自分の感情を伝えるのがもど
かしいのです。相手は遠く離れています。それには言葉しかありま
せん。好きです、気持ちいいです、逝きます。そんな言葉をならべ
ても、まだまだ伝え切れません。

佐伯は驚きます。

『乳房だけで逝ってしまうとは、膣を使えばどうなるのだろう
か?』

経験豊富な佐伯にも妻のように敏感な女は想像がつかないのです。
一日でも早くこの女を抱いてみたい。そう思うのです。

「良かったようだな」
「はい、俊夫さんに聞いてて頂いて、とても・・・」

その後は言葉になりません。

「今度はオマンコを慰めてあげようか。オマンコに手を添えて。」

オマンコと聞いて妻は怯みます。

「出来ません。許してください」
「どうしてもか?」
「はい、堪忍して下さい」
「解った。妻と離婚して5年になる。ずっと禁欲生活みたいなもの
だ。僕も寂しかった。無理を言ってすまない」

電話はここで終わります。

『ここで無理をする事は無い。ここで嫌われては元も子もない』

百戦錬磨の佐伯です。次の手を考えようとします。

ダブルベッドに寝ている佐伯の横から女の声が掛かります。北新地
の女です。大阪に来るとホテルに呼んでいます。

「貴方も酷い人ね。女が横に居るのに、別の女に電話でオナニーさ
せるなんて」
「お前とは別次元の人だよ。全然違う」
「オマンコがどうのとか言ってたけど?」
「オッパイでは感じたんだがね、アソコは触りたくないらしい」
「ふーん、変なの。もう彼女とは寝たの」
「貞淑な人妻だよ。そんな簡単には行かない」
「そお、多分ね、彼女、ご亭主に操を立てているのよ」
「オッパイで感じて、今更操でもないだろう」
「女心はそんな単純じゃありません。それを取ってあげればいいの
よ」
「ふうん、そんなものか」
「そんな事より早く」
  1. 2014/08/12(火) 18:55:28|
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水遣り 第11回

オマンコと聞いて妻の気持ちは引きます。快感の波が引潮のように
引いて無くなってしまったのです。先日、佐伯と別れた後のバスル
ームでは出来たのです。佐伯の名を呼びながら達したのです。電話
でとは言え、今回は佐伯と繋がっていました。繋がって女陰を触
る、夫への背信の思いを呼び起こしたのでしょうか。背信への思い
が媚薬の効果と快感を凌駕しました。急に疲れに襲われシャワーも
浴びず、着替えただけでベッドで眠ります。帰ってきた夫にも気が

付きません。

「どうした。疲れたか?」
「ええ、少し熱があるみたいで」

夫の掌が額に触ります。冷たい感触がぼーっとした頭にとても気持
ちいいのです。自然と涙が浮かびます。

「涙なんか、流してどうしたんだ」
「嬉しくって」
「飯は食べたのか? お粥でも作ってあげよう」
「はい」

『妻はどうしたんだろう? 正社員になってから少し様子が変わっ
た。疲れが溜まっているだけならいいんだが』

私は物事をあまり深く考えない性質です。仕事でも処理する事、考
える事が多く時間が足りません。深く考えないで旨く物事が運ぶ
ケースの方が多いのですが、勿論失敗した事もあります。表面化し
てから考える私の性格が災いしてしまいます。

『私が愛しているのは夫だけなのに。佐伯の声を聞くと変になってしまう』

妻はこの時から佐伯の電話に出ない決心をします。

翌々週の火曜日の事です。課長に声を掛けられます。

「少し早いが出張に出て欲しい。宮下さんが一番適任なんだ」
「部長からは3ヶ月後くらい経ってからだと聞いていますが。私で
なくては駄目なんですか?」
「農産物関係なんだ。土壌も見て欲しい。大きなプロジェクトだか
ら君のような専門家の目が欲しい。社命だと思って欲しい」

社命とあらば仕方ありません。妻は出張を受けます。

「解りました。何日ですか?」
「今週の金曜日だ。」
「随分急ですね。それで何処へ?」

出張先は大阪です。

「大阪だ。君も知っての通り西日本の拠点になる一大センターを建
設中だ。その核の一つが関西地区の農産物だ」

大阪と聞いて妻は不安にもなるのですが、会社に期待されていると
言う気持ちのほうが上回っています。
  1. 2014/08/12(火) 18:56:40|
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水遣り 第12回

佐伯は若干焦ります。

オマンコの言葉で引いてしまった妻。その後携帯に電話しても妻は
出ません。仕事では無いので会社の電話で叱責するわけにもいきま
せん。更に佐伯に追討ちが掛かります。出張が建設工期の遅れ等で
半月位延びそうなのです。1週間や10日に一度位は本社に業務目的
として帰る事は出来ます。土曜日、日曜日にもそれは出来ます。 
体の関係が出来てからならともかくそんな時に妻を連れ出す事はい
くら何でも出来ません。

これから3週間余りも我慢出来ない。佐伯は思案します。

『宮下は週に2、3回は駅前のホテルで昼飯を取る。女性社員を一人
雇った』

今、本社では本社所在の駅の近くにアンテナショップを創る計画が
あるのに気がつきます。人の流れを掴む為、周辺をビデオ、デジカ
メで長時間撮影しなければなりません。もう撮影は始まっていま
す。

『これは使えるな』

本社に確認すると、ホテルの出入口もその対象になっています。全
ての対象の重点時間は10時から2時までと5時から7時となっていま
す。一週間の連続です。その作業も明日で終わります。佐伯はその
記録を大阪の自分のホテルに送らせる手配をします。誰も疑問に思
いません。大阪の新センターの参考にする、その一言ですむ事で
す。只、ホテルの分だけで良いとはさすがに言えません。

10数本のUSBメモリーが送られてきます。記憶容量は16GB、10数本
で300時間分以上の画面が記録されているでしょう。勿論すべて見
るつもりはありません。ちゃんと仕分けされています。対象別、曜
日別、時間別と。その中から、Uホテルと書かれている平日のもの
を見ます。佐伯は私と一度会っています。妻とホテルで食事してい
る時に、居合わせた佐伯を見つけた妻が紹介したのです。佐伯は月
曜日から順番に見ていきます。簡単に見つけました。火曜日に松下
さんを連れて食事に行ったのです。 

ホテルに入った時のもの、出てきた時のもの、数枚自分のラップト
ップパソコンに移動させてます。

『宮下も女性の顔もはっきり写ってるな。それにしても嬉しそうな
顔をしてるな、この女は。お誂え向きだ。入った時間は11:57、出
た時間は12:38か。随分早いな。まあ良い。時間は何とでもなる』

パソコンの知識がある者なら時間を改竄するくらい訳も無い事で
す。日時の部分を切り取って、新しく訂正したものを背景を合わせ
て貼り付ければいいのです。法定資料にする訳ではありません。知
識の無い妻を騙すくらい簡単なものです。こうして時間は入った時
間11:32、出た時間14:23と書き換えられます。綺麗にプリントし
て、鞄に仕舞います。

しかし、業務に託けて本社に帰ったときに妻に見せるのではどうも
不自然です。妻を大阪に出張させ、それとなく妻に見せる。妻が受
けるかどうか賭けてみる事にしたのです。

本社から電話です。

「宮下さんを出張に行かせる事になりました」
「そうか」
  1. 2014/08/12(火) 18:59:36|
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水遣り 第13回

その日の夜、帰ってきた私を待ち構えていたように、妻は話しかけ
てきます。

「今度の金曜日、大阪に出張なの。すみませんが、良いですか?」
「良いですかって、決まっているんだろう。でも出張は3ヶ月くら
いからって、言ってたんじゃないか?」
「それが大阪センターの方で、こちらサイドでも農地の土壌を見る
目のある人に来て欲しいのですって」
「君が見たくらいで解るのか?」
「それくらい見る目はある積もりです」
「日帰りなのか?」
「なるべく日帰りですむようにしてくれるみたいです。でも無理な
場合は泊まっていいですか?」
「まあ仕方がないか。僕もどうせ金曜日は遅いし。あまり気にせず
に頑張ってくればいい。初出張だしな」

私は気持ち良く了承します。妻の力が認められ嬉しくない訳があり
ません。妻も心持張り切っているようです。

木曜日の退社時間間際になって、妻は一つの事が気になりだしま
す。

『私、ショーツは普通のしか持っていない』

妻の下着は本当に地味です。今時の女子高生でも履かないでしょ
う。妻は有り得ない事、有ってはならない事を考えてしまうので
す。もし万が一、部長とそんな事になってしまったら、今の下着で
は恥ずかしいと思ってしまうのです。何と言う事を考えているの
か、妻は自分の思いを打ち消すのですが、思いはぐるぐる回りま
す。

考えがつかないまま、退社時間になり車を家へと走らせます。途中
にランジェリーショップがあります。

『やっぱり買って行こう。普段履くわ。圭一さんの驚く顔も見たし
し』

自分に言い訳をつくってショップに入ります。セクシーなショーツ
を選ぶのは初めてです。T-バック、紐パン、透けて見えるようなも
の、真ん中に穴があいているもの、とても自分が履けるものではあ
りません。しかし妻は思うのです。こんなの履いて男に見られたら
どう感じるのでしょうと。相手は夫なのか佐伯なのかは別の事で
す。

結局、妻は4枚のショーツを買います。2枚は少し派手目の普通のも
の、1枚はT-バック、そしてもう1枚はデルタ部分が隠れるだけの腰
の部分で紐で結ぶバタフライ。お揃いの色のブラジャーも買うので
す。
  1. 2014/08/12(火) 19:00:42|
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水遣り 第13回

翌日、妻は少し昨日買った少し派手目の普通のショーツを身につけ
て出掛けます。 T-バックとバタフライ、同色のブラジャーは鞄に
しのばせてあります。迷った挙句持ってい行く事にしたのです。

妻は9:00の新幹線で新大阪に向かいます。新大阪駅には現地のス
タッフが迎えで待っています。スタッフの方は二人、二人とも女性
で何となく安心します。現場は二つあります。高槻と京都です。 
12:30ピックアップしてもらって車で最初の現場、京都に向かいま
す。最初の現場が京都なら、どうして京都で迎えてくれなっかたの
でしょう、不思議に思います。佐伯の時間稼ぎなのです。妻を日帰
りで返したくないのです。車中、スタッフが説明します。
 
「本当は高槻の方を先にして、京都から帰ってもらいたかったので
すが、先方の都合で変則になりました」

そう言われれば納得するしかありません。

両方の現場とも農地として申し分ありません。肥沃な土地である事
が一目で解ります。契約農家の方と農地管理方針を話し、念の為、
土を瓶に詰めてもらいます。両方の現場には佐伯の姿がありませ
ん。高槻の現場が終わったのが、6時半。急げば7時半の新幹線に間
に合います。 

スタッフの方が話し掛けてきます。

「お疲れになったでしょう。今日はお泊りになられたら? 何れに
しても大阪方面に向かいますので、お考えになっておいて下さい」

今日は立ち仕事、土いじりが多く、疲れもし体中が埃っぽく気持ち
が悪いのです。7時半の電車に乗れたとしても、ローカル線を乗り
継いで帰宅するのは12時を過ぎるでしょう。泊まる事にしました。
スタッフの方が携帯電話でホテルの手配をしています。

「ホテルはOKです。佐伯部長が夕食を一緒にとお待ちになっていま
す。私達もご一緒させて下さい」

彼女達も一緒で安心して夕食を頂くことになります。妻が泊まるホ
テルは佐伯が常宿にしているシティーホテル。佐伯と女性スタッフ
2名がホテルレストランで待っています。チェックインを済ませた
だけでバッグを持ったままレストランに向かいます。

夕食が終わり彼女達が帰った後、食後のコーヒーを飲みながら佐伯
は妻に話しかけます。

「君の目で見てもらって良かった。さすが農学修士さんだ」

必要のないところで妻を持ち上げます。妻の気を引きたいのです。

「ところで、君に見てもらいたいものがある」

あくまで、仕事口調です。

「駅前通りにアンテナショップの建設計画があるのは、君も知って
いるな。建設場所を決めるのに駅前近辺の人の流れを調査した。君
にもそれを見てもらい、意見を聞かせて欲しい」
「私、そんなもの見せ頂いても何も解らないと思います。素人ですし」
「分析意見は専門家から勿論聞く。君は良い農産物を供給する側の
立場でもあるし、主婦として購買側の立場でもある訳だ。貴重な意
見になる筈だ」

佐伯の理論は間違ってはいません。妻は押し切られた形で納得しま
す。

「解りました。申し訳ないですが、なるべく短時間で済ませて下さい」
「勿論そうする。君の意見は直ぐでなくていい。後日聞かせてくれ
ればいい」
「それで、どちらで?」
「僕の部屋には事務室が付属している。そこにPCと資料ファイルが
ある」

妻は事務口調に安心して、佐伯について行きます。
  1. 2014/08/12(火) 19:01:44|
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水遣り 第15回

佐伯の部屋の前に来て、妻の部屋が隣である事に気付きます。

佐伯の部屋には通常のベッドルームの他に3畳程度の事務スペース
が、独立した部屋として付属しています。廊下側からもベッドルー
ム側からも出入りできます。佐伯の後について廊下側から入りま
す。 

「一通り見るのに30分もかからないだろう。見終わったら、休んで
くれていい。感想は明日の朝食の時間にでも聞かせてくれ」

テーブルを前にし、椅子を並べて二人でPCの画面に見入ります。先
ずはビデオの流れをさあーっと見せます。不自然にならない程度に
なるべく早く進めます。Uホテルを最初に見せるのは如何にも不自
然です。3番目に見せます。問題の場面に来ました。

「あっ、今のところ、もう一度見せて下さい」

佐伯はほくそ笑みます。妻は、私と松下さんがホテルの玄関を出入
りする場面に気がついたのです。

「どの部分かな?」
「ほんの少し前のホテルの玄関の部分です」
「何かあったのか?」
「いえ、少し気になる事があるものですから」

佐伯はビデオを後退させます。

「ここです。ここに夫に良く似た人が映っているんです」

妻は私が松下さんとホテルに入る場面と出てくる場面を佐伯に言い
ます。

佐伯は呟きます。

「女性と一緒のようだな。しかし少し確認しづらいな。」

あまり長くは見せたくありません。オリジナルビデオの時間の改竄
は出来ません。長く見させて、妻に本当の時間を知らせたくないの
です。佐伯は妻にわざと小さな画面で見せています。 

「このPCのソフトではこれ以上画面を大きく出来ない。拡大プリン
トしてみよう」

本当はそんな事はありません。見たい部分を幾らでも拡大できま
す。撮影したビデオは業務用です。解像度は高く、拡大しても画面
は鮮明な筈です。PCの知識の無い妻は簡単に信じてしまいます。

これ以上画面を見せたくない佐伯は、PCを別の場所に移し、妻から
は見えないようにプリンターをセットします。以前用意した改竄プ
リントをあたかも今プリントしたように妻の目の前のテーブルに並
べます。2枚で充分です。11:32のものと14:23のもの。

『間違い無いわ。夫と松下さんだわ。11時32分に入って14時23分に
出てきている』

妻は長い間写真を見つめています。3時間の間何をしているのか、
食事にしては長すぎる、打ち合わせをわざわざホテルですることも
ない。妻の考えはある一点に凝縮されるのです。
  1. 2014/08/12(火) 19:03:20|
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水遣り 第16回

「何を思案顔しているんだ?」
「いえ、何でもありません」
「僕にも見せてもらえるか?」

佐伯は今初めて見たように話します。

「この男性はご主人だな、一度あったので覚えている。この女性
は?」
「仕事に来て頂いている松下さんです」
「それなら、二人で食事に来たのだろう。君はご主人がよくこのホ
テルで昼飯を食べるって言っていたじゃないか。 何を心配してい
るんだね?」
「でも、3時間は長すぎます」
「その後、打ち合わせか何かあったかも知れない」

自分で仕組んでおきながら、妻を心配しているが如く諭します。

「有り得ません。主人の会社はすぐ近くです。打ち合わせなら会社
へ戻ると思います」
「では何だと思う」

『この人は、松下さんはどうしてこんなに嬉しそうな顔をしているの?』

妻は松下さんに嫉妬しているのです。

「多分・・・・」

夫が外出しない場合、二人は四六時中一緒にいるのです。 

佐伯は又、心優しい上司を演じます。

「コーヒーか紅茶でも飲んで、少し落ち着けばいい。どっちがい
い?」
「はい、では紅茶を頂けますか?」

「こっちの部屋に来なさい」

夫ではない男のホテルのベッドルームに二人きり。 妻には初めて
の経験です。高級な部屋なのでしょう、二人掛けのソファーとテー
ブルを挟んで一人掛けのソファーが二つ。

佐伯は二人掛けのソファーに座るよう妻を手招きします。テーブル
には紅茶。

「気付けに少しブランデーを入れておいた」

入れたのはブランデーだけではありません。カプセルの半分程度の
媚薬も入れています。喉が渇いていたのでしょうか、妻は一気に飲
み干します。

妻は一点を見つめたままです。 佐伯も無言です。

10分くらい経ったでしょうか。

「ここは23階だ。 大阪の夜景でも眺めてはどうかな」

佐伯は妻を窓際に誘います。 ボーっとした頭のまま、窓際に歩み
寄ります。

暫く夜景を眺めています。いつの間にか横に立っている佐伯にも気
がつきません。佐伯は妻の肩を抱き、髪を優しく撫ぜます。 妻は
嫌がりません、いえ、今は誰かに優しくされるのが心地良いので
す。

「ご主人は誠実な人だ。君が考えているような事はないだろう」
「でも、解りません。松下さんがあんなに嬉しそうな顔をしていま
した」

二人が一緒に居た時間より、女の顔の表情が胸をつくのです。

「そんなものか」

ブランデーを飲んで20分、佐伯は気は熟したと思ったのでしょう。
妻の頤に手を添え、自分の方に顔を向け口づけします。唇と唇の合
わせるだけの口づけです。

「私、私」
妻は佐伯に体を預けます。 
  1. 2014/08/12(火) 19:04:32|
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水遣り 第17回

抱擁された妻は乳首に女陰に快感の疼きが走るのを覚えます。佐伯
にこのまま抱かれたい、でも愛している夫を裏切れない。二つの思
いがせめぎ合います。 

そんな時、佐伯の一言が背中を押します。

「君がご主人の事をそう思っているなら、君も一度だけ同じ事をす
ればいい。気持ちが軽くなるかも知れない」

そんな理屈はありません。しかし妻はこの言葉で夫への気持ちを摩
り替えるのです。

『私が抱かれるのは圭一さんが悪いんだわ』

「シャワーを使わせて下さい」

半日の作業で体は汗に塗れています。このまま抱かれたくはありま
せん。

「そこに予備のバスローブがある。それを使えばいい」

女性用なのでしょう、小さめのものを見つけました。

「何を怪訝な顔をしている。この部屋はキングサイズダブルだ。そ
れ位の用意はある」

妻のそのバスローブを持ってバスロームに入ります。シャワーが終
わった後迷います。持ってきたショーツはバタフライとT-バック、
普通のものはありません。

『やっぱり、こんなものは履けない』

これを身に着けると変わってしまうかも知れないと思うのです。今
までの自分ではなくなってしまうと。しかし、バタフライとT-バッ
ク、これしかないのです。バタフライとそして同色のブラを身に着
けます。何か変わった自分を感じます。口では旨く言えません、淫
靡になったとでも言うのでしょうか。

バスルームを出た妻は、佐伯に手招きされます。佐伯の座っている
二人掛けのソファーの隣に座るようにと。テーブルにはワイン、ブ
ランデー、チョコレートが置かれています。

「まだ9時だ。夜は長い。ゆっくりすればいい」

佐伯は焦る気持ちを自分に言い聞かせるように言います。

妻はチョコレートを摘みにワインを飲みます。半カプセルの媚薬が
入ったワインを。佐伯は何も仕掛けません。暫く世間話をしていま
す。媚薬が効くのを、妻が焦れるのを待っているのです。

妻に話しかける口調が変ります。

「洋子、君は本当に美しい。君のご主人が羨ましい」
「いやっ、主人の事は言わないで」

妻の方から佐伯の首に抱きつくのです。
  1. 2014/08/12(火) 19:06:07|
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水遣り 第18回

佐伯は思い切り妻の口を吸います。舌を引き出し弄びます。自分の
舌を妻の口に差し入れ口の中を掻き回します。そうしながら佐伯は
妻のバスローブを肌蹴ます。佐伯はバタフライとブラだけの妻の体
をまじまじと見入ります。

『何と言う体だ。これが45才の体か』

妻は中学時代から水泳部に所属し、それは大学まで続きました。国
体にこそ出ませんが、県大会レベルの力を持っています。今でもス
ポーツクラブで鍛錬を欠かしません。 私も水泳をしていました。
妻とは大学対抗で知り合ったのです。40も半ばになり少しは贅肉も
付いてきましたが見事に均整がとれています。

「立ってごらん」

佐伯は命じます。妻は快感の波に飲まれそれどころではありませ
ん。立てないのです。それでもテーブルを頼りによろぼいながら、
ふらふらと立ち上がります。

佐伯は妻の体を凝視します。

ブラに包まれていますが、まだ垂れもせずお椀型の乳房、見事に括
れたウェスト、張り出したヒップ、適度に肉がついた太腿、佐伯は
舌なめずりをするのです。

『こんな女が今に俺の思い通りになる』

佐伯はまだまだ観察するのです。

「そのブラを取って。それにしてもエッチはブラだな、乳首が隠れ
ているだけじゃないか」

言葉でも甚振るのです。

見事に尖がったピンク色の乳首が現れます。

次はショーツです。

「次はそのパンツだ。何と言うパンツだ。俺に抱かれたくて、見せ
たくてしようがなかったんだな。待て、それは俺が脱がしてやる。
こっちに来るんだ」

ソファーに座っている佐伯の直ぐ目の前に妻が来ます。

佐伯はバタフライの紐に手を掛けます。

「何だ、パンツがもうビショビショじゃないか。もう少し我慢しな
さい。後でたっぷり可愛がってやるから」

「足を広げて。パンツが脱がしづらい」

妻が広げた足を、佐伯は更に広げ女陰を観察します。それはすーっ
と一本の線が引かれたようです。大陰唇の膨らみが僅かに解る程度
です。クリトリスも小陰唇もその顔を出していません。

『あまり使っていないようだな。仕込み甲斐があると言うものだ』

「後ろを向きなさい」

妻は後ろを向きます。綺麗に正中腺が窪んでいます。尻の双丘は高
く盛り上がり、それ故、割れ目が深いのです。

『見事な尻だ。叩き甲斐がある』

佐伯は尻の割れ目を開き菊門を観察します。

『綺麗なもんだ。ウンコさえも通った事もないよう穴だな』

佐伯の我慢も限界です。男根からは先走りが雫になって落ちていま
す。妻を抱き上げベッドに運びます。
  1. 2014/08/12(火) 19:07:18|
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水遣り 第19回

佐伯は薄いブランデーを口移しで飲ませます。妻は舌を出しそれを
受けます。ブランデーを飲み下した後も何か催促するように舌を佐
伯の口に預けたままです。 

佐伯は大量の唾液を送り込みます。

『お前は俺の女だ』

と意思表示するが如く。 

妻はそれを飲み干すのです。

『私は貴方のものよ』

と恭順の意を示すが如く。

時には、強く乳房を揉み上げ、叩き、弾き、乳首を引っ張り、捻
り、掻きあげます。時には優しく、掌で乳首を撫ぜ、二本の指で摘
み、軽く息を吹きかけます 舌で舐め上げ、転がし歯で軽く、強く噛みます。

「あぁ、貴方。私は俊夫さんのもの」

妻は呻きにも似た声で、途切れ途切れにこの快感を伝えます。車の
中でのそれ、自宅のバスルームでのそれ、電話で指示された時のそ
れとは比べようもありません。どんな言葉も足りません。

「貴方と言ってくれたか。嬉しいよ。それにしても洋子のオッパイ
は絶品だな。オッパイでこれなら、オマンコならもっと凄い事にな
りそうだな」

佐伯はわざと下卑た言い方をします。その方が女は燃えるのを知っ
ているのです。

佐伯の愛撫は女陰に移ります。

一本の線を開きます。大陰唇に続き小陰唇が現れます。それに続き
膣口も現れます。綺麗なピンク色で、形も崩れてはいません。 

『何と小さいんだ。何と可愛い』 

愛液が大量に湧き出しています。思わずを口を付け吸い上げます。

「うっ」
「どうした?」
「いえ、何でもありません。嬉しいの。私のを飲んで頂いて。」

新婚時代に夫との行為で、断って以来夫はそれを求めてきません。
手で愛撫される事さえ稀な事です。佐伯に何も知らない女だと思わ
れるのが嫌で ”嬉しい”と言ってしまったのです。

今度はクリトリスです。

「ほおーっ」

佐伯は思わず声を上げます。クリトリスは包皮に覆われたままで
す。顔さえ出していません。佐伯は包皮をゆるゆると剥きに掛かり
ます。 

『洋子のここは処女同然だ。楽しみが増えるな』

「あっ、そこは」
「ここがどうかしたか?」
「そこは嫌です。した事がありません。」

クリトリスは嫌なのです。オシッコがしたくなるような、むづかゆ
いような感じがするのです。夫とは一度だけです。自分の感じを伝
えて以来一度もありません。自分が知らない女だと解ってしまって
もいい。それほど嫌なのです。

「駄目だな、そう言う事じゃ。ここが女の一番感じる所だよ。俺が
感じさせてあげる」

佐伯は更に包皮を剥きます。空気にも触れた事がないクリトリスが
現れるのです。
  1. 2014/08/12(火) 19:08:54|
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水遣り 第20回

佐伯はそっと息を吹きかけ、自分の唾液で濡らした指で摘み、擦り
ます。乳首を愛撫するよりもっと優しくクリトリスの周りを探りま
す。時には舌を使います。感じ出したのでしょうか、唇からは甘い
吐息が、女陰からは愛液が滲み出してきます。夫婦の行為は日常の
もの、冒険は出来ません。不倫は違います。男も女も今までした事
が無いよう行為も試せるのでしょう。ましてや、クリトリスへの愛
撫はごく普通のものです。妻が経験した事がないだけの話しです。

「あぁ、感じます。とても気持ちいいです」
「そうか、それは良かった」

佐伯はクリトリスと膣を集中して責めます。手で擦り、指を差し入
れ捏ね回し、舌で転がし、舐め上げ、舐め下げします。妻はもう限
界です。

「もう逝きます。逝かせて下さい」
「まだ駄目だな。俺の方は何もしてもらってない」

佐伯は体を180度入れ替えて、自分の腰を妻の顔の方にもっていき
ます。佐伯はまだトランクスをつけたままです。妻は下着越しに、
佐伯のものに頬擦りします。トランクスの上から舌で舐めます、咥
えもします。愛おしそうに顔全体で男根に仕えるように何度も何度
も頬擦りします。 まるで、何か欲しい時に猫が主人の足に顔を擦
りつけるよう
に。

しかし、佐伯はそれだけでは不満なのです。素の男根に奉仕させた
いのです。

『普通の女なら誰でもここで、俺のチンポにむしゃぶりつくのだ
が』

佐伯は焦れます。

「どうした俺のチンポはしゃぶれないか?」

自分で下着を脱ぎ、男根を妻の口元に持っていきます。

妻はこれ以上、自分の経験の無さを知られたくはありません。おず
おずと佐伯の男根に舌を這わせます。佐伯は悟ります。

『洋子は初めてだな』

「経験が無いんだな」
「はい、申し訳ありません」
「なにも謝らなくていい」
「でも、こんな歳で恥ずかしいです」

佐伯は歓喜します。

『まさに掌中の珠だ。教育のしがいがあると言うものだ』

「洋子のしたいようにすればいい。これが洋子を気持ち良くしてくれる」

亀頭を口に含め手を上下させます。暫くそうしています。その間も
佐伯の、妻の膣、クリトリスへの責めは止みません。佐伯の責めに
感極まります。裏筋を舐め、亀頭を舐め、鈴口を舐め、玉袋を口に
含み玉を舌で転がします。誰に教えられたものではありません。喜
びを佐伯に伝えたいのです。この男根に仕えたいのです。自然とそ
うなるのです。

「もう駄目です。逝かせて下さい」
「よし、一度逝け」

佐伯は妻のクリトリス、膣への手の動きを早めます。

「あぁ、貴方。俊夫様。逝きます」

妻は佐伯の男根を握り、いや、それは縋り付くと言った方が正しい
でしょう。そして頬擦りし舌を亀頭に纏わりつかせたまま一度目の
絶頂に達します。
  1. 2014/08/12(火) 19:10:06|
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水遣り 第21回

洋子、それでいいんだ。俺も気持ちが良かった」
「私、嬉しい」

妻から抱きつき口づけをせがみます。一度の性交でこんなにも変わ
るものでしょうか。妻は不思議に思います。妻は元々、そう言う願
望を持っていたのです。男根を口にしたい、精液を飲み干したい。
私が気づかなっかたのです、妻にはそう言う思いは無い、そう思っ
ていたのです。

佐伯は口づけをしながら妻を仰向けにし、男根を膣にあてがいま
す。膣は充分過ぎるほど濡れています。普通ならするっと入る筈で
す。入り口が狭いのです。入りません。ぐっと腰に力を入れ押し込
みます。入り口は狭く、膣壁はそれ自体が生き物のように男根に纏
わりつきます。注挿を数回繰り返します。

『何だこれは、これじゃ俺がもたない。何と言う女だ』

佐伯は納めたものを一旦抜きます。

「どうかしたんですか?」
「いや、洋子のものはあまりにも締まる」
「良くないのですか?」
「その逆だ。ご主人は何も言わないか?」
「いえ、別に何も」

『そうか、ご亭主のは小さいんだ』

妙な納得をします。

不思議そうな顔をする妻を後に、佐伯はバスルームに向かいます。
佐伯は実に多様な薬を持っています。仕事柄手に入れやすいので
す。媚薬は言うに及ばす、精力剤、遅漏薬、精液増量薬。その3個
のカプセルを併せ呑みます。効きだすまで少し時間が掛かります。
時間稼ぎをします。

「さっきは洋子の裸を見せてもらった。今度は俺の裸見せてやる」

佐伯は自分の体に自信があります。ジムで鍛えた体、妻が惚れると
思ったのでしょう。

妻の目の前に裸身を晒します。妻の目は一点に集中します、佐伯の
男根に。薬のせいもあるのでしょうか、それは天を突いています。
夫のものと比べてしまいます。経験は夫と、結婚する前の男性一
人、只二人です。結婚する前の男のものは小さかった気がします。
佐伯のものは夫とものと比べて全体では同じ印象です。只、形が凄
いのです。亀頭が張っています。男根の所々、ごつごつしていま
す。何か作り物のような感じがします。

『こんなもので突かれたら壊れてしまう』

しかし、そんな思いとは別に情欲が込み上げてきます。鈴口からは
先走りが糸を引いています。妻は男根の前に跪き、思わず鈴口に舌
を這わせます。先走りが垂れるのは勿体無い。そんな思いで舐めまわします。 

佐伯は思わず妻を床に転がし、男根を膣に突き立てます。一度入れ
た男根に慣れたのでしょうか、今度はすっと入ります。 深く刺
し、浅く刺し、回転させ、強弱をつけてそれは続きます。

如何程の時間が経ったでしょうか、妻は呻き声をあげます。

「あぁ凄い。こんなの初めて。お願い、ベッドで逝かせて」

妻を抱き上げベッドに運びます、男根と女陰を繋げたままで。口づ
けをしたままベッドに下ろします。 

「もう逝きます」
「俺もだ。中に出してもいいんだな」
「はい、中に下さい」

妻はこの日は安全日です。夥しい量の精液を受け入れます。同時に
口では大量の唾液を飲み込みます。妻は完全に気を遣ります、軽く
失神してしまいます。
  1. 2014/08/12(火) 19:11:55|
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水遣り 第22回

少しすると佐伯の男根は回復します。薬の効果とは言え佐伯もタフ
なのです。

佐伯は立って、男根を指差します。

「今度はこれにお仕えするんだ。したかったらお願いするんだな」

妻はそう言われただけで、目が潤みます。

「はい、お仕えさせて下さい」
「それだけか?」

直ぐ理解します。妻には元々、その素養があったのかも知れませ
ん。

「洋子のオマンコを気持ち良くしてくれた、このおチンポ様にお仕えさせて下さい」
「良く言えたな。よしいいぞ」

男根の前に跪きます。夢中で舐め吸うのです。時々、自分の乳首で
亀頭を擦ります。思わず「あぁ」と声が漏れます。 

「自分が気持ち良くなってどうする」

佐伯の叱責の声が飛びます。本当は妻の悶える姿を見て、佐伯も気
分がいいのです。言葉で甚振りもっと高ぶりを与えたいのです。

妻は後に回ります。尻を割り肛門に舌を差し入れます。勿論夫にし
た事はありません。叱責された事により、佐伯に感じてもらいた
い、その思いが強くなったのです。今の妻は何でも出来ます。自分
の思いを伝えるのに何をしても足りません。肛門を舐め吸います。

「ベッドに行こう」

妻を仰向けに寝かせ、顔に跨ります。男根を口に咥えさせ、腰を振ります。

「出すぞ。全部飲め。一滴も零すな」

精液は妻の喉をしとどに打ちます。吐き気を我慢し精液を口一杯に
受け入れます。目からは涙さえ流れています。苦しいのです。佐伯
はそんな事には斟酌しません。更に最後の一撃を放ちます。妻はそ
れを全て飲み干します、ゴクリ、ゴクリを喉を鳴らしながら最後の
一滴まで体の中に納めます。咥えた男根を口から離します。苦しさ
から解放された妻は思わず小さな溜息をつくのです。もう一度男根
に目を遣ります。

それはまだ硬さを保ち、テラテラと光り、鈴口からは精液の残滓が
覗いています。一滴も残したくありません。佐伯のものは全て残ら
ず、体の中に入れ自分のものにしたいのです。鈴口を指で掬い口に
運びます。それだけでは足りず、亀頭をほうばり、竿を扱きます。
口を窄め吸い出します。最後の一滴まで体に納めやっと妻は満足す
るのです。

さすがの佐伯も驚きます。

『洋子がこんなに淫乱だったとは。嬉しい誤算だな。それにしても
あのオマンコはどうだ。俺の方が溺れそうだ』

正に佐伯は妻に溺れていくのです。 
  1. 2014/08/12(火) 19:13:11|
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水遣り 第23回

その後二人はシャワーを浴び、バスルームで一度、ベッドに戻って
からも数回の性交渉を持ちます。この夜の行為で妻の隠れた性は解
き放たれたのです。夫以外の始めての男とのただ一夜の行為で、私
との行為では見せなかった妻の本当の顔、淫乱性が開花したので
す。

「これからも中に出して欲しいか?」
「はい、いつも」
「そうか、じゃあ自分で考えるんだな」

この時から妻はピルを常用するようになります。

疲れきった妻は顔を佐伯の胸に埋め、足を腰に絡め、手には男根を
握り熟睡するのです。

朝、ホテルのレストランで食事が終わった後、佐伯から昨日のプリ
ント2枚を手渡されます。

「これを渡しておこう」
「写真ですか? 私、こんなもの欲しくありません」

妻にとって見るのもおぞましい写真です。

「君のお守りになるかも知れない」
「えっ、どうしてですか?」
「いや、つまり、俺たちの事がばれた時の免罪符になる」
「・・・・・」
「ご主人に追求された時、見せればいい」

佐伯は過ちを犯しました。妻は佐伯の思い通りになるのです。そん
な写真は用が終われば捨てれば済む事だったのです。重大なミスの
ある写真は妻のバッグに仕舞われます。

佐伯の車で新大阪へ向かいます。車中、妻は佐伯の男根を握り締め
ています。信号で車が停まる度、口づけを交わします。新大阪の駅
舎がもう目の前です。佐伯は駅倉庫の人影の無い、遮蔽された場所
に車を停めます。

「このまま別れるのも名残りが惜しい。口で頼む」

妻は唯々諾々です。妻もそうしたかったのです。佐伯は妻の口に放
出します。口を窄め、竿を扱き最後の一滴まで吸い出すのを忘れま
せん。終わった後、佐伯の男根を自分のハンカチで愛おしそうに拭
うのです。

新幹線はグリーン車を手配してくれています。こんな事でも佐伯の
優しさを感じてしまいます。車中思うのは、佐伯と変わってしまっ
た自分のことばかりです。佐伯に与えられた快感は、夫との20数年
間を一夜に凝縮してもまだ足りません。もう佐伯とは別れられな
い。不思議と夫への背徳感はありません。

東京駅に着きます。疲れてローカル線に乗る気力がありません。タ
クシーで自宅に帰ります。途中眠ったようです。住んでる市内に入
っています。家の近くの通り、いつも買い物もするスーパーが目に
入ります。不思議なものです、新幹線の車中で思わなかった背徳
感、夫への申し訳ない思いが、日常の風景を目にすると一気に湧き
出してきます。
  1. 2014/08/12(火) 19:14:22|
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水遣り 第24回

『2時か。そろそろ帰ってくる頃だな』

仕事の理由で妻が家を開けるのは初めての事です。私はそわそわと
待っています。

「ただいま。ご不自由掛けました」

妻が帰ってきました。妻の顔色は青白く、しかしその中に妖艶と言
っていい程の色気を漂わせています。

「疲れたか? 顔色が良くないな。何かあったのか?」

妻の妖艶さには触れる事が出来ません。 

「初めての出張だったから、気持ちが張っていたのだと思うわ。こ
れお土産」

大阪の銘菓を差し出します。軽くいなされた感じです。それ以上深
く追求する事はありません。

その夜、ベッドで妻を誘いますが、疲れを理由に断られます。これ
以降妻を抱く事は無くなります。私達夫婦は新婚時代からそうでし
た。3ヶ月、4ヶ月とセックスレスになる事がたまにあります。今回
も妻から拒絶されても、妻を疑う事はありません。今思うと妻は不
満を貯めていたのかも知れません。

その後、妻の帰宅は1週間に一度か二度は12時を過ぎ、一週間に一
度は出張の名目で外泊します。それが2ヶ月、3ヶ月続くと、さすが
の私でも疑いだします。しかし妻を問い詰める事が出来ないので
す。私の性格が妻を自由にさせてしまったのです。

ましてや、この3ヶ月で妻の淫靡さは増し、腰は更に張り出した気
がします。本来、これを見ただけでも疑う要素はあるのです。妻の
箪笥の引き出しを覗いてみたい。洗濯籠を探してみたい。男として
のプライドが邪魔をします。今思えば実に不遜なプライドです。

台湾に3泊の予定で出張です。水曜日に出て、土曜日に帰る予定で
す。妻にはその旨伝えてあります。出張先での仕事が予定より早く
終わり金曜日に帰る事になります。妻には伝えません。私が居ない
時に妻が何をしているのか、あるいは家に居ないのか、見てみたい
気持ちがあるのです。それにびっくりさせたい事もあるのです。
  1. 2014/08/12(火) 19:15:41|
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水遣り 第25回

あれから何度、佐伯に抱かれた事でしょう。大阪赴任中は週に一度
は本社での仕事名目で必ず妻を抱きます。又、何度かは出張で妻を
大阪に呼び出し、一晩かけて妻を抱きます。佐伯が本社勤務に戻っ
てからは、夜だけではなく、仕事に託けて外出して、昼日中、妻を
抱きます。二人の出張を組んで温泉で温泉で抱かれる事もあります。

何度目かの密会の中、妻は佐伯に言われるのです。

「洋子、君も知っているように僕は独身だ」
「はい」
「いつまでも一人で居る訳には行かない」
「・・・・・」

妻は別れを切り出されると思ったのです。

「いや、君と別れると言うのでは無い。その逆だ。結婚してほし
い」
「結婚?そんな事できません。夫と子供がいます」
「解っている。今直ぐにとは言わない。君の気持ちを待っている」

この時、佐伯は本当に妻と結婚したいと思っていたのでしょう。密
会の頻度は更に濃くなっていきます。

『俊夫さんは私を愛してくれている』

不倫と言う非日常性が妻にそんな思いをさせるのです。妻に気がつ
く術はありません。

私が台湾に発った水曜日、妻は佐伯に抱かれます。佐伯は精液増量
剤を飲んでいます。一度目は妻の口に放出します。 

二度目、佐伯は自分のものにコンドームを着けます。

「コンドーム?」
「ピルを飲んでいる事は知っている」
「では、どうして?」
「僕は明日からアメリカへ出張だ」
出張の事は妻も知っています。肉牛牧場の視察です。

「これがトウモロコシなら君を連れて行けるが、肉では駄目だ」

4日間でも佐伯が居ないのは、妻にとっても寂しいのです。あの男
根と別れるのが辛いのです。

「洋子も寂しいだろう。お土産をあげる」

いつもより大量に放出します。それは妻の膣の中ではなく、着けた
コンドームの中に。いつものように佐伯の腕の中で妻は朝まで熟睡
します。いつの間にかバスルームに向かった佐伯には気がつきませ
ん。佐伯はバスルームで、コンドームの中の精液を小さなガラス瓶
に移します。媚薬を混ぜる事は忘れません。ガラス瓶は紙箱に納められます。

翌朝、妻は佐伯からその紙箱を手渡されます。

「これは何ですか?」
「洋子へのお土産だ。明日夜8時ごろ電話するから、その時開けな
さい」
「貴方」
「何だ」
「アメリカへお気をつけて」

次の日の夜8時、約束通り携帯に着信があります。
  1. 2014/08/12(火) 19:16:51|
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水遣り 第26回

私は台北発EG204に搭乗します。成田着17:55です。これなら少し
遅れても9時頃には家に着く筈です。入国通関を終わったのは7時、
乗換駅でタクシーに乗り込みます。今は8時少し前、1時間もあれば
家に着くでしょう。

その頃、妻は寝室で佐伯の電話を受けています。

「洋子です」
「佐伯だ。今そっちは8時か?」
「ええ、アメリカは?」
「アメリカと言っても広い。クリーブランドは朝の6時だ」

クリーブランドとの時差は14時間です。日本より14時間遅いので
す。朝早くの電話に妻は感激します。

「私の為にそんなに朝早く起きたのですか?」
「可愛い洋子の為だ。もう裸か?」
「いいえ、まだです」
「駄目だな、そんな事では。今日ご亭主は居ないんだろう? ご亭
主が居ない時は何時も裸だ。解ったな」
「はい、申し訳ありません」
「小皿と昨日渡したお土産を持ってきなさい」

妻はその意味が良く理解できません。キッチンに降り小皿を持ち寝
室に上がります。バッグから紙箱を出し、全裸になるのです。

「はい、持って来ました」
「瓶の中身を皿にあけなさい」

ガラス瓶を取り出しまじまじと見つめます。粘度のある白い液体で
満たされています。蓋を取ります。妻の情欲を刺激する匂いです。

匂いを鼻一杯に吸い込みます。妻の情欲は一気に高まります。

「何か解ったか?」
「はい」
「舐めたいか? そうなら言ってごらん」

佐伯は妻から言わせたいのです。

「あぁ、貴方の精液を頂きたいです。 舐めさせて下さい」
「舐めていいぞ。四つん這いになってな。少しだけだぞ、後でも使
うから」

妻は両肘を床につき、尻を高く掲げ、犬のように小皿にあるものを
舐めます。全て舐め尽くしたい気持ちを押さえながら舐めるので
す。

「全部舐めるんじゃないぞ。それくらいにしておけ」

妻は不満そうに鼻をならします。匂いが散るのが惜しいのでしょう
か、精一杯匂いを吸い込みます。

妻は佐伯の次の指示を待っています。
  1. 2014/08/12(火) 19:18:05|
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水遣り 第27回

佐伯の次の指示は妻の乳房に対してです。

「指で掬って、オッパイに塗れ。四つん這いのままでな」

不自由な姿勢です。不自由な姿勢がまた快感を呼ぶのです。顔を横
に向け床に付けなければその姿勢を保てません。妻の鼻先には小皿
があります。匂いを嗅ぎながら、精液の付いた指先で乳首を擦りま
す。妻は直ぐ達します。

佐伯の次の指示です。

「逝ったようだな、次はオマンコだ」

8時50分、私は家の前でタクシーを降ります。リビングの明かりが
点いています。妻は居るようです。二階を見上げますと、寝室の雨
戸は閉まっていますが、その隙間から仄かな明かりが漏れていま
す。普段は消しているいる筈です。

玄関ドアーの鍵が掛かっています。夜も遅いし当然の事でしょう。
玄関ドアーを開け中に入ります。妻の通勤靴が玄関にあります。き
ちんと揃えられています。いつもは、ここでただ今と声を掛けるの
ですが、今日は違います、無言です。リビングのドアーを開けま
す。ここに妻は居ません。キッチン、バスの灯りは消えています。 

もし居るとしたら二階しかありません。そっと階段に忍び寄りま
す。今の借家は表通りからかなり離れ外からの音はありません。妻
の声らしきものが聞こえてきます。階下からでは内容まで解りませ
ん。携帯で誰かと話しているにしては小さな声です。そろりそろと
階段を上がります。階段と二階の階段ホールの明かりは消えていま
す。後2,3段で二階というところで一旦止まります。 

寝室の入り口は階段の直ぐ左にあります。入り口は引き戸です。そ
ろそろと引き戸を開けにかかります。半分くらい開けても、妻は行
為に夢中なのか気がついていません。ここから覗けば寝室は丸見え
です。寝室には仄かな明かりが点いています。最初解らなかったほ
の白く蠢いているものが、妻の裸体だという事が解ります。ここか
らだと声もはっきり聞こえます。 

妻は四つん這いです。尻を斜めにこちらに向け、横にした顔もこち
らに向け床につけています。

「はい」

何やら携帯で話しています。指示を受けているのでしょうか 妻は
顔先にある黒い小皿に盛られた液体を指で掬っています。そして高
く掲げた女陰に擦りつけています。膣を捏ね回しています。私との
行為では決して許す事のなかったクリトリスをも擦っています。そ
れがクリトリスだとはっきり認識できた訳ではありません。妻の指
のその位置からそうではないかと思うのです。

私は妻に声を掛ける事が出来ません。こんな時妻に声を掛ければど
うなるか、妻は自分の醜態を恥じ入り自殺しかねません。そんな女
なのです。そんな風に信じていました。

「顔ですか」

携帯がテレビ電話になっているのでしょう。妻の痴態を見ているの
です。逝く顔が見たいと言われたのでしょうか、自分の顔が良く映
るよう携帯の位置を変えます。

妻は達したようです。

「あぁ、逝きます、貴方、俊夫様」

女陰に添えた手を激しく動かし、舌は小皿の白い液体を舐めとって
います。舌から小皿に白い糸が引いています。この匂いと相まっ
て、この液体が何であるか私は理解しました。
  1. 2014/08/12(火) 19:19:20|
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水遣り 第28回

そっと階段を降ります。 玄関に向かい外に出ます。 

『今日は家に帰れない。妻の顔を見る事が出来ない』

自分が悪い事をした訳ではありません。しかし、妻に何を喋って良
いのか解りません。今更、戻って問い詰める訳にもいきません。問
い詰めるのなら、見た時その現場でです。自分にも黙って帰ってき
た負い目がありました。妻の気持ちも考えてしまいました。優柔不
断な自分が嫌になってしまいます。これが妻と男が絡んでいたのな
ら、その場で飛び込み男をけり倒していたでしょう。

何処をどう歩いたか覚えていません。結局向かった先は駅前のビジ
ネスホテルです。気力も何もありません。軽くシャワーを浴び、ベ
ッドに寝転びます。時間の早いせいもあるでしょうが眠れません。
頭の中は真っ白です、何もありません。浮かんでくるのは先ほどの
妻の裸体、痴態ばかりです。精液を舐めた妻。それもいつの物かは
知りませんが男から渡されたものに違いないものを皿から犬のよう
に舐めた妻。電話で男に指示され、女陰をクリトリスを男の精液塗
れの指で擦り回した妻。逝かせて下さい、舐めさせて下さいと男に
懇願した妻。あれは本当に私の妻だったのだろうか。もう一度帰っ
て確認したい衝動に駆られます。

私と妻の20数年は何だったのだろう。ここ2,3ヶ月で妻のこの変貌
振りは何なのだろう。犬にも劣る妻の行為を見てしまった。何故、
そこまで妻は落ちてしまったのか?先程見た妻の痴態が振り払って
も振り払っても出てきます。男との絡みを見た方がまだ楽だった
かも知れません。自然と涙が出てきます。どれ程泣いたでしょう
か。我に返ると床に涙の水溜りが出来ていました。

これだけ変わった妻はもう私のもとへは、帰って来ないかも知れな
い。否、これ程の痴態を見てしまった私は、例え妻が戻ってきても
許す事ができるでしょうか。どうしてもっと早く気がつかなかった
のだろう。暫く終わってしまった事を悔やんでいました。

考えて居るうちに、嘆きが怒りに変わります。妻をこんな風にした
男が憎い。妻を憎むより、男に反撃しよう。怒りの矛先は先ず男に
向けるべきなのです。今は顔の無い男です。顔がない事には反撃の
しようがありません。誰だろうヒントを掴もうと考えます。

椅子に座り直します。フロントにビール、ウィスキーと少々の摘み
を注文します。うじうじしても始まりません。考える環境を整えます。 

『確か、トシオとか呼んでいたな』

トシオ、私は記憶を辿ります 私の仕事関係、交友関係の名前を思
い浮かべます。名前まで覚えている人は僅かです。トシオと言う名
前は浮かんできません。

『ふっ、まあ俺の関係でいる訳はないよな、そんな馬鹿な男は』

私は常にバッグの中に名刺ホルダーを持ち歩いています。仕事関係
と交友関係に分けてあります。交友関係と言っても、ただ一度しか
会った事の無い人も含まれています。無駄だと思いながらも一応見
てみることにします。あいうえを順に整理してあります。その名刺
は直ぐ出てきます。

佐伯俊夫、妻が勤める会社の食品部部長、肩書きは常務。妻に紹介
され名刺交換した覚えがあります。佐伯なら妻と接点が多い、しか
も妻は彼のお陰で正社員になれたと思っています。佐伯なら妻の出
張を自在に出来ます。今、思えば妻は必ず夜10時にトイレにたって
いました。 佐伯との痴話なのでしょう。例え私にばれても、仕事
の連絡だと逃げる事が出来ます。

『佐伯か。こいつだな、間違いない』
  1. 2014/08/12(火) 19:20:28|
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水遣り 第29回

私は部屋に備えつきのパソコンに向かいます。市内の興信所を検索
する為です。ウェブを見ても何処が良いのか解りません。トップペ
ージに”浮気の本質を見つめましょう”と言うような事を掲げてい
る業者がいました。他所とは違うものを感じ、此処にきめます。

朝一番でその興信所に飛び込みます。

「いらっしゃい、どうしました、鬼のような形相をしてますよ」

60半ばの温和な紳士が私を迎えてくれます。余程、酷い顔をしてい
たのでしょう。

入った瞬間、選ぶ所を間違えたと思います。この人じゃ調査出来な
い、そう思ったのです。

「どうして、うちに来ました?」
「どうしてって、そのー」
「これは聞き方が悪かった。どうして、うちを選んだのですか」

『そんな事聞いてどうするんだ、この親父は。市場調査じゃある
まいし』

私はもうこの場を立ち去って、次の業者に行きたかったのです。一
応答えます。

「いや、御社のホームページが他とは雰囲気が違っていました。浮
気の本質がどうとか書かれていたものですから」
「うちは御社と言われるほど立派ではないですよ。面白い方だ」
「面白いって?」
「これは失礼。普通誰もこんな時に浮気の本質なんて言葉に目もく
れないものです」
「じゃあ、どうしてあんな言葉を?」
「大事な事だからです。妻の浮気は妻だけの責任だけで無いかも知
れない」
「冗談じゃない。妻の浮気は私のせいじゃない」
「良く考えて下さい。貴方は他の女を抱きたいと思った事はありま
せんか? 商売女や出会いの女ではないですよ。その時貴方は女を
抱きましたか、それとも」
「人生相談に来たのではない。失礼します」

踵を返し、ドアーへ向かいます。その時、声が掛かるのです。

「貴方はまだ奥さんを愛していますね?」

その言葉が私を所長の方に振り向かせます。

興信所の良し悪しは私には解りません。どこに任せても結果は同じ
ようなものかも知れません。所長の人柄に商売以上のものを感じ、
結局ここにお願いする事にします。私の名刺を見て、妻の名前を聞
いた時、一瞬表情が変わったような気がします。

妻の事、考えられる相手の男の事を話します。相手の男が地元の名
士でも所長は動じる風でもありません。調査料金等聞いてこの日は
帰ります。

この興信所にお願いしたのは偶然でした。この偶然が信じられない
程の更なる偶然を呼びます。まるで神が苦しんでいる私に与えた贈
り物のように。勿論私はこの時点では気がついていません。

まだ11時です。 家に帰るには早すぎます。映画で時間を潰しま
す。見たかった映画ですが、スクリーンを目で追っているだけで
す。映画館を出て1時半、まだ早い。取りあえず、妻に電話しま
す。

「宮下です」

妻の声はいつもと変わりありません。

「僕だ。今、成田だ。 2時間半くらいで家に着くと思う」
「お疲れ様でした。お待ちしています」

喫茶店で時間を潰します。妻を見て平常心でいられるか、罵声を浴
びせてしまうのでないか。考えてしまいます。調査の結果が出るま
では平静でいよう。喫茶店を出て家へ向かいます。  
  1. 2014/08/12(火) 19:21:49|
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水遣り 第30回

『汚らわしい事をしてしまった』

皿に盛られた精液を、女陰を擦りながら犬のように舐めとった。今、妻は
恥じ入っています。自分を卑下しているのです。自分が今までしてきた事に
気がつくのです。

『佐伯とはもう』

夫の電話で我に返ります。夫の声を聞くと申し訳ない思いで一杯に
なるのです。昨日の行為で尚更、その思いは強くなります。

「ただいま」
「お帰りなさい。お疲れ様でした」

妻の顔は沈んでいるようです。しかし、いつも通りの受け答えに腹
が立つのです。

『どうしてお前はそんな普通の態度でいられるんだ』

妻の髪を掴み引きずり回したい衝動に駆られます。押さえたものが
顔に出たのでしょう。

「貴方、お疲れになったみたいですね?顔色が優れません」

妻の言葉にまた腹が立ちます。

「疲れるのは当たり前だ。昨日・・・・・」

喉まで出掛かっている言葉を飲み込みます。

「昨日どうかされたのですか?」
「いや、何でもない。少し疲れた。早いが風呂に入る」

私はバスルームに向かいます。

妻はあんな行為をしても、平常でいられるのか。佐伯との関係も私
の推測が正しければ50回は超えているかも知れません。私にばれな
ければ、平常でいられるのでしょうか。

その回数の圧倒的な多さに怒りを覚えるのです、劇的に妻を変えて
しまった男に怒りを覚えるのです、妻を犬にしてしまった男を殺し
たいのです。
 
『待っていろ佐伯』

怒りを抑えようと冷水シャワーを頭から浴びて、バスルームを出ます。

「貴方、食事にされます」

テーブルには私の好物が並んでいます。 

「いや、飯はいい」

好物を摘みにビールを飲みます。 

妻は毛糸で何か編んでいます。マフラーのようです。今時は毛糸で
編物をする女性は少ないでしょう。妻は色々編んでくれます。靴
下、手袋、セーター。今でも季節がくれば、私はそれを身に着けて
いました。妻の気持ちで暖かかったのです。

「貴方のマフラーを編んでるの。今年の冬は寒いそうですから」

妻の気持ちが解りません。佐伯とあんな関係になっても平常の生活
を営めるのです。

私はウィスキーを持ってリビングのソファーに座り直します。 
  1. 2014/08/12(火) 19:52:39|
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水遣り 第31回

ごく普通の夫婦の風景がそこにはあります。

その風景に引っ張られて、一つの事を思い出します。台湾で買って
きた妻へのプレゼントがあるのです。バッグから小さな包みを出し
妻に渡します。

「有難う。これは何ですか?」

「まあ、綺麗」

ブローチです。大きな紫水晶の回りに普通の水晶を散りばめてあり
ます。まるで、妻の好きなフラッシュダークネクタリーのようで
す。妻も直ぐ気がつきます。

「クリスマスローズみたい」
「気に入ってくれたか」
「うん、嬉しい、本当に有難う」

妻は着ているブラウスに付けようとしています。

「本当は昨日、渡そうと思っていた。だが昨日はまだ台湾だ」
「どうして、昨日なんですか?」
「君は覚えていないか、昨日10月17日は僕たちが初めて会った日
だ。あれから25年か」

大学対抗水泳で私はある大学のOBとして、妻は対抗側の3年生とし
て参加しました。それが妻との出会いでした。

妻も思い出したのでしょう、ブラウスに付けようとした手が止まり
ます。その手を膝に置き、妻は顔を俯け、その目はブローチを見つ
め続けています。

「どうした」
「嬉しいんです。それなのに・・・」

後は言葉になりません。

『圭一さんはこんな事まで覚えていてくれた。それも私の好きなリ
スマスローズに託してくれて。それなのに、それなのに私
は・・・』

”それなのに”、私はわざと違う解釈をします。

「特別な記念日でもない。君も忙しかった。忘れる事もあるさ」

私はずるい男です。こんな時にわざわざ贈り物をする亭主はいない
でしょう。喜ばす為にあげたのではありません、妻の反応を見てい
るのです。贈り物で妻を苛めているのです。妻はそんな事を知る由
もありません。

漫然とテレビを見ています。妻はまた編物を始めています。10時に
なり妻はトイレに立ちます。こんな時でも佐伯との約束は守るので
す。ついさっき、”それなのに”と涙を流したばかりです。妻には
魔物が住んでいるのでしょうか。 

相手が佐伯だと100%の確証が無くとも、ここで妻にもう止めろと
言えた筈です。携帯を取り上げて確認すれば済む事です。結果が出
るまでは手を出さない、そう決めています。相手は腐れ男でも一応
地元の名士です。100%の証拠が無ければ叩けません。成り行きに
任せる事にします。
  1. 2014/08/13(水) 12:25:41|
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水遣り 第32回

私はトイレのドアーに耳を付け聞き耳を立てます。下卑た行為に自
分でも嫌気がします。でも聞きたいのです。

妻の細い声が聞こえてきます。

「・・・・・」
「火曜日、金曜日出張ですか?もう出来ません」
「・・・・・」
「えっ、そんな、酷いです。そんな事しないで下さい」
「・・・・・」
「解りました。行きます」

妻は一旦は断ったようです。酷いとはどう言う事か、妻はその後で
出張を了解してしまうのです。佐伯はたった4日間、妻と会えない
だけで、もう妻を抱く予定を立て知らせているのです。余程、妻に
執着があるのでしょう。妻は必ず、出張の予定は前もって私に知ら
せます。月曜日の夜には私に伝えるでしょう。しかし今その予定
を知りました。私はその前に行動を起こせます。時間を稼げま
す。

もうこれ以上聞いていられません。私はトイレの前で今歩いてきた
ように大きな足音を立てドアー越しに妻に声を掛けます。

「今日は疲れた。もう寝るから」

私はもう逡巡しません。佐伯を叩くだけです、熟睡します。

日曜日の朝、いつものように妻は朝食を用意しています。テーブル
に向かいます。腹は空いています。佐伯の男根を握った手で作り、
咥えてた口で味見をしていると思うと喉が受け付けません。もどし
そうになります。早々に席を立ち、出かける用意をします。妻と一
日中、一緒に居るのが耐えられません。

「どうされたのですか? 具合が悪いのですか? 10月17日の事で
怒っているのですか?」
「いや、何でもない。見たいアクション映画があるので見てくる。
体が鈍っている、その後水泳に行ってくる。晩飯も要らない」
「やっぱり怒っているのですね」

妻は勘違いしています。私が感づいたとは思っていないのです。と
んだ間抜け亭主だと思われているのです。それはそうです、この3
ヶ月余りの間、全く気が付かなかったのです。ここで感づかれたと
思う訳がありません。今の私にはその方が好都合です。

「あっ、それから来週一杯、台湾のメーカーと一緒だ。朝も夜も食
事は一緒だ。作らなくていい」

とっさに出た嘘です。正直、食べられそうもないし、食べる気もし
ません。

7時に戻ります。9時半、私は自分の仕事部屋で時間を潰します。仕
事をする訳ではありません、妻がトイレに立つのを見ていられない
のです。仕事部屋で考えます。佐伯を潰したところで、妻を受け入
れられるか? 解りません、あれ程の痴態を見てしまったのです。
では離婚か?離婚した私を、妻を想像してみます。 離婚した妻
は、これ幸いと佐伯の元へ走ってしまうのか?あり得ます、佐伯は
独身です。不倫の証拠を掴むだけでは駄目だ。佐伯の事を全て知ら
なくては。自分と妻の事はその後で考えれば良い。

翌朝、早く家を出た私は銀行が開くのを待ち、金をおろし興信所へ
向かいます。
  1. 2014/08/13(水) 12:26:38|
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水遣り 第33回

「随分早いですね?」
「妻と佐伯の行動予定が解ったのです」
「ほう、どうしてですか」

ここは隠す訳にはいきません。妻が携帯で話していた要点を伝えま
す。

「そうですか。二人の仲は相当深いですな」

ぐさりと来る言葉を平気で言います。

「これは失礼な事を言ってしまった。早速これから行動開始といき
ますか。これは簡単な調査になりそうだ、これだけ頻繁に会ってる
とね」

こんな切り口で言われますと、何だか深刻な事を頼んでいる気がし
ないのです。かえって、所長に親近感を抱かせます。

「おっと失礼。また変な事を言ってしまった」

所長の目の前に現金を置きます。

「所長、これ調査費用です」

土曜日に言われた調査費用の3倍の金額です。家を建てる時の足し
にと自分名義でも貯めています。今はそれどころではありません、
少しも惜しくはありません。

「こんな小さな興信所だ。山岡でいい。それにしても多すぎません
か?」
「いえ、浮気の調査だけではなく、佐伯の身辺調査も徹底的にお願
いしたのです」
「ふむ」
「女関係とか、離婚の理由とか」
「どうしてだね?」
「佐伯は独身です」
「ばれても奥さんを佐伯の元へ行かせたく無い。そう言うことだ
ね?」

所長はもう佐伯と断定した口ぶりです。

「そうです。それと佐伯を徹底的に叩きたい」
「奥さんとは離婚するのかね、それとも受け入れるのかな?」
「解りません。山岡さん、ここは人生相談所ですか」
「ご免、ご免。しかし、人によっては相談所にもなりうる」

『全く惚けた親父だ。何が人生相談所にもなりうるだ』

しかし、不思議な信頼感があります。

「あ、そうか身辺調査は無理ですね。ここにはスタッフが居ません
ね」
「いやそんな事は無い。この業界にも横の繋がりがある。浮気調査
の得意な所、身辺調査が得意な所。経済問題が得意な所。任せてお
きなさい」

所長に言われると妙に納得してしまいます。

「そう言うもんですか」
「金は先日言った金額でいい。後は実費精算だ。余ればお返しす
る」
「しかし、身辺調査を追加している」

結局、所長は持っていった額の1/3しか受け取りません。

「浮気調査は来週月曜日、身辺調査はもう少し掛かると思う」

所長の言葉を聞いて、興信所を後にします。
  1. 2014/08/13(水) 12:28:24|
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水遣り 第34回

会社でも妻の事が頭をよぎります。処理すべき仕事があるのが幸い
です。仕事している間は忘れています。夜、外食し、スイミングク
ラブに寄って11時頃、帰宅します。

「お帰りなさい。貴方、今日急に出張が決まってしまったの。明
日、大阪で一泊、金曜日、金沢で一泊なの。行っていいてすか?」
「行っていいですかって、業務だろ。行くしかないじゃないか」

妻は今まで通り、宿泊するホテルも私に教えます。

『何が行っていいですかだ。勝手に行け』

私は心の中で毒づきます。顔には出しません 私の心の中には二人
に対する怒り、憎しみしかありません 湧いてくる他の気持ちをそ
れで押さえているのです。

妻と交わした言葉はそれだけです。風呂に入り寝ます。

翌朝一番で、所長に電話して、妻の予定、宿泊先を伝えます。

今日は人と会う予定はありません。昼前、松下さんに話しかけられ
ます。

「社長」
「もう社長はいいよ。こんな小さな会社だ。君と僕しか居ない。宮
下でいいよ」

興信所の所長と同じ事を言っています。

「でも私にとっては社長です。社長以外には呼べません」
「そうか、仕方ないか。それで?」
「お弁当作りすぎちゃったんです。良ければ半分食べて下さい」
「それは嬉しいね。勿論頂く」

松下さんが来てくれて3ヶ月余りです。こんな事は初めてです。そ
れは作りすぎたと言う量ではありません、完全に二人分です。私が
そうさせなかった事もありますが、妻の手弁当を食べた事はありま
せん。実に美味い弁当です。

「美味い」
「やったー。作り甲斐があったと言うものね」
「何だ。わざわざ作ってくれたのか?」
「ばれちゃいましたね」

良く気が付く女性です。食後にコーヒーを淹れてくれます。

「社長の奥さん奇麗な方ですね」
「そうか」

松下さんは妻に一度会っています。入社して間もなくの頃、私の忘
れものを妻が届けてくれた時に話をしています。

「奥さん、社長の事愛してらっしゃるんですね」
「・・・・・、おっ、もうこんな時間か、ちょっと出かけてくる。
お弁当ご馳走さま」

私は返事が出来ません。返事の変わりに用事も無いのに出掛ける事
にします。

金曜日も、もう退社時間近くになります。

この一週間は酷かった。妻が家に居る時は、妻の姿が目に入りませ
ん、いや見れなかったのです。妻が出張で居ない火曜日の夜、妻は
そこかしこに居ます。打ち消しても打ち消しても、妻と佐伯が絡ん
だ姿態が目に浮かびます。佐伯の男根を咥えている妻、佐伯に尻を
掴まれ後ろから貫かれている妻、互いの性器を舐め合っている妻と
佐伯、佐伯の背中にに腕を回し爪を立てている妻 家で一人で居ま
すと妻と佐伯がいたる所に出てきます。打ち消すには酒しかありま
せん。浴びるように飲み、気絶するようにベッドに倒れこみます。

今日の夜はもう、そう言う思いをしたくありません。 

5時、私は松下さんを誘います。

「松下さん、用事が無ければ晩飯一緒にどうだ。僕も一人でつまら
ない」
「うわっ、嬉しい。連れてって下さい」
  1. 2014/08/13(水) 12:29:36|
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水遣り 第35回

松下さんが焼き鳥を食べたいと言う事で、焼き鳥屋に行きます。接
待で時々使う店です。隣の席とは衝立で区切られていて、焼き鳥屋
独特の喧噪さは感じません。

「社長に晩御飯をご馳走になるのは初めてですね」
「弁当のお礼と言っては何だが、たまにはと思ってね」
「お弁当のお返しで晩御飯をご馳走して頂けるのでしたら、これか
ら毎日持って来ます」

松下さんと話してると気持ちが和むのが解ります。酒が進むにれ、
食が進むにつれ心が軽くなるのが解ります。

松下さんの口も軽くなります。

「社長、言っていいですか?」
「何でも」
「社長、この1ヶ月くらい少し変ですよ。特に今週は変。何かあっ
たのですか?」

松下さんも私の変化に気が付いていたのです。いくら私でも妻が正
社員になってから、急に残業、付き合いで帰宅が遅くなり、出張も
毎週のようにあれば少しは変に思います。会社で空ろな時もあった
のでしょう。それがつい先週具体化しただけの話です。

「いや、別に何も。君がこの間 ”妻は僕を愛している”って言っ
たよね?どうしてそう思った?」
「ええ、奥さんの社長を見る目を見てそう思ったの」
「そうか、有り得ないな」
「えっ、有り得ない?」

感が良いのでしょう、松下さんはそれ以上この話題には触れませ
ん。

酔いに任せて喋ります。朝も夜も家で食べていない事、家に帰るの
はいつも遅い事。さすがに妻の浮気の事は言えません。

未だ9時、家には帰れません。二人でカラオケに寄ります。知って
いる歌は演歌です。不倫、悲恋、そんなテーマばかりです。妻と佐
伯が目に浮かび、曲が流れても歌えません。

「私も歌っていいですか?」
「勿論だ」

松下さんは60年代のアメリカンポップスを歌います。何処で覚えた
のかと思うほど上手に歌います。

「よくこんな歌知ってるね」
「父が好きで、小さい頃よく一緒に聞いていました」
「社長も一緒に如何ですか?」
私もメロディーくらいは知っています。見よう見まねで歌います。
弾けるような若い恋。駄目です、歌えません。妻と出会った頃を思
い出します。

「社長、今日は駄目みたいですね。私が一杯歌ってあげるから」

優しい女性です。私が腰を上げるまで、帰るとは言いません。私は
もう泥酔しています。

「そろそろ帰ろうか?」
「そうですね、私が送ってあげる」

一台のタクシーに乗り込みます。私の家の前です。

「有難う、おやすみ」
「おやすみなさい。奥さんの代わりをしてあげるから」

小さくそう言って、タクシーで去って行きます。その言葉は私の耳
には届いていません。
  1. 2014/08/13(水) 12:30:52|
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水遣り 第36回

シャワーを浴び、ベッドで横になっても眠れません。酒の助けを借
りて又気絶するように眠ります。夕方近くまで、眠り続けます。妻
の声で起こされます。

「ただいま。貴方どうかされました?具合でも悪いのですか?」
「いや、何でも無い。昨日半分徹夜だ」

私は言い訳をしています。

『どうして俺が言い訳しなくちゃいけないんだ。全てお前のせい
だ』

心の中で毒づいています。何をして来たんだと聞きたいのを押さえ
ています。

「何か召し上がりますか?」
「いや、いい。どうも夜も食べれそうも無い。夜もいい。それから
明日も仕事だ。明日も飯はいい」

私に非が有る訳ではありません。正々堂々としていれば良いもの
を、こんな態度しか取れません。怒りをこんな態度でしか現せない
自分がもどかしいのです。しかしこんな思いも後2日の我慢です。

仕事部屋に篭った私を何度か妻が覗きに来ます。

「貴方、大丈夫ですか?お粥作ったの。召し上がりますか?」

少しは私の事も気に掛けてはいるのでしょうか。心配そうな顔をし
ています。

「いや、要らない」

私が返す言葉はそれだけです。

夜中の12時を過ぎますとさすがに腹が減ってきます。キッチンに降
ります。テーブルの上に皿が並んでいます。私の好物ばかりです。
横にメモがあります。”食べれるようでしたら、召し上がって下さ
い”。

翌朝、私は出かけます。

「朝御飯、召し上がりませんか?」
「昨日要らないと言った筈だが」

夜、帰るとご飯が用意されています。月曜日の朝もしかりです。私
はそれを無視して出かけます。

事務所に入りますと、松下さんが声を掛けてきます。

「社長、お早う御座います。金曜日はご馳走様でした」

そう言いながらお握りと味噌汁を出してくれます。味噌汁とお握り
は、それから毎朝続きます。

携帯に着信があります。所長からです。

「今日、報告を渡せます。5時頃です」

それから全く仕事になりません。 

「松下さん、悪いが今日はこれで帰る」

4時半になると私は会社を後にします。
  1. 2014/08/13(水) 12:39:03|
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水遣り 第37回

事務所から興信所までのゆっくり歩いて15分程度の道が遠く感じま
す。 

「随分早いですな。後4,5分待って下さい」

待っている間、所長も無言です。その無言が堪えられません。

「出来ました。説明しましょう」

所長の説明を受けます。月曜日の日中、火曜日の夜と水曜日の朝そ
して金曜日の夜と土曜日の朝の報告です。写真が何枚か添付されて
います。

月曜日の日中:時間と場所が書かれています。2時過ぎ、場所は市
郊外のラブホテルです。タクシーを利用しています。地元でもあり
慎重なのでしょう。車がそのまま、建屋に入り、二人の姿、顔はホ
テルのドアーを入る時に確認できる程度です。タクシーを呼んだの
でしょう、タクシーが建屋に入った後、4時半頃二人が出てきま
す。妻の表情は良く解りませんが、笑っているようです。佐伯の左
腕に自分の右腕を預けています。

火曜日:妻はいつものシティーホテルに1時頃入ります。夜7時、二
人がホテルから出てきます。腕を組んでいます。7時半、北新地の
ラブホテル街に入ります。一軒のラブホテルの門をくぐります。10
時半頃、二人は出てきます。11時頃シティーホテルに戻ります。水
曜日の朝10時頃妻が一人で出てきます。

金曜日:二人は新幹線ひかりの同じ車両に乗り込みます。席は隣り
合っています。米原で特急しらさぎに乗り換え金沢に向かいます。
勿論席は隣同士です。夜6時に温泉旅館に二人は入り、翌朝10時に
旅館を出ます。

「ご覧の通りです。月曜日二人はラブホテルで何をしたか歴然で
す。まさか仕事の打ち合わせでは無いでしょう。火曜日のシティー
ホテル、金曜日の旅館の中での事は解りません。しかし佐伯も馬鹿
ですな、わざわざ北新地のラブホテルまで出向いている。いい証拠
をくれた」

何と二人は火曜日まで待てず、月曜日にも関係をもっているので
す。私は所長の話を聞いていません。数枚の写真が私を打ちのめし
ます。

北新地のラブホテルから二人が出てくる写真。妻は佐伯の左腕に両
手を絡め全身を預けるようにぶら下っています。その頭は佐伯の左
肩に預けています。顔に至福の表情を浮かべて。預けているのは体
だけではありません、心までも預けているのです。

ひかり、しらさぎの車中の写真。妻の手から妻の箸から食べる佐
伯、一つのコップで二人で飲むお茶。妻はもう私の妻ではありませ
ん、佐伯の妻のようです。

私の顔が余りにも深刻だったのでしょう。

「宮下さん、お気の毒です。女は皆、こんな顔をします。喜びをく
れた男には、夫にでもそうではなくても。ただ他の写真も見て下さ
い。奥さんを観察していても、沈んでいた時の方が多い気がしました」
「・・・・・」
「今日帰りに一杯どうですか?」

私に否やはありません。このまま家には帰れません。
  1. 2014/08/13(水) 12:40:26|
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水遣り 第38回

居酒屋の暖簾をくぐります。

「宮下さん、今日帰って報告書を奥さんに見せますか?」
「勿論です」
「少し待ってもらえませんか?」
「出来ません。しかしどうして?」
「今まで話せなかったが、実は以前から佐伯の身辺調査をしていま
す」
「・・・・・」
「身辺調査は水曜日の午前中に一件終わり、それで完了です」
「それが私に何の関係が?」
「佐伯の全貌が解ります。宮下さんにとっても重要な事です」
「しかし・・・」
「経済問題も含め全て宮下さんにお見せします。これは依頼元から
も了承を得てあります」
「経済問題?依頼元?」
「今は詳しく言えませんが他から依頼が先発していました」
「そうすると身辺調査もそこからですね」
「そうです」
「何処の依頼ですか?」
「今は話せません」
「そうですか。水曜日まで待たなくてはいけない訳ですね」
「申し訳ないが、そうしてくれれば助かります」
「仕方無いですね、そうします」

今日は妻に言えない。後2日我慢しなければいけない、その思いと
は別にまだ言わなくてもいいと、ほっとしたのも事実です。

後2日待てば、より強力な武器が手に入るのです。我慢する事にし
ます。 

「その代わりと言っては何だが、佐伯の別れた奥さんに君の事を話
した。何時でも会ってくれるそうです」

普通の興信所の親父では無いとは思っていましたが、どうしてそこ
まで手が届くのか不思議です。

「何を怪訝な顔してる。人生相談所にもなり得ると言ったがな」

私も別れた奥さんに会いたい、会って離婚の原因を知りたい、そう
は思っていました。

帰りがけ、別れた奥さん旧姓中条佳子さんの住所と電話のメモを渡
されます。

「宮下さん、余り考えないほうがいい。体に毒だ」

家に帰ります。

「お帰りなさい。食事は?」
「済ませた」

仕事部屋に入り、報告書を見ます。殆どの事は先程、所長から聞い
たものです。写真を眺めています。一つの事に気が付きます。ホテ
ルに入る時と出る時の妻の表情の違いです。入る時のそれは曇って
いるように見えます。出る時は佐伯に任せきった顔です。違和感が
あります。 

思い出しました。妻が出張するようになり、暫くしてから時折見せ
る顔です。ソファーに座っている時、あるいは台所仕事をしている
時手を休め物思いに沈んでいる時があります。そんな時、私がが声
を掛けても ”疲れているの、何でもないわ。”と返ってくるだけ
だったのです。あの時もっと突っ込んで聞けば良かった、そうすれ
ば此処までにはなっていなかった。しかし、もう遅いのです。
  1. 2014/08/13(水) 12:44:48|
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水遣り 第39回

火曜日の夜、明日大阪へ一泊の出張である事を知らされます。これ
以上もう耐えられそうもありません。翌朝一番で興信所に行きま
す。

「山岡さん、もう無理です」
「どうしました」
「今日、妻が又大阪に出張です。明日まで耐えられない」
「佐伯の別件は午前中に片がつく、それ以降なら大丈夫だ」

一旦、事務所に戻ります。

「松下さん、今日は休む。携帯にも電話しないで欲しい」
「何かあったのですか?」
「いや、私用だ」

大阪に向かいます。新幹線の車中、どうしたものか考えます。泊ま
るホテルは解っています。ホテルに聞いても妻のルームナンバーを
教えてくれる訳はありません。佐伯が妻の部屋に居るとも限りませ
ん。妻に携帯で聞けば教えてくれるでしょう。しかしそれでは、妻
は警戒し事を起こさないでしょう。

『浮気の現場を押さえる為に来たわけじゃないよな。洋子の部屋へ
行けばいい』

妻の携帯にコールします。妻の出張中に電話した事はありません、
心臓の鼓動が早くなるのが解ります。数回のコールの後、”電源が
切られているか、電波の届かない所に居ます”の案内が空しく響き
ます。思い切ってかけただけに、怒りが湧いてきます。ホテルの交
換経由の電話案内でも、部屋に居ないと返ってきます。時間をおき
数回繰り返しますが同じ事です。

『洋子はそういう女だったのか。出張中は俺の電話には出たくない
と言う訳だ』

打つ手がありません。考えあぐねます。新幹線を降りてもどうした
ものか迷います。まだ4時、取りあえずホテルに向かいます。ホテ
ルのエントランスの場所を確認します。一箇所だけです。報告書の
写真にあるのと同じである事も確認します。夜二人が何処かへ出る
とすれば此処からでしょう。車を使われれば諦める他ありません。
今日二人が外出するとは限りません。しかし私にはする事がありま
せん、エントランスを見つめる以外ないのです。

回りを見渡します。エントランスの道路を挟んだ向かいのビルの2
階に喫茶店があります。東京にもある喫茶店のチェーン店のようで
す。此処なら粘ってもおかしくありません。窓側の席に陣取りま
す。5時半、出てくるには未だ早いでしょう。6時半店は込んできま
す。一杯のコーヒーでは居た溜まれません、お替りをします。又1
時間が過ぎます。

『出てこないか。駄目だったな』

諦めかけたその時です。二人は出てきました、腕を絡めて。

「釣りは要らない」

私は喫茶店を駆け降ります。
  1. 2014/08/13(水) 12:45:41|
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水遣り 第40回

道路を渡る信号は丁度青です。急いで渡り、二人の前に仁王立ちに
なります。走ったせいか息が切れています。妻は私を見ても、一瞬
誰だか解らないような顔をしています。私は妻を見てはいません。
佐伯を睨み付けています。妻は私が解ったのでしょう。

「貴方、どうして此処に?」

私は妻を無視します。

「佐伯、まだ俺が誰だか解らないようだな」
「あっ、宮下さんのご主人」
「やっと、解ったな」
「これから奥さんと業者の打ち合わせに」
「聞きもしない事を言わなくていい。こんな遅い時間に、腕を組ん
で打ち合わせに行くのか。行く所はラブホテルだろ」

とっさの事に二人は腕を組んだままです。あわてて腕を解きます。

「貴方、これは違うの」
「うるさい。何とどう違うんだ。お前は喋らなくていい」

「貴様っ!」

佐伯の顔面にパンチを2発、そして股間を強かに蹴り上げます。

「ギェッ」

佐伯はもんどりうって倒れます。背広のポケットから財布と何がし
かの物が零れ落ちます。

妻は茫然として立ちすくんでいます。

私はピンク色した、形状の違う2つの小さな箱をそっと拾い上げ、
自分のポケットに仕舞います。

「貴方、聞いて」
「聞く事は何もない」
「・・・・・」
「俺は帰る。お前はもう帰ってくるな、佐伯と乳繰り合ってろ」

妻を見ると涙を流しているようです。それが又気に入りません。

「俺に佐伯が殴られてそんなに悲しいか」
「違います」

佐伯がのろのろと起き上がってきます。

「佐伯、精々可愛がってやれ」

私は踵を返してその場から立ち去ります。
  1. 2014/08/13(水) 12:46:44|
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水遣り 第41回

帰りの新幹線の車中、佐伯を殴った感触が手に、蹴り上げた感触が
足に残っています。人を殴るのは気持ちの良いものではありませ
ん。後悔している自分がいます。後悔している事はそれだけではあ
りません。どうして妻を連れて帰らなかったのかと悔やんでいま
す。今頃二人は慰めあって抱き合っているかと思うと居た溜まれま
せん。ウィスキーを注文します。酒で紛らわすしかないのです。

ウィスキーの支払いで小銭を出すのにポケットを探ります。佐伯の
ポケットから零れた小箱が指先に引っかかります。

『そうか、こんな物があったんだな』

見覚えがあります。中国のメーカーに行った時、女が燃えない時使
えば良いと見せられたものです。一つは経口催淫剤、一つは塗布媚
薬。非合法の物です。普通は手に入りません。それだけに効き目も
大きいのです。

『佐伯。こんな物を使いやがって』

飛んで引き返したい衝動に駆られます 車中、酔うどころではあり
ません、怒りが酔いを打ち消します。

家に帰ったのは0時半。今夜も眠れそうにありません。ソファーで
酒を飲み酔いつぶれ、そのまま寝てしまったようです。

女の声で起こされます。

「貴方、御免なさい。こんなにさせてしまって」

酷い二日酔いで頭がはっきりしません。今の状況が飲み込めないの
です。妻だと解るのに数10秒掛かります。時計と妻の顔を見比べて
います。まだ6時半です。

「どうしたんだ、こんな時間に」

場違いな事を聞いています。妻は説明します。新幹線の最終は名古
屋停まり、そこでムーンライト”ながら”に乗り換えて帰ってきた
のです。

『そうか、俺は昨日大阪へ行ったんだ』

妻の説明を聞いている内に徐々に頭が回復します。怒りが込み上げ
てきます。

「帰ってくるなと言っただろ」
「誤解です。あれは違います。お仕事です」
「何がお仕事だぁ。お前たちは腕を組んで仕事に行くのか」

私も何を細かい事を言っているのでしょうか。報告書を見せれば済
む事です。

「あれは、回りの人がみんな腕を組んでいて、じゃあ僕たちもって
部長が」
「回りがキスをしたら、お前たちもするのか。馬鹿か、お前らは。
お前は人妻だぞ、しかも40過ぎのな」
「そんな事しません」
「俺はお前の携帯に電話した。お前が出れば、あんなところを見ら
れずに済んだのにな」
「・・・・・」
「佐伯と居る時、お前はいつも電源を切っているようだな」
「あっ、あれは部長がお客と話している時は電源を切っておくよう
にと」

とっさにうまい嘘を思いついたものです。

「腕を組むのも佐伯、電源を切るのも佐伯。あいつの言う事はなん
でも聞けるんだな、俺の言う事は何も聞けなくてもな」
「そんな事ありません」
「俺が死んでも、明子が死んでもお前には連絡が出来ない。佐伯に
抱かれる方がお前には大事なんだ」
「抱かれてなんかいません」

明子の名前が効いたのでしょうか、妻は涙ぐみます。

「貴方、昨日はどうして大阪へ?」
「解りきった事だ、お前たちが乳繰り合っているところを見たくっ
てな」
「そんな事はしていません」

その時、家の電話が鳴ります。まだ7時前です、余程緊急でない限
りこんな時間に家の電話は鳴りません。
  1. 2014/08/13(水) 12:49:09|
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水遣り 第42回

「お前が出てくれ」

妻が電話に出ます。佐伯からです。

「貴方に替わって欲しいって」
「どうして俺が出なけりゃならない」
「お願いします」

仕方なく出る事にします。

「宮下だが」
「ご主人、昨日は申し訳ない。大人気なかった。つい奥さんに無理
言ってしまった」
「そうか」

それだけ言って電話を切ります。二人で打ち合わせたのが見え見え
です。

「貴方、済みませんでした」
「まぁそう言う事なら仕方がないか」

妻は一応安心したようです。茶番は此処までです。そろそろ本題に
入らなければいけません。

「ところで、お前に見せたい物がある」

2階の仕事場から報告書を持ってきます。

「これだ」

報告書を妻の目の前のテーブルに置きます。

「・・・・・」

表紙の興信所の名前が目に入ったのでしょうか、妻の顔は青ざめて
います。中身を見ようともしません。全てを悟ったのでしょう。

「これは違います」
「何が違う。まだ中身を見ていない。見たらどうだ」

報告書のページをめくっています。先週の月曜日から土曜日までの
妻と佐伯の記録が写真と共にあります。妻は読んではいません、そ
の目は空ろです。

「これは先週一週間だけのものだ。お前たちは相当前から続いてい
たな」

妻は返事が出来ません。バッグを探り2枚のコピーされた写真を差
し出します。

「何だ、これは」
「その写真が私を、私を」

その後は言葉になりません。

私はその写真を見つめます。

「僕と松下さんがホテルに食事に行った時の写真だな。これがどう
した」
「時間が」
「時間が?」

写真に印字された時間を見ます。入って行く時間は11:32.出てく
る時間が14:23。松下さんとは何度かホテルで昼食を取っていま
す。勿論、3時間も掛かる訳はありません。記憶を辿ります。直ぐ
には思い出せません。

「3時間の間、何をされていたのですか」
「3時間も居る訳がない」
「松下さんがあんな嬉しそうな顔をして」

ホテルを出る時の写真、確かに松下さんは嬉しそうな顔をしていま
す。妻が何を思っているのか、この時解りました。
  1. 2014/08/13(水) 12:50:50|
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水遣り 第16回

仕事部屋に行きノートパソコンを開けます。会社を始めてからのス
ケジュールは全て記録してあります。 写真の日付は7月11日 7月
10日から7月13日まで台湾、10日、11日12日は台湾で泊まっていま
す。7月10日を見ます。松下さんとホテルで昼飯を取っています。
松下さんが来てくれたのがその前の週、来てくれた御礼にと昼食に
誘ったのです。7月10日は台湾に発つ日、乗ったフライトはEG205、
成田16:30発です。市内を13時には出なければいけません。ホテル
からは、遅くとも13時前には出ている筈です。

ノートパソコンを持ってリビングに降ります。

「洋子、いいか。よく見ろ。11日は僕は台湾に居た」

えっと言う表情で私を見つめ返します。

「確かに松下さんとは食事をしている。但し7月10日だ。7月10日は
台湾に発つ日だ。フライトは16:30、1時前にはホテルを出てい
る」
「・・・・・」
「しかも、11日に君は台湾のホテルに電話をくれている。忘れた
か?めったに電話をくれない君が」

佐伯は時刻を改竄する時、日付けを11日にしてしまったのです。妻
は思い出します。声を聞きたくなったからと、電話をしたのです。
佐伯に写真を見せられた時、時刻だけを見ていました。どうして日
付を確認しなかったのか。しかし妻はまだ理解していません、何故
こんな写真があるのかを。

「つまり佐伯が偽造したと言う事だ。ばれたら今度は泣き落とし
か。佐伯には余程可愛がってもらっているんだな、自分が電話した
事さえ忘れているんだ」

暫く妻を眺めています。泣き伏している背中が震えています。

『どうしてこんな事になったんだ。洋子はどうしたんだ。俺たちの
20年間がたったの3、4ヶ月の事で終わってしまうのか』

しかし、感傷に浸っている暇はありません。更に追い討ちをかけま
す。

「この写真は預かっておく、証拠品だからな。誰から渡された?」
「・・・・・」
「馬鹿な質問だったな。佐伯しか居ないからな」

「それから携帯も預かっておく」

妻は自分の携帯を差し出します。

「違う、これではない。佐伯から渡された方だ」
「そんなものもらっていません」
「いつも10時頃佐伯と連絡していた携帯だ。それと・・」

さすがに先々週の金曜日の事は言えません。 

妻は頑なになっています。とうとう携帯を出しません。

「まあいい、お前たちももう使うことも無いだろう」

「それから、これは佐伯のポケットから落ちたものだ」

ピンク色の小さな2つの箱をテーブルに置きます。

「これが何だか解るよな」
「解りません」
「お前たちが何時も使っていた物だろうが、飲む媚薬と塗る媚薬、
しかも非合法。全くお前たちは変態か?」
「知りません、私そんな物知りません」
「知らないだと。塗られても気がつかないのか、お前は」

知っていたと言えば、それを材料にまた私は責めるでしょう。知ら
ないと聞けば、解らない程お前は気をやっていたのかと、また責め
るでしょう。
  1. 2014/08/13(水) 13:23:31|
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水遣り 第44回

妻の泣き声は更に大きくなります。しゃくりあげるように泣いてい
ます。その背中を見ていると怒りとは別の感情が出てきます。この
4ヶ月以上、妻の裸を見ていません。むらむらと欲情が湧いてきま
す。

「洋子、そこで裸になってみろ。服を脱げ」
「出来ません、許してください」
「夫の俺には出来ないのか」
「違います。こんな朝から出来ません」

出来ないのは解っています。朝でなくとも、こんな状況で出来る訳
はありません。しかし、私は止める事が出来ません。

「朝だから出来ない?馬鹿かお前は。佐伯とは昼日中ラブホテルに
しけこんでるだろ」

妻は脱ぎません。無理矢理脱がせにかかります。先ずスーツの上着
を取るとその下は薄いピンクのブラウスです。ブラウスを剥がしま
す。妻は両手で胸を隠します。

「腕をどかせるんだ」

力ずくで腕を抉じ開けます。妻は抵抗を止め両手で顔を覆います。
ブラが現れます。乳房の下を申し訳なさそうに細い帯状の物で支え
ているだけのブラ、乳首部分にカバーはありません。

「お前は、佐伯に弄ってもらい易いようにこんな物着けてるのか」

妻の乳首は以前より若干黒ずんでいるようです。 

スカートを脱がせます。妻は足をばたつかせ激しく抵抗しますが男
の力には敵いません。スカートを脱がせると、ガーターとストッキ
ングその下にはT-バックが現れます。

「なんと言うものを履いているだ、お前は」

この変わり様に私の言葉はありません。

「立ってみろ」
「立てません」

妻は赤子のように丸まって、横になっています。貴方には何も見せ
たくないと体で言っているようです。その態度が気に入りません。
妻の頬にビンタをはります。妻に手をあげたのは結婚以来始めての
事です。

「いいから立て。立てって言ってるんだ」

妻はよろよろと立ち上がります。 両手は顔を覆ったままです。

正面から妻を見ます。均整のとれた体に薄紫色のブラとT-バック、
その上には黒のガーターとストッキング。ブラから飛び出た乳首、
申し訳程度の布切れで覆われた女陰、その布切れは女陰の割れ目を
浮かべています。

「後を向け」

背中に張りついたブラの細い紐、T-バックは尻の割れ目に食い込み
見えません。

「もう一度前を向くんだ」
  1. 2014/08/13(水) 13:24:31|
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水遣り 第45回

私の物がその鎌首をもたげます、こんな状況でなければ飛びついて
いるでしょう。しかし、今はそんな場合ではないのです。眺めてい
る内、新たな怒りが湧いてきます。

「お前はこんな物履いているのか?佐伯に見て貰いたくって、脱が
せて貰いたくって、こんな物を。会う前から濡らしているんだろ?
俺にはオバサンパンツか」

言えば言う程、感情が激してきます。今まで押さえていた物が全て
出てきます。

「お前は佐伯に何回抱かれた?4ヶ月で50回か?俺たちの5年分だ
な?佐伯のチンポとお前のマンコは余程相性がいいんだな」

妻は俯いたまま聞いています。いや、聞いていないのかも知れません。

「佐伯のチンポは涎を垂らして咥えられるんだ。奴のザーメンは飲
めるんだ。奴の指ならクリは気持ちいいんだ。奴の舌ならお前のマ
ンコは喜ぶんだ」

本当のところは知りません。携帯で佐伯の指示で妻が善がってい
た、その場面が頭から離れないのです。

ガーターごと一気にT-バックを脱がします。足を開きます。そこに
現れたのは私の知っていた物ではありません。小陰唇はその窪みか
ら醜くはみ出ています、クリトリスの包皮も捲れています。しかも
色も赤黒く爛れたようになっています。こんな時でも膣口からは涎
を流しています。あの可愛そうなくらい小さくて可憐な物はもうあ
りません。今しがた、妻を責める為に言った私の言葉が事実となっ
て帰ってくるのです。 

私を打ちのめします。私にはもう妻を責める気力がありません。

「こんなにしやがって」

その言葉は妻に向けたものか、佐伯へのものか私にも解りません。

私はバスルームの整理ロッカーから妻の下着も持ってきます。私の
知っているいつもの下着です。それを妻に投げつけます。

「もういい。服を着ろ。俺は出かける。自分のした事を良く考えて
おけ」

本当は出て行けと言いたかったのです。しかし言えません。佐伯は
独身です。出て行けと言えば佐伯のマンションしか行くところはあ
りません。耐えられません。佐伯のところだけには妻を殺してでも
行かせたくありません。一度や二度の浮気では無いのです。これだ
け長期に渡り、密度濃く、妻は完璧に佐伯に変えられてしまったの
です。本来、妻が持っていた物かも知れません。そうであっても佐
伯にそれを引き出されてしまったのです。普通なら、”離婚だ、出
て行け”の一言なのでしょう。私には頭の整理がつきません、いい
え、心の行き先が見えません。

もう9時になります。2時間も妻を責め続けていたのです。仕事をす
る気になれません。事務所に電話をいれます。

「松下さん、悪いが今日も休む」
「どうされたのですか?」
「いや、私用が片付かなくって」
「お急ぎでなければ、事務所に寄りませんか?味噌汁があります」
「そうか、有難う」
  1. 2014/08/13(水) 13:25:20|
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水遣り 第46回

松下さんの作ってくれたお握りをほうばり、味噌汁を飲みます。そ
の美味さ、暖かさに思わす涙が零れます。

『社長、余程酷い事があったんですね』

「ご馳走様。美味しかった」

事務所を出ます。行き先は所長さんの所です。

「宮下さん、報告書は今日奥さんに見せたんだね」
「どうしてそれを?」
「言ったように、昨日の午前中が調査の最終日だ。私も大阪に行っ
た。昨日の君の口振りでは、君も大阪に行くに違いないと思った。
君の活躍を見たかった」
「それでは全て?」
「そう、見ていた。君は気がつかなかったようだが、同じ喫茶店に
いた。ま、気づかれるようなら、私もこんな商売はしていないがね」

私が立ち去った後、妻は私のキックで歩けなくなった佐伯を部屋ま
で連れて帰り、自分の荷物を纏めてホテルを出たのです。一部始終
を所長は見ていました。その時間には東京行きの新幹線はもうあり
ません。名古屋で乗り換え ”ながら”で帰ってきたのです。

「奥さんは、君を追って駆け出した。暫く追ったが追いつかない」
「私を追ってきたのですか」
「そうだ。名前を叫んでいたが、君は聞こえなかったようだな」
「そうですか」
「その内、歩けない佐伯が気になったんだろう、佐伯に肩を貸して
ホテルに戻った」

妻がホテルから出てくるであろうとそのまま待っていてくれたのです。

「同じ車両に乗った。あの調子では奥さんは一睡もしていない。私
は寝たがね」

所長の目は赤く腫れぼったいのです。妻の様子を見ていてくれたの
です。

「有難う御座います」
「何のお礼だね」
「いや、つまり妻を見ていてくれた」
「それより、話があって来たのでは」

写真、媚薬2個を出し所長に出します。所長が先ず手に取ったのは
写真。

「これは君と松下さんだね」
「えっ、松下さんとは会っていない筈では」
「己を知れば百戦危うからずだ」

私は日付日時の事を説明します。所長は日付の部分をじっと見てい
ます。

「此処を見なさい、この部分が他とは色合いが違う」

確かに違います。

「多分、いや間違いなく佐伯が自分のPCで時刻部分を切り取り、嘘
の時刻を貼り付けたのだろう。なんと稚拙な事を」
「その稚拙な事に妻は騙された」
「普通はそこまで見ない。まして奥さんは動転していた。気がつく
訳がない」

媚薬に目を移します。

「これは裏では有名な媚薬だよ。どんな女でもいちころだ」
「これを妻は使われていた」
「しかし、酷い奴だ、佐伯は。写真と言い、媚薬と言い手段を選ば
ない。卑劣な奴だ」
  1. 2014/08/13(水) 13:27:07|
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水遣り 第47回

佐伯が卑劣であろうとなかろうと、騙されたのは妻です。いや騙さ
れたのではなく、妻はそれにのっただけかも知れません。

「宮下さん、君は佐伯をどうしたいんだね」
「頭の整理がついていません。出来れば殺してやりたい」
「そうだろうな、しかしそれは出来ない。奥さんの方は?別れますか?」
「余計な事だ」
「失礼した。人生相談ではなかったな」

”別れますか?”この言葉に困惑します。別れなど考えたこともな
かったのです。真相を知り男を叩きのめす、これしかありません。
妻と別れられるのか、それとも一緒に暮らせるのか、今の私には考
えがつきません。

「佐伯の身上調査は火曜日には纏まる。取りに来るといい。ところ
で中条さんとは会ったかね?」
「中条さん?」
「佐伯の別れた奥さんだ」
「あ、今日お会いしようかと」

中条さんと会った後、佐伯の所へ乗り込む積りです。

「直ぐ会った方がいい」
「そうします。では失礼」

興信所を出る私の背中に声が掛かります。

「困った事があったらいつでも来てくれ。人生相談の窓口は開いてる」

中条さんのお宅へは車で40分程度の距離です。椿の垣根で囲まれた
質素なお宅です。呼び鈴を押します。

「はーい」
「宮下と申します。山岡さんに言われて伺いました」

客間でしょうか、8畳の和室に通されます。

物静かな女性です。女の一人暮らしのせいでしょうか、凛とした表
情が漂っています。

「どうぞ、お座りになって下さい」
「はい、今日は失礼を省みずお伺いしました」
「どうぞ、気楽になさって下さい」
「あのー」

聞こうとしている事が事だけに中々口火が開けません。

「ご主人の、いえ失礼、佐伯の、いえ佐伯さんの・・」
「佐伯でいいんではないですか。もう私はあの人の妻ではありません」
「無礼を承知でお聞きします。佐伯とはどうして、そのう、離婚を」
「短兵急な方ね。お茶も未だですのよ。それにご自分の事は何もお
喋りになってないわ」
「失礼しました」

妻と佐伯の事の大筋を話します。

「御免なさい。本当は山岡さんから聞いていたの。貴方が死にそう
な顔をしてるから、ちょっと言ってみたの」
「そうですか」
「佐伯も昔はいい人だったわ、私にも優しくしてくれた。8年前に
変わったわ。手術をしたんです」
「手術?何処か悪かったのですか?」
「いえ、そうじゃ無いんです。男の手術です」
「男の手術?」
  1. 2014/08/13(水) 13:27:57|
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水遣り 第48回

男の手術つまり佐伯は男根の増大手術をしたのです。話によります
と、佐伯のそれは勃起時で大人の男性の中指を少し太くした程度だ
ったそうです。佳子さんはそれで感じ満足もしていたのです。しか
し、コンプレックスを持っている佐伯は悩んだ末、佳子さんに無断
で手術を受けてしまうのです。

「手術から回復して、どうだと言わんばかりに私に見せるのです」

それは正視に耐えるものでは無かったそうです。大きくはなりまし
た、しかし出来の悪い大人のオモチャのようにゴツゴツしたグロテ
スクな物だったそうです。

「こんな恐ろしい物、おぞましい物、見る事も出来なかったわ」

それ以後、佳子さんはセックス拒否症になり、夫婦はセックスレス
になったのです。

「佐伯の性欲は強い方だったと思います。我慢出来なくなったので
しょうね、それと新しい物を試したかったのでしょう。浮気を繰り
返すようになったの」
「それで離婚を?」
「いいえ、違います」

佳子さんは佐伯の浮気は自分のせいだと言います、自分が拒否した
せいだと。だから我慢できたと。

「何人目かの相手が妊娠したの。人妻だったわ。ご主人に知られて
離婚、貧しい生活のようでした」

その人妻は、認知は出来ないまでも、我が子だと認めて欲しい、若
干の養育費を貰えないでしょうかと佐伯にお願いしたのです。その
事は佳子さんの知る所となりました。

「私は了承したの。もし彼女が望むなら子供を養子として引き取っ
てもいいと」

佐伯夫婦には子供が居なかったのです。佐伯の相手の人妻が妊娠し
た事実だけでも、佳子さんには相当ショックだったでしょう。にも
関わらず彼女は養育費、更には相手が望めば子供を養子にして引き
取るまでの決意をしたのです。彼女が3度目に家に来た時の事です。

「佐伯は彼女に言ったの。”この子は本当におれの子供か?俺以外
にも男は居たんだろう?”って」

彼女は ”酷い”の一言を残して、泣きながら帰ったそうです。 

「気になって住所を頼りに彼女を訪ねたわ。だけど彼女は居なかっ
た。その後も随分探したけど、見つからなかった」

佳子さんは溜息をつきます。その当時を思い出しているのでしょう。 

「佐伯の人格を見たような気がしたわ。それからはもう駄目、佐伯
のする事、何を見ても、何を聞いても、もうこの人とは一緒に暮ら
せないと思ったの」
「そうですか。そんな事まで話して頂いて。でも私の妻はそんな佐
伯に溺れてしまった」
「宮下さん、佐伯は女を玩具としか見ていない、そんな男なの。も
う一度奥さんをしっかり見てあげて」

佳子さんは強い人でした。夫の裏切りを何度も許し、相手の女性に
も労りを示すのです。しかし夫の人間性を知った時、決別を告げま
す。会って直ぐに感じた凛とした表情はその生き方を映しているの
でしょう。お礼を述べ中条家を後にします。
  1. 2014/08/13(水) 13:28:50|
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水遣り 第49回

佐伯の会社に向かう途中考えます。所長が早く中条さんに会えと言
った訳を。佐伯の人間性を私に解らせたかったからでしょうか?そ
れもあるでしょう。それよりも佳子さんさんの強さと優しさを見せ
たかったのでしょう。しかし私はあんなに強くはなれません、優し
くもなれません。今の私には如何に佐伯と妻に復讐してやるか、思
い知らせてやるか、それしか頭の中にはありません。

それにしても、佳子さんと妻は違いすぎます。その当時、夫であっ
た佐伯のものをグロテスクだと受け入れられなかった佳子さん、喜
んで縋りついてしまった私の妻。妻の中の女が解りません。

佐伯の会社の前に着きます。この時間には佐伯が社内に居る事は確
認してあります。受付で佐伯を呼出、応接に案内されます。思いに
任せてここまで着ましたが、話すべき事を何も用意していない事に
気がつきます、いや考えても自分でもどうして良いか解らないのです。

『まあいい。今日は事実を突きつけるだけだ』

暫く待つと佐伯が応接に現れます。

「宮下さん、申し訳ない。昨晩は見苦しい所をお見せしました」

当然、妻から興信所の件は佐伯に連絡があったものと思っていまし
た。妻が連絡していないのか、それとも佐伯が惚けているのか。

「別に見苦しくは無い。あんた達二人にとっては当然の事だろう」
「は、仰ている意味が良く解りませんが」
「腕を組むぐらいは、愛し合ってる二人にとって当たり前の行為だ
と言っているんだ」
「益々、解りません」
「惚けるんじゃない。随分前からのようだな」

報告書を佐伯の前に放り投げます。

「これは?」
「表紙に書いてあるだろう。興信所のレポートだ」

佐伯はどうしてこんな物が此処にあるのか不思議そうに眺めています。

「中を見たらどうなんだ。先週一週間の物だが、3回も会っている
んだな。随分、洋子にご執心のようだな」

此処まできても、私はまだ数に拘っています。佐伯の膝と手が小さ
く震え出します。

「こんな物嘘だ。でっち上げだ」
「洋子を呼んで3人で話し合ってみるか」
「いや、それは」
「まあいい、兎に角今日はこれを届けに来ただけだ。俺もあんた達
をどうしようかまだ考えていない。勿論それ相応の事はして貰うつ
もりだ。あんたも良く考えておくんだな」

言う事だけ言って佐伯の会社を出ましたが、私はこれからどうすれ
ば良いのか全く見当がつきません。佐伯には慰謝料で済ませる積も
りはありません、徹底的に社会的に葬ってやる。その場合、私の事
も妻の事も社会に晒されるでしょう。私は一人で仕事をしてる身で
す。仕事に影響が出るとは思えません。妻が社会に晒されようと自
業自得です。私が気にしているのは妻と別れられるかどうかその一
点です。

『出て行けと言えば、間違いなく妻は佐伯のマンションに行く。そ
れは耐えられない』

妻がどうなろうと自業自得と思っている私、妻と別れたくない私、
私の思いは矛盾だらけです。 
  1. 2014/08/13(水) 13:29:51|
  2. 水遣り・CR
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