主に寝取られ物を集めた、個人文庫です。
ふと店先にいた妻の由美子が、その男の顔を見て深く頭を下げた。
「あら!山本理事長さん。いらっしゃいませ。いつもいろいろとお世話になりまして、ありがとうございます。」
その山本理事長と呼ばれた男は、60代も後半の年頃のデップリと肥えた体に、ゆったりとした大きめの濃いブラウンのス-ツに、派手な柄入りのワイン色のネクタイをして、のっそのっそと大柄の体を揺すりながら店の中へと入ってきた。
禿げた頭にグレ-のソフト帽をかむり、濃い眉毛の浅黒い顔は、てかてかして血色が良く、年の割には目つきが鋭く感じられた。
店の奥のテ-ブルまで来るとその上に黒いカバンを置き、そばのイスにドカッ!と腰を下ろすと男はタバコに火をつけながら、
「いや-、いつ見ても奥さんは、美しくて綺麗ですなあ-。わしも奥さんみたいな女が、女房やったら毎晩抱いて離さんやろなあ。
そして、ひと晩に何発でもやれるじゃろうなあ。ウヒ、ヒヒヒヒヒヒ
・・・・・・」
そう言いながら、テ-ブルにコ-ヒ-を出す妻の由美子の体を舐めるようにじっとりと、そしてゆっくりと上から下へ眺めているのがわかった。
「いやですわ-、理事長さんたら。私ももう38ですから、そんな魅力はないですよ。」
と妻も答えながら、心の中では嬉しいのかまんざらでもなさそうである。私は、カウンタ-の中でコ-ヒ-をたてながら、妻の由美子と理事長のやりとりを聞いていないようなふりをして、聞き耳を立てていた。
この山本と名乗る男は、この街の一角にある大きな商店街の商工会の理事長をもう何年も務めている顔役である。
いくつも貸しビルやマンションビル、アパ-ト、借家、貸し地を持ち、金融業もやっている不動産会社の社長でもある。
莫大な資産を自分一代で築き上げたやり手であった。しかし、周りから聞こえてくるこの男の評判は、何一つ良い話はないのである。
金に対するこだわりというか執着がすざましい、商売のやり方が汚い。金儲けのためなら、どんな手段も使う。
手に入れたい、ほしいという物件は、どんなことをしても手に入れる
人物だと言われている。
しかも大変な女好きで、いろんなことで好色家。
まさにいい噂はまったく聞こえてこない男である。
しかし、私達夫婦は知人の紹介でこの男と知り合い、そしてこの男の世話で、脱サラしてこの商店街の中で、理事長が所有しているマンションビルの一階を借りて、喫茶店を始めてようやく一年が過ぎようとしていた。妻の由美子の母がこの街で一人暮らしをしていたが、父が亡くなってからだんだんと体調を悪くして、ひとりの生活が心細いと言い出したので、この際思い切って引っ越してきて、同居することにしたのである。
私も、ある車の部品製造会社の生産管理部長の肩書きについていたが、会社の業績悪化から希望退職か、大幅な配置転換の方針に沿って九州鹿児島工場行きかの選択を迫られ、くる日もくる日も眠れぬくらい悩みに悩んだあげく体調も崩し、一時、吐血して入院もした。
そんな時、妻の由美子のひとことで決断した。
「あなた!私の大事なあなたのこれからの人生だもの、あなたの好きなようにしていいのよ。私はだまってあなたについていきますから。これからの人生どんな人生であっても、何も後悔はしません。」
私はそれを聞いて病室にもかまわず、妻の由美子の体を引き寄せ、急になんだか妻が愛おしく感じて、思わず力いっぱい抱きしめた。
その時、妻の目からキラリと光るひとしずくが、頬を伝って流れた。
それから決断して一年。
サラリ-マンの定年の年までに7年間の余力を残しながら、慣れない喫茶店の仕事を必死で覚えた。毎日毎日が大変ではあったけれども、サラリ-マン時代にはない、充実した日々であったように思う。
妻とふたりで始めた街の小さな喫茶店。・・・・・・・・・
すると、奥のテ-ブルでコ-ヒ-をすすっていた理事長が、妻の由美子を手招きして呼んだ。
「ねえ-、奥さん!今度ねえ-、商工会婦人部の旅行日程が決まったから、役員をやってもらっているひとは、かならず全員出席してもらいたいのじゃ。奥さんも役員さんだし、かならず出席するように。いいね、かならず来るように。マスタ-!いいね。奥さんをかならずこさせるようね。念を押しておくからな。いいな。ハッハハハハハハハハ・・・・・・」
男は旅行の日程表の紙を手渡しながら、妻の由美子の肩をなれなれしく撫で回すように触れていた。
しかし私は、何も言えずにいた。
男の大きな笑い声だけが、店内に響いていた。
- 2014/06/08(日) 11:49:22|
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商工会婦人部の親睦旅行の当日の朝、私は少し不安になって、嬉しそうに旅行の用意や身支度をしている妻の由美子(仮名)に向かって言った。
「おい、由美子!山本理事長の評判はかなり悪いぞ。いいことをいうひとは、誰もいないぞ。聞いたところによると、女好きで女に手を出すのが早く、それも人妻にとことんこだわる男らしい。
おまえももしかして、目を付けられているかも知れないから、この旅行先では気を付けろよ。いいな。」
「大丈夫よ、あなた。いくら女にだらしのない噂の山本理事長さんだとしても、大勢の女の人たちと一緒に行く旅行だし、あのかたも理事長という肩書きをもってみえるんだから、そんな噂にあるようなことはないと思うわ。私を心配してくれるのは大変嬉しいけど、そんなに心配なら私と一緒に行く?」
妻がとぼけたように聞いた。
「なにを言ってるんだ。そんなこと出来る訳ないじゃないか。」
「そりゃそうよね。だったら、いらない心配などしないで送り出して、・・・・いいでしょ。?」
私はわかったと頷いた。
妻は薄い水色のス-ツをさわやかに着こなして、旅行の集合場所へと出掛けて行った。
私はまだ気持ちの中に、不安な予感がよぎるのを押さえきれずいた。
私達と同じアパ-トの一階に住むおばあさんの言った言葉が、頭の中に蘇ってきた。
「いいかね、佐藤さん。このアパ-トの大家だから言いにくいけど、あの商工会の山本理事長には気を付けなさいよ。ここんところ、おたくの店やここのアパ-トにも頻繁に来てや、あんたの奥さんとベッタリ引っ付いて、いろいろ長く話しをしているみたいだから・・・・・
あの男は女に手を付けるのは早いし、よその奥さんであろうが徹底的に自分の手の中に、引きずり込んでものにするらしいよ。
だから、ここの商店街のお店の奥さんで、今までにもう何人もの奥さんがあの男の餌食になったことか。
みんなあの男のせいで旦那と離婚したり、男をつくって逃げたり蒸発したり、そんな話しの絶えたことがない恐ろしい男だから、気をつけなさいよ。あんたの奥さんも綺麗なひとだから、もうあの男が目を付けているかもしれんよ。手遅れにならんようになあ・・・・・・・」
私はその言葉を聞いて、なお不安な気持ちが大きくなっていった。
私は不安な気持ちで悶々とし、仕事が手につかずにいた。
いろいろと想いを巡らせば巡らすほど、悪い方に悪い方にと考えが行き着いてしまう。
私はいろいろ考えたあげく、決めた。
喫茶店の店を臨時休業として、商工会婦人部の旅行の今夜の宿泊先の観光ホテルに向かった。
旅行の日程表で宿泊先をチェックして、北陸地方のある温泉地へ車を飛ばした。
今夜、妻達が宿泊するこのホテルで、いったいどんなことが起きるのか。妻の由美子の身に何かが起こるのか。
ホテルの駐車場に着いて車を降りた私に、秋晴れの赤い夕陽が目に映った。
- 2014/06/08(日) 11:50:34|
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澄み切った空に何本かのすじ雲が、流れるように弧(こ)を描いてゆったりと浮かんでいる。心地よい秋の風が、車から降り立った私の顔をなでるように通り過ぎていく。
駐車場の片隅に白いすすきの穂が、秋風に何本も揺れていた。
観光ホテルの白い館が、西の山並みにいま沈もうとしている真っ赤な夕陽に、今日の一日を名残惜しむかのように照らし出されて赤味を帯びてそそり立っていた。
私は背広とネクタイのス-ツ姿に着替えて黒縁のメガネを掛け、ホテルの玄関先まで来た。
「ここが今夜、妻の由美子達の商工会婦人部の一行が泊まるホテルなんだな・・・・さてと・・・・・」
私は、確認をするようにホテルの看板に目をやって、玄関口から中へと入って行った。
大きな自動ドア-のガラスの引き戸が、左右に開いて中へと進むと、広大な広さのロビ-に豪華模様の深い絨毯(じゅうたん)が、目に映った。窓際には、高級な感じのするテ-ブルとソファ-がゆったりと並べられ、カフェラウンジとなっていた。
私は奥のフロントまでビジネスマンの雰囲気で、足早に進んで行った。そして、カウンタ-にいた受付の女性に、
「今夜宿泊する予定のA市商工会の職員ですが、山本理事長に急用が出来ましたので、宿泊される部屋を尋ねたいのですが・・・・・・」と言って、理事長の泊まる部屋を聞き出した。
私はすぐに、フロントの右側の正面奥に設けられたエレベ-タ-に乗り込んだ。最上階の15階まで一気に上がり、エレベ-タ-から出て
廊下伝いに理事長の泊まる部屋の名前を探した。
しばらく歩いていると、「飛燕」(ひえん)という木札が目に止まった。ドア-には、白い紙に「A市商工会連合会理事長様」と書いて貼り付けてあった。
「あっ!この部屋だな。理事長の泊まる部屋は・・・・・ どうせ理事長はこのホテルの最高に高い部屋に泊まるつもりだろうなあ・・・・」
私はひとりでぶつぶつ言いながら、まだ部屋のドア-は開け放たれていたので、周りの人影を確認してその部屋の中へと入ってみた。
そこは和風形式に作られていて、入り口で靴を脱いで襖の引き戸を開けると、まず20畳位の広さはあると思われる部屋が、2間続きで設けられていた。手前の部屋は豪華な座卓に座椅子が置かれ、部屋の隅には高価な人形や壺が並べられた飾り箪笥(タンス)が、気品のある雰囲気を醸(かも)し出していた。
奥の間も畳張りの部屋となっていて、竹林模様の襖に、高級ウィスキ-が何本も並べられたガラス張りの調度品ケ-スが置かれていた。
窓を開けると、かなり広いバルコニ-になっていて、最上階のそこからの眺めはすばらしいものであった。
木々の濃い緑色の中に、点々と赤色や黄色や茶色、いや朱色とか山吹色とか薄紅色とか、そういった大自然の中に散りばめられた鮮やかな色彩が、秋の夕闇に溶け込もうとしていた。遠くに見えるアルプスの山々にすでに夕陽はすっかり沈み、建物の灯りもポツポツと点いて、薄暗くなってきた情景の中をぼんやりと照らし始めていた。
すると、ドア-の外の方から話し声がしながら、人が何人も歩いてくる気配がした。
「あっ!いかん!もう理事長達はこのホテルに着いたんだな!」
私はとっさに焦ったが、今更この部屋からは出ていくとまずいと思い内側のカ-テンを引き、バルコニ-のガラスの引き戸をあわてて閉めて、手摺りの片隅に作られていた小さな物置の陰に必死で隠れた。
そして、息を詰めて部屋に入ってくる人影を見つめた。
部屋の灯りが点けられて、着物姿の仲居の女性に案内されて部屋に入ってきたのは、まさにあの男。山本理事長であった。
- 2014/06/08(日) 11:51:51|
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理事長の山本は、案内されてきた部屋に大柄の体をゆっさゆっさと揺らしながら入ってきて、黒い背広の上着を畳の上に脱ぎ捨てて、座卓のテ-ブル横の座イスにドカッと腰を下ろした。
ソフト帽を取ると禿げた頭とてかてかとして血色のいい浅黒い顔。目つきが鋭く、凄味の効いた顔立ち。そして、ドスのある低いダミ声。
理事長の山本は、そんな風貌の男であった。
それから、仲居が入れたお茶をすすりながら、
「おいっ!千絵!また世話になるで・・・・よろしゅうたのむぜ。いいなっ。うっひひひひひひ・・・・・・」
「はいっ!山本理事長様!ちゃんとわかっております。しっかりサ-ビスさせていただきますから・・・・・ねっ!」
もうすっかり顔なじみの仲なのか、その千絵と呼ばれた仲居は、にこやかな愛想笑いを返しながら、理事長をホテルの浴衣に着替えさせていた。
そうしながらすでに理事長のごつい両手は、千絵の着物越しに胸の乳房と尻をしっかりと撫で回していた。それもしつこい程に繰り返していた。
「あらあら・・・・理事長様!またまた、いつもの癖が出ちゃったのねっ!いけないひとねぇ-。」
そう言いながらも千絵は、ひどく嬉しがっているような素振りも見せていた。
「おいっ!千絵!チップをここへ入れておくで・・・・いいなっ。」
そう言って山本は、いきなり一万円札を千絵の胸元に、手を入れて押し込んだ。
「わあぁ-、嬉しいっ!だから理事長様!大好き!」
千絵は嬉しそうに大柄な山本の体に抱きついて、顔に何度も何度もキスをした。
仲居の千絵が、山本にチップのお礼を言って部屋から出ていくと、入れ替わりに黒の上下のス-ツを着た若い男が入ってきた。
その若い男は、座イスに座り込んでいる山本の前に来て、正座をして頭を下げた。
「社長!お呼びですかっ?」
「おう!原田!いつもの例の睡眠薬の粉末を3包み分、俺の黒のカバンから出して持ってきてくれっ!いいなっ。それから俺は温泉に浸かってくるから、宴会の前に隣の部屋の役員の連中を、この部屋に集めといてくれ。いいなっ!」
「はいっ!わかりました。」
そう言って男は、部屋を出ていった。
私はバルコニ-のガラス戸越しに聞き耳を立てて、気付かれないように懸命に、部屋の中の話のやりとりを聞き取ろうとしていた。
もう外は、真っ暗闇になっていた。部屋の灯りがカ-テン越しに、わずかにぼんやりとほの明るく私の足元を照らし出していた。
「睡眠薬の粉末を3包み分!?おかしいなあ-、理事長のやつ、何を企んでいるんだ。・・・・わからない・・・・」
いろいろと考え込む私の頭の中を、ふっ-と不吉な予感が通り過ぎていった。
しばらくすると、理事長の部屋にこの商工会婦人部の旅行に同行している商工会連合会の幹部役員が、全員集まって来た。
副理事長の細川。監事の村井と太田。理事の野原と山根。そして婦人部長の浅野。そして、理事長の部下の原田の総勢7人が、ホテルの浴衣姿で山本理事長の前に座り込んだ。
そこで山本が、全員の顔を見据えるようにしてダミ声で、ボソボソと口を切った。
「これから、この旅行の商工会婦人部の宴会がいよいよ始まる。いつものように、おおいに無礼講そのものでけっこう-。じゃんじゃん飲んで歌って騒いで、日頃の憂さをパァ-と晴らせばいいのさ。よその嫁さんであろうが人妻であろうが、今夜は関係ねえ-。酒をガバガバ飲ませて、ただの男と女になりきって乱れれば楽しいぜ。
そのために今日は、来たんだからなぁ-ウッヒヒヒヒヒヒヒヒ・・・・」
「理事長!いつものとおり羽目を外していいんですね?」
「理事長!宴会が楽しみで楽しみで早く行きたいですよ。」
「まあ-まあ-、皆さん!そんなにあわてなくても、女は逃げていきませんから・・・・ねぇ-理事長!」
と、副理事長の細川が落ち着いた口調で話した。
「おうっ!存分にやりなっ。熟れきったいい女が、選り取り見どりだぜ。酒を先にいっぱい飲ませたら、難なくおとせるからなぁ。ウッヒヒヒヒヒヒヒ・・・・・・・・」
それから理事長の山本は、部下の原田を傍に呼びつけて、何事か耳打ちしていた。
「それで原田!段取りは付いたのか?」
原田はそれを聞いて、大きく頷(うなづ)いた。
すると、含み笑いをしながら山本の鋭い目が、一段とキラリと光った。
- 2014/06/08(日) 11:58:18|
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しばらくして、仲居の千絵が部屋へ来て、
「もうそろそろ、宴会の時間でございます。
すでに、皆さんがお揃いでお待ちでございますので、2階の宴会場の大広間の方へお出掛け下さいませ。」
と、ていねいに挨拶して、宴会開始の時間を知らせにきた。
それを聞いて全員が、ガヤガヤ言いながら部屋を出て行った。
暗い闇のバルコニ-の外で、私は理事長達の宴会が終わるのを待つしかなかった。今の状況では、これ以上の行動を起こす訳にはいかない。
恐らくいまごろは、妻の由美子も含めた商工会婦人部の女性陣が、宴会場でお酒と豪華な料理、そしてカラオケの歌声に、おおいに盛り上がっていることだろう。
それと同時に、あの商工会の幹部役員の男連中に、無理やり酒を飲まされて酔いつぶれて、やりたい放題されてはいないだろうか?
宴会に行く前の、あの役員達の言葉がまたまた蘇ってきて、一層不安を掻き立てる。
なぜか今すぐにでも、これから宴会場へ行ってようすを確認したい衝動に駆り立てられる。私は、そんな激しい心の動揺を抑えられずいた。
下の階の方から、宴会場からなのかカラオケの歌声とともに、女達のざわめきような騒ぎ声が、時折風に乗って聞こえてくる。
間をおいて、キャ-キャ-と派手に賑わしい声も混じって聞こえてくる。酒を飲んでみんな、バカ騒ぎしているのかなあ?
妻の由美子は大丈夫かな?あいつはあんまり酒の方は強くないはずだから・・・・・でも、由美子はしっかりしているから、まず大丈夫だろう・・・・
私は独り言を言いながら、暗いバルコニ-の手摺りに立って、タバコに火を付けた。
タバコの煙が、暗い闇の中で舞い散るように流れて消え、秋の夜風だけが、ヒュルヒュルと悲しげに通り過ぎていった。
どれくらい時間が経ったのだろうか?・・・・・・・・・
私は知らず知らずに、薄暗いバルコニ-で眠り込んでしまったらしい。部屋に入ってきた男達の怒鳴る大声で、ハッと目が覚めた。
部屋の中をそぉ-っと覗き込むと、幹部役員の男達が、宴会が終わったのか座り込んで話をしている。みんな、酒のためか顔が赤く上気して、興奮気味であった。
「理事長!今夜の宴会はよかった!最高です。酒もいっぱい飲めたし、女もいっぱい触ったり抱けたりして最高でした。」
「そうそう、理事長!こういう宴会付きの旅行だったら、毎年連れて行って下さいよ。商売女と違って、普通の素人の人妻相手の宴会は、また格別にいいですなあ-。人妻というのは、恥じらいの色気があって格別にいいですなあ-。」
「宴会場で酒をタップリ飲ませて酔わせて、着ている浴衣を脱がせる気分は最高ですなあ。」
「それにしても、副理事長もちょっとやり過ぎと違います?あの奥さん!いくら酔っぱらっていたって、浴衣は脱がすし、着ていた下着のブラジャ-とパンティまで脱がしちゃって、まさにストリップショ-そのものでしたからなあ。しかも、舞台の上まで連れて行って、踊りまでさせちゃって、よその嫁さんにしては、ちょっとやり過ぎたのと違います?」
「大丈夫大丈夫!村井君!あの奥さん!あれでなかなか好き者だから、恥ずかしいと言いながら嬉しがっていたよ。女心はよくわからんなあ-。
それに今夜、あの奥さんと気が合ってしまったから、一夜を共にする約束までしたんだよ。ひひひひひひ・・・・・・・」
「へえ-、副理事長もそうですか。実は私も今夜抱く女を決めてきたんですよ。もぉう、ぞくぞくするほどいい女なんですから・・・・・
他のひとには申し訳けないですけど、もう一晩中嵌(は)め殺しにしてやるつもりですよ。うっふふふふふふふ・・・・・」
そう言いながら男達は、今夜の宴会場での成果をひとりひとり自慢気に語っていた。
妻の由美子は、大丈夫だろうか?私は、ますます不安に陥っていった。
すると理事長の山本が、低いダミ声でみんなに言った。
「今夜の宴会は、大変よかったと思うとる。あんたがたもおおいに飲んで騒いで、無礼講でいろいろ派手にやったが、いいじゃないか、女連中もびっくりしながらも、おおいに盛り上がって興奮していたようだ。とりあえず、宴会は終わって一区切り付いた。
いよいよ次のお楽しみに取りかかろうと思う。」
そういうと山本は、婦人部長の浅野を傍へ呼んだ。
「おいっ!浅野部長!これから、今年の新役員の3人に、洗礼の儀式を挙行する!あんたの命令で、その3人を今から、この部屋へ連れてこいっ!いいなっ!」
「理事長!今年の新役員さんの3人をですか?ちょっとそれはかんべんして下さいよ。お願いですから・・・・やめて下さい。たのみます・・・・・・・・」
そう言って浅野部長は、深々と頭を下げた。
「ばかやろう!おいっ!浅野のばあさん!てめえ-、このわしの言うことがきけねえというのかっ!わしの言うとおりにできなければ、どうなるかわかっているだろうなあ。
明日、街中にあんたの裸の写真が何千枚とばらまかれることになるし、あんたが若い男と犯りまくっていたビデオテ-プを旦那と子供の前で見せていいんだな?え-、それでいいんだな。おいっ!」
山本は、その婦人部長の浅野の胸ぐらを掴んで、すざましい形相で怒鳴った。50代後半の浅野は、真っ青な顔をしてわなわな震え、涙を流しながら頷いた。
「わかりました、理事長のおっしゃるとおりに致します。」
「よっしゃっ!わかればええ-。早く、その3人をここへ連れてこい。いいなっ!うっひひひひひひひ・・・・・・・」
私は、バルコニ-のガラス戸越しに、聞き耳を立ててそれを聞いた。
「今年の新役員の3人?確か、妻の由美子もその中に入っていたはずだが!・・・・・洗礼の儀式???なんだ、それは?・・・・・・・」
私に、体中がガクガクと震える緊張感が襲ってきた。
- 2014/06/08(日) 11:59:27|
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理事長の山本は、座敷テ-ブルの上に用意された徳利の酒を、自分で杯に注ぎながら、ぐいっと飲み干した。
あから顔がつやつやと部屋の灯りに、照らし出されて光っている。
酒を飲みながら、時折ニヤリと薄笑いの笑みを、不気味に浮かべていた。
すると、部屋のドアをノックして浅野部長が、3人の女を連れて入ってきた。
「理事長!失礼致します。こちらの3名が、今年の新役員でございます。」
そう言って、正座して深く頭を下げた。
それにつられて、ホテルの浴衣に丹前を羽織った女3人が、同じように頭を下げた。
「ああ-、ご苦労さんですなあ。折角の時間をお呼びだてして、申し訳けないですなあ。この旅行を機会に、今年の新役員さんの顔を、じっくり拝見しておきたいと思ったから、こちらまでご足労願ったのじゃよ。うっひひひひひひ・・・・・・・・」
そう言いながら山本は、座イスに大きくもたれ込み、3人の女達の顔や体付きまでも、ジロジロと眺めていた。
その3人の中に妻の由美子もいた。
理事長から見て、一番左端に正座して座っていた。3人ともすでに宴会で酒を飲まされたのかいくらか顔が、薄紅色に上気しているかに見えた。
しかも、理事長の前に正座していて、緊張しているようにも見えた。
「まあまあ、そんなに堅くならんでええから。まずは、自己紹介をしてもらおうかな。まず、一番右のあんたからや。」
すると、右端の女が緊張した面持ちで、
「はっ!はい、2丁目で電器店を営んでおります、鈴木でございます。」
と言って、再び頭を下げた。
続いて真ん中に座っていた女が、
「私は、7丁目でクリ-ニング店をやっております、村山でございます。よろしくお願い致します。」
そして、頭を下げた。
それから、妻の由美子の番であった。
「私は、3丁目で喫茶店を営業しております、佐藤でございます。今後とも、よろしくお願い致します。」
そう言って、3人とも深く頭を下げながら、自己紹介を終わった。
「まあまあ、そんなに緊張せんと、これからも、いろいろと役員さんとしてお世話になることだし、お互いに顔なじみになって、親しくおつき合いをしていかにゃあならんのだから・・・・・
おいっ!千絵!酒をもってこいっ。」
「はぁ-い!わかりました。」
部屋の外で仲居の千絵の声がして、部屋の中へ入ってきた。
座敷テ-プルの上に、酒の徳利が10本ほどと酒の摘みの刺身とフライものが並べられた。
「さあさあ、こんな3人の美人とお近づきになれるんだから、理事長冥利に尽きるぜ。まったく、ありがたいこっちゃ!・・・・・」
そう言って、遠慮する3人に強引に杯を手渡して、酒を注ぎ始めた。
私は、部屋の外の暗いバルコニ-のガラス戸越しに、その光景を見ながら、
「おい、由美子。たのむからその酒を飲まないでくれ-・・・・・」
と心の中で叫びながら、祈る想いで部屋の中のようすを見つめた。
「さあさあ、みんなで乾杯しよう。この新しい役員さん達のご活躍を祈念して・・・・かんぱぁ-い!」
山本の音頭で乾杯をした。
みんなは杯を飲み干したが、妻の由美子だけがなぜか躊躇(ちゅうちょ)して、飲むのを迷っていた。
それを見て、賺(すか)さず山本は、
「いかんねえ-!佐藤さんは・・・私の注いだ酒は飲めんというのかな?」
「いえ、理事長さん、そうじゃなくて。宴会で少し、すでにお酒をいただいていますので、酔ってご迷惑をお掛けしても、いけないと思ったものですから・・・・・・・・」
「なにを言っとるんじゃ!そんな気は使わんでええ-。あんたが酔っぱらったら、わしがちゃんとしっかり介抱してやるから、心配するな!うっひひひひひひひ・・・・・・
さあさあ、早く飲んだ飲んだ-!」
そこまでせかされて、妻もやもおえず杯の酒を、ぐいっと飲み干した。
「ああ-、おみごと、おみごと。さあ-みんなも続けて、駆けつけ3杯といくべし-。さあさあ、飲んで飲んで・・・・・」
そう言って山本は、3人の女達に強引に煽るように、酒を続けて飲ませていった。
妻達の酒の飲み具合を確認するように、山本の目はキラリと光り、口元には薄笑いを浮かべていた。
外では、夜空に秋の月が冷たい光を放っていた。
- 2014/06/08(日) 12:00:34|
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