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闇文庫

主に寝取られ物を集めた、個人文庫です。

心の隙間 第1回

今から十数年も前の出来事なのに、今でも思い出す度に胸が苦しくなってきます。

「やっぱり私も行きたい」
「無理を言うなよ。子供達の学校はどうする?」
「お母さんに・・・・・・」
確かに妻の実家が近いので、共働きの私達は絶えず子供達を預かってもらっていました。
「それに久美も仕事があるだろ」
「分かっているの。無理な事は分かっている。でも・・・・・・」
「工場が軌道に乗ったら現地の人間に任せて帰って来られるから、長くても一年の辛抱だから」
「毎月帰って来てくれる?」
「無理を言うなよ。いくら近いと言っても国内じゃないのだぞ。お盆や正月以外にも、休暇をとって帰って来るようにするから、子供達の事は頼む」
それからの私達は新婚当時に戻ったかのように、毎日激しく交わって愛を確かめ合い、十日後には空港に向かっていました。
「遊びでも絶対に浮気しないでよ。一度でも浮気したら離婚だからね」
空港で別れる時にこのような事を言っていた妻が、まさかこのような事をしようとは思いもしませんでした。

妻とは高校の同級生で、付き合いを含めれば二十年近くも一緒にいる事になり、30代半ばになっていたにも関わらず休日はほとんど行動を共にし、出掛ける時は子供が一緒の時でも腕を組んでいたので、近所でもオシドリ夫婦で通っていました。
それが勤めていた会社が中国進出を決めた事で、高校の時から三日以上逢わずにいた事のない私達が、離れ離れになってしまいます。
その上いざ向こうに行ってみると思ったように休みの取れる状態では無く、ゴールデンウイークにも帰国出来ずに、どうにか帰って来られたのは日本を旅立ってから四ヶ月も経ったお盆でした。
その時の私達は赴任が決まった時のように毎晩交わり、赴任先に戻る前夜の妻は、終わった後も涙を流しながら抱き付いて来て離れません。
「寂しいの」
私もそのような妻が愛しく思えて抱き締めて眠りましたが、次に帰って来た時の妻に変化が起こります。
それは後で分かったことですが、その時の妻は私への愛を確かめようとしていたのです。
確かめると言うよりも、私から離れていく気持ちを、もう一度私にしっかりと繋ぎ止めてもらおうとしていたのかも知れません。
「私の事愛してる?私は好き。私はあなたを愛している」
妻は私に纏わり付き、絶えず愛を口にします。
夜になれば妻から毎晩迫ってきて、私の全身に舌を這わすなど、このような積極的な妻は今まで見た事がありません。
「あなたが好き。あなたが大好き」
それは自分に言い聞かせる言葉だったのですが、この時の私には分かりませんでした。
そして次に帰国出来た翌年の春、妻は違った変化を見せます。
それは三日間だけの帰国で、金曜はその足で会社に行かなければならなかったので土曜は一日中妻と過ごし、日曜の午後には赴任先に戻る予定でしたが、前もって言ってあったにも関わらず、妻は土日が仕事になったと言います。
その時の妻はなぜか暗く沈んでいて、前回のように私に愛を囁く事も無く、事あるごとに謝り続けていました。
「ごめんなさい」
「何をそんなに謝っている?」
「ううん。折角帰って来てくれたのに、休日出勤になってしまったから」
それは夜も変わらず、なぜか妻は謝り続けていました。
「あなた、ごめんなさい」
「昼間から、ずっと謝ってばかりいるな」
「こんな時に生理が来てしまったから」
「仕方ないよ。抱き合って眠ればいいじゃない」
「そうだ。子供達も寂しがっていたから、今日は四人で寝ましょう」
強引に布団を運び込む妻に不自然さを感じながらも、トラブル続出で転勤が半年以上延びる事になった私は、妻に申し訳ないという気持ちが強くて何も言えません。
しかし妻は、その年の夏季休暇も私と二人になると謝るばかりで、夜もまた生理を理由に拒み続け、流石の私もおかしいと思いながらも仕事は待ってはくれず、後ろ髪を引かれる思いで赴任先に戻りました。
そして十月にようやく単身赴任も終わり、帰って来ると一番に妻を抱き締めましたが、妻は身体を硬くして涙まで流しています。
私はその涙を嬉し涙だと思ってしまい、疲れも忘れて早速妻を誘ってみると生理が来たと言って断わられ、一週間経つと今度は身体の不調を訴えて、妻と交わる事も無く十日が経ちました。
「今夜はいいだろ?」
私は我慢の限界を迎えていて、強引に押し倒すと妻は私との間に腕を差し込み、私を遠ざけようと胸を押して、涙を流しながらキスを拒みます。
「ごめんなさい・・・出来ないの・・・ごめんなさい」
「出来ない?どう言う意味だ!」
「彼が・・・・・・・」
私には妻の言っている意味が理解出来ませんでした。
「彼?」
「ごめんなさい・・・・・好きな人がいるの」
全ての物が崩れ去る音が聞こえ、怒りよりも悲しみが襲ってきます。
「こんな時に冗談はやめてくれ」
「本当なの・・ごめんなさい・・・・ごめんなさい」
私は妻から離れると部屋を飛び出し、一人になると猛烈な悲しみに襲われましたが、事が大き過ぎるからか不思議と涙は出て来ません。
するといつの間にか、後ろに妻が立っていました。
「あなた・・・・・・・」
「相手は誰だ」
「それは・・・・・・・・・」
「相手は誰だ!」
「彼は今・・・・離婚調停をしていて・・・・・・・大事な時期だから」
悲しみは徐々に怒りへと変わって行きます。
「だから相手は誰だ!」
私は妻の頬を張っていました。
「言えません・・・ごめんなさい」
私はまた頬を張りましたが、あれだけ愛していた妻を力一杯張り倒す事は出来ずに、手加減を加えてしまいます。
「叩いて!あなたに叩かれても仕方ない事をしました。殺されても、文句も言えないような事を」
「それなら殺してやる!」
妻に馬乗りになると首を締めていましたが、力を入れたのは最初だけで、やはり妻を殺す事など出来ず、閉じた目から涙を流している妻を見ていると、妻の恋が真剣なのが分かって怒りは例えようの無い寂しさに変わっていきました。


  1. 2014/05/28(水) 11:58:39|
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心の隙間 第2回

私は妻の首から手を放すと、声を殺して泣いている妻の横に胡坐を掻いて座り込んでいました。
「いつからだ?」
妻もゆっくり起き上がり、叩かれた頬をそっと手で擦ります。
「去年の十月ぐらいから度々誘われるようになって、二人で食事に行ったりするようになったのは、十一月の終わりぐらいからです」
私は一番聞きたい事が怖くて聞けずに黙ってしまいましたが、その事を妻の方から話し出しました。
「彼とはもう・・・・・身体の関係も・・・・・・ごめんなさい・・・・・」
これは罪悪感から全て話そうと思ったのか、あるいはこの事を話して私に諦めてもらおうと考えたのかは分かりませんが、相手の素性を話さない事を考えれば、後者のような気がします。
「そのような関係になったのはいつからだ?」
「最初に関係を持ったのは・・・・バレンタインデー・・・・・・・」
それで妻は、春に帰った時に私を拒んだのです。
彼に私と関係をもつなと言われたのか、自分から彼に操をたてたのかは分かりませんが、どちらにしても好きな人のために私に抱かれる事を避けた。
つまりは浮気ではなくて、本気だという証拠です。
「離婚して下さい・・・・お願いします」
浮気なら私が離婚を宣言し、妻が泣いて許しを請うのでしょうが、本気の妻は自ら離婚を望んでいるので、私が妻を引き止められる方法は一つしかありません。
「子供達はどうする!当然子供達にも知れるぞ」
「正直に話します。子供達にも謝らなければならないので、私から話させて下さい。子供達はどうしても引き取らせて欲しいです。でも、こんな母親では軽蔑して、許してはくれないかな」
これで私には、妻を引きとめる方法が無くなってしまいました。
あとは泣いて縋る事しかありませんが、裏切られた上にそのような事はプライドが邪魔をして出来ません。
仮に離婚を拒否したとしても、心が戻ってこなければ同じ事です。
しかし寝耳に水だった私がすぐに返事など出来る訳も無く、離婚については先延ばしにしましたが、妻も私に少しは誠意を見せようと思ったのか、通常の時間に帰って来ていました。
「俺が嫌いになったのか?」
「嫌いになんかなれない・・・今でもあなたが好き・・・・・でも・・・・彼の事を・・・・・・」
妻は私の事を嫌いではないが、私よりも彼を愛してしまったと言いたかったのでしょう。
私は消極的になっていて、このまま妻が彼と会わなければ忘れてくれるかも知れないと、情け無い望みを抱いていましたが、それも三日ともちません。
連絡も無く遅く帰って来た妻は、入ってくるなり私と目を合わさないように俯いて、小走りで寝室に行くと声を殺して泣いています。
「どうした?」
「付き合っている事を、あなたに打ち明けたと彼に話したら、約束も守れないのかと怒ってしまって」
「逆切れか。自分のやった事の責任もとろうとしない男に惚れたのか?」
「責任は取ると言っています」
「それならなぜ、堂々と俺の前に現れない!」
「今は自分達の離婚問題があって・・・・時期が悪いからと・・・・・・・」
「俺の人生を無茶苦茶にしておいて時期が悪い?逃げているだけで誠意も何も無い奴だな」
顔を合わせれば絶えず私に謝り続けていた妻でしたが、彼の事を悪く言われるのは堪えられないのか、明日も彼と会って私に謝罪するように説得すると、初めて強い口調で言いました。
しかし翌日帰って来た妻は、もう少し待って欲しいと頭を下げます。
「不倫なんかする奴は、所詮その程度の男だ。お前も同類だから話さないし。こうなったら徹底的に調べて、そいつの人生も無茶苦茶にしてやる」
「待って。明日も会って、きちんと話をしに来てくれるように言いますから」
これでは娘の彼氏が結婚の許しをもらいに来るのを待っている、花嫁の父のようです。
今にも妻に捨てられようかとしている時に、少しでも妻に嫌われないように手加減を加えている情けない自分に気付き、それが更に最悪の事態に進ませているような気がして、私はようやく彼と対決する事を決めましたが、何処の誰か分からなくては動きようがありません。
「相手は誰だ!」
しかし彼を庇っている妻は言う訳も無く、翌日私は興信所に飛び込み、今日会う事が分かっているので早速相手の男の身辺調査を依頼しましたが、その夜二人がホテルに入ったと連絡があり、すぐにでも妻を問い詰めたい衝動に駆られたのを調査がし辛くなるので我慢してくれと言われて、ようやく五日後に詳しい報告書が出来上がったと連絡が入ったので受け取りに行くと、現実に妻が男に腰を抱かれてホテルに入っていく写真を見せられて、猛烈な怒りが込み上げてきました。
何故なら相手は可也年上の中年の親父で、五日前だけではなくて昨日もホテルに行っているのです。
「おまえの好きな彼は、いつまで逃げているつもりだ?」
「逃げている訳では・・・・・・」
妻を本気で愛していれば、ここまで来れば普通の男なら出て来ているでしょう。
しかし甘い言葉を囁かれて自分を見失っている妻には、彼が明らかに逃げている事が分かりません。
「本当に話をしているのか?昨日は何処で話した?」
「何処って・・・・・・」
「ホテルで何の話が出切る!俺がこんなに苦しんでいるのに、おまえ達は会う度にホテルでお楽しみか!そんなに俺を苦しめて楽しいか!」
「ホテルだなんて・・・・・」
「違うなら、昨日は何処にいたのか言ってみろ!」
「ごめんなさい。今後の事を静かな場所で話そうと言われて。それよりも、どうしてその事を・・・・・・」
「木下部長」
「えっ!・・・・・・・・・」
報告書によると相手は妻の上司で、妻は昨年の春に配置転換があってから彼の片腕として働いていて、二人だけで行動する事も多かった為に、社内で二人の仲を噂する者もいて、意外と簡単に調べがついたと調査員は言っていました。
「木下健吾、五十三歳。相手は十八も上のスケベ親父か?」
「彼は違うの。彼とは仕事上の付き合いだけで関係ないの」
私が証拠を持っている事を知らない妻は否定しましたが、上司を彼と呼ぶ事が全てを物語っています。
「関係無いだと!関係ないなら、明日会社に行って話しても構わないな?」
「私が悪いの。あなたへの責任は私がとります」
しかし私には、どうしても木下に責任を取らさなければならない事があります。
「会社が駄目なら、今すぐここに呼べ」
妻が電話を掛けると、木下は一時間後にやってきました


  1. 2014/05/28(水) 11:59:42|
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心の隙間 第3回

彼は入って来るなり正座して頭を下げます。
「すみませんでした。人の道に外れた事をしました。でも私達は愛し合っています。出来る限りの償いはしますが、分かれる事だけは出来ません」
この男は妻の手前もあってか、その後も堂々と愛を語り、妻に対して誠実な男を演じ続けます。
そして恋愛経験が乏しい妻は彼に愛されていると信じ切っていて、彼と並んで私に頭を下げていました。
「愛し合っている?愛していれば、何をしても許されるのか?お互いに妻や夫がある身だろ!」
「その通りです。申し訳ない事を致しました。ただ私の方はずっと離婚協議中で・・・・・」
「そうか。それなら明日にでも離婚しろ」
「そう簡単には・・・・・・・ですから・・・・妻と協議中で・・・・・・」
「協議などしなくても、全て奥さんの望む条件を飲んで離婚すればいいだろ。そのぐらいの覚悟も無しに、俺の人生を無茶苦茶にしたのか!」
「そういう・・・・物理的なものでは無くて・・・・・精神的な・・・」
「ごちゃごちゃ言っていないで、奥さんを連れて来い」
「妻は・・・・・・・・・」
「だから、すぐに離婚出来るように俺が頼んでやるから、奥さんを連れて来い」
ここまで来てしまえば、ばれてしまうのは時間の問題だと木下も分かっているはずです。
しかし彼は、妻を引きとめるためには嘘も平気でつくのです。
「あなた、ごめんなさい。どのような償いでも・・私が・・・・・」
何も知らずに、妻は彼を庇い続けます。
「どのような償いでも?そうか。それなら先に、奥さんの所に行って謝って来い!早く離婚してくれと頭を下げて来い。何も知らない奥さんは驚くぞ」
「何も知らない?」
「おい木下!自分の家庭はそのままで、久美を愛人として囲う気か!」
「何の事か・・・・・・・妻が納得さえすれば・・すぐにでも別れて・・・・」
彼は時々妻の顔を横目で見ながら、あくまでも惚ける気のようでした。
私は彼の態度に怒りを覚えて掴み掛かりましたが、妻が私の足に縋り付いて邪魔をします。
「暴力はやめてー!」
「おまえはこの男と一緒になりたいのだろ!このままでは結婚なんて出来ないぞ!こいつは離婚なんてする気は無いし、ずっと夫婦仲も良いそうだ!」
「嘘よ!だって別居していて、何度か家にも行ったもの」
「こいつの家でも抱かれたのか!」
「それは・・・・・」
「こいつの家に行ったのは、いつの事だ!最近も行ったのか!」
「それは・・・・夏ぐらいに何回か・・・・・・・」
「子供達は独立しているし、確かに奥さんも家にはいなかった。病院にいたからな」
「病院?何を言っているの?もう何年も家庭内別居状態で、夏前に奥様は家を出られたのよ」
私は報告書を出して読み上げました。
「一年ぐらい前から股関節が悪くなり、ずっと通院していたが六月に検査入院。
そのまま七月には手術を受け、リハビリを経て先月末に退院。近所の人の話しにとると、絶えず笑い声が聞こえて来る仲の良い夫婦で、休みの日は奥さんの手を引いて、仲良く散歩している姿をよく見掛けるとも書いてあるぞ」
妻が私の足を放すのと同時に、思い切り木下を殴っていました。
「久美、騙していたようで悪かった。でも私は遊びじゃなかった。それだけは信じて欲しい。別れようと思っていた時に妻が身体を壊したので、男として放ってはおけなかった。今すぐは無理でも、いつか妻と別れて・・・・・・・」
この男にとって私以外に恋愛経験の無い妻を騙す事は、赤子の手を捻る事よりも容易い事だったでしょう。
しかし今の妻は、彼の愛を少しずつ疑い始めています。
ただ、一年にも及ぶ甘い言葉と半年以上にも及ぶ身体の関係で、彼の事を全て嘘だとは認められず、心の中で自分と戦っているようでした。
「性欲だけで久美を抱きやがって!欲望だけで俺の家庭を壊しやがって!」
また私は木下の胸倉を掴みましたが、彼は私を無視して迷い始めた妻に訴えかけます。
「違う!久美、信じてくれ。私は真剣に君を愛している。確かに妻とは長年一緒にいたから情はある。でも愛してはいないし、夫婦としては終わっている。
私が愛しているのは久美だけだ」
妻は既に気付いているのでしょう。
しかし支払った代償が余りにも大きく、すぐには認められないだけなのです。
「奥さんを連れて来られないのなら、今からみんなでおまえの家に行こう。奥さんを交えて話せば全てはっきりする。離婚話など無かった事や、家庭内別居状態だったなんて嘘だった事も」
私が木下を放すと、彼は妻の方を向いて正座しました。
「正直に話す。離婚はまだ私の胸の内にあっただけで、身体を壊した妻には話していない。でも久美に対する愛は嘘じゃない。ずるい考えだったが、嘘をついてでも久美が欲しかった。それだけ久美を愛していた。嘘をついている罪悪感でずっと苦しんでいたが、その苦しみよりも、久美を手放したくない気持ちの方が大きかった」
しかし妻は彼とは目を合わさずに俯き、太腿に涙が零れ落ちます。
彼に甘い言葉を囁かれ、散々騙され続けていた妻も、ようやく性欲処理の道具にされていた事を自分に認めたのです。
「このような事をしてしまっては、ご主人とは一緒にいられないだろうから、久美の今後の生活はきちんと看させてもらう。妻の身体が完全に回復したら、すぐにでも離婚を切り出して責任を取る。私を信じて、それまではこのままで我慢して欲しい」
夫である私が目の前にいるにも拘らず、妻に対してこのまま愛人でいろと言っているのです。
木下にとって十八歳も若い妻の身体は、自分の置かれた立場も分からないほど魅力に溢れているのでしょう。
この期に及んでも別れられないほど、妻とのセックスは充実したものだったに違いありません。
しかし架空の離婚話に同情し、進んで身体を差し出して性欲の捌け口になっていた妻も、流石にこの苦しい言い逃れに騙されるほどは、馬鹿ではありませんでした。
「帰って!」
「久美・・・・・・」
「もういやー!」
「近々奥さんとも話す事になる。それと、報告書によれば仕事中に妻と会社を抜け出して、喫茶店でホテルに誘っていたらしいな。就業中に部下の人妻をホテルに誘うなんて、そのような事を許している会社の責任も大きいと思うから、そちらにも一度お邪魔する事になる」
私は出来る限り冷静に話そうとしていましたが、手は怒りで震えていました。
「慰謝料は後日文章でそれ相応の額を請求する。それと俺が殴った事だが、謝る気はないから訴えるならご自由に」
木下が帰ると妻は寝室まで走って行き、後を追うと妻はベッドに顔を伏せて泣いていましたが、私はそのような妻に追い討ちをかけます。
「返事が遅くなったが、離婚は承諾してやる。おなえのような女に大事な子供達は任せられないから俺が育てる。もう少し大きくなったら、母親はセックスに溺れて男を作って出て行ったと、俺から本当の事を教えてやるから、今は何も話さずに出て行ってくれ」
それを聞いた妻は泣き叫んでいました。
私は卑怯な男かも知れません。
妻と木下の関係が終わりそうになった事で、強く出られるようになったのです。
「それと、今まで散々世話になったから、今から久美の実家に行って離婚の報告をしてくる」
これは脅しではありませんでした。
今までは妻を失う失望感の方が大きくて、私から他の男に移っていった、気持ちの裏切りが最大の問題でした。
しかし妻の心の行き場が無くなると、急に妻と木下がしていたセックスの事が気になり出して、身体も私を裏切り続けていた事に怒りが増したのです。


  1. 2014/05/28(水) 12:01:43|
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心の隙間 第4回

「子供達は眠ってしまったから、このまま泊まっていかせたら?」
私が子供を迎えに来たと思っていた義母はそう言いましたが、玄関の外で泣いている妻を見付けて笑顔が消えます。
私は妻を実家に預かってもらって別居するつもりでいましたが、厳格な義父は妻を許さずに親子の縁を切ると言い、妻を思い切り平手で殴りました。
「二度とこの家の敷居は跨ぐな!」
義母も泣き叫びながら、泣き伏した妻の背中を何度も叩いています。
「あんたって子は・・・・・・どうして?・・どうして?」
「ごめんなさい・・・・ごめんなさい」
結局妻は実家にも戻れず、しばらく我が家にいさせて欲しいと、頭を下げたままま顔を上げる事が出来ません。
それからの私は子供達の前だけでしか妻と口を利かなくなり、当然寝室も別にして、完全な家庭内別居を決め込んでいました。
妻は自分の生活費を稼がなければならないので会社を辞められず、本当は妻に会社を辞めて欲しい私も、一応離婚を言い渡してある手前、妻のその後の生活もあるので言い出せません。
ただ妻は別の部署に移動させてもらって木下とは完全に切れたようで、償いのつもりかこれまで以上に私の世話を焼こうとするのですが、私は頑なに妻の世話になるのを拒否していたので、妻は毎日のように私の為に作った料理を捨てていました。
「今年のお正月はホテルに泊まるぞ。それも大きなホテルに」
木下とは会えば会うほど、この男が妻の身体を嘗め回し、妻の中に入ったという悔しさでおかしくなりそうだった私は弁護士に全て任せ、相手も弁護士を立てて来たために弁護士同士の話し合いになり、会社には乗り込まない事を条件に、妻とは二度と二人で会ったり連絡を取り合ったりしないと誓約書を書かせ、弁護士に言わせると離婚が決まっていない場合は、破格の金額だと言う三百万の慰謝料を受け取っていたので、妻が相手の奥さんに支払った慰謝料と弁護士料、その他興信所の費用を差し引いても百五十万以上残り、正月はホテルで豪華な食事をするつもりでいました。
「いつ行くの?」
「三十日からだ」
子供達は大喜びで、妻も久し振りに笑顔を見せます。
「ただし、お母さんはお仕事で行けないから、お父さんと三人だ」
一気に妻の表情は曇り、涙目になって洗い物を続けました。
そしてその夜、久し振りに妻と話し合いを持ちましたが、妻はほとんど泣いていて話しになりません。
「このままずるずると暮らしていても、子供達にも良くない。おまえはいつになったら出て行く気だ?その時正式に離婚しようと思うから、そろそろ期限を切らないか?」
妻はこのまま子供達と暮らしたいようでしやが、自分から離婚を言い出した手前、私に何も言えません。
私もこれは本心ではなくて、ただ妻を責めたいだけでした。
「本当なら今年一杯で縁を切り、来年からは新たな気持ちで生きて行きたかったが、今からではそうもいかないだろ。どうだ?一月いっぱいで離婚して出て行く事に決めては」
私は妻が泣いて謝り、私に縋りついて離婚を撤回する姿をみたかったのですが、やはり自分が酷い事をしたと分かっているので、撤回してもらう事は無理だと諦めているのでしょう。
結局妻は何も言わず、ただ泣いていただけで終わってしまい、年末には私と子供達だけでホテルに行きました。
しかし普段無視していても妻のいない年末年始は味気なく、独りで毎日泣いているのではないかと思うと楽しめません。
それは子供達も同じだったようで、三日まで滞在する予定だったのを元旦の夕食を済ませた後、キャンセルして帰ろうかと言ってみたところ二人は嬉しそうでした。
しかし家に着くと、八時を過ぎているというのに妻の姿がありません。
当時は今のように携帯も無かったので、妻が何処に行ったのかも分からずに、一応実家に行ってみましたが、やはり妻は来ていませんでした。
「こんな時間にどうしたの?」
「新年のご挨拶に。それと、今夜子供達を預かってもらえますか?」
「またあの子が何か!」
私は本当の事を言えませんでした。
あれ以来、義父は私と顔を合わせる度に謝り、義母は子供達から見えないように手を合わせます。
そのような両親に、このような時間に妻がいないなどとは言えません。
「今夜は久美と、二人だけで映画にでも行こうかと」
それを聞いた二人は嬉しそうに涙ぐみましたが、私は愛想笑いをする事すら出来ません。
一人家に帰って妻の帰りを待っていましたが、結局その夜妻が帰って来る事は無く、夜が明ける頃にいつしか眠ってしまった私は、妻の驚く声で目が覚めます。
「あなた!」
目を開けると真っ青な顔をした妻が震えて立っていて、眠ったばかりのところを起こされたので訳の分からなかった私も徐々に今の状況を思い出し、気が付くと妻の髪を鷲掴みにして、玄関に向かって歩き出していました。
「違うの。これは違うの」
「何が違う!木下と会っていただろ!」
「ごめんなさい・・寂しかったの・・・・・寂しくておかしくなりそうで」
妻を外に放り出すとドアを閉め、ノブを強く握ったまま扉に背を向けて、溢れる涙を何度拭いても、涙が止まる事はありません。
約束を破られた私は目には目をで、仕事始めの日に会社に乗り込み、たまたま創業者で厳格なワンマン社長だったのと、以前二人が就業中にもかかわらず、何かと理由をつけて会社を抜け出してデートしていた事も分かったので、妻は退職を勧められるとそれを受け入れ、木下も降格された事から自ら退職を選んだそうです。
こうして私達の結婚生活は終わりを告げ、妻には慰謝料を請求しない代わりに財産分与は放棄させ、子供達の親権は私がとったので、子供達の世話は妻の両親に世話になるという、世間から見れば変わった生活が始まりました。
しかしこれも今考えれば、妻との縁を完全に切りたくなかったからかも知れません。
妻はと言えば、事務の仕事を見つけて友達の家で世話になっているようでした。
ようでしたと言うのは、この離婚での一番の犠牲者は子供達だと思い、子供達には本当の事は話せずに、この家の中でならいつ会っても良いと許可してあったので、妻は毎晩通って来ては子供達の世話をしていたので、毎日のように顔は合わせていたのですが、意地を張って妻とは口を利く事も無かった私は、妻が子供達に話しているのを立ち聞きしただけだからです。
そのような生活がしばらく続き、必ず子供達が眠ってから帰って行っていた妻が、一ヶ月ほど経った頃から八時が近付くと時計を気にするようになり、決まって八時丁度に家を出て行くようになってしました。
私はその事が気になっていても、他人になってしまった私は理由を聞けません。
それで私が想像したのは、妻が友達の家を出て遠く離れた所にアパートを借り、八時には家を出ないとアパートに帰り着くのが遅い時間になって、翌日の仕事にも響くのだという事で、それならたまには送って行ってやろうと後を追うと、妻は少し離れた所に止まっていた車の助手席に乗り込み、その時ついた薄暗いルームライトに照らし出されたのは、忘れたくても忘れられない木下の顔でした。
妻は木下と切れておらず、待ち合わせて迎えに来てもらっていたために、八時丁度に家を出ていたのです。
有り得ない事ではないのに、私は勝手に別れたものだと思っていました。
法的には他人になってしまっても、いつかまた夫婦に戻れるような気でいた私は馬鹿でした。


  1. 2014/05/28(水) 12:02:39|
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心の隙間 第5回

私が帰って来ると翌日も妻は来ていましたが、私の妻を見る目は変わり、口を見れば今からこの口で木下の黒光りした物を美味しそうに舐めるのかと思って苦しくなり、後ろ姿を見れば四つん這いにされて木下に後ろから入れられた妻の、白いお尻が妖しく蠢く光景が浮かんで来て、とても平常心ではいられなくなっていました。
しかし離婚して他人になってしまった私には、木下と別れろとは言えません。
「もう来ないでくれ!」
「どうして!これからも子供達に会わせて下さい。お願いします。お願いします」
「まだ木下と続いているのだろ?いつまでも不倫している様な母親は、教育上良くないからもう来ないでくれ」
「不倫ではありません・・・・・彼も・・・離婚したから・・・・・・・」
木下が離婚していたと聞いた私は、心穏やかではありませんでした。
「離婚したにしても、どうしてあんな男と」
今迄通り子供達に会いに来たい妻は、彼との事を正直に話し始めます。
「仕事納めの日に、彼から離婚して家を出たと聞かされて、マンションの電話番号を書いたメモを渡されました」
その時の妻は良い気はせず、電話してしまう事になろうとは夢にも思わなかったと言いますが、そのメモを捨てずにとっておいたのも事実です。
「自業自得だと分かっていても、あなたと子供達がホテルに行った後、もう家族ではない事を実感させられて・・・・・・」
誰もいない孤独な元旦を向かえ、寂しさに耐えかねて電話してしまうと、木下は私達が三日まで帰って来ないと聞いて、すぐに妻を食事に誘いに現れました。
「本当に電話だけのつもりだったの。元日で、他のみんなは家族でお正月をお祝いしているだろうから悪いと思って。誰でも良かったの。誰かと話がしたかっただけなの」
私からは無視されて、実の親からも勘当同然の状態で、子供達まで連れて行かれた妻は、新年早々孤独と絶望の中にいたのかも知れません。
しかし、どうして木下なのかが理解出来ませんでした。
いくら人恋しくても木下と会えば、この様な結末になるのは少し考えれば分かる事です。
結局妻を盗られそうになった私と、優しくされて身体まで開いてしまっていた妻とは、木下に対する思いに差が有る事を改めて気付かされました。
そして妻は、木下の誘いに乗って食事に出掛けてしまいます。
「食事だけでは済まずに、朝までベッドを共にしていたのだな?」
しかしそれには首を振ります。
食事が終わってホテルに誘われると、その事でようやく自分を取り戻して怖くなり、木下に電話を掛けてしまった情けない自分を悔やんで、妻は逃げるようにして帰って来ました。
「帰り道で久し振りに美雪に会って、彼女も自分の浮気が原因で離婚されて子供と二人で暮らしていると聞かされて、彼女のアパートに行って朝まで話していました」
美雪さんとは妻と同期の女性で私も何度か会った事がありましたが、彼女が結婚して退職したあとは疎遠になっていました。
おそらく妻が家を出てから住まわせてもらっていたのも、彼女のアパートだったのでしょう。
「離婚する時、どうして言わなかった?」
「私から彼に電話してしまって、二人だけで会っていたのは事実だから・・・」
確かに妻の言う通りです。
その時には身体の関係が無かったと聞いてそう言いましたが、木下と会う事自体許されない事でした。
それからの妻は彼と会う事は勿論の事、電話を掛ける事もありませんでしたが、一週間前に妻が勤め始めた会社に、会社を興して飛び込みで得意先を開拓していた木下が偶然現れ、寂しさと将来への不安の極限状態にいた妻は彼を懐かしく思ってしまい、誘われるまま交際を始めてしまいます。
それを聞いた私は、そのような偶然があるのかと疑いましたが、離婚して他人になった妻が、私に嘘をつく必要も無いのでそうなのでしょう。
妻も弱い女でした。
高校の時からずっと私と一緒にいた妻は、一人で生きていく事は出来ないのでしょう。
これが木下でなくても優しくしてくれる相手なら、誰でも良いから縋りたかったのかも知れません。
それが一度は騙された男でも、親にも見られたくない恥ずかしい姿を何度も見られ、普段は決して出さない恥ずかしい声までも聞かれた相手なら尚更だったに違いありません。
不倫で有るが故に異常に燃え上がり、その激しいセックスを思い出せば、身体も彼を求めてしまった事でしょう。
妻を許す事など出来ませんが、このまま木下のような男に盗られるぐらいなら、ここに戻って来いと言おうとした瞬間、一瞬早く妻から衝撃的な事実を聞かされます。
「三日前から・・・・・・彼のマンションで暮らしています」
再会してから四日で同棲を始めた事は早過ぎるとも思いましたが、いつまでも美雪さんの所に世話になっている訳にはいかないと考えていたとすれば、苦渋の選択だったのかも知れません。
よく目の前が真っ暗になったと聞きますが、私はこの時、初めてその感覚を知りました。
目の前の物はちゃんと見えているのですが、不思議な事に何も見えないのです。
離婚はしても、いつまでも私の物だと思い込んでいた妻が彼の下着を洗い、彼の為に料理を作って、向かい合って笑いながら食事をする。
お風呂では彼の背中を流し、彼を興奮させるためだけのセクシーな下着を身に着け、ベッドでは彼が喜ぶことなら、どのような恥ずかしい行為も受け入れる。
そして、身体の至るところで彼の性欲を受け止めた妻は、疲れ果てて下着を着ける気力も無く、裸のまま彼に抱かれて眠るのです。
私は妻を家から放り出した時のように髪を掴むと、寝室まで引き摺るように連れて行きました。
「いや!乱暴しないで!」
妻をベッドに押さえつけると、妻は必死で逃げようとします。
「どうして逃げる!そんなに奴がいいのか!そんなに奴とのセックスがいいのか!」
「駄目なの。もう私は、あなたに抱かれる資格が無いの」
妻の抵抗は凄まじく、スカートを脱がす事も出来ずに、手を突っ込んで無理やりパンストとパンティを引き千切るような勢いで抜き取ると、妻のそこにはあるはずの翳りがありません。
それ以上にショックだったのが、綺麗に剃られたそこには赤く太いマジックで、健吾という文字がはっきりと書かれていました。
「いやー!見ないでー!」
このような物を見せられれば、普通の男なら興奮など一瞬で醒めてしまうでしょう。
しかし私は幸か不幸か、一年以上妻と交わっていませんでした。
正確には妻と交わっていなかっただけで無く、女性と触れ合う事が無かったのです。
悔しくて涙が出そうになりながらも、泣いているだけで動かなくなった妻を全裸に剥き、大きく脚を開くと昨夜も木下に嘗め回されたであろう場所に吸い付いて、唾液を搾り出しながら塗り込めるように嘗め回し、昨夜も木下が黒光りした物を何度も出し入れさせたであろう場所に一気に突っ込みました。
その間何度か玄関のチャイムが鳴り、その後電話も鳴り続けていましたが、誰からか分かっていた私は無視して、ここは私だけの場所なのだと誇示するかのように激しく突き続け、抜き去る事も無く色々な格好をさせて、大量に妻の中に吐き出してから、中に入ったまま妻の息遣いが落ち着くのを待ちました。
「このような事をいつされた?」
「一緒に暮らし始めた日に、今から子供達に会いに行くと言ったら」
付き合っていた時は何があっても優しかった木下が、一緒に暮らし始めた日、妻が私の家に来る時間が迫ると急に不機嫌になり、無理やりこの様な行為に及んだと言います。
一日ではたいして生えてこないにも拘らず、その行為は昨日も一昨日も行われ、それが終わると少し落ち着きを取り戻して、妻を近所まで送って来ていました。
八時前には必ず迎えに来ていた事も考え合わせると、木下は妻が私に抱かれないか余程心配だったのでしょう。
今までは私の妻だったために浮気だったのが、妻と暮らし始めた事で自分の女になったという気持ちが大きく、木下の中で私との立場が逆転してしまった。
自分の女が他の男に抱かれる事は、それが例え自分が寝取った相手の元夫でも堪えられないのでしょう
そうだとすると、私に抱かれていないか心配しながら待っていて、猛烈な嫉妬に狂っていたはずです。
「ここから帰ると、奴は乱暴な行為をしてきたのではないのか?」
「・・・・・乱暴と言うか・・・・・・・・」
おそらく彼も、今の私と同じ様な心境だったのでしょう。
私は嫉妬に狂って妻の乳房に指の痕が付くほど強く握り、乳房を押し潰すほど強く揉み、後ろからの時はお尻が赤くなるほど平手で叩いて、妻を乱暴に扱う事で悔しさを発散させていたのです。
「乱暴に扱われると感じるのか?」
なぜこのような質問をしてしまったかと言うと、その間の妻は聞いた事の無いような凄い声を上げながら、狂ったように自らも腰を振り続けていたからです。
しかし妻は羞恥心が邪魔をするのか、そのような事は決して認めません。
「乱暴なのは嫌だったけれど、朝になると優しい彼に戻っていて、何度も謝って・・・・・・・」
妻はそのような自分を知られたくなくて、話を変えて優しい時の彼の話を始めたので、私は悔しさからまた腰を動かして妻の身体を虐めていました。
「俺の事が嫌いか?嫌いになったか?」
「好き・・・あなたが好き・・・あなたが大好き・・・・嫌いになんてなれない・・・嫌いになった事なんて一度も・・・・・・・・・」
「それならどうして・・・・・」
「分からない・・・・ずっとあなたが好きだった・・・不倫している時も・・あなたが好きだった・・・・・・・・・でも・・あの時は彼を・・・・・・」
「今は?」
「あなたを愛してる・・・・あなただけを愛してる・・・・でも・・・・でも」
でもの後は、もう元には戻れないと続く気がして、その事は聞けずに腰の動きを速めていました。


  1. 2014/05/28(水) 12:03:39|
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心の隙間 第6回

私が妻から降りると、妻は気だるそうに起き上がって下着を身に着けます。
「奴の所に帰るのか?」
「私の行く所は・・・・・他には・・・・・・・」
行かないで欲しいと縋り付けば、妻は私の所に止まるかも知れないと思ったのですが、裏切られた私が裏切った妻に対して、そのような惨めな真似は出来ません。
「おまえ達の思い通りにさせるか!おまえ達だけ幸せになんかさせない!」
木下のところには行かせたくない私はそのような言い方しか出来ず、妻も私に対して罪悪感があるのか、手を止めて俯いてしまいました。
その時また電話が鳴り響き、いつまでも鳴り続けていたので出ると、やはり木下からです。
「久美に代わってくれ」
「俺達は離婚したが、子供達の父親と母親である事には変わりない。おまえには関係の無い、子供達の話があるから今日は泊まっていくそうだ」
「いいから早く代ってくれ!」
「悪いが、既にベッドで裸になって待っているから」
「・・・・・・・・・」
「おまえもそうだっただろ?俺から逃げ回っていた時、大事な話はホテルのベッドで話し合っていたそうじゃないか。それと同じだ。これからベッドで話し合うと言っても、既に二度も話し合った後だが」
その後も電話が鳴り続けるので受話器を外すと、まだ近くにいたのか今度は玄関のチャイムが鳴り止みません。
私はバケツに水を汲んで裏口から表に回り、思い切り木下に浴びせました。
「近所迷惑だ!久美はおまえの女房でも何でも無い。久美がなにをしようと、おまえに行動を制限する権利があるのか?これ以上そのような事を続けるなら警察を呼ぶぞ!」
鬼のような形相の私の気迫に押されたのか、全身ずぶ濡れになった木下は寒さの中、震えながら無言で立ち去っていき、後ろからの視線を感じた私が振り向くと、妻がカーテンの隙間から覗いていましたが、その視線は去ってゆく彼の背中を追っているように見えました。
妻は彼が素直に退散するのか心配で、彼の行動を見ていただけかも知れません。
ただ見ていただけで、その事には何の意味も無かったのかも知れませんが、私には彼を哀れむような目に見え、このまま優しく接すれば妻は私に戻って来ると分かっていながら、逆の行動に出てしまいます。
「脱げ!」
「・・・・・・・はい・・」
「早く脱げ!」
下着姿になった妻をお風呂に連れて行き、下着を脱ぐように指示してからシャワーをわざと水にして掛けます。
「ひぃぃ」
「早く消してしまえ!」
「冷たいです。お湯にして下さい」
「そんな事を言って、奴の名前を消したくないだけだろ」
妻はタオルに石鹸を塗ると、泣きながら皮膚が剥けそうなほど擦りましたが、マジックは薄くなるだけで完全には消えません。
「消したくないから、わざとそっと擦っているだろ!」
私が冷水を浴びせ続けているために、妻の唇からは色素が抜けていきますが、怒りを分かって欲しい私は、お湯に切り替える優しさを出せません。
「きれいに落ちたら、ベッドに来い!」
私が立ち去ればお湯に切り替えるだろうと思って寝室に行くと、妻が来たのは一時間も経ってからで、よく見ないと読み取れないぐらい薄くなっていましたが、それは皮膚が真っ赤になっていたからそう見えたのかも知れません。
私は一睡もせずに妻の身体を虐め続け、翌日には妻をおいて会社に行きましたが、妻の事が気になって仕事どころではありませんでした。
「おまえも仕事に行ったのか?」
「・・・はい・・・・・無理を言って雇ってもらったのに・・急に休んでは」
「木下は来たか?来ただろ!」
「帰りに・・・・・外で待ち伏せしていて・・・・・・」
「また抱かれたのか!」
「いいえ!無視してここに来ました。本当です」
「おまえは俺が慣れない土地で苦労している時にでも、平気で裏切って楽しんでいた女だから信用出来ない。脱いで見せてみろ!」
妻は涙を浮かべながら脱ぎましたが、自分で開いて見せろと言う命令には従おうとしません。
「許して下さい。自分では出来ません」
「あんな男に奥の奥まで見せていた女が、何を恥ずかしがっている!」
私は妻を虐めながら、妻の心を疑い始めていました。
木下は、ここから帰った妻をセックスでは乱暴に扱っても、他の時は優しかったと言います。
しかし私は浮気を知って以来、ずっと妻を責め続けていました。
その事で私は、妻は私よりも彼と暮らした方が楽だと思い始めているのではないかと、気になり始めていたのです。
「出掛けるから、もう服を着てもいいぞ」
私は狂気の中にいて、妻に木下のマンションまで案内させていました。
「置いてきた物を全て持って来い」
「何といって、有りませんから」
「例え口紅の一つでも、奴の所にだけは置いておかれるのが嫌なんだ!おまえとあいつが俺に何をしたのか分かっているのか!俺の人生を無茶苦茶にしたのが分からないのか!」
「ごめんなさい」
「話も有るだろうから、ここで十五分だけ待っていてやる。十五分経っても出てこなければ、もう子供達とも会えないと思え」
私は妻がどちらを選ぶのか試したかっただけなのです。
妻はすぐに戻ってくるから待っていて欲しいと言い残して入って行きましたが、尋常では無い私の賭けに、妻が応えてくれる事はありませんでした。
強い事を言いながらも、結局私は一時間待ちましたが妻は出て来ず、電話を掛けてきたのも翌朝になってからです。
「ごめんなさい・・・・・」
「終わったな」
「ごめんなさい・・・・ごめんなさい・・・・」
妻が泣いているのが分かり、私も今にも声を出して泣いてしまいそうだったので電話を切ってしまいます。
そして妻が私の前に姿を現したのは、一週間近くも経ってからの事でした。
「子供達に会わせて下さい。お願いします」
「あの日俺を待たせておいて、奴に抱かれていたのか!」
「・・・・・・・・・」
「おまえは子供達を捨てたんだ!子供よりも快楽を選んだんだ!今更会ってどうする!」
「何でもしますから会わせて下さい。お願いします」
「もう眠っている」
「起こしませんから、一目だけでも」
「何でもすると言ったな?それなら服を脱げ。会わせてやるから、真っ裸で町内を一周走って来い」
妻は子供達と会いたいあまり、躊躇する事無く裸になりましたが、流石に外には出られません。
妻は恥ずかしい場所を手で隠して俯いて立っていましたが、私は妻の陰毛が醜く生え掛けているのを見てしまいました。


  1. 2014/05/28(水) 12:06:34|
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心の隙間 最終回

木下が妻の陰毛を剃っていない事が、妻は完全に自分のものになったという、自信の現われだと思っていました。
「ここに来るのに、今日は剃ってもらわなかったのか?」
寒さで震える妻に嫌味っぽく言うと、妻は首を激しく振ります。
「翌朝彼のマンションを抜け出して、それからはまた美雪の所で世話になっているから」
「奴とは会っていないのか?」
「毎日会社の外で私を待っているけれど、彼とはもう・・・・・・」
妻はあの夜、木下によほど酷い事をされたのでしょう。
その証拠にこの時だけ、妻の顔が険しくなりました。
「あの日俺を待たせながら、子供達まで捨てて奴を選んだおまえが、どうして奴のマンションを出た?」
「あの日、すぐに出て来たかった。彼に抱き付かれて放してもらえずに十五分経ち、三十分経つとあなたは帰ってしまったと諦めてしまって、抵抗する事もやめてしまいました」
おそらく妻は、ただ抱き付かれていただけでは無かったのでしょう。
無理やりされていても、彼に慣れ親しんだ身体は反応し始めていたのだと思います。
「それならどうして、電話してきた時にそう言わなかった?」
「最初は逃げられないように抱き付かれていたけれど、朝までの間には逃げられるチャンスは何回もあったの。でも私は逃げられなかった。正直に言うと、逃げる事なんか忘れてしまっていたの。その頃にはあなたの事も、子供達の事も頭に無かった。朝になって後悔しても、そんな私は何も言えない・・・・」
やはり妻はただ押さえ込まれていただけでは無かったようです。
彼に嬲られていて、快感から逃げる事が出来なかったのでしょう。
妻は木下に何十回と抱かれている内にそのような身体にされ、その事を誰よりもよく知っていた彼は、休ませる事無く朝まで妻に快感を与え続けていたのかも知れません。
そして妻は子供達の事を考える余裕も無いほど、激しく感じさせられていた。
「もういいから子供達の寝顔を見て来い。ちゃんと服を着ていけよ」
その夜妻が、子供部屋から出て来る事はありませんでした。
私は素直にこの家に戻って来いとは言えず、妻もここに戻って来たいとは言いません。
妻に未練があるくせに、心から許すことの出来ない私は優しい言葉は掛けられず、そのような私が許すはずがないと思っている妻は、戻りたいと泣いて縋る事も出来ずにいます。
早い段階で許す努力をしていれば、妻が二度三度と木下に抱かれる事もなかったでしょう。
妻を許せないのなら、きっぱりと諦めて新しい人生を歩む。
それが出来無いのなら無条件に許す。
そのどちらかしか無いのは分かっていても、妻を手放す事も許す事も出来ないで、私はもがき苦しんでいました。
妻は木下に会う事で私の機嫌を損ね、子供達に会えなくなるのが嫌なのか会社を辞めたようで昼間から我が家に来ていましたが、夜になって子供達が寝静まると美雪さんのアパートに帰って行きます。
私も妻に泊まっていけとは言えず、妻の後ろ姿を隠れて見送る日々が続き、そろそろ結論を出さなければと思い始めた頃、会社に美雪さんが訪ねて来ました。
「私は主人を愛していたのに浮気してしまって、主人を凄く傷つけちゃった。主人は再婚しちゃったようだけれど私の中では整理がつかなくて、もう三年も経つのに未だに懺悔の日々」
彼女は妻の事については何も話しませんが、妻にそうなって欲しくないと言っているようでした。
「主人を凄く愛していたのに、どうしてあんな事をしてしまったのだろう。主人の仕事が忙しくて構ってもらえずに、少し寂しかっただけなのに。浮気がばれた時も、男に抱かれたかったなんて言えないから、彼を愛しているなんて言ってしまって。本当に馬鹿みたいでしょ?」
彼女はそれだけ言うと帰って行きました。
ここのところ好きな音楽も聴く余裕のなかった私は、その日家に帰るとカセットデッキにテープを放り込みましたが、選んだのは高校の時に妻とよく聴いたグループのカセットテープでした。

♪ ああ だから今夜だけは 君を抱いていたい ♪

私の脳裏に高校生の時の、可愛いかった妻の姿が甦ります。
あの頃の私は、妻の事が無条件で好きでした。
妻が何をしたとか、妻が何を言ったとか、その様な事はどうでも良い事で、ただ妻が好きでした。
キスをしたいのにその勇気も無く、一緒に帰る時に手も繋げずにいたのに、それでも十分過ぎるほど幸せでした。
あの時妻が処女でなかったら付き合わなかっただろうか?
そのような事は有り得ません。
妻が浮気心を出して私を裏切ったとしたら、妻と別れていただろうか?
その様な事は有り得ません。
また私の方を振り向いてくれるように、必死に努力したでしょう。
私は声を出して泣きました。
それが妻に聞こえないように、カセットデッキのボリュームを上げて。
「私は今まで何をしていたのだろう。あなたに愛されていただけで、凄く幸せだったのに」
振り向くといつの間に入って来たのか、子供部屋にいたはずの妻が泣いています。
「あなた、ごめんなさい。あなた、ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい」
ドラマならここで妻に駆け寄って、抱き締めてキスをするのかも知れません。
しかし私には出来ませんでした。
「この事は一生忘れない。一生怨んでやる。一生虐めぬいてやる。それでも良ければ戻って来い」
「一生許してもらえなくて当然です。一生償って生きていきます。ですから、あなたの側にいさせて下さい」

あれから十数年。
私は未だに木下の夢を見る事があり、妻はその度に謝り続けます。
テレビなどで芸能人の不倫の話が出るだけでも不機嫌になり、そのような夜はつい妻を責めてしまい、やはり妻は謝り続けます。
妻はあれ以来、子供達と以外一度も遊びに出た事が無く、旅行も家族旅行以外は一度も行った事がないのです。
これは私が行かせない訳では無いのですが、おそらく私に疑われるような事は、一切したくないのでしょう。
この様な人生で幸せかと聞いた事がありますが、妻は私に責められる度に、愛されている事を実感出来ると言います。
言葉で責めた夜は決まって妻の身体も激しく虐めてしまいますが、妻はその行為すらも、私の愛を実感出来る瞬間だと言います。
私は死ぬまでに妻を許す事が出切るだろうかと考えた事がありますが、妻は許してくれない方が良いと言うので許さない事にしました。
妻が言うには、許してもらえない限り一緒にいられると。
私が妻を許さない限り、捨てられる事はないと。
一生側にいて償って行くから、決して許さないで欲しいと、今も訳の分からない事を言い続けています。


  1. 2014/05/28(水) 12:07:59|
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