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闇文庫

主に寝取られ物を集めた、個人文庫です。

花 濫 第7章公認の情事3

若やいだ鮮やかな山吹色の七分袖のワンピース姿の妻は、夫からはじめての女に出会ったように下からまじまじと見られて、妻は思わず顔を上気させて
いった。酒に酔ったように白い肌の底から、一度に血の色が広がり、夫に見つめられて、羞恥と困惑と恐れの表情を交互に現していた。

「今朝まで何処にいたんだ? この悪い女房は……」 惣太郎が妻に冗談とも本気ともとれように言ってから妻の手を捕って自分の上に引いた。
妻は軟体動物のような柔らかさと重さで、彼の胸の上に崩れ落ちてきた。崩れながら妻は、そうするのが当然のように、顔を夫の顔に寄せてきて、いきな
り唇を合わせた。
それは夫婦だけに通じる、容赦の願いであり、報告だった。

上から唇を押し付けている妻を抱き止めながら、惣太郎は妻の躯が、いつもより柔らかくなっているような気がした。片手をワンピースの裾に這わせて、
スカートの奥に手を入れた。つるつるとした化繊の下着の奥に隠された、小さなスキャンティーの上から豊満な妻の尻を愛撫した。

田宮や浩二が食卓に向かって待っているのだから、当然拒否すると思ったが、妻は小さく、あっ、と言ったまま、待っていたように一層躱を柔かくして惣
太郎の上に崩れ落ちた。思い切ってスキャンティーの端を掴むと、尻の方から一気に剥ぎとりはじめた。
太腿の中程まで剥いでから、掌を股間に進めた。臀の割れ目の辺りから、もうじっとりとした溢流が感じられ、さらに掌を差し込むと、そこはなま暖かい体
液が満ち溢れている。陰唇は、もう溶けてでもいるように柔らかくなっていて、惣太郎の指奥に誘い込むようにうごめいている。膣の内部は、ぬるりとした
体液が溜っていて、惣太郎の指を伝って流れ出た。

「すんだら、ちゃんときれいにしなければ駄目だよ。浩二君のは、さすがに若いね………、量も多いしねばっこいよ………。………浩二とどうだたんだ?…
…ちゃんと報告するはずだろう」
膣に挿入した指を、すこしいたずらっぽく動かして、惣太郎は妻の耳元でささやいた。

「あっ……。とても敏感になっているの………、もう感じちゃう………」
妻は惣太郎の上で身を揉みながら、もう目尻に皺をよせて、あえいだ。
「貴方と田宮さんに挟まれていたのは覚えているの…………」
「それは昨夜のことだろう?」
「ええ、それから一体どうなったのかしら。目が醒めて驚いたわ。だって、真裸で和室に寝ているでしょう………、それに………浩二さんがわたしの中にい
たのよ………」

惣太郎がワンピースを下から捲りあげようとするのを、自分で胸の釦を外し腕から脱ぎながら言った。
ワンピースの下から、いきなり豊かな胸が露わになってとびだした。下着を着ていると思ったのは、股の付け根くらいまでしかない短い、スカートのような下
着だった。
冴子は惣太郎の浴衣の胸を押し広げて、自分の乳房を押し付けながら甘えるような声を出した。

「あなたの策略だとすぐ判ったわ………。だからあたし…………」
冴子が惣太郎の股間に掌を伸ばして、まさぐりはじめた。
「どうして、俺が仕組んだと思ったんだ?」
「枕元の、あの水差しは、茶タンスの上の段から出したでしょう? あそこに水差しが入っているのを知っているのは貴方だけだし、それに、貴方以外の人が、
浩二さんの寝ているところに私を寝さす筈がありませんもの……」
「それでお前は、安心して浩二を頂いたわけか」
「違うわ! 前に言ったように、私が気が付いたらもう浩二さんが………」
「入っていたというのか」
「そうよ、びっくりして抵抗したのだけれど、浩二さんがすごい力で押さえつけて来るし、それに…………」

「……それに、どうしたというんだ」
「浩二さんがねえ………、あたしが自分で浩二さんの所にきたと思い込んでいるらしく、ママありがとう、ありがとうって、何度も言うのよ。まさか、主人が
こうしたのよともいえないでしょう?」
妻はまさぐっていたものが勃起したのを知って、上から自分の中に当然のように挿入して吐息をついた。惣太郎は妻の内部は、まだ浩二の放出した物が溢れて
いて滑らかだが、惣太郎を包んだ膣壁が、いつもより強く圧して来るのを感じていた。乱淫のために膣壁が腫れているに違いなかった。

「………それで、やったのか………。浩二はどうだった?………」
惣太郎は耐えきれなくなって腰を突き上げた。妻がうめき声を発した。
「なんといっても若いでしょう。ものすごいの……」
妻はそこまで言って、何を思い出したのか、
「いや!」
と叫ぶようにいうと、夫の胸に顔を埋めた。膣がきゅんと痙攣しているのは、よほどの刺激を受けたに違いないと惣太郎は思った。

「そんなによかたのか!」
惣太郎は、むらむらと沸き起こる嫉妬と被虐の陶酔に身を灼かれるような思いで、胸に打ち伏した妻の顔を両手に挟んで強引に上げると惣太は夢中で妻の唇を
むさぼっていた。
「うっ」
咽喉の奥で呻きながら接吻をうけると、やがてぐったりとまた胸に顔を埋めた。

惣太郎は上になった妻を、挿入したままゆっくりと横たえた。
松葉を二つ合わせたようなその体位は、惣太郎が疲れた時によく使う格好である。横になり片腕で頭を支えられるその体位は、男にとってとても楽である上、
仰向きになった女の全部を見ることが出来る。
妻の、いつもより濃い化粧の顔が朝の光を浴びて白く輝いていたが、化粧では隠しきれない荒淫の跡が痛ましくかがえる。
目の縁が黒ずんで下瞼にはっきりと隈をつくっていたし、頬にも形のいい額にも疲労の跡が見える。まだ二十代の若さで、これほどの疲労が浮かぶということは、
昨夜からの酒の暴飲と荒淫が、相当なものであったことを物語っていると惣太郎は思った。
惣太郎を見上げる目も、いつものきらきらした光が消えて、とろんと潤んでいて、白目にまだうっすらと充血の跡が残っている。先ほどまで透き通るように白か
った頬が、媾合にはいってからは真っ赤に上気し、とろんとした目が異常に潤んでいるのは、さきほどの浩二との情交の火照りが、再び蘇ってきているのだろう
か。

そう思うと、惣太郎の身内に嫉妬の混じった凶暴な血のたぎりと、健気にも、生まれて初めて三人の男に犯されながら、懸命にそれを受容してきた妻へのいいよ
うのないいとしさとで、惣太郎はいきなり妻の躯から一旦離れると、そのぼってりとした骨を抜かれたような女体に覆いかぶさった。

「何回したんだ?」
「わからないわ………」
「そんなにしたのか………。お前が目が醒めたのは何時頃だ?」
「三時くらいかしら」
「それから寝てないんだな?」
「浩二さんって若いでしょう、何度しても満足することってないみたい」
「その度にいったのか?」
「だってすごいんですもの………。何度も何度もいったわ……。最後は死ぬかと思うくらいいき続けたのよ」
「いま先もしていたじゃないか」
「あれは、一時間ばかり寝てからだったの……寝たというより、あたしが失神したのかも知れない。起きる前にちょとだけしたの………」
「あれがちょっとなら、相当すごかったんだな」
「見てたの?」
「いや、襖の外までおまえの声が響いていた」
「まさか!」

「本当だ。昨日の夜は、田宮と二回、俺ともしたし、一時前に浩二の部屋に行ってからも、田宮と浩二が変わる変わるしていたのは覚えていないのか?」
「そんなの嘘でしょ? 田宮さんと浩二さんの二人に同時にされたなんて……」
「嘘なもんか、嘘だと思うなら田宮に訊いて見ろ」
「あたし……浩二さんとしているところを田宮さんが見ていたというわけ?…………あたし………どうしましょう……もう田宮さんの前に顔を出せないわ」
 
「今朝はまだ田宮に会っていないのか?」
いいえ、いまも茶の間で一緒にお茶を飲んでいたの。……あたしが、昨日は酔ってしまって覚えていないけれども、あれからどうなったのって聞いたら、自分は
すぐ二階に上がってしまたから知らないって言ってたわ」
「せっかく彼がそう言うなら、そっとしといた方がいいよ。お前の事を考えて言ってくれているのだから」

惣太郎の腰の動きが激しくなるにつれて、妻の奥の方から強い男の体液の匂いが漂ってきた。
「ここに、まだ、浩二や田宮のものが入ったままなんだな?」
「………田宮さんのは知らないけど…………浩二さんのはそのままよ……だって、貴方との約束を守らなければ怒るでしょう?」
羞恥に顔を覆った掌の中で妻が言った。                 

性交の跡をそのままにして、一刻も速く惣太郎の所に来ると言うのは、惣太郎が妻に与えた義務だった。
「よし、見てやる」
「一度は拭ったんだけど………今日はいつもと違うの………きっと驚くから」

惣太郎は妻から抜き去ると、思い切り脚を開かせた。妻は拒否しなかった。しだいに現れた陰唇の周囲が赤く腫れていて、性交のすごさを物語っている。
「あのね、浩二さんは、そのままにされちゃうから、もうわたしもむちゃくちゃになってしまうの」
「そのままて、何がそのままなんだ?」
「だから入ったままで………ひとつ躰のままで、何回も何回もいくの。若い男の人ってそうなの?」
「誰でもってことはないけど、そういうのを抜か六っていって、精力の強い男のことを言うんだ。浩二はよょっぽどお前の躰がよかったんだな。あいつ、経験
があったみたいか?」

「わからないわ、夢中だったから」
やはり顔を隠したまま妻が答えた。
「よっからろう、若い男は強くて………」
「それどころではなかったわ。このまま死んでしまうのじゃないかと思うほど感じるんだもの……」
「でも何度もいったんだろう?」
「そんなつもりはないから、最初は拒否していたんだけど、そのうちいきなり痙攣がきて……それが続けざまなの、あたし狂ったかと思ったわ………浩二さん
って、いつまでも続くし、終わってもすぐまたしてくるんですもの」

「満足したか」
「浩二さん?」
「浩二もお前もだ」
「浩二さんとても満足したようよ。ああ、そうだ……こんな経験はじめてです。一生忘れません……って言ってたから……」
「田宮と浩二とどちらがいい」
妻はしばらく答えなかったが、いきなり顔を振って夫の目をのぞき込むようにすると、
「浩二さんよ! だって若くって清潔でしょう」
「浩二は後悔していないんだな」
「やっぱり浩二さんは若い今頃の人よ。一夜あたしと一緒に、なにかスポーツをしたみたいに、さばさばした感じで、パパのお許しが出れば、またお願いし
ますだって…………」
「………で、お前はなんていったんだ………」
「主人は、たぶん何もいわないと思うわ。だけど、秘密にすると叱られるっていっておいたの」
「そこまで言ってしまったのか」
  1. 2014/12/03(水) 08:13:07|
  2. 花濫・夢想原人
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花 濫 第7章公認の情事2

浩二の若い身体にどんなに魅了されたとしても、それで狂ってしまい、家庭も自分の立場も放棄してしまうほどの思慮分別のない女でもない。        
自分がいつか田宮との事がはじまった時、悩んでいる妻に、お前が若い男と交わることで、より一層女らしく美しくなることが、自分にとっても限りない悦
びなのだ、と教えた通り、今度も浩二と交わることが、自分を愛している証拠のように信じ切っているのであろうか。
田舎育ちの純真無垢の妻は、自分の示唆したことを素直に信じて、その後は、田宮との情事も、あたかも、それがあたりまえのように、わびれることなく
続けてけている。                  

「今日の田宮さん、とてもいやなのよ………。真昼間だというのに、窓のカーテンを明け放って、お日様の照っているところへ私を連れてって思い切
り開い見るの………。あたしもうはずかしくって身の置き場もなかったわ」    
田宮との情事の後は、どんな微細なことでも漏らさずに報告するように仕向けるまでには、羞恥に顔を染めるだけの妻に、根堀り歯堀り質問攻めを、
ひつっこく繰り返さなければならなかったが、最近では、妻の告白を訊くことで異常に興奮し、今までとは違って、まるで青年のような猛々しさで、その場
に妻を押し倒してしまう自分の行動を期待して、自ら詳細な報告をするようになった。

それでも言葉であらわせないような、淫らなことを告白しかけて、言葉につまり、全身に羞恥を浮かべながら、自分の胸に顔を埋める妻が、なんともいじ
らしく、夢中で抱き締めている内に、そのまま媾交に移るのが最近の夫婦の習慣になっている。 

田宮とのことは、それでいいのだが、浩二とのことについては、たしかに内心、浩二のあの若々しい獣のような肉体を妻に与えたら、どんなに妻が悶
え狂うだろうかと、あられもない想像をこらえきれずに、昨夜の行動を実行したわけだが、妻には、まだ、一言も浩二との情交の許可を与えてはいない。        
妻が、浩二と交わることを夫が喜ぶと信じて、自発的に実行したとしても、自分の許可もなく、妻が平気で他の男と情を交わすということは、実に重大な
事態だと、惣太郎はベットの上で、天井から下がっている堤燈を模した照明器具を睨みながら考えていた。                   

むかし、遊廓に賣られてきた娘を、一人前の娼婦に育てる第一歩は、まず、男に対する羞恥を取り除くことだと、本で読んだ事がある。
そのためには、毎日毎日違う男と情交させて貞操観念を払拭し、男と交わることが、日常の生活行動として当り前のようにしつけることらしい。
それでも馴染まない女は、娼館の中では、真昼間も着衣一つ着せず全裸のまま過ごさせ、同じ娼婦の先輩に卑猥な言動を浴びさせ、時には、大勢の
面前で不特定の男に犯させる。こんな生活をしばらく続けさせると、たいていの女は、性に対する羞恥とか貞操観念を失ってしまうという。
もともと性に無知で無垢の妻が、もし、他の男と寝ることで、自分の夫が悦ぶということを、どこの家庭でも、秘密裏に実行していると信じてしまっている
としたら、今後がそら恐ろしくなってくる。              

惣太郎は、自分の妻の冴子が、そこまで初心で無垢だとは思わない。そうだとすれば、妻は、自分の異常な性癖を、巧みに利用し、普通の人妻で
は思いもよらない悦楽を、堂々と臆面もなく実行している悪女の典型ということになる。  
しかし、鄙びた田舎で、父と二人だけの静謐な生活を送り、結婚して東京に来てからも、自分と二人だけの家に閉じ篭り気味で、滅多に外出もせず、
ましてや他の男との密会など考えもできない自分の妻が、それほどの悪女に変身することは、どんなことがあっても考えられない。

この疑念を、惣太郎はすぐに打ち消したつもりだったが、心の隅に何か小さな引っかかりが残った。         
それは妻の冴子が、潜在的に好色な性癖を持っていたのではないかということだった。娘時代の彼女の生活は、あまりにも静謐で清潔であったため、
彼女の胎内にあった好色の種は休眠状態にあった。

結婚してからもそれは変わらなかった。しかし、昨年の冬、田宮というまだ若い精力的な男との交わりによって触発された眠っていた淫逸な種は、時
期到来とばかりに芽生えはじめた。
二八歳という女として熟爛期の肉体は、ひとたび萌えはじめると、とどまるところを知らない。
幸いなことに、夫の理解というまたとない恵まれた土壌も、淫逸の芽の発芽や成長を促進された。今の妻は、昨年までの彼女とは異なった淫逸な女
に変身してしまったのではなかろうか。                         
 
病苦に苦しむ患者に内緒で医師が麻薬を注射して、いつのまにか患者は恐ろしい麻薬中毒に陥っているのに、それを知らぬ患者は、麻薬を注射さ
れる度に健康が快復していると信じて悦びに震えているのと同じよいに、妻もまた自分が淫蕩の泥沼に落ち込んだとも知らずに、この世こにんな悦楽
の花園があったのを発見して、歓喜に打ち震えているのではあるまいか。
もしそうだとすると、一体どうしたらいいのだろうか。

一旦知った悦楽の果実はイブのようにもう生涯忘れることは出来ない。田宮も浩二も、この家に出入り禁止にしたとしても、昔通りの静謐で清潔な生
活を妻と一緒に送ることが可能だとは思えない。
自分はもはやこの歳になって、清冽な流れを友として生きることは簡単であるけれども、やっと女としての成熟期を迎えた妻がはじめて知った官能の
逸楽の甘味は、そう簡単に忘れ去ることは出来まい。                         

また、自分としても、この異常とも思える行為に踏み切ってみて、他の男に犯される妻が、まるで初めて知った女のように新鮮に見えてきた。
田宮に突き通されて悶える妻は、さらに惣太郎の見たことのない妖艶な魅力を秘めていて、これが自分の見慣れた妻かと疑うほどだった。
また、妻を責め続ける田宮の鋼鉄のような筋肉のたわみや、妻を貫く憤怒の形相で屹立した逞しい男根の躍動に、田宮は自分の身代りのような錯覚
を覚えて、あたかも自分に再び壮絶な力が与えらえられ、思いきり妻をさいなんでいるような悦楽を感じるのだった。

さらに、妻が他の男との媾交に喜悦の悦びを上げのたうつ姿を見て、青年のような欲情に身を灼き、その直後、まだ情交の余韻を充分に残した妻の
汗と体液に濡れた熱い肢体を抱き、男の残留物がまだふつふつと溢れ出ている妻の体内をまさぐって、思わぬ嫉妬と被虐の激情に駆られながら交わ
る快感は、禁断の木ノ実をむさぼり食うような、この世のものとも思えない悦楽である。              

惣太郎自身、妻と同じに重症の中毒患者になっていることも否めない。自分自身が、もうこのはじめて知った悦楽を手離す気がないのを惣太郎は知っ
た。そうである以上は、いかにして、このタイトロープを渡るような危険な遊戯を、怪我や障害もなく遂行するかが問題なのだ。
どんな危険なサーカスも、細心の注意と決断と勇敢な実行力さえあればどうということはない。
すでに手綱は放たれたのだ。後は、どううまく怪我なく進めて行くかである。            

ここまで考えて、惣太郎は、全身に満ち溢れるような力のみなぎって来るのを感じた。この世に、これほど刺激的で悦楽に満ちた遊戯はあるまい。
ふとした偶然からそれを知ったからには、徹底的に地獄の底まで見てやろう。
こんな異常な生活を体験する夫婦もそうざらにはあるまい。こんな背徳の果てに一体どんな結果が待ちかまえているかは知らないが、毒くわば皿まで
である。決して自暴自棄になったわけではないが、これほどの悦楽を味わった後には、それに相応の因果が待っているような気もする。
  
しかし、いま、それを案じてもはじまらない。案外、人並以上の体験をしただけに、もっと卓越した人生が広がるかも知れないではないか。                               
そうすると、先ず、浩二と妻を、どのようにして公認のかたちにもっていくかである。
田宮の場合と違って、まだ純真な浩二に、いきなり真相を打ち明けるのは危険である。彼には田宮のような如才はない。
浩二がロンドンに行く前に、何かの話から不倫の事が話題になり、自分は妻の冴子を他の男に与えてもいいようなことを話したことがある。
その時、浩二がみせた不愉快な表情を惣太郎は今も忘れない。

当分の間、浩二と妻の不倫を許しておいていいのか判断出来ないでいる。
自分が参加しなければただ妻の浮気を容認するのと変わりないことになる。            
浩二に気付かれずにそれを実行するには、妻にすべてを報告させるか盗み見しかない。
要するに妻の心と躰を媒介として惣太郎が参加することになるのだ。

このためには妻を充分説得しておかなければならない。妻が田宮と同じ考えで浩二と接しているならそれも問題ないが、年齢も近いことだし、
万一、浩二の純粋さに妻が同調するような事があれば、問題は複雑になって来る。一度、妻とゆっくり話し合う機会をつくらなければ…………。
そう思いながら惣太郎はいつの間にかまどろんでいた。

「あなた遅くなってすみません。ご飯の用意が出来ました」        
いつもより若々しい妻の機嫌のよい声と顔が、目覚めた惣太郎のすぐ上で微笑むえんでいた。                           
妻の白い顔は寝不足と疲労のせいだろう、顔の肌を青白く透きとおらせ、目の下にややたるんだ袋が出来ているが、丸い目がぬれぬれと
輝いて、快楽の余韻が隠しようもなく滲みでている。
髪は急いで整えたのだろうが、どこかいつもはない崩れが凄艶に感じられるし、気のせいか、前髪の額にかかったあたりに、性愛の名残のよう
な体液の生臭い匂いが溜っているようだ。
見おろす妻の瞳が、今、水から掬いあげられた黒曜石のように、濡れ濡れと輝いていた。       
  1. 2014/12/03(水) 08:11:24|
  2. 花濫・夢想原人
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花 濫 第7章公認の情事

夜中に何度夢を見ただろう。すべて妻の夢だった。
広い座敷に田宮と浩二の他にも何人かの男が裸で向こうを向いて座っている。その前には妻が全裸で一段高いところに両足を開いて後ろ手を突
きにこやかに笑っている。
男達の視線が妻の性器に集中している。田宮と浩二以外の男は五人ぐらいで、いずれもボディービルダーのように逞しい筋肉隆々とした躰だ。
妻の性器からは、陰液が流れ出している。一人の青年が、たまりりかねたように妻に近寄り、太い腕で妻の足を掴むと、思いきり押し広げて、惣太郎
の腕ほどもある巨大な陰茎を妻の性器に押し付けた。ああ、妻の性器が破れてしまう、と惣太郎が思わず止めさせようと大声を出そうとしたが、どうした
こと声も出ないし動くこともできない。

どうしようと思った瞬間、その青年が腰を絞って、巨大な陰茎を妻に押し付けた。すると妻の性器は、いともたやすくその巨大な陰茎を呑込んでいる
ではないか。別の青年が妻に走りより、顎を上げて矯声を放っている妻の口にいきり立った巨大な陰茎を押し込んだ。
残った男達が二人の男に貫かれて悶えている妻の真っ白い裸身に詰寄り 、乳房や腹や肩など妻の躰のあらゆる部分に唇や陰茎を押し付けた。
いきにえに群がる野獣のような男達の逞しい裸身に覆われた妻が放つ叫び声に、惣太郎が何か叫ぼうとして眼が醒めた。              

六時前だった。隣の妻のベットは昨夜のまま冷たくベットカバーが掛けられたままだった。ついに昨夜妻は寝室には帰ってこなかったのだ。白々し
い朝の光の中で、皺一つなくかけられたベットカバーのままの妻のベットを眺めながら、惣太郎は、心の中まで何か冷え冷えしてくるのを覚えていた。

妻はまだ浩二と隣の和室に寝ているのだろうか。いつもなら妻はもう起きている筈である。普通なら朝飯の準備をしていて台所から、包丁のまな板
を叩く音や、食器の触れる音が聞こえて来る時間であるが、今朝はことりとも音がしない。惣
太郎はゆっくりと起き上がると、ドアを音を立てないように開いた。
隣の和室の襖はぴたりと閉ざされている。二人はまだ昨夜の悪魔の性宴に疲れはてて眠っているのだろうか。

そう思った時、部屋の中で人の蠢くような気配を感じて惣太郎は思わず息を詰めた。明瞭ではないが、爽快な朝の静寂とは無縁の陰湿なねばっこい
ざわめきのようなものが、かすかに肌に直接伝わって来る。部屋に近づくにしたがって、襖の向こうでは、すでに二人は起きていて、無言のままなにか
激しく争っているようすが、直接耳に聴こえて来る。              

惣太郎は、思い切って二枚襖の閉じたれた合わせ目に耳を付けてみた。映画館の扉を押して入り込むと、暗い室内に突如、いま自分がを置いてい
た現実とは全く違う世界が熱っぽく進行しているように、実態は判らないが、激しくもつれ合う熱気が伝わってきた。
それはあきらかに男と女の睦み合の息づかいや肉のきしみであった。                             

昨夜といっても今朝の二時過ぎまで、あれほど酔いあれほど激しい性交を繰り返していたのに、もう若い二人は再び交わりをはじめているのだ。
浩二はともかくとして、妻は昨夜三人の男に翻弄され、合計すれば十回におよぶ性交をしているというのに。
惣太郎は若さというものの恐ろしいまでの強健さに改めて、いいようのない嫉妬を感じていた。

妻の猫の首をしめたような声がくぐもって聴え、それにつづいて浩二の呻きとも言葉とも判じにくい声が、きれぎれに聴こえてきた。
何か判らなかった妻の発する単語が繰り返し叫ばれている内に、惣太郎にもその言葉は媾合の最後にささやかれる睦言の男への訴えかける種類
のものであることがわかってきた。その妻の声は次第に高くなり、やがてそれはうわ言のようになった。                               

浩二の低い喘ぎ声と妻の嬌声との絡み合いが、激しい息遣いと一緒に高くなったり低くなったり、途切れたり、時には長く続いたりして、いつまでもと
めどなく続くのを襖の外で聴きながら、惣太郎は、まるで自分が限りない力で妻を攻めているような心の高揚をしだいに覚えていた。
襖を注意して見ると、家が旧いためか、柱と襖の間がわずかに開いている。上の方はぴたりと締まっているが、柱の傾きで下の方は二センチばかり
開いていて、もし惣太郎がその気になれば、伏せてそこに眼を押し当てれば、部屋の中が見えるに違いない。

そんな衝動に駆られるを押さえて、惣太郎は廊下に立ったまま襖にじっと耳を寄せていた。思い切って襖を開けたら中の二人は一体どうするだろうか。
妻の冴子は、昨夜の事を少しでも覚えていれば、それほどの動揺はないかも知れないが、浩二にとっては大変な衝撃であるに違いない。何も今浩二を
驚かせることはない。そのうち自然に自分が黙認していることを知らせ、やがて田宮と同じように、何かの機会に、妻を共有するように仕向ければいいの
だ。      

妻の声がしだいに辺りはばからぬ大きさになって、ついには叫びに変わってきた。どうやら二人は最後の断末魔に行き着こうとしているらしい。
浩二の低い呻き声も聴こえた。妻が最後を迎えて発する普段聴き慣れた嬌声とは違って、尋常ではないいまにも狂ってしまうのではないかと思えるよう
な、腹の底から絞り出す息たえだえの叫び声に、惣太郎は襖の外でおろおろするばかりだった。   
一体妻は今どんな格好にされ、どんな表情で浩二を受け入れているのだろうか。

襖の外の惣太郎がいたたまれない焦燥に駆られていると、断末魔を迎えたとばかり思っていたの、つぎの瞬間には又しんと部屋の中は静まって、心な
しか 険しい息ずかいの絡み合いと、襖や障子や畳の軋めきだけになる。やがて、最後の断末魔が終わったらしく、例の凄愴な情景を思わせる一際高い
呻き声や喘ぎのあと、だんだんと気配が静まって、その後、ひっそりした時間が過ぎていった。

その間、頬擦りや接吻や抱擁の執拗な愛撫や、いたわり合が長々と続いているらしい。 
中の二人が立ち上がる気配に惣太郎は慌てて自分の寝室に逃げ込んだ。いたずらっ子のかくれんぼうのように、寝室に逃げ込むと惣太郎はドアを細く
開けて外の様子を覗き見ていた。
かなりしばらくして、襖が開いて妻だけが出て来た。長い髪が顔にかかって乱れたまま、ちらと惣太郎のいる寝室の方を見てから洗面所へ入って行った。
瞬間だが妻の顔は、いつもより青ざめていて眼だけが泣いたように潤んでいのを見た。

惣太郎はもう一度ベットに入って靜かに眼を閉じた。自分が性交を終えたような疲労感があった。
一体妻はこの時間までこの寝室に帰ってこないような思い切ったことをどうして実行してしまったのだろうか。自分がもう起きていることは充分承知してい
るはずである。                      

昨夜の妻は、自分と田宮の強引な術策の罠に落ち入り、意識不明の酔いの中で、赤裸々な本能のおもむくままに、三人の男と交わったわけで、それ
は妻の所業というわけにはいかない。もし誰かに昨夜のただれた性宴を責められるとすれば、それは自分であって、妻はあわれな犠牲者ということに
なる。裁判でも、酒に酔ったり意識不明で犯した犯罪は、本人の意志ではないので裁くことは出来ない。
昨夜の妻は、酒の酔いに羞恥と理性のベールを取り去られて、本能のおもむくままに、悦楽の深淵を味わったわけだが、たとえそれが妻が潜在的に
望んでいた行為だったとしても、責めることはできない。               

浩二にしても、あれほど酔いしれながら、必死に最後の理性に耐えていたのを、馬の鼻先に人参をぶら下げるように、妻を与えたのも自分であるから、
浩二を責めることはできない。
むしろ健康な若い男としては当然の行為と言わざるを得ない。自分に荷担した田宮はどうだろう。たしかに惣太郎一人では、昨夜の悪魔じみた謀略
を実行することは出来なかっただろう。田宮が惣太郎を唆したことは事実であるから、田宮は共犯者ということになる。              

しかし、どんなに田宮が自分を教唆したとしても、自分がそれを拒否すればこんな事態に陥ることはなかったはずだ。
第一、田宮が悪魔の狂宴に荷担したのは、あきらかに自分の願望を実現するために、協力したに過ぎない。田宮の心中は、案外昨夜の行為に嫌悪の
情を抱いていたかも知れない。先輩の美しい妻と、たとえ承諾の中とうあいえ、情交の関係にあるという負目が、やむなく自分の願望に荷担せざるを得な
かったというのが真実だったとも考えられる。        

やはり終局的には、昨夜の悪魔は自分自身であったことを惣太郎は、肯定せざるを得ないと思った。                          
それにしても今朝の妻の行為はどう解釈したらいいのだろう。       
昨夜から一睡もすることなく浩二との情交が続いていて、朝になっていることに気付かなかったということが一番に考えられる。だが、それにしては、さ
さきほど垣間見た妻の凄艶な顔には、おびえや恐れの表情はみじんもなく、朝日を受けて洗面所に向かって歩いている妻の表情には、新婚の初夜の翌
朝のように、男によって与えられた肉体の変調に、かすかに羞恥と悦びの入り交じった微笑さえ浮かんでいた。               
惣太郎は、いつもの物静かなつつましい妻を、遠い過去の女を思い返すような気持ちで思い浮かべていた。
妻は夫のいる家で、夫を無視して朝から若い男と狂うような放埓な女ではなかった筈だ。
  1. 2014/12/03(水) 08:09:12|
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花 濫 第6章悪魔の宴3

「田宮君、君はどうかね。こんな修羅場を見て我慢できるのかね」
惣太郎が聞いた。                            
「そりゃあもう、かんかんになってます。我慢も限界と言うところです。なにしろ私は奥さんに惚れていましたから、今夜のことも、出来ることな
ら奥さんは、先生は別として、私だけのものにして置きたかった。けれども、先生のためにも奥さんのためにも、やがてアメリカに帰る私より、こ
の浩二さんの方がどれだけいいか知れないし、また、この浩二さんなら、奥さんの後を任せても安心出来るいい青年でと思ったのです。  

そう思って冷静に事を運んだつもりだったのですけど、いざとなると、奥さんが彼に抱かれる現場はどうしても見られない心境で、つい二階に上
がってしまったのですが、やはり気になって………。
でも、見てよかったです。安心しました」

惣太郎の心に、ある満足感がゆっくりとたぎってくるのを感じた。やはり妻は、この男をも魅了していた。この男の、先ほどまでの冷淡な様子は、
冴子を他の男に捕られる苦しみだったのか。
そう思うと、惣太郎はにわかに自分の優勢と自負が体内に満ちてきて、じっと妻の裸身を凝視している田宮の痩身に、なんともいえぬいたわりの
ような情感が湧いて来るのを押さえられなかった。

惣太郎と田宮は、しばらく無言のまま、冴子の白い裸身を食い入るように眺めていた。惣太郎は田宮のすぐにでも妻を抱かせる決心は出来ていた
が、それを言葉にするには、不遜なような情緒が、惣太郎と田宮の間に漂っていた。重苦しい気配が部屋に満ちていた。
冴子は、開いていた脚を閉じて、やや横に重ねていた。上半身は仰向いたままなので、腰のところで躰をひねっていので、腰がとても大きく盛り
上がって見える。
枕に載せた顔は、まだ眉根の縦皺は消えておらず、口も半ば開いていて、時折唇が乾くのか、刺身のように新鮮に見える舌で嘗めている。冴子か
らやや離れて浩二が俯伏せになって、眠っていた。
「冴子が望むなら、やってもいいよ」
言った惣太郎の声がわなないた。

田宮の掌が、妻の乳房にかかったのを見て、惣太郎の血が音を立てて流れはじめた。妻は逆らうどころか、身をよじって、           
「ああ……」                              
と悦楽の声を上げた。目は閉じたままだったが、眉根の皺がにわかに濃くなり、吐息に口を大きく開けた。
田宮が惣太郎に承諾を求める目を向けた。惣太郎の目が凍てついたまま微かに首を立てに振った。
田宮が浴衣をはらりと捨てて、妻により添って横になった。
田宮は妻の乳房を掴んで吸いはじめた。妻が官能の高まりの反応を示して、かすかにもだえはじめる。               

田宮がそっと妻の重ねた脚の上の方を後ろに押しながら、股間に掌を差入れた。
「ああ……いい……」                         
妻が大きな声を出して、自ら両足を大きく開いた。田宮がすかさず顔を押し入れて、妻の性器を吸いはじめると、白い脚が苦しそうに痙攣しはじめ
た。   
「ああっ、浩二さん………」                      
妻の呻きが、まだ浩二の名を呼んだ。                  
「冴子! いまは浩二じゃないよ……田宮君だよ」            
惣太郎は妻の耳元に口を寄せて言った。                 

「いい……いいの……田宮さん」                    
妻は明瞭に反応して、今度は田宮の名を言った。妻は夢の中で性交しているのかも知れないと惣太郎は思った。                     
田宮は妻の股間を責め続けている。妻の呼吸が嵐のように激しくなり、 全身が痙攣をはじめだした。羞恥も、思惑も、虚偽も、虚栄もなく、与
えられている性の快感に純粋に昇華しようとしている妻の汗ばんで魚の白い腹のように銀鱗のぬめりを見せてあがいている姿態が、惣太郎には馴れ
た自分の妻とも思えぬほど美しく見えた。
汗に濡れたほつれ毛を、額から頬にべったりと張りつけて、閉じた長い睫毛を震わせながら官能の恍惚に歪んだ妻の表情が、惣太郎には血が逆流
するほどいとしく思えた。

感情の激流が堰を切ったように昂ぶって、惣太郎は思わず手をのばして妻の乳房を鷲掴みにした。
田宮は妻の股間に顔を埋めたまま、手探りで、片手と脚を上手に使って自分のブリーフを脱いでいる。       
惣太郎は握りつぶす勢いで妻の乳房を掴んだ。淫蕩な幻想の世界を無我になって翔んでいる妻を、乳房の痛みで現実に引き戻したい欲望と、更に
淫楽の愉悦の深淵に突き落としたい感情とが綯混ぜになっていた。             
「冴子、いいのかい?」                        
力を込めて乳房を掴んだのに、脂汗にぬめる乳房は、生ゴムのよな弾力で、惣太郎の指の間から、軟体動物のように滑り逃げる。

官能の極限を浮遊する妻には、乳房に与えられる痛みも、すべて快感に変化するらしく、一層顔をしかめて、恍惚の咆哮をあげるだけだった。
万歳の格好で、顔の両側からあげて、シートを握りしめていた妻の両腕が、惣太郎の浴衣の膝に触れると、麻薬を発見した禁断症状の患者のよう
にいきなり惣太郎の浴衣の下に片手を伸ばして、惣太郎の股間で怒り狂っている男根を探り当てた。                                

「あっつ、冴子……。いましてるのは俺じゃないよ……」
惣太郎が慌てて膝を引っ込めようとしたが、冴子の指がすばやく惣太郎のものを掴んでいた。
「あなたなの……あなたなの………」                  
眼を閉じたまま呟いて、妻は惣太郎の男根を掌に包んだ。         
「いいっ……あなた………」                      
妻は熱病に苦しみ悶える患者のように、全身を流れる汗にまみれて、全身を痙攣させた。                               
 
「どうぞ、お先に、先生」                       
田宮が、妻の股間から顔を上げ、指を妻の奥深くに挿入したまま惣太郎を促した。惣太郎は悪魔の囁きのような田宮のかすれ声に憑かれたように、
浴衣の裾を乱して立ち上がると、下穿を下ろしながら、妻に重なっていった。       
太腿の内側までべったりと濡れた冴子に重なっただけで、ぬめり込むように惣太郎は付け根まで埋没できた。締狭感はなかったが、熱い蜜壷に吸
い込まれたような粘質の快感が脊椎に奔った。

妻が泣き声のような叫びを放って膣を収縮させた。惣太郎は脳髄に突き上げるような快感を味わいながら、ゆっくりと抽送をはじめた。                                
妻の顔の上に田宮がいた。噴怒の様相を呈した自分の屹立したものを妻の口に当てがっていた。妻が吸い込むように大きく口を開けると、何の躊躇
もなくそれを含んだ。                               
惣太郎と田宮の視線が合った。
「天使としているような気分です」                   
田宮が照れた微笑で言った。
「ああ」                               
祖太郎は妻と同じように自分も悦楽の酔いの底に、抵抗できない力でぐいぐいと沈潜していくのを、金縛りにあったような感情の中で感じていた。
どうにでもなれと思った。惣太郎の脳に炎が一度に沸き起こり音を立てて燃え盛った。  

妻の中に突き入った惣太郎は、熱く煮えたぎった沼に包まれたよう頼りなさを感じた。底無し沼のようにどこまでも、ずぼずぼと奥深く進入していくと思
った瞬間、抵抗の全くない沼の泥がにわかに軟体動物のように蠕めいて陰茎に巻き付いた。
最初柔らかく触れるように巻き付いたのが、やがて惣太郎が思わず呻ほどの強さで締め付けはじめた。締め付けながら、奥から多量の灼熱した粘液
を噴き出させて、それが膣の無数の襞の隙間を流れ埋めて潤滑効果となり、やんわりと陰茎にくすぐるような快感を噴き起こしながら締め付けてくる。
 
若い男二人分の精液を何度も注ぎ込まれながら練られ掻き回された膣粘膜が、異常に興奮しているのだった。                              
妻が全身を痙攣させたように弓なりに幾度も反らせて、口に咥えた田宮の男根を吐き出して、尾を尾引くような高い嬌声をあげては、またそうしなけれ
ばいけないと命じられてでもしているように、懸命に咥え直している。       
惣太郎はその締め付ける快感に耐えかねていた。妻が全身に痙攣を起こす度に、微細な無数の快感の矢で亀頭全体を刺されるているような今まで
に感じたことのないしびれを味わって、あっという間に果ててしまった。          

田宮が替わって、妻に重なった。                   
既に二度も放出しているのに、隆々と勃起した田宮の男根は、自分のものとは比較にならないほどの大きさと硬度を保っていた。
青い血管を浮き上がらせたその男根を両手で握って、妻の股間に腰を入れた田宮が、全身の筋肉をしなわせて、妻の中に押し入った。全身に汗をに
じませ、身をふりしぼって、妻の躰のすべてを味わおうとするように、懸命に奥深く挿入しょうと腰を捻った。       

田宮の抽送の仕方は、自分や浩二より繊細で念入りだった。一突き一突きに浅深や円形運動や強弱などの微妙な変化を折り込んでいる。田宮が激し
く突き入れると妻の躰が弓なりに反り、柔らかく優しく入れると妻は誘うように腰を浮かせて需めた。
濡れた田宮の男根が、妻の股間にちらついていた。田宮が妻の片足を抱えるようにして抽送を始めた。交接の部分が惣太郎にはっきりと見えだした。
見慣れた妻の少女のように淡い薄紅の陰唇が、田宮の強壮な男根の抽送に、捻れながら体液をほとばしらせている。                     

「いいっ……いくっ……」                       
田宮が二つに折り曲げて開いた妻の脚を支えていた腕をほどいて、妻に重なり、武者ぶりつくように抱き締めて、腰の律動を早めた。
妻が田宮の頭をかき抱いて嬌声を放った。溶け合って一つになって蠢くふたりの横で、全裸のまま眠っていた浩二が、あまりに大きな妻の声に意識を取
り戻して、ぐらりと妻の方に横向きになると、盲人のように手探りで妻の躰を探していたが、手が妻の胸にかかると、上半身を妻の方に寄せて、田宮に揺
り動かされている乳房にしがみつくように唇をあてた。横に重ねた浩二の脚の間から、勃起した男根が見えた。      

浩二が割り込んできたため、上半身を腕で支えて上体を浮かせる姿勢に変えた田宮が、一気に腰を振る。
熱を孕んだ妻の陰唇が、押し広げられて捻れながら、体液を飛沫のように散らして田宮の股間を濡らしていた。妻が浩二の唇で塞がれた口を振り離して、
半狂乱になって吠えながら、狂ったように腰を振り躰を硬直させた。                                

肉付きのよい白い曲線に満ちた柔らかそうな妻の仰向きの躰に、琥珀色に輝く浩二の身体と、毛深い田宮の痩身が絡み付いて一つの肉塊となって婬な動
きをしていた。
燦々とした灯の下で、健康にはちきれそうな若い男の逞しい身体がふたつ、両側から妻の軟弱な躯を押し包むような格好でに組み敷いていた。
それは、精悍な二頭の若獅子が、いきにえの仔羊むさぼりついているようにも見えた。   

田宮が妻とL字型に結合して律動していた。L字に向かい合っている妻の背面から、浩二が身を乗り出して妻の乳房を両手で揉みながら接吻していた。
妻は激しい絶頂感を繰り返し味わっているらしく、苦しそうな息をつき、下半身を田宮と絡ませ、上半身は反り身の無理な姿勢に曲げて、浩二に預けている。
時々、浩二の執拗な接吻から、必死にもがいて口をはずし、顔を左右に激しく揺すって、乱れた髪を畳みにまき散らし、顎を突き上げるようにして顔を顰め
ては、赤く焼け燗れた口から熱い息をついていた。                   

彼女の顔に眩しそうに射している灯の下に渦巻いた髪の陰で、白い顔に微細に汗の粒が無数に光っていた。高い呻き声が出るのを、必死と堪えてい
る様子だった。クライマックスの発作が、繰り返し起き、それがだんだんと激しい衝撃の連続のようになって、なにか凄愴な感じのものになって来ているの
に、田宮の身体の煽りはますます激しくなるばかりであった。               

三人は何か焦って制御をなくして、ただ暴風雨のような揉み合になっていたが、やがて田宮に限界がきたらしく鋭い獣のような咆哮と一緒に、斜めに結合し
たまま、全身を硬直させ腰を絞るように振って射精した。            
田宮の低い咆哮の声に 妻の笛のような長く尾を引いた嬌声が重なって、深夜の部屋の空気を引き裂いたあとは、乳房の愛撫を続けている浩二に唆された
妻の余韻のような呻声が時々発作を起こしたように断続的に聞こえていた。     
 
浩二が、酔いに麻痺した体を懸命に動かして、冴子にかさなろうとあがいていた。
惣太郎と田宮が、押入から一組の布団を出して敷き、そこへ冴子と浩二を裸のまま寝させた。                            
惣太郎と田宮は隣の応接に戻り、ビールで乾いた喉を潤しながら休息していた。 
「朝になって、冴子はどうするだろうか………」             
惣太郎は妻が朝になって酔いが醒め、一夜に三人の男と交わったことを知って、発狂するのではないかと恐れを感じて田宮に言った。             
「あれだけ酒を飲んでいれば、きっと朝目覚めたときにはなにも覚えてはいませんよ」                                 
 
「あんなに感じたり、声を上げていてもか?」               
「なにか、無茶苦茶性交したということは、意識の奥に残りますし、躱にも痕跡があるでしょうから気付かれると思いますが、ああして浩二君と一つ布団に
寝させて置けば、朝になっても、きっと浩二君との激しい交わりだったと思うに違いありません」                             
田宮を先に風呂に入れてから、惣太郎も風呂で身を清めて応接に戻ったが、全身が溶けて行くような疲労感に襲われ、田宮を残して自分の寝室に行くと、倒
れ込むようにベットに打ち伏したまま深い眠りに落ち込んでいった。
暗い奈落の底に落下していくような睡魔の誘いのなかで、惣太郎は妻が薄い絹をまとっただけの裸身をくねらせ、天女のように宙を舞っている夢を見ていた。 
  1. 2014/12/03(水) 08:07:36|
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花 濫 第6章悪魔の宴2

惣太郎が廊下に出てみると、二人は恋人同志のように互い抱き合って、隣の和室の襖を開けるところだった。浩二が片手を冴子の腰に回した
まま、もう一方の手で乱暴に襖を引き開けると、暗い中に冴子を片手に抱いたまま突っ込むように倒れ入った。
真っ暗な部屋の中で暫く身をもみ合うような気配がしていたが、やがてどちらかの脚が襖を蹴ったり、躯が壁に当たる重く鈍い音が断続的に二、
三度したと思うと、その後はしんと静まり返ってしまった。
廊下の弱い照明に照らされてやや黄味を帯びて見える襖の開かれた奥の暗闇が、近づいてはならない淫魔の巣窟のように惣太郎には感じら
れた。

廊下に立ったまま、部屋の様子を窺っていた二人の耳に、冴子の呻くような息使いと、何か訴えるようにささやいている浩二の低い声が聴こえて
きたのは、十分もたってからであろうか。
冴子の荒い息使いに混じって聴こえる鼻声は、明らかに性的興奮状態にのみ彼女が漏らす声である。
それも乳房の愛撫くらいで出す声ではない。浩二は既に冴子の局部を愛撫しているのだろうか。もしかすると若い浩二の事である、既に冴子の
中に挿入を終えてしまったのだろうか。惣太郎は、身の置き場のない焦燥感に襲われながら、暗い部屋の奥を凝視していた。

突然、静寂を破って、
「浩二君、もう僕たちも寝ますよ! 先生は先にもう休まれたし、僕も眠くなったから、二階に上がりますよ! 」
「田宮は大きな声でそれだけ言うと、足音を忍ばせて、開いた襖の所まで行き、どういうわけか、思いきり荒々しく大きな音をたてて襖を締めた。      
「あのくらい大きな音を立てないと、酔っている二人には気が付きませんからね」
惣太郎の方に帰ってきながら田宮は言った。未練がましくまだ聴き耳をたてている惣太郎の背に掌をかけて、応接に帰るように促した。
 
応接の入口で、何を考えているのか、田宮は後ろを振り返って、
「浩二さん、本当に寝ますよ……。いいですね………先生はもう寝ましたからね……いいですね?………おやすみなさい」
何度も執拗に襖の向こうの浩二に呼びかけた。
しばらくすると、部屋に電気が点いたのが、襖の隙間から見えて、
「判りました………おやすみなさい……」
浩二のわざとらしい大きな声がした。その声に、
「ああ、おやすみ」

大きな声で言ってから、田宮は惣太郎の背を押して応接間に入ると、ドアの横にあるスイッチを押して、応接間の灯を消した。主灯を消して、豆
電球だけのフロアスタンドの淡い照明だけになって、元のソファに腰を下ろした惣太郎からは、向いの椅子に腰掛けた田宮の顔も定かに見えなか
った。
一旦腰を下ろした田宮が、暫くうつむいて何か考えているようであったが、椅子から立ち上がると、
「廊下の電気を消しましょう。それから私はちょっと二階に行ってきます」
と言い残して部屋を出て行った。部屋を出る時、田宮が作意的にドアを大きく開けたままにしたのを、惣太郎は敏感に感じていた。
 
仄昏い室内に一人残されて、惣太郎は所在なささに、残っていたブランディーグラスを取り上げた。
その時、廊下の向こうでスイッチを切る音がして、廊下の灯が消えた。いったい田宮は何を企んでいるのだろうかという疑念を抱きながら、惣太郎
はドアの外の真っ暗な廊下に眼を据えて考えた。

森閑とした物音一つしない家の中に、田宮がトイレを使ったらしい水道の水の流れる音が一時聴こえたきり、隣の部屋からも物音は聴こえない。こ
の静寂に包まれた家の中は、陰湿な重さの中に、なにか激情の熱気と淫靡な霧が渦巻いているような澱んだ空気が漂っているように思えた。                           

口を付けたブランディーが苦いと思った時、突然隣の部屋から、どすんと、畳に身体が落ちたような鈍い音がしたと思うと、
「あっ……浩二さん!……いやぁ……」
妻の絶え入るような声が聴こえてきた。惣太郎は飲みかけたブランディーグラスを慌ててテーブルに戻して、聞き耳を立てた。
最初はささやくような小さな声だったが、次第に声が大きくなり、ママ……ママ……という浩二のせっぱ詰まったような大きな声がして、それに答応
するような妻の短い悲鳴のような声が響いた。浩二が挿入した瞬間に違いないと惣太郎は思わず掌を握りしめた。

その後は、断続的に冴子の苦しげな短い嬌声と浩二の荒い呼吸音だけが断続的に聴こえてきた。声が途切れ、静寂だけが残された時間が、惣
太郎にはとてつもなく恐ろしい時に思えた。突然肌を打ち合う派手な音がびっくりするように大きく聴こえてきたり、切なげな妻の吐息が聞き取れるの
は、すでに妻が達しつつあることを如実に証明している。

ついに妻は浩二と交わったという、感嘆の底に、暗い奈落の底に落ちて行くような恐怖を惣太郎は味わっていた。二階に上がった田宮はまだ降
りてこない。惣太郎は、しだいに妻の短い叫ぶ声の間隔が短くなり、ときどき浩二に何か訴えるような泣き声が混じりはじめている。
惣太郎は思い切って廊下に出た。暗い廊下の磨かれた板に、隣室の襖の隙間から漏れる明りが斜めに筋を引いている。襖の隙間からは、声だけ
でなく、二人が交わり合っている肌の擦れ合う音や、一定のリズムに合わせて呼吸している二人も荒い呼吸から、激しいもみ合いにきしむ床の音まで
が、掌に取るように聴こえていた。

惣太郎は襖の前に立つと、思い切ってすこし襖を開けて中を覗いた。
燦々と灯の点いた室内の畳の上で、まず浩二の激しく律動する汗に光った背中が眼に飛び込んできた。つぎに二つに折り曲げられて組敷かれ、
ふくらはぎを浩二の胸のあたりから左右に突き出した妻の脚が、天井に脚の裏を見せて浩二の動きに激しく揺さぶられているのが眼に入った。
妻の顔も躯も浩二の身体に覆われていて見えない。
浩二の腰に圧せられて折り曲がった妻の太腿が白いむっちりとした内側を上にみせて搖れているのが、生きのよい魚が屈服して白い腹を見せてい
るように思えた。

眼を凝らせて、浩二のくりくり動く臀の下の、結合部分を覗いて、惣太郎は思わず眼を剥いた。壮大としかいいようのない程の太さと長さの浩二の男
根が、信じられない勢いで妻の中に突き入っている。
田宮の陰茎も相当の大きさだと思って驚嘆したものだが、いま妻を貫いている浩二のはそれより更に巨大である。色はきれいな肉色でういういしい
が、惣太郎にいま見せている陰茎の裏側は、筋肉が捻ったような硬さを見せ、その筋肉と表面の皮膚の間に青い血管が憤怒の様相で浮き上がってい
る。
 
その巨根を、経験のすくない妻が苦もなく呑込んでいる。
浩二の陰茎にいっぱいに押し広げられて醜く歪んだ妻の陰唇は、周囲から粘液をほとばしらせながら、せいっぱい開き切ってはいるが、果敢に浩
二をさらに奥深くまで呑込もうとして、ときどき激しい収縮運動までしているではないか。妻がその痙攣のような収縮運動をすると、隙間がなさそうに見
える挿入された陰茎と陰唇の隙間から、滲み出るように濃い愛液が溢れ出て、てらてらと光っている陰唇と菊門の間の狭い肉溝をゆっくりと流れ落ち
ている。

妻の身体を二つ折りにして妻の左右の膝の内側を両手で押え握って、オールで船を漕ぐ調子で揺すりながら、妻の耳の辺りに顔を落としていた浩
二が、頭を上げ、今度は妻の片方の脚を逆さに抱いて腰を振りはじめた。         
妻の苦痛に耐えているような、眉根に深い縦皺を刻んだ顔が室内灯に照らし出された。布団もない畳にホームコートの前を広げたあられもない格好
で仰向きにされて、顎を上に突き出していたのが、浩二に片足を抱えられると、少し身体全体を右斜めに傾げた。化粧は落としていたはずなのに、唇
が妙に赤く見えた。
その小さく開けた口の顎の辺りには、接吻の時に溢れたらしいの唾液が流れて光っている。畳に這った長い髪が、別の生き物のように複雑に搖れて
いた。

浩二が抱えていた妻の脚を離して、羽ばたくときの鳥の羽の格好に大きく脚を広げ、それがすぼまないように妻の脚の曲がった両膝の内側に腕を杭
のように立て、自らは蛙の飛び跳ねる直前のような格好で腰を懸命に揺すり始めた。
この格好では結合部は見えなくなったが、そのかわり妻のうねる姿態が充分に見える。
妻はときどき感に耐えられなくなるのか顔をいやいやするように左右に激しく振って乱れ続けている。はりつめた頚筋に静脈が蒼く透けて見え、それ
が妻の身体のきわまりを思わせた。

浩二の透明な脂を塗ったような若い琥珀色の艶やかな肌と、妻の真っ白い肌の若々しい対比や、浩二の大人にはない敏捷な動き方や、それに応じ
て身悶える妻のいつにない大仰な身振りや、ふたりが没我になって放つ嬌声の艶のある若さが、田宮や自分との媾交にはない華やかで健康な情緒
を部屋いっぱいに散らしていると惣太郎は思った。
 
「ママもう駄目だ………」
浩二が気がくるったように腰を動かしながら、妻の上に覆い被さった。待っていたように妻が浩二の背中を抱き止め、両足を浩二の腰に強く巻き付け
た。より深く妻の体内に突き入るかのように、浩二が陰茎を強く押し入れたので、妻の尻がせりあがり、後ろからみているそう太郎の前に結合部があらわ
になった。激しくせめぎ合うように逞しい浩二の男根が、妻の身体が壊れるのではないかと思うほどの圧倒的な硬度と膨張感をみなぎらせて、妻の躯
を席巻していた。
浩二が全身の力を込めて妻の中に押し入り、汗に濡れ輝きながら身をふりしぼって妻の躯のすべてを感じ取ろうとしている必死の様相と、その浩二
の激しい抽送を体中でむさぼり捕ろうと、髪を漣立って震わせ、全身を痙攣させながら、官能の極に悶えている妻とが、いま歓喜の極致に達して、官能
の限りない陶酔にしっかりと互いの?にむしゃぶりついたまま、叫び、泣き、呻き合ながら狂気の中で、互いに奪い合っている。
「ひぇー」
冴子が辺りはばからぬ叫びをあげた。激しい抽送を繰り返していた浩二の陰茎が、冴子の中へ潜り込むような勢いで差し込まれたまま幾度も
悶えた後、突然命を失ったように二人はぐったりとなった。崩れるように妻の上に全身をかぶせたまま浩二は荒い呼吸をしていた。
妻がしばらく余震におびえるように躯を間欠的に痙攣させていたが、やがて浩二の腰の上で組んでいた両足が力なく解け、浩二の背に爪を立
てていた腕も、するりと浩二の肩を滑って畳の上に落ちた。

浩二がよろけるように躯を転わして妻の横に落ちた。妻の股間から、待ちかねていたように、白い体液がどっと溢れ出て臀に流れた。
「やっぱり若いものにはかないませんね。」
放心したように呆然と二人を見おろしている惣太郎の後ろで田宮の声が突然した。いつから来ていたのであろうか。夢中で二人の壮絶な性交
に見入っていた惣太郎は少しも気付かなかった。

「視ていて涙が出るほどきれいでしたね。やはり若さというか、純粋さというか、今ほど性というものが、自然な行為で、神聖で、美しいと思
ったことは有りません」
田宮が感動を込めて惣太郎に訴えるよういに言う声が、余りに大きいので、惣太郎は思わず口に指を当ててそれを制した。
「大丈夫ですよ。二人は完全に酔ってます。私たちでしたら、もう正体もなく眠りこけているでしょうが、二人は若いから夢の中でもああして交
わることが可能なんですね」

「本気で君は、この二人が意識の外であれだけの交わりをもったというのかね?」
惣太郎は田宮の虚言に抗議する口調で言った。
「これだけしゃべっていても、二人とも気付かないでしょう。これがなによりの証拠です。お疑いでしたら、中に入ってみましょうか?」
田宮は惣太郎の返辞も待たずに、襖を入れるだけ開けた。部屋にこもっていた浩二と妻の躯中からしぼり出された汗と体液と妻の香水の濃密な
匂いが、惣太郎の鼻腔を刺激した。

田宮が惣太郎の横をすり抜けるようにして先に部屋の中に入り、眠っている二人の横に胡座をかいた。
「こりゃひどい汗だ。先生このままでは風邪を引いてしまいます。早く拭ってやりましょう。すみませんがタオルを持ってきて下さいませんか」
先ほどまでの冷淡さとは打って変わった優しそうな声をかけた。
惣太郎が風呂場からタオルを持って引き返してみると、田宮が冴子の上半身を自分の膝の上に抱え挙げて着衣を脱がせていた。田宮の膝の上で、
前を全部開いた妻の裸身が、ぐったりとなっていた。

上に向いた形のいい乳房だけが起きているように灯を集めて搖れていた。
「汗で濡れてなかなか脱がせられないんです。すみませんが私がこうして躯を支えていますから、その間に片方ずつ袖を抜いてくれませんか」
田宮が妻の背で皺になったぼろ屑のような着衣と肌の間に掌を差入れて、斜めに起こした。惣太郎は妻を抱き起こしている田宮の向こう側に回り、
中腰になって妻の着衣の袖を引っ張ったが、汗にぴったりと肌に纏付いた薄い布は容易には抜けなかった。
「先生、脇のところからめくるようにして脱がして下さい」

妻の肘を無理槍曲げて袖を抜き取りにかかったそう太郎は、突然妻の腕に力が入ったのを感じて、作業を止めた。
「浩二さんいいの……。あたし自分で脱ぐから……」
妻が眼を閉じたままうわごとのように言ったと思うと、急に腕が柔らかくなり、 惣太郎の脱がすのに従順に協力をした。
「私は浩二さんを拭いてやりますから、奥さんはお願いします」

二人の身体をそれぞれ拭っている間にも、浩二も冴子も、惣太郎と田宮の存在には気が付かなかった。気が付かなかったというより、混濁した意
識の中で、判断力が欠如しているというのが正確かも知れない。
押入から布団を出して敷き、二人を転がすようにしてその上に寝させた。

二人の体が接触すると、もう浩二の陰茎は勃起しはじめ、手探りで冴子の躯を需めていた。
やっと冴子の躯に掌が触れると、とたんにしがみついて挿入もしていないのに腰を揺する。
冴子の方も浩二の躯が触れただけで、もう奇声を発していた。惣太郎が冴子の乳房を軽く揉むと、冴子は耐えられないといった表情で吐息をつく。
田宮が冴子の股間で方向を見失っている浩二の陰茎をつまんで、まだ濡れて光っている冴子の陰唇に当てがってやると、浩二は自分で見つけたよ
うに、巧みに腰をひねって冴子の中に深々と挿入した。

冴子が静寂を裂いて咆哮した。
惣太郎と田宮は無言のまま二人の狂った性宴を見守っていた。
意識も朦朧とするほど酔いしれているのに、どうして浩二の陰茎はこうも猛々しく屹立しているのだろう。先ほどほど激しい抽送運動ではないが、
完全に勃起した巨根が、確実に冴子の中に出入りしている。冴子も浩二の動きに呼応して、腰を突き上げ身をよじって感じている。
ただ冴子の咆哮が遠慮のない大きさになって、深夜のしじまをつんざくようになって、これでは近所に漏れ聴こえはしまいかと、惣太郎をはらはらさ
せる。

「性の刺激と言うのは脊椎神経が中心だそうです。全身麻酔に患者が、うわごとを言ったりするのもそうらしいですね。だからいまこの二人は、純
粋に官能の悦楽のみを感じているのでしょう。もう我々では、ここまで深酔いしますと、脊椎神経まで麻痺してしまってこうはいきません。羨ましいで
すね、若さというものは………」

浩二が二度目の射精を終えたのは、それから一時間くらいたってからだった。
さすがに前の時のような激しいものではなかったが、冴子の方は、前の時よりも更に乱れた。官能に煽られて、もう身の置き場もないように悶え叫ん
でいた。  
「これで明日目が醒めたら、二人とも何も覚えてはいませんよ。きっと………」
田宮が、さすがに今度は意識不明のように、鼾をかいて寝ている浩二を見ながら言った。浩二が離れても、開いた脚を閉じようともしない冴子の股
間からは、今度も大量の精液が溢流していた。
  1. 2014/12/03(水) 08:04:45|
  2. 花濫・夢想原人
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花 濫 第6章悪魔の宴1

田宮と惣太郎の、悪魔の打ち合せがおわりかけた頃、浩二が新しいブランデーの瓶と、燗をした銚子を持って入ってきた。乱れたま
ま出て行った浴衣が、着付けでもしたようにきれいに整えられている。誰がみても冴子が着せ直したことが判る。                                  

「ママは、つまみを造ってから着替えてきますって……。この日本酒はパパが今日千葉でもらってきた吟醸酒だそうです」
「ああ、これはねえ、館山の造酒屋がくれたもので、大きな樽で醸造したものを、そのまま上澄をすくってくれたんだ。だから正式には
濁り酒だ。しかし、生地の酒はうまいよ。重かったけど、三本もらってきたから、思いきり呑んでくれ」
惣太郎は、田宮と浩二のどちらにともつかずにいうと、まず田宮に銚子を向けて、促すように銚子をしゃくると、田宮は小さく頭を下げて
猪口を差し出した。

「おまえはコップの方がいいだろう」                   
惣太郎は、浩二の前のコップに、田宮に注いだ残りを全部空けながら、いよいよこれからはじまる悪魔の宴に、自ら飛び込んでいく決
心を、もう一度確認した。                                  

男三人が、最初の酒を毒味でもするように、黙したまま口に含んで 吟味していた時、冴子が、淡い茶色のハウスコート姿で入ってきた。
先ほどの事は忘れたようにに華やかな微笑をたたえてる。手には大きなガラス容器を持っていた。  
「さあ、今日は浩二さんの帰朝のお祝いですから、お刺身をいっぱい造りましたの。そしたらパパが、また気をきかせて、千葉か伊
勢海老をこんなに買ってきたのよ。パパのは全部生きていたの。さあ、浩二さん海老は好物だったでしょう、召し上がれ。ほら、こちら
にあわびもあるわよ。頂く?」

取り箸で、浩二の前の小皿に取り分けてやりながら陽気に冴子が言った。襟もなく、首の周りを丸く裁断しただけのハウスコートは、
薄茶色に濃い茶で木の葉をあしらった模様の木綿地の薄いものだった。
一枚の布を前でちょっと合わせただけのように、上から腰の辺りまでがスナップで止めてあるたよりなさである。手を触れただけで、は
らりと開いてしまいそうな、その頼りなさがなんとも艶っぽい。裾は踝近くまであるが、横は割れていなくて、前合わせのスナップが腰の
上までしかないので、椅子に座ると前が割れて、艶やかな膝小僧から太股の奥までが覗いてしまう。

冴子自身それが気になるのか、前が割れる度に慌てて合わせているのがかえって扇情的で、男心をそそる。普通では他人の前で着
られるものではなく、個室でのナイトガウンである。冴子は夫以外の男の前で自分から、こんなはしたない着衣を冴子が自発的に着るよ
なことは絶対にない。       
実 は今夜は惣太郎が冴子の厭がるのを無理に着るように命じていたのである。下にブラジャーもスリップを着けることも禁じてあった。
下穿も最初は穿かないように要求したが、さすがに、冴子は応じなかった。それでは腰に線の出るものはやめて、小さなスキャンティ
ーを穿くようにいってあったから、きっとそうしているに違いない。

この服は、先週、学園で開かれたバザーで惣太郎が買い求めて来たものである。生活学科の女子生徒が創ったもので、同じスタイル
の色違いを自ら着て賣っていたのをが、惣太郎の目に留まった。
前のスナップの合わせを臍のあたりから下は外して裾を風になびかせていたので、小麦色に日焼けした弾むよう女子学生の太股が妙
に色っぽく惣太郎の目を刺激した。

惣太郎は、ふと、その女子学生を妻に置き換えて眺めてみた。むちむちと熟しきった柔らかそうな躯の、色の白さが、首筋から胸へかけ
ていっそう透き通るよな妻は、肩も腰も腿も、躯のどこをとっても、まるくなめらかで色白だ。その妻がこれを着ればどんなに艶っぽいだろうと、
思った時、惣太郎は、これを着た妻に魅了されて言葉もなく夢中で妻を抱き締めようとしている田宮の姿が忽然とうかんできた。

寵愛する妻は、他の男に対しても限りなく魅力的な存在でなければならない。妻を与えた男が、妻にひれ伏し、魅了され、盲従するか
らこそ夫である自分は優位であるのだ。もし男が不能の男の妻を慰めてやっているのだという立場になると、自分はどんなに惨めだろうか。

幸い田宮は妻に完全に魅了されている。しかし、慣れとは恐ろしいもので、田宮が妻の心と躯になれてしまえば、後者の態度に出ないと
も限らない。そのためには、手を変え品を変えて、妻は田宮の前で、いつも新鮮でなければならない。
惣太郎は買ってくれとせがむ女子学生に、親戚の娘にでもやるか、と照れを隠して買ったのだった。

田宮と浩二の視線は、妻が、ともすれば割れる膝を合わせる度にそこに釘付けにされている。
惣太郎は、恥ずかしい思いをしてまでそれを買ってきたことに満足していた。
「うまいですねこの酒は……。燗もいいけど、原酒は冷やがいいかも知れませんね。奥さんすみませんが、氷と瓶を持ってきてくれませ
んか」
惣太郎は田宮を凝視した。よく冷やした酒は、水を呑むようにすいすいと呑めて、後でどっと酔いがくる。冷静に悪魔の宴を開くべく、着
々と大胆に準備を進めていく田宮に、犯罪馴した凶悪犯にでも押し込まれて、脅されているような恐怖を惣太郎は覚えていた。

田宮は勧め上手だった。一時間もたつと、浩二は英国の歌を、まるで学生の応援団のように高吟しはじめた。酔いの回ってきた証拠であ
る。
やがて、大胆にも惣太郎や田宮の視線も気にせず、冴子がはだけた膝にじかに掌を置いたりするようになった。酩酊してきたのだ。
冴子も田宮が酒を勧めても三度に二度は、酔ってしまうからと受け付けなかったのが、やがて三度に一度しか拒否しなくなり、冴子が酔った
特徴である鼻声になりはじめた頃には、頬も紅をはいたように艶やかで、目がしっとりと潤んで、田宮が差す度に呷るようにして杯を空けるよ
うになった。
冴子は動作も緩慢になり、裾のスナップが外れて、艶やかな膝小僧や太腿が露わになっているのも気付かぬほどに注意力も散漫になっ
ていた。

浩二が大きな声で話ながら、机の下で隠しているつもりで、冴子の露わになった太股に置かれているのが、実は惣太郎からも田宮からも
よく見えたいるのだが、それに冴子も浩二も気付かぬほど酔いが回っている。
ほの昏いフロアスタンドの明りが、そこだけ光を集めているように、艶やかに白く輝く冴子のむっちりとした膝に置かれた浩二の大きな掌は、
膝小僧のあたりにじっと置かれていて、笑いや言葉のはずみに、あたかも、偶然掌が滑ったというようなあどけなさで、膝から太腿の上を、す
っと愛撫している。浩二の女ずれしていない純情さが、その掌の動きにもよくあらわれている。

杯を片手に持って、じっとその掌の動きを眺めていた田宮が、じれたように言った。
「さあ、浩二君、奥さんと踊るかい。もし踊らないなら僕が踊れたいんだが……」
けしかけるような田宮の言い方だった。
「田宮さんは駄目ですよ。ママに悪い事するから。僕が踊りますとも……。僕が帰ったからは奥さんにあんなことさせませんからね。……
ママ……もうだいじょうぶですよ……僕が守って上げますからね……さあ、踊りましょう……」

冴子を抱くようにして、浩二が無理槍立ち上がらせた。冴子の脚が机の下で無理に開いて、前合わせのスナップが飛んで、白い絹のスキャ
ンティーが、股間に食い込んでいるのが見えたが、冴子も酔っているので気付かない。      
冴子の脚がふらついていた。                     
浩二にすがるようにして立ったが踊ることもできない。
「浩二さん、駄目。酔ってしまって踊れないわ……」
冴子は甘えた口調でいいながら、浩二の躯にしがみつくようにして、やっと立っているという状態だった。
「大丈夫だよママ。こうして踊ればいいんだ………」

浩二が冴子の背中に両腕を回して自分に強く引き付けて、足は動かさずに腰だけをゆっくりと左右に動かせた。それを眺めている惣太郎と
田宮からは、冴子の着た薄いコートが、浩二の力で前に手繰り寄せられてしまい、太っても痩せてもいない頃合の冴子の女らしい背中が、正
中線のまっすぐな凹みまではっきり見えていた。腰から臀の隆起も、薄い布地が、まるで冴子の皮膚のように張り付いていて、盛り上がった肉が、
浩二の動きに合わせて、くりくりと動く様子が、直接裸体を見るより扇情的だった。                      

浩二の肩に額を押し付けるようにして顔を埋めているので冴子の表情は見えないが、浩二は冴子の左耳のあたりに顔を擦り付けて、髪の乱
れた首の辺りに唇を押し当てて目を閉じて陶酔の表情で踊っていた。
腰だけ小さく左右に揺らしていた浩二の動きがしだいに大きくなり、左右の運動だけではなく躯全体を、冴子に強く擦り付けるようにして、前
後左右に円でも描くように強く大きく動かせはじめた。ささやくようなCDディスクの音楽の流れの合間に、ぷつんと、聞き取れないほどの小さな
鈍い音で、冴子の着衣のスナップが飛ぶ音が、惣太郎の耳に、心臓に突き刺さるような強さで響いていた。

スナップが外れる度に、冴子の前ははだけられて、浩二はそこに自分を密着しているに違いなかった。            
何度目かにその鈍い音を聴いた時、平静を装えなくなって、身を椅子から乗り出すようにして二人を凝視した。きりりと着直した浩二の浴衣の
胸は、だらしなく肌けられていて、そこに冴子が顔を埋めている。先ほどまでまるで冴子自身の肌のように密着して、臀の丸味から背中の正中
線まではっきりと見せていた冴子の着衣も、くびれた細い腹の辺りが、前で引っ張られているように肌に密着している以外は、余裕たっぷりの着
衣のように躯の線を隠しているということは、前が肌けられて腹のところでわずかに残りのスナップが留まっているだけではないだうか。                               

いま、ふたりの肌は汗ばんで直接密着しているに違いない。冴子は股間に薄いスキャンティーを透して浩二の怒張したものを突き当てられて
を感じているのだろうか。また裸の乳房は浩二の熱い胸に直接触れて押しつぶされているのだろうか。浩二も又、冴子の柔らかい肌を熱い体温
と湿ったような感触を味わいながら陶然となっているのだろうか。惣太郎の狂うような昂ぶりも知らぬ気で、二人はしっかりと密着したまま、声も出
さずに搖れていた。            

「浩二さん……… それ……いやよ……」                 
あとは含み笑いした冴子のささやくような声がして、抱き合った二人が大きく搖れた。
視ると冴子の胴抱き締めていた浩二の腕が、いつのにか解けて、片方が冴子の股間に当てられたらしい。
冴子が腰を浩二から大きく引いたと思うと、急に大きな笑い声をたてながら浩二からはなれて、その場にしゃがみ込んでしまった。                                 

 
「駄目だよママ………」                        

浩二がしゃがんだまま着衣の前を合わせている冴子の斜め後ろから、冴子の両脇に腕を差し込んで抱え上げた。
力が抜けて人形のようにぐったりなった冴子が、足先を残して斜めに引き上げられる時、着衣の前の臍から下がはらりと開いて、スキャンティー
けの、むっちりした下腹やすんなりした脚があらわになって、灯を集めて白く浮かび上がった。
浩二が慌ててはだけた冴子の前を合わせようとしたが、薄い着衣は生き物のように冴子の裸身を包むことを拒否して滑り落ちた。 
浩二が引き擦るようにして冴子を惣太郎が腰を下ろしているソファに坐らせると、冴子は緩慢な動作で自分で前を合わせながら、              
  
「あなた………お水飲みたいわ」                    
しなだれかかりように惣太郎の肩に汗ばんだ顔をもたせかけた。多すぎる髪が惣太郎の顔に触れて、そこから甘酸っぱい女の発情の体臭が
惣太郎の鼻腔に強く匂っていた。      
「浩二君、さあ、この水を飲ませて上げなさい」
落ち着いた抑揚のない田宮の低い言葉に、惣太郎が田宮に視線を移すと、田宮は、大きなコップによく冷えた酒をなみなみと注いで浩二に差
し出すところだった。田宮とは一体どういう男なのだろうと、惣太郎は付き合い慣れた田宮をはじめて視る男のように疑念の眼差しで凝視していた。

たしかに、自分と二人で企んだ悪魔の宴を、彼は忠実に実行しているのだ。
二人が完全に酔えば愛し合うという条件を二人で確認し、そうすることにしたのだ。しかし、二人はまだ完全に酔って理性を失うまでに至ってい
ない。とすればもっと酔わさなければならないのだから、田宮が酒を勧めるのは、しごく当然の約束の履行である。だが、いま、妻は、喉の渇きに
水を欲しているのではないか。
それを酒に換えて騙してまで飲まさなければならないのだろうか。

田宮の先ほどからの冷静すぎる行動は、妻に魅了されつくしている男のとる行動だろうか。
田宮は不能の先輩の妻を、主人の了承の上で味わい、それに飽きた矢先に、馬鹿な主人は、またと見られない若い男と人妻の性交場面を見
たがっている。
この滅多にないチャンスを逃がす手はない。この際、何がなんでもこの人妻と青年を酔わせて、たっぷりとその濡れ場を鑑賞しなければ損だ。
まさかとは思うが、田宮はそんな凶暴な心境で事を進めているのではあるまいかと、惣太郎は疑ったのだ。         
もしそうだとすれば、この宴は中止しなければならない。         

そんなことを考えている間に、何も知らぬ浩二は、気安く田宮からコップを受け取ると、                                
「はい、ママ………」                         
冴子の顔にそのコップを突きつけた。                  
両手でコップを受け取った冴子は、そんな疑惑など全く感じてはいず、酒の冷たさにごまかされて、一気にうまそうに喉を鳴らしながらそれを飲
み干して、  
「ああ、おいしいわ、浩二さん」
と吐息をついた。
 
「そろそろ休みませんか」                       
田宮の声で惣太郎は目を覚ました。目の前の椅子で、田宮がまだ一人で杯を空けていた。その横の椅子では浩二が背もたれに埋まるような
格好で口を開けて鼾をかきながら眠っている。横では冴子が、惣太郎の方に、縮めた脚を向け、頭を向こうの肘掛けに横向きに載せて眠っている。                
「もう何時になった?」                        
惣太郎が聴くと、        
「一時過ぎました」                          
田宮が昏い奥から答えた。

あれから雑談をしながら、田宮が妻と浩二に酒を勧めていた。真っ先に浩二が眠った。田宮が冴子に、自分と妻の出会いの頃の話をさせてい
たのを覚えている。
話は新婚旅行の話から初夜の様子に移り、それが本当にはじめてか、とひつっこく田宮が冴子に聴いていた。何度も、本当にはじめてかと田
宮が聴き、鸚鵡返しで、そうよ、と妻が答えていた。
 
呪文のように、田宮が抑揚のない声で聴き、妻が呪詛にかかったように力なく答えて、その合間に、田宮が巧みに妻に酒を勧めていた。その単
純な催眠術師のような問答は、醒めた田宮が冷静に妻の酔い加減を測定しているのだろうと思いながら惣太郎は聴いていたが、そのうち眠ってし
まったらしい。                      

今一時だとすれば、一時間以上眠ったことになる。その間、田宮は一体何をしていたのだろう。そこまで考えた時、惣太郎の胸に、ある疑念がに
わかに浮かび上がってきた。                              
「君は今の間に冴子と……………」       
惣太郎は田宮に思わず聴いた。聴きながら自分が意志とは無関係に、田宮に随従するように、思わずにんまりと好色らしく笑いかけたのを、
内心苦々しく思った。                                  
「ええ、奥さんの寝乱れ姿が、あまり色っぽくて我慢できなくて…… すみません」                                 
「何も謝ることはない」                        
「ちょっとですけれど……」                     

何がちょっとだと、内心の腹立たしさを押さえて、反射的に冴子の顔を見た。
長い睫毛をしとやかそうに伏せて、妻は眠っていた。顔はやや汗ばんで、ほつれ毛が額に張り付いており、眉と眉の間にわずかに苦悶か快楽
を味わってでもいるような縦皺が刻まれている。
終わった直後でないことはわかるが、妻の表情には、まだ充分に余韻が残っていると惣太郎は思った。               

「ここでしたのかい? それにしては俺も、よく眠っていたものだな」   
惣太郎は平静を装って聞いた。                      
「いえ、そこの絨毯の上です。………途中で、私ではなく浩二さんだと勘違いしたようで……さかんに浩二さんの名を呼んでました」  
「浩二と思っても、別に拒否しなかったというんだな」
「ええ、拒否どころか、かえって興奮して………、応じ方といい、声の出し方といい、それは大変でした……。私との時との較ではありませ
ん」       
「そんなに浩二としていると思って興奮したかね。こいつは、そんなに浩二が好きなんだろうかね」                          

惣太郎は嫉妬ではなく、ある安堵感を抱いて田宮に訊いた。それは、今夜、はっきりと田宮に感じていた恐怖と嫌悪感がそう思わせたのだっ
た。いまの田宮の立場で彼が自分を裏切ることはあり得ない。
自分が田宮を学会で誹謗すれば、彼の言語学者としての社会的地位を喪失差せることも可能である。しかし逆にこんな自分の個人的秘密
を握られたことによって、田宮の無言の圧力と要求に応じなければならなくなることだってあり得る。
現実に田宮は、いまは助教授だが、国内のどこかの大学の教授になって箔をつけてからアメリカへ帰りたいと考えている。自分が推薦すれ
ば、地方の私立大学なら、いますぐにでも教授になれないこともない。要するに田宮は自分達夫婦の性の愛玩物にするには、あまりにも世慣
れすぎていた。                             

それに比較して、浩二は世間も知らない若竹のような素直さで、人を疑うことも知らない。もし、いまの田宮の言葉が本当だとすれば、冴子も
浩二が嫌ではない。浩二が妻にぞっこん惚れていることは、今までに充分証明されている。  
こういう危険な遊戯には、一抹の嫌疑でも感じる人物を交えてはいけない。
惣太郎は、本能的に田宮に危険なものを感じていた。             
そうなると、今夜の機会を逃して、妻と浩二を結び付ける機会がないとはいわないが、それには、また大変な時間と気苦労とエネルギーを費
やさなければならない。そうだ、やはりこの機会に妻と浩二を結び付けて、田宮を遠ざけるのが賢命だと惣太郎は思った。そう心に決めると、気
が楽になった。         

「ほんとうに、こいつは浩二が好きなのかねえ」             
惣太郎は、自分のすぐ傍に、揃えて投げ出されている妻の、薄いマニキュアに貝細工のように美しい爪の輝く足先を愛撫しながら言った。す
んなりとした形のよいふくらはぎを重ねて、膝で折り曲げ、その奥にむっちりとした太股が着衣の奥に蠱惑を秘めて盛り上がっている。
この美しい妻の躯が、いま田宮に犯され、やがて若い浩二の餌食にされるのかと思うと、毒を呷っているような被虐の悦楽感と、臓腑が空にな
るような加虐の昂ぶりと、一夜に二人もの若い男から妻自身が味わう享楽の激しさとの入り交じった倒錯の喜悦に、惣太郎は目舞がするような興
奮を覚えて、思わず、妻の薄い着衣の裾を開いて、その奥まで手を差入れて愛撫した。

「そのままにしてあります………」
田宮が羞恥を含んだ言葉使いで言った。惣太郎は男の体液を受け入れたばかりの妻の熱湯を溜めたような膣を好んだ。
自分より強壮な男を受け入れて、歓喜の絶頂を迎えたばかりの灼熱の余韻がまだふつふつとたぎっている妻の躯は、挿入した瞬間に、再び
燃え狂い、先ほどの若い男との狂乱が、一時中断の後、再び続行されているようで、まるで最初から自分が妻を徹底的に狂わせているような優
越感に浸れたし、また、まだ妻の体内で、体温まで温存して襞の隅々にまでたっぷりと溜っている前の男の精液が、自分の陰茎に纏つくことで、
その妻を犯した男と一体になったような錯覚が生じて、その男を嫉妬したり恨んだりする感情が消え去っていくのだった。                        
 
妻が穿いていたスキャンティーは取り去られていて、なにも着けていなかった。
股間に掌を進めると、太股の内側から臀の割れ目にかけて、二人の体液と汗がべっとりと濡れ付いていて、田宮との情交の後を歴然と示して
いる。
さらに掌を進めると、そこは粘膜が溶けてしまったかと錯覚するほど柔らかくなって、粘質の熱い液が底無し沼のようにたぎっていた。
惣太郎がその沼の奥に指を突き入れようとしたとき、冴子が広げた脚をよじったて、呻き声を上げた。                        
「浩二さん………。浩二さん………」
自分の胸を掻き抱くようにして、冴子が小さく言ったのを惣太郎は確実に聞いて、慌てて掌を引っ込めて、反射的に田宮の顔を見た。

「どうします?……もし実行するなら今がチャンスですが……。これ以上間をおきなすと、二人とも本気で眠ってしまって、朝まで起きません。
酔いが深くなりますから…………」
惣太郎は妻の顔を見てから、椅子にもたれて眠っている浩二を視た。先ほどまで青かった妻の顔に朱がさしていた。前をはだけて、琥珀色の
すべすべした艶のある贅肉のない締まった浩二の躯は、幼さを残した若さに輝いている。     
「どうしますか」
田宮がまた惣太郎に尋ねた。田宮の声が自分の殺生与奪の権利を握っている権者のように惣太郎には聴こえて、畏怖の念を感じた。
惣太郎は声が詰まって、思わず田宮の目をのぞき込むようにしてうなずいた。 

「さあ、もう寝ましょう。…………奥さん寝ましょう」
田宮は 椅子から立ち上がって、それでも起きようとしない冴子を揺り動かした。冴子が目を覚ますらしく、躰を動かしはじめると、田宮は妻の
躰の向きを浩二の方に向けて、ぽんと肩を叩いて、
「さあ、もう寝ようよ」
と言った。冴子が、何に刺激されたのか、慌てて起き上がると、
「あら、もうそんな時間? 困ったわ……あたし……。田宮さんの布団はお二階に用意してますけど、浩二さんのはまだ用意してないわ。すぐ
しますから浩二さん暫く待ってください………。ねえ、あなた……、隣の和室でいいわね、浩二さんが休むのは………」
酔いの回ったたどたどしい言葉で言ったが、立ち上がる気配はなく、裾を乱したままソファに腰を下ろし目を閉じたまま、まだ夢の中のように呆
然としていた。 

「俺が布団敷いてやろう……」
立ち上がりかけた惣太郎を田宮が制しながら、まだ眠り呆けている浩二の肩を強く揺すった。
「おい! 浩二さん、みんなもう寝るんだが、君はどうするんだい……このままここへ寝るのかい? 」
「いいえ、疲れて帰っているんだからちゃんと寝なきゃいけませんわ。すぐ支度しますから………」
冴子がふらふらと立ち上がりかけたが、すぐふらついて部屋の壁に手を突いて支えた。
 
「奥さんが支度してくださるそうだよ。君も早く起きて手伝わなくてはいけないよ。ささ……隣の部屋に行きなさい」
田宮が引き起こすようにして浩二の腕を取って引っ張ると、驚いたように浩二が目を開けて、じばらく周りの様子を窺っていたが、
「僕が自分で布団を敷きますから、ママ布団のあるところだけ教えてくださいよ………さあ、行きましょう……」
冴子に寄り添うと、冴子の肩を抱くようにして部屋を出て行った。それを追いかけるように田宮が追っての悪魔のように後につづいた。                            
  1. 2014/12/02(火) 15:44:49|
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花 濫 第5章三人の男の前で3

惣太郎は、残った田宮と浩二の顔を見た。二人は黙したまま、申し合わせたように下を向いてブランディーを呑んでいた。
瞬間、惣太郎はただならぬ気配を感じ取った。田宮が憤っているのでもなければ、浩二が笑っているわけでもないが、惣太郎は二人の
男の間に、強い電流が流れ合って火花を散らしているような異常な高ぶりを感じた。抗争を秘めた男同士の昂揚した感情だけではない。
むしろ欲情に取り憑かれた雄の発情の炎のたぎりのような、陰湿な激情が混じっていた。

瞬間、惣太郎はいけないと思ったが、次の瞬間に、この逞しい男二人に蹂躙される冴子のみだらな肢体を想像していた。
浩二さえ納得すれば、冴子をこの二人の男達に与えることが出来るかもしれない。浩二の方が若いから、我慢出来なくて先に冴子を貫
くだろう。その間、田宮は、貫かれて激しくもだえるさえこの裸身の上半身を受け持って、乳房を愛撫しているかも知れないし、もしかしたら、
大きく口を開けて喘いでいる冴子に、屹立した自分の男根を含ませるかも知れない。

生まれて初めて、二人の男を相手にする冴子は、とてつもない官能に身を灼かれて、無我の境地でどんな姿態でのたうちまわるだろうか
という、途轍もない妄想が、泥水のねばっこい渦に巻き込まれるように沸き上がってきた。。
う考えると、浩二に両脚を担がれ、激しく貫かれて肌が打ちあたる音や、浩二に揺らされながら、胡座を組んだ田宮の膝に頭を載せて、
勃起した田宮を咥えて、長い髪を田宮の膝いっぱいに散らしている様子までが、現実のことのように思われて、一人激しい鼓動の 高なり
を感じていた。

浩二が椅子から立ち上がった。
[
トイレに行ってきます。水も飲みたいな……………」
独言のように言って部屋を出て行ったが、惣太郎にも田宮にも、そわそわと落ち着きなく出て行った浩二の様子が、冴子の身を案じて出
て行ったということがはっきりと感じられていた。

惣太郎の現実と非現実の入り交じった想念は、浩二が出て行ったことで現実に立ち返った。
浩二は現に冴子と特別な関係があるわけでもなく、どうこうするといってもいまロンドンからはるばる帰ってきたばかりであるし、先ほど見
た田宮と浩二の激しい対抗意識では、二人で一人の女と同衾するなどという、仲のいい友人同志でも、滅多に出来ることのないことが、実
現できるわけはない。

例えこれから幾日か時間をかけても、出来そうには思えなかった。第一冴子が承知するはずがない。
今夜は浩二が寝た後、田宮に冴子を任せれば、いつものとおりに惣太郎が一寝入りしている間だに、二人は激しい性宴を繰り広げるだろ
う。
それを覗き見て自分の性感を高めておけば、官能の炎をまだかき立てたままの冴子が惣太郎の部屋に帰って来る。惣太郎は無駄な精力
を消費しなくても、冴子をいとも容易に狂わせることが出来るし、田宮との交わりで、すっかり練れ溶けた冴子の熱い躯に満足できるのだ。

田宮に今夜の予定を告げようとした時、田宮の眼鏡の奥の眼が、一瞬きらりと光ったのを惣太郎はみた。
田宮が指を自分の唇に当てて、聞き耳を立てるよう無言のままで惣太郎に指示しながら、中腰になって部屋のドアに向い、音を立てない
ように慎重に少し開けると、窺うように首をそっと突き出した。

森閑とした廊下の暗闇に、ガラス戸に人の躯が当たる鈍い音が聞こえた。なにか争っているような気配である。耳に掌を当てて神経を集
中させて聞き入ると、言葉は判らないが、浩二の低い声が冴子に何か訴えているように聴こえ、その合間に冴子の短い声が聴こえた。
二人は風呂場の脱衣場にいる様子である。

しばらく静寂が闇を包んだが、やがて、壁に当たる鈍い音がしたかと思うと、ママ、ママと浩二が何か冴子にせがんでいるような甘えた声が
聴こえ、冷たい空気が淀んだ廊下の向こうで、何かただならぬ事が行われている気配が伝わって来る。
あの二人は好き合っていますね。……実際にどうかは知りませんが、少なくとも感情の上では、互いに憎からず思っていますね。……
先程、僕が余り露骨な態度をとったので、浩二君が逆上したのではないでしょうか」
「妻を責めているのかね」
「わかりませんが、浩二君が奥さんに、何か訴えているのは確かですね」


「君はもし、浩二と妻がそうだったら嫉妬するかね」
「全く嫉妬しないといえば嘘になりますが、先生は怒られるかも知れませんが、もしそうだったら僕は安心しますね」
「安心する? どういう意味かね」
「前に先生ご自身がおっしゃったことですが、奥さんは若いんです。これは私と先生の罪ですが、何も知らなかった奥さんに、性の深淵を
見せてしまいました。
奥さんがふしだらとかいうのではなく、若い躯が異性を需のは人間の本能ですから、いま奥さんは初めて知った官能の業火に魅せられて
しまっています。本来なら、それが夫婦生活で解消するのですが、ここはそうはいきません。

そこで先生は私を代理の夫に選ばれたわけです。そのこと自体は、私も夢のように喜んでいますが、問題は、私がアメリカへ帰った後です。
こうして寝床を共にしていますと、しだいに奥さんの純情さが判ってきたんです。愛情を感じだしたといってもいいでしょう。生涯味わうこと
がなかった筈の歓びを知ってしまった奥さんが、僕が帰ったらいったいどうして、若い躯を処置するかと心配だったんです。
もし浩二君とそうなれば、彼の人柄からしても、妙な方向へ走る心配はないし、いいなあと思ったんです」

「なるほど。俺も、実は、先程、君と同じ事を考えていたんだ」
惣太郎は、この三人の男の中で一番悪魔に魅いらられているのは自分だと思った。
いま風呂場で妻に何かを迫っている浩二にしても、ここにいる田宮にしても、冴子という美しい人妻を、亭主の軟弱さにつけこんで頂いて
やろうというような邪念に満ちた醜行を図っているものは誰もいない。
たしかに冴子という若く美しい人妻の躯に惹かれているのは事実だが、彼らには有り余る精力が備蓄されていて、冴子一人と交わることぐら
い、さして肉体的には問題ではないのだ。

それに引き換え、自分はどうだ。
自分が好きで娶った若い女房すら満足さしてやることが出来ないで、他の男に頼らなければならない。
だが、一方、冴子の方はどうだろう。惣太郎は女にとって愛とはなんだろうかと、いままで冴子の変貌を見ながら考えてきた。
あの清純な心と躯を備えていた冴子が、田宮といとも簡単に関係をもってしまったのである。田宮がどういう過去を持つ人間か、どういう立
場にいる人間か、よく知らないで、田宮に愛情を感じたのであろうか。果してこれは愛といいえるのだろうか。
どう考えても冴子が田宮を愛したとは思えない。食べず嫌いの料理を、ふとした機会に食べて魅了されることがあるのと同じではないか。
ふと魅了されるように、冴子はふと田宮という若い男性の肉を知って、それが若い女である自分にふさわしいと悟り、それにすっかり魅了され
てしまたのであろうか。                

いまではもう夫が自分に田宮という若い男を与えて、性の歓びの本質を知らせてくれたことはわかっているだろう。
彼女にとって、それは目の鱗がとれたような驚嘆だったに違いない。
この世に普通に存在し、たいていの女なら、必ず体験する性の歓びを自分は知らなかったことにたいして、夫が与えた男によって、はじめ
て知らされたことに、いま冴子は夢中になっている。
それが不倫であり、不貞であり、常識を逸脱した異常な行為であることを冴子は充分承知しているが、与えられたものの麻薬のような魅
力には勝てなかったのだ。
夫が与えてくれたという大義名分は、冴子から女特有の責任回避行為として、自己暗示的な正当性理論が成立して、不倫という背徳の
暗い翳を消し去り、素直に夫の従う従順な人妻としての安穏を得ているのだ。

しかし、田宮との交わりは、若い一対の男女としてありうべき行為であるけれども、さらに、もう一人の、それも、まだ二十そこそこの童貞の
青年の情熱にたぎり切った、獣のような向こう見ずの若い男を与えるということは、冴子を性のいきにえにして狂わしてしまうということになり
はしないだろうか。

これから女を識る浩二は、自分が若かった時そうであったように、冴子を識れば、当分の間冴子を需め続けるだろう。それも常軌を逸脱
した執拗さで需め続けるに違いない。
田宮のように節度があって、週に一回とか、月に二回とかいう節度で、冴子を満足さしてくれればいいが、浩二の若さでは、当分連日でも
しなければおさまらない状態が続くのではないか。そして、男と違って需られれば、生理的に応じ、それが、どんなに凄強であっても、強烈
であればあるほど、敢然とそれに呼応していくように創られているのが、健康な若い女の業である。

もし、冴子に浩二を与えた場合、二人は、互いの若さをぶつけ合い、激しい官能の陶酔に、自分も、家庭も、浩二の仕事も忘れ果てて、
とんでもない行動にはしることはないだろうか。浩二の若い熱情に冴子が冒されて、自分から離れていくようなことはないだろうか。惣太郎は、
考えている内に、そら恐ろしくなってきた。

自分は、冴子を可愛そうだと思って、男を与えただけではない。    
田宮とのことで、垣間見た、若い男に貫かれて歓喜にのたうつ妻の白い躯に、初めて知った妻の女らしさ、新しい美しさ、妖艶さ、被虐
と苛虐の甘美さに、自分の妻の体内に眠っていた女の真随の美しさ、可憐さのようなものを識って、まるで識りはじめたばかりの女のように妻
に惚れなおしている。

だから、田宮を与えた後、二人の情交が重なる度に、しだいに官能の甘さに酔って乱れていく妻の姿態が、日毎に女らしさと妖艶さと、
意外なことに、妻の純粋さというような、精神的美しさのようなものまで発見して、自分は、他の男と狂う妻を盗み視ることによって、いやがうえ
に妻に没頭しているのである。
その妻を奪われてはならない。飼犬に掌を噛まれることもある。

「先生が、その気になられたのなら、実行するのは今夜です」
田宮がぼそりといった。
「何を実行するというのだ」
「あの二人を結びつかることです」
惣太郎は思わず息を呑んだ。もともと田宮にはいったい何を考えているか判断に苦しむような所があったが、今の田宮の一言は、惣太郎
の下腹にずしんと響いた。自分が考えていた殺人を見透かされて、手伝いましょうと切り出されたような衝撃でもあり、悪魔のささやきのよう
に痺びれるような蠱惑を秘めてもいた。

「何も急いで今夜しなくてもいいだろう」
惣太郎の声が、厭でもない男に迫られた女のように、拒否とも承諾ともとれる弱さで響いた。
「いや、チャンスというものがあります。そうお望みなら今夜です。任せて下い」
宮が共犯者のつもりが、いつの間にか、自分が共犯を迫られているような心境だった。おびえの底に胸の高鳴りがあった。
 
「任せるって、一体どうしようというんだ………」
惣太郎は、高台から海に飛び込むような気持ちで安全を確かめた。
「酒を呑ませることです」
「酒を?」
田宮は煙草に火を点けて、大きく吸い込みながら、はじめて惣太郎の眼をのぞき込んだ。その眼には、秘めた光が強く感じられた。  
「ただ、酒を呑ませるのです。奥さんも浩二君も酔わせてしまえばいいんです。理性さえなくなれば、二人は好き合っていますから自然と
そうなります。僕も昔、企まれたわけではありませんが、人妻と酔ってそうなったことがあります。朝起きて、一緒に寝ているので驚きましたが、
どうも一晩中交わり合っていたようでした。

浩二君の若さなら、どんなに酔って、意識が朦朧としても、そのことだけは可能です。けしかけもしませんし、誘導もしません。二人とも酔い
さえすれば自然とそうなります」
惣太郎は言葉を失っていた。ただ、胸の鼓動が早打ちして、逃れられない悪魔の言葉を聞いたように、愕然としながらも、既に心では、田宮の
誘いに乗っている自分を見つめていた。
  1. 2014/12/02(火) 15:40:36|
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花 濫 第5章三人の男の前で2

すき焼きの鉄鍋が、残り少なくなった具を載せて、ぐつぐつと煮返っていた。締め切ったキッチンルームは、肉と酒の匂いが満ちて、あ
たりには飽食の気分が漂っていたが、男三人は杯を持つ手を下げようとはしなかった。

正面に腰掛けた夫は、大島の着物の前を大きく広げ、胸の肌まで朱に染めて、胡麻白の長い髪を酔ったときの癖で掻きむしるようにし
ている。その隣の田宮は、浴衣の襟をきちんと締めて、まだ酔い足りないらしく、すっくと背を伸ばして端正な姿勢で、ひとりブランディ
ーグラスを気取った格好で嘗めている。
自分と並んで腰掛けている浩二は、浴衣の着方に慣れないらしく、だらしなく前を広げ、並んだ冴子からしか見えないが、膝の辺りは浴
衣が割れて脚がむき出しになっている。袖も肩の辺りまでめくり上げているが、それが若者らしく嫌味なく見えるのは、贔屓目だろうか。

楽しそうに談笑する三人の男達の、ふと、冴子を見るどの視線にも、冴子とその男だけに通じる暗黙の了解がある。それぞれの男の
視線には、肌を合わせ身体を溶け合わせた体験が生む狎れ合の情緒が溢れている。
特に浩二は、若いだけにその態度が露骨で、冴子をひやひやさせる。

「ママ少し肥ったんじゃないの。このあたりなんか肉付きがよくなって、とても女らしくなきれいになったね」
薄いブラウス姿の冴子のむき出しの腕を、二人の男の前もはばからずさすったりする。
「腕だけじゃない、胸も膨らむし、腰周りも大きくなったと思わないか? 」
そんな浩二をけしかけるように夫が言うと、白いブラウスの襟に紺のリボンを垂らした冴子の胸に、つと手を伸ばして触り、悲鳴を上げ
て胸を押さえる冴子より大きな声を出して椅子から飛び上がり、
「うわぁ、セクシー! 」
おどけて騒ぎまわる。

久し振りの日本酒にすっかり酔っての行動だが、若いだけに嫌味がない。夫も田宮も、そうした浩二の悪ふざけに嫌な貌も見せずに
笑っているのが冴子には救いだった。
「浩二さん。長旅で疲れたんでしょう。もうそのくらいにして寝たら……」
冴子が注意すると、
「なーに、へっちゃらですよ。一三時間のうち四時間は飲んでいたし、残りはほとんど寝てましたから……。そうだ、飛行機からかっぱ
らってきたシャンペンがあるんです」
浴衣の前が、ガウンでも着ているように開いて、トランクスだけの裸の前が見えているのも平気で椅子から降りると、ふらつく脚で、二
階に上がろうとする。

「おい浩二、今夜は田宮君が二階に寝るから、お前は下の八畳だ。冴子の部屋の隣だ……お前大丈夫か? 」
「二年ぶりに帰って来きたんです。今夜は楽しくやりますよ」
幾分あやしくなった呂律で、わめきながら部屋を出て行った。
「浩二君はここの二人を本当に肉親のように思っていて、まるで自分の家に帰ったような気分になっているのですね。特に奥さんには、目
がないようですね。憧れの女性といった感じですね」

田宮が煙草を挟んだ手にワイングラスを持って、冴子の貌を横睨しながら意味ありげに言った。紫煙のくすぶりで明瞭ではないが、田宮の
細い瞼の奥で、黒い瞳がきらりと光ったのを冴子は見逃さなかった。しかし利怜な冴子も、まさか先ほどの浩二との濡れ場を視られたとは気
付かず、田宮のするどい直感と思って、胸を突かれたような衝撃を感じていた。

「あら、こんなお婆あさんに、独身の若い子が憧れてくれるなんて光栄ね。でもそんなことってあり得ませんわ」
冴子は冗談めかして笑いながら言って田宮の目をのぞき込んだが、その目は微笑みの中に、冴子の言葉を否定する鈍い光を宿していた。
冴子は発作的に夫の表情を読み取ろうとして視線を夫の移したが、夫は昼間の出張疲れか、椅子の背に斜めに頭を載せて、うとうとと居
眠りをはじめていた。

「さあ、このシャンペンで再会を祝いましょう」
冴子の憂慮も気付かず、浩二が威勢よく、乱れた浴衣の前もそのままに、シャンペンを抱いて帰ってきた。
kou二の勢いに眠っていた夫も目を覚まし、ひとしきりの談笑が続いた後、応接間に部屋を換えた。冴子も、夫の勧めで台所の片付けはそ
のままにして、簡単なオードブルと洋酒を用意して仲間に加わった。               

夫が自慢のステレオ装置のスイッチを入れムード音楽を流した。田宮は相変わらず微笑の絶えない貌で冴子と浩二を交互に眺めながら、
静かにブランデーを嘗めていた。
「そうだ、久しぶりにママと踊ろうかな。ねえ、いいでしょうパパ」
浩二が立ち上がって冴子の前にきて言った。冴子が狼狽しながら前に立った浩二を見上げると、もう両腕を冴子の方に伸ばしている。冴
子はちらりと田宮の目を視てから夫の貌を見た。
「ああ、踊りたまえ。昔は飲むと二人はよく踊ったものだ。こんな老人と二人暮らしだろう。冴子も時には浩二のような若い男性の匂いも嗅ぎ
たいらしく、俺を無視して一晩中踊っていたんだ」
「一晩中はひどいわ」
浩二に引っ張られるようにされて、立ち上がりながら冴子がわざと陽気な声を出した。

八畳ほどの部屋に、応接セットとサイドボードを置いた残りの狭い空間に二人は立って身体を合わせた。
浩二はいつもの癖で最初からチークダンスをするつもりである。冴子の身体をしっかりと抱いて隙間なく身体を密着させた。誰かがスイッチの
スライダーを絞って部屋を暗くした。 余り絞りすぎて一時はすぐ前の浩二の貌も定かに見えなかったが、やがて程よい暗さに調節された。

喘ぐようなアルトサックスの調べが官能を揺するように流れていた。
浴衣の下はブリーフだけの浩二が、ゆっくりと腰をまわすようにして身体を擦り付るようにしてくると、スリップに薄いブラウスだけの着衣を通し
て、浩二の暖かい体温が直に触れているような感じで伝わって来る。
浩二は冴子の頬にぴったりと自分の頬を付けて、熱い息を冴子の耳に吹きかけてくる。この部屋の暗さと、襞の多いフレアスカートなので夫
や田宮に気付かれることはないと思うが、冴子の股間に押し込むようにいれた浩二の脚の付け根の勃起が痛いほどの強さで冴子の下腹を突
き上げている。

冴子は椅子に座っている二人の男の視線の強さを肌で感じて、大きくターンをして自分の背で浩二をかばった。
「今日はいやにおとなしいな。いつものようにチュをしてもいいし、どこに触ってもいいんだよ。田宮君がいるとそうもいかんかね」
夫が浩二をけしかけるように言った。
「僕はいっこうにかまいませんよ。むしろお二人の熱いところを見て、若返りたいくらいです」
 田宮が冴子の狼狽を見越しているように陽気に言った。

冴子には田宮の言葉が、背後から仕掛けられた矢のように突き刺さったが、何も知らない浩二は、鼻で小さく笑うと、声援を得たようににわ
かに大胆になって、冴子の背に回していた片手を離して、二人の密着した身体の間に折り曲げるように差入れて、冴子の乳房を押さえた。ブラ
ジャーのない薄い布を通して浩二は手に直接乳房を掬いとったような触感に、興奮を隠しきれず、思わず大きなため息をついた。      
浩二の大きな掌が、直接触れたように、彼の内部に渦巻く激情の熱のほとばしりを乳房に感じとると、自分の乳首がひとりでに、水を得
た花蕾のように自然に硬く膨らんで行くのを感じて、冴子も思わず身をよじっていた。

浩二の呼吸が荒く喘ぎ始め、初めはそっと置かれていた乳房を包んだ掌が、何時の間にか、ゆっくりと指に力を入れて揉みはじめている。
硬直し敏感になった乳首を浩二の二本の指が捕らえたとき、突き射るような快感が冴子の全身に奔って、思わず声が出そうになり冴子は大きく
息を呑んだ。浩二の唇が、長い冴子の髪をかき分けて耳朶を軽く噛み、冴子の敏感な耳の後ろを嘗めはじめた。
「いやよ浩二さん! 」
耐えられなくなって冴子が声を出した。

「なんだ、まだ未熟だなあ、それでは大人のダンスの見本を示すか」
冴子は背中に田宮の低い声を聴いて、思わず冴子は身を硬直させた。浩二は田宮の声を聴くと、にわかに冴子を解き放ち、何を考えたか陽
気に掌を叩いて、
「さあどうぞ。ゆっくり見せてもらいます」
はだけた裾のまま、どたりと椅子に座り、ブランデーグラスを掌に取ると、まるで水を呑むように干した。
  
「浩二そんな呑み方をして大丈夫かい? お前、酒は強くなかったんじゃないか。それともロンドンで修行してきたのかな? 」
夫がからかうように言うと、
「ええ、パーティーの多い仕事ばかりでして、いつの間にかスコッチの二本ぐらい平気で呑めるようになりました。酒とダンスは上達しまし
たが、何しろ誇り高い英国ではチークダンスなどしようものなら、ほっぺたを引ったたかれるのが落ちでして、チークはこの二年間一度もし
ませんでした。やはりダンスはチークがいいですね………」

浩二の言葉が最後の方で、突然消えた。酔いのためか眠さに勝てず、うとうととまどろみはじめていた惣太郎は、浩二の言葉が消える
と同時に妻の短い鳴咽をきいたような気がして目を開けた。
ほの暗い部屋にかすかにムードミュージックが流れ、すぐ前で、田宮が冴子を抱いて踊っている。いや、それは踊っているのではなく、
立ったまま抱き合っていると言った方がいいだろう。背の高い田宮が背中をまるめるようにして冴子に覆いかぶさるようにして接吻している。


直接愛撫している様子が、薄いスリップの半透明な布地を透して、淫らな指の動きまで見えていた。                      
冴子のブラウスの襟下の釦が、田宮の掌の強さに負けて、小さな音を立てて飛び散った。ほの暗さの中に、冴子の首から胸の肌が白く
浮きだしたように見ていた。田宮の掌が、ゆっくりと乳房を揉みしだいているさまが、豊かな乳房の裾野が、はだけたブラウスの間から、
盛り上がったり引き付けられたりする様子でよく見えた。                               

冴子が、痛みでも感じているように眉根に皺を寄せ、しっかりと眼を閉じて、白い喉を後ろに反らせて、貌を真上に傾けて、田宮の舌を
吸っている。
暗い部屋に真っ白く浮かび上がっている冴子の乳房が、田宮の掌の動きにつれて、別な生き物のようにさまざまに型ちを変えて揺らいで
いる。冴子の両腕は、まるで殉教者のように無抵抗の姿勢で、だらりと両側に垂らしたままだった。
田宮が、さらに背をまるめながら、合わせていた唇を、しだいに耳や頚に移していった。                               
田宮の顔が、肌けられたブラウスの間に埋まって、はっきりとは見えないが、ついに乳首を含んだらしいのが、腰を落とした田宮の姿
勢や、冴子がくぐもった呻き声をあげた様子で、じっと見つめている男二人には判った。       

惣太郎は、冴子の呻き声を聞くと、反射的に頚を曲げて、自分の斜め後ろにいる浩二を視た。
田宮と冴子の婬らな絡みを凝視していた浩二の視線が動いて、惣太郎の視線と絡んだ時、
「こりゃあ凄い! 」
おどけたように浩二が叫んだ。
その声に、冴子は、にわかに我にかえったように、だらしなく垂らしていた両手に力を込めて田宮の肩を強く押しながら、
「もうやめて! 」
哀願するように言って身を引いた。瞬間、肌けたブラウスから、豊満な乳房がこぼれ出たのが、浩二の眼にフラッシュライトに照射され
たように、しばらく残像となって灼き付いた。

「冴子は、突然の田宮君の猛襲に、唖然となったらしいな。それにしても、今のはパンチがあったなあ」
惣太郎が、囃すように言ったが、誰も応じて来ないので、ふと、三人の方に視線を向けた。冴子は、男達の視線から逃れるように背を
向けてしゃがみこんで、空になった食器を盆に載せると、音も立てずに静かに消えるようにドアを開けて部屋を出て行った。
  1. 2014/12/02(火) 15:38:51|
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花 濫 第5章三人の男の前で

 低空飛行の軽飛行機が轟音を頭上を雷鳴のよに轟かせて通り過ぎて、冴子は目覚めた。ダージリンの紅茶を嗅ぎながら、
庭の椿に視線を預けて、今日帰って来る浩二を想っているうちに、少しまどろんだらしい。

うらうらとした初春の陽光が、いつしか西に傾いてて、畳色の枯れ芝に、ひょろりとした葉のない雑木の陰が、縞模様を描
いていた。冴子が想いを断ち切るように、勢いよく立ち上がろうとした時、玄関でチャイムが鳴った。二、三度続けて鳴らす
訪問者が田宮であることは、冴子には手にとるようにわかる。                 
 
夫が今朝早く、千葉の私立大学に集中講義に行ったので、もしかしたら、田宮が来るのではないかという想いはあったけ
れど、田宮も仙台の大学に三週間ばかりの予定で出張していたので、冴子は浩二の帰国のことですっかり忘れていたのだっ
た。浩二のことがなければ、心をときめかして迎えに行くのだが、今日は複雑な心境だった。

 田宮とは、ここ一月以上会っていない。この前田宮が来た時には、丁度冴子が生理の最中で、夫と三人でマージャンをして
帰って行ったし、仙台に行く前日に来た時には、学生の親が来ていた。そんなことで、ここしばらく冴子は孤閨に疼く躯を押え
るのに悶々としていた矢先に浩二の帰国が知らされて、そんな衝動は朝靄のようにいつの間にか消え去っていた。          

 しかし、今日買い物から帰って、あられもなく自分の身体を開いて見たりした行為も、無意識のうちに欲求不満がそうさせた
のも事実である。

 割烹着のまま玄関に向かいながら、今日は駄目と思う一方で、田宮の来たことだけで、躯が甘く溶けていくような情緒にひ
とりでに浸りはじめる自分の肉に驚いていた。期待と拒否の綯混ぜの感情のまま、冴子は精悍なそうな背中を見せて玄関の
敷居に腰を降ろして靴を脱いでいる田宮の後ろに立っていた。               
 
「いらっしゃいませ」                        
 つつましやかだが歯切れのいい張りのある冴子の声を背後で聴くと、田宮は薄絹でふわりと包まれたようなやさしい気分に
なる。振り向くと、昏い玄関の古色然とした欅の床ににっこりと微笑えんでいる白い顔が、灯をともしたように浮き出ていた。

  床に片手をつき、上体をすっくと伸ばした冴子の挙措は、名匠に活けられた花のように稟として隙がないが、反面、今にも
熟れ落ちそうな盛りの花の脆さを含んだ艶がただよっている。
 
 田宮がこれまでに識った女達は、最初彼を魅了した手中の小鳥のような可憐さといとしさが時間と共に失せて、やがて狎れ
と退廃をただよわせながら、飼主に怠惰な表情で抱かれるふてぶてしい老猫のように変貌してくるのが常だが、冴子のよさは
狎れに染まぬ清楚な可憐さだと田宮は思っている。                              

 伊香保温泉の夜から八ヵ月が流れ、普通の貞淑な人妻では想像もつかない淫靡な性宴に翻弄されながらも、彼女が退廃や
卑猥、淫蕩の片鱗さえ見えないのは、彼女が男二人を相手に性交することや、職業女性さえ顔をそむけたくなるような性戯を、
不純な行為とは思わず、これが大人の世界に通常おこなわれている性戯だと一途に信じて疑わなかったからである。
 実際惣太郎も田宮も、冴子を従順にさせるため、そのように教え込んで来た。これが都会育ちの女性ならこうはいかなかった
だろう。

 無垢で一途であるということは、傍眼には大胆ともとれる。自分が快楽を享受する度合いが大きければ大きいほど男性は歓び
奮起し、相手の女性をいとしく思うものだと、教え込まれたし、また実際にそれを体得してみると、そうしろと命じられなくても、から
だがひとりでに官能の深淵を需めて昂ぶり反応していく。 

 そして自分が貪欲に需めれば需める程、男達も歓喜に狂うということも事実であることを知ってからは、冴子は平凡な人生にも、
こんな快楽に満ちた世界があったのだと、春の花園に踊り出たような気分になっていた。だから次第に露骨に卑猥になっていく二
人の男が需める性戯も、それが当然のことと受けとるから、冴子の態度も羞恥に妨げられながらも大胆になる。
 その羞恥の表情でうち顫えながらも大胆に、需められるまま惜し気もなく躯を広げ動き、やがて自ら官能の業火に煽られて、亡我
の喜悦にのたうち まわる姿に、男たちは耐えられない興奮の渦に引き込まれるのだった。                       

 玄関の鴨居にとどきそうな躯体を折るようにして立ち上がった田宮が、冴子を自然な動作で抱いた。                          
 「いやよ。こんなところで……」                    
 背高い田宮の背広に顔を埋め、煙草と体臭が混じった懐かしい匂いを吸い込みながら、くぐもった声で冴子が言ったが、田宮は
それにはとりあわず冴子の顎を掬って仰向かせた。冴子は勢い顔をのけぞらせながら、田宮の視線を眼にとらえ、
 「誰かが入って来たら…………」                    

 最後まで言わないうちに田宮の顔が落ちてきて、口をふさがれた。     
 いつもの田宮の接吻は、日本の男には少ない技巧を備えていて、いつも冴子を悩殺するのだが、今日のは思いがけず荒々しい
ものだった。冴子が予想していた甘美さとはおよそ違う田宮のやり方に、飢えた男の焦りを感じて、冴子はにわかに田宮に対するい
としさが込みあげてきて、思わず両腕を硬い男の頸に回していた。                                  

  「もうすぐ、いつか話したロンドンに行っている浩二さんが帰って来るの」 
  田宮が口を離した一瞬をつかんで、冴子はやっと言った。         
  「ああ、先生の学友の息子さんで、この家に下宿していて、家族同然にしていた坊やだろう……覚えているよ。何時にくるんだ
い?」           

  「今夜ロンドンから着くとしかわからないんですけど…………たしかブリティシュ航空で帰って来ると言ってましたから、今空港に聞
いて見ようと思ってましたの」                                 
  「ああ、その便なら知ってるよ。夜八時半着だよ。この間友人がそれで帰って来たから…… 。だから十分時間はある……………
だから………………」   
  田宮の掌が懇願するように、そっと割烹着の上から冴子の乳房をつかんだ。接吻とは違って、割れ物にでも触るような優しさだっ
た。           

  「仕方の無ない人ね」                         
 冴子は目許をぼうっと染め上げて、あどけない表情で軽く田宮を睨んだ。触れられたことで、反応をはじめた冴子の躯の奥から
染め上げられた自然な紅が映えて、どきっとするほどなまめかしさをそそる。そのくせ、触れられた後の冴子の表情は、何もかも田
宮に任せ切ったという自己放棄のやすらかさをたたえて体重を男に預け切って、それを受止めている田宮は、泪がこぼれそうなほど、
いとしさが込みあげて来る。                          

 立ち眩みかと一瞬錯覚したほどのすばやさで冴子は田宮に抱きあげられていた。
 昏い廊下を運ばれながら、冴子はもう躯の芯からめらめらと紅蓮の炎が立ち昇りはじめているのを振り払う気力も失せて、しだい
に官能の靄にかすんでいく意識の底で、浩二の来る時間にはまだ間があると最後に考えた。

 浩二のことは夫もこの田宮も知らない。生涯心に仕舞い込んでおくつもれいでいる。これだけは年下の浩二のためにも、また自分
の浩二に対するいとしさのためにも大事に心の奥深く仕舞って置くことに決めている。だから今日は奇麗な躯で浩二を迎えるつもりだ
ったが、こうして田宮に抱かれると、生理的に躯が潤んでしまう。やはりこの八ヶ月の間に冴子の躯が覚え込んだ田宮の肉の感触がそう
させるのだろう。
 浩二のために奇麗な躯でおりたいという感情と、しだいに潤んでくる躯の欲求の綯混ぜった感情のまま、冴子は自分の部屋に布団
を敷いていた。 

 ブラウスの釦をはずして乳房を露わにしたのは田宮だったが、スカートと下穿は自分でとった。裸になった田宮の前は、怒張し切っ
ていた。いつも田宮の希望で、どこからも見えないからと、庭の硝子障子のカーテンを開けたまま冴子は田宮を受け入れる習慣だった。
 
 その硝子に全裸で絡んだ自分たちの姿が、薄く映っている。浩二の時もたしか、こんな風に映っていたような気がしていた。
 庭の椿が赤く飾り電球のように見えていたのも、あの時と同じだった。そう夫との新婚時代にもこの椿を見ながらした。                  

 力強く入って来た田宮に、冴子の躯が思わず弓なりにしない、冴子の視野が、官能の火に揺れて霞みはじめていた。                  
  「ああ、いいわ…………」                        
 思わず漏らした冴子の言葉にあおられるように田宮が律動を強めた。冴子はしだいに朦朧として来る意識の中で、今、自分の中に入
っている男が、浩二のような錯覚を感じたが、それは田宮だと、自分に言い聞かせた。
 しかし、何時の間にかまた浩二とのように錯覚してりうのはなぜだろう。冴子の閉じた目に火花が散りはじめ、官能のたかまりに、思わず
声を発する頃には、冴子は薄れる意識の中で、今夜浩二に抱かれようと決心していた。
 そして夫にも身を許そうと思もった。一日に三人の男に抱かれよう。自分も含めて、四人の内の誰一人として、そのために傷つく者はい
ないのだから。

 そう決心すると、冴子は激しく律動をはじめた田宮の腰にしっかりと脚を巻き付け、両腕は田宮の頸をしっかりと抱いて、自ら腰を振り
ながら、官能の業火の中へ踊り込んで行った。               

 気がついた時は、部屋の中にいつの間にか黄昏が忍び込んで、硝子戸を透かして見える椿林の白い花だけが、仄白く浮で見えた。
 横で煙草のくゆる臭いがして、田宮が俯伏になって汗ばんだ脚を絡ませていた。田宮に煽られて、噴出して無数の火玉となって飛び
散る業火に身を灼かれながら絶叫したような気がする。終焉を迎えようとする田宮に牽制の声でねだりながら自分も昇り詰めて、同時に果
てたまではおぼろげながら憶えている。

 その時に絶叫したと思ったが、実は田宮が果てたと思ったのは冴子の錯覚で、技巧に富んだ彼は、
冴子一人を昇り切らせて、自分は力を温存し、小休止の後再び最後の力をふり絞って挑んできた。
 ふいを突かれた冴子は、高まりまりのおさまる間もなく、頂上からさらに中空に投げ揚げられたような感じに煽られて、最後には気を失っ
ていた。          
 残り火がまだ燻りつづけている胎内で、時々痙攣のような収縮がおこり、その度にどっと溢れたものが流れ出して濡らしている股間を、

 田宮の指が軽く冴子の背中を叩いた。 
  「なにか塗り薬あるかなあ…」                     
 指を動かせ続けながら田宮がぼそりと言た。                
  「肩の血が止まらないんだ…」                     
 冴子の顔の上に寄せた堅いか肩の肉に、鮮やかな歯型がくっきりとついていて、その一部の皮膚が切れて血が細い雫になって流れて
いる。         

  「誰がこんなお悪戯したんでしょうね?」                
 口元に肩を引き寄せ、ちろりと出した舌で、傷口を嘗めながら甘い声で冴子が言った。遠くで豆腐売りのラッパが聞こえていた。硝子戸
の外がもうすっかり暮れ果てて、昏く沈み込んだ室内に、二人の裸身だけが、仄白く浮かび出ていた。

  リビングで鳴る電話のベルが暗い廊下を伝って聞こえてきたのはその時である。 
  「あら、どうしましょう…」                      
 あわてふためいて身を起こした冴子は、弛緩して萎えた脚でよろめきながら、手探りで見付けた割烹着を素肌に纏って、電話に走った。           

  「ああ、ママ?… 僕です…」                     
  いきなり浩二の変わらぬ声が、そこに居るような近さで受話器に飛び込んできた。                                  
  「お帰りなさい。で…今どこに居るの?」                
 懐かしさに込み上げてくる感情を抑えながら冴子は訊いた。        
  「今、箱崎の東京エアーシティーターミナルです。これからタクシーでそちらに向かいますから、あと一時間もあれば着きます。お腹す
かせてますからよろしく」                                   
  「相変わらずね。それで貴方一人なの?」                
  「青い眼の嫁さんでも連れて帰ったとでも思っているんですか? 生憎ひとりです。今日パパはいるの?」                       
  「千葉の学校に行ってるけど、夜は帰って来るわ。お客さんが一人いるけど、心配ない人だから、早くいらしゃい…」                  
  電話を切って振り返るとそこに田宮が、服装を整えて立っていた。     

  「貴方の時間と違うじゃないの。嘘ばっかり言って……。もう箱崎まで帰ってきてるのよ」
  「おかしいなあ……。いつ時間が変更になったのだとう」         
  「あとどのくらいしたら来るかしら」  
  「箱崎からなら全部高速道路だから、四十分もすると着いちゃうね。早く支度しないと拙いな」                            
  「どうしましょう。一体何から手をつけたらいいのかわからないわ…」   
 うろたえる冴子に近寄って、田宮が優しく抱いた。            

  「まず米を出すこと。僕が炊飯器はセットしてあげるから、そのうちにきみの部屋を片付けて……ああ…それも僕がしてあげるから、
君はともかっくシャワーを浴びること…」                            
 「あたしの顔変じゃない?」                      
 田宮の顔を見上げて、羞恥を浮かべながら訊いた。            
  「とてもきれいだよ。眼が潤んでいるところがいい。まだ余韻が残っていて、君が一番美しく見えている時だよ」                    

 田宮は割烹着一枚で、背中から臀にかけては露なままの冴子の身体を愛撫しながら言った。それが困るのよ…浩二さんも、この表
情を知ってるんですもの…とも言えず、冴子は田宮の腕からすりぬけて、米櫃を田宮に教えて、風呂場へ走った。

 
  「そんなに厚化粧したら、せっかくの女らしい美しさが隠れてしまうじゃないか」                                  
 冴子が買い忘れて来たワインを買いに出掛ける時、そう言い残した田宮の言葉を思い出しながら冴子が料理の準備をしている時、
玄関が勢いよく開いて、  
  「ただいま!」                            
 と元気のいい浩二の声がキチンまで響いた。               

 冴子は料理に濡れた手を割烹着で拭いながら玄関に走り出ると、三和土に突っ立て、大きな旅行用のスーツケースを両脇に抱えた
浩二が、白い大きな歯を見せて笑顔で立っていた。二人の目があった瞬間、白い割烹着の冴子の肩が波うつように大きく息づいていた。
 冴子は感動に声をつまらせた。          
  「お帰りなさい…」                          
 やっと言った冴子に、にこりとしてから、                 

  「お客さんは?」                          
 と訊いた。                              
  「お客さんと言っても、パパの後輩で、同じ先生なのよ。今お買物に行ってもらってるの」                              
 スーツケースの一つを取ろうとして三和土に腕をのばした冴子を、浩二が横から抱き取った。はっと、浩二を見上げた冴子の顔に、
いきなり浩二の顔がかぶさてきて、唇を奪われた。短い接吻だった。                 

  「会いたかった!」                          
 そういう浩二の言葉に感激しながらも、会った時にはどんなに感動するだろうと予測していたほど、もう一つ感動がないのは、先ほ
どの田宮の名残がまだ股間に流れているせいだろうかと冴え子は思った。               
  「お風呂湧いてるわ。旅の汗を早く流しなさい。それともお茶にする?」  
  「風呂が先だな………」                        
 浩二は二階に荷物を置くと、勝手知った家の廊下を、大股で歩いて風呂場に消えた。                           

  「浩二さん着替え持ってって…………」
あわてて浴衣を抱えて風呂場に浩二を追い、勢いよくドアを開けると、目の前に浩二が裸身を輝かせて立っていた。
田宮の毛深い大人の躯を見慣れた冴子の目に、艶やかな革のような茶褐色の肌を鈍色に輝かせ、若鹿のように精悍な幼さがまだ残
っている健康で清潔そうな浩二の裸体は、男の精にでも出会ったようにまぶしく映った。

その男の精は、冴子を認めると、一瞬信じられないような顔をしたが、すぐ顔面いっぱいに朱を滲ませて、いきなり冴子を掬いとるよ
うにして抱き締めた。
言葉はなかった。冴子の唇を奪いながら、片手で冴え子の乳房の盛り上がりを割烹着の上から揉んだ。先ほど慌てて着衣した時に、割
烹着を脱ぐときに、ちゃんと服装を整えればいいと考えて、下穿だけつけてスリップもブラジャーも省略し、その上に綿の普段着の紺の
タイトスカートと、薄いカシミヤのブラウスセーターを着ただけだったから、浩二の大きな掌の温たたか味が、直接触れられたように伝わ
ってくる。

 浩二の掌の中で乳首がしだいに硬くなってくるのが、よくわかる。浩二がその掌で、うっ、と思わず声が出そうになる痛さで乳房を強く
握りしめた。その粗野な愛撫が、清冽な清水を浴びせられたたように、冴子の躯に思いがけない刺激を与えて、冴子は朦朧となった。
足が萎えたように力を失い、ずるずると崩れ落ちようとして、冴子は慌てて浩二の裸体にしがみついた。細く硬い浩二の腰に両手をまわ
して体を支えようとしたとき、偶然のように浩二の硬直した男根が頬を突いた。羞恥が全身をはしり、思わず浩二の股の付け根に顔を埋
めた。

 ざらざらとした浩二の陰毛が頬に当たり若い男性の強い体臭が臭い立っていた。
片膝を突いた冴子の不自然な格好を、いきなり崩すように、浩二が冴子の上にのしかかって、ふたりは互いに、足の付け根当りに顔を
付けるようにして折り重なった。浩二の掌がすばやく冴子のスカートをまくり、薄いスキャンティーの上から、口を付けてきた。田宮の溜
ったものが溢れ出ている上に、今の刺激ですっかり濡れそぼり、スキャンティーだけでなく、股間から太腿を伝って流れはじめている体
液が浩二に見られてしまうと、慌てて起き上がろうとしたが、浩二の屈強な力で押さえつけられているため、びくとも動かない。
  「浩二さん、やめて! お願い 」
冴子は思わず、大きな声を上げた。

田宮は、玄関から上がり、キッチンに入りかけたところで、思いがけない冴子の悲鳴を聴いた。
 買ってきたワインの包を置くと、足音を忍ばせて声のした風呂場に向かった。
若々しい青年の裸の背中がまず目に飛び込んで来た。体は大きいが、まだ肩と腰と臀に幼さの弱々しい線を残したような青年の裸体
だった。

 やや浅黒い肌が、若者特有の光沢を滲ませて、脱衣場のほのくらい電灯に照らされて鈍色に輝いている。その青年の乱れた黒い髪から
はえたように、女の白い足が白鳥が羽を広げているようにくの字に開かれているのが見えた。青年の貌が羽の中心に埋まっていた。青年は、
冴子を逆さに組敷いているようである。注意してみると、青年の長い足の膝が、冴子の両肩を押さえつけ、その股間から冴子の白い貌が覗
き見えた。                                  

 互いにクリニングスをしているのかと思ったが、そうではなく冴子は、青年の太い腿を下から手で突き上げて、起き上がろうとしてもが
いているらしい。屹立した男根が、冴子の貌に当たっている。割烹着が腹の辺りまでたくし上げられている。青年の手が、股間で細い紐のよ
うになったスキャンティーを横に引っぱって陰部を丸出しに、そこに青年の貌がかぶさっている。暴力沙汰ではないことが、冴子の抵抗の弱さ
で解る。

  「浩二さん、今はいや! お客さんがもう帰って来るから………」
  「こうしたかった! イギリスにいる間、こうすることばかり考えていたんだ」 「あたしだって、あなたのこと忘れたことないわ」
青年の股間で、くぐもった冴子の酔ったような甘い声がして、冴子の白い掌が青年の太股の下から現れ、隠れていた怒張した陰茎を取り出す
ように持ち上げた。太く大きな陰茎だったが、亀頭はまだ粘膜の薄い紅で、茎も味経験者らしく清潔な肌色をしている。冴子がそれを口付けをし
た。短い口ずけだった。

  青年もふただび冴子の陰部に貌を埋めた。
  「ああ、浩二さん………」
冴子の声が震えた。馴れた男女のしぐさだった。
  「さあ、浩二さん、本当にお客様が帰ってくるわ」
冴子が浩二の太股を押し上げた。
田宮は、するりと廊下を出ると、もう一度玄関から入りなおした。
  1. 2014/12/02(火) 15:36:07|
  2. 花濫・夢想原人
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花 濫 第4章異常な契約6

 「そうか、君は写真がうまいんだったねえ」               
 惣太郎が言った。                            
 「冴子、田宮君はねえ、写真は玄人なんだ。日本写真クラブの会員でもあるし、日展入賞のカメラマンなんだ。そうだ、冴子も一度撮っ
てもらうといい」    
「あら、ぜひお願いしたいわ。若いうちに………」            

 今から思えば、夫と田宮がたくらんだ芝居だったと冴子は思っているが、その時は全く疑わずのせられてしまった。丁度田宮はカメラも照
明も持って来ているから、即実行しようということになり、冴子はうまく二人の甘言ににせられて、ネグリジェ姿のまま化粧だけほどこして、カ
メラの前に立たされた。     

 大きなライトが三つもセットされ、狭いリビングがスタジオに変わった。強いライトを浴びて、食に家中の花を集めた花瓶を置き、その前
に民芸風の椅子に凭れて冴子は立たされていた。三脚の後ろから田宮が何度もシャッターを切っていた。ライトの熱が冴子の肌を汗ばませて
いる。               
 「冴子さん、片脚を椅子に上げて、その膝に顎を載せて下さい。………そうそう……いいですよ………とても魅力的です。いきますよ……
…」       

 田宮の巧みな言葉に酔わされていたと、後で冴子は思ったが、その時は、本当に自分がポーズを変え、ライトが変わる度に、しだいに美
しく変化しているようなナルシズムに酔わされていた。                      
 「やはりネグリジェの下のスリップが邪魔だなあ。折角の胸の線が台無しになっているんだ。先生、冴子さんの魅力は何といっても、豊
満で真っ白い躯の線にあります。ほら、見て下さい。折角の胸の膨らみが、スリップのレースに邪魔されているでしょう。あれがなければ、
きれいな線が出ると思いませんか?」  

 惣太郎はうなずいて冴子にスリップを脱ぐことを命じた。薄い絹のネグリジェだけにされて、透ける乳房と股間を気にしながらポーズをと
っていたが、その内に、ネグリジェの胸のホックを一つ外し、二つ外して大きく胸を広げた撮影が続き、はっと気が付いた時には、乳房が
露出していた。              

 乳首が尖っていないといい写真にはならないと、田宮に乳房を愛撫され、表情をもっと妖艶にしたいと、惣太郎がカメラの見えない後ろか
ら、しゃがんだ格好で冴子のネグリジェの裾を巻くって、花芯に愛撫を加えた頃から妙なことになっていた。三人とも何時の間にか淫蕩な感
情に憑かれていたのである。     

 低い民芸調の漆塗りの角椅子に腰を降ろした冴子が、片脚は伸ばし、もう一方を引き付けて踵を椅子に載せ、その膝を抱くようなポーズ
をとっていた。ネグリジェの前ホックは全部外されていて、身体の両側にはおったようになっている。形のいい乳房が片方覗き、L字型になっ
た脚の付け根には、淡い翳りの下に縦筋になった割れ目がはっきりと見えていた。強い照明に上気した冴子の眼が潤んでいるのがよくわか
る。紅赤の鮮明な口紅を引いた唇と、桃色の乳首、片膝を抱いて前で組んだ指の珊瑚色のマニキュアの色彩を白い肌が引き立ていた。三
月末の夜にはライトの熱が強すぎた。冴子の肌が滲んだ汗で光り、撮影途中で何度も化粧を直したりバスタオルで肌を拭わなければならな
かった。

 二人の男もいつの間にか浴衣の上半身を腰紐まで肌脱ぎにしていた。顔も脂汗と異常な刺激に酔ったように赤らんでいる。深夜の静寂の
中で、冴子の躯が発散する女の甘酸っぱい体臭と、煙草の臭いが混じり合って、ライトに熱せられたい澱ん部屋の空気を隠微な情緒にして
いた。

 惣太郎が田宮の後ろから、冴子に向かって放たれているライトを遮って冴子の後ろへ回った。                     
 「そうだ。どうせここまで撮ったんだから冴子、いっそのこと全裸のヌードを撮ってもらおううね。若い時は一度しかないんだ………。さあ
………脱ごうね………」      
 惣太郎が冴子の背後からネグリジェを剥ぎにかかった。           
 「いやよ………いやよ………。辱しいわ。こんな明るいところで………」  
 胸を両手で抱くようにして、いやいやをする冴子に構わず、惣太郎は無理矢理ネグリジェを、裾から剥くようにたくし上げた。

下半身が露わになって、冴子は飛び上がるようにして椅子から立ち上がり、前から見ている田宮の視線から下腹部を隠すように腰をひねった。
強烈なライトに照らし出されて、乳房と下腹部を手で覆った冴子は、腰を屈めるようにして立っていた。            
 「さあ、その椅子に足を組んで座って下さい」              

 田宮はカメラから離れて、立ったままの冴子の腕を取って、椅子に導いた。観念したのか、冴子はおとなしく椅子に腰を下ろし足を組んだ。
カメラは見ず、俯向き、脚を組んだために陰部が隠れたためか、両腕で乳房を抱くようにして隠していた。        
 「右手を椅子に突いて、もう一方を頭の後ろに回して下さい」      

  素直に冴子は田宮の言う通りにポーズをとった。照明に浮かび上がった、真っ白い豊かな肉体を、照明のあたらない昏い陰から二人の
男の目が凝視していた。丸い肩がハレーションをおこしているように輝き、豊かな乳房が灯を吸いあつめて、薄い肌ににじんだ凝脂が鈍色
に照り返している。
 薄桃色の乳首がつんと上を向き、まろやかに張り詰めた皮膚が照り輝き息ずいている。

田宮が二、三歩進み出て、その乳房を軽く撫でた。         
 「いや!」                              
 冴子が慌てて片手で乳房を押えて前屈みになった。             
 「すみません。きれいに撮るために、乳首を固くしたいんです。先生いいですか?」  
 田宮は、窺うように部屋の隅の昏がりに椅子を持って行って座り、ブランデーグラスを片手でいじ
っている惣太郎に訊いた。                
 
「生涯に一度しかない、成熟の極まりの美しさを残すんだから、思い切って美しく撮ってくれ。冴子も折角の機会だから、田宮君の言う通
りにして、最高にきれいに撮ってもらおう」 
 「じゃあ、失礼しますよ。プロのモデルでも、これだけは必ずやりますね 」
 腰掛けて脚を組んでいる冴子の前に跪くように、脚を折ってしゃがんだ田宮が、両手を伸ばして、貴重な品物でもあづかうように、冴子の
乳房の両方を、広い裾野の方から掌で愛撫しはじめた。田宮の掌にあまる乳房が弾力をみなぎらせて弾みながら形を変える。 

 しばらく沈黙が続いた。ライトの熱気に煽られるように、室内に隠微張り詰めた緊張感の中で、しだいに冴子の呼吸が乱れていくのが、か
すかに聞こえた。惣太郎は二杯目のブランデーを飲みながら、昏い陰から二人の様子を眺めていた。

 惣太郎は酒のせいだけではなく、ライトに照らし出された妻の裸身の美しさにも酔っていた。惣太郎からは、椅子に腰掛けた妻が、斜め横
に眺められた。すでに発情をはじめているらしく、躯の内部から滲み出た、紅を刷いたように頬が紅潮し、目がすでに潤みはじめている。硬
い田宮の陽灼けした上半身が、組んで伸ばした白い冴子の脚の向こうから、ひざまずいたまま、冴子の乳房を愛撫してい
る。今は片手を、冴子の組んだ脚の、太腿辺りに置いて、静かに腿の内側を愛撫している。片手は相変わらず乳房を愛撫し、顔を冴子の剥
き出しのもう一方の乳房に寄せて、唇で乳首を愛撫しはじめた。         

 真っ白く柔弱な冴子の躯と、茶褐色で剛健な田宮の肉体の対比が、一層妻を女らしくうつくしく見せていた。妻はポーズしていた手を、今は
田宮の肩にかけ、やや上向けて目を閉じ、貌をかすかに揺らしている。羞恥がしだいに官能に侵されて、観念したようにも、没我に浸っている
ようにも見える恍惚とした表情で、口を少し開けて、小さく喘いでいるようすである。              

 「あっ……」                              
 短い冴子の叫びに目をこらすと、田宮が、思い切ったように、太腿を愛撫していた掌を冴子の股間く差し入れて、微妙な揺らし方をしていた。
指先が冴子の敏感な部分に触れているに違いないと、惣太郎は思わず身を乗り出していた。乳房を愛撫していた掌も、強く乳房を掴んでゆす
り、もう一方の乳房に吸い付いていた唇が、完全に乳首を含んでいた。冴子の上体が揺らいで、田宮の肩に凭れかかり、艶やかな両腕が田
宮の頸を抱いている。耐え難い官能に襲われているらしく、冴子は眉根に苦痛のような縦皺を刻ませ、白い歯をのぞかせた唇からは、押し殺
した溜息が、熱さを含んでひゅうひゅうと鳴っていた。田宮は写真撮影を放棄して、このまま冴子の肉体にめり込んでしまうのかと、惣太郎が
思った瞬間、田宮が敏捷な動作で立ち上がると、急いでカメラを覗き込みながら、     

 「さあ、ポーズとって! 」                      
 凛とした声で、冴子を制した。つられたように冴子が、はっとした表情でポーズをとった。長い髪がすこしほつれて額にはりつき、上気した
桜色の頬が羞恥を刻んでいる。濡れ濡れとうるおって輝きをたたえた瞳をカメラに向け、まだ先程の愛撫の余韻を充分に残している息づかい
で、小さく口をあけたままポーズをとっている妻の姿は、自分の妻とは信じられないほど魅惑的だった。艶やかに息づいている躯全体にも、
美しい牝の発情が、内部に燃え上がった官能の炎を照り輝かせ、成熟した女体のぬめぬめと吸い付くような肌が上気して桜色に染まっている。

 田宮がシャッターを切りながら、冴子にさまざまなポーズを指示している。最初照れたり、羞恥にもじもじしたりしていたが、田宮の巧みな
言葉に呪詛にでもかかったように、身体の位置を変え、ポーズを変えて行く。       
 「そうそう…………とってもチャーミングだよ。右脚をもう少し開いて………ああ、大丈夫、毛は後で消すし、割れ目ちゃんは、見えないよ
うに撮るからね………。はい! そこで、仰向けになり、腰を両手で支えて………そうそう………。両脚を上に伸ばして、そうそう………きれ
いだよ。大きな白鳥になったんだ君は………脚が翅………大空に舞い上がる………もっともっと、大きく翅を羽ばたいて………」              

 大きな食卓の上に冴子が今夜のために敷いた、ブルーのテーブルクロスを巧みに使って波を造り、その上に冴子を仰向けに寝させ、両手
で腰を支えさせて、両足を宙で、大きく開閉させている。照明の強い光りが、煌々と冴子の股間を照らし出し、淡い陰毛の一本一本から、大
きく開く度に、赤貝のように口を開ける秘肉の複雑な襞の微細な陰影や、体液の滴りまで克明に浮き出しているのを、田宮はロングやアップ
で漁るように何枚も写し撮っていく。時々、撮影を中止して、田宮は冴子の肌に流れる汗を拭いてやったりしている。ガーゼ地のタオルで、愛
撫するように全身を拭きながら、股間にまで掌を伸ばす。その度に冴子が耐え難い吐息をつくのを惣太郎は見逃さなかった。            

 「こんなものを着ていたら、自由に動けない……………」         
 田宮が惣太郎とも冴子ともつかずに言って、腰紐まで剥いでいた浴衣を脱ぎ捨てて、下穿だけになったのがチャンスだった。                  
 「田宮君が冴子に触れる度に、冴子が上気してとても女らしく美しくなるような気がする」                              
 惣太郎が冗談とも嫉妬ともとれる固い口調で言った。           

 「アメリカで見たスタジオでは、ポルノグラフィーを撮る時には、恍惚の表情や、緊迫した筋肉の動きを出すために、実際に性交させたり
刺激を与えながら撮るのが普通なんです。そのほうが美しく撮れるんです」          
 「よし。滅多にないチャンスだ。俺がシャッターを押すから、田宮君少し冴子を刺激してやってくれんかねえ」                     
 惣太郎と田宮の視線が微妙に絡んだが、すぐに互いが了解した。      
 下穿のまま、田宮が冴子の腰を抱え、その中心に顔を埋め、溢れはじめた花芯に唇をあてた。冴子が遂に声を出した。暗黙の了解が三
人にあった。カメラを三脚から外して手持ちに変えた惣太郎が演出者になって、次々と指示を与えた。  
 「君の下穿が邪魔で仕方ないんだ。取ってくれ給え」           

 冴子の恍惚とした表情や姿態を撮影するために、出来るだけ陰になって、冴子を刺激していた田宮
に、惣太郎が声を掛けた。田宮も冴子も、惣太郎の意図を理解したが、さすがに田宮ははにかんで、                  
 「いよいよ本物のポルノ撮影になりますね」               
 と照れながら、下穿をはずした。すでに怒張した陰茎が、跳ねるように飛び出した。  
 「冴子の横に寝て、斜め横から抱いて………」              
 惣太郎の指示が、しだいに露骨になり、                  
 「それじゃあ冴子が可哀想だし、最高の表情を撮るためには、君が言ったように、思い切って挿入
してくれ………」                   

 惣太郎が怒ったように興奮した声で
 
言うまでに時間はかからなかった。               
 食卓の上で、強烈なライトを浴びて、正常位で挿入し、互いに身を揉んでいるふたりを、惣太郎はカメラのレンズの中で、美しい映画でも
見るような恍惚とした感情でみとれていた。
 冴子の柔らかい太腿が、生ゴムのように弾力をみせて、田宮の大きな手が掴んだ部分をめり込ませている。田宮の腰の動きにつれて、乳
房が揺れ、テーブルクロスに散った髪がくねっていた。           
 ふたりの後ろに回って見ると、冴子が巨大な田宮の陰茎を咥えて、腰で円を描いている。田宮がそれに答えるように腰を激しく波打たせた。
そのたびに、冴子の臀が田宮を一気に呑み込む勢いで収縮する。濡れた田宮のものが、冴子の白い臀の間でちらついている。田宮が冴子
の脚を肩にかついだ。

 繋った部分が、上から惣太郎にはっきりと視えた。見慣れた冴子の局所が、無慚に歪み攻め立てられてながら、体液をほとぼらせている。   
 蒼いテーブルクロスが揺れて、田宮の律動につれてしだいにずりあがり、頭がテーブルから落ちかかった。のぞけった冴子の白い頸筋に
血管が蒼く浮き上がって見えた。惣太郎にはそれが冴子の極まりのように思えた。

 テーブルの上で、汗光りする浅黒い鋼鉄のような固い男の体に押え付けられ揺り動かされて、喜悦にのたうっている冴子は、点灯したまま
の強烈なライトに射られた白い肌が、ハレーションをおこして薄い皮膜のように光沢を輝かき、眉間に寄せた縦皺が、肉欲をむさぼっている。
成熟した女の官能のたぎりを見せている。         

 惣太郎はふと、カーテンも閉めてなかった硝子戸に、ふたりの肉欲の争奪を没我になって見ている自分の姿が、終局を目前にして狂喜の
極みにもだえているふたりの姿の奥に映っているのに気が付いて、鞭で叩かれたような気持で我にかえり、煙草に火を付けた。

 外ではいつの間にか霰混じりの小雨が寒々と降っていた。濡れた葉のない雑木の幹が、汗に濡れて輝いている冴子の肌のように艶を帯び
て夜目にも輝いて見えた。        

 成熟した男女の媾合が発散する熱気と気迫の満ちたこの部屋は、真冬の深夜とも思えぬ暖かさになまめいているのを、惣太郎は窓外の無
数の銀の糸のように降りしきる雨と対象させながら、うつろな気持で眺めていた。         

 冴子は霰混じりの冷たい雨の降る早春の夜に、嵐のようなふたりの男に紊亂されて、狂気の一夜を送って以来、自分が逃れられない性の
深淵に落ち込んだことも、ふたりの男が共謀した企みにうまうまと載せたれたことも自覚してはいなかった。         
 それは冴子が軽薄だということではなく、浩二との半年前の出来事以来、今まで体験したこともない蠱惑的な未知の世界が、冴子の前に
俄に次々と開かれて、冴子にとっては未曾有の体験の連続が冴子の神経を麻痺させてしまったということだろう。丁度、未知の国を旅して
車窓に次々現われる風景に驚嘆しているうちに、やがてそれが普通のことのように思えてくるのと似通っている。    

 その夜以来、田宮との情交が、いつの間にか、当然の慣習のようになって続いている。当初は夫に隠れるようにして需めて来ていた田宮
が、肉に関してだけは夫のように、いや夫以上に熱心に執拗に冴子を需めるようになったのは、そう時間を必要としなかった。 

 浩二の時のような衝撃的な緊張や愉悦はないが、冴子と同じ歳上の田宮との情交には、世間並みの夫婦のような落ち着きとゆとりがあ
る反面、田宮の熟達した技巧と強靭な体力は、外国女性を扱い慣れた優しさを加えて、性の歓びの深淵に目覚めかけたばかりの冴子の心
と肉を限りなく堪能させていた。田宮のどちらかというと学者らしくない世間ずれしたエリートサラリーマンのような小利口さや、大袈裟な身
振りの話し方や、歯の浮くようなお世辞を平気で使う性格は、平素の冴子は不潔そうで好きにはなれないが、こと性を共有すると、それが
呪詛にだもあったように冴子を魅了してしまう。
      
 だから、田宮が昨年の正月アメリカに一月ばかり出張していた時や、しばらく仕事で、冴子の前に現われなかった時など、かって経験し
たことのない悶々の情に躯が火照り、身をさいなむような鬱屈した心境になる。裂かれるような想いをしたこともある。    

 夫と田宮の間で、冴子の知らないどんな会話がなされているのかは知らないが、夫の出張の夜には田宮は間違いなくやって来たし、そ
れを夫も承知しているらしいことは、出張先から必ず電話してくる夫に、田宮が用件があって代わって出ることもあって、冴子にも推察出来
た。                   

 冴子が男二人の共謀にはっきりと気付いたのは、半年ほど前のことだった。夫が在宅中に田宮が訪ねて来た時のことだった。夫は田宮
が来たことを知らせても、調べ物が途中だから、あと二時間くらい待っているように言って書斎から出て来なかった。冴子が書斎に入った時
も、アイヌ語のぷテープを聞きながら一心にメモをとっていた。次の日にたまたまあるパーティーに出席する冴子は、丁度自分の部屋で着
て行く衣装選びをしていたのだが、どうしても最後の選択が出来ず迷うばかりで困っていた時だっので、田宮に相談して見ようと自室に招い
た。田宮の忠告にしたがって、つぎつぎ衣類を出して着替えている間に、突然、田宮に抱き締められた。                        

 藤色の着物を決め、それに似合うかどうか、海棠を刺繍した帯びをあてがっている時だった。口付けしながら合せただけの着物の前か
ら冴子の素肌に手を差し込んでくる田宮に、                            
 「うちの人が気付きます。止めてください………」            
 その時冴子は、とっさに夫の書斎に向いた襖が閉まっているのを確認した。  

 「大丈夫だよ。心配ない。」                      
 押し倒され、着物の裾を腹のあたりまで捲り上げられて挿入された。すぐ傍の夫に隠れて微かに睦むスリルと異常さに、思いがけない興
奮のるつぼに陥れられて、冴子は声をこらえるだけで必死だった。

 かすむ意識の底で、一刻も早く田宮が終ることを念じ続けた。 やっと田宮が終って部屋から出る時、閉ていた襖が細く開いているのを
冴子は発見して思わず声を出しそうになった。しかしその時は、冴子が襖を見たのと、田宮が襖を開けて出て行ったのとが同時くらいだっ
たから、もしかすると自分の錯覚だったのだろうと思い直した。                    

 冴子がまだ弛緩した躯を横たえたまま、恍惚の霧に包まれている時に、突然、入れ替わって書斎に
篭っていた筈の夫が入って来たにである。         
 「あなた!………………」                       
 絶句して飛び起きようとした冴子に夫がかぶさってきた。
 冴子の躯には田宮の残していったものが、まだ溢流しているのに、夫はそれを無視して冴子の中に入ってくる。そして満足そうに交わりを
続ける。練れているお前が一番いい、と最近ではよく言うし、弱くなった自分には、弾みが付いているお前が最高だ、とも言う。言葉を返せば、
冴子の躯が田宮との情交によって、高められ燃えている余韻に巧みに
便乗して、夫は冴子を征服した錯覚を覚えることで満足しているのだろう。          

 初めてそれに気付いた時は、そんな夫の行為に嫌悪を感じたものだが、いまではそうしてまで自分を愛したい夫に、同情とも感謝とも愛
着ともつかぬ、夫のおおらかさとでもいうようなものを感じて
いる。何にも増して言えることは、冴子がすっかり、こんな奇怪な生活を異常とも感じないように慣らされた事実である。
  1. 2014/12/02(火) 15:32:50|
  2. 花濫・夢想原人
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花 濫 第4章異常な契約5

 夫が田宮とのことに気付いたと知ったのは、その日の帰宅した夜だった。  
 疲れたから帰るという田宮を、これから帰って夕食の準備をするのも大変だろうからと、なかば強引に引き止めたあげく、自分は急に
三鷹の古本屋に頼んでいた用事を思い出して、十時には帰るからと、そそくさと出て行った。惣太郎の家から三鷹まではバスで三十分
の距離だったのに、その時はまだ五時にもなっていなかった。

 疑訝の表情で見送る冴子に、
「先生は、古本屋が市で仕入れて来た本の中に、思いがけない書物を発見する名人なんです。今日は土曜日で、市の開かれた日だ
から、きっと掘り出し物でもないかと、急に思い立たれたのでしょう」                 
 こともなげに言った。                         

「だって、こんなに疲れて帰ってすぐに行かなければならないほど、重要なことなのかしら」                             
「疲れたのは、僕達だけです。先生は昨夜も早くから寝ていらっしゃるし、往復の車中もあの通り
お休みだったから…………」              

 ふたりだけになった調布の家の居間で、机を挟んで冴子は田宮の言葉に、思わず頬を染めて俯向いた。しばらくして、ちら、と田宮
の顔を見上げ、じっと自分を見詰めていた田宮を見ると、                      
 「いや! そんなに見詰めないでください。恥かしくって顔が上げられないじゃありませんか」                            
 とまた俯いて顔を染めた。                       

 それから二時間後、冴子は入浴を済ませた躯に、袷の着物を着てリビングの椅子に一人座っていた。夫の命じた通り寿司を取り寄せ
ていたが、自分と夫のはまだラップをかけたまま残っていた。

 田宮が寿司を食べて帰ったのが四十分くらい前だった。       

 夫が出て行ってすぐ田宮が求めて来た。冴子の部屋の畳みの上で、冴子はスカートを捲り上げられたままだった。いつ夫が帰って来
るかわかわないのが気になって、冴子は最初拒んだが、田宮の怒張したものが当てられた頃から、しだいに冷静さを失っていた。                             
「これで最後にしましょうね」                     

 冴子は何度も最中に田宮に言った。実際そうする気だった。こんなことが続くとは思えなかったし、続けるべきではないと、今日帰る
車のなかでそう決心していた。これが最後、という思いが、逆に冴子を興奮させた。さすがに昨夜からの連続のせいか、田宮はなかな
か果てなかった。それも結果的には冴子を狂わす結果になってしまった。それまで、外でしか果てなかった田宮に、本当は今は大丈夫
な時期だから、中でいって、とねだったのも冴子の興奮の度合いを語っている。
 
 「先生には、やはり今夜は運転が疲れたので帰ったと言って置いて下さい。怒りなんかされませんよ」                         
 田宮が、実はこれ以上いると、また奥さんが欲しくなるから、と言い残して、そそくさと寿司を片付けて帰ってから、冴子は慌てて風
呂を涌かして入った。中で果てた田宮のものが、溢れ出て困ったからである。            

 玄関に音がして夫が帰って来た。夫は酒を飲んでいた。熟し柿のように赤らめた顔で、数冊の本を
小脇に抱えていた。慌てて迎えに出た冴子に、       
「なんだ。田宮は帰ったのか。彼のためにいい本を見付けて来てやったのに……」           

 口ではさも残念そうに言っていたが、それでは電話なさいますか、と言う冴子に返辞もせず、そそくさと風呂に入った。                 
 疲れたから早く寝よう、と寝室に入った夫が、珍しく冴子を需めて来た。入浴を済ませたとはいえ、冴子の躯のなかには、まだ先程田
宮が射出したものが粘く澱っており、子宮の奥から時折溢流して陰唇を濡らしていた。冴子は慌てた。疲れているからと拒否する冴子を
夫は、酒の酔いに紛らわせて強引に抱いた。いつになく力強い夫だった。何かに挑發されているような焦りを冴子は夫に感じた。

 夫の手が股間に伸び、その指が陰唇を割って潜り込んでくる。冴子自身の体液とは異質な、もっと粘質を帯びた重い感じの粘液が陰
唇から膣の襞に、べとりと付着して、その粘液に溶かされかかったように、膣内の粘膜が高熱患者のように熱く、練られたように柔らかく
なっていた。             

 夫が冴子の浴衣の裾をまくり上げ、下穿を下げて陰部を露わにして、顔を寄せてきた。広げた陰唇の奥から、濃い精液の匂が温めら
れて立ち昇っている。夫にはない若い男性の臭いである。夫には一目瞭然に田宮との性交の痕跡を発見されたと冴子は驚愕した。  

 しかし、夫は知ってか知らずにか、特別な反応を示さない。もしかすると、暗さと、最近鈍ってきた夫の臭覚では、発見出来なかった
のではないかという安堵が、半信半疑ながら、冴子に希望をつながせた。冴子はいつになく張り切った夫のものを探し当てると、 
 「早く欲しいの………」                        
 
はしたなさを考える前に、露見の恐怖が先にきた。夫のものを自分に導くと、意外と素直に夫は、身体の体勢を整えて埋没して来た。
潤滑な膣は迎合して、いきなり子宮口まで入り込んだ陰茎を、膣襞が蠕動しながら包んだ。先程の慌ただしい田宮との交わりに、取り
残された感じだった冴子の肉は、すぐ反応を示して燃え上がった。              
 今日のお前は、とてもいいよ。いつもと違って、柔らかいしとても練れていていい感じだ。やはり、田宮のような若い男と一緒だった
のが、何かお前の躯に刺激になったのだろうか」                        

 浅く深くさすが田宮にはない甲羅を経た夫の老獪な技巧に、冴子は先程の切迫した感情がしだいに消えて、夫の律動に触発された官
能の靄に包まれていった。
 「昨夜、田宮はお前になにかしなかったかい?」             
 律動を小刻みに変えて夫が言った。                   
 「何かって………どういうこと?」                   
 冴子の昇りかけた官能の火が、冷水を掛けられたように一瞬にして消え、胸の鼓動が異質な早まりを見せた。                      
 「お前の躯に悪戯をしかけるとか…………しなかったかい?」        

 「だって、あんなにお酒いただいたので、朝までなにも知らずに寝てましたわ」
 「そうか…………それじゃあ田宮の奴……こっそりお前に触っていたんだ」  
 「まさか、そんなこと…………」                    
 「いや、おれは見たんだ。もう明るくなった頃だ。咽喉が乾いて、ふと、目が覚めて見たら、隣のお前が、浴衣の胸を開いて寝てる
んだ。両方の乳房も露わにしてだ………」                             
 「まさか、そんなこと…………、嘘でしょう?そんな…………」      

 冴子の中の夫が、一段と拡充し律動を強めながら、            
 「直して蒲団を掛けてやろうと、起き上がりかけて、はっと、気が付いたんだ。なんと田宮の黒い頭がお前の股間で揺れているでは
ないか。気付かれないように見ると、お前の浴衣の腰紐が解かれ、ほとんど全裸の状態にされたお前の脚を、田宮が大きく広げて、
お前のアソコを嘗めていた。お前も夢の中で、何か感じているらしく小さく呻いていた」 
 「それ貴方の夢でしょう?」                      

 「夢なもんか。おれはすっかり目覚めて、掛蒲団から、わずかに顔を出して、奴に気付かれないように見ていたんだ。少し上体を斜
めに起こして視るということが、あんなに力が必要だとは考えても見なかった。指を挿入してもいた。彼がそうすると、お前はまるで起き
ているように嬌声を上げるんだ。彼が乳房にむしゃぶり付いた時なんか、お前は、はっきり、いい………いい………って言ったぞ。だが
寝むっている証拠に、彼がお前の躯から離れると、すぐお前は、心地よい寝息をかいていた」               

 嘘とは思えない夫の言葉である。たしかに、暁方の交わりの後、風呂から帰ってから、田宮が蒲団の中でまた愛撫をはじめたのに応
じる閑もなく睡魔に襲われて、眠ってしまったのは事実である。奈落の底へ落ちるような眠りを、乳房や陰部から鋭く沸き起る官能の疼
きに呼び戻されて、何度か声を上げたような気がする。それを夫が見たとしても、自分は眠っていたのだから共犯ではない。

 むしろ被害者の立場だ。夫と一緒に不埒な田宮を攻撃すればいい。冴子の中で、安堵の安らぎが生れた。                 
しかし、夫は 田宮の不届き極まる行為を、どうして夫は黙って見逃したのだろう。自分の妻が目前でいたぶられているという侮辱で非道
な行為を、それも叱責出来る自分の部下がしたというのに、黙認したのはなぜだろう。夫は温厚だが侮辱には厳しい男だ。
 
冴子が東京に来た頃庭掃除をしていて、近くにある競輪場の酔った客に抱き付かれ、唇を奪われたことがある。縁側でそれを目撃した
夫は、木刀でその男を滅多打ちして、腕の骨を打ち砕いた。その酔っ払いは近くの公共施設に勤める中年の公務員で、必死に陳謝し、
表沙汰になれば首になってしまうから許してくれと泣きながら訴えても、夫は巌として聞き入れず警察に婦女暴行罪で突き出した。そん
な夫がなぜ田宮を見逃したのはなぜだろう。    
 
「それで貴方は、どうして黙っていたの?」               
 すっかり覚めた目で、冴子が真上で揺れている、視野に余る夫の顔を見て聞いた。   
 「それが不思議なんだ。まだ仄暗い室内に、お前の裸体が白く浮き出て輝き、田宮も浅黒い艶々した裸でお前に絡んでいる。それが
不潔でないんだ。とても奇麗に見えたんだ。お前の白い肌が、田宮の若い滑し革のような肌に触れられて、水を得た植物のように、瑞々
しく潤っていくんだなあ」           
 「そんなにはっきり見たの?」                     

 「ああ、田宮が切なさそうに溜息を吐きながら、宝物でもあづかうような丁寧さで、お前を愛撫する。するとお前は耐え難くなるのか、
時々それを逃げるように腰を引く。田宮のここがかんかんに勃起していた………」         
 夫は挿入したままの自分の物を、思い切り深く突き立てて、田宮の陰茎を表現した。 
 「あぁ……そこまで見たのね……」                   

 冴子は奇怪な衝撃を受けていた。それは自分と田宮の交わりを、夫が見ていたという衝撃ではだけではなく、奇怪な心理だが、夫へ
の貞淑を破って他の男に狂ったあの時の状況が、夫によって克明に語れれるという異常な状態に、性夢にかき乱されているような
昂ぶりを感じていた。田宮と夫の二人の男に同時に犯されたような披虐な官能に火を付けられたような感じだった。消えていた官能が甦り、
いつの間にか夫の煽りに乗って腰を動かせていた。  

 「田宮がお前の乳房を唇に含み、もう一方の掌でここを愛撫し出したら、お前は顔を顰めて、いい……いい……と、はっきり言って腰
を振るんだ。例え夢心地でも、官能に酔う自分の妻の表情をはじめて客観的に見て、まるではじめてお前を見るような新鮮さで、美しく
見えたんだ。田宮という若い男の肉体とお前の若い女の躯が触れて発散する、若さの命のたぎりの美とでもいうのだろうか、それを離れ
た場所で見て、まずお前が若い男から歓喜を与えられて恍惚とした表情と躯の線が、妖しいまでに美しくなるいのを知った。つぎに、田
宮の若い男の肉体が、お前に触れることによって、一層逞しく稟々しく輝いて、男の俺から見ても魅力的だった。お前がもし起きていて
そうなったら、あの田宮の肉体には抗し切れないだろうと思った。お前が深い眠りにあるだけに、お前のその表情には不自然な感情がな
く、自然でのびやかだったし、それだけに田宮がどんなにお前に興奮しているかと思うと、男の俺には自分が田宮になったようで、とても
興奮したよ」      

 今朝を思い返して興奮したらしく夫の動きが大きく強く深くなって、冴子にもその情感が伝染して、しだいに席巻されていく。              
 「田宮は何度か、お前の脚を肩に載せて入れようとしたんだ」        
 「まさか、そこまでくれば、あたしだって目が醒めるわ」         
 「一度か二度は入ったと思うよ。お前だって声を出していたもの。しかしお前が夢の中だから、躯を横にしたりするから続けるわけにい
かないんだ。不思議に嫉妬も怒りも感じないんだ。田宮に頑張れと声援を送りたい気持だった。田宮はしばらくお前を抱いていた」。

 「俺の方からはお前の裸の右側が、白く光って見えていた。しばらくして、お前の胸に掌を置いたままの田宮が俯向いたまま寝息をたて
ていた。俺の方は完全に目が醒めてしまたので、起きて風呂に行った。その時に、お前のここを見たら、濡れて流れていた。女は夢の中
でも出るのかと、あらためて女の性の深さを知った」             
 夫が青年のような熱情を込めて突き立てて来た。              
 「もしあたしがその時目醒めて、もし………もしよ……田宮さんに応じたら貴方どうする?」 
 「多分黙って見ていたろうな。あの時は、田宮にやられて、もだえるお前をぜひ眺めたいと真剣に考えた」                       
「 それ本気?」

冴子の言葉には期待感があったのを、惣太郎は見逃さなかった。      
「ああ、やってくれるかい?」                     
 夫が一体どこまで見ていたかわからなかった。本来なら決然と拒否すべきであるが、それを考えると、ここは夫に服従しておいた方が安全
だと判断した。それに夫の誘惑は、冴子に呪詛に捕らえられたような興奮を呼び起こす。     
 「ほんとうに、そんなことしてもいいの。あたしが淫らな女になっても知らないわよ」                                
 「いいんだ。お前だってまだ若い。これからまだまだ性の奥を知っていくんだ。俺の代わりを田宮がするんだ。田宮と俺は一身同体と思
えばいい」      

 「あなたまさか、もう田宮さんに、こんなこと話てるんじゃないでしょうね」
 「そんなことはしてないが、田宮を口説くことは簡単だ。あいつは身体も剛健だし性格もいい。それに第一、前にも言ったようにお前が好
きだ。男同志にも相性があって、田宮なら俺の身代りをさせてもいいと思っている。若いだけにきっと徹底してお前を歓ばせてくれると思う」                  

 夫が最後の律動を開始した。                      
 「あなた……いい……」                        
 冴子は眩むような陶酔の中で、夫と田宮の二人の男を受け入れているような感情に包まれて昇り詰めていった。
 にわかに捕縄から解かれたような気持が、さらに官能を強めていく。先ほどまで田宮の帰った後、一人で悩んでいた背徳の罪の悲嘆は、単
なる憂慮だったが、これでいいのだろうか。これからどうなっていくのか不安は残ったが、ともかく一つの大きな疵後が、これで完全に払拭さ
れたのは事実である。解放感を冴子は純粋に感じていた。もう絶対繰り返すまい、と心に誓ったばかりの田宮が、急に身近に擦り寄ってきた
ように感じられ、冴子は田宮の肉の甘さを思い返しながら、夫の胸にすがり付いた。  

 冴子が惣太郎と田宮も意図に、はっきりと気付きいたのは、惣太郎が冴子に、暗に田宮との情交を勧めるような話をしてから、数日後だっ
た。
 惣太郎が出版社から依頼されていた 
 「日本方言辞典」の締め切りが近付き、田宮が校正を受け持って、毎晩学校が終ると冴子の家に来て惣太郎と徹夜の状態で仕事をし、二
人共疲れ切って倒れるように、書斎で寝ていた。実はその間にも、一、二度田宮と冴子は惣太郎の目を盗んで交わりを持ったのだ が、そ
れははかないものだった。                         

 やっと全てが脱稿した夜、三人は祝宴を開いた。酒が入り、すきやきの鍋を片付け、三人共風呂から出て、男達は浴衣に、冴子は絹の淡
いオレンジ色の胸の広く開いたネグリジェに着替え、リビングに落ち着いて、さらにブランデーを飲み出した時だった。    
 「田宮君はセックスの日本語を幾つ言えるかね」             
 惣太郎が急に話題を変えた。                       
 「そうですねえ。交わり、交接、交媾、性交、肉交、交悦、媾合、房事、淫事、閨事、陰事、秘戯………それから………」              交わり、濡れこと、そんなところかな。古語ではつままぎ、くながひ、みとのはまぐはひ、方言では無数といっていいほどあるが、おまんこ、
おめこなんかが一般的だね。おめこは御女子で実は非常に上品な言葉だったんだ」     

 「知らなかったわ。あたしの育った岡山の田舎では、大変下品な言葉で、女の子なんか絶対に口に出来なかったのよ」                 
 冴子が酔いに染まった顔を、ブランデーグラスを頬に当てて冷やしながら口を挟んだ。                                
 「でも、つままぎ、とか、くながひとはどういうことかしら」       
 「そう、それが問題なんだ。つままぎは妻間技とも妻魔戯ともいわれるが、前は妻との間の技だし、次は妻と魔羅の戯だろう。つまりど
ちらも妻とのセックスのことで、夫と妻とのセックスではないの。昔は一夫多妻だった。その前は母性中心社会だった。だからセックスは女中
心だったのじゃないのかと最近思い出したんだ。妻イコール女と考えると女との技、戯なんだな。技とか戯、特に戯は戯れであり遊びという
ことだ。一人の妻と一生遊ぶというのはおかしい。これは不特定多数の女でなければならない。その女を妻と言っているのが面白い。

 昔は結婚しても結構他の男と遊んでいたのではないかと想像させられる」     
 「なんだかこじつけの理屈みたい」                   
 冴子が少し酔った舌足らずの言葉で言った。                
「いや一概にそうとも言えませんよ。昔は旅人の接待に、自分の妻を貸す地方だってあったんだから」                        

 田宮が顔をしかめて真剣な顔で言った。                 
 「話はそれるが、その妻を貸すって話だけど、それは本当に旅人を慰めるためったのだろうかねえ。何だかそうではないような気もするん
だが」       
 「例えば昔は大家族制度で労働力に子供を沢山生む必要があったし、地域が限定されていたから、血族結婚の劣勢遺伝などもあって、他
の男の種を貰う必要もあったと、考えていいのではないでしょうか」                

 「そうだね、いずれにしても性もおおらかだったのだろう。この雑誌最近見付けて来たのだけど、君達知っているかい?」                
 惣太郎が取り出した雑誌を田宮が受け取って、ぱらぱらとページをめくっていたが、                                  
 「これは驚きですね。皆家庭の主婦ですねえ」              
 「なんのこと?」                           
 冴子が田宮に身を寄せてその雑誌を覗き込んだが、            
 「まあ、これ本当なの?」                       

 顔を上気させて羞恥を浮かべた表情で言った。そこには、各ページに三枚くらいづつ、全裸の女の写真があった。上品にすましてポーズ
をとった写真もあったが、殆どが脚を開いたり、自慰の格好だったり、ひどいのは性交のクライマックスを撮ったものまである。そしてその写真
には、必ず……妻が貴方との夜を待っていますとか、若い男性との三人のプレーがしたい………などと書かれている。
いわゆる夫婦交換雑誌である。      

 「現代でもこういうことが行なわれているんだ。現代には、血族の劣勢遺伝も子供の問題もない。ただ性のエンジョイなんだ。娯楽の少な
い昔にもきっと、こんな遊びはあったと思うなあ。旅人を泊めるのも、地域の中の男では後が煩わしいが旅人なら、一夜限りだし、そんなとこ
ろだったのじゃないかな」     

 田宮が熱心にページをめくていたが、                  
 「それにしても皆写真が下手だなあ。かえって美しい女体が汚く写っている。興味ががた落ちですね。
これなんかまだいい写真ですが、これくらいのモデルなら、もっと美しく魅力的に撮れるんだがなあ」               
 ブランデーを干しながら、残念そうに田宮が言った。           
  1. 2014/12/02(火) 15:28:31|
  2. 花濫・夢想原人
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花 濫 第4章異常な契約4

 田宮と酒場で共謀をした時、田宮は別れ際に、じゃあ奥さんに、そんなことが出来るかどうか伊香保で試してみます、
と気楽に言っものだった。
自分も、それで冴子が若く美しくなれば俺も満足なんだから、と気安く答えた。
今それが悔やまれる。       

 しかし、こうなった以上なんとか事態を収拾しなければならない。一体自分は何を望んで、こんな取り返しのつかない
ことをしてしまったのだろうか。酔いが回ってくる頭で、惣太郎は前方の襖に描かれた、野菊の墨絵を見ながら考えてい
た。          
 妻に男を与えて性の深淵を教え、より女らしく美しく変貌させ、さらに妻が若い男と官能に狂う姿に刺激を受けて自分も
再起したい、というのが、そもそもの願いだった。そして事実、田宮に組敷かれて恍惚に悶える妻の姿態に、いままで妻
に見たことのない、女の美しさを見出したし、妻を犯す田宮と自分が何時の間にか融合していて、はじめて妻を抱く田宮
の心の高ぶりや、いつまでも強靭な体力にものをいわせて、さまざまな体位で縦横無尽に妻を攻める快感に陶酔し、つい
には自分も達してしまうほどであった。

多分この刺激は、どんなに美しいほかの女を抱くよりも刺激的だろうし、事実惣太郎自身、これ以上の快感を覚えたことは
ない。                           

 妻が、あんなに安々とほかの男に身体を開いたことには驚いたが、それとて自分と田宮がそうし仕向けたことで妻に罪は
ないのだから、妻が背信行為をしたと怒る気もない。それどころか、いままで味わったこともない、田宮の強壮で巨大で持
続力のある攻めを、けなげにも受容して歓喜に悶える妻の姿がなんと美しく華麗に見えたことだろう。頑張れよ、と声援しれ
やりたい衝動に駆られたくらいである。

結局は、自分という性の敗者が、健康な若い田宮という男の肉体を使って、自分の疑似行為として妻を満足させ、かつ自
分も、女が男から与えられる快感の情緒を、男でありながら心も躯も知り抜いた妻を通して受けるという、男と女の両方の官
能の歓びを同時に味わい、さらに自分の最愛の妻が男に犯される嗜虐と犯す男の加虐の双方の悦楽を甘受出来るという、

常識では考えられない悪魔の行為を思い付き実行した。
そしてめくるめくような満足すべき結果を得た、ということだ。                               
先程の発狂しそうな程の官能の刺激と興奮は、惣太郎にとって、今となっては、もう手離せない麻薬のように思われる。

今後も、妻と田宮の交歓を続けさせながら、それを盗視することによって、自分は若返りたいし、妻も満足させていけばいいの
だ。

田宮の人格など考える必要はない。
我々夫婦にとって、田宮は最良の性具であればいいのだ。彼とて滅多に味わうことの出来ない、冴子のような若く美しい人
妻との交わりが、堂々と憚ることなく出来るのだから、言うことはあるまい。妻に心粋し、愛する妻子があって性戯に卓越し、
かつ後を引かないように、一定の時期に我々夫婦のもとから必ず去る男。そして若くて、清潔で、健康で、性格のいい男。
さらには惣太郎に柔順で絶対反抗出来ない男。悪魔のたくらみを実行するには、このような非現実的ないろんな条件が満
たされた男が必要だった。

 しかし、現実にそんな条件に合った男が居る筈はない。惣太郎は、妻をほかの男に抱かせるということは、非現実な空想
の世界の出来事として、思いの中でだけ楽んできた。そうした頃、惣太郎は互いの妻を取り替えて媾交するという夫婦交換の
雑誌を書店で見つけた。雑誌には、夫婦交換を希望する大勢の夫婦の妻達の、様々な姿態を露わにした写真が掲載され、

また実際の性の交換体験が微細な表現で生々しく書かれていた。
現実に、自分の想いを実行している者がこんなにも居る。
自分の想いは夢ではない。夫婦交換誌との出会いは惣太郎のとって衝撃的な事件だった。大学の教授である惣太郎がまさか、
そんな雑誌に投稿することも冴子の裸体写真を掲載するわけにもいかないが、冴子に若い男を与えるという考えが、そのとき
以来夢ではなく、現実に可能な計画として惣太郎の脳裏にこびり付いて離れなくなっていた。                       

時計が一時をさしても田宮と冴子は帰ってこなかった。酒は大きな銚子に五本も残っていたのに、もう最後の一本だけになっ
ていた。こんなに呑んだのは久し振りだが、まだ酩酊はしていないぞ、と惣太郎は自分につぶやいた。一人で部屋の布団の
上で呑む酒は、動くこともしゃべることもないので酔いの程度を判定する基準がなかった.

………それで、やっとその条件に適合した男として田宮を選んだのだ。………いや違う。田宮が妻のマッサージをしたあの
時に、妻と田宮の間に渦巻いた、男と女の熱い情緒を、ふと垣間見た時に、田宮の存在に気が付いたのだった。
その後、田宮に冴子を与える空想は、しだいに惣太郎の中で幾度も繰り返され、その度にしだいに現実味を帯びて来た。空
想が現実になるにつれて、惣太郎は幾度も慎重に考え抜いて見ると、それまで考え続けた男の条件を、田宮は偶然にもすべ
て兼備えていたのだ。さらに幸運だったのは、冴子も田宮に好意を抱いているということだった。

自分と妻と、そして男が、互いに好感を抱いている、という事実は惣太郎に勇気を与えた。                 
妻と田宮が、こんなに遅いということは、あれから一体、何度交わりを繰り返しているのだろう。酔いと疲れで、惣太郎の身体
は反応を示さないが、脳裏には、狂乱状態で官能にもだえている妻の白い躯と嬌声が浮かんでは消えた。

そして、三人が互いに好感を抱いていることを想い付いたことと、自分が眠っていると信じているとはいへ、この時間になっても
帰って来ない妻はもうすっかり田宮の肉に溺れ切っているに違いない。妻が、田宮に溺れれば一番いいのだ。そうなれば妻は
田宮の言うことを神の言葉にように素直に聞く。そうなれば田宮と自分で共謀すれば、妻は想うように操縦出来るのだ。       
 律儀で物事をいい加減に処置出来ない性格の惣太郎にしては、悪魔の囁きとはいえ、あまりにも放埒な気構えになってい。
冷酒の酔いが回ってる証拠だった。

 正気に返った冴子に、いきなり自省の言葉を聞かされて田宮は慌てた。前にアメリカでマッサージのアルバイトをしていた頃、
田宮好みの素敵な人妻が治療に来たのを、マッサージの技術で誘惑し犯したことがあったが、その時に理性を取り戻したその
人妻が、狂乱状態になって田宮を罵り、そればかりか自宅に帰ってその人妻の主人に告白してしまい大騒動になった苦い経験
があ
る。      

 今度の場合は、主人の惣太郎と共謀であるから、その心配はないが、今、冴子に泣かれては面倒であるし、今日はじめて
知った冴子の躯の魅力は、当分失いたくない。人妻の主人の公認で浮気出来るというようなことも、そうざらにあることではない。
このチャンスは失いたくなかった。          

 田宮は冴子をもう一度抱いた。三時近くに部屋に帰り、三つ並べて川の字に敷かれた布団の端に寝ている惣太郎に気を使いな
がら、田宮はその反対側に寝た。冴子は丹前を脱ぎ浴衣姿で、鏡台の前に座っていた。深夜の室内には惣太郎の鼾が、規則
正しく獣の咆哮のように響いていた。

 髪を梳く冴子の白い二の腕が、肩の付け根まで捲くれた浴衣から抜きん出て、弱い明かりにむちりと白く浮き出ていた。まだ
血の色が消えない鏡のなかの顔は、ほんのりと目許に朱がさし、上気した頬が余韻の火照りを残している。布団に入った田宮
が、横臥して、鏡の中の冴子と目だけで話し合っていた時、突然、轟くような地鳴りの音が静寂を破った。鏡が少し揺れ、そ
中の驚いて櫛を取り落とした冴子の顔が恐怖に引きつって一緒に揺れていた。
 冴子が小さく悲鳴を上げた。                       
「屋根から雪が落ちた音だよ」
 囁くように言ったつもりだったが、惣太郎の鼾が、つっと止んだ。

 冴子が慌てて立ち上がり電気を消して、真ん中の布団に潜り込んだ。暗闇のなかで、冴子の寝化粧の匂いが、微風に混じっ
て甘く漂った。惣太郎の鼾は止んだままだったが、規則正しい寝息が続いていた。起きている気配はなかった。

 暗黒の中で田宮はなかなか寝付けなかった。疲れ切ったような気もするが、体内にはまだ消化し切れない欲望が渦捲いてい
る。すぐ隣に寝て、息を潜めているように身動きもせずにいるらしい冴子に、食べはじめを中断された馳走を目前にした食欲の
ような焦燥をを感じていた。

 田宮が冴子をはじめて見たのは、まだ学生の頃で、調布の古刹のような屋敷を訪れた時だった。
 屋敷のまわりに幾本かある欅の大木が、緑の霞のような新芽を萌え出しはじめた季節だったと思う。早春の麗らかな陽の中か
ら入った昏い玄関に、大島紬にき黄八丈の帯をしめた、うら若い女が出迎えた。磨かれた一枚板の鈍い反射の上に、背後の庭か
らの光を背負って正座して掌を付いた挙措の美しい女が、学校で話題になっている惣太郎の新妻であった。

 抜けるように色の白い女で、瓜実顔の伏せがちの目に、長い睫が美しく震えているが、どこか尼僧のような冷やかさが漂ってい
た。その冷たさは処女の青さのようでもあり、また湿り気のない冷淡な女のようにも見えた。
少なくとも、当時の二〇才の快活な田宮達には似合わない陰湿な女だった。その後も何度か田宮は冴子に会っているが、彼女
の印象は、初対面の時と変わることはなかった。

 冴子の変貌振りに驚かされたのは、アメリカから帰国した二年前の夏だった。帰国の挨拶に訪問した時、別人のようにぬれぬ
れとした黒い瞳が、男心を誘うように輝き、表情も明るく豊かになっていた。ピンクのノースリーブから抜きんでた腕がむっちり
と艶かしく、大きく開いた胸からこぼれそうな乳房の膨みが、思わず生唾を呑み込むほど妖艶である。ミニスカートの裾を圧倒
してのぞいている豊かな肉付きの太腿や引き締まった脛も吸い込まれるような白い光沢に輝いている。古いくすんだ部屋に、そこ
だけ明かりが灯ったような冴子の輝きに、田宮は驚愕の目を離せなかった。

 それ以後、田宮はアメリカに残してきた妻子への恋情を忘れがちになっていた。惣太郎の家にいき、冴子に会うことですべて
が慰められた。        
 惣太郎から今回の共謀の申し出を受けた時、躊躇した理由は、冴子は欲しかったが、なぜか冴子に憐憫の情を抱いたからだ。
狡猾な惣太郎の性の餌食にするには、冴子はあまりにも清純過ぎるように思えた。たしかに成熟した女のしたたるような瑞々しさを
たたえた冴子の躯は、田宮を魅了してやまないが、野菊のように素朴で清純な冴子の心を思うと、そんな冴子を蹂躙しようとする
惣太郎の汚さに怒りを感じたし、躊躇しながらも押え難い誘惑に駆られる自分にも嫌悪を感じ
たからだった。                  
 
 しかし、あの酒場で惣太郎が熱心に口説く言葉に、田宮は妻を愛する夫の真実の姿を垣間見た気がしたし、肉体の衰えに憂悶
する男の救いの声も聞いた。
 よく考えて見れば、冴子の美しい心だけ何とか解決すれば、三人三様に悪いことではない。

 そう考え始めていた矢先に、田宮は惣太郎の家で冴子にマッサージを施した。その時の冴子の恍惚の表情に、冴子が素朴で清
純なだけに、惣太郎とうまく共謀すれば、冴子の心を瑕付けることなく、実行できる自信を感じた。
 まだもの心もつかぬ少女を籠落するのに似た痛みは残ったが、それも彼ら夫婦が倖になる手段とすれば、さして問題はない。
勿論、帰国以来羨望の的であった冴子を味わえる自分に異存がある訳ではない。                     

 冴子が電灯を消したあと、暗黒の闇だと思っていたのが、目が馴れて見ると、庭側の丸窓から、暮色のように雪明りが差し込
んでいて、隣に掛布団で顔を隠して寝ている冴子の長い髪の散っているのさえ見える。惣太郎の寝ている部屋の奥までは見えない。    
 枕から垂れてシーツを流れ畳の上まで散っている艶やかな冴子の髪を、横目で見ながら田宮は困惑に溜息をついた。惣太郎の
申しでに承諾をしたのも、一度だけ羨望の冴子の躯を味わわせて貰うつもりで、案外気楽な気持だったのに、躯を合せてからは、
まるではじめて女体を知った少年のように夢中になってしまった自分を我乍らどう御することも出来なかった。

 冴子の躯が素晴らしかったのは言うまでもないが、同時に、彼女の清純な性格から来るいとしさは、自分の心が自然に冴子の
中に溶け込んでいくような陶酔を誘った。
 強引な田宮の性戯に、何の技巧も演技もなく、純粋に昇華していく冴子のすなおさに、田宮は圧倒的な征服感を満足させられた。
 それはとりもなおさず自分への柔順さえのいとしさでもあった。

 与えられる強烈な快楽に逡巡ながらも、躊躇も偽態も拒否もなく、率直に反応してくるいじらしさは、田宮に押え難い欲望の炎を
幾度も燃え上がらせて止まなかった。共謀どころか、完全に冴子という女に溺れ切っている自分を発見して、田宮は慌てていたの

である。              
 冴子の髪が昏い闇に溶けながら、白いシーツの上だけ鮮明に見える。その髪がかすかに揺れた。
 布団を被ったまま寝返りを右に打って、こちらを向いたらしい。掛け布団の襟から、白い額が半ばのぞき、富士額の生え際が見
えている。田宮はゆっくりと冴子の布団に手を伸ばした。
 やがて、ごわごわとした木綿の奥に、柔らかい暖かさに包まれた女の肉の弾みが伝わってきた。
 田宮は惣太郎のまたはじまった鼾を確認すると、はじかれたように冴子の布団の中に身を移した。   

 部屋の空気の異常なざわめきに、惣太郎が目を覚ました時、もう闇は裂けはじまっていた。ふと隣の布団を見た惣太郎は、そこ
に横向きにしゃがんで、乗馬の騎士のような奇怪な動作を激しく繰り返している影絵のような黒々とした男の裸体が浮かび上がって
いるのに仰天した。
 よく見ると、その黒い男は薄昏い中にもはっきりと白さをにじませている女の足を、肩に担いでいる。 田宮と妻の媾交であること
はすぐわかったが、肌の匂いが届くほどの至近距離で展開されているあられもないふたりの狂態に、惣太郎の方があわてたのだっ
た。

 もう終期に近いのか、男の動きと妻の呼吸が興奮の極みに達している。片方の耳元で聞こえる打ち合うふたりの肌の音や水を叩
くような体液の飛び散る音が、昇り詰めたふたりの熱気を散らしている。

 突然、惣太郎の掛布団がぐいと引かれたような感じがした。
 間を置かず掛け布団は規則正しい隠微な響きを伝えてきた。ラストスパートの深い陶酔にふたりは気が付かないらしいが、田宮
の膝が惣太郎の掛布団の端を踏んだらしい。まるで肌を合せて懸命に律動を続ける田宮と妻の熱気に巻き込まれているような感じ
った。田宮の圧倒的な力に妻と一緒に席巻されたような嗜虐の陶酔が惣太郎の脊椎に奔った。布団がもう一度大きく動いて、振動
が止んだ。

 体位が変わっていた。田宮が担いでいた妻の足を肩からはずし、今度は両手で踝を掴んで妻の股間を両側に押し広げた。オー
で船を漕ぐように妻の足をあやつりながら、その中心で激しく腰を使いはじめた。            

 ひゅうひゅうと熱病患者のような荒い呼吸を、掛け布団で口を覆って押し殺して吐いている妻が、耐えられなくなったのか、小さ
く声を放った。田宮があわてて広げていた妻の脚を離して妻に蔽い被さり接吻していった。声を上げさせないためだろう。妻の脚が
開いたまま布団に落ちた。片方の妻の足が惣太郎の掛布団に重く鈍い衝撃を与えて落下した。それでもふたりは気が付かない。

 「いく……! 
 と噛み殺したような妻の声をたしかに惣太郎は聞いたと思った。それと同時に田宮の腰が狂ったように激しく動き出した。ふたりの
大胆さが惣太郎をも大胆にした。
 惣太郎は思い切ってゆっくりと横になり、布団で顔を半ば隠し、目だけを出して、片手を掛け布団のなかから、静かに絡んだふた
りの方に伸ばしていった。
 指先に伝わるふたりの律動が、伸ばすにつれてしだいに激しく伝わり出したと思った瞬間、指先に暖かい妻の肉が触れた。広げた
太腿のあたりらしい。妻は全く気付かず、恍惚の絶え入るような荒い息を弾ませながら、田宮の動きにあわせて腰を振っているのが、
触っている太腿の筋肉の緊張振りでよくわかる。

 惣太郎は思い切って掌をさらに奥に進めながら、太腿の内側に回して見た。掌の腹で感じていた妻のたぎるような熱い内腿の感触
に、掌の甲に固い田宮の腿の感触が重なった。どうなったのか分からないが、終局を迎えて、夢中で躍動するふたりの肉に、惣太郎
は挟まれていた。汗ばんだ二つの肌が熱く燃えて、互いに牽制し合うように、惣太郎の掌を挟んで揉み合いぶつかり合っている。
 惣太郎は自分がふたりと今一体になっているのを感じていた。手のひらにじかに感じるふたりの動きと熱気が、惣太郎にも官能のた
かぶりとなて乗り移って来る。惣太郎もふたりの歓喜に合わせて、眩むような快感を感じていた。                     
 いよいよふたりの果てる時が来たらしい。狂ったような激しい動きの後、ふたりはぐったりと弛緩した。最後の激動の瞬間、惣太郎
は掌を抜いて、ふたりに背を向け目むった格好になった。
 二人に背を向けたまま惣太郎も自分が果てたように荒い呼吸をしていた。  

「風呂に入って来る」                         
 田宮の囁くような声がして、立ち上がっ気配がした。            
「もう何時かしら。あたしも行こうかしら。もう起きてもおかしくない時間?」
 机の腕時計でも見に行ったのか、しばらく間を置いてから、        
 「そうだね。六時半だから、起きてもおかしくないね」          
 田宮のやはり押し殺した声がした。妻の起き上がる布擦れの音に、今なら起きたのが見付かっても不自然ではないと思って、惣太郎
は寝返りを打って、ふたりの方を見て、思わず布団に顔を隠した。

 田宮は窓を向いて浴衣の帯びを締めていたが、冴子はまだ全裸のま腹這いの格好で浴衣を探しているらしい。斜め向こうにむき、さ
しはじめた朝焼けの茜色に肌が染め上げられている。満ち足りた肢体が艶々と輝いている。惣太郎のすぐ横にある豊かな臀部の割れ目
から太腿も内側に、筋になって流れている体液が、血のように赤く見えた。        
  1. 2014/12/02(火) 15:26:06|
  2. 花濫・夢想原人
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花 濫 第4章異常な契約3

 「あっ、あっ、ああ…………」                     
 冴子が澱んだ空気を切るような叫びをあげた。あんな巨大な陰茎が、自分しか知らず、まして子供を生んだこともない冴子の膣
に納まり切る筈はないと、凝視している惣太郎の目の前で、彼の巨根は蛇が大きな獲物を呑むように、苦しそうに煽動運動を繰り
返し内腿を痙攣させている冴子の胎内に深々と埋め込まれていく。いっぱいに押し広げられた膣が、さらに深く呑み込もうと微妙な
うごめきを繰り返している。

 惣太郎は自分が犯されているような衝動に襲われて、鼓動が連打し、もう断念していた自分の股間が、痛いほど漲ぎっているの
を感じ、思わずそれを自分でしごいていた。                       
 巨根は田宮が腰に力を入れるにつれて少しづつ埋没し、その度に冴子はあられもない悲鳴を上げた。
 白い腕が下から差し上げられて、田宮の盛り上がった筋肉の見える背中を抱き、きりきりと爪を立てている。田宮の下で白く見え
る冴子の躯が、田宮の身体の筋肉が盛り上がるたびにはげしく痙攣し、横にあふれていた長い髪が漣立って震えている。                      
 目の前に、妻が下になって、ぴったりと身体を合せて折り重なって抱き合い、股間は巨根が妻の秘所を極限まで拡張させて埋没
している。繋ったままのふたりは、腹部だけ荒い呼吸に波立たせてじっと動かない。時々、妻が「うん……」とか「はっ…」という、
短い声を上げ、わずかに身をくねらせている。
 冴子の胎内の粘膜と陰茎が微妙な動きと刺激に、互いしか分からない会話を交わしているのだろう。
 時々結合部分がひくひくと微妙に蠢き合っている。視ている惣太郎は、今まで自分も田宮と一緒に冴子を犯しているような錯覚を
覚えていたのが、その微妙な感触がわからない焦燥感に身を揉む一方で、生れて初めて若く逞しい男の巨根を捩込まれて、妻は
一体いまどんな快感を感じ、どんな感情で陶酔しているのだろうか、と妻が今の瞬間味わっている官能の響きを自分も一緒に感じて
いるような錯覚にも襲われる。                        

 広い額に髪を垂らし、眉根に皺を寄せ、苦痛の表情で妻に接吻している田宮が、いま妻の奥深くに埋没して感じている妻の躯の
あふれ方や柔らかさや熱さや包み込む力の強さ、そして微妙な収縮の痙攣が彼の亀頭に与える快感の具合も、また自分の分身の
ような妻が味わっている、田宮の巨根の埋没による膣の拡張感、子宮の圧迫感、陰核の快感、そして男の脈動の刺激が粘膜に伝
わる感触も、妻の躯のすべてを知り抜いている惣太郎には、手に取るようにわかる。惣太郎はいま妻を媒体として、性交時の男と
女双方の官能の業火に同時に身を灼かれるという異常な体験に我を忘れていた。                       

 しばらく深々と埋まったまま、肉の会話を楽しんでいた田宮の陰茎がゆっくりと抽送を始めた。                             
 「あぅっ、ああ………」                        
 田宮が動き始めると、妻が突然激痛でも受けたような叫び声を上げて喘ぎ始めた。自分との場合に妻がこんなに最初から声を出
すことはない。やはり田宮の壮大で硬度を維持した男根は、とてつもなく激しい刺激を妻にあたえながら妻のすべてを席巻していくの
だろう。注意して視ると、冴子の陰部からは田宮の巨根が抜き出されると、愕くほど多量の体液が流れ出て股間を筋になって流れ、
肉柱の侵入時には陰嚢にそれがべったりと付いて、猫が水を呑むような音を立てている。

 冴子は鮮烈な快感に我を失っていた。最初田宮の巨根を掴まされた時には、それが入ったら壊れてしまうような恐怖に駆られたが、
実際に埋没してくると、ずんと重い衝撃が秘所に奔った。その衝撃が痛みに変わって、引き裂かれる恐怖に悲鳴を上げた。それに
気付いた田宮が奥深く入ったまましばらく静止して休んでくれている間に、冴子の胎内に思いがけない快感が滲み込むように広がっ
ていくのを覚えた。

 強い圧迫感を感じる田宮の陰茎に深々と貫かれ、じっとしていても男らしい力強さで脈動を伝えながら、さらに圧倒的な勢いと硬
度で膨張感を増してくる。子宮が灼けつくように熱くなり、膣がさらに強い刺激を欲して陰茎の動きを需め、いつの間にか自然に腰を
揺すっていた。田宮が動きはじめると、躯を貫くような強い快感が脊椎を奔り、目の中には深紅の霧が涌いて視覚が麻痺し、冴子
は自分が何を言っているのかわからなくなった。            

 田宮の動きがしだいに早くなった。妻がしっかりと田宮の陰茎を咥えたまま腰で円を描いている。喜悦にのたうつ妻の白い躯が光
沢をおび、腹や腰の柔肉が、硬い男の筋肉に打ち据えられて音を立てている。田宮が激しく腰を波打たせた。小さな田宮の臀が抽
送のたびに強く締まり、そのたびに妻の躯が浮きあがるように橈った。濡れて光る巨根が妻の股間でちらついた。            



 田宮が妻の脚を肩に担ぎあげて攻め出した。交合の部分が惣太郎の目にはっきりと見え出した。妻の柳眉を歪めた喜悦の顔も揺
れ動かされる妻の担がれた脚の間から見える。見覚えのある妻の秘所から体液がほとばしり出て、激しく出入りする憤怒の様相の陰
茎が、妻の体液に、ぬめった光りを放っている。
  薄い桃色の粘膜が節くれた陰茎の出入りのたびに歪んで捲れている。妻が身も世も無い風情で腰を波打たせた。思い切り突きま
くっていた田宮の陰茎が、暴れ過ぎて目標を外して抜け出て歪んだ。開いた妻の秘所からどっと体液が流れ出た。     
 田宮は妻の担いだ脚を離して正常位に戻ると、再び挿入した。妻のぬれぬれと練れた陰門が、今度は一気に根元までの挿入を許
した。妻の臀のあたりのシーツに体液が垂れ落ちている。田宮が、妻に無者ぶりついた。妻が田宮の頭を掻き抱いて田宮の唇を吸っ
た。田宮が狂ったように腰を打ち振りながら、田宮の腰の動きに合せて揺れている妻の大きな乳房を田宮の手が揉みしだく。        
 「いく! いく!」                          
 妻の絶叫が静寂を破って空気を震わせた。                
 しっかりと抱き合い、一つのリズムに同調して、ふたりの身体がひとつになって激しく躍動している。
 妻の両足は、田宮の黒く細い腰を締め付けて背中で組まれ、合さった脚首が、男の激しい腰の動きに一緒に揺れている。
 田宮が呼吸を荒げ、冴子が連続的に嬌声を発し、天蓋の中は、二人の汗と体液の隠微な湿った匂に満たされた。                             
 田宮が最後の激動の後、腰をひねって冴子の白い腹に放った。冴子の躯が、快楽の余韻を残してひくひくと痙攣している。
惣太郎は、ふたりの最期を見届けた時に、自分の躯が妙に弛緩したのを覚えて、思わず股間に手を入れた。ふたりと同時に自分も果
てていたのだった。                    

 二人が愛撫を交わす前に、惣太郎がその時の冴子の様子を見て、それ以上の行為に進ませるかどうか判断し、承諾ならばそのま
ま帰り、拒否ならばライターの灯をそっと点すことに田宮と約束が出来ていた。

 だから惣太郎が承諾をあたえた後すぐ還らずにこの場にとどまり、秘事であるべき二人の交接のなまなましい一部始終をつ
ぶさに視ていたことが田宮に知れたとしても、たいしたことはないが、男二人の企みも知らず田宮にそそのかされて、女の業
に無理遣り火を付けられて、無我夢中で悦楽に狂奔した妻には、それだけで生まれて初めての激しい衝撃を受けているのに、
まして夫がその一切を盗視していたという事を知ったら、本当に発狂するか卒倒しかねない状態に陥ることはたしかである。
 
そのために惣太郎は終焉を迎えた二人を残して消える必要があった。ふたりで一つの業火に飛び込み、
一体に溶け合って、歓喜の苦闘と狂乱のエクスタシーに身を焼き焦がした二人は、いま終局を迎えて、その余韻を互いの身
体で愛惜しながら、弛緩して折り重なっている。田宮の浅黒い身体が、弛緩して両腕をシーツの上に投げ出した妻の白い躯に
覆い被さっていたのが、死体が投げ出されたように、ごろんと妻の横にもんどりうって転がった。                

 その田宮の股間には、萎えはじめてはいるが、まだ力を消失し切っていない陰茎が、曲がり胡瓜のように頭をもたげている。
その巨根をいっぱいに含んでいた妻の陰唇は、まだ閉じ切らず、喘ぐ金魚の口のように、ひくひくと開閉しつつ、体内に残留し
た体液を滲み出させている。ようやくあえぎの治まりかけたぬめぬめと白い滑らかな下腹には、田宮が放出した色濃い粘質の
体液がしみのようにあちこちに付着して光っている。                      

 しばらくして冴子は、脚も大きく開いたまま、田宮が抜け出したままの格好で、放心状態でいたのを、やっと正気を取り戻し
はじめたのか、けだるい動作で脚を閉じ、ゆっくりと田宮の方に横臥した。
 問題はこれからだ、と惣太郎は田宮の萎え切らぬ陰茎を見ながら思った。自分と違って、若い二人のことだから、このまま
終わるとは限らない。さらに熱く燃え上がる場面が再会される可能性は充分ある。そうだとすると、この場を離れ難い。しかし
終りなら一足先に部屋に帰っていなければならない。
 
 惣太郎がそう逡巡していた時、田宮がごろりとやはり緩慢な動作で妻の方に横向きになり、上側の右腕をけだるそうに挙げて
妻の背中に回した。すると妻もそれに応じて、するりと田宮の躰にすがり付くように身を寄せた。惣太郎は戻りかけた体の向きを、
もう一度なおして杉の幹からふたりを凝視した。

 「うちの人どうしているかしら。心配だわ」
 田宮の胸の中から妻のくぐもった声が聞こえた。小さいが意外にはっきりした声だった。                               
 「先程部屋に還った時、大きな鼾をかいて寝ていたよ。咳払いを何度かしてみたけど、全く気付かない
ほど、よく寝ていた」
 田宮は真実そうに嘘を付いた。                      
 「それなら安心よ。お酒に酔って寝てしまうと簡単には起きない人なの。………………それにしても、
あたし達一体どうしてこんなことになったのか知ら…」

 悲嘆にくれたような妻の声だった。その声が終らないうちに妻が、あっ、と一瞬息を呑んで、小さく言った。田宮の妻の背中
に回した手が、いつの間にかさがって、くの字に曲げている妻の後ろから股間に伸びている。惣太郎からは見えないが、後ろか
ら妻に触れているのだろう。囁くような会話が途切れて、二人は横向きに寝たまま口を合せた。妻の手が田宮の肩にそっと掛か
った。浅黒い陽灼した肩の妻の真っ白な手は、最初、静かに置かれたままだった。田宮の接吻と愛撫に、拒否を示さないしる
しのような触れ方だと惣太郎は思った。       

 官能の火が消えかかると同時に正気にかえり、後悔を示す冴子に驚いた田宮が、慌てて冴子に触れたのは、まだ官能の余韻
が冴子に残っている内に、再度冴子を歓喜の業火で狂わすことで、彼女の理性を奪おうと思ったからに違いないと惣太郎は考え
た。惣太郎も田宮も、行為の後の冴子の反応までは計算していなかった。
 その後、ふたりはひしと抱き合ったままで、互いの唇を求め合っているだけである。冴子の中心に触れていた田宮の手も、今
はややまるくして横になている冴子の背中を静かに愛撫しているだけで、互いに声もない。いつまでも続く長い抱擁である。                               
 惣太郎はしだいに自分の脚に疲労が滲み出すのを感じていた。そっと、時計はして来なかったが、もう二時間近くは立ち続け
ていると思った。田宮の肩に置かれていた妻の手に力が入りはじめている。必ずもう一度ふたりが狂うのは時間の問題だと思った。                            
 貞淑な妻がまたあられもない姿態で狂う。今まで妻の躯の奥で眠り続けていた女の業が田宮によって目覚めたのだ。本来は、
これが健全な齢相応の冴子の性の姿だったのだ。一度の交歓さえままならぬ、自分のような初老の男しか知らなかった冴子が、
相応の男性の強烈な性を体験して脱皮した。妻はイブのように悪魔の林檎を食べてしまった。妻はもう自分など男とは思わなく
なってしまうだろうか。惣太郎は強い悔恨に襲われた。目前で、若い男に抱かれている妻が、もう自分を捨てて遠くに去った他
人のようにも思えた。馴れ果てた妻の裸身がまばゆく、悩ましく、輝いて見える。                        

 妻の少し曲げて揃えた脚に、田宮の鋼棒のよな脚が被さっている。妻の上半身だけが仰向になり、こんもりと盛り上がった乳
房を田宮の掌が揉みしだいている。一度満たされた後の愛撫は念入りで落ち着いている。浅黒く硬そうな身体と白く軟らかい躯
が複雑に密着して、ブルーの天蓋の中でうごめいているのが、突然、黒と白が絵具を混ぜたように滲んで溶け合って揺れた。
 それが自分の目眩いだと気付くには少し時間がかかった。                     

 脚が萎えるような感じで、その場にしゃがみ込みたかったが、杉の幹にしがみ付いて耐えた。幸い目眩は一度で消えたが、
惣太郎は自分の体力が、これ以上不自然な格好で立っておれないと判断した。異常な刺激と強烈な興奮が身体の調子を狂わ
せたのだろう。                          

 後髪を引かれる思いで惣太郎は杉林を出た。              
 雪の降りしきる庭に面した渡り廊下で、しばらく冷たい風に身を曝していたら、身体がしゃんとしてきたし、安酒に酔ったよう
に頭に溜っていた悪い血も下がって、悪夢から目覚めたような気分になった。                

 部屋に帰るともう十二時を過ぎていた。呑み残した冷酒を湯呑みに注いで独酌で飲んだ。薄暗い部屋の昏い翳に、今また激
しい交歓に、汗と体液の飛沫を散らしながら、抱悶している妻と田宮の狂態の姿が妖々しく揺らめいた。岡山の山奥で、隠遁
暮らしの父と二人で、静謐の中で孤高の白百合のように育った妻は、自分と結婚してからも、挙措のうつくしい無口なたおやか
な人妻だった。その妻が見せたあの妖婦のような狂態と嬌声は、一体どういうことなのだろうか、と惣太郎は冷静さを取り戻し
考えていた。                

 いままで妻が自分に見せていた優しさ、純情さ、素朴さなどというものは、実は妻の身慣れた天性の演であって、真実は淫
蕩で放縦で没義道な性格の女だったのだろうか。どう考えても、結婚してからのこの長い歳月を隠しおおせることは出来まい。
すると妻は田宮の圧倒的な性に触発されて、突然豹変したとうのだろうか。そうとしか考えられない。性愛は肉の歓楽である。
特に女は肉愛に抗し切れない生理的な本能を備えている。                  
先程妻が田宮に囁いた言葉が脳裏に甦ってきた。性宴の狂乱から目覚めた妻は、開口一番に夫である自分のことが気にな
った。次に、どうして自分がこんなことをしたのかと後悔と悲嘆の気持を田宮の語った。

 いつもの妻に還った証拠だ。泥酔から醒めて、一体自分がなにをしたのか、どこにいるのか解らないのと似通っている。
 やはり妻は女の宿命である、性への服従という生理的欲求から狂ったに違いない、惣太郎はそう結論付けた。               
 惣太郎は改めて、冴子ほどの貞淑な妻も豹変さす女の性への陶酔の深さと、生理的貪欲さに驚嘆していた。
醒めた妻に冷静さが還るのを恐れて、田宮が妻の肉体に再度火を付けたのは、田宮の立場からすれば当然だと思った。

 我に還った妻が、事態の重大さに気づき、悲嘆と驚愕に愁嘆場を演じられたら、田宮は自分と共謀だとも言えず、収拾の方
法がない。やむなく一時しのぎであっても、妻をもう一度官能の夢の中に閉じ以外に術はな い。勿論、田宮自身も、新しい
欲望の火がおごり出したのもいなめない事実でる。                

 今夜は酒の酔いも手伝い、田宮も強靭な肉体にものをいわせて、妻を官能の檻に閉じ込めて目覚めさせないことが可能だろ
うけれども、一体明朝妻は、どんな反応を示し、自分や田宮はどう妻を扱へばいいのか。
 自分は一切知らぬ事になっているのだから、平静を装っておればよいが、田宮自身はそうはゆかぬ。冴子が夫である自分
に告白して謝罪するということも、考えられないではないが、それではこれからの夫婦生活に大きな破綻を招くことにならない
とも限らない。

 だからといって妻が田宮に傾注し切って、自分から離れても困る。惣太郎は小さな蝋燭に火を付けた筈が、突然周りに引
火し燃え広がったような不測の事態に頭を抱えた。冷酒を注ぐ手が震えた。                                                      
  1. 2014/12/02(火) 15:23:32|
  2. 花濫・夢想原人
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花 濫 第4章異常な契約2

 惣太郎は田宮が急ぎ帰って来て告げた通りの時間と場所に、杉林にはいったい。 杉林の端からは、天蓋のベットの薄青
の麻のカーテンの編目の一つ一つがはっきりと見えるほどの近さだっから、田宮にいたぶられている妻の白い躯は、毛穴から
吹き出た汗の粒まで見えた。斜め向こうに向いて仰向けに寝ている妻の裸体は、上体をやや横に曲げて妻の横で片肘を付い
いる田宮の頸を上げた両腕でしっかりと抱いている。
上げた腕の付け根から汗ばんだ脇腹が乳房の側面の厚みと重さを含んで、激しく喘いでいる。その脇腹につくほど大きく曲
げて開いた白鳥の羽ばたきのように見える白く輝く脚の中心の翳りでは、田宮の指がせわしなく動き続けている。妻の右足の
踝に田宮が脱がせかけた下穿が白いリボンのように引っ掛かって田宮の掌の動きを誘うように揺れていた。           
 田宮の浴衣が剥れかかって、筋肉質の下半身が剥き出しになっている。男らしい締まった堅い肉質の田宮の右脚が、冴子
のしなやかな左脚に絡んで冴子が腿を閉じるのを防いでいる。一体田宮の指は妻の体内でどんな動きをしているのだろう。
妻の躯が時々、強烈な電流を流されたように突然痙攣してのたうち、それと同時に耐えられない嬌声が、嗚咽のように聞こ
える。            
 田宮の掌が頸に掛かっている冴子の片手を取った。あまり懸命にしがみつく冴子に苦しくなったのかなと惣太郎が思ったが、
それは間違いであることがすぐにわかった。田宮はその掌を自分の股間に導いたからだ。よく目を据えて見ると、陰になった
昏い田宮の股間に何か太い木根の切株でも挟んだと見間違うほどの太さと長さの陰茎が隆々と聳えていた。
惣太郎は今まで見たこともない巨大な陰茎に思わず息を呑んだ。冴子の白い掌がおびえたようにそれにおずおずと巻き付い
ていったが、わずかに亀頭とその下部を覆っただけで、大部分は冴子の小さな掌からはみ出している。それでもけなげに冴
子の掌はその巨大な黒々と聳え立つ陰茎をゆっくりとさすりはじめた。青筋を浮かべて濃茶色の硬さに漲ぎる陰茎に廻し切れ
ない冴子の真っ白い指が絡んで、亀頭溝部の襞のあたりを人さし指の腹で撫でている。新婚の頃、惣太郎が教えた愛撫の
方法を忠実に守っている。
惣太郎は自分が今冴子にそうされているような錯覚を感じていた。冴子の白い五本の指が隠微な動きで陰茎をゆっくりと上
下させる。その手が陰茎から離れると、こんどは陰茎の腹側を二本の指の腹で、上からゆっくりとなどるように陰嚢に向かっ
て撫で降ろしていく。慣れた動作である。
 だが惣太郎は妻のそんな動きを今まで見たことがないし、教えたこともない。一体いつ妻はそんなテクニックを誰に教わっ
たのだろうか。                           
 思いがけぬ妻の動作に、突然水中に墨のどす黒い汁が垂れ落ち広がっていくような疑念が、惣太郎の胸の奥からわきあ
がってきた。田宮と妻との間を今まで疑ったこともないが、実は今日のことも、自分が田宮をそそのかして企んだことと思っ
ていたが、本当はふたりの間には前から関係があって、自分の方がふたりの共謀にうまく載せられたのだろうか。                  
 しかし先月末、田宮の夫婦でマッサージをしてもらった時に、恍惚とした冴子の表情となまめいた冴子の肢体に衝撃をう
けているうちに、ふと呪詛のように田宮に冴子を犯させることを思い付き、学校の帰りに田宮を居酒屋に誘って、この計画を
打ち明けた時の田宮の驚愕の表情と拒否を表明したあの態度は、どう考えてみても自分を騙すための虚偽とは思えない。
 またあのマッサージをしている時の、田宮の紅潮した表情や冴子の困惑した態度にも、既に情を通じ合った男と女の慣れ
合いは微塵も感じられなかった。
 第一大学の学生時代から知り抜いている田宮の一本気で清廉潔白な性格が、自分という恩師の妻を寝取るようなことが出
来る筈がない。
 万一、なにかの弾みでふたりがそうなり、妻が必死に隠すことを求めたとしても、田宮は今の社会的地位を捨てて妻を連れ
て自分の前を去るか、独り消え去るかしなければおさまらない性格である。            
 酒場で酔わせて田宮をくどいた時も、自分が酔っていると思い、全く相手にしなかったのを、もう自分は老いて妻を楽しませ
てやることが出来なくなった。冴子があの若さで、どんなにか辛い想いで孤閨に耐えているかと思うと不憫でならない。しかし
これだけは代理の男を与えるというわけにもいかない。
 最近では妻が自分に内緒でもいいから、格好の相手を見つけてくれればいいと思うことさえある。だがそれは妄想であって、
もし実現したとしたら、妻を本気で真実愛している自分は、妻が自分を捨ててその男と出奔するのではないかという恐怖に発
狂するかも知れない。                           
 まだまだ若い冴子を、これから一生孤閨の悶々で生涯を終らせることへの苦しみと、冴子を離したくない苦悩との狭はざまに、
ここしばらく自分は苦しんできた。そして自分は、あの君が冴子にマッサージをしてくれた時の、君と冴子の表情を見て、はっ
と黎明のように絶好の解決方法を思い付いたのだ。
 
 それは君が冴子を慰めてくれることだ。これは前から気が付いていたのだが、君も冴子に悪い感情は持っていないし、冴子
もそうだ。その上、君はいつか話してくれたように、君はアメリカに内縁の妻を残して帰国した。別れるためではなく、あちらで
日本文学の教授となるために、日本で三年間の教授生活
を送る必要があったからだ。あと二年すれば君はアメリカの大学に復帰することが約束されており、父親の看病のために来日出
来なかったあちらの奥さんと、君が帰国直後に生れた二世との生活が待っている。                           
 もし君が、アメリカにいる奥さんに背信行為だからと、拒否するのならはっきりそう言ってくれ。だが、この間君が言っていた
ように、孤閨の辛さに女を買っている、というのが本当なら、同じ孤閨に苦しんでいる冴子と結ばれれば、一挙同得ということ
になる。自分も、冴子の相手が君ならば、自分の分身のようなものだからうれしいことだ。                        
 懸命にくどいても、なかなか承知してはくれなかったが、最後にやっと本心を申し上げます、と告白した内容は、前から冴子
さんが好きだったということだった。先生が真実そう思い、許して下さるなら、自分にとって夢のような話しである。そうなっても、
奥さんを奪うとか先生ご夫婦に反抗するとかいうことは決してしませんし、二年後には、どんなことがあってもアメリカに帰り、親
子三人の生活を築き上なければなりません。背徳のうらめたさは残りますが、自分にとって、このお申し出を拒否することは、
きっと将来消えることにない遺恨になると思います。                                 
 あの時の田宮は、何度思い出しても虚偽の態度ではない。そうすると妻はほかに男が居たのだろうか。
  いや、冴子に限って決してそんなことはない。第一そんな男に近付くチャンスさえ冴子にはない。後はロンドンに行った浩二だ
けだ。浩二を冴子は最初弟のようにかわいがっていた。浩二が大学を卒業した頃からふたりの間に、男と女の感情が生れかけ
ていたことは感じていたが、浩二はロンドンに去ってしまい、お互いに成就する機会はなかった筈だ。          
 惣太郎は目前で、自分以外の男にいたぶられている妻を、まるで初めて見る女のような感慨で眺めていた。たしかに妻の躯を
こんな角度で眺めたこともなければ、もちろんほかの男と絡んだ妻の裸身を見たこともない。若い男の手練手管に翻弄されなが
らも敢然と応じ、それどころかさらに需めるように腰を揺すって訴えかけている妻の裸身に、惣太郎は飼犬に手を噛まれたような
激情を覚えていた。

知らなかった妻の一面を見たような気もしていた。男の対として創られた女は、男と肌を接し愛媾状態になってくると、知性とか
教養とか理性とかは生理的にすべて消え失せて、本能のおもむくままに、丁度磁石の南北が永劫に互いに引き合うように男の肉
を需めるようになるのかも知れない。
  強姦の時でさえ女は最後には感じて男にすがりつくというではないか。それが女の宿命的な悲しい性だ、ということは惣太郎
も知っているが、自分の妻が、夫である自分のことも忘れ果てて別の男にすがり付き、こともあろうに欲望にみなぎった陰茎を自
ら愛撫する現実を目のあたりにすると、いいようのない衝撃が躯を貫く。         
 今先の憤怒した田宮の陰茎を慣れた様子で指でなぞっていたように疑って見えた妻も、今はただ真空の脳裏に性の本能だけが
充満していて、夫の自分も他人の男も区別がつかなくなり、無我夢中のうちに男の陰茎を需めていたのではないだろうか。                                 
 きっとそうに違いない。落ち着いた慣れた動作で陰茎を指の腹でなぞったのは、妻がどこかで教えられた淫猥なテクニックなど
というものではなく、単なる偶然のしぐさであったのだろう。きっとそうに違いない。惣太郎はそう思うことで、やっと納得し、自分
自身安堵し、高ぶってはいけない、と自分の気持を制した。
 今は互いに唇をむさぼり合い、互いの陰部を愛撫し合いながら、しだいに昇っていくふたりの蠢く姿態が現実のものとも思えな
い妖々しさで惣太郎には見えていた。                                
 接吻していた田宮が、ついと頸を上げて惣太郎の方をちらりと視た。合図である。惣太郎は丹前に忍ばせたライターを思わず
握り閉めた。その手が汗に濡れていた。もう一度田宮がこちらを振り向いた。
 今ライターの灯を付けなければ、もう取り返しがつかない。そう思いながらも丹前に懐に入れた手はどうしても依然として動か
ない。そればかりか惣太郎の胸中に思いもかけぬ嗜虐の快感がめらめらと蛇の舌のゆらめきのように燃えはじめてきた。今度は
しばらく、じっとこちらを視ていた田宮が、決心したような表情で喘いでいる冴子に向きなおり、上から唇を押し付けるように接吻
しながら、片手で自分の腰紐を解いて浴衣を脱ぐと、何か冴子の耳元で囁いてから冴子の上に覆い被さっていった。      
 惣太郎の視ている側からは、重なったふたりの表情は見えないが、広げられた冴子の股間に、巨大な陰茎に手を添えた田宮が
侵入口を探しているのがはっきりと見える。
冴子の溢れた体液を、亀頭にたっぷり塗り付けてから、冴子の体液にてらてらと光る裂けんばかりに張り切った陰茎を真直ぐ膣口
にあて腰に力を入れた。信じられない力で冴子の淡い桃色の粘膜が押し広げられ、張り切った亀頭が呑み込まれていく。                   
  1. 2014/12/02(火) 15:20:19|
  2. 花濫・夢想原人
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花 濫 第4章異常な契約

 あの時すでに夫と田宮の間では、ある契約がすでに成立していたに違いない、と冴子は考えていた。
自分の妻をほかの男に抱かすという異常な夫の心理も、今では理解出来るが、あの頃は、もし夫が田宮を唆したのだと
すれば、夫が発狂したとしか思えなかった。だからまさか夫が承知の上で田宮に自分を与えたとは思いもよらなかったから、
田宮と自分のあのときの行為は、単に二人の中に沈潜していた、圧せられた欲望が、あの異常な場所と踊りに触発されて、
噴出し、抗し難い状況のなかで起きた出来事だったと、冴子はその後もそう信じて、夫に対して背信のおののきがしばらく
消えなかった。                
 横で夫のすこやかな寝息が規則正しく続いている。眠れぬ苦しさは、躯をじっとの横にしているだけで、関節にしだいに
痛みがあらわれ、躯全体が運動を要求してくる。その悶々とした思苦しさをやわらげようと、冴子は俯伏せに寝返りをうって、
枕に顔を埋めた。目を閉じているだけのことが苦痛なほど頭が冴え、躯が火照ってくる。口も枕にくっつけているので、自分
の熱い呼吸が頬にねばっこくあたる。その生暖かさの中で、田宮に初めて犯された、あの夜のことが鮮明に思い出されてく
る。
 田宮に連れられて、杉林の奥にわけ入ったと思うと、林は奥がなくて、その向こうには自然石造りの大きな池のような温泉
の浴槽があり、まわりいは樹木が植えられていて、庭園のようになっている。
その奥にはまた杉の林があって、林の下に白い麻の天蓋を持った大きなベットが備え付けられている。
まるで森の中のキャンプ場に来たような気分にさせる。池の縁にある簀の子の板の上に上がった田宮が、         
 「僕、ひと風呂浴びますよ」                       
 冴子の視線にも動じることなく、田宮が丹前と浴衣を思いきりよく脱ぎ、さすがに下穿だけは冴子に背を向けて脱ぐと、水
泳の格好で勢いよく池に飛び込んだ。かなりの深さがあるのか、湯のなかにしばらく潜って、冴子から随分と離れた八手の
茂みの下にぽっかりと浮上り、子供のような笑顔をほころばせながら、   
 「一緒に入りませんか? あのベットの中で脱いでくるといい。バスタオルもあの天蓋の中に用意してありますよ」                   
 「いやよ! どこから見られているかわからないもの」           
 「この広い温室に居るのは奥さんと僕だけですよ。先程の女中も、あと何かあったら電話で読んで下さいと言って帰ってい
ったから、もう誰も居ません。さあ、入りましょうよ。誰にも遠慮することはない」                
 「だって、貴方がいるじゃないの。あたし恥ずかしいわ」         
 「僕は眼鏡を外したから、ほとんど見えません。安心して下さい」     
 冴子の気持が揺れた。酔いのせいかも知れないが、この広い温室の中に、若い男とふたりだけ閉じ込められている現実が、
妙に心の昂揚を促し、高い崖縁に立って、真下の大海に飛び込めと、どこかで呪詛されているような誘惑を押え切れないよう
な心境になっていた。それは若さの押え切れない冒険心の誘惑であり、冴子の熟した肉の潜在的な需めのようでもあった。              
 「あたしに触らないことと、お湯に入るまで向こうを見ていて下さると、約束する?」                                
 「ええ約束します」                          
 「本当よ…………」                          
 冴子は心を決めて天蓋のベットに入り着衣を脱ぎ、大きなバスタオルで躯を包んでから池に向かった。
田宮は隠れん坊をしているいたずら子のように、八手の大きな葉の下で、向こうを向いて立っていた。
 痩せて貧弱な肉体を想像していたが、痩身には、思いもかけず、隆々とした筋肉の膨らみが、帯を巻きつけたように、腕
から肩や胸、大腿部にあって、躯の動きに、それが別の生き物のように躍動している。                              
 池の縁でバスタオルを外して、肩足を湯入れた瞬間、田宮がふいにこちらを帰り見た。八手の向こうの昏がりに温室の硝子
があり、さきほどから冴子のバスタオルに包まれ躯が映っていた。池の縁で冴子が、そのタオルを開いて裸身を露わした。
 鏡の中でも、真っ白に映っているその裸身は、小柄ながら起伏の多い女の躯の特長を豊かに現わしている。股間の翳りと
両の乳房は手で隠しているが、
 豊かな乳房の裾は隠しようもなく溢れ出し、蜂のような胴のくびれや、張り切った腰の線など、全体に一つの崩れもなく熟
しきって匂い立っていた。
 前にマッサージをした時想像した通りの柔和な中に弾力を持った肉置きの豊かさが泛かび上がっていて、羞恥を全身にた
たえているその姿態は、田宮には甘美な美食がそこにあるような誘惑に、思わず生唾を嚥み込むような激しい誘惑をおぼえ
ていた。
 田宮はゆっくりと湯の中に身を沈めると、水中を潜り泳ぎしながら冴子に近付いた。濁りのない湯の中に、冴子の下肢が
白く揺れていた。折った片方の足の上に豊満な臀を載せ、もう一方の足は閉じるように膝でまげて立て上にタオルを乗せて
陰部を隠している。わりあい深い池で、しゃがんむと冴子の顎まで湯がくる。潜った田宮の目に、水面を警戒して片腕で乳
房を覆っている冴子の大きな乳房と幅厚の脇腹、ぬめった柔らかそうな下腹のあたりが、大きな深海魚の白い腹のように輝
いて見える。                           
 冴子は夢中で湯に入り、ふと田宮の姿が消えているのに気が付いて、どこに隠れたのかと湯気の靄の奥を探していると、
突然、目の前の湯が盛り上がり、黒い髪に次いで褐色の田宮の裸身が目と鼻の先に浮かび上がった。思わず悲鳴を上げ
てタオルで胸を覆った冴子の前で、垂れて水滴を流している髪を振り上げた田宮の顔がいたずら小僧のように笑っていた。                 
 「びっくりするじゃないの。ああ、驚いた…………」            
上気して薄桃色に目許が染まった顔に掛かった湯を掌で拭いながら、怒った表情で田宮を見上げる冴子に、                       
 「ごめんごめん。奥さんの美しい裸は湯の中からでもないと、ゆっくり拝ませていただけないと思って、思い切って潜って
みたんです。いやあ奇麗でした。まるで人魚のようでした」                         
 「いやーん。そんなこと言って。本当は見ちゃいないんでしょう。お湯の中なんかで見える筈ないじゃないの」                      「普通伊香保の湯は、ここの夕食の前に入った湯のように鉄分を含んだ茶色い湯なんだけど、これは地下四百ネートルま
でボーリングして汲み出している鉱泉を沸かしたので、濁りの全くない透明な湯なんです」            
 「もう言わないで………恥ずかしい。田宮さんて、そんな不良先生でしたの?」 
「美しい女性の躯をめでるためには、どんな危険でも冒すのが男というものです。私も男のはしくれですから、奥さんの美
しさには以前から惹かれていましたから、この際つぶさに拝見させて貰おうと決心したわけです。本当は触れたいし奥さんが
欲しいけど、それをすると奥さんの言われる不良になりますから我慢して止めました」                             
 悪びれる様子もなく言う田宮に、冴子は今更慌てて全身を湯の中で縮じめて、羞恥の顔をタオルで隠した。長い髪をたくし
上げた青白いうじなにほつれ毛が数本絡んでいるのが、田宮の男心をそそった。                 
 「湯に暖まった直後に、例のマッサージをすると効果がとてもいいんです。僕は上がっていっぱいやってますから、ゆっく
り暖まって、あの天蓋のベットで待っていて下さい」                            
 冴子の目の前で、漲ぎった男の象徴を隠そうともせず揺らめかせて、平然とした態度で大股に、身体中の筋肉をきしませ
ながら、岸の縁に足をかけて上がって行った。
 少し背を前に屈めて小さな臀を見せ、肩にタオルを巻いて遠ざかる男の無防備な後ろ姿に、冴子は田宮の抑制に耐える苦
しさを秘めた男の憔悴を感じて、ふとあわれさを感じた。                         

 天蓋のベットで着衣した田宮が杉林の中に消えて行くのを確認してから、冴子は急いで湯から上り、天蓋のベットに走り込
むように潜った。また田宮が悪戯心を起こして、杉の幹の向こうに隠れて覗いているような気がしたからである。 
 冴子が着終るのを待っていたように田宮が現われ、天蓋の片方を巻き上げ、外からでも内部がよく見えるようにした。この
温室にはふたり以外誰も居ないが、天蓋を上げたのは冴子の警戒心を和らげるためであろうか。ベットの縁に腰を下ろしてい
る冴子に近付き、                         
 「その丹前は脱いで横になって下さい」                 
 先程の子供っぽい表情とは違った真剣な顔で命じるように言うと、自分も丹前を脱ぎ両腕の袂を巻き上げて、マッサージ
の準備にかかったと思って、仰向けに寝て、両手を腹のあたりで組んで、田宮の手がマサージを始めるのを、やや緊張し躯
を硬直させて待っていたいた冴子に近づいた田宮は、やにわに冴子の浴衣の胸に両手を添えたかと思うと、強い力で胸をは
だけにかかった。       
 「あっ! 止めて! 」                        
 驚いて飛び起きようとした冴子の肩を、片手の強い力で押え付けたまま、田宮は冴子の浴衣の前を大
きく広げ乳房を露わにすると、押え付けている手と広げた浴衣の端を掴んだ手を器用に使って冴子を俯
きに転がせた。
その際に浴衣は冴子の肩から皮を剥ぐように、くるりと脱げて、上半身が露わになった。冴子は俯い
たまま両手で乳房をかばっていた。                    
 田宮がどうして突然狂ったような凶暴さで、浴衣を脱がせにかかったのかと気が動転しているうちに、いつの間に浴衣の細
帯を解いていたのか、田宮の手が猛烈な力で腰までずり下がっていた浴衣を上に引いた。一瞬、冴子の腰が宙に浮いたと思
った瞬間、浴衣は冴子から抜け出て、田宮の手に残った。
 小さな下穿だけにされた冴子が、再び起き上がろうともがいたが、田宮が上から肩に掛けた手をに力を込めて俯いた冴子
をそのまま押え付けたので、冴子は枕に顔を押し付け、腰を持ち上げた奇妙な格好になった。その盛り上がった臀部をわず
かに隠していた下穿を、臀に手を当てた田宮が、果物の皮を剥くように、するりと膝までずり下げた。                                 
 「御免なさい。この前言ったと思いますが、裸にならないと壷がよくわからないんですよ。奥さんに言っても脱いでくだっさ
らないと思って強硬手段に出ました。心配しないで下さい」                        
 冷静に言う田宮の声を上で聞きながら、冴子はどうしたらいいのか迷っていた。ともかく顔を枕に押し付けて羞恥を隠し、両
足をきつく合せて、全身を硬直させていた。                                
 「さあ、力を抜いて下さい。こうすると、骨の位置と筋肉の状態がよくわかります」                                 
 田宮の掌が、後頸の肩の付け根の左右に置かれ、背骨に沿って何かを探るような微妙な指の動きをさせながら、しだいに
下がっていく。腰骨のあたりから指は左右に別れ、腰の側面を撫でさすりながらさらに下がっていった。冴子の四肢が次第に
硬直の度を増し、躯が小さく痙攣しはじめていた。腰から太腿の外側を下がっていた田宮の掌が、突然尾底骨付近にかかり、
菊門を撫でた。      
 「止めて! どうしてそんなことをするの………」            
 返辞がなく、腰を振って田宮の掌をかわそうとする冴子の臀を、両手で上から布団に押し付けた。その力の入れ方にこつ
があるのか、急に腰のあたりの筋肉が溶けたように力を失い、代りに躯の奥から痺びれるような快感が腰部に奔る。ああ、
と枕に押えた口から声が出た。白く滑らかに盛り上がった臀のふくらみを突くように田宮の指が押していくと、それが壷とでも
言うのか、押された部分から電撃のような快感が冴子の躯を貫き、思わず嗚咽が出そうになる。指は微妙な強弱を含んで、
臀の膨らみから太腿へ移り、内腿へと進んで来る。早く止めさせなければと冴子は思いながら、起き上がろうと身をよじよと
する瞬間、次の指が思わぬ躯の場所を突いて、全身の力が抜ける。                
 何時の間に俯向きから仰向けにされたかわからなかったが、乳房からも股間からも、我慢出来ない快感の放射が躯の内部
に向かって無数に突き刺さっていた。閉じた目の中に、閃光がはしり火花が散っていた。

  ただの愛撫ではない。電流が通じているか強烈な媚薬でも塗布しているとしか考えられないような田宮の指が、冴子の躯
のどこかに触れるたびに、そこから耐えられない快感が爆発する。十本の指先が冴子の躯を縦横無尽に動き回り、その箇所
から次々と絶え間なく湧き起こる快感に冴子は完全に忘我になっていた。もう抵抗する気力も失われ、朦朧とした意識の中で、
ただ無数の官能の稲妻だけが鋭く鮮明な矢光となって眼底を交錯していた。                              
 その魔法の指が冴子の敏感な陰核に触れ、もう一つの指が体液のあふれ続けている冴子の膣に挿入された。膣の奥の方
にどんな感受性を備えた場所があるのか、田宮の指が奥深く侵入し探り当てた場所を
ゆっくりと撫でると、そこで激しい官能の放電が音を立ててが起こり、冴子の躯が痙攣を起こして弓なりに引きつった。
 「あっ、いい………。もう、どうなっているのかわからない。………わからない」                                  
 うわごとのように言う冴子に、                     
 「いいから、心配しないで任せていればいいんですよ。なにも考えなくて、もっと気持よくしようと、そればかり考えなさい」              
 田宮の低い力強い言葉が遠くから余韻を含んで呪詛のように、かすんでいく冴子の耳に聴えていた。
杉林の陰から夫が、自分達の様子を充血した目で、盗視していようとは識るよしもなかった。     
  1. 2014/12/02(火) 15:19:44|
  2. 花濫・夢想原人
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花 濫 第3章女の業火2

 伊香保温泉に向かう日は、寒くはあったが、東京は快晴だった。       
「お前がこんないい車に乗っていようとは思いもしなかったよ」      
 昼過ぎに迎えに来た田宮の車を見た夫が驚きの声を上げた。大学の講師あたりは大抵車を持っていても、国産の大衆車が多かったが、
田宮の車は大型の外車だった。しかも買ったばかりの新車で普通ならその車は黒く塗られて貴賓の送迎か大会社の重役の自家用に使わ
われるようなものだった。
 「なにしろ独り身ですし、背が高いでしょう、国産車だといつも頭をぶつけてばかりいるので、少しきざな感じはしますが、思い切
って買い替えました」  
 ぶっきらぼうに言ってハンドルを握った。車に弱い冴子は助手席に乗り、夫は後部座席だった。

 調布から所沢の関越自動車道のあがるまでが大変な渋滞で、予定より一時間以上かかった。空いた高速道路にやっと入り、伊香保温泉
のある榛名山が見えた頃には、夫は後部座席で穏やかな寝息を立てていた。       
 どういう理由で東京と新潟を結ぶ高速道路を造ったのか知らないが、前に走ったことのある東名高速とは比較にならないほどすいてい
る。いまもこの車の前には一台の車も見えない。
 茜色に染まった空がしだいに力を失って褪せ、濃い紫の靄がたなびきはじめた空 に、くっきりと巨大な奇岩のような凹凸の榛名山が
前方に墨絵のように見えはじめていた。
 昼が死に夜はまだ生れてない。その一瞬の静けさが周りを包んで、冴子は田宮と二人きりで、見知らぬ世界の夕暮れを、その夕日を求
めて無限に伸びる道を走っているような錯覚に陥っていた。
 この道は地上でもなく宙でもない不思議な次元を孤独に伸びていた。渋川伊香保のインターチェンジに近付き、速度を落しながら煙草
に火をつけている田宮の横顔を眺めた。
 精悍な彫りの深い横顔を煙草の煙が目にしみたのか少ししかめている。人一倍広い額に残照があたって赤く艶やかに輝いているのが、
まるで何かに興奮している男の毅然とした表情のように見えて頼もしい気がする。         
 高速道路から渋川の街に入ると、古い軒を寄せあったような民家が並んだん細い道に入る。
 東京では最近では見られなくなった柱時計をいくつも掛けた時計屋や、軒崎にビニールに包まれて埃にまみれたままの衣類を売ってい
るような店が目に付く。                               
 「こんなことで商売になるのかしら」                  
 冴子が指差した店に、ちらりと視線を動かせて、             
 「僕もいつも不思議に思っているのです。僕の想像ですが、多分、田舎は今でも家系というか、親類一族の結束が強いから、何とかや
っていけるのじゃないかな。義理ででも買う人がいなければ、とうに潰れている筈だもの」       
 「そうよね。この細い道に入り込む前にも、大きなスーパーがあったわよね」
 「あっ!……」                           
 田宮が小さく声を上げて、車のハンドルをにわかに左に大きく切った。冴子の躯がその弾みで浮あり、思わず田宮の膝に手を突いた。 
 細いがあまりに硬い膝に冴子は驚いた。夫のはこんな硬さはない。浩二の膝の感触を思い返そうとしたが、どうしたことかはっきりと
は思い出せない。               
 すみません。うっかり曲がるのを忘れていました。昏い中で伊香保方向という標識がちらと見えたので、慌てました。………先生大丈
夫でしたか」    
 冴子が振り返って後部座席の夫を見ると、急回転も気が付かなかったように、今眠りから醒めたような細い目をしばだたせながら、狭
い車内で窮屈そうに腕を伸ばして伸びをしれいた。                        
 「もう伊香保かい。昔にはこのあたりはちんちん電車が走っていたな。もう三十年くらい前のことだが、父親に連れられて来たことが
あるよ」       
 のんびりとしたあくびを含んだ口調で答えた。              

 すっかり日が暮れてさだかではないが、道は登りになり、杉林や際立った崖を削った 白っぽい法面が視界を過ぎて行き、やがて道の
上から温泉街の建物やネオンが見えて来た。
 店先に据えた蒸籠から温泉万頭屋をふかす湯気がもうもうとあがっていたり、旅館やホテルの並んだ細い道の街灯の陰に、芸者らしい
二人連れの女が、着物姿なのに脚には長靴を履いているのが見えたりしだすと、温泉は久し振りの冴子は、妙に心の高ぶるような色っぽ
さと暖かさの入り交じった、人肌の温かさに触れるような度興奮を感じてくる。             
 車はその温泉街を通り過ぎるように一向にスピードを緩めない。       
 「あたし達の泊まる所はまだですか?」                  
 「今夜の宿は伊香保の温泉街の一番高い所なんです。ここらのような近代的なビルではなくって、古い旅館らしいですよ。でもいいこ
とにこの伊香保も温泉を汲み上げ過ぎて、殆どの新しいホテルは地下水を汲み上げたのを沸かしているらしいですが、そこは源泉があっ
て、お湯は豊富と聞いています」       
 田宮の案内を聞いているうちに、車は明るい街をぬけて、山道のような暗い急な登り坂を登って行く。                         
 「あら! これ雪じゃない? 」                    
 ヘッドライトの照明に映し出された道路が白く輝いている。硝子のようにきらきらと硬質に輝いているのは、だいぶ前に降った雪が凍
結しているのだろう。田宮がスリップを警戒してスピードを極端に押えた。暖房で暖められた車内の窓硝子を通して、冷気が忍込んで来
るような気がするほど外は冷えているらしい。 

 暗闇の中から突然、山荘のような建物が見えて来た。            
 「ああ、これです……」                        
 相当緊張して運転していたらしい田宮の安堵の声が大きく車内に響いた。  
 昭和の初めに伊香保温泉で洋風建築としてはじめて建てられたという木造の古い旅館だが、中は最近改造したらしく、しっとりとした
落ち着きのある旅館だった。冴子と惣太郎が大きな暖炉で薪が燃えるのを眺めながら、アールヌボー調の椅子に腰を下ろして、田宮がチ
ェックインの手続きをしながら、番頭らしい太った中年の男と、やや興奮した口調で長々と話しているのを不安な気持で待っていたら、
やがて番頭が頭を掻きながら、田宮の後からやって来た。        
 「実はお部屋が一つしかお取り出来ていないんです。主人から大事なお客様だからと、一番いいお部屋をご用意させていただいたんで
すが、ご夫婦さまがご一緒とは聞いていませんでしたので……。生憎本日は予約がいっぱいでして、ほかにお取り出来ないのです。お取
りしましたお部屋は、十二畳の和室とツインベットの洋室がありますので、それでなんとかご容赦いただけませんでしょうか」 
 「ああ、いいとも。ともかく寝られればいいんだ」            
 惣太郎が人のいい性格を顔面で証明しながらおおらかに言った。      
 案内された部屋は、天井に経木細工を張った古風な部屋で、襖の向こうに、元は和室の続きの間だったのを、最近の客筋を考えて急造
したらしい洋室があった。
 この部屋はこの旅館の最上階の筈だったが、窓からは小さな谷の向こうに迫った山の斜面が見える。きっと山の斜面に建ててあるのだろ
うと惣太郎が言った。 
 早速男達が温泉場に行ったすきに冴子は手早く旅館の着物に着替えて、自分も風呂に行った。温泉は地下だったが、実際には谷川に面し
ていた。男湯と女湯が並んでいて、男湯からは大勢の男達の声が聞こえたが、女湯には先客はなかった。石を並べた浴槽に、鉄分を含んだ
泥水のような赤茶色の湯が溢れていた。
 入るとややぬるめの湯だが、しっとりと身体に馴染む肌触りの湯だった。    
 硝子張りの大きな窓から、急峻な斜面にはえた杉木立が黒々とみえ、林床が残雪に白く浮き出ている。林の奥の暗がりには、なにか恐ろ
しい魔物でもこちらを窺っているような気分になって、冴子は怖いもの見たさの子供のように浴槽の中を湯を掻き分けるようにして窓際ま
で行って外を見た。           
 窓際まで行くとかすかに流れの音が聞こえてきた。暗闇に反射して明るい浴室にいる自分の顔しか映していない窓に、顔を擦り付けるよ
うにして覗き込むんで、 
 「あらっ!」                             
 冴子は思わず一人で声を出した。                    
 視界は全部山の斜面だと思っていたのに、向かいの山の暗がりの上には丸い小さな峰が暗黒の山肌と濃紺空を分けて影絵のように見えて
いる。杉の尖った樹陰の見える峰の上の宙空には半月が冴えわたっていた。凍り付いたように硬くしまった感じのする空気を切るような鋭
さで差し込んでくる月光は、まるで洞穴の底から天空を見るようなに清々しさだった。浴槽から立ち上がって谷底を見下ろすと、小さく細
いが急な落差を勢いよく流れる谷水が、白銀に輝く大蛇の長い尾のように見えた。                               
 天井から落ちる水滴さえ、はっとする大きさに聞こえる静寂の中なかで、冴子はなぜか妙に心の落ち着きを失っている自分を見詰めてい
た。
 この胸の中でむずかるような昂ぶりは一体何だろう。そう考えながら湯の中に持ち込んだタオルを胸に当てた時、ちくっと乳首に響いた
感触で、冴子は急に肩を押されたような衝撃でその原因に思い当たった。それは今夜田宮と同じ部屋で寝ることだった。たしか二度目の治
療は、今度温泉にでも行ってすればよく利きますよ、と言った田宮の言葉を躯が覚えていたのだろうかと、冴子は少なからず動揺していた。  
 ただマサージを治療をしてもらうだけだし、夫と一緒だからまさかのことはないし、何も自分は田宮に好意や情感を持っているわけでも
ない。自分の主人の部下というただそれだけの存在でしかない。この自分の落ち着きのなさというのは、ただ他人の男と同じ部屋で雑魚寝
しなければならないという、迷惑さだけの筈だ。そうだとうなずくには生憎に、田宮の掌で触れられた肉感の疼きが今も冴子の中で妖しく
蠢いている。それはあれから燃焼しきれないまま、生木が燻るような白い乾いた煙ばかりを上げている冴子の身もだえがひとりでに肯定し
ている。
 自分の乾いたふすぶりは、田宮から治療を受けてからだけではない。

 二年前、浩二を知ったことによって、冴子は今浴槽で身を動かせて暗黒だとばかり思っていた視界に偶然冴え渡った夜空を発見したよう
に、人生の新しい眺望を見出していた。それは一瞬垣間みいた世界であったが、冴子の心と躯の奥深くに烙印のように灼き付けられてしま
った。                          
 男と女の関係が、心と肉の両方で成立するように創られていることを知ってしまってからも、平和で静謐な今の生活は自分にとってかけ
がえのないものだと言い聞かせ、浩二への痛みに似た烈しい愛慕に狂いかける自分に制動を与え続けて来たのに、田宮の掌が触れただけで
自分の中に湧きたつこの肉の炎の狂おしさは、なんというはしたなさなのだろ う。冴子はふと、実家の藁屋根の下で今夜も独り炬燵のな
かで古い書物を紐といている父の厳しい生き方を想い出して、涙ぐむような気持で自分を諌めていた。                      
 「群馬の山の中だから、猪の肉に河魚、山菜にこんにゃくとばかり思っていたのに、こんな新鮮な日本海の魚や蟹や海老が出るとは以外
だったねえ」    
 「関越高速道路の開通のおかげですよ。この伊香保も東京から一時間圏になって、熱海より近くなり、すっかり東京の奥座敷になりまし
たし、新潟からも近くなりましたので、こうして日本海の珍味が食べられるようになったのですねえ」
 男達は並べられた松葉蟹や甘海老の魚に大喜びで箸をつけていたが、谷の澄んだ流れと先程見た冴えた奥山の月光の中では、やはり近く
なったとはいえ、遠い日本海の料理はそぐわないと冴子は思っていた。              
 「このお酒をぜひ飲んで下さいと、主人から仰せつかっております。利根川を挟んだ向こうの赤城山麓の地酒で、小さな酒屋が造ってお
ります。赤城山はこの榛名山が大昔噴火した火山灰を大量にかぶり、その後今度は赤城山が爆発してとても深い火山灰に覆われていまして
、降った雨が百メートルも二百メートルも地下に潜って麓へ出て参ります。地元では湧玉と申しておりますが、その水を使って醸造したお
酒です」                          
 中年の女中頭らしい、落ち着いた小肥の仲居の置いていったその酒をひとくち飲んで田宮が先ず声を上げた。                      
 「これは旨い。先生飲んで見て下さい」                 
 「まるほど。とても芳醇な酒だね、東京で呑み屋が出し惜しみする例の銘酒とかいう梅の月や竹菱より、よっぽど旨いにねえ。冴子も
飲んでみろよ」    
 「さあ、どうぞどうぞ」                        
 田宮が机の向かいから手を伸ばして酌をする。大きなぐい呑にまんまんと注がれた酒をこぼさないようにしよと、つい酒の呑みの男たち
のよくする手付きで、口を近付けて呑んでみると、酒の匂がしない。まるで清烈な谷川の水のように透明な澄んだ味で、たしかに夫が言う
ように寒梅のほのかな匂のような芳醇な香りが漂う。あまり呑めない冴子でも、思わず含んだまま口の中でころがしてみたくなるような馥
郁としたうまさである。                    
 「これはたまらまいですね」                      
 田宮は顔をほころばせて、杯を重ねる。惣太郎も黙々と満足気に呑んでいる。田宮と夫に交互に勧められて杯を重ねた冴子が、ふと谷川
のせせらぎが遠くなったと気が付いた時には、顔が火のように火照り目の男達の動作が急に高速映画の画面のように気だるいほどゆるゆる
動いているのを見
るように思った。自分が酔ったためだと気が付くにはしばらく時間がかかった。             
 冴子が背にしている襖を開けて、先ほどの女中頭に案内されて、この旅館の主人が入って来たのにも、男達が急に態度を改めるまで冴子
は気が付かなかった  
 よく太って恵比寿様のような福相で頭の剥げあがった六十近いこの旅館の主人は、濃紺で旅館の名前を染め抜いた法被のしたに、きちん
とした背広を着ていた。男の生徒である甥の礼から、今夜自分が町会議員の寄り合いで今まで抜けられなかったことなどを、丁重に謝して
から、               
 「昔は湯治温泉ですから、これという伝統も残っておりませんが、私の趣味でまるで深山の中にいるような雰囲気で楽しめるバーを一部
屋造ってあります。今夜は団体客が多いのですが、その部屋だけは空けてありますから………」    
「 いや有難いですが、この通りこの旨い酒を頂きまして、すっかり酩酊いたしておりますから、またの機会にでも……」                 
 熟した柿のように紅潮したるんだ顔で惣太郎が慇懃に断わると、      
 「それは残念です。しかし………どうでしょうか、この伊香保で娘二人と、母親の三人で出ております面白い芸者がおりまして、それを
今夜は揃えましてご夫婦円満の踊りをお見せしようと待たせてありまあすので、こちらの若いご夫婦様だけでも、ご鑑賞して頂くわけには
いかないものでしょうか。大学の先生のような高尚なお仕事をなさっているお方様では滅多にこんな踊りを御覧になる機会もありませんで 
しょうと思い、ご用意させていただきました」         
 田宮が慌てて自分は一人だと弁明しようとするのを押えるように惣太郎が、 
 「そうしなさい。折角のご好意だから」                 
 きめつけるように言った。

 私も酔ってますから止めます、と言うつもりが、酔いのためか億劫になり冴子はだまてうつむいていたが、これで立てるのかしら、とい
う不安の方が先に頭を霞めた。                    
 女中頭に案内されて、エレベーターで地下まで降り、曲がりの多い昏い廊下を行くと、ドアが一つあって、それを開けると、急に辺りが
仄明るくなって冷気が頬を撫でる。そこは渡り廊下で、大きな日本庭園の池を渡るようになっており、いつのまに降り出したのか庭は一面
雪に覆われていた。
 いまも深い静寂の中で細かい雪がさみだれのような早さで降り急いでいる。薄い浴衣に丹前だけだが、今までのぬくもりでそれほど寒く
は感じない。                
 「いつの間に降り出したのかしら。さっきはお月様が出ていたのに……」                   
 立ち止まり廊下の欄干に身を寄せて庭を見ている冴子に田宮が寄り添った。背中に田宮の着衣の温かさが伝わり、冴子のうじなに男くさ
い息がかかった。冴子は冷気の中で、男の肌に包まれたような温かさと甘さを感じて、思いもなく田宮の身体に体重をかけて寄り添った。
 田宮の掌が後ろから冴子の肩に置かれた。  
 森閑とした白一色に覆われた庭を横切る流れは、温泉の湯が流れているのか、そこだけが生きているようにもうもうと湯気がわき上がっ
ている。白い簾のように降り続く雪の向こうに漆の闇が溶けていた。
 ふたりで東京から逃避でもして来たような孤独感に身を包まれて、冴子は後ろに寄り添っている田宮にすがりつきたいような親密感を感
じて、かすかに後ろにもたせかかっていた体重を、思い切って田宮の胸に包まれるほど入れ込んだ。
 冴子の後髪に田宮の顎が触れ、同じ情緒が通じ合っているという意志表示のように、田宮の身体が反応して、後ろから冴子の躯を抱え込
むようにぴったりと密着してきた。肩に置かれていた田宮の掌が前に回された。                              

 案内されたのはバーという感じではなく、大きな温室の中に庭と小さな東屋を建てたよな感じだった。入り口から小さな渡り廊下で東屋
に入れる。なかは主人が自慢するだけあって、一見能の舞台のように簡素な部屋だが、檜の巨木をふんだんに使った柱や、桜の皮を張りめ
ぐらした壁面、一枚板の濡縁の向こうには白砂を敷きつめた小さな庭があり、その向こうは高い硝子張りの天井に届くような杉の林が造っ
てある。杉林の奥は闇に消えて見えないので奥深い山の中に来たような錯覚に陥る。暖房で暖められた空気が澱んでいるところをみると、
その奥に外との仕切りがあるのだろう。
 スポーツ施設のように高い硝子の天井からは、いつの間にか雪は止み、先程風呂から冴子が眺めた時よりさらに冴えを増した月が雲間か
ら顔を出していた。昼間はどうか知らないが、この暗さでは酔っているせいばかりではなく、本当に夜の林に紛れ込んだような恐怖に襲わ
れて、冴子は田宮の腕にすがりついて寄り添った。                       
 板張りの部屋の中央に赤土を練って造った囲炉裏がしつらえられ赤々と炭火がおこり、それを囲むように厚い板だけの椅子が作られてい
る。昏い照明が杉の樹に向けられてい て、杉の葉の緑が浮き出ており、その間接の明りでしか手元を見ることが出来ない。囲炉裏の枠と
一緒に作られたテーブルには、酒や肴が置かれているのが、目をすかせて見るとわかる。
 いつの間にか主人も女中も居なかった。昏く深い森の中に田宮とふたり投げ出されたような不安が冴子を襲ってくる。辺りはしんと静ま
りかえって物音一つしない。                
 「怖いわ」                     
 思わず冴子は隣に座っている田宮にしがみ付いた腕に力を入れた。車の中で触れた膝と同じ硬さの腕が、ゆっくりと冴子の背中に回され
た。        
 「どういうことかな。まあ、酒でも呑みましょう」           
 組んだ脚を解きながら田宮は銚子をとって冴子の前の杯を充たした。    
 「あたしもう頂けないわ。今でも目の前が回っているみたいよ」      
 冴子は自分に注いでくれた杯を田宮の口許へ近づけた。田宮は冴子の背に回した掌も、銚子を持ったもう一方の掌もそのままにして、冴子
の掌で支えられた杯に口を寄せた。
 冴子は驚いて右掌の杯に慌てて左掌を添えた。こぼすまいと注意深く腕に力を入れると、田宮の顎に掌の甲が触れて、ひりりと、濃い髭が
柔らかな冴子の掌の甲を刺した 。
 田宮の右掌が冴子の掌ごと杯を掴んで一気に呑み干すと、そのまま冴子の掌の甲に唇を当ててきた。田宮の暖かい唇の感触に、思わず掌を
引っ込めようとした時、突然、正面の杉林が昼間のように明るくなった。                        
 突然の強烈な照明の明るさに眩む目を見据えると、杉の木立の濃い緑の中に、燦々と降る春の陽光に照らし出されたような照明を浴びて、
あでやかな色彩の着物の裾を引いた芸者が三人、それぞれにしなをつくって日本人形のように立っている姿が浮き出ていた。左の端の女が一
番若いらしく緋色の地に金紗の模様の派手な着物に丸髷に刺した藤の簪は貝ででも出来ているのだろうか、わずかに体を揺らす度に紫のルビ
ーのように燦然と光っていた。
 真ん中の黒地に銀紗模様の芸者は相当な年増だったが、斜め下に半開きの朱色の番傘を両手で構えている立ち姿は、いかにも年期の入った
芸者の艶の濃さが匂い立っている。右の黄色地に朱の花模様の女は三十歳前後だろうか、しもぶくれの丸い顔があだっつぽく、成熟した女の
甘酸っぱい匂いが周囲に拡散しているように色っぽい。       
 歌舞伎や新劇の舞台と違って、杉林が本物だけに現実味があり、森の妖精が突然舞降りたような驚きがあった。目が慣れてくると、杉林の
右手に囃方の台が置かれ三味線の女が二人と、未だ少女のようにあどけない娘が緋色の着物の裾をからめて頭に八巻姿で大太鼓の前に立って
いた。
 大太鼓の少女の白くかぼそい腕が揃えて上がり、思い切り振り降ろされると、少女の腕の力とは信じられないような腹にずしんと応えるよ
うな太鼓の重量感のある響きが周りの澱んだ空気を津波のように震わせて轟いた。冴子はその響きに圧倒されて思わずにすがり付いた田宮の
腕に力を入れた。                          
 三人の芸者が、太鼓の音にスイッチを入れられたからくり人形のように、緩慢な動作で動き出し、やがて三味線が掻き鳴らされだすと、そ
のリズムに操られて、しだいに動きに緩急をそえながら踊り出す。                
 「これはまいったなあ。奥さんに見せていいのかな」           
 田宮がすがりついた冴子の腕をとらえて二の腕を強く掴んで興奮気味に言った。 
 「それどう言う意味?」                        
 「これは深い川浅い川という踊りなんだけど、普通の踊りじゃなくって、男が楽しむとても猥褻なものなんだ…………」                 
 田宮が説明するまでもなく、三味線の音がしだいに大きく強く早く鳴り出したのに連れて、若いふたりの女が裾をゆっくりと捲りはじめた。
あでやかな着物の裾が乱れ、目を射るような緋色の腰巻きに包まれた脚がしだいに露わになってくる。強い照明のためか、もともとそうなの
か分からないが、女たちの脚の白さが目に痛いほどの強烈さで飛び込んでくる。膝のあたりまで捲り下られ、しばらくそのままの状態で踊り
が続く。知らない冴子にも、川を渡る動作であることが理解出来た。
急流に向かって力を入れて歩き、川床の石にでも脚を滑らせたのか、よろめく動作も真実味がある。                      
 冴子の常識を打ち破る強烈な衝撃で、女達は膝からさらに着物の裾を捲り上げて、ふくよかな太腿を露出し、やがて黒々とした陰毛まで露
わにして、女の命を秘めたような円やかで軟らかそうな下腹部までが、強烈な照明に照らし出された。流れが強くなったらしくふたりの女が
互いに肩を抱
き合い、急流から身を支え合っているような格好で踊りは続 く。石につまづいて倒れそうになり、大きく片足を宙に挙げた一番若い女の脚
を、もう一人の女が掴み、さらに大きく開く。後ろへ倒れそうになる女の背後へ、籠担の雲助のような格好で踊り出た年増が、後ろから女の
上体を支える。
 そうしたまま三人の女は何度も同じ場所で回り始めた。田宮と冴子の方から見ると、大きく開かれた女の股間の翳りの中心に、メスで切り
開かれたような生々しい鮮やかな肉色の潤んだ花芯の奥の微細な襞までが鮮明に見える。                               
 もっと川が深くなった想定なのだろう、脚を広げられた女を他の二人の女達が抱え上げて川を渡る。略奪される花嫁のように、抱え上げら
れ運ばれる女の着物がしだいにはだけ、帯が解け着物がずり落ち、最後には全裸になってしまった。
 舞台の右端でやっと川を渡り切ったらしく、裸の女を叢の上に横たえ、残りの女達は去って行った。ひとり残った女は、渡川の衝撃が醒め
やらぬ様子で、大きく息をしながら身悶えている。

 冴子ほどではないが、それでも人並みより豊かな乳房が悶えのたびに大きく揺れ、鮮やかな薄桃色の小さな乳首が痛々しいほどに震えてい
る。 幼さを残したような薄い肩と締まっ胴の割に、意外と発達した腰と太腿の豊かな肉付きが淫蕩な感じをあたえるその女は、やがて股間
に掌を差し込み自慰をはじめた。豊かな腿を閉じたり広げたりしながら、憑かれたようにせわしなく自慰行為に耽る女の掌の動きによってし
だいに昂められていく様子は、女の冴子には、まるで自分が田宮の目の前で淫らな行為を強いられているような自虐めいた興奮を感じる。           

              
 田宮の掌がいつのまにか冴子の膝に置かれて、ふと気が付いた時その掌は膝のあたりから腿の付け根にかけて、ゆっくりと羽で刷くような
愛撫が繰り返されていた。ふたりが居る炉の辺りの照明は今は消されて、舞台の反射光が弱く届いているだけだから、舞台の女からも、どこ
からか見ているであろう照明係の裏方からも気付かれる心配はない。                       
 舞台では白い豊満な肢体をくねらせながら女がしだいに昇り詰めている。滑らかな肌が艶やかに輝きはじめたのは、汗のせいらしい。苦痛
のように眉根に皺を寄せ、小さい奇麗に並んだ皓歯の奥から、蛇のようにちらちらと血色のいい舌を出して喘ぎ始めている女 は、やがて切
なさそうに声をあげはじめた。女の太腿の筋肉が細かく痙攣し、脚の指が反り返っている。大きく広げられた股
間にあてられて激しく動く女の細い指先が体液で濡れて光り、陰部からは乳色の粘液が臀に向かって一筋流れているのが見える。              

    

 冴子は自分の躯の奥からも、あの女がいま感じている官能の疼きと同じ衝撃が奔るのを感じて我に返ってみると、いつの間にか田宮の掌が
丹前と浴衣の合せ目から侵入しじかに冴子の脚を愛撫しているではないか。それも既に男の掌は、冴子の太腿の奥深くにあって叢を、感知出
来るか出来ない程の微妙な撫で方で愛撫していた。                                
「 いや! 止めて………」                       
 思わずあげそうになった声を殺して、冴子は男の掌をきつく押えた。冴子の手が男の手を抜き出そうとすると、鋼のような男の手にもう一
本鋼線が差し込まれたように、男の手の硬さが一層強まり、そこに固定されたような力が加わって、冴子の力ではびくとも動かない。椅子に
座ったままの腰を引いて男の手を避けようと身を引きかけて、冴子は思わず息を呑んだ。自分の花芯からは、とろけるような暖かさで、いつ
のまにかじっとりとあふれ出したものが、下穿を濡らしており、男の手が、大分以前からそれに気付いて、もう合意を得たような気安さで愛
撫していたからである。                 
 うつむいて見ると、冴子があがいたせいで、丹前や浴衣の前が開き、昏い中に仄明るさを滲ませて、強く合せた二つの太腿が露わになって
おり、田宮の浅黒い腕が、丁度冴子が無理に挟んで締め付けてでもいるように、冴子の太腿の付け根のあたりに埋没している。
 薄いナイロンの下穿は濡れたために一層存在感を失って、田宮の指の微妙な触覚をじかに触れられているように伝える。男の指先が冴子の敏感な部分に触れる

度に、電流でも通されたように冴子の躯が緊張した。 
 舞台の女が最後の絶叫を残して達した時に、照明が一斉に消され、あたりは一瞬暗黒に閉ざされた。田宮の息が冴子の頬にかかったかと思
った瞬間、唇に煙草の匂の唇が重ねられた。顔を振って逃げる間もなくその唇は去っていった。それを待っていたように、杉林の間に点々と
提燈のような昏い灯がともされ、女中が二人酒や肴を持って入って来た。二人とも年老いた女中だった。        
 「どうぞごゆっくりして下さいとの主人の伝言で御座居ます。もしよろしければ、ここにお泊りになってもかまいません。ここの設備をご
案内させていただきます。どうぞこちらへ…………」                     
 田宮だけが立って付いていった。この部屋に来てどのくらい時間が経過したのだろうかと、冴子は目をこらして左腕をたくしあげてから
、腕時計は風呂に入った時に部屋の鏡台に置いてきたことに気が付いた。夫は今あの部屋でどうしているのだろう。冴子の感では間違いなく
寝込んでいるにはずだ。夫の酒に酔ったしゃべり方や顔の赤さ潤んだ目の様子から判断出来る。万一起きていたとしても、夫がここへ田宮と
来ることを勧めたのだからどうということはない。冴子はそう思うとにわかに華やいだ気分になった。新しく来た銚子を取り上げて、独り杯
に酒を満たしてあけた。

 咽喉から食道を過ぎる酒の刺激に、いい知れぬ退廃と甘さを感じた。                               
 それにしても間違いなくこの宿の人達は自分と田宮を夫婦と信じ込んでいる。十八歳も違う夫と自分の年令差を見れば、常識的には田宮と
自分の夫と判断されてもしかたのないことだが、ここへ案内された時、夫も田宮も間違いをたださなかったのはなぜだろう。夫は、自分とい
う妻を絶対的に信じているのだろうか。それとも田宮にそれほどの信頼があるのだろうか。それにしてはいままでの田宮の冴子への態度は夫
への背信そのものと言わざるをえない。こんな刺激的で猥褻なショーと二人だけの密室のような場所へ行くとは知らなくて、そこらにある旅
館のバーだと思っている夫としては、別にそれほどの配慮をする必要を感じなかったのかも知れない。
 先程女中が、今夜ここへ泊まってもいいと言っていたが、どこにそんな施設があるのだろう。そんなことが出来る訳はないが、もし面白く
快適な施設があるのなら、夫を起こしてつれて来てもいい。一般的なあの旅館らしい部屋よりいいかも知れない。そんなまとまりもないこと
を冴子が考えていた時、目の前の杉林の中から突然田宮の丹前姿が現われた。            
 「奥さん、これは面白い所ですよ。来て見ませんか」           
 白砂の庭に照明を浴びて広い額に垂れた長い髪を振り上げ白い額の艶やかな肌を輝かせながら、濡縁に立つ冴子を見上げてにこやかに言う
田宮の全身から、若い男の精悍な息吹が匂い立っていた。 
  1. 2014/12/02(火) 15:17:32|
  2. 花濫・夢想原人
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花 濫 第3章女の業火

 もし浩二と別れたあと、田宮を知らなかったら、自分は果たして、夫とふたりの静謐な生活に戻れただろうか。浩二が自分に残していったのは、決して性の悦楽だけではなかった筈だ
 確かに自分は夫に肉以外の不満はないけども、あの強烈な悦楽を知った以上、まだ若く健康な肉は、そのまま夫と一緒に静かに老いていけただろうかと思うと自信はない。

自分はまだ若い。万一、相応の男性が現われて、浩二と同じ行為にはしったら、自分は夫を捨てたかも知れない。それほど当時 自分の肉は男の肉を需めていた。      
 冴子は眼を閉じたまま、当時の悶々とした日々を反蒭していた。
浩二が去った直後は、無性に浩二に会いたかった。ロンドンにツアーにでも混じって夫を欺いて出かける計画を真剣に練ったのも事実である。結婚以来したこともない夫に自分から需めるというはしたない行為をしたこともある。自慰を覚えたのもあの頃である。
 夫以外の男を需めるということは、理性では厳に慎むべき行為であると思っていたし、現実にそのようなことが出来るとも考えてはいなかった。   
 浩二とのことさえ思い返せば、何と重大な夫への背信行為だろうと、身の毛のよだつような罪悪感に駆られて幾度身を苛なんだことだろう。自分の肉が、浩二以来、官能の疼きに狂うのは、裏切りへの罪科だとさえ考えて耐えていた。   
 浩二が帰って来るのなら、耐えて待っていたであろうが、浩二は自分に、永久に現われない、と宣言して去って行ったのだ。
 それも自分に自分に消すことの出来ない劫火の烙印を押して、知らぬ振りをして去ってしまったのだ。考えて見れば、浩二が一番罪深い。
 自分が田宮と出来たのは、よく考えて見れば浩二の責任なのだ。                                
 冴子は、そこまで考えて、少し安堵した。                 
「お前は最近とても色っぽくなった。躯全体が匂うように柔らかくふっくらとして瑞々しいし、眼にいいようのないあだっぽさが漂っている。見るだけで男心をそそるようだ」                            
 夫が宴会から珍しく酒気を帯びて帰った晩、そんなことを言ったのは、たしか浩二がロンドンに去って二月くらい経ってからのことだった。        
 「あなたらしくない冗談だわ」                     
 冴子が顔を赤らめながら言うと、                    
 「俺じゃないよ。田宮が今夜酔ってそんなことを言っていた」       
 「田宮さんって、あの講師の? ………あの人まだ独身でしょう? お増せさんだこと……」                      
「あいつだって、お前と同じ歳だ。普通ならもう幼稚園くらいの子供が居てもおかしくない年令なんだが、純情というのか依怙地というか、婚約していた女性が別の男と駆け落ちして以来、学内のいろんな人が、いろいろないい縁談を持って行っても、一向に反応を示さないんで、結局、彼は変り者という烙印を押されてしまったんだなあ」                          
 この家にも何回も来ている田宮は、国文学専攻の文学青年には見えない行動的な新聞記者のような、痩身の背高い雄豹のような肢体と、長い髪を掻きあげながら細い澄んだ瞳で、見据えるように相手の目を覗き込むようにして話す純朴な表情を冴子は思い浮かべた。
夫の研究の方便言葉の収集の手伝いや、夫が出張する際の講義の代役の打ち合わせなどで、この家に来る機会も多いのだが、来れば夫に酒をねだり、したたか酔って独身らしい軽快なジョークを飛ばしながら冴子を笑わせ、静謐なこの家に花が咲いたような若やいだ雰囲気を残して帰るのが常で、冴子は田宮が来るのを愉しみにしているし、決して田宮を変り者とも考えたこともない。                

            
「あの人、学校では変人という烙印を押されるような人に見られているんですか? うちにいらっしゃる時には、愉しい愉快なひととしか思えないけど…………」                                  
「あいつは全く妙な奴で、学校では、必要なこと以外滅多にしゃべらないし、ほとんど笑顔も見せないんだ。頭もいいし研究成果も学会でも若手の中では秀逸なんだが………。
 それがうちに来ると、あんなに人が変わったように愉快になるんだ。お前に惚れているのかもしれないなあ」                
「あら、厭だわ」                           
 冴子が体を揺さぶって照れたようにしなをつくった。その時に冴子の全身から、灯がともったような照りが匂い立ったのを夫の和夫は見逃さなかった。
 もうとうの昔に自分達夫婦から消えてしまったと思っていた、生臭い性の匂いがはからずも妻からわきたつように漂ったのを、惣太郎は添い慣れた妻ではなくて、初めて会った女と向かい合っているような感情で茫然と冴子の女の匂を沸き立たせているような姿態い眺めていた。       

 「来週から冬休みなんだが、田宮と群馬の方便言葉を集めに伊香保温泉に行くんだ。偶然なんだが、伊香保温泉に九十五才の老婆が居て、その親戚の子がうちの学部にいたんだ。その老婆が言葉だけでなく、古い民話や民謡を沢山覚えているというので、行ってみよう、ということになったんだ。どうだお前も行ってみないか。久し振りに温泉もいいぞ 」                     
 「それは温泉には行ってみたいけど、お仕事のお邪魔じゃなくって? 」  
 「遊び半分の調査だし、田宮が車で連れていってくれるというので行くことにしたんだが、帰りに榛名の山に登って、釣りをして行ってくれと生徒の親からも誘われているんだ。その生徒の親の実家がまた伊香保で古い旅館だそうで、そこへ泊まることにな
ったんだ。最近は伊香保も沢山温泉旅館が出来て、温泉が足りなくなって普通の湯を沸かせている宿が多いそうだが、そこは源泉を確保している数少ない旅館らしい。ただし相当古い旅館らしがね」            
 「清潔なら古い温泉旅館ってあたしは好きだわ 」            
 いつになく饒舌な夫をいぶかりながら冴子は、もう一緒に行くことに決めていた。温泉よりも田宮と一緒に旅することの方が興味があった。
 田宮に好意を寄せているとかいうことではないが、冴子は無性に若い男性と接してみたかった。相手は誰でもいい。自分の中で目覚めた若さを受け止めてくれる話し相手が欲かった。若者同志しか通じ合わぬ木霊のような会話が欲しかった。こんな心境はか
ってないことだったが、浩二とのあと、冴子は砂漠で水を需めるように、同じ世代の男性との会話や接触を渇望してきた。
 それはやはり自分の肉が浩二以来にわかに性に目覚めて、本能的に異性を求めていることは隠しようもない事実であることは冴子自身が痛いほど知っている。
 しかし、いつの間にか男と女の生臭さが消えて、清烈な水の流れのような精神的な穏やかさを需める夫との生活では知り得なかった、狂おしいまでの情熱や湧き立つような情感を互いに秘めながら話し合うという、若い男女特有のあふれるような不思議な精神の昂揚と甘さのあることを経験したことが、冴子の心に大きな変化をもたらしたのだった。      

 若い男女の間には、相互の間に牽引する力が作用するような気がすると冴子は最近考えはじめている。互いに情緒を引き合いたぐり合うから、そこには力が生じ熱がうまれ光りが飛ぶ。
 それが情熱というものなのだ。夫との場合、冴子の吸引しようとする情熱は、夫の寛大でおおらかで世慣ている初老の情緒は、冴子がどんなに牽いても汲みくせず、押してみても手答えがない。満々と水をたたえた湖水を飲み干そうとでもするような味気なさを冴子が夫に感じるには、こういうことなのかも知れない。                        
 今夜田宮が夫に話したしたという自分のことにしても、今までの冴子なら、たとえほめ言葉であっても、他人の妻の肉体に関する微細な評価を、こともあろうにその夫に話す男など、どう考えても下劣で低俗な存在として嫌悪した筈である。
 だが、今の冴子には、たとえ酒席の下品な会話であれ、自分を女性としてほめたたえてくれた田宮に、実際に裸体を視られたような羞恥と妖しく燃え上がるような肉のきしめきを覚えるのは、やはり自分と同世代の田宮に、互いに性を牽引し合う男女の情緒の漲ぎりを感じるからなのだろう。             
 「伊香保はもう寒いでしょう?お二人がお仕事に出かけられたら、あたしはどうしたらいいの?一日旅館でじっと過ごすなら、
編物でも持って行かなければならないわ………」                            
 「伊香保には徳富蘆花の記念館や竹久夢二記念館もあるから一日退屈することもあるまい。それに俺達の仕事も、ただ老婆の喋りや歌うのを録音してくるだけだから、半日もあれば十分なんだ。あとは言ったように遊びなんだ」     
 出無精で誘っても滅多に付いて来なかった妻が、今回に限って待っていたように、頬を上気させ目を輝かせかているのは、自分
が今まで思っていた通り妻は田宮に相当な思いを寄せている証拠に違いないと、自分のもくろみの確かさに、一種の怯れと突き上
げるような妖しいときめきを感じた。           

 田宮が以前から妻に思いを寄せていることは、無口な癖に普通なら心の襞に隠しおくようなことでも平気で表現する彼だから、
縁談を勧めても、先生の奥さんのような女性なら一も二もなく承諾するのですけど、とか、今夜の打ち合わせは先生の家でしたい
な、奥さんの貌をもう二月も見ていないので会いたくて………………、と平気で言う。
 それも冗談やお世辞でなく真底そう思っているのが、ながい付き合いの惣太郎にははっきりわかる。
 田宮は自分の感情や意見を偽らない性格だから、学内でも田宮の率直な意見を曲解して敵対する者も多いが、その反面、田宮の
言うことなら………と、その発言には誰もが信頼を寄せる。特に学生にはそういう田宮の率直さが受けて人気がある。剣道は六段
の腕前で国体に出場したこともあるほどで、今も大学の剣道部のコーチを引き受けている。無口な
上に一たび言葉を発すれば辛辣だし、痩せて背高の身体体には野武士のよな隙のない強靭さが滲み出ていて、はじめて会う者には、
近寄り難い印象を与えるが、惣太郎のように長らく付き合ってみると、剛健さの中に素直で一図な愛すべき性格の持ち主であるこ
とがよくわかる。                    
 田宮がはじめてこの家にやって来たのは、彼がまだ助手をしていた頃で、浩二が大学の二年生だった。冴子もはじめて田宮に会
った頃は、          
 「やくざか昔のお侍みたいで怖い人……」                 
 と評してあまり近寄らなかったが、いつの間にかすっかり田宮の性格を理解して、馴染んでいた。                           
 途中二年アメリカの大学に留学し、丁度、浩二がロンドンに行くのと入れ違いのように帰って来たのだが、どうもその頃から妻
の田宮に対する感情に変化が現われ始めたような気がする。                       

 惣太郎がはっきりと妻の田宮への愛慕の情を感じとったのは、田宮と二人で受け持った地方の大学の集中講義が、惣太郎が俄な
腰痛で行けなくなり、急遽田宮が一人で講義することになって、二晩ほどこの家に田宮が泊まり込んで準備した時である。                  

             
 腰の痛みに起き上がれない惣太郎に田宮は、カイロ・プラクチクスという、こういう場合いちばん効果的なマッサージ治療法を
アメリカで修練してきているから治療してあげます、と申し出た。なんでもカイロ・プラクチクスとは、ギリシャ語で掌の手術、
という意味だそうで、剣道や柔道の高段者は、人間の骨や筋肉については医者並みに研究していて、大抵鍼、マッサージ、整骨な
どの資格を取得しているが、自分は前からこのカイロ・プラクチクスに興味を感じて、日本国内の関係者について習っていたが、
今回向こうで徹底的に学び、アメリカでの治療士の資格も取って来たっという。
 残念ながら我が国ではまだ厚生省の認可が下りていないので、治療することは出来ないが、自分が取得しているマッサージと整
骨士の資格で治療して上げて、大勢の人から喜ばれている、ということだった。
 下穿だけで俯伏せにされ、田宮の剣道で鍛えた大きな掌が、惣太郎の脊髄骨の両側を撫でさすっていった。羽毛で撫でられてい
るような擽ったさと、じんわりと押え付けられるようなかゆさに似た痛みとが入混った妙に性感を刺激するような、焦燥感の残る
治療で、惣太郎は小馬鹿にしたが、実際治療が終って見ると、つい先ほどまでちょっと身動きしても激痛がはしり呻き声が出てい
たのが嘘のように、身を動かせても鈍痛しか感じない。                  
 「田宮さんがこんな特技をお持ちだとは知らなかったわ。どうして隠していらっしゃったの? 」                           
 「隠してなんかいませんよ。学校の運動部の選手たちのこの種の治療はほとんど奉仕でやっているし、せんだっても、どこで聞
いたのか副学長の奥さんが、長いこと貧血症で肩凝りに悩まされているから、ぜひともと頼まれて、忙しいのに六回ばかり世田谷
の自宅に通いました」                  
 「それで治ったのかね」                        
 やっと身動き出来出し躯をゆっくりと横臥させながら惣太郎が口を挟んだ。 
 「ええ、血圧も随分ら下がって、肩凝りは完全に治ったらしいですね。こんな爽やかな躯になったのは何年ぶりだろう…………
って、感謝されました。まあお齢ですから、そのうちまた懲り始めるでしょうがね」             
 「これも年中肩懲りで悩んでいるんだが、一つ治してやってくれんかね」   
 「あら、あたしのは運動不足ですよ」                   
 にわかに矛先が自分に向けられて冴子が慌てて弁明した。         
 「ええ奥さんのも多分貧血からくる肩懲りだと思います。ただし副学長の奥さんと違うのは、まだ若いから治療で増血作用を促
せば、完全に肩凝は治るということです」                               
 「副学長の奥さんって幾つになるんだね」                
 「六十五才です」                           
 「それじゃあ冴子はまだ見込があるな」                  
 「あら! 二人ともあたしを馬鹿にしたのね。ねえ貴方、本当にそうならあたしもやってもらいたいわ。肩凝って意外苦痛なん
ですよ」           
 「奥さんなら絶対自信がありますね。二週間置きくらいに、そうですね五回治療すればいいでしょう」                         

 
 「そりゃあいい、ぜひやってやってくれよ」               
 惣太郎の寝ている布団の横に敷き布団を一枚だけ敷いて冴子が横になった。  
 「奥さんそれじゃあ駄目です。本当なら裸になって頂くのですけれども、スリップ一枚か薄いネグリジェかまたは浴衣になって
下さい。この治療は神経を刺激して血行をよくしたりするのですから、厚い衣服があると効果がないんです」 
 「えっ、田宮さんの前でそんな格好出来ないわ」             
 冴子が羞恥に顔を染めながら言うのを、惣太郎が強引に説き伏せると、隣室に出ていった冴子は、薄い夏物の木綿地に椿の藍色
模様の浴衣を着て入って来た。
 顔の化粧も落として、素顔に薄く口紅だけはたいていた。          
 ネクタイをとったワイシャツ姿の田宮が長い脚を持て余すように折り曲げて、横臥した冴子の肩に掌を伸ばした。
 冴子は惣太郎に背を向けて横臥している。髪をたくし上げてピンで留めているが、襟脚にほつれた細い髪が女らしい色気をほの
ぼのと匂わせ、細い腰からこんもりと悩ましげな曲線で盛り上がる臀の丸みが、田宮の篠竹のような腕の動きにかすかにゆらめい
ている。
 田宮の掌が肩からしだいに下がり脇腹や腰の辺りを撫ではじめると、今まで無言だった冴子が、しきりに空咳や咽喉にからんだ
痰を除去するような声を出しはじめた。
 鼻が詰まったようなその声は、冴子が発情している状態であることを惣太郎は敏感に察した。
 田宮の顔は後ろ向きで見えないが、なんとなく昂ぶりが感じられる。      
 やがて田宮の指示で、冴子が惣太郎の方に横臥の向きを変えた時、惣太郎はあっと、思った。
 惣太郎の想像通り、冴子の変化が目に付いた。冴子の全身から妖気が立ち上っているような一瞬の感じがあった。閉じていた瞳を、
ちらと、あけて惣太郎を見た瞳が黒々と濡れて、化粧のない白い頬が紅をさしたようにつやつや輝いていた。          
 「眠くなるくらい気持がいいわ」                    
 惣太郎を見る目が朦朧と霞んでいた。俯伏せに変った時、冴子は顔を夫の反対側の向きに変えた。                          

 
 惣太郎は田宮が、アメリカに同棲している二世の女を残して帰国しており、帰国後、女は田宮の子を出産し、今一才に成長してい
る。名前は英美夫といい、女の父親である一世の医者の父が名付けた。あちらの両親が離したがらないので置いて来たが、あと二年、
日本の大学で教えると、アメリカの大学の日本語教授が約束されているので、向こうに帰って永住することにしている。そういう約
束で、女と子供は、女の両親に預けて来ていた。もちろん仕送りは続けている。
 このことは田宮の母親が、二年前から重い病に伏している関係で、本人と惣太郎以外は誰も知らない。もちろん冴子は知らない。             

    
 冴子は田宮を未経験な独身青年くらいにしか思っていないだろうが、実は女の扱い方は熟知しているのだ。内縁の妻の他にもアメ
リカでは相当女遊びを経験していると、惣太郎に告白している。
 このカイロプラクチクスというマッサージも、実は学校に通っている頃に、学資に窮していた田宮が、ある機会に医者の友人に勧
められて習い覚え、冷感症の女の治療専門にアルバイトとして開業したものらしい。
 ある期間は繁盛し、金持ちの婦人達が押しかけたらしいが、今の女と恋愛関係に入ってから止めてしまったらしい。だから田宮の
性の遍歴や習い覚えた技術と経験からすれば、冴子のような純真な女を発情させることぐらい、いとも簡単なことに違いない。
 そう考えると、惣太郎は、目の前の田宮と妻が、まるで媾合でもはじめかねないような怖れを感じて、思わず身を乗り出していた。   

 一体田宮の掌にはどんな魔法が隠されているのだろうか、と冴子は朦朧としていく頭で考えていた。薄い浴衣を通して、じかに肌
に触られているように田宮の掌のぬくもりが、あたかも田宮の精を注入されているように感じられ、その後に冴子の躯の内部から快
感がわきおこり、触られる度にその場所が痙攣してくるのを押えることが出来なかった。
 悪寒のような戦慄と官能の疼きが、しだいに冴子の体内を満たしていく。ともすると出そうになる嗚咽を冴子は必死で堪えた。
最後に田宮は、背筋から腰と、臀の割れ目のあたりから太腿、脛、爪先までを、羽毛で撫でるようにして、マッサージした。
自分の躯の性感帯が、すべて田宮の掌先に集まっていくような恍惚感に、冴子はとろけるような官能に朦朧となっていた。それは浩
二との烈しさとは違った、じっとりと弱火で、とろとろと灼きあげられるような、切ない情緒であった。                   
 治療を終えて、淡いピンクの柔らかそうなセーターに襞の多い紺のスカート姿で現われた冴子を惣太郎が寝たまま見上げた時
、そこにしっとりと潤いの出た顔に、いきいきとした瞳と、躯の奥から染め上げられたような肌の艶がまぶしく匂い立っている、妻
の冴子ではなく、見知らぬ女が艶然と俯向きかげんに自分を見下ろして微笑んでいるような錯覚を覚えた。                 
 「ほんと!まるで自分の体重がなくなったみたいに躯が軽くなって翔んでいきそう よ。有り難うございました」                   
 田宮に熱燗を注ぎながら、照れた上目使いで挨拶をしている妻は、まだあえぎの治まらぬように小さく開いた唇から、美しい小粒
の歯をこぼれさせながら、耳まで染めあげている。
 惣太郎は冴子の内部にいま、消えていた若さの灯がいっせいにともされたような耀きを見ると同時に、酒を受けながら、冴子に優
しさをたたえた目を注ぎかけている田宮にも、獲物を捕らえた猟
師のような満足感のあふれた表情を読み取っていた。
 二人の一瞬の視線の溶け合いに、惣太郎は健康な性を共有する男と女が互いに心を開き合った暗黙の了解が成立した証を視た。   
 「今度は温泉に行った時に治療しましょう。よく利きますよ。先生もそうしましょう」                                 
 「ああそれはいいね、ぜひ、そうしてもらおう」             
 「でも、田宮さんに悪いわ。温泉にまで行って、あたし達夫婦の治療をしているんじゃ、疲れに行くようなものでしょう」                
 「先生の治療は、早く直って貰わなければ自分が困るから、奥さんの方は、触れることが愉しいから、お二人とも自分のためにする
ようなものです。どうか気になさらないで下さい」                          
 「まあ、田宮さんたら………」                     
 冴子が羞恥とも照れともとれる表情で、両手を上気した頬にあてて、子供のいやいやをするようなしぐさで身体を揺すった。その姿
に惣太郎は自分の妻に今まで見たことのない妖しい輝きを見た。                    
 その時、惣太郎に激しい嫉妬の感情の替りに、田宮の鋼線のような鋭い身体に容赦なく犯されながら、歓喜に身を打ち震わせている
自分の妻の、見たこともない嬌態のあられもない姿が、天女のもだえのように美しく想い描かれて来るのだった。                     

    
  1. 2014/12/02(火) 15:13:00|
  2. 花濫・夢想原人
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花 濫 第2章はじめての不貞2

 浩二は食器の触れ合う音で目が醒めた。薄暮に包まれた和室に素っ裸のまま寝てい
た。身体を動かすと、陰茎にかすかな痛みが奔った。触れて見ると亀頭のすぐ下の包
皮が擦切れた痛みであることがわかった。遠くでサイレンが鳴っていた。身体に掛け
られた毛布から冴子の髪の匂が漂ってた。身体の芯に気だるさが残っているが、特に
変わったことはない。遂に女を知ってしまった、という思いが強い。それにしても何
と甘美な陶酔だったことだろう。最初の違和感がしだいに快感に変わって、最後には
全身が痺びれるような陶酔に我を忘れて叫んだような気がするが定かではない。思い
出すともう陰茎が勃起しはじめている。冴子が置いてくれている浴衣があるというこ
とは、彼女の怒りがないということになる。それを考えた途端に、浩二は安らかな愛
のような安堵と緊張を甘く感じていた。下穿が浴衣の下にあるほか自分の着衣はどこ
に仕舞われたのか見付からなかったので、下穿をはいたうえに浴衣を着て、暗い廊下
を冴子が音を立てているキッチンに向かった。       
 キッチンのドアは開いたままで廊下に光りがこぼれていた。明るいシャンデリア風
の照明に照らされた室内では流しに向かって冴子が調理の最中だった。冴子の調理中
の後ろ姿は見慣れていた筈なのに、今日に限って、賞味したことのある美味な果実が
鼻先で匂い立っているように、生唾が口腔に湧き上がるような耐えられない魅力を発
散させているように見える。柔らかそうな毛編みの白いセーターの袖を肘まで捲りあ
げて食器を洗っている水滴の付いたむっちりとした肉つきのいい腕が肉感的で、浩二
の男心をそそる。膝のやや上までの短めの紺のギャザの多いスカートから覗いた素足
がそこだけ明りを集めたように浮き出て、スカートが揺れるたびにその奥から甘酸っ
ぱい女の体臭がわき立っているようだ。照明に一番近い頭髪は、繊細な柔らかさで新
しい瓦のように燻銀色の鈍い光沢を放って、揺れるたびに芳香を撒き散らしている。
 そんな後姿を見ているだけで今の浩二は身震いするほどの官能のたかぶりを覚えて
しまう。いままではこの家の主婦として、手の届かぬ存在だった冴子が、一たび肌を
交わらせてからというものは、まるでいま知り合ったばかりの女のようにいとしく思
え、彼女の躯がたとえようもない甘さを放って自分を誘っているように蠱惑的で、見
ているだけで気が狂うほど激情に襲われて、どうしようもなく欲しくなる。              
 衝動を押え切れずに後ろ後ろから抱付こうとしたとき、長い髪をゆらして彼女は振
り返った。上気した顔に羞恥がはしって、浩二の視線と絡ませた眼を慌ててそらした。                                   
「お料理いろいろこしらえようと思って買って来たのに、時間がないわ。これで我慢
してね。お酒燗するんでしょう?」     
 わざと忙しそうに食器棚の扉を開けながら言う声がうわずっているのが、浩二には
どうしようもなくいとしい。                       
 「なにもいらないよ。いちばん欲しかったママをいただいたんだからら………」 
 「まあ、浩二さんたら………」                      
 冴子は両手を顔に当てて思わずその場にしゃがみ込んでしまった。かくれんぼの鬼
のように顔に両手を当てたまましゃがみ込んでいる冴子の肩を浩二が優しく抱いた。                                   
 浩二は酒はあまり強い方ではない。冴子も平素あまり口にしないが、その夜はふた
りで飲んだ。テーブルを挟んで向かい合って食事していたのが、何時の間にか並んで
酌をし合い、それが抱擁と愛撫に変り、やがて浩二の浴衣が脱げ、冴子の白いセータ
ーを肩の上にたくし上げられ、スカートが捲り上げられていた。     
 外は完全に闇に包まれていた。この家の辺りは夜になると車も通らない。かすかに
近所で子供が練習しているピアノの音が聞こえるだけである。明るい照明に照らされ
て、卓上に食べかけの食器が忘れられたように雑然と並んでいる。その真ん中に置か
れたクリスタルの花瓶の紅白のカーネーションと霞草だけが、風もないのに生き物の
ように不規則に揺れていた。                    
 浩二の膝の上で冴子はスカートを脱がされ下穿が膝にかかっていた。唇を合せたまま
浩二の手がスリップからはみ出した豊満な乳房を揉み、もう一方の掌は股間で忙しく動
いていた。せつなそうな冴子の喘ぎが浩二の耳元に熱い息を吹き掛けていとき、突然部
屋の隅のスタンドに置いてある電話がけたたましく鳴り出した。  
 驚いて口を離した浩二と顔を合せた冴子は、あわてて浩二の膝から降り、捲れ上がっ
たセーターを引き下げながら電話機に近付くと、浩二を振り返って、    
 「きっと、うちの人よ」                         
 髪を一振りしてから、今までの恍惚とした表情を、仮面を剥いだように引き締めて受
話器を取った。                            
 夫は出張の際に必ず几帳面に電話してくる習慣だったから、今夜もいつ電話して来る
かと、冴子は先程から気になっていた。もっと今夜は飲もうよ、という浩二に、電話が
掛かって来てからよ、と言ってあったので浩二も緊張した面持で冴子の表情を伺ってい
る。浩二の愛撫に淘然となりながらも、頭の隅に夫の電話のことが冷たい氷のように胸
の隅に澱んでいたのだった。                 
 「変ったことはないかい?こちらは元気でやっている」           
 いつもと変わらぬ静かな夫の声が、そこから掛けているように鮮明だったので、冴子
は一瞬に酔いが飛んだ。罪悪感の前に恐怖が胸の中を切り裂くようにはしった。若い男
と情交の最中に夫の電話を受けている。
 捲れ揚がった白いセーターは直したが、スカートは付ける閑はなかった。丈の短いス
リップの下から豊かな素足が男の視線にさらされている。下穿のない裸の下肢は、薄い
スリップを透かして黒い茂みが見えているに違いない。そればかりか、夫以外の男との
交わりの余韻がまだ流れ出ている上に、さらに今男に触れられて、また新しい溢れが生
暖かく股間を濡らしている。受話器から伝わってくる夫の鮮明な声に、冴子は放縦な格
好で受話器を持っている自分と、漲ぎりの脈動を隠そうともせず、しなやかな肢体を輝
かせて自分を待ち受けている浩二のいる、みだらな空気の澱んだこの部屋の様子を夫に
発見されたような恐怖を覚えていた 
「今、浩二さんが来ているの。ロンドンに転勤ですって。今度の日曜日出発なので、土
曜日の夜は泊めてくださいって言ってます。いいでしょう、あなた………」 
「それは急なっことだな。今夜は帰るのか?」                
「今夜はこれから壮行会があるのですって。それで明日広島に帰って土曜日に出て来る
そうです」                             
「そうか、何か餞別でもやらなきゃならないな。土曜日の晩はゆっくりやろうと伝えて
くれ」                               
 受話器を通した夫の声が、数百キロ離れた北海道からではなく、すぐ傍に居るように
妙に生々しく伝わってくるのは、自分のやましさに怯えた気持ちに起因しているのだろ
うかと、冴子は前を屹立させたままテーブルに片肘を突いて煙草に火を付けている浩二
を見ながら思っていた。                    
 浩二の裸の肩に天井から吊したキャビン風の照明の白熱球の強い光線があたって、腕
の付け根のあたりから肩のやや後ろにかけて琥珀色の鞣し革のように艶やかな皮膚がハ
レーションをおこしたように輝いている。背中から細い腹部に向かって赤いひっかき傷
が三筋ばかりはしっているのが見える。先程、歓喜の夢幻のさなかに堪え切れなくなっ
た自分が付けたものに違いない。夫の痩身にこれまで男らしい堅さと強さを感じていた
のは、自分の無知のせいで、いまこうして浩二と比較して見ると、同じ男性とは判じ難
いほど、夫の体は頼りなく弱々しい。皮膚にも浩二のような照りはなく、筋肉にいたっ
てはないに等しい。夫がこまかく北海道の印象を語っているのが、いつの間にか途切れ
途切れにしか聞こえなくなっていた。     
 「雪は思ったより少ないよ。・・・今夜は・・・・お前も知っている・・・に誘われ
て・・・・を食べに行くことになっているんだ。・・・・・・」      
 煙草を吸いながら浩二が冴子を見た。眩しそうに冴子の顔を眺めてから、視線を下げ
て短いスリップの裾からこぼれている冴子の太腿に目を据えた。      
 上半身に毛編みのセーターを着ているだけに、剥き身の白葱のような白く艶やかな下
半身の露な姿を見据えている浩二の熱気を帯びた一途な視線が、直接愛撫されているよ
うに感じられて一層羞恥を誘う。狭い室内に若い一対の男女が向かい合い、交わりの前
の発情の極わみに達していた直後だけに、部屋には緊張した一種独特の精気が張りつめ
ていた。それは向かい合うふたりの男女が熾烈なエネルギーを爆発しようとする直前の、
発光体のような強烈な生命の燃焼の焦げるような匂の充満でもあった。その極度に緊張
した様子が、電話の向こうにいる夫に伝わるのではないかと、冴子は自分から声を発す
るのを極力控えていた。冴子にはその場を繕うほどの演技力は全くない。                           
 「それで・・・・明日は・・・・・・・どうおもう?・・・どうしたお前聞いている
のか?・]
 [はあっ?・・・ええ、聞いているわ・・・いまお鍋のお湯がこぼれそうになってい
るので・・・・・それがつい気になって・・・」              
「なんだ。どうもそわそわしているような気がしてたんだ」          
「あなた……………浩二さんとかわる? 」                
 浩二が慌てて掌を振って拒否のサインを送る。               
 「いや、いいだろう。土曜日にゆっくり話せばいいだろう。それよりだな…………を
買って帰るから、と伝えてくれ…………」                 
「わかったわあなた……………」                     
 「それから……………………」                      
 浩二が何か行動を起こす気配が感じられて、冴子は思わず浩二に注意を集中していた。
 煙草を喫い終えた浩二が、最後の一服を大きく吸い込み吐き出すと、紫煙が白熱燈に
照らされて濃霧のように巻く中で、その霧にまぎれるように白熱燈を背にして椅子から
立ち上がると、仁王のような逞しいシルエットを見せて、電話台の前に立った冴子に向
かって歩いて来た。照明の影になって表情は定かに見えないが、下穿からはみ出し身震
いしながら屹立している陰茎が、そこだけスポットライトを照らされたように生き生き
と脈動していた。冴子は視線が釘付けになったように羞恥も忘れてそれを眺めた。そこ
だけが別の生きもののように反り返り、方向の定まらぬ宙を何かを求めるように頚を揺
らめかしている様子が、冴子にはどうしようもなくいとおしかった。極限まで膨張した
その中は、あきらかに自分を求めて焦れ切った浩二の切ない思いが充満しているのだろ
う。
 もう夫の声が遠くに霞みはじめていた。                                  
 立ったまま首を少しかしいで受話器を持ち、もう一方の手で前を隠し長い髪をふっく
らとした白いセータに散らせて、腰から下は剥出しの豊かな太腿をひねるように合わせ
た悩ましい姿で夫と話している冴子の白い顔が当惑と羞恥に上気していた。
 慣れ合い切った夫婦の会話を必死に続けようと、無理に平素の清楚で落ち着いた表情
浮かべて、主人と対話している冴子の下半身は、真っ白いふっくらとした太腿から細く
すきりした膨ら脛が明かりを吸い込んでぬめぬめと照り映え、ときおり、もじもじと脚
を動かす格好が、淫蕩な別の女のように艶かしい。一つの女体が貞節と淫蕩の二重の情
緒をそれぞれ顔と肉体に現して戸惑いながら堪えている姿に、浩二はわずかに残ってい
る貞節な部分を思い切り破壊し去って、彼女自身を淫蕩の奈落の淵へ落とし入れたいと
いう加虐的な思いを堪えることが出来なくなっていた。いまは彼女を愛欲の極限に追い
やり陶酔と歓喜にのたうたすことが、唯一自分に残された彼女を完全に独占する方法だ、
とも思った。  恩義のある人の妻を寝盗る、という罪悪感はなかった。自分とこうな
ったことによって彼女等夫婦の間に亀裂が起こり、決別を迎えるなどという危険はない。
 それほど彼女の夫は妻を信じ愛していたし、彼女の方も自分と一緒になるなどという
非常識で愚かなことを考える女ではない。それだからうまく利用しようという魂胆は自
分にもない。田舎から出てきて世話になって依頼、憧れ続けてきた彼女とやっと結ばれ
た、という感慨しかなかった。この家に来てから五年の間に、いつかこうなることを予
感していたし、待ち望んでもいたから、遂にそうなったという喜びの感慨が強い。                                
 この家の主人は、あの地味で人格的にも才能も優れていて尊敬しているけれども、冴
子の夫として見ると、いつも冴子が可
愛そうになることが多々あった。それは冴子と主人との年令差よりずっと自分との方が
近いという、若者同志のような連帯感があったせいかも知れない。この家での長い生活
の間に、主人はよく冴子と浩二を、若い君等は、という言葉で自分と差別していた。                
 ・・・・君等は若いから、今夜は肉の方がのだろう?・・・、・・君等は若いんだか
ら走っていけよ・・、君等は若いんだからもっと飲めよと、今まで主人から発せられた、
この言葉が、しだいに二人に一種の連帯意識をあたえ、浩二にとってはやがて、若い者
同志なのだから冴子の若い心と肉体を求めても背信ではない、というような呪咀に変わ
ってきたのだった。たしかに冴子にとっても夫はもともと父のような存在で、特に浩二
が来てからは、ふたりして父に甘える兄弟のような連帯感はあったが、性的知識に疎い
冴子は、浩二に異性としての興味を抱いたことはなかった。                                 
 浩二に異性を感じなかった、と言えば嘘になるが、それは冴子の躯に眠っていた性的
本能が無意識にうごめいたに過ぎない。しかし、あの豪雨の日にガールフレンドを連れ
て帰った浩二を叱って以来、冴子は浩二の発散する男臭い動作や言葉、さらにふとした
時に見る浩二の若々しい肉体に、目眩に似た衝動を感じたことは幾度かあった。夫の不
在に夜など、浩二とふたりで囲む夕食の時に、まるで新婚のようなときめきに妙に生き
生きした気分を味わったりすることも、しょせんは父のいない夜の子供同志の自由な楽
しみというような思いがふたりにあって、罪悪意識をどこかに陰遁させていた。                          
 冴子の目前まで来た浩二は、受話器を小首にかかえている冴子の足元にしゃがみこみ、
冴子のむき出しの太腿を抱き締めた。毛深い顔を閉
じた冴子の太腿の内側に押し付け、両手で冴子の腰を抱き豊かな臀部を愛撫しはじめた。
 あわてて冴子が片脚を組むようにして花芯を防衛しようとしたが、浩二はそれにかま
わず冴子の翳りに唇の愛撫を加えてきた。身をよじり脚を動かして逃げようとすると、
隙の出来た後ろから掌で急所を攻撃してくる。受話器を持った手が萎えはじめ声が震え
て来るのを懸命に我慢しているが、浩二の舌が花芯の敏感な部分に触れると、強い電流
が股間で放電したような強烈な刺激が脊髄を通って全身に拡散し、思わず声を出しそう
になる。まるで夫の目前で浩二に犯されているような被虐の陶酔が麻酔注射を打たれた
ように全身をしびらせてる。                     
 受話器の送話口を押さえて夫に聞こえなくして、片手をのばし腰を屈めてて浩二の頭
に手をやり、                              
「やめて! 。声が出ちゃうわ。すぐ終わるから・・・・」         
 強く叱りつけるつもりが、甘い声になっていた。浩二がくるりと頭をあげて冴子の顔
を見ていたずらっ子のように笑い、後ろから回していた掌をいきなり濡れそぼっている
陰唇に差し込んできた。                      
 「いや! 」                              
 思わず声を出して冴子はその場に座り込んでしまった。自分では絨毯の上に横座りし
たつもりだったが、現実には浩二の膝の上にしゃがみ込む格好になった。その隙に浩二
は体の位置をずらして、座った浩二の顔の正面に冴子の股間がくるような位置にして、
敏捷な動作で二本の指を膣の奥深く挿入してしまった。その上に冴子が全体重をかけて
落ちてきたから、浩二の指は元まで埋没し、指先に子宮のこりこりとした感触が伝わり、
指全体が熱く蠕動する襞に覆われた。         
 「ええっ? 。・・・よく・・・聞こえないわ・・・」           
 股間におびただしい体液がとめどもなく流れ、止めようにもとまらない荒い呼吸を悟
られまいと、冴子は咳をしたり喉をならしたりして必死に堪えた。      
「今日のお前はどうかしているね。はやく瓦斯を止めなさい。……じゃまたね」
 夫の電話が終わった瞬間、冴子は受話器を握ったまま蝋人形が高熱に溶けるようにふ
わりと浩二の肩に倒れかかった。軟体動物のように浩二の肩に胸を載せ、顔を浩二の首
元に押し付け荒い呼吸をしている冴子の裸の下半身は、男の膝に馬乗りの格好になたま
まで、艶やかな膝が男の腰を挟んでいる。男の手が白い女のうなだれたうじなにかかり、
乱れた長い髪を掻きあげ、蒸れるように発散している女の甘酸っぽい匂いを臭ぎながら、
片手で自分の肩に張り付いている女の顔を持ちあげそれに唇を寄せていった。女は感嘆
とも悲嘆ともとれる溜息をついてから男の求めに応じて唇を差し出した。              
 接吻しながら浩二はセーターの下に手を滑り込ませて乳房を愛撫した。舌を絡ませた
ままの冴子から低い呻き声が流れた。浩二はしだいに自分の上体を前に倒しながら、ふ
たりの間にはさまていた受話器をとりフックにかけてから、浩二の膝を跨いで向かい合
っている冴子を背中から倒して仰臥させると、その上に覆いかぶさっていった。冴子の
脚の間に入っていた自分の脚で冴子を大きく開くと、先程とは違ってなんのためらいも
なく、熱湯をたぎらせている冴子の中へ一気に怒り狂っている自分の陰茎を充填させた。
冴子の悲鳴が森閑としたキッチンルームの澱んだ空気を切り裂いた。                              
 三、四度腰を動かせてふたりの粘膜が融合するのを確認してから、奥深くに沈潜させ
たまま動きを止め、冴子のセーターをスリップごと頚まで捲くりあげ、乳房を露にして
揉みはじめた。                          
 「パパにわかちゃたかも知れないよ。そしたらどうする?」
 目を暝っている冴子の耳元に口を寄せて囁くように云って、深く挿入したまま静止し
ていたものを、ちょっと小衝いて、躰で冴子の返事をうながした。
 「あたし知らないから……………。浩二さんの責任よ! 」         
 冴子も膣をきゅっと締めて躰で答えた。言葉で伝え合わなくても、これで今夜のあら
ゆる障害が排除されて、ふたりだけの世界が開かれたという安堵と歓びが今までの緊張
をほぐらせて、やっと落ち着きを取り戻し解放感と期待感に雄叫びをあげるように二人
はひしと抱き合った。                      
「お酒をもっと飲もうよ。俺準備するから」                 
「いいのよ、あたしが準備するわ。あたしの部屋で待ってて…………その前にシャワー
を浴びてらっしゃい」                        
 「いま離れるのが惜しいな」                        
「こんなところでは厭よ」                        
 光りの影になった昏い床の絨毯の上で重なっているふたりからは、食卓や椅子の脚を
通して、ふたりが脱いだ着衣やスリッパなどが思わぬ角度で眺められた。子供が悪戯に
秘密のかくれんぼをしているようなスリルがあった。離れると思った浩二が、そんなス
リルに刺激されたのか、再び腰を遣いはじめた。浩二がしだいに激しく腰を波打たせ、
冴子がそのたびに腰を浮かせた。どちらかの脚が椅子を蹴って音を立てた。陰茎が粘液
の音を立てて抜き差しし、その度に濡れた陰嚢が踊って冴子の菊門を叩いた。冴子が昇
り詰めて悲鳴を発し膣を痙攣させはじめたとき、浩二は、さっと、腰を引いて陰茎を抜
き去った。                  
「あっ、いや待って…………」                      
 冴子があわてて浩二を抱き抱えようとしたときには、もう彼は立ち上がっていた。 
「さあ、一風呂浴びてくるかな」                      
 冴子の体液に濡れそぼったままにそそり立った一物を揺らしながら浩二が出ていった。                                  
冴子は緩慢な動作で立ち上がった。椅子の下にぼろのようになっていたスカートを拾っ
て着ると、シャワーの音を聞きながら廊下を夫の書斎に急いだ。     
 ドアを開けると慣れた夫の体臭がその部屋にはこもっていた。同じ男の体臭でも夫の
は干し草のような枯れた匂がしたした。
 浩二のように獣のような強烈な生臭い湿った匂はなかった。今まで夫の匂が男の体臭
とばかり思い込んでいた冴子は、夫の部屋に充満している匂が、急に不潔で老人臭いす
えた匂に思えて来た。夫の匂は父の匂だ、とはじめて気が付いた。夫の書机の前に座っ
て、スタンドを捻った。机の上の夫の備品がにわかにいきいきと色彩を取り戻した。ペ
ン立てに置かれた木製のペン軸が、使い込まれて夫の掌の脂をにじませている。二、三
冊積まれている漢和事典が、夫の手垢で黒く染まっている。いずれも冴子が来る前から
夫が愛用していたものである。それを眺めているうちに、冴子は夫との今日までの生活
を反蒭していた。ままでの自分の生活がこれで破壊されるとは思わないが、自分の心と
肉体は新しい世界を知ってしまった事実はどうしようもない。浩二はわたしにこんな甘
美で衝撃的なことを教えておきながら、来週は遠い国に去ってしまう。残されたわたし
は一体どうしたらいいにだろう。浩二を行かせたくない、と思った。だが、夫との平和
な生活を放棄する勇気もなかった。              
 あなたの体臭の充満したこの部屋に一体自分は何を求めて来たのだろう。あなたに対
する背信の恐ろしさから来たのだろうか、それとも今まで自分にこれほどの歓びを与え
てくれなかったあなたを恨みに来たのだろうか。夫に呼び掛けてみたが結論はなかった。
いま若い浩二の肉体に溺れ切っている自分が、これから再び狂うことを切に求めている
ことだけは確かだった。暗黒の中で冴子は当時の心境を反趨してみた。            
 今あの時を想い返しても、重大な罪を犯したとか、夫を裏切ったとかいう反省がない。
幼い頃両親に隠れてオルガンの陰で、隣の男の子とお医者さんごっこをして、互いの性
器を見せ合ったり触れ合ったりした、ほのかな懐かしさと同じ位の、ときめきと後ろめ
たさを感じるだけである。     
  1. 2014/12/02(火) 15:10:58|
  2. 花濫・夢想原人
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花 濫 第2章はじめての不貞1

漆黒の闇の中に、ぐりぐり坊主頭で日灼したにきび顔に澄んだ瞳を輝かせて、洗いあげた黒の学生服姿に身を包んだ大学に入学したころの浩二のりりしい姿が、遠い記憶のようにぼんやりと泛んだ。あの頃あたしは浩二を異性として眺めたことさえなかった。夫の友人の感じのいい田舎少年を東京に馴れるまで、しばらく預かるという義務感だけで浩二を意識していた。浩二自身まだ日向くさい子供だったような気がする。萌出た若葉のように、ふと気が付くと、いつの間にか濃い緑の成葉になっていたというような感じが強い。  冴子が浩二を異性としてはじめて意識したのは、浩二が三年生の夏のあのときではなかったかと冴子はいま思う。                     
 浩二が三年生の夏休みだった。浩二は帰郷せず、東京でアルバイトをしながら、テニスの合宿練習に励んでいた。二十日近い合宿が終って家に帰ってくる日の午後だった。とかく淡白な食事を好む夫と油ぎった濃厚な食事が好きな浩二の二人のメニューづくりは冴子の悩みの種だったが、今夜は久し振りに帰ってくる浩二のために、夫にコールドビーフを付き合ってもらおうと、買い物に出かけようとしたら俄に夕立がやって来た。風が荒れ豪雨が叩き付けるように降り、雷鳴が轟いて冴子は自分の部屋で小さくなっていたとき、玄関が勢いよく開いた。
 驚いて出て見ると、そこに浩二がびしょぬれで立ち、そのすぐ後ろに若い娘がこれも長い髪から雨の滴を垂らしながら立っていた。女子学生であることは一目でわかった。薄い袖無しの白いブラウスが雨に濡れて肌にぴったりとくっつき、ブラジャーだけの裸体のように肌を浮かび上がらせていた。匂いたつような若い健康な肢体のもち主で、丸顔の素姓のよさそうな愛くるしい娘だった。    
 その娘と玄関の三和土に滴をしたたらせながら並んで立った浩二は、スポーツシャツを脱いで娘にかぶらせたので、ランニングシャツ一枚の姿であった。
 躯に張り付いたランニングシャツを通して、筋肉質の体が塑像のように逞しく息づいていた。冴子は浩二の肉体にその時はじめて男性の匂いをかいだような気がした。浩二に寄り添うようにして立っている娘の柔らかそうな弾んだ身体との対比が一層浩二の男らしさを強調したのかも知れない。その時、冴子はその娘に対して言いようのない嫉妬が込みあげてきた。生れてはじめての悪寒に襲われたような激しい嫉妬心の噴出だった。     「風邪をひいたらどうするのよ! 」                   
 思わず上げた声が尖っていた。                     
 あれは異性に感じた嫉妬ではなかったと、そのとき冴子は思っていた。まるで発光体のように燃えている若い息吹を発散させている二人の若さに対する嫉妬だったと思った。だか後になって考えると、やはりその時浩二をはじめて男性として意識し、冴子の中の女の本性が嫉妬の炎を燃え立たせたに違いなかった。        
 その後に起こった浩二との情交は、決して偶発的ではなく、既にその時冴子の裡に、浩二に対する情念が燃えはじめていたのだった。考えて見れば冴子は浩二と七才しか違わない。夫との年令差よりずっと近いし、浩二とは同じ二十代の若さを共有出来る若者同志であった。夫は既に中年から初老に向かいつつあり、浩二や冴子とは世代の異なる存在だったのだが、夫婦として長く暮しているうちに、冴子は何時の間にか夫の世代に自分を合せるようになっていたのだった。それが若い浩二の出現により、本能的な冴子の中に眠っていた若さが触発されて目覚めたのだろう。
 浩二との間は、その後どちらからともなく接近し仲のいい姉弟のように推移して行ったが、浩二が卒業して就職し、会社の寮に移り住むまで冴子との間にはこれというトラブルも起こらなかった。                      
 寮に移ってからも、浩二は月に何度かは実家に帰って来るような気安さでやって来ては夕餉を共にしたり泊まって行ったりしていた。              
 「ママ、今夜は すき焼きが食べたいと思ってさ。デパートに寄って一番旨い肉をくれと行ったら、百グラム千円もする近江牛をくれたよ」           
 少し多めに買ってきておいたと、一キロもある肉の包みを冴子に突き付けて、冴子の準備したものなど無視して夕食をすき焼きに決めてしまう。強引で一方的で身勝手な浩二の性格は、一見はた目には迷惑とも映るが、そういう日は木枯しの吹く寒い日だったり、意外と相手のことを思いやった行為が多く、ぞんざいな言葉のの裡に、きらりと光るような思い遣りが秘められており、押し付けが愛らしく感じられるほどにお互いが理解していたので、時には腹を立てながらも、しばらく来ないと夫か冴子が安否を気遣って電話することもしばしばだった。 二年前の二月二十日だった。夫が北海道にアイヌ語の調査に出張中の朝だった。冴子が一人の朝食を終えて部屋から庭に咲き満ちた椿を眺めていた時、突然浩二から電話があった。 「ああママ? ぼくね、急にロンドンへ転勤することになったんだ。昨日一応の荷物は送り出したんだけど、今日で寮は明け渡すことになっているんだ。今夜から出発まで泊まらせてくれる?」                    「えっ、何ですって………。ロンドンって、あのロンドン?」        
 「ママ何言ってるんだ。英国のロンドンに決まってるじゃないか。寝惚けてるんじゃないの 」                              
 「何時決まったの。そんな鳥が飛び立つような出発ってある? 」       
 「一月前に決まっていたのだけど、別に大した準備もないし、仕事の片を付けたら挨拶に行こうと思っている内に、壮行会やら何だかで今いなってしまったんだ」 
「それで何時出発なのよ。田舎のご両親には会わずに行くの? 」       
出発は五日後の日曜日の夜。田舎には明後日ぐらい一泊で帰って来るつもりです」 
「なぜもっと早く言わないのよ。パパは北海道に出張中なのよ。まあ土曜日の晩には帰ってこないわ、出発までには会えると思うけど…………」        
 相変わらずの一方的な電話に冴子が腹を立ててみてもはじまらなかった。田舎に二日帰ると言っていたから、ここには今夜と出発の前の二日だけ泊まる予定らしい。それならば夫がいない今夜思いきり日本の濃い味を食べさせてやりたいと考えた。
「今夜は何時頃来られるの? 。夕食は食べられるの?」          
 「パパが居ないのに行っちゃあ悪いかな」                  
「今更何言ってんの。それより夕食の準備がありますから、時間だけは教えて。特に食べたいもの何かある?」                        
「八時までには行けると思う。食べ物は何でもいいよ。ただし酒は日本酒がいいな」 
 会社のデスクからの電話らしく、用件が済むとあわただしく浩二は電話を切った。
 冴子は急いで身支度すると、新宿のデパートに買い物に出かけた。酒は会津の吟醸酒にし、地鰻の蒲焼、茶碗蒸、若いから沢山食べられるように、旬の魚を豊富に入れ、浩二の好きな金糸卵を沢山並べた散らし寿司に、田舎料理として里芋と油揚げと白菜の煮付けも用意した。デパートの食品売り場を半日歩き回り買い物を済ますと、最後に男物の売り場で餞別代りにと結城紡の合せの着物を一揃い買い求め、昼食も摂らずに帰宅すると、夜来る筈の浩二がジーパンにアノラック姿で玄関前の歌舞伎門の石段に腰を下ろして待っていた。    
 「あら、今夜遅く来るはずだったでしょう? 」               
 「そのつもりだったんだけど、会社に居てももう仕事はないし、荷物は送ってしまったし、することもないから来てしまったんだ」             
 紬を友禅染めにし、山椿色の地に銀糸で飛鳥を浮出して散りばめた訪問着を着た冴子をまぶしそうに仰ぎ見ながら言った。                   
 「パパは何時帰って来るの? 」                      
 「土曜日よ。早く教えないから帰って来てびっくりするわよ」         
 「そうだな。三年ほどのロンドンだし、必要があれば何時でも帰れるんだから大袈裟にしない方がいいと思って………………」                 
 歌舞伎門から玄関に向かう千鳥に配した飛石を石蹴の格好で片足で跳びながら冴子の後に付いて来る。                            
「何言ってんのよ。国内のそこに行くのじゃないのよ。田舎のご両親も驚かれたでしょう」  
 「うん。まだ転勤のことは言ってないんだ。帰ってから言えばいいと思って……」 「それ本当なの? 冗談じゃないわよ。ご両親は…………」         
 相変わらず石蹴りをしながら後を付いてくる浩二の無神経さに腹が立ち、睨み付けてやろうと振り返ったそのとき、思いきり跳んできた浩二が、あっ、と声をあげながら向き直った冴子の正面に飛び込んで来た。
 冴子に浩二が抱付くような格好で二人は転倒した。さすがに若い浩二は敏捷で、冴子の上になって倒れながら下敷きになった冴子の後頭部に自分の腕を回して飛石に冴子の頭が激突するのを防いだ。
 それでも転倒の衝撃に一瞬朦朧となった冴子が、はっ、と気が付いたとき、倒れた姿勢のままで浩二に組敷かれていた。目の前に浩二の汗ばんだ日焼けした顔があり、鋼のような硬い浩二の両腕がしっかりと冴子の顔を包んでいた。声を出そうとした瞬間、唇に浩二の熱い唇が押し付けられた。しゃにむに唇をこじ開けて舌を侵入させてくる強引さは、浩二の未経験と一直さのせいだと冴子はとった。若い野獣のような浩二の体臭が、むっ、とする強さで冴子の鼻孔を刺激していた。    
 怒りも憎悪も感じなかった。冴子は後でその時のことを思い出して、男と女の交わりの機縁は、思うほどの愛情とか勇断とか時間とかを必要とするものではなく、ふとした機会に平素の理性や教養が消え、それぞれの本性が剥き出しになれば、いとも簡単に情交することが出来ることを実感として悟った。          
 あの日、玄関の前に散らばった買い物を二人は無言のまま慌てて拾い集め、近所の視線を気にしながら家の中に飛び込んだ。                 
 居間に落ち着いてからも二人は無言のままだった。袋の破れた買い物を調理台に並べてから、食卓に向かい合って座ったまま二人は視線を交え合っていたが、想いが交錯して満ち溢れた時、浩二が立ち上がって冴子の座っている椅子の前に立ち、静かに冴子を抱き締めた。冴子は呪詛に魅入られたように立ち上がり自ら浩二の厚い胸の中に埋れるように顔を沈めていった。                 
 自分でも理解出来ない行動だった。峻絶な絶壁に立って、身が引き込まれるような幻覚に襲われるように、浩二の強烈な男の精に冴子の女が吸引された状態だった。立ったまま長い抱擁と接吻の繰り返した後、浩二は軽々と冴子を抱きあげ、椅子に腰をおろして冴子を膝に斜めに載せた。浩二に支えられた背が不安定で、少しでも浩二の腕の力が衰えると、後ろへ倒れそうになって、脚をばたつかせるので、着物の前がしだいにはだけて、長襦袢の緋が割れ艶やかな膝があらわになる。何度か直そうとするがうまく起き上がれない。浩二の膝の上でほとんどあおむけに反りかえった格好で冴子は浩二の唇を受けていたからだ。    
 不安定な姿勢を支えようと浩二の首に両手をまわしてしがみ付けたのを、浩二がどう受け取ったのか、着物の上から乳房に手を這わしてきた。ぎゅっと乳房を握られたとき、冴子は一瞬理性を失って声を出したような気がする。浩二の膝の上で裾がさらに割れて太腿が露わになり、そこへすかさず浩二の掌が伸びて来たときに、はっと冴子は我に帰った。 「いやよ。もうやめにしましょ」             
 滑り落ちるように滑り浩二の膝から降り、着物の乱れを直しながら逃げるようにキッチンを出た。      
 小走りに廊下を走り自分の和室に逃げ込み、鏡台の前に座った。口紅がはがれてまだらになり、瞳が濡れそぼって顔が上気していた。乱れた髪を直しながら胸の動悸の静まるのを待った。ともかく着替えなければと、帯を外し着物を脱ぎ長襦袢の細紐をときかかったとき、硝子障子が静かに開いて浩二が入って来た。     
 正面から冴子の顔に目を据え、酒にでも酔ったように紅潮した面持でためらわずに真直にやってくると、薄紫の長襦袢の袖から腕を抜いたまま、あわてて前を内側からつまみ合せている冴子を、当然のように抱き締めた。            
 長襦袢の中に両腕を入れたまま強烈な力で抱き締められ、全身が絞り上げられるような、奈落へ落ち込んでいくような圧迫感に、冴子は一瞬気が遠くなっていた。思考が中断し朦朧と男臭い暖かい霧に包まれたような感覚がしびれるような陶酔をもたらした。逃げることも、抵抗することも出来なかった。男の肉に包まれて身体が自然に溶けていくような感じだった。締上げられる苦しさには甘美な痛みがあった。        
 冴子の閉じた唇を強引に舌で押し開いて侵入してきた浩二に、どうしてあのように容易に迎合の証のように閉じた歯を開いて、煙草の臭う浩二の舌を口腔の奥深く招き入れたのか、自分でも分からない。接吻したまま浩二の手が、長襦袢の合せ目を内からきつく閉じているのに、その隙から安々と侵入してきた。浩二の大きな掌が豊かな乳房を丸ごと掴むように包んだとき、羞恥と興奮にその手を振払らおうと夢中で長襦袢の合せ目をしっかりと掴んでいた手を離した瞬間、あっと思う間もなく絹の長襦袢は、反り身になっていた冴子の身体を滑って前を露わにしてしまった。
 裸にされた胸の谷間にアノラックを脱いでワイシャツだけになった浩二の硬い肉体の体温がじかに伝わり、下腹から脚にかけてざらついたジーパンの生地がふれていた。片方の乳房を愛撫していた浩二の掌が何時の間にか下腹部を滑って、陰毛を分けてながら複雑な粘膜の襞をまさぐり陰核を捕らえようした。         
「いや! 」                               
 と声をあげて、両手を前に回して防ごうとしたとき、身体がバランスを失い、浩二がのしかかる格好で後ろに倒れた。畳みに後頭部をしたたか打ち、目の中に火花が散って瞬間ぼーっと意識が薄れかかり、はっと気が付いた時には、浩二が冴子の露わになった下腹部を抱き抱えていた。                   
 あわてて両足を閉じようとするのを、浩二は隙を与えず強引に股間に自分の顔を割り込まして、丁度冴子自身が浩二の顔を挟み込んだような格好にしてしまった。花芯に浩二の鼻が冷たく触れていた。                      
「はじめて見るんだ。もっとよく見せて…………」             
 冴子は股間に浩二の呻くような声を聞いた。                    息苦しくなったのか、潜水から夢中で水面に顔を上げるように、大きな呼吸をしながら上半身を上げた浩二は、起き上がろうとする冴子を、敏捷な動作で身体の向きを変え冴子の胸を膝で押えつけた。                    
 浩二の身体は冴子と反対の位置になって、両膝で冴子の胸を起きられないように挟み、両掌で冴子の膝を掴み万力のような力で冴子の脚を開いた。冴子も必死の思いで脚を閉じようともがいたが、若い男の力にはあがらえない。じわじわと股間が白日の明るさの中で押し広げられていくのが、たとえようもない羞恥になって、花芯に冷たい空気を感じたときには、思わず両手で貌を覆ってしまった。それと同時にどうしたことか全身の力が呪詛にでもかかったように抜けて、これでは駄目だと気を取り戻して両足に力を入れようとした瞬間に、あっ、という早さで思いきりよくこれ以上広がらないほどに押し広げれていた。
 きれいだね、かすれたような声を冴子はまた股間に聞いた。
 浩二の指で陰唇が思い切りよく割られるのが感じられた。気持は防衛しているのだが、何時の間にか躯が自然に迎合して膣から流れ出る多量の蜜が臀を濡らし始めているのがわかった。               
 その密壷をいじる男の指が隠微な音をたてた。冴子は溢れ続ける自分の体液を浩二に見られる羞かしさ息を嚥んだ。浩二の指が溢れる中に侵入し膣襞に触れた途端、激しい官能の刺激が全身に拡散して思わず声を上げた。            
 冴子の貌のうえの浩二のジーパンから男の憤怒したものが突き出て顔に当たっていた。チャックを外して握り締める余裕があったわけではない。浩二がそうしたのか偶然チャックがはずれたのかわからないが、開いたズボンからそれが躍り出たのだ。巨大で弾力に満ちた亀頭が冴子の頬を突いてくる。貌に当たるのを防ごうと掌を添えて冴子は仰天した。それは冴子の想像を絶するほど巨大で鋼鉄のように硬く熱鉄のように熱かったからである。
 夫のものしか知らない冴子にとって、それは信じられないほど壮烈さだった。これが若い男のものなのか、と思わずそれに触れていた。柔らかな冴子の掌が触れるとそれはさらに大きく硬くなって冴子の掌のなかで脈動しはじめた。浩二がズボンを脱ぎながら身体をずらせて、浩二を見上げる冴子と視線を絡ませながら、無言のまま冴子に覆いかぶさり、毛の多い硬い脚で冴子の両腿を割って、怒り狂った男根を冴子の局部にあててきたとき、冴子は目をつぶった。男根は冴子の陰唇の周りを何度も突くが、焦点が定まらず、いたずらにあせりを繰り返している。              
 しだいに浩二のあせりの呼吸が大きくなり、ついには呻くような声を出しながらじれるが、浩二は自分の怒り狂ったものを冴子の中へ埋没させることが出来ない。何度目かに冴子はたまりかねてそれに掌を添えた。浩二がこわごわと目標を捕らえて陥没を開始しはじめたとき、冴子は今まで経験したことのない埋没感に思わず息を呑んだ。   
 冴子の膣を押し開きながら入ってくる感じが、夫とは全く違う。膣壁を拡張し切らせて侵入してくる感じが荒々しく制圧的で有無を言わせぬ強引がある。
 これ以上は無理よ、と冴子が極限状態の痛みを感じて拒否の叫びを上げようとすると、冴子の奥から信じられないほど多量の粘液が溢れ出て、その潤滑作用によって膣壁はさらに伸び切って貪欲に浩二を呑み込んでいく。押し込まれる度に痛みが奔るが、次の瞬間痛みはその数倍の快感へと変化していく。その感じはいままで冴子が味わったことのないしびれるような悦楽となって躯中へ爆風のように拡散していく。  
 亀頭を埋没し終えると、浩二は一気に腰を力強く押した。冴子はまるで躯の芯を貫かれたような恐怖を感じて思わず息を呑み込んだ瞬間に、子宮を中心にして体内に快感の爆発が起った。冴子は、ひえー、と思わず無我の嬌声を放っていた。  
 子宮を圧して冴子の性器を完全に充填した浩二は、しばらくそのままに静止して、ゆっくりと冴子に躰を重ねて乳房に唇を当てていた。             
 夫のものが奥深く埋没たときに子宮に触れる快感は幾度か経験したことがある。だから浩二の陰茎が子宮に到達したときこれで埋没は終ったと思ったのに、浩二はしばらくの静止のあと上体を持ち上げてさらに子宮を圧しながら侵入してくる。まだ完全に埋没し切っていないらしい。冴子は浩二の途轍もない長さには思わず息を吸い込んで恐怖の声を上げていた。
 深淵部に達して、ふたりの鼠蹊部がぴったりと密着しおわると、浩二は冴子に唇を求めながら静かに律動をはじめた。夫の複雑な動きと違って一途に律動する単純な動きではあるが、埋没時には下半身全部に浩二が入り込んでくるような拡充の衝撃があり、抜き出るときは内蔵がさらわれるような恐怖があった。
 なによりも冴子を驚かせたのは浩二の熾烈なエネルギーと情熱だった。夫は優しく冴子をまるで高価な美術品のように丁寧に扱うが、浩二は冴子の躯にいどみかかるような激しさで冴子をいたぶる。ふたりの下腹がぶつかり合って肌が鳴り股間に溢れた体液が散って音を立てるすざまじさである。このままでは壊れてしまう、と冴子は思った。
 しかししばらくしてふと気が付いてみると、こんな激情的な猛攻に冴子は合ったことがないのに、驚いたことには、いつのまにか自分がひとりでに浩二の激情に敢然と立ち向かって、腰を振り脚を絡め膣を収縮して呼応ているではないか。女性は本性として防御本能が備わっており、無意識に抵抗するというのが冴子の常識だった筈だが、今は経験したこともない激しい性交に、自分の躰はとまどいながらも、その激情に自然に迎合しているのは、一体どういうことなのだろうか。
 何時のまにか自分が最初余裕をもって導いた筈の浩二に翻弄されて狂い、最後に浅ましい狂態に身を揉み嬌声を張り上げて浩二にしがみ付いていた。意識はすでに朦朧とし、目の前に無数の花火が散っていた。快楽は絶頂をきわめ、冴子が今まで経験したことのない高みに突き上げられ、さらに無限のかなたに揚がっていく。歓喜の震えが全身を貫き快感が躯の芯で爆発を繰り返す。生れて初めての経験である。これ以上の快感は死に至るような恐怖に襲われるが、躯はさらに無限の快楽に上昇していく。
 浩二が最期を迎え、呼吸を荒ませ全身を痙攣させながら冴子の奥深くに若い男の印を噴出したとき、冴子はまた驚いた。夫では信じられない熱さと量の体液が、ポンプ仕掛のような強烈な力を含んで、子宮を圧するように幾度も放射されたからだ。さらに恐愕したのは浩二は幾度も多量の放出を繰り返したのに、冴子の中で、ほんのわずか小さく萎えただけで、はっと、冴子が気付いたときには、もう彼女の中で屹立し動き始めていた。
結局、昼食も摂らずにふたりは狂っていた。                
 午後のうららかな陽がさす和室は、青い畳に冴子の山椿色の着物や薄紺の長襦袢、
白い足袋にピンクのスキャンティー、浩二の赤いアノラックやジーパンが華やかに
乱れ散り、その中に冴子の真っ白い裸体と浩二の琥珀色の硬い身体体が絡み合って、
さまざまな淫猥な体位でもつれながら蠱めいていた。
 明るい障子は閉じ切られほのくらい室内は、ふたりの躯からほとばしり出る体液
と汗のにおいに冴子の化粧の香りを隠微に混じらせて、二月の暮方とは思えない熱
気に満ちたあでやかさであった。静かな家の中にときたま冴子の嬌声が静寂を切り
裂くように響いた。      冴子が気が付いたのは、もう暮方だった。
 ほの昏い室内に障子だけが僅かな暮色を残して白く浮いて見えた。浩二の太い硬
い腕を枕にして彼の胸の中に顔を埋めるようにして眠っていた。浩二の掌腕が冴子
の汗ばんだ乳房に置かれ、ふたりの脚は複雑に絡んでいた。浩二と同時に果てたま
まの格好で眠り込んでしまったらしい。
 浩二を起こすまいと気を使いながら冴子は、そっと浩二の身体を解いて起きあが
ると、ふらつく脚を床柱にすがって支えながら、押し入れから毛布を出して浩二に
掛けた。毛布の端を浩二の子供のような優しい寝顔にかけながら、ふと、いとしさ
が込みあげてきてその唇に軽く接吻した。腰に力が入るたびに股間から浩二の残し
たものが、どっと溢れ流れる。下穿は付けずに、急いで散らばった衣類を片付け、
浩二の横に夫の浴衣を置いてから、音を立てないように気を使いながら部屋を出て
シャワーを浴びに浴室に向かった。        
 素肌にスリップを着て毛編みの白いニットのセーターにギャザの多い紺色のスカ
ートを付け、冴子は風呂場の鏡の前に立った。化粧は落したのに顔の肌は薄化粧を
したように艶やかである。頬も軽く紅をはたいたように血色がいい。瞳は妖艶に潤
み眦が少したるんで疲労の後がうかがえるが、それは明らかに媾合のあとの淫蕩な
妖気を含んでいる。たしかに自分の躯が強烈な媚薬を嚥んだように、妙に潤ってい
るにがはっきりとわかる。渇き切っていた躯に清烈な水を思いきり呑んだような充
実感がある。新しい下穿はもう濡れそぼっている。浩二は一体どれほどの量の体液
を注ぎ込んだのだろう。   
 それにしても若さとはこういうものなのだろうか。冴子はキッチンの椅子に腰を
下ろし、気倦るい陶酔の抜け切らぬ躯を机に伏せて考えていた。本当の男というも
のを自分は今日まで知らなかったのだ、という思いが強い。今のいままで夫のあの
優しさが男というものだ、と信じていた。男と女とはこうも激しく生死を超越した
ような激情の中で、思いもよらぬ歓喜の官能を奪い合い、肉体の全能力と力をぶつ
け合いながら汗みどろになって一体化し溶け合うことが出来るとは…………。冴子
にとってこの体験は夢の中の出来事のように思えて、つい先程体験したばかりのこ
とで、相手もまだ自分の部屋で眠っているというのに、現実感がなかった。   
 今夜のために買ってきた食品の半分も時間がなくて料理出来なかったが、やっと
散らし寿司と鰻を料理し食卓に並べたとき浩二が起きてきた。夫のウールの浴衣を
着て、不恰好に腰紐を結んで照れたような顔でドアを少し開けて冴子の瞳を覗き込
んだ。  
  1. 2014/12/02(火) 15:05:57|
  2. 花濫・夢想原人
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花  濫 第1章帰国

 まだ二月の終りだというのに、今日の陽気は四月下旬の絢爛とした春の息吹を含んでいると、冴子は長い自分の髪をなぶる生暖かい春風を吸い込みながらに思った。 いつもは誰もいない家に帰り着いた時のうら寂しいような情緒が今日はなかった。春の匂に誘われた乙女心のときめきにも似た心のたかぶりを冴子は押え切れないでいた。                   
 それは突然の春の訪れだけではなく、今日やって来る浩二のせいであることは十分冴子自身わかっていたが、陽気がそれに拍車をかけているのも事実だであった。 玄関の鍵を開ける時、すぐ横の椿の林を抜けてきた冷気を含んだ風が、汗ばんだ肌に気持ちよくあたって冴子は思わずほっと安堵の息をした。帰りの京王線の車中も、こんな暖かい陽気なのどうして暖房を入れるのかと腹立たしくなるほどの暖かさだったし、行きがけに目を止めた満開の梅畑を見て帰ろうと、いつも乗るタクシーをやめて歩いたので、コーデュロイのツーピースに毛のコートを着て出たことを後悔するほど躰は汗ばんでいた。                      
 家に入ると、屋内に澱んだ熱気が、家中のさまざまな種類の匂いを濃く沸きあがらせていた。けっして不愉快な臭いではないが、自分の生活を露わにさらけ出しているような気がして冴子はいつも帰宅すると急いで窓を開け放つ。今日はこの暖かさで一段と臭いが強い。                          
 買い物の袋を台所の調理台に置くと、汗ばんだ肌に下着がべっとりとくっついているのが気持悪く、ともかく着替えなくてはと廊下を奥の自分の部屋にしている和室に向かった。夫の親の時代からの古い家の昏い廊下を急ぎ足に歩く自分のスリッパの音が、一人の時は意外に大きく聞こえる。ここに嫁いで来た時には、その音になんとも言えないさみしさを感じたものだが、今ではすっかりそれにも慣れてしまった。        
 冴子の部屋は廊下の突き当たりにある。襖を開けるとまず南側の障子模様の擦硝子を開け放った。濡縁にあたる午後の陽の反射が冴子の汗ばんだ顔にあたって散った。濡縁の前は小さく開かれた芝生がある。日本芝なのでまだ飴色のままうららかな陽を吸い取っているが、椿林の縁にのあたりは散り果てた椿の花が緋色の布切れをちりばめたように華やかに見えている。まだ大部分咲き残った椿の林がクリスマスツリーを並べたように、緑の間に色とりどりの花を咲かせて隣家との視界を遮っている。
隣は農家で椿林の向こうの塀に接して大きな古い土蔵があり、崩れかかった土壁には山蔦が絡んで亀裂のような模様を見せている。東側には背丈ほどの竹垣があり西のコンクリートの塀の外はまだ雑木林が残っていて、ここの濡縁はどこからも覗かれる心配はなかった。東京の住宅地なのに、岡山の実家の田舎のように鄙びたこの景色が好きで冴子は気候さえよければいつも戸を開けたままにしている。 
腰を屈めて書机にハンドバックを置くと、コートを脱ぎながら歩いて洋服タンスの前に立ち扉を開けて香水の匂いを撒きあげるコートを掛けた。扉の裏の鏡に映った自分の顔をちらと見てから、翡翠のネックレスを気使かいながらツーピースの上着を頭から脱いだ。そのままの姿勢で腰のホックか外してスカートを脚元におとす。中国製のシルクのハイグレースリップの裾を捲って肌色よりやや濃いめのパンティーストッキングを腰をかがめながら引き下ろした。真っ白い剥き卵のような艶やかな汗ばんだ素足が現われる。庭から吹きあげるそよ風がそっと心地よく素足の 脚首から太腿の奥深くまで撫でさすっていく。特に汗の多かった内腿のあたりは、ひゃっとする感触で風が抜けていった。                 着衣をタンスに仕舞うと、下着と一緒に洗濯するパンティー・ストッキングを部屋の隅に置き、片手で乱れた髪を掻き上げながら鏡台の前まで行き、鏡の前にしゃがんだ。揃えた艶やかな膝小僧に陽光が照りはえて、剥きたての葱のように新鮮に輝く。中腰になったまま翡翠のネックレス、腕時計、イヤリングの順に外して鏡の前に置いた。                  
 そのまま座蒲団の上に横座りになって化粧を落そうと脚を座蒲団に載せたとき、ふと鏡台の横の大きな姿見に自分の下着姿の全身が映っているのに気が付いた。いつもはレースの覆いを必ずして出かけるのだが、今朝は急いでいたためかうっかり後始末をせずに出かけたらしい。                      
 冴子は滅多に硬質のブラジャーは付けない。子供を生んでいない二八歳の冴子の乳房は人一倍豊かで、その上をブラジャーで締め付けると息苦しくなるし、胸がよけいに盛り上がって不恰好になる。外人の女のように上向きの紡垂型ではなく、ふっくらと丸く盛り上がった乳房で、その上乳首が小さいから夏の薄着の時期を除いては薄いソフトブラジャーだけでにしている。
小走りしたり階段の昇り降りの時に、豊かな乳房のゆらめきが男達の注視を集めていることに本人は気ずいていない。今日は毛のコートに厚めのコーデュロイの洋服だから、思い切って、胸が締め付けられる不愉快なブラジャーは付けなかった。庭の畳色に枯れた芝に散った陽光が、薄いスリップを透かして冴子の裸身を淡く浮き出させていた。身に纏っているのは股下をやっと覆っているミニの薄いスリップと、やはり中国製の薄いショーツだけだから、胸の膨らみから小さく淡桃色の乳首までほのかに透けて見えている。ショーツからむっとする量感で伸びている色白の太腿や、膝から急にすんなりと伸びた下肢が春の陽を吸って生き生きと艶やかに照り輝いている。           
 ことりとも音のしない森閑とした家のなかで、冴子は鏡の中の自分の姿を見ながら、腕を前で十字に組んで、静かに肩からスリップの肩紐を左右一緒にずらせた。丸い撫肩を紐はつるりと滑って腕の肘のあたりまで一気に下がり、スリップは突き出た乳房の乳首の上の辺りで下がって止まった。両腕を交差させたままで、乳房の上に不安定な形で止まっている絹地の端を少し引き下げると、薄い絹地はにわかに力を失ったように崩れてぼろ切れになって冴子の足元に落下した。起伏に富んだ女らしい美しい真っ白な餅肌の裸身が、陽光の反射を受けて仄暗い室内に塑像のように浮き上り、ほのかな温か味を含んだ甘酸っぱい女体の匂いに包まれて息づいていた。自分の掌では掴み切れない乳房を裾野のあたりから揉みあげるように握ってみると、乳房の真っ白い肌が緊張して艶を増して輝き、薄い乳房の皮膚に血管がかすかに青く透け、頂きの乳首が硬く尖りはじめて震えている。冴子の貌がひとりでに羞恥を含んだ血の色を増す。この乳房を愛撫し揉みしだき、顔を埋め乳首を含んで悶えた夫の惣太郎を含めて三人の男のそれぞれの感触が甦ってきたからだ。  
 冴子は上体を少し前に折り、思い切ってショーツに掌をかけた。長い髪が顔に亂れかかってくるのを顔を横に曲げて視界を確保しながら、真正面に映っている自分の姿を盗み見るようにしながら腰を屈め膝を折って足許までずりさげる。そのまま上体をゆっくりと伸ばし顔を振って髪を肩に流してから鏡の中の自分を見る。姿見に一、二歩近づき、全身を鏡いっぱいに入れて腰に手をあててポーズをとってみた。 腰の丸みが最近少し豊かになってきたような気がする。夫の惣太郎が、冴子の躯で一番美しいのは顔で、一番肉感的なのは太腿だ、と最近よく言うのを思い出した。 その太腿を前後に重ねるように脚を交互によじり、両手で髪を持ち上げるようなしぐさで両腕を頭のうえにあげて掌を組み、腰を少しひねったポーズにかえて見る。やや太り気味だと思っていたが躯を動かしてみると、意外に柔らかく自由に四肢が曲がり、腹部のくびれが娘のようにしなやかである。奥さんの躰は骨細に豊かな肉が柔らかく、特に内腿の皮膚が雪のように白くていつも湿り気を帯びていて魅力的だと言ったのは浩二だったかしら。全身の肌が絹豆腐の切口のような柔らかい光沢に照っていて男の欲情を誘う、と最近言ったのは田宮という夫の助手だった。夫以外には冴子はこのふたりの男しか知らないが、こうして自分の裸身を映し出す度に、三人の男達との、それぞれの睦み合の時の感触や熱い言葉が、あれほど強烈で悽愴だったにもかかわらず、肌を今さすっていく薫風のように、たよりなく思い出すことしか出来ない。男と女の肉の交わりほど、後になって不確かなものはないと最近冴子は思う。特にもう三年も前になった浩二との情交は、すでに遠い昔のことのようで、弟のような浩二との三日間の激しかった交わりを、情緒としては正確に記憶しているものの、冴子の肉体は、もう正確に浩二の肉の感触を反蒭することは出来ない。肉の交わりとは、こんなにもはかなく脆いものなのだろうか、と冴子はうら寂しく感じていたが、今夜浩二が帰国して会えることがはっきりとした今日は、浩二とふたりだけの秘密を刻んだこの部屋の情景が、微細な接触感まで誘って鮮明にはっきりと、肌や躯の内部にまでよみがえってくる。それは浩二と別れた三年前から片時も忘れることなくこうして思い返していたような順序のよさで、それらは次々と冴子の眼底や躰の隅々を飾っていた。もう諦めていた浩二と三年振りの再開が今夜に迫っているとはいえ、今夜浩二と前の関係が復活することはあるまい。夫と三人の夜なのだから絶対にそんなことはない。冴子は安堵ともの足りなさの狭間で、大きく息を付いた。                     
 鏡に映った太腿を少し開き加減にして眺めてみる。たしかに女らしく豊かで張りのある太腿だが、自分ではすこし太過ぎて逞しすぎるような気がする。だが冴子が今までに知った三人の男達が異口同音に同じ賛辞を言うのだから、男にとっては案外魅力があるのかも知れない、と思ったり、どうせお世辞なのだから、と考えたりもする。鏡の中の冴子は、ここ二、三年で頸筋や頬に女らしい色気がほのぼのと匂うようになってきたと自分でも思うし、白磁のように真っ白な肌は生まれ付きのものだが、最近乳房にも肩にも腹にも白くぬめるような脂肪が滲んで甘酸っぱい芳香を放ちだした、と夫が冴子の成熟ぶりを誉めるのも、こうしてまじまと自分の裸身を映して見るとうなずける気がする。だがそれが誉められることなのかどうかは冴子には分からない。ただ自分の躯が変わってきたことだけにはうなずける。瓜実顔の奇麗な頬にうっすらと紅を刷いたような照りがあり、二重瞼の大きな瞳には潤みが加わり、やや厚い唇もいつも湿っているような艶が浮いて来た。浩二と知りあった頃は、娘らしさが抜け切れないと周囲からよく言われていた自分が成熟した人妻らしく変ってきたのは、年令のせいだけではないように思う。やはり男性との交わりが成熟を促し磨きかけているということを認めないわけには行かない。    
 あなたは野の百合のような人だ。それも白百合だ、と言った浩二を思い出しながら、鏡に映った自分の顔に見入った。今日はいつもより瞳が潤んでいるし肌に張りがある。閨房の後に似た色気が顔全体に滲んでいる。浩二がやって来ることがこんなにも自分の内部に異常な刺激を与えているのだろうか、と考えるとさらに顔に血がのぼりわれながら艶っぽく照りはえてくる自分の顔にひとりで羞恥を感じた。 
 この部屋は和室で椅子がないので、一人だけの大胆さから和机に腰を下ろして、横座りに揃えていた脚を思い切って静かに広げて見る。両腕を後ろに伸ばして和机に突き、腰を鏡に突き出すように上体を斜めに支える。なだらかな弓のような曲線で盛り上がった下腹部から、実際は淡い茂みなのだが肌の白さが真っ黒い多毛な茂みに錯覚させる股間が鏡の中に羞恥を含んで露わになる。多毛でない証拠に真直ぐ立っていても一筋の割れ目がはっきりのぞいてい見える。両脚を開くとかわいい膨らみの茂のみのなかから、一筋の裂け目がかすかに割れ、貝身を合せたような外陰唇がちろりとのぞいている。右腕を前に回して貝の合せ目に指を添え、腰を鏡に突き出すようにして陽の明るみに露らわにし、二本の指で割れ目を開くようにすると、ピチッと小さな音がして思い切りよく外陰唇が割れてピンクの内陰唇の、薄桃色の複雑な襞を現わす。子供を生んだことのない膣口は埋まっていて、薄いピンク色の透明感のある粘膜が恥ずかしそうに顔を出す。指の先に汗ばかりではないぬめりが感じられ、さらに膣の奥からわずかではあるが暖かい粘液が湧き上がってくるような気がする。指の先が触れている陰唇の粘膜の辺りから、ピリリと弱い電流に感電したような快感が股間にはしるり、思わず目が細くなり唇が緩んだ。快感に霞む瞼の内に今日帰って来る浩二の若々しい肢体が浮かんできた。      
 もう会うこともないと思っていた他人ではない浩二の突然の帰国は、冴子の情緒を靉靆とした霞に包ませていた。忘れかけていた浩二の力に満ちた躯動きを冴子の肉がにわかに反芻して、子宮の奥からあの時の官能が痛いほど鮮明に湧き立ってくる。誘われるようにさらに膣の奥深くに指先を進めようとしたとき、突然雷鳴が轟いたと冴子が勘違いしたほどの大きさで電話が静寂を破って鳴り出した。冴子は誰かが闖入してきたように驚き、あわてて今脱いだばかりの下着を付けて電話のあるリビングに走った。      
 間違い電話に驚かされた腹立しさは、シャワーを浴び普段着ワンピースに着替えたときには忘れていた。滅多にしたことのない白昼の衝動的な淫猥な行為に高ぶった感情を静めようとキッチンの調理台の椅子に腰を下ろしていたら、今夜来る浩二のためにわざわざ半日をかけて新宿の中村屋まで出かけて買い求めて来たダージリン葉の紅茶の強いにおいを嗅ぎたくなった。先ほどのような狂態を冴子は生れて初めて体験した。今までそんなみだらな行為をしてみようと考えたこともないのに、どうしてあんな感情になったのだろう、と冴子は羞恥のうちで考えた。やはり浩二の来訪が凡庸な冴子の生活を完全に狂わしていることは紛れもない事実だと思った。紅茶は夫の和夫が昨年香港から買い求めて来た白磁のポットで淹れることにした。         
 冴子は少女の頃から国文学者の父の影響で茶を習った。紅茶を淹れるときも日本茶をたてる繊細さで淹れると、誰もが旨いと誉めてくれた。ダージリン葉はやや埃臭いきらいはあるが、鄙びた見知らぬ印度の田園を思い巡るような素朴な香りが冴子は好きだった。ポットからロイヤルコペンハーゲンの紅茶カップに淹れた紅茶をもって冴子は自分の
 庭の椿がどれも鮮やに咲乱れていた。夫が趣味で植えたものだが、全部で百本以上もあった。全部改良園芸種で、紅に白の斑入や大輪の牡丹のような花や、緋色の派手な目の醒めるようなものが多く、名前もフレグラント・ピンクとかタイニー・プリンセスといったモダーンさだが、冴子はその派手な椿は都会の女達のような化粧臭さが感じられて好きではなかった。冴子にとって椿は、実家の庭に生れたときから咲き続けている薮椿しか愛せない。  紅茶の香りに包まれて冴子は椿の林を見ていた。冴子の視線はあでやかな椿の花ではなく陽光に艶やかに輝く緑の葉のそよぎに向けられていた。脳裏に岡山の片田舎にある実家の庭の老木の薮椿の深紅が浮かんで来る。この時期冴子は毎年花を見ずに葉を見ながら故郷の薮椿を想いいながら暮しているのだった。最近夫に対しても、このあでやかな洋種の椿を見ながら、いつのまにか素朴な実家の老薮椿を想い出しているように、現実の夫を冴子の好尚する男性に置換して眺めているような想いがしてならない。         
  1. 2014/12/02(火) 15:02:43|
  2. 花濫・夢想原人
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撮られていた妻 第8回

ダメ夫さん。私のような拙い文章にレスをつけて下さりありがとうございます。
また頂いたレスへの返事がすっかり遅くなってしまってすみませんでした。
同僚から渡されたビデオを帰宅後毎日見ては猿のようにオナニーを繰り返し、
文章を書く気力も体力も無くなってしまっていました。
すみませんでした。

ダメ夫さんも奥さんが知り合いとセックスしてしまったんですね。
>本当は妻が浮気したら他人に知られたくないです。
本当にそうですね。
私の場合、同僚2人に妻の恥ずかしいビデオを見られている訳で半分くらいは泣きたい気持です。
(残りの半分は興奮しているのですが。。。)

>みんなの目の前で、よその男にしなだれかかったり、おっぱいを触られてキャッキャッ言って喜びます。
>自分がここに居なかったらもっとすごいことになってるんだろうと思ってしまいます。
色々な人が居る前でオッパイを触られて喜んでいるなんて、
ダメ夫さんも私と同じ恥ずかしい妻を持ってしまった同類なんですね。
ダメ夫さんがその場に居なかったらオッパイを見せたり舐めらせたりしているのかもですよね。

ダメ夫さんの奥さんも最初からセックスが上手だったそうで、その点も私の妻と同じですね。
私の妻も上になったときの腰の振り方は慣れたものでしたし、
フェラチオも「もっと気持良くしてあげる。」とか言われて、
亀頭の裏の筋に軽く歯を立てては舐める繰り返しをされて馬鹿みたいに喜んでいました。
セックス上手=経験豊富って事なのに喜んでいたんですからオメデタイです。
それも自分の上司に仕込まれていたのに。


最近少し、気持も落ち着いてきました。
近々またビデオの画像を皆さんに見てもらおうと思っています。
画像は顔とかを修正できるから良いのですが、
顔など出ていない部分のビデオ(動画)みたいなのも、なんとかそのうち見て貰えたらと思っています。
  1. 2014/12/01(月) 17:33:51|
  2. 撮られていた妻・スネ夫
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撮られていた妻 第7回

土曜日、上司の引越しを一緒に手伝いに行った同僚を飲みに誘った。
飲みに誘った理由はもちろん妻のビデオのことを聞くためです。
いつもよりかなり飲みました。
酔って酔って酔わなければとても切り出せる話ではありませんでした。
なかなか話を切り出せず、もう帰ろうかと言う同僚をあと1軒と誘い、話を切り出しました。

引越し手伝いに行った時のビデオあるよな。うちのやつの分かっているよな?
うん。
どんなだった?
あの人も酷いよな。
どんなだったんだ?
・・・・・。

一昨日、同僚がスネ夫これ。と言ってよこした紙袋には4本のビデオがありました。
ビデオの日付は妻が23歳、24歳、28歳、28歳のものでした。
同僚の言っていた、あの人も酷いよな。の意味がこのビデオだった。
24歳の時のはい縄でSMのように縛られている。
28歳の時のは1本は結婚半年位前のビデオ。
もう1本は結婚直後のでした。
妻の左手の薬指には結婚指輪がありました。

笑いながら結婚指輪をした指で上司のチンポを握りフェラチオをしている妻。
妻の口にチンポを入れ腰を振り続ける上司。
赤い縄で縛られてマンコを弄られ悶えている妻。

ここまでとは思っていませんでした。

もう少しして気持が落ち着いたらまた書き込みをしたり、
前の様にビデオからの画像を皆さんに見てもらい情けないお言葉を掛けていただけたらと思います。
  1. 2014/12/01(月) 17:31:57|
  2. 撮られていた妻・スネ夫
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撮られていた妻 第6回

妻と付き合い始めた頃、妻の下着は青や黄色、ピンクなどの色物が多かった。
付き合い始めた時に27歳だったのである程度の色っぽい下着は当たり前だと自分でも分かっている。
それだからなのか年齢より幼く見える妻がビデオに写っている白いブラジャー・白いパンティーを着け、
それを脱がされて行く姿が初々しく痛々しく悔しく切ない。

(1994年1月4日のビデオ。正月からホテルに連れ込まれたのだろう。
 室内を見る限りかなり古いホテルのようだ。
 照明が暗いからだろうか、ビデオの画質がかなり悪い。)

幼い顔をし、純情そうな白い下着を着けていても、もう何十回何百回と仕込まれているのだろう、
上司が何も言わなくても自分からフェラチオを始め10分以上咥え続けている。
妻の顔の上をウンコ座りのように跨ぐ上司。
このビデオでも妻は上司のアナルを舐め続けさせられている。
ほら、もっと舌を尖らせてと。

固定されていたビデオカメラを上司が手に持ったようだ。
ハメ撮りそのものである。
妻の表情が写し続いている。
目をトロンとさせていたかと思うと、仰け反り出す妻。

自分でも変態だと思う。
普通なら怒り狂うであろうビデオがここにある。
この前、上司が酔った勢いで言った話では100本以上ビデオがあるらしい。
12月24日に撮って、1月4日に撮って。
これほどにハイペースで撮っているのなら、100本以上と言うのは本当なのかも知れない。

残りのビデオはどんななのだろうか?
どうしても知りたい。
明日、一緒に上司の引越しを手伝いに行った同僚を飲みに誘ってみるつもりです。
同僚も妻と上司のビデオを持ち帰った筈。
飲んで飲んで酔った勢いで同僚にビデオのことを聞いてみようと思っています。
  1. 2014/12/01(月) 17:30:46|
  2. 撮られていた妻・スネ夫
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撮られていた妻 第5回

この嫉妬と興奮を文章にしようとキーボードを叩いても叩いても上手く気持ちを表現できない。
少しでもこの気持ちを皆さんに分かって欲しくて画像を見て欲しく、
管理人さんに画像をアップしたいと相談したところ、一時的なリンクならと許可を頂きました。

下のアドレスにたった5枚の粗悪なビデオから取り込んだ画像ですが、
私の気持を少しでも分かってもらえたらと思います。

管理人さんのご迷惑になら無いように今日の12時過ぎには削除したいと思います。

私の気持を分かっていただけたら嬉しいです。
  1. 2014/12/01(月) 17:29:38|
  2. 撮られていた妻・スネ夫
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撮られていた妻 第4回

妻のビデオを知り、このHPを知ってから興奮が収まらない。
この興奮を何処に持って行けば良いのか?

持って行き場の無い興奮をどうすることも出来ないまま
昨日、どうしてもあの上司と飲みたくなり飲みに誘った。
上司は離婚して独り身。暇である。「おおー良いねー!」などと言い飲みに出た。
1軒目、2軒目、3軒目と飲み歩き仕事の話から世間話も無くなり話題は下ネタへ。
「奥さんと別れてアッチの方どうしているんですか?
 やっぱりソープとか行っているんですか?」
「週に1回は行っているよ。
 どうだ?後で一緒に行ってみないか?良い女紹介するよ。」
「良いですねー。」

ソープに一緒に行くと決まったからなのかお互いに酔いがかなり回りだしたからなのか一層と下ネタの話が弾んだ。
私はソープへは過去に一度しか行ったことが無く、ソープ嬢などの話になり、
今のソープ嬢は普通の女のコが多く何百人も男を相手して、
私はそんなことしてません。って顔して結婚するんだから結婚相手の男は可哀想だよの話になり、
今、独身の女のコばかりじゃなく主婦だって不倫平気で楽しんでいるんからな。
投稿写真とか投稿ビデオみたいなのも平気で撮らせるんだからな。
みたいなことを言われ、
酔いに任せて思いきってジャイアンさん(上司の仮名にします。)も撮ったことあります?と聞いてしまいました。
上司も調子に乗っていたのでしょう。
俺は無いけれど、俺の知っている奴で付き合っている女のビデオ撮っている奴が居てそれ見せて貰ったことあるよ。
正真正銘の素人だから興奮したよ。
結婚している奴なんだけれど、処女をやっちゃってずっと何年も付き合っているらしくて
俺は何本かしか見させてもらってないけれど、100本以上ビデオ撮ったって言っていた。
真面目そうな女だったけれど不倫してビデオ撮らせているんだから女は分からないよ。

知り合いにビデオ撮っている人がいると言うのは嘘で、本当は自分のことを私に言ったのでしょう。

上司もかなり酔ったのか、
シズカちゃん(妻の仮名をこうしたいと思います。)は処女だったんだろ?
ドキっとしました。
そんなこと言えないですよ。
ジャイアンさんの別れた奥さんはどうだったんですか?
あいつか。違ったよ。
シズカちゃんはどうだったんだ?
付き合い始めたときシズカ27歳だったから。
そうか。処女で結婚する女なんて今時居ないからな。

上司は私をオカズにして酒のつまみにしていたのかも知れません。

上司お勧めのソープランドへ。
上司がいつも指名している女のコを特別に紹介してくれると言われ、そのコと遊びました。
上司は違う女のコと個室へ。
私が終わると上司は待合室で待っていました。
帰り道、これで俺たち穴兄弟だな。と言われました。
キツイ一言でした。
  1. 2014/12/01(月) 17:28:28|
  2. 撮られていた妻・スネ夫
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撮られていた妻 第3回

妻が寝たのでビデオを見ながら文章を書いている。
妻が上司のチンポを玉から亀頭まで舐め回している。
それを見て私のチンポも固くなっている。

ビデオの妻の髪を見て妻と上司が付き合っていた期間の長さを感じます。
背中まで長い髪の時のビデオもあれば、肩くらいまでの短い髪もある。その中間の長さもある。

何度ビデオを見ただろうか?
これからも見続けるだろう。
ビデオを見るのに不便なのは妻が居る時には間違っても見れない事。
これから困るであろうは、ビデオを見過ぎてテープが擦り切れてしまわないだろうか。と言う事です。
今日、前から考えていたビデオをパソコンに取り込める機械を買って来ました。
これが出来れば妻が起きている時でもインターネットをする振りをしてビデオを見ることが出来ます。


今、見ているビデオ。
妻と上司はセックスが終わり、妻はシャワーを浴びに。
その間、上司はチンポ丸出しで仰向けに寝そべり煙草を吸っている。
妻が浴室から戻り手にはタオル(タオルの様子から濡れタオルらしい。)を持っている。
煙草を吸い寝そべりながら妻にチンポをタオルで綺麗に拭いている拭かせている上司。
拭き終わるとフェラチオ奉仕。
チンポ美味しいか?の問いに
チンポ美味しい。
20分近く亀頭から玉までフェラチオさせた後でアナル舐め奉仕。

上司は一体どんな気持ちで煙草を吸いながら妻にに奉仕させていたのだろうか?
少しでも妻に愛と言うものを感じていたなら、
煙草を吸いながら妻に奉仕させるなどと言う事はしないのではないだろうか?
上司にとってやはり妻は只の玩具だったのだろうか。

またフェラチオさせてから自分は寝そべったまま妻を自分に股がらせ妻にチンポを入れる上司。
疲れたからもう今日はやめて。の声を無視して乳首を弄る。
上司は乳首を弄っているだけ。
もぞもぞと動き出す妻の腰。
ゆっくりリズムをつけて上下に動き出す妻の腰。

そんなに上司のチンポは良いのか。
それ程までに仕込まれていたのか。
  1. 2014/12/01(月) 17:27:13|
  2. 撮られていた妻・スネ夫
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撮られていた妻 第2回


私が盗んだ5本のビデオに書かれたラベルの日付は1993/12/24~1996/3/8とあり、
妻の23歳後半から26歳前半に相当します。

ビデオ5本のうち日付が古い2本と日付が新しい3本は画質が明らかに違い、
また新しい3本は途中途中でリモコンでズームなどしているので妻のビデオを撮影する為に
ビデオカメラを買い換えたのかも知れません。

ビデオで中年太りした上司に犯され、
フェラチオ奉仕している妻を見るのは言葉では表せない程の悔しさと興奮があります。
悔しいですが、ビデオで見る上司のチンポは大きく、20センチはあるのでは?と思うほどです。
私も小さい方では無いと思っていますが、明らかに私の負けです。
妻のマンコに上司の大きなチンポが入った途端、「あぁ~。」と声を出している妻。
私が入ったことの無い子宮の奥深くまで妻は上司に犯されていたのです。

以前妻に男性経験を妻に聞いたときに経験は1人だけで21歳の時に経験して
その男と2、3年付き合っていたと聞いていました。
これだと妻は私に嘘を言っていることになります。
21歳の時に処女を喪失して2、3年付き合っていたなら1996年のビデオがあるのがどう考えても変です。
男性経験は1人じゃない?
もし男性経験が1人だと言うのが本当なら上司に処女を捧げその後5年以上上司の性玩具だった?
たぶん私の勘に間違いが無ければ妻が処女を捧げた男は上司で男性経験は上司だけなんだ思います。
なぜそう思うかというと妻は昔から地味なタイプでさして美人の方でもなく(ブスではありませんが。)
彼氏が居るとかの噂話ひとつありませんでしたし、
私の記憶では妻は入社してから社内での飲み会や社内旅行など一度も欠席したことがありません。
他の女子社員は何かと理由をつけて飲み会を欠席したり、一次会で抜けたりしましたが、
妻だけは欠席することも抜けることも無く最後まで付き合っていました。
上司に言われていたのかも知れません。
飲み会は最後まで付き合えと。
おそらく会社の飲み会が終わってから上司の精液を飲み干す三次会・四次会へと行っていたのでしょう。
社内旅行でも皆に隠れて犯されていたのかも知れません。

妻は私に嘘の男性経験を言っています。
しかし、いずれにしても腹の出た中年太りの上司に犯されている妻のビデオがあると言う事です。
  1. 2014/12/01(月) 17:26:04|
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撮られていた妻 第1回

一昨年に結婚した33歳の夫です。妻は30歳で職場結婚です。

3月。離婚した上司の引越しを同僚2人と手伝いに行きました。
会社で風俗マニア・裏ビデオマニアとして超が付く程に有名なスケベ上司です。
裏ビデオマニアとして有名な上司ですが、
どんなに仲の良い人にもビデオは貸さないというケチでも有名でした。

引越し当日、午後から引越し業者のトラックが来ると言う事で私たちは荷造りの手伝いをしたのですが、
噂通りにミカン箱ほどのダンボールに4つにビデオが沢山入っていました。。

私たち3人は上司の友達も引越しの手伝いに来ているし、一つくらいダンボール箱が無くなっても
私たちだと分からないだろうと相談してトラックに乗せる振りをして自分たちが乗ってきたクルマに
ダンボール一箱を乗せ(早い話が盗んだ訳ですが、、、。)手伝い終えた後に3人でビデオを分けることにし、
ダンボールを開けると聞いたことのあるような題名のビデオや題名のラベルが張ったビデオに混じって
手書きでM・K1993/12/24などと書かれたビデオもありました。
同僚とこの手書きのなんか凄そうだなと話しながらビデオを分けて帰宅し、
その手書きラベルのビデオを見るとそこに写っていたのは紛れも無く妻と上司でした。
手書きビデオ5本の日付から逆算すると写っている妻は21歳から25歳。

手書きのM・Kの意味は妻の名前(旧姓)だったんです。

妻に以前聞いたことがあります。
何人とエッチしたことある?って。
妻の答えは一人。
いつ?
21の時。
長く付き合っていたの?
2、3年くらい。

それ以上は聞きませんでした。
妻は10歳以上年上の上司に処女を奪われたのは間違いの無いことだと思います。
付き合っていたのは2、3年と言うのは嘘だと分かりました。

長い髪をベッドに広げ中年太りして腹の出ている上司に犯されていた妻。
どれくらい仕込まれたらあんなになるのだろう?
上司に股がり自分から腰を振る妻。
バイブを入れられ、フェラチオをする妻。
足を上司の肩まで上げられて犯される妻。
上司のアナルまで舐めさせられている妻。
ビデオを撮られながら写真も撮られている妻。

妻は私の上司に徹底的に仕込まれたんでしょう。
そして、引越しを一緒に手伝った2人も妻と上司の他のビデオを何本も持ち帰った。
同僚2人も妻と一緒に働いていたので私の妻だと分かった筈。
あれから同僚2人の態度がぎこちない。
2人が持って帰ったビデオはどんななんだろう?



このHPに画像のBBSとかが無いのが残念です。
  1. 2014/12/01(月) 17:24:01|
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幸せな結末 第91回

こうして、私と加奈が仕事でも私的にでも関わった女性たちは
それぞれの道を歩み始めました。

和加奈がいることも自分の思いのたけを話した加奈は
怖いものが無くなったのでしょう。

堂々と出入りをし前にもまして、私に厳しくなりました。

旨く隠し続けてきた女癖の悪さも今回完全に露呈し、
針の筵の上で生活をしているようなものです。

加奈がこちらと札幌を行ったり来たりする生活が一年半続き、
私がこの話を考えていた頃、突然会社を止め、和加奈を連れて戻ってきました。

これから、私と加奈の「妻物語」の第二章が始まります。

私がこの話をここに書こうと思ったのは
BBS3の男が寝取られ、それを如何に修復をしていくかと言う
今までに無いBBS1の話だと思ったからです。

いざ描くと、だらだらと話が間延びをしてしまい。
お読みになる方の悋気に触れたことを深くお詫びします。

お読みいただき本当に有難うございました。

           
           (完)
  1. 2014/12/01(月) 17:15:13|
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幸せな結末 第90回

二月博美が二人目、清水家にとっては始めての女の子を出産。
清水兄が、涙でグシャグシャの顔で挨拶に来る。
清水祖父母も大喜びだそうです。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
四月から三ヶ月間、洋子は、九州支社と本社を行き来して調整を図ることになった。
スタッフ三人を常駐で派遣、洋子がそれの監督で行った。

五月の連休過ぎ、視察を兼ねて九州に行く。
抜き打ちであり、洋子にも連絡を入れてない。

七時過ぎに洋子たちが借りているマンションについた。
洋子の部屋は灯りが消えている。隣の女の子の部屋を尋ねるとしまったという顔をする。
問い詰めると、「営業の木下さんに強引に誘われて食事に行った」と言う。

PCで確認すると、木下修二、三十三歳、営業三課主任、
洋子より八歳下である。
嗚呼あいつか・・・・

女の子の部屋で待たせてもらう。十時時近く帰宅する。
そっと見てると、部屋の前でキス、名残惜しそうに帰って行った。

いなくなるのを確認してから、部屋を尋ねる。
「見たぞ、キスーシーン」

洋子は青い顔をして私にあやまる。謝る必要なんか何にも無いのにと思う。

珈琲を入れる後姿を見ていると、先ほどのキスシーンを思い出し後から抱きしめる。
洋子は体を預けてくる。
長いキスの後、洋子は尋ねた。「泊まっていく?」

それに答えずに、珈琲を飲みながら、木下の事を尋ねた。

洋子がこちらに赴任して、木下が支社側の担当になったこと
前々から洋子のことが気になっていたと言われた
四月中ごろ飲みに誘われて行ったら好きだと言われた
その時強引に誘われて関係を持ったこと

近いうちに親に会ってほしいと言われたこと

洋子の気持ちを聞くと
和君とは多分一生付き合っていけない気がする。
どこかで和君との関係に踏ん切りをつけなきゃいけない。
八歳年下の差が気になる。向こうの親も絶対反対するに違いない。
好きなことは好きであるがどうしようも出来ない。
結婚を彼は考えていると言う・・・・・・

複雑な気持ちが良く解る。揺れ動く女心が出ている。

下を向いて「和君御免なさい、二股掛けて」と泣き出した。
普段なら押し倒すが、壁の向こうの耳年増OLが聞き耳を立てている。
ドンと壁を蹴ると叩き返して来た。

明日の朝、八時半会社でと言って部屋を出る。

支社長に電話、木下主任つきで車を用意させる。
会社の階段に腰を掛けて待っていると、支社長が飛んできて挨拶をする。
洋子が来て、木下が会社の車で来た。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・
行き先を親がやっている木下工業と告げると驚いて何の用ですか聞くので、君の縁談話とだけ答えた。
洋子は赤くなって俯いている。

家のほうに車を廻して貰う。木下の母が出てくる。
挨拶をすると「和君元気」と聞かれる。

居間には社長もいる。
「久しぶりです。ご無沙汰してます」と挨拶。

「昨夜お話したとおりです。彼女が洋子です」
洋子を紹介する。

「洋子さん、良く息子との結婚を承諾してくれて有難う」

エッと意味が解らない顔をしている。

「修二、何時こっちに戻る。そろそろ身を固めて、社長を継いでもらわないとな」
木下は鳩が豆鉄砲を食らった顔をしている。

社長と奥さんが深々と頭を下げた。
洋子はボウゼンとして聞いていたが突然泣き出した。

私と木下氏とは、加奈の会社の社長を通じて面識が子供の頃からあった。

洋子のことは、うちの会社の親睦会で有ったときに、
私を自由に扱える技量があるのなら、八つ違いでも良いから息子の嫁に、
私から口利きを言われていたが、なんせ相手のあることと言葉を濁していた。

洋子も、その気なら後は進めていくだけです。
瓢箪から駒とはこの事です。

その晩、洋子と話し合った結果、私たちは個人的に付き合うのを止める事にしました。
私が洋子にそう伝えると涙を流しました。

後は良い方向に進みました。
  1. 2014/12/01(月) 17:13:39|
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幸せな結末 第89回

夜中に眼が醒めました。咽喉がカラカラです。

冷蔵庫から、水を出して飲みながら考え込んでいます。
加奈と縒りが戻ってくれば来るほど、洋子の言った「加奈に赤ちゃんがいる」が圧し掛かってきます。

腕を組み天井を見ながら考えてます。
「辞めるか」私の本音です。
段々加奈とやっていく自身も無くなって来てます。

辞めてしまえばしがらみも何も無くなります。
中国に行くのも一つの方法かもしれません。夢を求めて大陸へ・・・・・
上海の企業での就職もいいな。綺麗な姉ちゃんもいるし。

ガタッと音がして、振り向くと加奈が蒼い気難しい顔をして立っていました。
私の「辞めるか」が聞こえたのです。

「和君、辞めるってどういう事?会社を辞めるってこと、
それとも私たちの関係をやめるってこと?」

加奈は私の頬を平手で殴ると泣き出しました。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
加奈に言わせると、私は人の気持ちを考えずに行動すると言うのです。
昔からそうだ。人を将棋の駒にしか思ってないと言うのです。

今回の一件も、私は加奈と何とか再構築したい。
その為に、清水と美千代を如何に縒りを戻すかを計算した上で、
清水の両親、姉夫婦に圧力を掛け、挙句のはてに
清水のお姉さん、美千代のお母さんをたぶらかして手玉にとっていい様に弄んだ。

「私だって、和君と別れたくなかった。
でもあんな状況に持っていかれたら別れるしかなかった」

「和君の一番心に重く圧し掛かってる疑問に答える。
私は妊娠したの。あの和君が美千代さんを連れ来た晩のSEXで」

「私もよっぽど和君に言おうかと思った。でもお母さんに言われたの。
今和君に言ったら、あいつの事だから全部捨ててくるよ」

「今は、清水たち二人の縒りを戻して、何年後かに加奈さんと一緒になるシナリオを描いて
そのとおりにしていく努力をしているだろうけど、
子供が出来たと知ったら、会社も捨て二人を不幸にしてでも駆けつけてくる。
ここはあいつの正念場、我慢しておくれ。私たちがついているから」

私は約束させられました。
少なくとも、今取り掛かっている仕事が終わるまで、札幌には来ないことと
絶対に仕事を辞めない事

「一番辛かったのは、私なんだからね」と大泣きされました。

名前が私の一字が入った「和加奈」と知りました。
待ち受けを見ましたが可愛くて可愛くてしょうがありません。

後二年経たないうちに何とかしなければ。
  1. 2014/12/01(月) 17:12:28|
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幸せな結末 第88回

六日の日、仕事は全く手に付かず、喜び勇んで家に帰る。

家に駆け込むといた。台所で夕食の仕度をしている。
昨年の五月以来の再会。

後姿を見ていると思わず笑みが浮かんでくる。

今日はスカート姿である。お尻の形の丸さからきっとガードルだと思う。
ピンクのブラウスに透けて見えるブラ。

今日は久しぶりに手料理を食べるんだとルンルン気分。

振り向いた加奈がニタニタしている私を見て不思議そうに首を傾げた。

後からお尻を撫でて、「良いお尻だね、触りやすい」
「馬鹿ッ。仕度が出来なくなるからあっちへ行って、我慢して」」 

食事をしながら加奈を見る。
  
「北海道の仕事は順調か?何時ごろ終わる予定}

「来年一杯位かな。どうして?」

「何時戻ってくるかなと思って。淋しくて。年かな}

「あら、噂では洋子さんと言う素敵なパートナーが和君サポートしてるって、業界では有名な話よ。
鼻の下を伸ばしているんでしょ」

「綺麗な人だってね。どうせなら、その人に面倒見てもらったら、それでもいいのよ。
何なら今日出て行こうか?」

「噂だよ。噂。私がそんなにもてるわけが無いよ。加奈だって知ってるだろう。
今はもう、膝小僧抱いて淋しく寝てます」

「嘘つき。洋子さんの膝小僧かな?それとも膝小僧の付け根かな」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

食事の後、ソフアに座ってゴロゴロしています。
私は抱きしめています。スカートからはみ出た肉を摘みます。
加奈が怖い眼で睨みます。

キスをしながら、服を脱がしていきます。加奈もキスを返してきます。

安全日というので、たっぷりと楽しみました。
でも、子供がいる・・の疑問は、頭の片隅に渦巻いています。

それ考えると寝付けません。
  1. 2014/12/01(月) 17:11:25|
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幸せな結末 第87回

時間が前後して、

三月半ば、洋子長女が進学の為、地方へお引越し、皆で 荷物と一緒に引越しのお手伝い。
洋子は今度高二になる次女と二人暮らし淋しそうです。

帰り際長女は耳元で「内緒で遊びに来てね。待ってる」
わざとしゃがんで襟元から豊満な胸を見せる。


四月、加奈からどこかに行きたいメールが入る。
加奈とは離婚した間柄だよとメールを送ると、不満の電話が来る。

近場の温泉に行く手配をする。
五月初め家に帰ると、加奈が旅行の荷造りをして待っていた。
今日札幌から来たという。その行動力には唖然とする。

行った先のホテルで、「一緒になろう」「帰っておいで」と口説く、首を立てに振ってくれない。

二泊三日は直ぐ終わる。未練未練で送っていく。

六月博美の二人目の妊娠が判明。清水両親は大喜びです。

七月、部下の女の子が一人寿退社、
補充として、香織 三十三歳、人妻、子供一人が派遣社員で来る。
涎を垂らす私の耳を引っ張って、「私だけを見てて」と釘を刺される。

入って三日目、歓迎会をする。私、洋子、彼女の席順であった。
結局、洋子に引かれてホテルへ。
鬼のように責められ、二度と見ないと約束をさせられる。

洋子が私の目が他に行かない様に、仕事を厳しくしてくる。
夜は夜で、手を引かれ、夕食は、私・洋子・次女の三人での生活が続いた。
体力は全て使い果たして・・・女は怖い

出会いからの二周年は、仕事が忙しい・無理の私の意見を無視。
強引に休みを調整、京都二泊三日で行く。

帰ると倍の仕事が続く。
そんな生活が半年も続き慌しく年の瀬を迎えた。
加奈に電話をして、年末を迎えたい一緒に迎えたいとお願いしたが却下

洋子は娘二人と里帰り、「年末年始頑張ってね、帰ってきたらご褒美ね」の言葉と
山のような仕事を残して。

正月一日、最悪の事態発生、清水義兄が新年の挨拶に来る。

博美に電話をすると、良い正月すごしてねと切られる。

珍しく饒舌、美千代のこと、博美のこと、会社の話などで盛り上がる。
次の日に帰っていった。

三日、洋子から電話。自宅に行くと、洋子長女が一緒に来ていた。
約一年ぶりの長女は年頃らしく綺麗になっていた。

私の腕に昨年より大きくなった胸を押し付け、ミニをギリギリまで捲って、
健康的な太腿を見せ、私を挑発している。

耳元で「欲しい物が有るんだ。ネッネ!お願い」
仕方なく小遣いをやる。

四日自宅に戻ると、加奈から留守電

「六日。本社会議で行きます。
携帯への連絡は、和君の迷惑でしょうからしません」
  1. 2014/12/01(月) 17:10:25|
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幸せな結末 第86回

四月半ば、博美から会いたいメールが有る。
温泉に行きたいという。金土日の二泊三日で温泉に行く事になる。

待ち合わせ場所で車に乗ってきた博美は、むっちりとしたパンツスタイルです

暫く見ないうちに、四十の人妻体型になっていました。
パンツの上から肉がはみ出ています。むぎゅっと摘むと睨みます。

部屋に着くと、パンツの上から尻の触り心地を堪能し、パンツを下げた。
両横の紐を同時に引っ張っぱるとパンツが下に落ちて、あそこがむき出しになった。

「シャワーを浴びさせて」博美の声を無視して、
立ったままの博美の足を広げさせむさぼりつくす。

私の肩に手を置き倒れない様にしている。
膝ががくがくとして今にも倒れそうである。

アソコを広げ、ヒダの一枚一枚を舐めていく。
鼻でクリトリスを刺激する。

「ひゃ~ぁぁ~駄目~」

私は二年以上も前の博美にとっては屈辱の呪文を思いだした。
腰に手を廻し逃げられないようにして

「思い出すね。あのときの言葉。もう忘れたかな」

「言わないで。恥ずかしい。お願い」「言わないよ。博美は思い出すだけだよ」

博美は体を震わせて逝ったと同時に漏らした。

四つん這いにして、出っ張てきた腰の肉を摘みながら後から挿入。
博美は腰を烈しく動かし、子宮への射精を要求する。
久し振りの博美をじっくりと楽しんだ後、奥に届けと射精。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

夕食はレストランでの食事である。
食事をしながら、近況方向を聞いていく。

子供が歩いた・祖父母が孫二人に囲まれて嬉しい・美千代が元気にやってる

弟の所に二人目が出来たので、夫が二人目が欲しいと言い始めた。
博美は私を見つめています。暗黙の了解を求めているのです。

私はグラスを持って、乾杯を求めます。暗黙の了解成立です。

部屋に戻って、種馬状態で二日間遣り続けました。
博美が、ネットや本やらで得た子作りがし易い体位は全部試しました。

腹情死が眼に浮かびます。結局、今回の妊娠はしませんでした。
遣れば孕むものでは無いことを痛感しました。

五月も駄目、六月にようやく博美は二人目の私の子を孕みました。

また、清水義兄が飲みに来るかと思うとうんざりします。
  1. 2014/12/01(月) 17:09:29|
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幸せな結末 第85回

「で、誰の乳房を揉んでたの。私じゃないよね。
後から抱きしめて、ごく自然に躊躇することなく揉んでたもの」

「まさか、私と解ったから抱きしめて揉んだなんて嘘は止めてよね。
揉みながら考えてたもの。いつもの感触と違うなって。
誰かと揉み比べ、適当に私の名前を呼んだ。そんな感じ」

「どうせ私は過去の女、忘れられて当たり前よね」

「あの抱きしめ方といい扱い方と言い、
当然揉み慣れている間柄よね、和君。誰かな?

美千代さん、博美さん、この二人は解る。
さっき冗談で言った美千代さんのお母さん、それとも部下の洋子さん
お母さんなら親子でって事だよ。
まさか全部は無いよね。全部なら本当に鬼よね」

朦朧とする頭が目眩を起こします。

「ずっと夢に出てきていた女性。その女性のことだけを常に思っていた。
その女性と一瞬比べた。でも実物が凄くよかった」

何とか旨い言い逃れが出来た。
加奈は嬉しそうに下を見ている。

「その女性の名前は加奈。二年前まで私の妻だった女性。
ずっと夢にしか現れなかった女性。
夢と思って抱きしめたら本物の加奈だった。会いたかったよ」

心の中で冷や汗を流しながら嘘ハ百を並べた。

パンツのボタンを外しファスナーを下げる。
手馴れた手つきで拒否する間も無く、下着の中へ手を滑り込ませた。

加奈は手首を押さえて、それ以上進めまいとする。

左手で乳房を揉みながら、「会いたかった」を連発する。
キスをすると、舌を絡めてくる。

服を全部脱がせ、キスと愛撫で全身を舐めまわしていく。

乳首が昔から比べると黒くなっている。
お腹の周りは弛んでる。妊娠線を指でなぞり舌を這わせる。

「嫌ぁぁぁ~見ないで。恥ずかしい」

「これ妊娠線だよね。違う?」

「お願い。早くイレテ。奥まで・・・」

専念することにして、太腿に舌を這わせていく。
強く吸うと、明るい陽の光の下青く血管の浮き出た白い太腿に
クッキリとしたキスマークが残っていく。

シーツに、愛液の染みが広がっていく。
我慢しきれなく挿入、加奈がしっかりと抱きついてくる。

コンドームを使って逝く。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

加奈を腕枕で抱きながら口説く。

「なあ、一緒になろう。止めて戻って来い」

きつい顔で、加奈は言います。

「今の仕事に専念しなさい。後三年我慢しなさい」

頑張りたくない。遣りたくない。

もう一つの疑問をぶつけて見た。

「二年前、妊娠してなかったか?それ妊娠線だよな。前は無かったよな」

「違うよ・・・・・」

聞くに聞けない雰囲気です。下手に聞いて会えなくなっては困ります。
加奈はもう答えてくれません。口を尖らせています。睨みつけてます。
聞くことを諦めました。

金土日と、加奈は私を看病してくれました。
おかげで元気になりました。

加奈とのメール・電話も復活、こちらに来るたびに泊まっていく様になりました。
劇的に、私と加奈は再会を果たしました。
  1. 2014/12/01(月) 17:07:45|
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幸せな結末 第84回

「別れたって、何時ごろ」「何で別れたの」・・・・

私は、加奈の横に座りなおした。パンツの上から太腿に手を置く。
加奈の手が私の手の上に重なる。

二年ぶりに見た加奈はやっぱり良い女だ。

朦朧とする頭で説明を始める。

一昨年の六月に美千代が男の子を出産したこと。
子供の名前は、美千代のたっての頼みで、清水祐樹の一字を取って『祐太』と名づけたこと。

その前の五月に、美千代の母英子と清水の姉博美に集まってもらい
その時、美千代と子供の将来をどうしたら良いかを相談した。

「博美さんは解るけど、美千代さんのお母さんとはどこで知り合ったの」

「一昨年一月、美千代のとこに来た時に知り合った」

「で、博美さん同様手を付けて和君の女にしたの?
お母さんも可哀相に、和君に騙されたんだ。
親子何とかって言ったよね。そういうの」

「私はおとなしい山羊さんですから、そんなことはしません」

「本当?御母さん酒の肴に和君の悪行の数々・・・・・鬼の皮を被った鬼だって。
私と離婚したから増えたろうって」

「ゲッ、余計なことを、冗談で言ってるだけだから、ネッ」

雲行きが怪しくなってきた。早く話を進めねば。

一昨年の五月に話し合った時に、清水・清水の両親に孫のことを知らせるかどうかを話し合ったが
私と英子は、まだ精神状態が不安定なのをを理由に反対し、博美も賛成して見送った。

昨年の六月の1歳の誕生日に、祐太の清水祖父母を招いて、誕生祝をしたこと。

その後、祖父母のもとで様子を見ながら、清水に対面させるということで
昨年七月に、こっちを引き払って、祖父母の近くに住んだ。

八月のお盆に親戚が集まった時に、清水と対面させたって。
人懐っこい子で、直ぐパパと懐いたってさ。

清水は晴天の霹靂、ボウゼンとしていた。
出来た時期を聞いて、美千代に大泣きして誤ったって。
ギクシャクしたが時間が解決。

私は、和君と呼ばせていたのでその点は大丈夫だったみたいだ。

これが今年の年賀状、まあ幸せそうな一家だ。とてもあんなことが有ったとは思えない。

加奈に写真つきの年賀状を見せた。

「和君のシナリオのとおりになったんだね」

博美からあの後、清水が「挨拶に来たい」と話が有ったが断った。
私の出番は終わった。会う必要ないって。

頷いて聞いていた加奈から蒼くなる質問が・・・・
  1. 2014/12/01(月) 17:06:29|
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幸せな結末 第83回

私は夢を見ました。加奈が帰ってくる夢です。
二年ぶりで加奈が帰ってくるのです。嬉しかったです。

その時、私は風邪を引いて、四十度近い高熱をだして意識朦朧とした世界にいました。

突然。電話のベルが鳴リ二十回ほど鳴って切れました。
マンションのホールのインターホンが数回鳴ったが出られなかった。

音だけが、頭にガンガン響いていた。

玄関の鍵を開ける音がした。
加奈だ。二年ぶりに帰ってきたなと思いながら、朦朧とした姿で迎えに行った。

入ってきた女性は驚きながら、

「和君、どうしたの?風邪大丈夫」

「エッ、加奈?」それからの意識は無い。気づくと、ソフアの上で寝ていた。
夢から覚めました。リアルな夢でした。
とうとう夢にまで見るようになった。加奈が帰ってきてくれたらなと思いました。

台所で、誰かが料理をしています。ふらふらする体で抱きつきました。

パンツに下着のラインがクッキリと見えます。
むっちりとお尻です。見ているだけで勃起してきます。
硬くなったものを臀部に当てます。後から抱きつきました。

ブラウスのボタンを外し、ブラの中にに手をいれ、乳房を弄ります。
良い感触です。

朦朧とした頭で、出かかった言葉を飲み込みました。
「洋子」「美千代」「英子」「博美」じゃない誰だろう。
乳房の触り心地が違います。
完全にパニックです。この家には女性を連れ込んだ事は有りません。

朦朧とした意識の中で暫く考えます。

後は加奈、でも加奈はここにいないはず。
思い切った博打に賭けました。

「加奈、会いたかった」・・・・・・・・・・・・・・・

「ヘエ~良く解ったね」

愕然としました。
「何故?加奈がここにいる」
私の心の中を見透かすように、加奈は教えてくれました。

「札幌から用があってきたときに、必要なものを取りに来ている。
和君の留守のときに」

「今日は完全に失敗したな。風邪でダウンしてるとは思わなかった。
でも、会えて嬉しいよ」

「和君がちゃんと遣ってるかどうか心配だから見に来てるの。日常生活を見れば解るから。
綺麗に片付いているけど、美千代さん大変よね。一緒に住めば良いのにね」

「美千代とは別れた。今は全く連絡もしていない」

「エッ・・・・・・・・別れた」

加奈は絶句した。次の言葉が出てこない。

次の瞬間、加奈は驚いた表情で矢継ぎ早に質問をしてきた。
  1. 2014/12/01(月) 17:05:10|
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幸せな結末 第82回

書き入れ時の為、ホテルは一部屋しか取れませんでした。
三十日・三十一日・一日と取れました。

子供たちは大喜びです。
上の娘は、今年高校卒業です。大学進学が決まってます。
下の娘は、高二になります。

子供たちは早速スノボに行きました。
とても行く体力がありません。、

二人でお茶を飲みながら話をしています。

突然、洋子が奇妙なことを言い始めた。

「和君は絶対に知らないと思うけど、加奈さん去年の暮れ、女の子を出産したって話。
本当なら一歳になるんだけど。
札幌支店では、かん口令が敷かれていて外部には漏れないようにしているって」

「うちに来ている女の子が、最近札幌の実家に帰ったとき、
一緒に買い物をしてるとこを見たので、札幌の同期に聞いたら口を濁してたって。
私の情報ルートで、そんな話は無いのよね。」

私は、二年前の五月の加奈の体型を思い出していた。
二年前の不可思議の言動が全て納得がいく、でも信じられない。
隠す理由が見つからない。

「和君、二年前に会ったとき、何か感じなかった」

「妊娠してる感じは無かったけど、それに、私はそんなに妊婦さん知りませんから」

「そうよね。和君、妊婦さんで知っているの加奈さんと愛人一号くらいよね」

すっとぼけるに限りますので「加奈と半分、愛人一号は違う」と言った。

「エッ半分?」と驚く洋子を、私は抱きしめました。
私の言っている意味を理解した洋子は、首を大きく振ります。

「駄目よ。それだけは。嘘でしょう・・・」

洋子は言葉を飲み込みました。
首に廻した洋子の手に力が入ります。

もう子供たちが戻ってくる時間です。
激しいキスをして離れました。洋子は未練たらたらです。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

私がいくら厚顔無恥と言え、娘たちの前で、洋子と部屋つきの露天風呂に入るわけにはいきません。
大浴場から戻ってくると、親子三人で賑やかに風呂に入っておりました。
見るとはなしに見ておりましたが、今の子はいい体つきをしております。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

私、洋子、少し離れて子供たちです。
音を立てず気配を消し、徐々に洋子の布団に潜り込みました。
抵抗できないのは知っています。

浴衣の紐を引っ張ると前が肌蹴ました。
ノーブラに紐パンです。紐を引いて外し抜き取ります。

キスをしながら、浴衣を脱がしに掛かります。
体を捻って抵抗しますが、押さえつけると諦めました。

布団の中は全裸です。
布団に潜り込んで、乳房を吸いながらクリトリスを刺激する。

膣の周りを擦ると小刻みに体を震わす。
指を入れて動かすと、仰け反って逝った。

洋子の股の間に足を挟み、体を抱きかけて向きをかえる。
洋子が私の上に乗った形になった。

腰をずらし、洋子の膣口に私の硬くなった逸物を招き入れた。
奥まで入ったとき、私は布団を捲り、洋子の体を起こした。

夜目にも洋子の白い裸が、私の上で腰を振っている。
洋子は諦めて、腰を激しく振って逝った。

二日目

子供達は爆睡中です。

洋子の浴衣の下は何もつけていませんでした。
起きる気配が無いので、布団を全部捲り、浴衣を脱がします。

昨日と違い抵抗はしません。
キスをしながら、愛撫をしていくと、堪えた甲高い声が漏れます。

アソコはべチャべチャに濡れています。
腰を手で持ち上げ、アソコを突き出させ、吸い付きました。

「わ~ぁ~、駄目、感じる~」「凄い」・・・・

口を手で押さえて耐えています。クリトリスを甘噛みしました。
足を大きく広げ、ブリッジ状態で体を振るわせてます。

「お願い。早く入れて・・」

アソコに当てると入れました。一挙に奥までねじ込みます。

「ヒィ~凄い、いや~うわ~」
烈しく腰を動かし洋子は逝きました。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

楽しい正月は終わり、また厳しい仕事の山が私を待っていた。
洋子は益々張り切って仕事をこなしている。

  1. 2014/12/01(月) 17:03:40|
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幸せな結末 第81回

月曜日、朝洋子にこっぴどく怒られた。

「室長の自覚が無い」「仕事を軽んじてないか」・・・・・・・・

仕事は、洋子の管理で非常に厳しくなっていった。

洋子は完全に仕事の鬼と化していた。
入社半年で、部下十人の指導、直ぐに逃げ出す仕事をしない男の管理

肩書きは室長代理だが、仕事の性質上対外的には私と同等である。
私の判断が必要なとき以外は、洋子の判断で処理をしている。

給与は課長職プラスαと普通のOLの二倍半以上である。

専務と飲みながら話を聞いたことが有るが、
私を自由に使いこなせる事を考えたら、まだ安いと言われた。

そして、もう一つ大事な仕事は、私が逃げ出さないように時々ご褒美を与える事です。
洋子は、上司たちの間では、三つ指使いと重宝され、
仕事は洋子にお伺いが立ち、私に命令が来るパターンが定着。

・・・・・・・・・・・・・・・・

六月、美千代が祐太を出産。

手伝いにきていた英子と、美千代の眼を盗んで関係を持った。
美千代が出産で入院中は、美千代の家に入りびたりであった。
見舞いに行く英子のキャミから見える胸、襟元から見える首筋は
私のつけたキスマークが一杯ついてます。
隠すなと言って有ります。
膝上二十センチのお尻の形がはっきりと出ているスカートを穿かせています。
美千代には見えないように触っています。

美千代は「悪趣味ね」と睨んでます。

私は子育ての手伝いをしながら、日々益々忙しくなっていく仕事をこなしておりました。

十月、洋子との出会いの一周年です。

七月に亭主との離婚が成立しました。
愛人と間の子供は流産をし、不倫関係が会社にばれて降格、
リストラ要員になった亭主は何とか洋子と修復をしたかったみたいですが、
給与で充分生活できるので修復を否定。離婚が成立。

出会い一周年は、二人で二泊三日の旅行に行ってきました。
久しぶりにのんびりとした二日間でした。
洋子の体も十二分に堪能しました。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

この年は、クリスマス・暮れ・正月は全くありませんでした。
山と溜まった仕事を淡々と一人でこなしておりました。

美千代は実家に帰省中です。

年越しは、洋子の家で遣りました。
子供たちは初詣に行き、洋子と二人だけで正月です。
初めて洋子の家で関係を持ちました。
もっとも、バツ一になってしまってますので、背徳の感じは全くありません。
洋子が声を出すように責めましたが、二人きりですのであまり面白くありませんでした。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

大晦。娘から奇妙なメールが有りました。
半分仕事で死んでいましたので、当時は何を言っているのか理解できていませんでした。

「明けお目、和加奈です」
意味もわからず、直ぐに忘れました。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

二月博美が男の子を出産しました。
私の家に連れ来て、パパの顔が見たいと言っておりました。

博美の場合、人妻への種付けから始まって、妊婦らしくなってゆく様を一部始終を観察をした。
妊婦のアナルセックス、SMも経験をした。
後から考えると、流産しても可笑しくない乱行までしていた。
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・

加奈との離婚から一年が過ぎました。
メールは私からの一方通行です。

四月立ち上げから一年、今のところ順調に進んでます。

六月 祐太1歳の誕生日、清水爺婆も来ての誕生祝です。
私は行くのを遠慮しました。
後日、清水爺婆が挨拶に見えられ、美千代・祐太は新天地に住み、やり直すことになりました。

この日、私は清水に関する契約書の全てを託しました。
博美が預かってくれます。もう私には必要が無い書類です。

春夏秋冬・・仕事が忙しく感じるまもなく二回目の正月です。
今年は無理に休みを取り、洋子とおまけの瘤を連れて、温泉に行きました。
  1. 2014/12/01(月) 17:02:31|
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幸せな結末 第80回

二ヶ月半ぶりに見る加奈は、ちょっぴり太った感じはした。

横に座って、肩に手を置く。指で掃われるが 無視して手を進める。

「太った。何か手触りがいつもと違うような?」

加奈は慌てて「違う」と否定していた。

キスをしながら乳房に触れる。乳房の弾力が物凄くある。
揉み心地抜群である。

ブラをずらして、乳首を舌で転がす。加奈が感じて声をあげる。
乳房に吸い付くと、クッキリと後が残る。
前から比べると張りが出てきている。

乳首も後から思うと黒くなっていた。

パンツのファスナーを下げ、下着に入れると濡れている。
指で膣の中に捏ねていく。

「乱暴にしないでネ。やさしくしてね」

服を全部脱がせ、全身にキスと愛撫を繰り返していく。
加奈は感じて、小さな声をあげる。

「いやぁぁ~久しぶり、和君感じる」

触りながら思っていました。肌触りが、ムチャポチャが妊婦の肌触りです。
腹・腰・お尻の触り心地がしっとりしています。
舐めると体を小さく痙攣をさせます。

性感帯は前と変わりありません。
一つ一つ確認しながら愛撫・キスを繰り返していきます。

加奈が私の硬くなった物を、手で擦り口に咥えてきました。

体を変え、69の形で下から、加奈のあそこを舐めます。
膣の中に舌を差し入れます。

愛液が堰を切ったように滴り落ちてきます。
膣口に唇をを全部つけ、舌で啜って舐めとります。

加奈も硬くなったものから口を放し、喘いでいた声が段々大きくなりました。

「凄い、ぁぁぁぁ~逝く。モット吸って、わぁわぁ~嫌ぁぁ逝く」

体を硬くして加奈は逝った。
あまりの快感に、加奈は私の顔に失禁をした。

風呂に入っていると、加奈が恥ずかしそうに入ってきた。
嬉しそうにしている私に

「五年間辛抱するんだよ。私も・・・・」

体を洗いながら、良く見るとお腹が出てきているような気がする。
妊婦みたいな体つきである。
お腹を撫でると睨む。
腰に手を回し、お腹に顔を当てる。加奈が頭を撫でている。

小さな声で「馬鹿」と言った気がした。涙を流していた。
理由を聞くと何も言わなかった。

ベッドに戻ると、好きな体位で逝って良いというので。
後から挿入をし、乳房を揉みながら、首筋を一杯すって、加奈の子宮に精液をだした。

朝まで、盛りのついた犬の様に遣りまくった。
でも、妊婦みたいな体の疑問は消えなかった。

私はその午後 、飛行機で戻った。、
  1. 2014/12/01(月) 17:01:08|
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幸せな結末 第79回

解れてからも、加奈とのメールと電話の遣り取りはあった。
私は、毎日の様にメールを打ち続けた。

お互いに嫌いで解れた訳では無い。二人ともその点は充分に認識をしていた。
だからこそ、繋がっていたい。繋がる物が欲しかったのです。

これが加奈と私を繋ぐ細い一本の糸であった。
切れない限り、加奈との関係が無くなることは無いと私は信じていた。

四月に入った頃から、加奈からの電話の回数が徐々に減り、メールも少なくなっていった。
G.Wの時には、電話は着信拒否、メールもこなくなっていた。

居ても断っても溜まらず、お袋に電話を掛けた。

加奈が電話にもメールにも出ない旨を話すと、元気で遣ってるとしか言わない。
挙句のはてに、解れたんだから・・・。

加奈の会社に社長に聞いても同様の答えである。
何かを隠している。私は直感的にそう判断をしました。

私は物凄く心配になった。具合が悪いのだろうか・・・・・

土・日だと家から出てこない可能性があるので、金曜日の晩、帰宅時を狙って待っていた。

マンションの前で待っていると、夜目にもわかる。颯爽と加奈が歩いてきた。

私の姿を見ても驚く様子も無い。

「和君、やっぱり来たんだ。予想より早かったな。根性なし」

「予想って?」

「一家で賭けたの、晩御飯。
御母さんは、G,W明け、根性なしだからそれくらいだろうって。
私はお盆休み。娘は和君は男だから意地でも来ないって。
娘の期待を裏切る駄目父ね」

「あッ、御母さん、根性なしの和君、今下に来てます。
今日、一緒に過ごして、明日帰します」

私の腕に、腕を絡めてきます。

「今日は一緒に居てあげるけど、明日はちゃんと帰るんだよ」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ホテルの部屋に入ると、加奈は釘をさしてきました。

「美千代さん、和君こっちに来た事知ってるの?
自分のしたことがどんな意味を持っているか解る。
美千代さんが知ったら悲しむよ。今が大事な時でしょ」

「私の心配なんかしないで、自分のすべきことだけして頂戴。
私だって、今泣きたくて大変なんだから」

この時は、別に気にもしていませんでしたが、
本当の意味を知るのは五年後の事です。

「始まったばかりの仕事、投げてきてどうするの?
社長から、完全に軌道に乗るまで、四五年掛かるって、
私に会いたいなら、仕事を完全にしてから来て、解った」

「和君ならきっと仕事をやり遂げる。そう信じてるから、頑張ってね」

加奈に言われると何となく遣れそうな気がしてくる。
本当はあまり乗り気でないのだが。
  1. 2014/12/01(月) 16:59:48|
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幸せな結末 第78回

突然、清水義兄が私の事務所を尋ねてきました。

蒼く暗い顔をして、ソファに座ってます。一言も喋りません。

洋子は陰で嬉しそうに、修羅場だとはしゃいでおります。
刺されたら自業自得ですねと嬉しそう。

「話が有るなら早く言え」「決着を着けるならサッサとしろ」
言いたいのを堪えています。

酒でも飲みながらと、時間的には早いのですが、いきつけの居酒屋の個室に連れて行きました。

無言のまま、手酌で飲んでます。飲むというより浴びてます。
非常に不気味で危ないです。私も手酌で付き合います。

看板までいましたが帰る気配が有りません。
居酒屋を出ると付いてきます。
仕方が無いので、うちに連れて行きました。

本当は男なんぞは連れて帰りたくは有りません。

酒盛りの続きです。明け方、義兄は酔いつぶれました。

博美に電話をすると、何故そこに居るのと愕然としていました。
昨夜は知り合いに連絡したりして探していたそうです。

寝てる間にコンビニで酒を買ってきました。

朝から酒盛りを初め、二日目の夜が来ました。

突然、義兄が泣き出しました。
ボウゼンとして見ていました。

「博美のお腹の子は、俺の子だよな。そうだよな」

「そうだよ。間違いなく君の子だよ」

酔っ払いには下手に逆らってはいけません。

「そうしてもらえるとありがたい」と驚愕の事実を語り始めました。

結婚したての頃、東南アジアに仕事で何ヶ月か行った時に、
現地駐在員・現地スタッフと一緒に散々得体の知れない女をとっかえひっかえと遊びほうけたそうです。
結果、変な奇病に感染、子種が出来ない。
子供が欲しがる妻には事実は言えない。
婿養養子なので両親の子が欲しい無言の圧力を晒せれ続けて苦しかった。

男の嗚咽した姿は見たくありません。

二晩中、私と飲んだ義兄は、私を責める言葉を何も言わずに帰っていきました。


完全に懐かれました。
年に何回かやって来ます。何も言わず酒を飲んで帰っていきます。
非常に不気味です。
怨恨・痴情の縺れで刺される・・マスコミを賑わせるが目に浮かびます。


博美に言わせると、会社での鬱積が溜まると来るらしい。
いい酒飲み友達が出来たと喜んでます。
「夫も優しくなったしやり直すんだ」とはしゃいでます。

清水義兄も、二人目が出来ると、子育てと家庭の諸々に忙しくなり顔を見せなくなった。
  1. 2014/12/01(月) 16:58:44|
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幸せな結末 第77回

博美の話によると、今までは何ヶ月かに一度しかなかった性交渉を毎晩の様に求めてくるというのです。
私と会った夜は特に明るい灯の下で体中を調べるのです。
調べているうちに興奮する。
五月に体中にキスマークがついているのを見たときは一晩中遣っていたそうです。

六月上旬、博美の妊娠が発覚しました。確率でいくと半々です。

義兄のほうが毎日だろうから父親の確率は高いです。
幸いにして、血液型が一緒なので、DNA鑑定以外は親子の判定は難しい。

博美は十年出来なかったので、今後の保障が全く無いので産むという。

「貴方の子が出来た」と旦那にも話をしたところ凄く喜んでくれました。

私の楽観的な考えは脆くも崩れました。
私の上に跨って、硬くなった物を膣の奥で締めていた博美は
耳元で驚愕の事実を告げたのです。

「夫は子供が出来ないの。だからこの子は間違いなく和君の子供。二人だけの秘密」

博美の話によると、
夫はそのことを博美が知らないと思っている。
偶然、博美は夫に子種がない事を知ってしまったが、夫の子として産むを決意しました。


私が無性に興奮しました。あっという間に奥深く射精をしました。
博美も同時に逝きました。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

脳裏を、博美が受胎した日のことが横切りました。

英子と関係が有った次の夜に、博美から会いたいと連絡が有りました。

待ち合わせ場所に現れた博美の服装は、昨日の英子への対抗がミエミエです、
英子とは、そんな関係では無いと言っても信用してくれません。

完全に怒っています。
博美より英子を先に抱いた事が面白くないのです。

ラブホに入ると嬉しそうにシャワーを浴びてます。

博美をベッドに押し倒しました。
強引な愛撫を繰り返し、乳房にキスマークを残しました。

「嫌~駄目、主人が帰ったら体中調べるの。キスマークは不味いよ」

「今日はしないで帰ろうか?それならつかないよ」

私は、博美と旦那があの時以来うまくいってないのは理解しています。
博美と私が会い、それを旦那が舐めるように調べる。
それで、博美と旦那は微妙に繋がっているのです。
それを聞いていた私は意地悪をしたのです。

「博美の口から聞きたいな。絶対につけないでって」

私は、博美の乳房にブス黒い痕をつけながら聞いています。
博美が「つけないで」と言わないと確信しています。

キスマークが体に咲くたびに、博美は体を仰け反らせて挿入を要求します。

我慢しきれなくなった博美は私を跨ぎ、膣の奥深くに自ら招き入れました。

「今日は一杯出してね」

そういった途端腰を激しく動かしたので、下から思い切り突き上げて逝ってしまった。
博美の奥深くに射精をした。

少し、落ち着いてから違う体位で遣りました。
この日 博美は今日が危険日だと認識していました。
妊娠をするつもりだったのです。
  1. 2014/12/01(月) 16:57:39|
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幸せな結末 第76回

二人と別れた後、私は再び英子を呼び出した。

英子はいそいそとやって来た。

部屋に入るなり抱きついてきて、激しいキスをしてきた。
博美のことは何一つ聞きませんが、態度に対抗心が現れています。

しゃがみ込むと、ズボンのファスナーを下げしゃぶりついて来ました

一月に会った時の英子とは、雲泥の差です。
あの上品で控えめだった影は全くありません。

「英子は淫乱になったな。誰が教えたのかな?ご主人かな
教えた人の顔が見たいもんだ」

「言わないでください。意地悪」

英子をベッドの上に四つん這いにさせ、お尻を高く突き出させ、下着を脱ぐように命令をする。

大きく首を振り、拒否をする英子のキャミとブラを剥ぎ取る。
余計卑猥な格好となった。

顔を抑えて、一向に加奈は恥ずかしがって脱ごうとしない。
業を煮やした私は、英子に服を渡し、帰り支度を始める。

「エッ、ごめん、脱ぐから怒らないで」

英子は慌てて、膝まで下着を下げた。
それを脱ぎ取ると、手を太腿に掛けると徐々に開いていった。

「嫌ぁぁ~全部見えちゃう。恥ずかしい、ぁぁぁぁ~」

私は、五十女のアソコと尻の穴が全開になるくらい開いた。
英子は、恥ずかしさで体が痙攣をしている。

「英子はここが始めてかな?
絶対声を出すな、声を出さなければ何倍も感じるから」

指に唾をつけて、菊穴の回りを擦る。枕に顔を埋めて体を仰け反らせる。

枕を手でしっかりと押さえている。
私はその手を後ろに回し、バスローブの紐で縛った。
これで声を出すのを防ぎようが無い。どうやって堪えるのかな。

「声は絶対出すなよ」

肛門に唾を垂らすと体がビックと痙攣をする。
指を菊穴に押し当てると、スポッとすぐ入ってしまった。
抵抗があまり無かった。

「ヒィッーッ」と細い声をあげた。

「声を出したな。二度と忘れられない罰を与えよう」

首を大きく振って哀願する。
「許して、お願い」・・・・・・・・・・

あたしは指を抜くと、肛門に舌を這わせた。舌で奥深くにを舐める。

「汚いよ」・「駄目」・「嫌~」
言葉にならない言葉を並べて喘いでいる。

裸になると、堅くなったものを英子の肛門に当てた。少しづつ前に進める。

「声を出すな。快感を飲み込め」

腰を押さえ込んで、逃げられないようにして言い聞かせる。
首を振りながら、シーツに顔を埋めて耐えている。

菊穴の抵抗が無くなり、奥まで埋まった。
ゆっくりと動かす。根元まで入れ入り口まで戻すを繰り返す。

両手で乳房を揉みながら、耳元で聞いてみる。

「首筋が淋しいよね。私の色をつけようか」

首筋に吸い付く。キスマークがクッキリと残る。

「つけないで、嫌、ヤメテ」

英子の声は無視、奥深く突くたびに、キスマークを付けていく。
突然体を硬くしてアナルで逝った。アナルの奥深くに射精をした。

体を変え、正常位で挿入をする。英子は首に手を回してしがみ付いている。
英子が腰を動かして、射精を要求する。

英子の膣の奥が、私のものを欲しがって蠢く。
吸い取られる感覚で逝った。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

これが一番燃えた英子との関係の最後であった。


英子の話によると、一月の関係で私の子を身篭った。
五十歳ということも有り世間体も有るので中絶をした。
本当は産みたかった。私には悪いことをしたと泣かれました。

1歳の誕生日までは連絡を取り有って関係を持っていたが、
美千代と会うことも無くなり、ひとりでに疎遠になっていった。

結局、美千代と清水の再構築の為の道具だったのだから、それで良かったのかも知れない。
  1. 2014/12/01(月) 16:56:18|
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幸せな結末 第75回

六月、美千代は男の子を出産しました。

この間、私は、人妻の妊婦が変化していく様子をじっくりと観察をしました。
乳首が黒くなっていき、母乳が出始め、それを味見もしました。

美千代が一番好んだ体位は、騎乗位でした。
深さとか強さを自分で自由にできるので、好きだといってました。

予定日ぎりぎりまで遣りました。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

今後の問題は、美千代の精神的な状態も有るし、清水の考えも有ります。
美千代の母英子と清水の姉博美に相談することにしました。
二人とも呼びせば出てきます。

五月の連休に、二人を呼び出しました。
美千代のことで話しが有るのでとしか言いませんでしたので、
ホテルで鉢合わせしたときは、びっくりしていました。

最初に、英子がきました。
生足、膝上三十センチのミニのフレアーに上はキャミです。
とても、五十のおばさんの格好では有りません。
以前、今度来るときはと指定してあった格好です。

キスをしながら、スカートを捲るとこれで隠せるのと聞きたい小さな下着です。

椅子に座らせ鑑賞している最中に博美が来ました。

博美はミニのタイトスカートで体のラインが強調されます。
Tバックを穿いているので下着の線が出ません。
綺麗なまあるいヒップラインです。

二人に間に見えない火花が散っています。女の感で何か解るのでしょう。

並んで座らせ、美千代の話をします。

六月に子供ができると聞いて、博美は驚いています。
昨年の離婚の原因となった強引な関係時に妊娠したと話しました。

犯されたショックで、精神が不安定だったが、
今はだいぶ落ちついてはいるが、清水の名が出ると時々不安定になる。

最近は、三人で暮らしたい願望が出てくる。
何とかしてやれたらと思うと話す。

この話を聞いて、博美は泣きました。英子が慰めていました。

子供の名前は、清水祐樹の一字を取って、祐太と名づけたい。
美千代のたっての頼みです。

私は強行に反対をしましたが、美千代はどうしてもつけたいの一点張りです。
美千代の心の中には、清水との生活があるようです。

どうも目が、二人のスカートにいきます。二人とも股を若干開き気味です。
英子は十代の女の子が穿くスキャンテー、博美は赤いTバックです。
英子は体を乗り出して聞いています。襟元から乳房が丸見えです。
眼を逸らして見ながら話します。

名前の件は、美千代の意思を尊重することになりました。

問題は、清水・清水の両親に孫のことを知らせるかどうかでしたが、
私と美千代の母英子は、まだ精神状態が安定してない事を理由に反対し
清水の姉博美も結果として賛成しました。

1歳の誕生日には何とか、祖父母には会わせたい話になりました。

博美・英子の協力を得ながら、一つ一つ問題を解決していくことになりました。

・・・・・・・・・・・・・・・・・
クリスマス・正月・離婚から一年が過ぎ、祐太の1歳の誕生日です。

博美が色々と手を尽くし、誕生日には清水の両親も参加しました。

今までの経緯を聞き、両親は泣いて謝罪・感謝をし、
美千代親子は、清水の父母の家に近くに住み、
折りを見て、清水とも親子の対面を図るとの事で引きとられて行きました。

その後、博美からの話では、三人仲良く再構築し、二人目も出来たとの話です。
美千代は人が変ったように逞しくなったとの事です。

もう私は、美千代とは会うことは無いでしょう。
  1. 2014/12/01(月) 16:54:28|
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幸せな結末 第74回

これが、九月に美千代と出会ってから、二月に加奈と離婚するまでの約四ヶ月間の話です。

全部を離す必要が無いので、必要に応じて、言葉を選んで話していく。
まして、性交渉のシーンは全てカットである。

私は、この話の中から、加奈が一番、知りたがっていた部分
何故私が美千代と関わることになったのかを説明をした。

説明の中での、加奈の疑問には慎重に答えていった。
加奈が納得すると話を次に進めた。

美千代を見たがまだ落ち着いている。

次に、清水が泥酔をして・・・・
美千代は、私の腕を握り震えている。

これ以上は無理かと聞くと、無理との返事、明日でも家に行くと帰す。

美千代が部屋を出て行った後、冷蔵庫から、ビールを持ってきて加奈の横に座る。
ビールを飲みながら、先ほどの続きを始める。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

清水が泥酔して、加奈と間違えてレイプし妊娠した。
そのときのショックで精神が安定しない。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・
加奈もかなりの衝撃を受けた様である。

「先ほどの美千代の様子を見ていると気づいただろう」と言うと、じっと俯いていた。
あれが、お前たちのした事の結果だ、そう叫びたいのをグッと堪えた。

ビールを三本開ける頃には、二人とも出来ていて、私の手はブラの中にあった。
揉むと私の手に伝わる反応は、長年馴染んだ反応である。

乳首を摘んだときの指に伝わる感触も耳に響く喘ぐ声も
二十五年の二人の歴史の中で培ってきたものであった。

私の微妙な感傷に気づいた加奈は自慢げに言った。

「逃がした獲物は大きかったろう。
寂しいときは時々は相手してやろうか」

心を見透かされた私は、加奈をベッドに押し倒した。

加奈の方が積極的に求めてくる。
私に圧し掛かる形で、キスをしてきた。

二人とも、服を脱ぎ全裸になる。

加奈は、体中にキスをしてくる。耳・首筋から始まって足の先まで。
今まで、私が加奈にしてきたことを加奈がしているのである。

首筋とか太腿に、キスマークがついていく。
 
「不味いよ。会社に行くと、いい年して」

「和君はいつもこうして、私につけていたんだよ。お返し」

そう言いながら、私の硬くなった物を咥えた。
異常な興奮に、加奈の咽喉の奥で射精をした。吐き出さずに全部飲んだ。

咥えたまま離さない。再度堅くなった私の上に跨ってきた。

アソコに硬くなった物を押し当て、体を少しづつ落としてくる。
先が膣壁に擦れる。根元までくわえ込んだ加奈は一挙に締めてきた。

「和君、一杯頂戴、早くきて」

加奈の喘ぐ声を遠くで聞きながら逝った。

結局加奈は、ホテルに泊まった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

朝、コーヒーを飲みながら話をした。

「ごめんね。加奈と離婚する理由は何も無かったんだ。
加奈と清水の不倫の結果、美千代が巻き添えを食った。
たまたま、それに私が関係してしまった」

「今美千代は神経が不安定な状態だ。
清水にも捨てられ、私にも捨てられるんじゃないかと疑心暗鬼だ。
こうなった以上加奈と離婚して見守るしか無い。それを理解して欲しい」

「私は、美千代とは一緒にならないと思う。
あの子が自分の道を見つけて歩み始めたら別れる。
それまでは見守っていようとおもう。
加奈と清水がしたことに偶然私が関わった。これも運命だろう」

「その日が来たら、私は又別の道を歩み始める。
どんな人生になるかは解らないが」

「その時、横に私がいても良いかな」

私の手を握って、加奈が聞いてきます。

何も答えず、私は笑っているだけでした。

こうして、私たちの結婚生活は終わりを告げました。


                 完

妻がいなくなり、女性たちだけが残る非常に珍しい展開となってしまいました。
女性たちも一人一人それぞれの人生を歩んで行きます
これから二年後に妻と再会します。
それまで、お付き合いを願えればと思います。
  1. 2014/12/01(月) 16:53:29|
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幸せな結末 第73回

朝食を取りながら、話をする。

私は、今日有給を取り、離婚届けを出しに行くと話す。

加奈は、ケジメをつける意味で、
「この家を出て行き、赴任の日までウィークリーマンションを探して住む」と言う。

「一緒にいられないのか?」の問に対して、ここでずるずるになるより
一つの区切りとして出て行って、一人で考えるという。

それも一つの決断なので、尊重することにする。

二人で、加奈の住むマンションを探しに行く。

途中役所で、離婚届をだす。

加奈は車で待っていたが、戻って来ると泣いていた。

「出しちゃっただね。とうとう私たち終わりか」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

何件か見て、一番よさそうな所にする。

歩いて二十分ぐらいの場所なので、用事があって来るのも楽な距離である。
私も加奈も、まだ離婚した意識が無い。
これから、徐々に湧いて来るのだと思う。

家財道具一式がついているので、身の回りだけで良い。
家に戻って、バッグに着替えなどを詰めて、マンションに行く。

加奈が片付けているのを、ベッドの端に腰掛見ている。

私は、ベッドの寝具合を確かめたくてしょうがない。

壁は叩くと薄いのが良く解る。声は完全に隣に漏れると思う。

私の意図を感じ取った加奈は寄ってこない。
仕方が無いので、私の方から近づいて襲う。

声が響くのを気にした加奈は、抵抗が弱い。

キスをすると、吸い返してくる。長年の無意識的な習慣である。

それを良いことにして、愛撫を繰り返す。

執拗にしていくうちに、ついに加奈も陥落。
口を押さえて、喘ぎ声を出さないようにしている。

服を全部脱がして、両足を全開にさせ膣に吸い付く。

栗ちゃんを甘噛みすると仰け反る。
愛液が滴り、太腿を伝わり、床を濡らした。

指で中をかき混ぜながら、耳元で囁く。

「嫌なら止めるよ」

「止め無いで、お願い、和君頂戴」

「声が小さくて聞こえないな
もっと大きな声で言ってよ」

「ぁぁぁぁぁ~和君入れて、お願い・・・・」

腰を高くあげさせ、挿入をした。締め付けてくる。

奥まで入れると、加奈は体をヒクつかせた。
加奈のタイミングに合わせて逝った。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

夜遅く、誰もいない家に一人淋しく帰った。

私たちの結婚生活は終わりを告げました。
  1. 2014/12/01(月) 16:52:14|
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幸せな結末 第72回

加奈の携わった計画が無事終了しました。

加奈の会社の社長から連絡が有った。

本日付で加奈から
清水との件で会社に迷惑および損害をかけたことのけじめとして、
退職願いが出されたが受理せず、
北海道に置ける新規のプロジェクトの成功をさせることで
会社に恩恵をもたらすことが、加奈に出来る唯一のことだと説得した。

私は迷惑を掛けますが宜しくと電話を切った。

ついに決着をつけざるを得ないときが来た。

離婚届をテーブルの上において、加奈の帰宅を待った。

疲れた表情で帰宅した加奈は、椅子に腰掛けると、頭を下げた。

「今日、仕事の終了報告を社長の所にしに行った。
清水君との件での責任問題も有るので、退職願いを提出したが受理されなかった」

「社長から、北海道での新計画の成功が
加奈に嫁せられた会社への償いだと言われたので
社長の顔を見たら、笑顔で黙って頷いたの」

「和君が裏で手を回したんだと解った。和君有難う」

その後、母から、加奈の携帯に電話が有った。

「必要最低限度の物だけで来るように」

「最後に馬鹿息子が迷惑かけてごめんね。苦労かけるね」

泣きながら母から加奈は謝罪された。

「和君、私迷惑ばかりでごめんね。
私のためを思って色々やってくれたんだね」

テーブルの上の、離婚届を見た加奈は、何も言わずに署名をした。
これを提出すれば、すべてが終わりである。

少し落ちつた加奈は、夕食の支度を始めた。

後ろ姿を見て欲情した。
後ろから抱きつくと弱い抵抗をするが、私の求めに応じてくる。
キスをすると、舌を絡めてくる。

「駄目、ご飯・・・」

ブラウスの上から摘む。ブラウスの中に手を入れたところで、ご飯の仕度と手を叩かれる。

夕食の後、過去の事をお喋りをした。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

別々に寝ようとする加奈を強引に、ベッドに引きずり込む。

激しく抵抗するが、無理やり押さえ込む。

キスと愛撫を繰りかしていくうちに抵抗が止む。
服を脱がし、更にキスと愛撫を繰り嫁す。

嫌がる加奈を上に乗せ、騎乗位で下から突き上げると、仰け反って逝く。
加奈の中に射精をする。

「今日危ないよ」

私の耳にはそんな言葉ははいりませんでした。

私が上になり、正常位で挿入したときは、悲鳴に近い声を出ししがみ付いてきました。

最後はうつ伏せにして、首筋にキスマークを付ける私のお気に入りで遣りました。

一晩中、思い出をなぞる様に遣りました。
  1. 2014/12/01(月) 16:50:47|
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幸せな結末 第71回

仕事が少し遅れ、一月の終わりになりそうである。
加奈との結論は、二月にずれ込みそうである。

事務所に行くと、洋子が二人揃って、
社長の所に顔を出すようにとの指示があったと言う。

社長、専務、加奈の会社の社長、専務が顔を並べている。
二社で、情報システムの共有化をする話があるのは聞いていたので、
それに関する助言と思っていた。

専務が、洋子を紹介した。

「洋子君が、和君に唯一、穴から引き出して鈴をつけた女性です。
彼女がしっかり、手綱を握っていますので、
安心して、新しい部署を立ち上げられます」

洋子は何を言われてるのか理解できないが、頭を下げた。
私は晴天の霹靂である。そんな話聞いてないよ。

向こうの社長が話を始めた。

「二月に一応、和君は離婚をしますので、暴れ馬になりかねませんので
手綱をしっかり締めるのを、彼女にお願いしたい.
いずれ、復縁をさせるがそれまで、仕事をきちんとする様に監視して欲しい」

「復縁なんて勝手に決めるな」そう、私は言いたい。

社長が、情報管理システム室を、両社で立ち上げることを説明し
洋子に私の管理を依頼し、私が取締役室長になることを通告され終了。

洋子の下に、何人かの部下をつけ、四月からの稼動を目指します。

部屋に戻ると、洋子は抱きついて、キスをしてきた。
私は気が重くてしょうがない。

ここで、初めて社長たちの陰謀に嵌まったのに気がついた。
部長の言っていた言葉を思い出した。
私好みを選んでおいた・・・・・これのことか。
完全に会社の陰謀である。

蜘蛛の巣に絡まった虫のようなものである。逃れきれない。

ため息をついている私に、嬉しそうにびったりと絡み、
「今日、お祝いしよう」と誘う。

私の手を、太腿に置かせる。
なるようにしかならないのが人生。どうにかなるでしょう。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

退社後、直ぐラブホへ
半分強引に連れて行かれた。

部屋に入ると、洋子は積極的である。
私をベッドに押し倒し、ズボンと下着を脱がせると、むしゃぶりついてきた。
フェラを楽しんだ後、体を入れ替え、キスをしながら、洋子を全裸にする。

久しぶりのせいか、洋子の愛液が糸を引いている。

上にのって、激しく動く洋子をぼんやりと見ていた。
私のやる気の無さに気づいた洋子は、色々な要求をする。

「乳首を吸って」「乳房を噛んで」・・・・・

私も段々興奮して、洋子の好きな後ろから挿入して、
両乳房に指の跡が残るまで強く揉んだ。
一番奥まではいったことを感じて逝った。

洋子は締め付けて離してくれない。
そのままでいるうちに、また大きくなってきた。
腰を突き出して、中に出してと要求をする。

私が動かずにいると、一人で腰を動かし続けて逝った。
同時に私も、洋子の膣の奥に逝った。
  1. 2014/12/01(月) 16:49:13|
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