主に寝取られ物を集めた、個人文庫です。

柚布子が尻餅をつくように腰砕けになった瞬間、ぶつかった相手の男が右手で柚布子の腕を掴み、左手で腰を抱え支えた。
ぶつかった男は園田。
園田は柚布子の腰を抱えた腕を引き寄せ自分の腰に密着させた。 柚布子は咄嗟に上体だけは園田から遠ざけた。
「危ないなぁ~、大丈夫ですか?」
「は、はい、すいません」
柚布子は右手で園田の腕を掴み作用点のように腕を伸ばし園田の腕を自分の腰から遠ざけ体勢を整えた。
「あ、いや、これは失礼、倒れそうだったので」
園田はニヤつきながらそう言うと、右手を離し柚布子と完全に離れた。 しかし、柚布子はぶつかった衝撃が引き金になったのか立っているのが辛いくらい酔い始めていると感じていた。
「私の足音にも気付かずに夢中で電話する相手ですか」
柚布子は背後の気配に気付かずに電話していたことを不覚に思ったが、遅かった。 SI会社とはライバル関係にある会社の遊佐と話していたのである。 しかも席を外したとはいえSI会社の宴席の場である。 園田がそれを見逃す訳がなかった。
「どういうつもりかね?」
園田の言葉は穏やかで座敷までは聞こえない大きさであるが、目が威圧的であった。
「い、いえ、プライベートなことです」
「そ~でしたか、確か先ほどの小宮山達のところの話では付き合ってる方は居ないと・・」
「い、いえそういう関係の人ではありません」
「は~ん、そういう関係の人は居るんだ・・・小宮山が、がっかりするなぁ」
「は?」
柚布子は園田が小宮山達と話していた内容を聞いていたことに畏怖を感じた。
「こういう場のご経験はあまりないようだね」
「い、いえ・・・は、はい」
「うち流のしきたりもあるし、色々覚えないとね」
「は、はい、よろしくご指導下さい」
「指導ね・・・そうね指導しないといけないみたいだね」
園田は陰湿に笑みを浮かべた。 柚布子の悪い癖がまた出てしまった。 今時の若い女性なら黙って俯いているだけでこの場を凌いだかも知れない。
園田は二人の立っている前の部屋の扉を手で示して案内するような仕草をした。
「じゃ、さっそく指導しようか、悪いところは直ぐ直した方が覚えるからね」
園田は柚布子の肩に手を伸ばし、肩を押すように部屋へと導いた。
「今日の君の悪かったとこから教えようね」
柚布子はそう言われて断る訳には行かなかったし、初めての得意先の慣習を知ることが出来るチャンスだと楽観的に断らない理由を見つけた。 そこの習慣を知らなければ商売が出来ないという時代ではない、他の女性なら断る理由を必死になって探したであろう。 しかし柚布子はそうしなかった。
柚布子は自分の思考力が落ちているかも知れないと思った。 一生懸命に状況を把握して判断しようとしている自分と、もうどうでもいいと思う自分が交互に入れ替わっていた。 それだけ酔いがまわり始めているからだと自分なりに解釈していた。
柚布子は酔いのせいにすることでもうひとつのまともな自分を押しのけて、園田の言いなりになることに傾倒していった。 園田の目を最初に見た時に何か逆らえないものがあると直感していた。
「じゃ、ここに正座してごらん」
園田の陰湿な声が柚布子の耳元を擽った。
園田は柚布子に正座を命令すると、部屋の照明をつけ、座敷の奥に胡坐を掻いて座った。
「そのまま、こちらに来なさい」
園田の次の命令だ。
「両方の掌を握って拳を作りなさい、そしてその拳で身体を浮かせるように」
スカートの裾から柚布子の手が離れると太腿の合わさった奥の逆三角形の部分が再び園田の視界に捉えられた。
柚布子は園田の視線が膝小僧辺りにあると思った。 さらにその視線はスカートの奥に向いていることも感じていた。 今、身だしなみとして隠さなくてはならないスカートの奥を目の前の初めて会った男に晒しているという被虐を不快に感じていない自分がいることを柚布子は知った。
「視線を下に落とさない」
園田のやや厳しい声が飛び、さらに、
「腕は両脇を締めて、拳は身体から離れないところで畳について、そのまま身体を前に出しなさい」
柚布子は言われた通りの動きをした。
柚布子が前に進むにつれてスカートが摺り上がり、園田の視界の逆三角形は次第に大きく、はっきり見えるようになった。
園田はその光景に予想以上に悦んだ。 名刺交換時には単にスカートの奥がチラ見えしただけだった。 しかし、今はスカートが摺り上がると太腿辺りのストッキングの模様はフェイクのガーター模様であるのが分かった。 本物のガータ程の色気さはないが、唯のパンストの奥を想像していた園田にとっては予想外の成果であった。
柚布子は間隔が短くなった脚の痺れと、思考力の維持との二つと戦っていたのでスカートがどういう状況なのかまで気を配れなかった。
「君は肩が傾いているね」
園田はそういうと、立ち上がって柚布子の元へとやって来た。
園田は柚布子の両肩に手を置くと力を入れて押した。
「うっ」
柚布子の声が微かに漏れた。 園田に押されたことにより脚がさらに圧迫されて痛みを感じたからである。 園田は手の力を緩めると肩を撫で始めた。
「もっと、背筋を伸ばして」
言われるままに背筋を伸ばすと脚に重圧が掛かった。 柚布子は脚の感覚が無くなるのを感じていた。
園田は撫でていた手を徐徐に肩から胸へと進めていた。
「これから、お望み通り指導しましょう」
柚布子の耳元で園田が囁いた。 柚布子も大人である。 何の指導なのかとは聞かない。 聞いたとしてもはぐらかされるだけである。 明らかにセクハラである。
しかし、問題はそう主張した場合に自分の立場がどうなるかである。 柚布子は「いつかこの男に抱かれるかもしれない」と、自然に思った。 そして、その思いを必死に掻き消そうと努力している部分がまだ残されていた。
園田に抱かれる。 自分の白い肢体に園田の身体が重なる。 柚布子の脳裏にその光景がサブリミナルのように一瞬浮かんで消えた。 それを掻き消そうとするればするほどその光景が挿入されて来る。
「だめ、他のことを考えないと」と、柚布子は心で呟いた。
「こ、これは、何の指導になるのでしょうか?」
柚布子はこの時ばかりは慎重に言葉を選んだ。
「ん、これはね、こういう料亭で女性がどう立ち振る舞うかを教えようとね」
そう園田が答えると、園田の右手は器用に柚布子のブラウウスの一番上の釦を外した。
そして、ブラウスの襟元から園田の手が入りそうになったその時、 咄嗟に柚布子の両手が胸元を押さえた。
「こ、これって、セクハラになりますよ」
柚布子は思い切って切り出した。
「誰がそれを信じる?」
園田はそう言うとさらに続けた。
「この状況で、君が私を誘わなかったと私に付いた弁護士が信じるかね?」
確かに敏腕弁護士なら法廷でそう切り返すかも知れない。 園田のやろうとしている行為はセクハラ以外の何物でもないが、この場に柚布子と園田が二人きりという状況から柚布子も納得の上での行為と主張するかも知れない。
園田は柚布子の脇に腰を降ろすと片方の手を膝から腿へと進めた。 胸元を阻止していた手のうち片方の手でスカートの中まで入るのを防ごうと園田の手を掴んだ。
しかし、園田の手ははお構いなしに奥へと進む勢いである。
「声、出しますよ」
「・・・ 出してごらんなさい」
園田は柚布子の首筋にキスする位近づけて、不敵に囁いた。
「みんなが、ここにやって来てこの光景を見たら何て言うかな?」
「・・・・」
「私は、『この女、私を誘惑しおって』と弁解するが、いいかな?」
「・・・」
園田はスカートの中への進入を続けると共に胸への進入も開始した。 力の差からすれば柚布子の阻止行動なのど他愛のないもであった。 しかし、園田も強引に侵入するのではなく、様子を見るように力を加えていた。 柚布子もありったけの力でこれを阻止するのではなくズルズルと侵入を許していた。
柚布子は諦めたように目を閉じた。
- 2014/11/01(土) 09:08:51|
- 序破急・中務
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久世からの電話があったことで柚布子は気分的に楽になったのと同時に肉体的な胸の支えがげっぷとなって解放された。 げっぷの気体が鼻からだけではなく耳からも出たのではないかという爽快感で柚布子は思わず「やだ」と呟き口を手で押さえた。
「もう少し飲めそうだわ」柚布子はげっぷが出たことでそう思ったが、視野の遠近感は少し定かでないのも感じていた。
柚布子が座敷に戻ると、末永は園田と山田、磯貝は重盛と小宮山の相手をしていて盛り上がっていた。 柚布子はその場でどうすればいいか迷っていると、末永が「ちょっと」と言って立ち上がり、柚布子の元へやって来た。
「トラブルか?」
「いいえ、仕様のことで、確認があっただけです」
「そうか、直ぐに対応が必要か?」
「いえ、休み明けの対応で了解してもらいました」
「ご苦労さん、じゃ席に戻って、料理をご馳走になりなさい」
「はい」
柚布子が自分の膳に戻ると、紫色の飲み物と、オレンジジュースのようなものが用意されていた。
「それ、ヴァイオレットフィズとかいう飲み物らしい」
園田が説明した。
「最近の若いもんの間ではそういうもんが流行りとかで、重盛が頼んだ」
柚布子は園田の説明に重盛に笑顔でお辞儀をした。 園田の方に顔は向けていない。 園田はそれが気に入らないのか機嫌が悪そうに更に
「もうひとつはカシスオレンジだ、私が頼んでおいた、気に入ってくれたら飲んでくれ」
かなり剣のある言い方であるのが柚布子にも分かったので、造り笑顔で
「有難うございます、美味しいので頂戴します」
お世辞のつもりで応えておいた。
柚布子は残っていた料理を食べていた。 料理のカテゴリーはどちらかと云うと和食である。 料理を柚布子の胃に落とすのにカクテルはベストの組み合わせではなかったが、重盛が頼んだということで無理やり飲んだ。 柚布子はバイオレットフィズが始めてであった。 甘ったるいがドライな感触もあった。 口当たりは良いが、やはりビールの方がましと思った。 しかし、この状況でビールに手を出すのは憚れたので、バイオレットフィズを飲んだ。
柚布子の箸が止まるころ次の料理が運ばれて来た。 どちらかと云うと洋食風の肉料理であった。 一同は自分の膳に戻り肉料理を食べ始めた。
柚布子は水分が欲しかった。 出来ればアルコールの無いものが欲しかった。 柚布子は園田が頼んだカシスオレンジを口にした。 肉料理なので組み合わせは悪くないが、これを飲んだら磯貝に烏龍茶を頼んでもらおうと思っていた。
飲み会でカシスオレンジは何度も飲んでいるので味は覚えていたつもりであったが、今日のカシスオレンジは顎の奥にに苦味が残ると感じた。 それは直前に飲んだヴァイオレットフィズのせいだと思った。 カシスとは違うリキュールのように感じたが、それよりオレンジの水分が欲しかったのでグラスを干した。
その様子を園田がじっと見つめていた。 その横では仲居が焼酎のお湯割りを作って、山田や末永に配っていた。 他の男性はビール一辺倒のようであった。
柚布子は園田に見つめられて姿勢を正さずには居られなかった。 席についてまだ10分は経っていないが、もう脚の痺れが始まっていた。
「その飲み物が好きなようだね、もう空になってる」
じっと見ていた園田が口を開いた。 ヴァイオレットフィズは少し残っていた。 柚布子はそれに気が付くと、慌ててそのグラスを取り口に運んで飲み干した。
「こちらの重盛さんが頼んでくれたお酒も美味しいですよ」
柚布子は重盛の方を見ながら笑顔で軽く頷いた。 何かに対抗しようとするのが柚布子の癖でもあり、欠点でもあった。
仕事上では時には機転の速い賢い女性に見えるが、外れると墓穴を掘ることもある。 柚布子は重盛に気を使ったつもりだが、園田にとっては敵対的な対応である。
「同じ物を、あのお嬢さんに」
園田は仲居にカシスオレンジの入っていたグラスを指さした。 カシスオレンジとは言わず「同じ物を」と言った時にまたニヤけた顔つきを園田はしたが、柚布子はそれが園田の癖だと思っていた。
柚布子は脚の痺れが顕著になって来たので紛らわす為に隣の磯貝のビールを腰を浮かして取り、磯貝に注ごうとした。 磯貝のグラスにはまだビールが残っていたが、構わず注いだ。 ビールを注ぎながらでも神経は脚にあった。 脚は立ち上がれる状態であった。
柚布子は立ち上り際に磯貝に
「戻ったら、私に注いでね」
そう言って重盛の方へ向かった。 足取りはまだ大丈夫と思った。 柚布子は甘ったるい口の感触を拭いたかった。 重盛と小宮山にビールの酌をし、戻って来ると磯貝がビールを注いでくれた。 それを一口喉に流し込むがいつもの爽快感はなく、悪酔いしそうな予感でそれ以上飲めなかった。
二杯目のカシスオレンジが運ばれて来た時には、膳の列は崩れ園田、山田、末永の年長組と重盛、小宮山、磯貝の若年組との座といった感じになって、その両方を柚布子は行き来した。 若年組にずっと居たかったが行き来することで胡坐の掛けない柚布子は脚を伸ばせるのであった。 口当たりに慣れたのか園田の注文するカシスオレンジを更に一杯飲んでいた。 そんな最中、柚布子の鞄から振動音が聞こえた。
柚布子は急いで鞄から携帯を取り座敷の外へと向かった。 柚布子は受話釦を押して廊下まで出るのにスローモーションでも見ているように長く感じた。
母屋に一番近い部屋の辺りまで来ていた。 視界もややぼやけて、脚も痺れていた。
「はい、生田です」
柚布子は最初に「まあ君」と言いそうになったのを堪えた。 久世からの電話に違いないと思ったから着信番号も確認しなかった。
「お仕事中申し訳ありません、遊佐です」
「あ、遊佐様、今晩は」
「すいません、久世より連絡の時間を指定されていたのですが、遅れてしまいました」
「あ、いいえ」
柚布子はあれから30分後に久世から電話があることを期待していた。 しかし、遊佐の説明で自分に代わりに遊佐に電話を掛けさせたのだと理解した。
「例の仕様はこちらで纏めさせて頂きますので、それを連絡するようにとのことでした」
「いいえ、わざわざご丁寧に有難うございます、それで久世さんは」
「あ、外からでした、取引先の方とご一緒かと」
遊佐の声急に元気がなくなって小さくなった。
「そうですか・・・」
「あの、」
「はい」
「いえ、それではお伝えしましたので、気をつけてお帰り下さい」
「ありがとうございます」
「失礼します」
柚布子は久世本人からではなかったので少し落胆したが、遊佐を使ってまで中座出来るようにしてくれたことが嬉しかった。
柚布子が座敷に戻ろうと踵を返したその時、中年の男性とぶつかり廊下に尻餅をつくように崩れようとしていた。
- 2014/11/01(土) 09:07:23|
- 序破急・中務
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いつもより早く酔いそうなのを自覚してアルコールの吸収を抑える為に料理を口にしたが、水分なしに料理だけを胃に落とすのは辛い。 この段階で烏龍茶を頼める間柄の連中ではないので自分のグラスを取ったが、空であった。
その様子に気が付いた末永が柚布子にビールを注いだ。
「すまんな、あまり無理するな」
末永はビールを注ぎなが小声で話し掛けた。 ビールをグラス中ほどまで注ぐと柚布子はコップを少し持ち上げた。 これ以上は注いで欲しくないという合図だ。 末永がビール瓶を自分の膳に置くと、柚布子がそれを取って末永に翳した。 末永のグラスも空いていたのだ。
「まだ、大丈夫です」
柚布子も小声で応えた。 実際はアルコールのない水分が欲しいところだが、見栄を張ることも癖になっていた。
「それに、今日はお見合いですから」
柚布子は末永をからかった。
「もう、また、からかうんだから」
柚布子は末永の困惑している表情を見て自然と笑顔になった。
柚布子と末永の会話は園田には聞こえないが、阿吽の呼吸で会話しているように見えて園田は嫉妬を覚えていた。 確かに柚布子がグラスを持ち上げた瞬間から末永のグラスにビールを注いでその合間に会話している一連の流れは自然で微笑ましくも見える光景であった。
「よう、お二人さん、本当は社内不倫の関係なんじゃないの?」
突然、園田が言い放った。 一同は呆気に取られた顔で柚布子と末永を見た。 しかし、磯貝は柚布子と仕事付き合いがあり柚布子の性格をある程度知っている。 だから柚布子が末永をからかったのだと分かっていたが、それを一同に説明出来ない分笑い顔になった。
「磯貝さんの様子では、そんな関係ではなさそうだよ」
山田が救援の言葉を挟んだ。 もっとも山田にとってもそんな関係の女性であっては困るし、仮にそうであったとしても自分の会社ではそういう素振りはして欲しくないという願望があった。
「これは部長、意地悪な冗談ですね」
末永はビール瓶を持つと膳の脇から正面の園田の膳の前へ行き胡坐を掻いて、ビール瓶を翳した。
「部長も、ビールを注ぎに来ないからって冗談キツイんですから、おひとつ」
末永も伊達に営業部長はしていなかった。 園田の前に座り込み、園田と山田を相手に注がれ注ぎながら話込み始めた。 話題はセクハラで解雇されるされないの下世話話になっていった。
柚布子は流石に営業部長だと関心しながら料理を口に運んでいたが、胸の支えはゲップを堪えていたので残って違和感があった。
それに加え柚布子には正座という責め苦が続いていた。 華道や茶道で慣れている女性ならいざ知らず、正座をする機会の無い柚布子にとっては責め苦以外の何者でもない。
男性は胡坐を掻いているが、女性でしかもスカートの柚布子にとっては正座でしかも前が割れないようにしていなければならない。
そんな時、柚布子の後ろに置いてある自分の鞄から着信の振動があるのに気が付いた。 掛けて来たのが誰かも確認せずに、携帯を鞄から取り出すと磯貝に目配せして部屋から廊下へと出た。
脚は辛うじて立って歩ける感覚を保っていたが、血流が一気に脚に循環し、少しでも動かすと痺れで倒れるにも倒れられない状態になった。 片手を廊下の壁について脚を動かないように支え、もう片方の手で携帯の受話釦を押した。
「はい、生田です」
「よ~う、ゆ~こー、どうだった?」
久世からの電話だった。
「今晩は、久世様」
柚布子は座敷からそう離れていないので丁寧な応対をした。
「なぁ~んだ、仕事中?」
「はい」
久世もその対応で状況を察した。
「大丈夫?」
「ありがとう、ございます」
「仕事中だったんだ、邪魔だった御免ね、また掛けるわ」
「い、いえ、打合せ中ですけど大丈夫です、丁度中座したかったので」
柚布子は小声で会話を続けようとした。
「へ~、そう~だったんだ。」
柚布子は少しずつ脚を引き摺るように動かし、宴の座敷から遠ざかるように移動した。
「それで、さぁ~、何の打合わせ?」
「え、まあ、別案件の打合わせです」
「そ~っかー、ゆうこがメインじゃないんだ、その打合わせ、中座出来るんだから」
「い、いえ、そういう訳ではないですけど、今は大丈夫です」
柚布子は母屋に近い所まで来たころで脚の痺れが取れ自由に動かせるようになていると感じた。
「打合わせの後はどうするの?」
「え? 真っ直ぐ帰りますよ」
「真っ直ぐ? 曲がって帰るんじゃないの?」
「え? どうして?」
「だって、旦那以外の誰かに逢うんじゃなかったの?」
「何、言ってるの? まあ君」
「だって、さぁ~、エッチな下着で旦那と逢うのかって聞いたら、違うって、言ってたじゃん、 だから誰かに見せたりしちゃってるのかな? って・・。」
「もう、そういう意味じゃないってば・・・、それの確認の電話なの?」
「慌てて帰って行ったからさぁ、どうしたのかな? っと思って電話したんだけど」
相変わらずセクハラ紛いの久世の言動だが、柚布子は自分を心配してくれてる事が嬉しかった。 久世は柚布子に対して人前ではSの如き仕事上の弱みを見つけ責めるが、二人きりになると優しい人に変身するのであった。 いつしか柚布子はそのペースに嵌り好意以上の感情を抱いていることを自覚していた。
柚布子が久世と電話している脇を仲居が円筒形のグラスに紫色のカクテルらしき飲み物と同じ形状のグラスにオレンジジュースをベースにした飲み物、それに焼酎のお湯割りセットらしきものを座敷へ運んでいった。
「まあ君、電話ありがとう、助かったわ」
「何? 打合わせで向かいの男がスカートの中覗いていたから?」
「もう、まあ君、酔ってるでしょ? 会社じゃないでしょ」
「いつものショットバー、柳沢にさぁ、呼び出されちゃってさ」
「・・・・」
「心配しなくてもいいよ、こっちはちゃんとやっておくから」
「御免なさい、私のことで迷惑かけて・・・」
「大丈夫、だいじょうぶ・・・ まだ打合わせに戻らなくても平気?」
「戻る、でも30分くらいしたら息が詰まりそうになるかも」
「がんばれよ、じゃ、な」
「うん、ありがとう、まあ君」
柳沢という名前で柚布子は一瞬にして酔いが醒めたように意識がはっきりした。 柚布子は久世の責めたり優しくしたりの会話をもう少し続けたいと思った。 電話を切った後に携帯の表示を見ると、不在着信3件の表示が出ていた。 どれも久世からのもので柚布子が園田達を迎えたころから定期的に掛けて来ていたものだった。
柚布子はそれを見て久世への思いが深くなっていると感じていた。
- 2014/11/01(土) 09:06:01|
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「弥勒亭って駅の反対側の店だよなぁ」
英生は新聞のスポーツ欄を見ながら肩に寄りかかっている柚布子に聞いた。 「うん」という返事が返ってくると思っていたが、
「え? 二駅先よ」
「違うの?」
英生は驚いた。 実は心配になって英生も同じ派遣仲間と弥勒亭に行ったのである。しかし、山田や重盛を見掛けることは無かった。 座敷の方も気をつけて見張っていたが、ついに発見出来ず二時間の飲み放題が終わり英生一人酔えずに帰宅したのであった。
「料亭みたいな造りのお店だったわ」
「料亭ねぇ」
柚布子はあまり弥勒亭別邸の造りを憶えていないのに気が付いた。
「それに、座敷なんだけど、テーブルじゃなかったの」
「テーブルじゃない? 何、それ・・」
「うん、膳だったの」
「そっか、じゃずっと正座だったんだ」
「そう、テーブルでも正座だったと思うケド・・・」
「スカートだったから大変だったでしょう。 まさか覗かれたりとか」
「・・・・」
柚布子は何か思い出してはいけない記憶があるのではと思った。
-弥勒亭別邸-
柚布子達が席につくと、仲居が3人ビールを持って入ってきた。
膳はSI会社の園田達と柚布子達とは対峙する形で用意されていた。 SI会社は上座から園田、山田、重盛、小宮山の順で柚布子達は上座から末長、柚布子、磯貝の順である。 柚布子の膳だけが他より高さのあるもので脚にはめくら板らしき物が施してある。 これはスカートの女性用に誂えられたものである。
末長が挨拶をして一同ビールを口に運び、膳に用意されていたお通しを食べ始めた。 一同がお通しを食べ終わった頃に料理が運ばれて来た。 料理を運んで来た仲居頭が柚布子の脇に来て小声でなにやら話しかけた。
柚布子は軽く礼を言うと磯貝の後ろを回って、座敷の中央から園田の膳の前に来た。 仲居頭もその後を新しいビールを持って従った。 柚布子にお酌をするようにアドバイスしたのであった。 先乗りしていた磯貝がこういう場が不慣れなので指導を依頼していたのであった。
園田は再び舐めるように柚布子の身体に視線を這わせた。 柚布子はスカートの裾を押さえながら正座すると仲居頭からビールを受け取った。
「お一つ、どうぞ」柚布子は頭の中で何と言えば良いか迷っていた。 仲間内では「ご苦労様」とか「お疲れ様」と言ってビールを差し出せば相手は「ありがとう」と言ってグラスを差し出す。
しかし、この場合どうしたら良いか迷った。
「よろしくお願いします、ビールでよろしいでしょうか?」
「ああ」
柚布子の問いに無愛想に園田は応えてグラスを差し出した。 柚布子は少し膝立ちするような格好で園田にビールを注いだ。
園田は注がれたビールを一気に飲み干すと、グラスを柚布子に差出し、柚布子の手からビール瓶を奪った。 このグラスで返盃を受けろという仕草である。
それを見た仲居頭は柚布子の膳から柚布子のグラスを取り由布子に差し出した。 それを見た園田は幾分ばつが悪そうに自分のグラスを自分の膳に置いた。
「頂戴します」
柚布子はグラスを両手で捧げるように園田に差出た。 園田は泡がなるべく立たないようにビールをグラスいっぱいに注いだ。 柚布子は注がれたビールを時間が掛かったが一気に飲み干した。
「ほう、なかなかイケる口のようだな」
園田は感心したように言ったが飲み方からイケる口でないのは分かっていた。 再びビール瓶を柚布子の前に差し出した。 柚布子は片手で拒否の意思表示をしたが、園田は更にビール瓶を突き出し、催促した。
仕方なく柚布子はグラスを園田に頂くように差し出すと、同じように泡を立てずにグラスいっぱいに注いだ。 柚布子は皆に分からないように息を吐くと、グラスに口を付け傾けてビールを喉へと流し込んだ。
柚布子は3度息継ぎをしてようやくグラスを空にした。
「やっぱり、足らないようだな」
園田がそう言うと三度ビール瓶を柚布子に差し出した。
これには流石に柚布子も閉口したが、相手が相手だけに断り難い。 柚布子は暫し固まった。 それと同時にこれまで立て続けに3杯ビールを飲んだことになり、酔い初めていることを感じていた。 薄っすらと頬も紅潮しだしていた。
「園田くん、その位にしてあげたらどうだ」
山田の声に柚布子は救われた。
「そんなに飲ませたんじゃ、私の返盃を受けられなくなるよ」
山田はさらに続けた。
「さあ、私にも注いで下さい」
そう言うと柚布子にグラスを差し出した。 柚布子は少し立ち膝のまま山田の前に移ると仲居頭から新しいビールを受け取った。 園田は苦虫を噛み潰したような表情をして山田を見ていた。
「よろしくお願いします」
柚布子は山田にビールを注ぐと、山田は一気に飲み干した。 そして、柚布子からビール瓶を受け取ると、柚布子がビール瓶の代わりに持ったグラスの3分の1程度注いだ。 そして、
「口を付けるだけにしなさい」
そう、柚布子に囁いた。
「頂戴します」
柚布子は一口だけ飲むと、お辞儀をした。 山田が優しく微笑んで自分を見つめていることに柚布子は安堵を感じた。
「こーた、君も注いでもらいなさい」
そう言う山田の声と共に柚布子は重盛の前へ移動した。 重盛のことを浩太と下の名前で普段呼んでいることを知ると急に柚布子は重盛に対して親近感を持った。
重盛はやや照れながらグラスにあった残りのビールを飲み干し、柚布子の前に翳した。
柚布子は自然と笑みがこぼれて、更に頬が紅潮しているに違いないと思った。
「よろしくお願いします」
「こちらこそ」
重盛はビール瓶を持つ柚布子の指のネイルに見とれていた。
柚布子が注ぎ終わると重盛は一気に飲み干し、息を吐いた。 そして、首を二度縦に振った。 その様子を見て柚布子は笑い出しそうになった。 なんとも子供のようにほのぼのとした仕草であったが、左の小宮山の視線を感じて笑いが押し留められていた。
柚布子が小宮山の前に来ると仲居頭が新しいビール瓶を差し出した。
既に、小宮山はグラスを空にして片手で持って準備していた。
「よろしく、お願いします」
柚布子がビールをグラスに注ぐと小宮山は柚布子の手先から腕、胸へと視線と走らせた。
小宮山は注がれたビールを半分飲むと、柚布子の手からビール瓶を取ると、園田と同じように柚布子にその瓶を向けた。
柚布子は自分のグラスを手に取り、小宮山に翳そうとすると
「空けてほしいな」
そう小宮山は柚布子に告げた。 柚布子はグラスの残りのビール飲み干したが、げっぷが出そうで苦しかった。
「頂戴します」
小宮山は柚布子のグラスになみなみとビールを注いだ。
柚布子は直感的に少しでも口を付けなければならない状態と分かっていた。 姿勢を正して4人に酌をし、返盃を受けた。 柚布子が通常飲む量に達してはいないが、ピッチは早い。
柚布子はゲップを抑えながらグラスを口に運び傾け喉に流し込んだ。
最初の一口は飲めたが、息継ぎの時にゲップが漏れそうになった。 それを堪えようとしたがタイミング合わず咽たようになり傾けたグラスのビールが少し溢れた。 溢れたビールは柚布子の左顎から筋となって喉から更に下へと落ちていった。
小宮山はそれを卑猥なものでも見る目で追っていた。 さらに目を下に落とすと、ビールが飛沫になって飛んだのであろう、胸に小さく濡れた痕を作っていた。 角度によっては見辛いだろうが、小宮山の目には濡れたブラウスからブラジャーの淵がくっきり映っていた。
柚布子は慌てる様子もなくハンカチで口元を拭った。 重盛も山田も見て見ぬふりをしていた。 丁度次の料理が運ばれて来たところであった。
「どうぞ、料理を召し上がって下さい」
山田の声に促されて柚布子は自分の膳へと戻った。
柚布子の膳には脇にお盆が用意されていて前の料理がそこに置かれていて、今運ばれて来た料理が膳へと並べられていた。 最初の一杯以降柚布子は胃にビール以外を入れておらず、胃壁はアルコールを効率よく吸収し、肝臓に送られていた。
胃壁にアルコールが染み渡るのを感じて柚布子はいつもと違う酔いが襲ってくる予感がした。
- 2014/11/01(土) 09:04:54|
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前回までのあらすじ;
『とある機器販売会社に勤める(旧姓)生田柚布子(31)は夫が派遣されている得意先でもある会社の担当とになったが、前任者のミスの為出入り禁止となっていた。 その出入り禁止を解く手打ち式が弥勒亭別邸にて昨夜行われた。 その手打ち式から柚布子は心神喪失の状態で帰宅した。 次第に蘇る記憶、肌に既に刻まれていることを知ることに・・・』
「ソノダってどんな人?」
英生は新聞を見ながら柚布子に聞いた。 柚布子は台所で朝食の後片付けをしながらカウンター越に話し始めた。
「うん、あんまりいい感じの人じゃないわ」
「そうなんだ、購買は小宮山しか知らないからなぁ」
「お酒は好きなのか、強いみたい、返盃で大変だったわ」
「じゃ、ソノダに大分飲まされんだ」
「新任だから仕方ないわね」
「山田部長も口悪かっただろ?」
「全然、優しい人だったわ、それに重盛さんも」
「へぇ~、山田が優しいとは、よっぽどソノダっていうのが嫌なヤツなんだ・・」
「うん・・・」
柚布子は食器洗い機のスイッチを入れると、ソファーの英生の隣に座り英生にしな垂れるように寄りかかり新聞を覗きこんだ。 新聞の記事はピントが合っていないようにボヤけていた。
それもそのはず、柚布子は園田とのやり取りを思い出していたからである。 購買部と相手をするのは主に営業の仕事ではあるが、柚布子は購買部には足を運びたくないと思った。 夫が派遣されている会社のことでもあるのでそのことを夫の前では言えなかった。
-弥勒亭別邸-
柚布子は園田の前に来ると膝を揃えながら脚を折り正座する動作に入った。 園田は改めて品定めをした。 やや面長の顔に園田好みの唇。 その唇にはピンクのリュージュが塗られている。 園田の脳裏ではピンク色が濃いオレンジか真っ赤なものに置き換えられ男好きするものになっていた。 さらにその唇の左下の黒子も園田には嬉しいものだった。 園田は自らの舌でその黒子を弄んだ後に唇へと進める妄想をしていた。
黒い髪は蛍光灯によって緑に光っていた。 サイドポニー風に束ねた髪は先ほどのお辞儀で胸の前へと垂れていた。 その髪に目をやると自然と淡いブルーのブラウスの開いた胸元が目に入ってくる。 大きいとは言えない胸であるが女盛りの30代の艶香が胸元から漂っていた。
園田は僅かに黒いストッキング越につま先から腿までを素早く舐めるように視線を送った。 足の指には紫色のようなペティキュアが塗られていてストッキング越に見るそれは独身とは思えぬ色気があった。 園田は折りたたまれる脚をスローモーションのように感じながら見ていた。
膝が畳につくと、園田の視界の中に両太腿が埋め合わせられない逆三角形のスカートの奥が入って来た。 園田は隣の山田に気付かれないように上体を仰け反らせた。 園田の視界の中のそれは決してハッキリしたものではなく、ただの逆三角形の物理的な光の反射の結果でしかないが、論理的な意味は大きい。
園田だけがそれを満喫出来ているのである。 隣の山田からは見えない角度であった。
園田は柚布子が独身ではなく人妻ならもっとそそるのにと思っていた。
柚布子は前任者の不祥事のこともあり、三つ指をついてお辞儀をした。 お辞儀を終わって園田の顔を見ると仰け反ったようにニヤついていた。 その視線が自分のスカートの裾に注がれているのに気が付いた。
柚布子は親会社に転籍してから外周りをするようになって、挨拶や打合せの時に男性の目線が何処に注がれるのかは分かるようになった。 そして、それを自分から、あからさまな動作で指摘するようなことは相手に自意識過剰と思われ良い印象を与えないことがあることを分かっていた。
つまり、相手が気が付いていないのに見られていると勘違いして慌ててスカートの裾や胸元を手で隠したりして相手の気分を害させてしまうことである。
柚布子は名刺を差し出す為に両手を畳について正座の姿勢のまま前へ進もうとした。 その時スカートが視野に入った。 裾を気にせずに正座した為少し上にずり上がっていたのに気が付いた。 経験的にスカートの中が見えていると思った。 しかし、相手がスカートの中を覗き込んでいるかどうかは分からない。 ましてや初対面の得意先でる。
柚布子は気付かれていないフリをすることにした。
名刺を差し出すことが出来る距離になると、園田の視界からスカートの中は角度的に消えていった。
「生田柚布子と申します、よろしくお願いします」
柚布子は両手で名刺を差し出すと園田はその指先を暫し眺めた。
「人妻でこのネイルはないな」と思い、片手でそれを受け取った。自分の名刺は渡さない。
「園田です」
柚布子にとってそれは幾度も経験のあることなので気にもせずに左隣の山田へ正座のまま移動した。
園田の時のように下がってお辞儀をしようとすると、山田は手で制して正座すると準備していた名刺を差し出した。
「製品企画部の部長をしております、山田です」
「生田柚布子と申します、よろしくお願いします」
柚布子はいつも行っている名刺交換になったのでほっとした。 が、右側からのねちっこい山田の視線は感じていた。
「よろしくお願いします。それから、彼が貴女の窓口になる重盛主任です」
山田は部下の重盛を紹介した。
柚布子は同じように正座のまま横に移動し、重盛の前に来た。 これが私のお婿さん候補の・・・と、緊張の中にも笑みがこぼれそうなのを堪えた。
重盛は身長は175センチはあろうかという大柄であるが、顔は穏やかな表情でどちらかというとイケメンの方である。 柚布子はどことなく好感を持った。
「生田柚布子と申します、よろしくお願いします」
「・・・・」
柚布子は名刺を両手で差し出した。 重盛は暫くその名刺の指先に見とれていた。 それもそのはず、重盛の会社で柚布子のようなネイルをしている女性は居ないからである。居たとしてもかなり控えめであった。
「し、重盛といいます。よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
生田柚布子、アシスタントマネジャー。 重盛は横長の名刺をじっと見つめていた。
重盛浩太、柚布子もまたその名刺を暫く眺めていた。 そして自分でも僅かに微笑んでしまったことを自覚したその時、左から視線を感じた。 もう一人いた小宮山である。
柚布子は再び正座のまま横に移動し、小宮山の前へ来た。
「生田柚布子と申します、よろしくお願いします」
同じように柚布子は名刺を差し出した。 最後ということもあって、所作は雑になっていた。
「購買部の小宮山です」
小宮山はおまけのような名刺交換に感じて
「購買では私が貴女の担当です」
山田の言葉に対抗するようにいった。
「はぁ・・」
柚布子はすこし呆気に取られた顔をしたが、少し下がって浅くお辞儀をした。園田の時と同じ距離であることに柚布子は気が付いたのでスカートの裾を両手で押さえていた。
顔を上げると残念そうな小宮山の表情が見えた。
柚布子が立ち上がると、山田は末長と磯貝に手で善を示しながら「どうぞ」と着席を促した。 柚布子もそれに続いた。
それと同時に廊下で控えていた数人の仲居が瓶ビールを持って入って来て全員のコップに注ぎ始めた。
- 2014/11/01(土) 09:03:48|
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前回までのあらすじ;
『とある機器販売会社に勤める(旧姓)生田柚布子(31)は夫が派遣されている得意先でもある会社の担当とになったが、前任者のミスの為出入り禁止となっていた。 その出入り禁止を解く手打ち式が弥勒亭別邸にて昨夜行われた。 その手打ち式から柚布子は心神喪失の状態で帰宅した。 次第に蘇る記憶、肌に既に刻まれていることを知ることに・・・』
柚布子は一足先に起きてシャワーを浴びた。 熱い湯が現実を実感させる。 数時間前には夫の舌が這っていた乳房に熱いシャワーを当てた。 さらにその前には見知らぬ男の舌が這っていた記憶が洗いながされていった。 股間も微かに誰かの指や熱い物の感触が思い出されたがボディーソープの泡が一旦は消し去っていった。
柚布子がシャワーを終えて、脱衣場から出ると、英生が起きて来て入れ替わりで脱衣場に入っていった。
英生がシャワーを終えると朝食の用意が出来ていた。 祭日ということもあって遅い朝食となった。 二人は無言で食事を始めた。 英生は明け方柚布子を抱いたことで少し満たされていたが、柚布子はまだ頭がスッキリしていなかった。 それに記憶の整理が出来ていなかった。
柚布子は英生からの問いかけを待っていた。 何処から話し始めていいか分からないからだ。 柚布子はトーストを頬張る英生を見つめた。
「夕べはどうだった?」
やっと英生が口を開いて柚布子はほっとした。
「どうって?」
「だいぶ、酔って帰ったみたいだから」
「うん、なんか飲み慣れないお酒飲ませれて、酔ったみたい」
「そうなんだ、焼酎かな? ところで誰が来たの?」
柚布子は英生に聞かれながら記憶を辿った。 昨夜も記憶を辿っていたような気がした。
「購買部の園田副部長さんと小宮山さん、製品企画部の山田部長さんと重盛さん」
「ソノダ? 知らないな」
「そうなの、重盛さんっていう背の高い人が担当らしいの」
「ああ、やぱり重盛ね」
柚布子は昨夜の手打ち式のことをゆっくり思い出しながら英生に話し始めた。
-弥勒亭別邸-
離れの一室がこの夜の手打ち式に用意されていた。 母屋の座敷でも良かったのだが、この日は他には一組の客があるだけだったので離れが用意された。 部屋の大きさは16畳、隣の8畳の部屋とは襖で仕切られている。 同じ作りの部屋が3組あり、周りを回廊のように廊下があり趣の異なる庭を眺められるようになっている。
離れは貸切も同様なので廊下側の障子が開け放たれて、そこなら出入りするようになっていた。
仲居が末永の横に並びお辞儀をしてSI会社の連中を部屋の中へと案内した。 順番は園田、山田、重盛、小宮山である。 園田はお辞儀をしている柚布子の前で髪の毛の匂いでも嗅ぐように息を吸い、つま先から順に品定めをした。 柚布子も歩が一瞬止まり視線が刺さるのを感じていた。
園田達が上座から順に着席すると、末永が部屋の上座側に近い畳に正座した。 それに習って磯貝と柚布子が続いた。 柚布子はその時に4つ視線を感じていた。 廊下から部屋に入り畳に正座する自分を4人の男が視姦しているのである。
園田達は柚布子を始めて正面から見た。 園田はニヤニヤしながら柚布子を品定めした。 勿論、園田だけではなく他の3人も自分なりに柚布子に視線を集中させていた。
身長は160センチ、体重40数キロ、バストは84、5のBカップと園田は読んだ。 濃い灰色のスーツに淡いブルーのブラウス。 髪は丁度乳首辺りまであるに違いない長さのものがサイドポニー風に束ねられている。 今時にしては染めていない黒髪が際立って見えた。 アップにしてシャワーを浴びる姿を園田は想像して更にニヤニヤしていた。
そして、男性の誰もが気になる脚である。 とびっきりの美脚ではないが、僅かに黒いストッキンギに覆われたそれは白い肌に違いないと誰もが想像した。 正座すると腿が露になり両腿のスカートの切れ込みが色気を漂わせている。
ややタイトぎみのスカートのお陰で両脚の隙間はデルタに模ってスカートの奥を覗かせるが、正座する直前に両方の掌によってそれは隠されてしまった。
男達の視線は隠されたデルタに集中していた。 そのデルタを隠した掌の先にはネイルアートが光っていた。 淡いブルーの下地にピンク系のジェルで飾られていた。 それを見た誰もが人妻とは思わなかったに違いない。 誰もがあのネイルで家事をしているとは思わないからである。 そのネイルの手にはハンカチではなく名刺入れが指で挟まれていた。
末永が挨拶を行い柚布子を紹介した。
「生田柚布子と申します よろしくお願い致します」
柚布子はお辞儀をして初めて園田達に顔をあげた。 予想通り男達は柚布子を見つめていた。 柚布子はこの時初めて生贄になったような気分になった。 今まで何度も客先に行き同じように紹介されたが、この日は弥勒亭別邸という場所のせいでもあるのかその時とは全く違った雰囲気を感じていた。 夫の英生が心配していた事がなんとなく分かるような気がした。
末永の口上も手打ち式の為の宴ではなく柚布子の紹介に重きをおいたものであったのもこの宴が柚布子の為に開かれている錯覚を与えた。 それだけ柚布子に華があるとも言える。
この日の座敷はテーブルではなく膳が用意されていた。 特に指定のない限りこの別邸では膳が既定であった。 膳は対峙する形で用意されていた。 柚布子は紹介されて名刺交換を行わなければならないが、どうすべきか悩んでいた。 このような膳の席での名刺交換をした経験がないのと想定していなかったからである。 本来であれば名刺交換はSI会社で行われていたはずであったが、柚布子が他社との打ち合わせを優先した為ここでの名刺交換となったのである。 後から考えればここで無理に名刺交換をしないのがマナーとしては良かったのかも知れない。
園田達は既に膳の前に座していた。 わざわざ立ち上がって貰って膳から少し離れて名刺交換するのがマナーとしては良いのかも知れない。 園田以外は名刺の用意をしていつでも立ち上がれる体制に思えたが、園田は胡坐を崩すそぶりも見せずにいた。 柚布子はどうしたものかと仲居に膳越に名刺を渡しても失礼にならないか小声で尋ねた。 仲居もマナーを熟知している訳ではない。 座ったままなら膳越に渡してもお酌をするのと変わらないのでそうするように答えた。 仲居も園田の態度にはいささか呆れたようであった。
柚布子は「失礼します」と言ってやや中腰のまま座敷の中央を園田の膳の前と進んだ。 4人の男性の視線が柚布子のスカートの裾に集中しているのが分かった。 4人共柚布子が立ったままで名刺を差し出すとは思っておらず、一旦は正座してお辞儀をするだろうと思っていた。 そうであれば再びデルタが見られるのである。 ましてや名刺を両手で差し出すのだから手でスカートの裾は押さえられないはずである。
柚布子は膝を揃えながら脚を折り正座した。 距離はお辞儀をした時に膳に頭が被らないように離れて正座した。 柚布子は三つ指をついてお辞儀をすることに集中していたのでスカートの裾を押さえることをしなかった。
園田は誰がみても仰け反っていると思える体勢でニヤニヤした。 膳からすこし離れて正座したことが園田の満足感を高めていた。 園田の視野にはデルタの奥が映っているに違いない。
- 2014/11/01(土) 09:02:53|
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『前回までのあらすじ;
とある機器販売会社に勤める(旧姓)生田柚布子(31)は夫が派遣されている得意先でもある会社の担当とになったが、前任者のミスの為出入り禁止となっていた。 その出入り禁止を解く手打ち式の日、柚布子が現在担当している○○○システムで商売敵の製品を触っているところを見つかり弱い立場に追い込まれてしまった。 そして怪しげな弥勒亭別邸でいよいよ手打ち式が始まろうとしている。 柚布子はドス黒い男たちの欲望に包まれようとしているのをまだ気がついていない・・・』
柚布子は夢の中を泳いでいるような気がした。 何処かに寝かされているのだろうか。 鳩尾あたりが少し痛い。 結構飲まされたみたいだ。 しかし、それより身体の芯が熱くなり始めていることが気になった。 乳首も硬くなって誰かに揉まれている錯覚を覚えた。 それにしても今日は色んなことが起きたと記憶の一つ一つを手繰っていった。 時より記憶が薄れるのは酔いのせいか、もう自宅に帰りついたのかも分からない。
○○○システムのキッティングセンターで最新のFXを操作した時の興奮、そして、○○○通商の柳沢に迫られたことが蘇って来た。 柳沢は柚布子の顎をしゃくり、その手を胸へと進めブラウスの釦を一つづつ外して行った。 そしてブラジャーが露になると、ブラジャーを上にずらし、柚布子の乳房が柳沢の目の前に晒された。 柳沢は円を描くように乳房の周りを愛撫し始め、その手を顎へと戻し、柚布子の顎を上に向け、唇を近づけた。 そして、迷うことなく柚布子の唇に重ねた。
違う、違う、と柚布子は否定したが、口は塞がれて舌が柚布子の唇を割って来た。 そのリアルな感触が、久世の後ろに逃げたのは記憶違いで実際は唇を奪われたと錯誤させた。
それにしてもリアルな感触を伴った記憶だと柚布子は思った。 記憶の中ならと、柚布子は口を開け舌を動かした。 柚布子の舌に合わせて相手の舌も応じて、口を吸い始めた。 夢なら無味無臭だが、酒の匂いとそれに微かに煙草の匂いがした。 夫の英生ではない。 英生は結婚する時に煙草を止めていたからだ。 誰なの? そう思いながら柚布子は夢の中で舌を絡ませ続けた。
柚布子は夢の中にまだ居ると思った。 記憶を辿ろうとするが、リアルな感触がそれを邪魔させる。 キスだけでなく胸も同時に揉まれていると知った。 気が付くと乳首は硬くなって、指で弄られている。 柚布子は口が開放されると、薄目を開けた。
横を向いた柚布子の視界には自分のスーツの上着が脱ぎ捨てられていた。 自宅に戻ったのか? まだ背景が霞んでよく分からないが上着は畳の上にある。 胸の上には人の気配がして両方の乳首の支配者は交互に指から唇と舌に交代していった。 胸の上の黒い頭の影がまだぼんやりしているが、柚布子は懸命に記憶を辿った。
○○○システムのキッティングセンターを出ると遊佐に会った。 その遊佐と駅まで戻った。 遊佐は急用で本社に戻ると言っていたが、柚布子にはなんとなく嘘だと分かっていた。 柚布子のその先の記憶が蘇ろうとしていたが、 急に胸の上が軽くなったので、また途切れてしまた。
視線を胸に向けるとブラウスがはだけ、ブラジャーは上にずらされた格好になって、起き上がらなければその先は柚布子には見えない。
胸にあった人の気配は下半身へと移動し、柚布子のスカートの中にあった。 柚布子にもスカートの中に誰かの手が入って、パンストとパンティを脱がそうとしていることが分かった。 無意識に手がそれを阻止しようと下半身を押えた。
なんでこんなことになっているのか、下半身を押さえながら思った。 弥勒亭別邸に来る前に末永から独身ということにしてくれと頼まれたことを思い出した。 それと今の状況が結び付かない。
手で押さえても容赦なくパンストとパンティーは膝まで降ろされてしまった。 そして腿を伝って手が柚布子の秘部に達した。 それと同時に胸が再び重くなり乳首が交互に吸われたり、舌でころがされ始めた。 柚布子はもはや記憶を辿る集中心がなくなり、込み上げて来る快感に耐えられなくなって来ていた。 秘部に達した手はその長い指を柚布子のヴァギナを掻き分けゆっくり膣に入って来た。 一旦入ると出たり入ったりを繰り返していた。
柚布子はこの快感に身を委ねるべきか、この状況がどういうことなのかをはっきりさせるべきかの葛藤と戦っていた。 柚布子にも指が柚布子の分泌液によって滑らかに動くようになり、太い指がクリトリスを刺激しているのが分かっていた。
柚布子は夢の中から現実に戻りつつあるのを感じていた。 もう少しで状況が把握できそうであった。
弥勒亭別邸に到着して部屋の前でSI会社の人達をお辞儀をしたまま迎えた。 最初の一人が柚布子の前で僅かに立ち止まったのをお辞儀をしたままの柚布子にも分かった。 それはそう遠くない記憶のはずであったが、柚布子の膣に入った指が膀胱のあたりの肉襞を激しく擦り始め、クリトリスも強く押し付けられて、もう声が出てしまって喘いでいた。 そして周りの状況が見えてきた瞬間、快感に頭が白くなった。
頭が白くなったのと同時に複数の女性の声と大きな音がして、着物を着た女性達が柚布子の周りを取り囲んで柚布子の身体に複数の手が動いていた。 しばらくして柚布子の身体は中に浮いたような感覚になり記憶が途切れた。
「ゆうこ、ゆうこ」
柚布子は夫の英生の声で目を開けた。 カーテンの間から薄日が射していた。 この窓に薄日が射すということは朝陽である。
「ごめん、ゆうこ」
「何が? どうしたの?」
「夕べ、酔って帰えって来た柚布子を見てしたくなっちゃった」
気が付くと柚布子は全裸にされていた。
「何時、脱がしたの?」
「昨夜、でも柚布子が寝ちゃったから、今朝まで我慢してた」
昨夜、柚布子がハイヤーで帰って来て、ベッドに倒れ込んだ。 英生は柚布子の服を脱がせた。 心なしか服装が乱れていたように思えた。 パンストを脱がす時にに微かにパンティに沁みが付いていた。 英生は胸騒ぎと同時に自分の男根のカリの辺りがウズウズし始めているのに気がついた。 英生は柚布子を全裸にすると、身体の隅々まで調べた。 勿論、小陰唇も指でこじ開けて調べた。 医者でもないので、診て判るものでもないが、なんとなく英生は安心していた。
全裸の柚布子を見ていたら、英生は手打ち式の座敷のテーブルの上に大の字に寝かされている柚布子を想像してしまった。 そしてSI会社の連中に視姦されている光景が脳裏に浮かんだ。 連中も全裸で自分で自分の男根を扱いていた。 そして柚布子の身体に白濁した液を放っていた。
英生も同じことをした。 終わった後にに嫌悪感に苛まれた。
柚布子の小陰唇にはすでに英生の指が這っていた。 そして膣口に入って愛撫していた。 柚布子はさっきまでに夢は英生の仕業だと思った。
「ばかね」
そう言うと、柚布子は英生の口に唇を重ね吸い合った。 そして、英生の乳首を舌で愛撫し、さらに英生の男根へと口を運び頬張った。 いつもの夫婦の営みである。
柚布子が枕元の避妊具を英生の男根に被せると、いつもの通り柚布子は仰向けになり英生を迎い入れた。 英生はそのままの姿勢で柚布子にキスをした。 柚布子も応じて激しく吸い合い、舌を絡めた。 柚布子はやはり英生は煙草の匂いがしないことを認識した。
二人はいつもの夫婦の営みを終えると、再び眠りに就いた。 今日は祭日で会社は休みであった。
- 2014/11/01(土) 09:01:41|
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弥勒亭は和風の料理店である。 席は4~20席の全席個室である。 一人では入れないが2人からなら入れる。 勿論予約がなくても、一見の客でも空いている席があれば利用することが出来る。 SI会社の古株は良くここを使う。 店を入ったところに弥勒菩薩が置いてある。 経営者に弥勒信仰でもあるのでろうか。 その経営者は以前有名所でホステスをしていてその時の財とコネでこの店を始めたという噂である。
弥勒亭 別邸 それは弥勒亭の姉妹店である。 経営者は弥勒亭経営者の妹であるからまさに姉妹店である。 しかし、唯の姉妹店ではない。 弥勒亭と違い一見さんや予約の無い人は利用出来ない。 以前、料亭だったところを買い取って改造して、席は幾つかの部屋毎に離れ形式になっている。 以前の料亭の名残なのか殆どが二部屋の続きになっており、大人数の時は二部屋を開放して使う。 棟によってはトイレやシャワー室まで完備している。
以前は、別邸を一般の人が利用することは稀であった。 殆どが社用族の接待の場として使われていた。 都心ではないことから料金も割安なこともあり色んな社用族に今でも利用されている。 とは言ってもこのご時世、以前のように飲んで接待して密談をするような社用族はいない。 今は色事が伴わないことは無いと言っていい。 宴席の隣の部屋には布団が敷いてあるような事もあったに違いない。
慰安旅行、失われた10年以来すっかりその言葉を耳にしなくなり、都心の近場の温泉街は閑古鳥が鳴いている。 独自の特色を持たない社員旅行頼みの旅館やホテルは閉館せざるを得ないご時世になってしまった。
では、社員を慰安するような行事が無くなったかと言うと、そうでは無く、形を変えて予算も減らして続いている。 会社の近場のレジャーセンターでの娯楽や、バーベキュー大会等である。
それでも以前のコンパニオンを呼んでのどんちゃん騒ぎを忘れられない連中はこの別邸で羽目を外すのである。 コンパニオンは別邸が予算に応じて手配してくれる。 だが、別邸は旅館ではないから泊まることが出来ないので利用する連中はそう遠くない範囲に限られている。 昼間のレクリェーションの帰りに寄って、遅くとも夜の9時には帰るのである。
別邸にとっては社用族の隙間を埋める重要な顧客であり、会社の行事に絡めないで仲間内で宴会をするリピーターはお得意様になって来ていた。
この日もお得意様の宴会の予約が入っていた。 コンパニオンも5、6名用意されていた。
末永と柚布子がSI会社より先に別邸に到着した。 部屋に案内した仲居が仲居頭に柚布子のことを告げた。 仲居は柚布子がコンパニオンと勘違いしたのである。 この辺りのコンパニオンはいかにもホステスですというような格好はしていない。 タクシーでやってくると言っても目立つからである。 殆どのコンパニオンは正業ではないからいかにもという格好はしていないのである。
自前でコノパニオンを手配されては別邸にとって問題である。 仲居頭は磯貝を呼んで確認した。 仲居頭も柚布子を見て納得した。 一瞥しただけではコンパニオンに見えるが、化粧を良く見ればコンパニオンのそれとは違っていた。
部屋に案内された後に柚布子は化粧室に向かった。 今日は午後会社を出てから移動やらで化粧を直す時間が殆ど無かったからである。 柚布子は仲居頭に化粧室の場所を聞いた。 仲居頭は丁寧に母屋の近くの化粧室まで案内してくれた。 手打ち式が行われる棟にも化粧室はあるが、小さく男女兼用なので、広い女性専用の方に案内したのであった。 それが後で不運を招くとに柚布子も仲居頭も知る由もないことであった。
化粧室にいる柚布子のところに仲居頭がSI会社が到着したのを告げに来た。 仲居頭は事情をある程度聞いていたので、柚布子達が出迎えられるようにSI会社には玄関で足止めをしておいた。 柚布子は化粧直しを終えると足早に部屋戻って行った。
SI会社のメンバーは製品企画部の山田部長、重盛、購買部の小宮山とその上役の園田副部長である。 実は、最初の予定では会社の近くの弥勒亭であったが、園田が小宮山から新任が女性と聞くや別邸に変更させたのである。
購買部の園田は食えない人間である。 社の中でも浮いていた。 というのも園田は会社の主要出資先の銀行からの口利きで購買部の副部長の席に就いていた。 仕事らしい仕事はしていない。 唯一仕事らしい仕事と言えば、接待をすることと、されることである。 この別邸のお得意様と言っていい。 だから直ぐに予約が取れたのである。
噂では園田は大手総合電気会社の調達部にいて取引先と癒着し過ぎて問題を起こしてその会社を追われたらしい。 新任が女性と聞いて直感が働いたのであろう。 ましてや得意先ではなく取引先なら上から物が言えるし、無理を言った場合でも別邸なら自分の我侭が通ると思ったのである。
確かに園田はここで得意先に女を抱かせたこともあったし、取引先に女を要求したこともあった。
だが、そういう場合の女は所謂その手合いの女であって柚布子のような素人ではない。
園田にとって邪魔なのは山田である。 勿論、小宮山や重盛も園田のようなことをする男ではない。 助平なことは好きでも節度はきちんと持っているからである。
園田が来たことでお上直々に挨拶に出て時間を繋いだ。 その横をこれも常連の大学の同期生仲間8人が到着し、仲居に先導されて別の棟へと案内されて行った。
仲居頭がお上に目配せすると園田達も部屋へと案内されて行った。 園田達が部屋へと消えると柚布子のようなスーツ姿の女性達を乗せたタクシーが到着したのであった。
園田達は部屋へと向かう廊下を仲居の先導で向かっていた。 廊下を曲がると、園田は部屋の前に外から末永、磯貝、柚布子の順に廊下に並んでお辞儀をして迎えている様子が遠目に見て来ていた。 やがて、仲居がお辞儀をしている3人に並んで園田達を部屋へと案内した。 園田が柚布子の長い髪を見てニヤリとしたのを仲居は見逃さなかった。
いよいよ、手打ち式が始まるのである。
- 2014/11/01(土) 08:59:08|
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末永と磯貝はSI会社を出て一旦最寄り駅の喫茶店にいた。
末永が磯貝に聞いた。
「生田君は結婚指輪していたっけ?」
「さあ、あまり気にしていませんでしたが」
「外して痕が残らなければいいが」
末永は自分のついた嘘を嘘でないようにする画策をしていた。
磯貝が心配になって末永に尋ねた。
「あんな、嘘ついてバレませんか?」
「バレないようにするんだ、2ヶ月の間はな」
「2ヶ月ですか?」
平社員の磯貝には知らされていないが、柚布子は2ヶ月間のピンチヒッターなのである。 2ヶ月後には他の支社から男性のプロジェクトマネジャーを転勤させる予定なのである。 今は異動の時期ではないからその間を柚布子が担当するのである。 柚布子もそれは知っていることだ。 だから○○○システムにも2ヶ月外れるとだけ言ってあるのであった。
「兎に角、生田君に連絡を取ってくれ」
末永は磯貝に連絡を指示した。 磯貝は携帯で連絡する為、喫茶店の外へ出た。
5分くらいして戻って来て、
「連絡付きません」
「生田君はどこに行っているんだ」
「午前中の話しだと○○○システムに打ち合わせに行くと言っていました」
磯貝の担当ではないので詳しくは聞かされていなかった。
「じゃ、課長に電話して先方の担当の連絡先を聞いてくれ。 まさか担当者と何処かで遊んでる訳でもあるまい」
末永の耳にもそれとなく柚布子が久世の暇つぶしに付き合っていることは耳に入っていた。 しかし、柚布子が久世に見初められてから久世の会社からの発注が増えているので打ち合わせと言われれば信用するしかないのだ。
磯貝はまた、外に電話を掛けに行った。 磯貝は遊佐の番号を聞き連絡してたが不在で折り返し連絡をもらうようメッセージを残した。 そして戻ってくると、末永と雑談しながら連絡を待った。
雑談が途切れると末永は自分も連絡をしてみると言って、外に出た。 柚布子の携帯を呼び出すが、出ない。
再度呼び出すが柚布子は出ない。 これで出なければ磯貝に任せようと再ダイヤル釦を押した。
留守電に切り替わる寸前に由布子が電話に出た。
「はい、生田です。」
「私だ。 どうした、なかなか電話に出なかったじゃないか」
「すいません、移動していたものですから」
「今、どこだ」
「○○○システムで打ち合わせが終わったところです」
「ほんとうにそうか?」
「はあ?」
「さっき、先方の担当に磯貝が電話したら誰も居なかったらしいぞ、今どこだ」
「○○○システムのキッティングセンターで久世様、遊佐様と一緒でした」
「やぱり、そこだったのか」
「なんでしょうか?」
「大変なことになった」
「何が大変なのでしょうか?」
「君のことだ」
「私の?」
「そうだ」
「私が何か?」
「逢って話をしなくてはならない、大事なことだ、SI会社の手打ち式に行く前にだ」
「・・・・」
「磯貝が○○駅で待ってるから合流してくれ、いいな」
「・・・・」
「どうした、早くそこから離れろ、いいな」
「はい」
末永はほっとして電話を切り、喫茶店の中に戻り磯貝に駅で落ち合うように指示した。 そして末永は先に弥勒亭のある駅に移動して柚布子と話しが出来る喫茶店を探す為に出て行った。
弥勒亭は駅を挟んでSI会社とは反対側にあると聞いていたが、SI会社を出る間際に購買部の小宮山が今日は駅の反対側の弥勒亭ではなく姉妹店の弥勒亭別邸だと告げられた。 別邸はSI会社の最寄駅から二駅郊外に行ったところにある。
磯貝は柚布子を末永が待つ喫茶店へと案内すると弥勒亭別邸へと先に向かった。 SI会社の者が着く前に支払いの話しをする為であった。 弥勒亭別邸の予約はSI会社の購買部でしていたが、今回の手打ち式の性格からいって柚布子の会社が費用を持つことにする為ある。
末永は柚布子の為にコーヒーを注文して席に座るように促した。 柚布子は神妙な面持ちで末永の向かいの席に腰を降ろした。
コーヒーが運ばれてくると、柚布子に勧めた。 末永はどう切り出していいか分からず、由布子がカップを口に運ぶのを見て苦い顔になった。 やはり、柚布子の左薬指には結婚指輪が光っていた。
重苦しい雰囲気になって、柚布子が堪らず話し出した。
「申し訳ありませんでした」
「何が?」
「い、いえ、○○○システムでの打ち合わせが延びまして」
「あ、いや、それはいいんだ・・・」
柚布子はFXのことで呼ばれたのではないような気がして少し気が楽になった。
「生田君は結婚して何年ですか?」
「はあ? 6年ですけど」
「そうか、うちに来たときはもう結婚していたものな。 指輪は外せる?」
「え? はい、仕事中に製品を触る時とか傷付けないようにする為に外します」
「そうか、外して見せてくれるか?」
「え? はい」
柚布子は末永の言ってることが意味不明であったが、会社の上役なので従った。
末永は外した指を見てほっとした。 指に指輪の痕は残っていない。
「生田君、生田というのは旧姓だよね?」
「はい、そうですが、部長どうしたんですか? 指輪とか、旧姓とか」
「す、すまん生田君、この通りだ。 今日、いや、今日からその指輪を外して貰えないか?」
末永は膝に手を突きテーブルで額が擦れるくらい頭を下げた。
「はぁ? ちょっと部長、やめて下さい、主人と何故別れるんですか?」
「いや、すまん、言い方が悪かった。 離婚してくれとかそういうことではないんだ。」
末永はSI会社の応接室でのいきさつを柚布子に話した。 FXのことで神妙な気分でやって来た柚布子には滑稽な話しに聞こえて思わず噴出しそうになった。
「2ヶ月もそんな嘘ついていられますか?」
「そこなんだが、今度の案件でSI会社がうちの誰と話をすると思う?」
そう言われて柚布子は考えた。 柚布子と同じ営業支援課では担当外の顧客とプライベートな事を話す人はいない。 電話を取り次ぐだけで、柚布子のカバーをする人も居ないのである。 それは課としては独立しているが外部から見れば営業部員と同じであるから、柚布子が居なければ代わりは営業の磯貝かその上の課長といいうことになる。
「営業の方が守って頂ければなんとかなるかしら」
「そうだろう?」
末永は自分の思いつきの嘘がなんとかバレずに済みそうなのに自分で感心していた。
「でもバレたらちゃんと責任取ってくれますよね?」
「ああ、勿論、全力で君を守るよ」
「本当にお願いしますからね」
柚布子は外した指輪を財布の小銭入れにしまった。 末永は再び頭をテーブルに擦りつけるように頭を下げた。
「それで、もう私は誰かさんのお嫁さん候補なんですか?」
「重盛とかいう長身の、ちょっとイケメンかな」
「まあ、重婚だわ」
「え? 生田君、もう私を困らせるなよ」
柚布子はここに来る前とは見違えるような笑顔になっていた。 なんだか面白い映画でもこれから見るような気分になっていた。
末永は時計に目をやって、柚布子を促すと店を出て弥勒亭別邸に向かった。
- 2014/11/01(土) 08:55:44|
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柳沢は柚布子の背中に片方の腕を抱くように回し、もう片方の手で柚布子の顎をしゃくった。 そしてしゃくった手はそのまま喉から胸へと下り、ブラウスの釦を一つ外した。 英生の選んだ下着が柳沢の目に入った。 柳沢は「ほぉー」とその下着を見て小さく呟いた。 そして再び顎をしゃくり、柚布子の顔を上に向けると唇を近づけた。 柚布子は腕を振り解き久世の後ろに逃げた。
柳沢は両腕を広げて「おや、まぁー」というようなポーズをした。 柚布子に後ろめたいことがあったとしても完全にセクハラである。
「久世さんも面白いこと言いますね。 今日はこれから出荷の準備をしなくてはならないので、何時か分解させた頂ますよ」
そういうと、柳沢は控室を出て、現場に戻って行った。 柳沢の後ろ姿を見送ると久世も控え室を出て歩き始めた。 柚布子は一瞬止まっていたような時間が動き始めて久世の後を追った。 久世はカフェテラスへと向かった。 柚布子は分解が久世流のジョークだとその時は思った。
カフェテラスへ着くと、柚布子はどうしたらいいか分からず久世のすることを見ていた。 久世は無料の自販機からエスプレッソを煎れると柚布子に渡し、窓際のカウンターを顎で指示した。 久世も同じものを取り、カウンターへ向かった。
久世が来るのを待って柚布子はハイスツールに腰掛けた。 久世も隣に座ると互いに向かい合うように椅子を回転させた。
さっそく、久世が柚布子を責めた。
「そも、そも、なぁ、オマエさんが遅れるからだろう? 4時って言ったろう!」
「・・・・」
「4時に来てりゃ、20分遊んだって柳沢には見つからなかったケドな」
「・・・・」
柚布子は言葉が無かった。 遊佐の心配を無にしてしまって申し訳ないと思った。 思い起こせば遊佐は柚布子の為になることしか助言していなかったと気づいた。
「ったくさ~、俺の止めろというのも聞かねぇ~で、何やってんだよ!!」
「御免なさい」
柚布子はやっと声を出すことが出来た。 確かに柚布子は最新の製品を見て興奮していた。 柚布子の会社の扱うものは俗にいう枯れた製品だからである。 しかし、枯れた製品はそれなりに実績があるのでそれはそれで人気はあるが、新製品のインパクトには敵わない。
FXを秘密裏に見せてくれたのは、日頃の久世の暇つぶしに付き合ってるお返しと自分勝手に解釈してしまっていた。
「会社にバレないかしら?」
柚布子は心配事を口にした。 今夜のSI会社の手打ち式の前にとんでもないことをしてしまったと心配でならなかった。
「大丈夫じゃない、大事にしないって言ってたろ?」
久世は大して心配などしていない様子だった。
「でも、なにか穴埋めしないといけないんでしょ? うちにそんな製品ないわ」
柚布子は困惑した表情を見せた。 代わりに見せる製品が無いと会社に知られてしまうことを心配した。
「穴埋めね。 ま、確かにオマエさんの穴を柳沢ので埋めるかもな・・・まさに穴埋めだな」
「はぁ?」
柚布子は久世が何を言っているのか直ぐには理解出来なかったが、なんとなく自分の穴は何かを考えると想像は出来た。 だが、それを口にすることは出来ない。
「オマエさんさー、やぱりイケメン好きじゃん。 柳沢って結構イケメンだろ?」
「え?」
「だって、キスされそうだった時うっとりしたような表情だったぜ?」
「うそ、そんことないわ、何がなんだか分からなかったから動けなかっただけヨ。」
柚布子は必死に弁解した。 実際そうであり、そのことで柚布子を責めるのは酷である。
「あのまま、キスされて唇奪われちゃうのかと思ったヨ。」
「・・・・」
「柳沢ならそのまま、オマエさんを分解しちゃったかもな。」
「まぁ君は私がそんなことになるのを見て平気だったの?」
柚布子の瞳は潤み始めていた。
「平気なわけないだろう・・・」
久世は男のドス黒い欲望を隠した。 そのまま柳沢の手で分解される柚布子を見たかったのだ。 久世にとって残念ながら柚布子は最愛の女ではなく、欲望の標的に過ぎないのであった。
「もう、泣くなよな、俺のせいかよ?」
久世は面倒臭い会話を切りたくてノートパソコンの蓋を開いて話をそらそうとした。 パソコンは無情にもピーピー電池切れの警告を発していた。 柚布子の来る時間が分からなかったのでスタンバイにせずにそのまま放置していたのだった。
久世はACアダプタをカウンターのアウトレットに挿そうとしたが上手く手探りでは見つけられず、ハイスツールから降りてカウンターの下を覗き込んだ。
柚布子も落ち着くと後ろに置いた鞄で携帯のバイブが鳴っているのに気が付いて、そのままの姿勢で鞄に手を伸ばした。 その時偶然にも柚布子の膝が割れた。 久世がカウンターの下を覗くより一瞬早く柚布子は鞄の方へ顔を向けたので、久世のことは視界に入っていなかった。
久世は反射的にスカートの奥を覗き込んだ。 ガラス張りのカフェテラスは西陽の紫外線だけをカットし、可視光は柚布子のスカートの中の行き着くところまで届いていた。 柚布子は薄黒いパンストだったが、薄黒い色は太腿の中程までで、そこにはフェイクのガーター模様になっており、その先は色も模様もなかった。 完璧なまでに下着を見せていた。
白いクロッチの上側は柚布子のヘアーが透けているのが手に取るように分かった。 おまけに黒いレース調の縁取りには縁取り以外の黒い毛がはみ出しているのがパンスト越に見えた。 久世は今まで柚布子の裸やヘアーのことなど想像したことはなかったが、見てしまうと柳沢にそのまま犯らせるのはもったいないと思うようになった。
柚布子は電話を取って振り返ると膝が割れているのに気が付き慌てて閉じた。 久世の視線の残像が残っているように感じた。
「はい、生田です。」
「私だ。 どうした、なかなか電話に出なかったじゃないか」
「すいません、移動していたものですから」
「今、どこだ」
「○○○システムで打ち合わせが終わったところです」
「ほんとうにそうか?」
「はあ?」
「さっき、先方の担当に磯貝が電話したら誰も居なかったらしいぞ、今どこだ」
「○○○システムのキッティングセンターで久世様、遊佐様と一緒でした」
「やぱり、そこだったのか」
「なんでしょうか?」
「大変なことになった」
「何が大変なのでしょうか?」
「君のことだ」
「私の?」
「そうだ」
「私が何か?」
「逢って話をしなくてはならない、大事なことだ、SI会社の手打ち式に行く前にだ」
「・・・・」
「磯貝が○○駅で待ってるから合流してくれ、いいな」
「・・・・」
「どうした、早くそこから離れろ、いいな」
「はい」
電話の主は営業部の末永部長からだった。 柚布子はもうFXの件が知られたのだと思った。 柳沢とのやり取りを他に見ていた人間が居たかも知れない。 その誰かが密告したのかも知れない。 別に久世と柚布子は隠れて逢っていたわけではなかったから、キッティングセンターで暇つぶしをしているのを見られていたとしても不思議ではないと思った。
「ちょっと問題が出たので、帰るわね」
柚布子はこれ以上久世に迷惑を掛けてはと思い電話の内容を久世には話さなかった。
ハイスツールから柚布子は降りた。 その時、柳沢によって外されたブラウスからブラジャーが久世の視界に入った。
「ブラウスの釦、外したまま帰るの?」
久世に言われて、そのままだったことを思い出して慌てて胸を押さえた。
「もう、まぁ~君たら、エッチ!」
「パンツもエッチだったよ。 そんなエッチな下着で久しぶりに旦那と外で逢うんだ。」
「ちょっとぉ~、信じられない。 違います。」
「え? 旦那じゃないの? やるね柚布子も・・・」
柚布子はブラウスの釦をとめて、スカートの裾を手で払った。
「今日はご迷惑をお掛けしました」
柚布子は改まって挨拶した。
「大丈夫、気にしなくていいよ。 ちゃんと後で穴、埋められれば問題ないから。」
「はぁ?」
柚布子は少しむっとした表情で久世に踵を返した。
キッティングセンターを出るところでタクシーが1台停まって中から遊佐が降りて来た。 柚布子と目が合うと遊佐はタクシーの運転手に何か声を掛けた。 遊佐は柚布子に近づくと、
「大丈夫でしたか?」
柚布子は軽く頭を下げた。
「○○駅に行くなら、一緒に乗りましょう。 ここまで来て、急用が入って本社に戻らなければならなくなりました。」
「有難う御座います。お言葉に甘えさせて頂きます。」
柚布子と遊佐はタクシーに乗り込んだ。
タクシーがキッティングセンターのロータリーを廻っていると遊佐がポツリと
「やはり、○○○通商が来ていたか」
その言葉に連れられて柚布子もリヤウィンドウを振り返り、遊佐の視線の先を追った。 そこには一台の営業車が停まっていた。 ○○○通商の車だった。
柚布子はその車に見覚えがあった。 キッティングセンターに来た時に柚布子の乗ったタクシーがその車の前に停まった為、柚布子がタクシーから降りる時にタクシーの運転手が留める位置を少し直したからだ。 その車は柚布子が来る前から停まっていたのだ。 ということは、柚布子がFXに夢中になっている時に来たのではないということだ。
柚布子にある疑念が湧き始めたが、営業部長に呼ばれたことが気になってその疑念は記憶の中に隠れてしまった。
柚布子と遊佐は駅で互いの方向が逆なのでホームに上がる階段で挨拶をして別れた。 ホームに上がると遊佐が乗る方向の電車の入線を知らせるアナウンスが流れていた。 その駅は島式ホーム2面4線の特急の待ち合わせをする駅であった。 柚布子は遊佐の上がったホームに背を向けて電車を待っていた。 程なく電車が入線し、乗り込むとそのまま反対側のドアの前に立った。 降りる駅ではそのドアが開くからである。
発車する時にそのドアに遊佐が映っていた。 柚布子は振り返り反対側のホームの遊佐に深深と頭を下げた。
- 2014/11/01(土) 08:54:40|
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柚布子がキッティングセンターに着いたのは4時20分だった。 タクシーの運転手が留めた位置が悪くドアを開けると駐車している車に当たりそうだったので位置を直して柚布子はタクシーを降りた。
入館受付には既に久世がゲスト用のIDカードを持って待っていた。
「おせ~よ、ゆーこ」
久世はIDカードで柚布子の頭を小突くとIDカードを柚布子の首に掛けた。
「遅れてごめんなさい、まぁ君」
柚布子は久世の会社からそう遠くないダイニングバーに久世から何度も誘われた。 「軽く行くか?」と言えば、そのダイニングバーのことであった。 久世の会社からの帰りだけでなく、自社に居る時も誘われた。
その店が帰宅経路の途中にもなっており、久世も既婚であることから、そこに居る時間は1時間以内と正確だった。 1時間だからこそ、話しの内容はストレートで濃厚なもので、柚布子はそれを楽しんでいた。 ドリンクもカクテル1杯か2杯でつまみはナッツ程度なので、帰宅しても十分食事が準備出来て英生と一緒に摂ることが出来たのである。
久世のことを「まぁ君」と呼ぶことを許されたのはそこでの成り行きだった。 勿論、それは社外でのことに限定されてのことだが、周りに人が居ないと自然とそう呼ぶように柚布子はなっていた。
「まぁ君じゃねぇ~だろ」
久世は持っていた書類で柚布子の頭を小突いた。
「痛っ」
柚布子は思わず声を出した。 久世の表情がいつもと違っていたのを柚布子はこの時気が付いた。
「こっち、早く」
久世は柚布子を早足で導いた。
「ねぇ、どうしたの、何なの?」
久世はとあるパーティションの扉を開いて中に入り、柚布子を手招きで中へ導いた。
「え~、うそ~、まぁ~くん」
「だから、まぁ~君じゃねぇ~だろう・・・」
久世はそこに置かれている機械の操作盤の電源釦を押した。
操作盤の幾つかの LED が点滅し、やがて中央の液晶パネルに表示が浮かび上がって来た。
「すご~い、これエフエックス(FX)ね!!」
柚布子は感激の声を上げた。
「どう?」
久世が自慢気に聞いた。
「凄いわ、もう日本に来ているなんて。 FXだって言ってくれれば良かったのに。」
「ば~か、誰が輸入してると思ってるんだ。 オマエに見せてることがバレたら大事だぞ。」
久世は声を落として答えた。
「通関手続きが遅れたからこうやって見れるんだ、そうでなければ昨日に船積みされていたんだ。」
久世は経緯を説明した。
この機械は柚布子の会社には太刀打ち出来ない○○○通商が輸入したものだった。 そして相手が弱小会社でも商売敵に納入前の中身を見せるのは掟破り、紳士協定違反である。
久世はポケットから白い綿の手袋を出して柚布子に渡した。
柚布子は手袋をすると操作盤の前に立って、液晶画面をみながらパネルを操作し始めた。 画面が変わる度に柚布子は感激の声を上げた。 5分位操作しただろうか、実際に機械を動かすことは出来ないのでメニューを選んではキャンセルを繰り返していた。 それだけでも、どういう機能を持っているかが分かるのである。
「ゆ~こ、もう、いいだろう」
久世が押し殺した声で柚布子に声を掛けた。
「もう少し、いいでしょ?」
久世はそのまま1分くらい待って、時計を見た。
「ゆーこ、そこまでだ、メニューを戻せ」
「まぁ~くん、あとちょっと、もう少し」
「いい加減にしろよ」
久世の声が少し大きくなった。 しかし、柚布子は操作に夢中になっていた。
「折角なんだから、いいじゃない、あと少し」
「よせ、ゆーこ、メニューを戻せ」
「何よ、もうちょっと、触らせて!」
最初は押し殺していた声が、普通の声になっていた。
「ゆ・う・こ 止めろ!」
「ちょっと、黙ってよ!」
「止めた方がいいですよ」
久世ではない太い声がした。その声の主は柚布子の手を取り操作パネルから離し、更にその手を久世の方に放り投げるようにした。 柚布子の身体は手を追うように久世の胸に受け止められた。
声の主は○○○通商のプロジェクトリーダー柳沢だ。 柚布子はFXを目の当たりにしてそれに触れて高揚していた顔色が一瞬に青ざめた。
「どういうことですか? 久世さんこれは」
柳沢が久世を問い詰めた。
「いや、偶然通りかかっただけ・・・」
「ほう、偶然にしてはメンテ(綿の手袋)も用意されていますね? この方は?」
柚布子は久世の胸から背中へと隠れた。
「確か○○精密機器の生田さんではなかったでしょうか?」
柚布子は更に青ざめ、鼓動も激しくなった。 これが会社間で問題になればSI会社の出入り禁止どころの話しではない。
「ちょっと、こちらに来てもらえますか?」
久世と柚布子が柳沢の後に続いて用意されている控え室に入ると柳沢は人払いをした。
「久世さん、困りますね」
柳沢は背が高いので威圧感がある。
「一旦はうちに納品されるんだから、うちが許可すれば問題ないでしょう?」
久世はもっともなことを言った。
「確かに、でもこういう初物は他社には見せないという慣習なのでは? それにまだ、検収は済んでいませんから、厳密にはうちの管理下ですね。」
柳沢も負けていない。
「そう、硬いこと言わずにさぁ」
久世はいつもの軽い調子で話し掛けた。 柚布子は声が全く出せない状態であった。
「ええ、私もこれ位で大事にするつもりはありませんよ、ただ、仁義を欠いて貰ってはね・・・」
「そっか~、じゃ、柳沢さんの見たい○○精密の製品を見せるってことで」
と、久世が提案した。
柚布子は穴があったら入りたいくらいの気分であった。 何故なら、○○○通商がわざわざ見たいと思う柚布子の会社が扱っているものは無いからである。
「残念ながら、それは、ないですね~」
予想された答えが柳沢から返ってきた。
久世は後ろに隠れていた柚布子の腕を取って自分の前に立たせると、背中を押して柳沢の方へ押しやりながら
「じゃ、こいつ分解しちゃっていいから」
柚布子は今度は柳沢の胸に受け止められた。 柚布子は何が起きたか理解出来ず、時間が止まったように感じた。
- 2014/11/01(土) 08:53:45|
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都会の風景が一望できる高層ビルの36階。 ○○○システムのオフィスの打ち合わせ室。 扉までがガラス張りで床上約1メートルまでが透明で上は曇りガラス。 同じような大小の部屋が並んでいる。 窓は床から天上までガラスで都会を見下ろす。 柚布子はこういう光景に憧れていた。 一度、夕方まで打ち合わせになった時の景色は見応えのあるものだった。 遠くで花火大会がある時は予約禁止で抽選で各セクションに割り当てられ、普段禁止されているアルコールが許されるらしい。 流石に外資系と柚布子は憧れた。
英生もこの会社へ派遣される引き合いがあったが、英生は断った。 この会社は外資系なので派遣や契約社員が多く、その中から正社員になる人も多かった。 英生は外資系が好きになれなかった。 柚布子は、もし英生がこの会社に派遣されていれば、今頃正社員になって、以前のように夫婦で同じプロジェクトで働いたかも知れないと、ここに来る度に思っていた。
午後3時。 打ち合わせ室で柚布子は遊佐と打ち合わせをしていた。 機器の仕様に関することなので、間違いのないように柚布子は注意深く聞いていたが、遊佐は急いでいた。 何度も柚布子は遊佐の説明を止めた。
柚布子は遊佐がこんなに早く説明するのを始めて見た。 柚布子は遊佐が50歳近いと聞いていた。 正社員ではなくプロジェクトマネジャー専門の契約社員らしい。 今では久世の右腕とも、鞄持ちとも言われている。 久世の言うことに決してノーとは言わないという噂である。 久世とのコンビは遊佐が就いていた正社員のマネジャーが退職した際に辞めるところを久世が拾ったことから始まったらしい。
遊佐は久世とは正反対で無駄口や冗談は一切言わず、必要なことのみ事務的に進めて行く人に柚布子には見えた。 たまに柚布子に仕事上で役に立つことを優しく教えてくれるので柚布子は好感を持っていた。
その遊佐が急いでいた。 柚布子が堪らず聞いた。
「何か私に落ち度がありましたでしょうか?」
「いいえ、全くありません。 時間がないもので、すいません。」
「時間ですか?」
「4時にキッティングセンターですよね? もう出ないと間に合わないですよ。」
遊佐は胃が痛そうに顔を顰めて答えた。
メールでは4時半となっていたが、電話で4時と言われていたのを遊佐は知っているのだ。 流石に久世の右腕と呼ばれる男と柚布子は思った。
「遅れて、代わりに何捻じ込まれるか分かりませんよ。」
と、遊佐は心配そうに続けた。 柚布子も遊佐の言うことを理解出来た。 久世は小さいミスをさせてそれより大きなものを得るようなことを取引先としているのを知っていて、営業的な損害はないが、柚布子もその洗礼を受けたことがあったからだ。
遊佐はキッティングセンターへ向かう由布子を悲しい眼差しで見送った。 時計を見て4時には間に合わないと思った。
キッティングセンター。 それは港の近くの倉庫街にある。 主に輸入したパーツや製品を一つのキットにして梱包し直して国内のユーザーに送る準備をする場所である。 最近ではシステムが小型になり、ユーザーのところで組み立てて試験することが多くなったのでキッティングセンターは消耗品やパーツの倉庫になっていることが多い。 従って常駐している社員は殆どいないが、そこは外資系、設備は本社並みである。
柚布子の会社の製品はここには置いていないので、プロジェクト上の話ではないことで呼び出されているのを柚布子は分かっていた。 久世の暇潰しに付き合うのだ。 だから、遊佐との打ち合わせの時間をそれほど気にはしていなかった。
そもそも、こうなったのは久世が柚布子に他社の扱っている製品のことを調べさせたが調べられなかった。 調査を請けてしまったことを責められ、ここに置いてあるその製品を直に調べさせたのである。 その調査自体もどうでもよくて、結局このキッティングセンターに柚布子をよこさせる口実であった。 そうでもなければ柚布子がここに来る理由などなかったのである。
久世昌哉 35歳、既婚。 柚布子がこのキッティングセンターで久世の暇潰しに付き合うようになって柚布子と同じ大学、同じ学部の出身であることが分かった。 だが、柚布子が入学した時久世は4回生だったので面識は無かった。
どんな社会でも、共通項が見つかると急に距離が縮まったりするものである。 特に出身学校だったり、同郷だったり、二人だけの共通項だと尚更である。
柚布子は社会人になって大学の同窓生に会うことなどなかった。 就職した時も柚布子の部門には歳の離れた先輩ばかりで唯一歳が近いのが夫の英生だった。 つまり、柚布子は社会に出てから友達感覚で話す異性がいなかったのである。 同窓で歳も近くタメ口で話す久世は柚布子にとっては親しみのある異性になったのは偶然だろうか・・・ そして、外資系が嫌いな英生には久世のことを話すことはなかった。
- 2014/11/01(土) 08:52:09|
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柚布子は社内の仕事を淡々とこなしていた。 と、言っても相変わらずメールの整理が殆どであった。 この日も制限ぎりぎりの容量のファイル付きメールのおかげでメールボックスはパンク寸前の為、必死にフィルを整理するだけで肝心のメールの内容は読めていなかった。
そんな中、○○○システムから柚布子に電話があった。
「はい、生田でございます。」
「あ、居たー、くぜ(久世)で~す。 ゆ~こぉー、アンタさぁ~、なかなか電話よこさないね。」
「申し訳ありません、久世様。」
「久世様なんて、よそよそしいなぁ、メール見てないの? やっぱ外れるんだ・・」
「いえ、その、一応会社の電話なので、対応は・・・」
柚布子は声を落として答えるのと同時に急いで久世からのメールを探した。
『Hi, Yuko
久世です。
さっき、アンタんとこの課長さんが来て、オマエさんが2ヶ月ほど外れるって言いに来たよ。
マジ?
一昨日の夜、何も言ってなかったよな?
それから、その時紹介した業者、どう?
メール見たら電話よこせよ。』
昨夜久世から送られて来たメール。 会社間のやり取りとは思えない口語調のメールが久世の特徴であった。 柚布子は課長がわざわざ言いに行くとは思っていなかったのでSI会社の担当になったことを話していなかった。 他の会社のことでもあるし、柚布子としても引き続き久世の会社も担当する予定でいた。 柚布子は少し焦った。
「す、すいません、話が急でまだ確定していなかったものですから」
「へぇ~、課長はもう前から決まっていたような口ぶりだったけど?」
「い、いえ、上では決まっていたようですが、正式に決まってはいなかったようなので・・」
「なんだよ、急に丁寧な話方だな。 本当かよ?」
「だから、他の会社の人にも聞こえるから・・」
柚布子はまた声を落として答えた。
「とにかくさぁ、今日、午後来るんだろ?」
「はい、2時半に遊佐様と打ち合わせがありますので」
「あ、遊佐さんね。 そっちはさ、おっさんに任せておけばちゃんよやってくれるから、4、5分も打ち合わせればいいから、ちゃちゃっと済ませて、こっち来てよ」
「はぁ?」
柚布子は久世からのメールをプレビューウィンドウで読んでいた。 スクロールバーで隠れていた所を表示させた。
『それから、明日4時半にキッティングセンターで話あるから
その後、軽く行くか?
今度はもっと格好いい他の業者紹介しようか?
じゃ、
以上、宜しくお願い致します。
○○○システム株式会社
久世 昌哉』
「今夜はちょっと、用事が入っているので・・」
「なんだ、来ないんだ」
「いえ、キッティングセンターには伺います。」
「なんだよ、折角イケメン呼んであげるのに・・・ 一昨日のもイケメンだったろ?」
「・・・・」
「じゃ、4時な、一昨日の結果も聞くからな」
電話は一方的に切れた。
- 2014/11/01(土) 08:51:02|
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英生が台所のゴミ袋を持って玄関に向かおうとすると寝室の柚布子の姿が見えた。 白の上下の下着姿のまま箪笥の扉を開いて悩んでいた。
「どうした?」
英生が廊下から声を掛けた。
「今日、貴方のところの手打ち式でしょう? 何着ていこうかな?って」
柚布子は何着か出してはまた戻した。
「初めてでしょう? あんまり大人しいのでもどうかな?って。 それに、その前に○○○システムの打ち合わせも残っているから・・・・ どうしようかな?」
「手打ち式は何時?」
英生が聞いた。 相手の山田部長や担当の重盛についてはどういう感じの人かを妻に伝えていたが、英生は手打ち式の詳しいことをそういえば聞いていなかった。
「3時にアポ取ってあるらしいんだけど、その時間は○○○システムにまだ居るから私は行けないの。 夜の7時から弥勒亭っていうところ、そっちには顔を出すわ。 だから夕飯チンして食べてね。」
「うん、分かった。 手打ち式の方が大事だから、そっちに合わせなよ」
「そーねぇ・・・」
英生は廊下にゴミ袋を置くと寝室に入り箪笥の中から一着のスーツを取り出した。
それは英生のお気に入りの濃いグレーの下地にペンシルストライプの縞柄のスーツである。 スカートはミニではないが座った時には腿がかなり見える。 更にスリットとまでとは行かないが両方の腿にあたる部分に切れ込みがあるものだった。 スカートの切れ込みを除けばごく普通のビジネススーツである。
英生は格好いい妻を自慢したかった。 派遣社員として見下げられているが、こんな格好いい妻がいるんだと。
「ちょっと、派手じゃない?」
「夜の店は暗いから、こういうのが丁度いいかも」
「そっか・・・」
「下着も合わせたら?」
「これで、大丈夫よ」
「あれがいいよぉ」
英生はまたお気に入りの下着を指定した。 それは白を基調とした上下で、パンティーはビキニで灰色の柄が側面にあり、正面はやや透けてる感じで黒のレース調の縁取りのあるものであった。 履いたなら、濃い柚布子のヘアーが薄っすら透けて更にはみ出しそうである。 ブラも同じ柄でカップは浅めで何故か乳首がある辺りには柄が無いのである。
「貴方、こういうの好きねぇ、人が見たら何て言うかしら」
「下着は見える訳じゃないから、楽しもうよ・・」
英生の密かな楽しみであった。 手打ち式の接待をしている妻の下着を知っているのは英生だけである。 その優越感を英生は味わいたかった。
今日は夫の派遣されている職場に行くのだから夫のいうことに柚布子は従うことにした。
下着を着替える為に柚布子が全裸になると、英生は急にドキドキした。
柚布子が手打ち式の生贄に捧げられるような錯覚を覚えた。
手打ち式、それは手締めのことでシャンシャンシャンと手を打って終りにすることである。 つまり、過去のミスは過去のこととして互いに先に進みましょうといい意味のはずである。 もともとは歌舞伎や相撲等の伝統芸能で使われていた言葉だが、暴力団同士の抗争を収めるのにやはり手打ち式があり、儀式がある。
手打ち式→やくざ→儀式→生贄 悲観的な連想となったのであろう。 当然酒の席だから柚布子の会社のミスの話や柚布子自身も酒の肴になるかも知れない。
英生は柚布子に歩み寄ると、胸と股間に手を伸ばし両方同時に弄った。
「あなた、夕べしたでしょ? だめよ」
「多少、セクハラがあるかも知れない」
英生は不安を口にした。 柚布子はだまって弄られていた。
「そんなことする人達じゃないって、言ってたでしょ?」
「ああ」
「じゃ、どうして?」
「分からない」
英生は本当に分からなくなった。
「だいじょうぶヨ、私一人じゃないんだから」
「そうだよな・・・」
乳首が硬くなっていたが英生は妻から離れた。
「もう、アナタったら」
柚布子は下着を付け始めた。
英生は廊下に戻るとゴミ袋を持って、柚布子が服を着ていくのを眺めていた。 ブラウスを着てスカートを履いてホックを留めて回して整えると妻の綺麗な姿に満足していた。 そして「気をつけて、行って来る」と声を掛けて出掛けていった。
英生はこの日柚布子が帰るまで、もんもんと仕事も手に付かなかった。
- 2014/11/01(土) 08:49:56|
- 序破急・中務
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『前回までのあらすじ;
中務英生(36)、柚布子(31)夫婦は機器関連会社で社内結婚し共働きをしていたが、夫はリストラされ、とあるSI会社へ派遣でエンジニアとして働いている。 一方、妻はリストラを逃れ親会社の営業支援課に転籍した。 柚布子はアカウントマネジャーに昇格し、偶然にも夫が派遣されている会社の担当となった。 SI会社の製品企画部の重盛浩太(34)が窓口となることが多く、次第に柚布子と親しくなっていく。 それをネタに夫婦の営みは活性化したのだが・・・・』
その前段のエピソード(まだ序の段)
「だから、お前はあのときそう言ったろう!!」
「・・・・」
「寝ぼけたこと言ってんじゃないよ!! 貴様、何様だ!!」
「・・・・」
「仕事はちゃんと、やれ!! 子供の使いじゃないだろう!!」
「だから、それは前からダメだと言ってるだろ!! いい加減」にしろ!!」
末永は憂鬱な気分で打ち合わせ台で他の出入り業者が怒鳴られているのを聞いていた。 約二ヶ月前には更にひどい罵声を末永は満座の前で浴びせられていた。
ここは、とあるSI会社の製品企画部の席のある大きな事務室で、他の部門もその様子を見てないフリして聞いている。
机を叩いて怒鳴っていたのは執行取締役製品企画部部長の山田である。 山田は悪い人間ではない。 中堅社員になって怒鳴る役を押し付けられて今に至っている。 普通なら分の悪い役を押し付けられた者はいつの間にか主流から外されていくものだが、運良く山田は残っていた。 それに権限が付いてくるとただの怒鳴り役ではなくなってくる。
山田は出入りの業者を退散させると末永の方をチラッと見た。 そして、自席に戻ると
「エミちゃん、応接どこ?」
「第2応接ですけど」
事務員の橋爪恵美は答えた。
「じゃあ、購買のコミィーにテレしちゃって、応接入るって」
「お~い、こ~た、行くぞ」
山田は重盛浩太に声を掛けると事務室を出て応接に向かった。 重盛は末永と磯貝を手で案内するよに促して山田の後を追った。
今日は手打ち式の日であった。
末永はある機器会社の営業部長、磯貝は営業部員である。 ある機器会社とは中務柚布子の勤める会社である。 この日は二ヶ月前に柚布子の前任のマネジャーがミスをし、柚布子の会社は出入り禁止になっていた。 出入り禁止になったのは勿論山田の一言であった。 今のご時世に出入り禁止などあるのかと言えば、この会社にも無いのである。 たまたま柚布子の会社に発注する案件が無いので製品企画部に出入りが無いだけで会社として出入り禁止にしているわけではない。
ミスをして迷惑を掛けた都合上、禊として出入り禁止という用語を利用しているだけである。 ここに来て柚布子の会社に発注する案件が出て来てしまった為、山田の上げた手を下ろす儀式にすぎないのであった。
応接室の前に来ると、山田は既に入っており、重盛が応接の中を覗いて末永達に外で待つように伝えた。 ほどなく購買部のコミィーこと小宮山がやってくると、重盛は応接に入っていった。
今日の手打ち式は購買部の小宮山の仕切りであった。
末永と磯貝は小宮山の案内で応接室に通された。
冒頭、末永の前回のミスの謝罪と重盛のその後の対応で大変だった事などの話になり、更に謝罪の言葉を末永は並べることしか出来なかった。
山田はまだ一言も発していない。
小宮山は流れを変えるべく、自分の課の女性が来週から産休に入る話題をした。 彼女の夫は山田の部に在籍している。言わずと知れた社内結婚であった。 すると山田が口を開いた。
「女はさ~、いきなり、ぷぅ~ってお腹膨らんじゃうから戦力として計算出来ないんだよなぁ」
更に山田は続けた。
「社内調達なら確実に自然減1だからな」
末永は他人事だが冷や汗が出てきた。
山田が口を開いたとこで、小宮山が次の案件は末永の会社に発注することの了承を山田に求めた。
「あの、ぼんくらマネジャーはもう顔出さないだろうな」
山田が少しキツイ口調で言った。
「はい、もう顔を出させませんので・・・」
「で、今度は誰がなるんだい。 他に居ないだろ、まともなのは・・・」
末永の答えに間を置かずに言い放つ山田。
「○○○システム担当でアシスタントマネジャーをしていて評判のよい者を今度・・・」
○○○システムと聞いて山田は身を乗り出した。 それは山田達にとってはライバルに当る同業者の会社であるからだ。 そこで評判の良かったアシスタントと言ってもマネジャーを引き抜くのだから悪い話ではない。
同業者の名を聞くと外注苛めを簡単に止める山田ではない。
「評判がいいのは腕じゃなくて女だからじゃねぇ~のか?」
「・・・・」
末永は直ぐには言葉を返せなかった。 山田もまた否定されると思ったが当ってしまって驚いていた。
「おんな、かよ~。 まさか結婚してるんじゃ・・・」
山田はさらに続けた。
「おまえ、独身ならうちの社員の嫁になれるけど、結婚してるんじゃ、直ぐに腹ふくらんじゃうぞ?」
「こ~た、お前も独身だから、そのマネジャー嫁にもらってやれ」
これがセクハラ、パワハラになるかは分からないが山田特有の外注苛めである。
「ぶ、部長、そんなまだなんにも聞いていないじゃないですかぁ」
重盛が諌めるように言った。
「ま、そうだ。 で、歳は?」
「30ちょっと過ぎです。 独身男性以上に良く働く女性です。」
ようやく末永は発言することが出来た。
「で、独身か」
山田の質問に間髪置かずに答えなければならないと末永は思った。 口には出さずに頷いた。 これがこの物語のはじまりである。
磯貝は下を向いたまま、また仕出かして出入り禁止になるなと確信した。
「よかったなぁ~、こ~た。嫁が出来るぞ」
山田は高笑いをしていた。 末永は本人がスケジュールの都合で居なかったことに救われた。
小宮山は山田の上げた手が降りたと判断し、この場を締めることにした。
「それでは、このへんで、続きは弥勒亭で7時から。 その時には新任さんも来られるのですよね?」
「はい、来させます。」
弥勒亭とは山田が良く利用する店でそこで本当の手打ち式の接待が行われるのである。
- 2014/11/01(土) 08:48:47|
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「ねぇ、ねぇってば、もう」
柚布子は英生の背中に回していた腕を胸板に当てて押しのけようとしていた。
「漏れちゃうってば」
英生は柚布子からティッシュボックスを受け取ると促されて柚布子の身体から離れた。 離れる時にティッスボックスからティッシュを2、3枚取り出し由布子の股間に当てた。 柚布子の膣から萎縮した男根が避妊具とは別に引き抜かれた。 英生は避妊具から精液が漏れないようにティッシュで押さえて避妊具を処理した。 そしてティッシュを更に2,3枚取ると柚布子の性器を綺麗に拭き取った。
いつもの夫婦の営みであった。
英生が避妊具の始末をしてベッドに戻り、横になるのと同時に柚布子が英生の腕を取って腕枕にした。 普段ならここで毛布を掛けて寝てしまうのであるが、この日はまだ興奮していた。
「今日、よかったわ」
「おまえも、いつもより燃えてたじゃないか」
英生は腕枕にされている腕の上腕をまげ、柚布子の髪を撫ではじめた。 そして疑問をぶつけたくなった。
「女って、あの最中に違う男のこと考えるって言うけど、ほんと?」
「男の人って、自分の妻が他人に犯されてるところを見たがるってほんと?」
柚布子は負けず嫌いではないが、営業と一緒に得意先を廻るうちに、相手の言うことに対抗する癖が付きはじめていた。 図星だったのでそれを隠す為に対抗することを言ったのであった。 それは会社の化粧室で既婚女性社員達が話していた井戸端話を聞いていたからであった。 柚布子は言ってしまった後に、言った自分に驚いていた。
「・・・・」
「ねぇ、そうなの?」
最近の夫婦の会話では立場が逆転することがよくある。 それは英生がリストラされてから顕著になってきていた。 年収こそまだ英生が上ではあるが正社員と派遣社員の格の違いを知っている二人であるからこそであろう。
「・・・・」
「そ~なんだ」
英生の腕に抱かれながら柚布子は上目使いで英生の表情を見た。 英生は天井を見つめながら髪を撫でていた指を耳たぶに持っていき暫く弄った後に中指を柚布子の耳の穴の周りをなぞったり少し突いたりし始めた。 これは英生のやりたいといういつもの合図であった。 柚布子は英生の男根に手を伸ばすとカリの辺りを握った。 すると掌の中で握ったものが膨張するのを感じていた。
「ごめんなさい」
柚布子は少し責めすぎたと思った。 確かに英生の問いに対する柚布子の反撃は飛躍し過ぎていた。
「何が?」
「少し言い過ぎたわ」
「うん? うん」
「ごめんなさい」
「いいよ、もう」
「うん、でも、女ってそういうこともあるかも」
「・・・・」
「一般的に、ね?」
「そっかぁ~ で、柚布子もさっき?」
「・・・」
英生は柚布子の耳の穴を小指で弄り始めると同時に、もう片方の手で乳首を弄りはじめていた。
「誰のこと考えて? 重盛か?」
柚布子は軽く頷いた、その瞬間に弄っていた乳首が急に硬くなったのを英生は感じていた。 英生は乳首だけではなく乳房全体も揉み始めていた。
「なぜ? 何かあったのか? もしや」
柚布子は大きく首を振った。 そして、公園であったことを英生に告白したのであった。
「キスされたのか?」
柚布子は首を振った。 英生は柚布子にキスをした。 初めて柚布子とした時のような唇を重ねて吸うだけのキスをした。 すると柚布子が堪らず舌を入れて来た。 直ぐに英生は唇を離した。
「重盛とキスする時は柚布子から舌いれるんだ」
「意地悪・・・」
柚布子は英生の舌を求め絡めてきた。
「胸は? 触られたの? 乳首も?」
柚布子は小さく頷いた。
「でも、服の上からよ」
柚布子は赦しを請うような甘えた声で弁解した。
「服の上からでも、重盛にここを固くされたんだな?」
柚布子は頷くしかなかった。 その瞬間、柚布子の掌の男根がピクリと動きさらに膨張しようとしていた。
キスはされていなかった。 仮定の話で柚布子が舌を入れたかも知れないという英生の妄想だが乳首はちがう。 たとえ、服の上からだとしてもやられたという思いが募った。
「おまえ、こんな風にされて、固くなったのか?」
英生は乳首を強く摘んだ。
「あん、あなた~、いたい」
柚布子は英生の行動に少しばかり動揺した。 英生が乳首を強く抓ったことなどなかったからである。 柚布子は強く首を振った。
英生は手を胸から股間へと移動させた。 もう片方の手は柚布子が逃げないように肩をしっかり抱いていた。 柚布子は動けなかった。 そして英生が柚布子の性器を指でなぞり始めた。
「ここも、こうされたんだろ?」
「・・・」
柚布子に邪(ヨコシマ)な風が吹いた。 夫を煽ってみようと・・・ 重盛がスカートの中に手を入れ奥に進めた時に柚布子は大事な部分を触られないようにベンチから立ち上がったのだが、英生の問いには静かに頷いた。 柚布子の勘では柚布子の返答次第で英生の男根がピクリと動くはずであった。 英生は更に強く小陰唇をなぞった。
「こんな風にされたんだろ?」
「う、うん、でも下着の上からだから・・」
「本当にそうなのか? 正直に言っていいだよ、柚布子のせいじゃないんだから」
「御免なさい・・・ 下着の中まで・・・ 手が・・・」
「こんな風にだろう!!」
英生は中指を膣口に差し込んだ。
「ああ~ん」
柚布子は淫らな叫び声を上げた。 果たして、英生の男根は大きく動いた。
「あなた、ごめんなさい、それ以上のことされてないから・・・」
「濡れたのか?」
「・・・・・」
柚布子は身体を起こすと、英生の男根を咥えさらに固くし、枕元の避妊具を被せた。 そして、英生に跨り英生の男根を膣口にあてがい、ゆっくり腰を沈めた。
「あ、ゆうこ・・・」
「あん、あなた~」
柚布子は英生に覆いかぶさり舌を絡めた。 そして互いに吸い合った。
無理やり上になるように言わなければ乗らない内向的な妻が、自ら上になって男根に腰を沈め、更に腰を自ら上下させるとは。 英生の中にも邪な風が吹いた。
「ゆうこ、ほんとうはこんな風にされたかったんだろ?」
上になった柚布子の胸を両手で胸を激しく揉んだ。
「あ、あなた~」
柚布子は首を横に振った。
「ゆうこ、こんな風にされて乳首立って感じたんだろ?」
「あ、いや~ん」
英生も腰を使い始めていた。
「ほら、重盛に揉まれて感じたんだろ?」
「いやん、ちがう~」
喘ぎながらでも柚布子は応えていた。
「重盛の手が揉んでるぞ・・・・」
「だめ~、あなた、そんな」
「重盛に揉まれたいんだろう? こんな風に・・」
「あ、あ、だめ~ 感じちゃう~」
「重盛に揉まれてみろ、揉まれて感じろ、揉まれて来い」
矢継ぎ早に英生は叫ぶと、由布子と身体を入れ替えた。 その時に英生の男根は一旦柚布子から離れた。
柚布子の息が既に荒い。 英生は柚布子の脚を広げ性器をむき出しにさせ、腰を進めた。 そして男根で小陰唇を愛撫しながら;
「こんな風に、されたんだろ?」
「ちがうわ」
「指じゃなくて、重盛のチンポで」
「いじわる、お願い・・・」
「お願い、なんだ?」
「はやくぅ~」
英生は膣口に男根をあてがい、動かない。 柚布子の腰がそれを迎えいれようとするのを、英生は腰を引いたり進めたりして焦らしていた。
「早く、何? ちゃんと言ってごらん」
英生も柚布子も新婚早々、同じようなことをしていたと思い出した。 但し、その時は「英生のチンポ」と言わされていた。 今回は違う。 柚布子も感じていた。 英生が何を言わせたいのか。
「し、しげ」
「言ってごらん、言っていいんだよ」
言わなければ先に進まないのを柚布子は知っていた。ベタな責め方だと互いに思ってはいるが、「バッカじゃないの」と言ってしらけさせる仲でもない。 柚布子は覚悟を決めた。
「重盛さんのチンポ」
「ちゃんと、言って!!」
「重盛さんのチンポ入れて~」
「重盛に犯されたいんだな? よ~し」
英生は腰を進めた。柚布子は歓喜の声をあげ、英生の腰の動きに合わせて喘ぎ始めた。
「あ、ゆう、こ、あ~、重盛のチンポ入れられてみろ・・・重盛のチンポで感じろ・・・」
英生は腰を動かしながら、震える声でそう呟いていた。
「あ、あ~、ゆうこ、逝く」
「あなた、私も、逝くぅ~」
「あ、ゆ~こ~、あっ、あ~」
英生は腰を強く押し付け精液を搾り出した。 そして、柚布子の膣から男根を引き抜いた。 膣口から離れる瞬間、男根は興奮状態にまだあったので小陰唇から陰核をなぞることになった、 その時柚布子小さな声を上げた。
英生は急いで避妊具を外し、ティッシュで拭くと柚布子の膣に再び挿入した。
「あなた、だめぇ~」
柚布子は叫んで、腰を引こうとした。 だが、英生は腰をしっかり押さえていた。
「大丈夫、もう出ないから」
英生は興奮から醒めない男根を通して柚布子の膣の肉襞もまだ興奮しているのを感じ取っていた。 だが、それは急激に鈍くなった。 萎縮してきたのだ。
柚布子の膣はここ半年精液を浴びていない。 夫がリストラされてから、将来の不安が先行し、子作りする気になれないのであった。 柚布子が棚ぼたとはいえ、アカウントマネジャーになって仕事が充実してきたせいもある。 だからと言って避妊しなくてもいい日もあったが、避妊具を付けるのが習慣になっていた。
英生は柚布子から離れると、ティッシュで柚布子の性器を綺麗にして電気を消して毛布を二人に掛けた。 柚布子は英生の腕枕で眠りに就いた。
「今度、何時、重盛にオマンコ触らせるの?」
柚布子は眠りに落ちながら「まだ、プレイしてる・・・」と思いながら
「明々後日・・・」
柚布子は深い眠りに落ちて行った。 英生も柚布子のおでこにキスをして眠りに就いた。
翌朝、二人は一緒に駅へ向かう道を歩いていた。 英生が派遣で働くようになってから通勤時間が異なる為、英生が先にゴミ出しをして出て行くのが日課だった。
この朝、柚布子は英生からごみ袋を取るとマンションのゴミ捨て場に置き、英生の腕を掴んで歩き始めた。
英生は新婚時代を思い出していた。 昨晩のことが二人を活性化させたのであった。
- 2014/11/01(土) 08:46:58|
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