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闇文庫

主に寝取られ物を集めた、個人文庫です。

春が来た 第24回

 新藤のデスクの電話が鳴る

「はい、所長の新藤ですが・・」

「所長ですか?こちらは受付ですが・・・
 職員の伊藤さんの家族の方が是非、所長にお目にかかりたいと来られているのですが」

「伊藤さんの家族の方?」

「はい・・ご主人で伊藤一介さんと仰っていますが」

「ご主人が?
 分かった、私がそちらに行きますから、そのように伝えてください」


 二人は支所近くの喫茶店にいる
 新藤は珈琲を飲みながら、瑞希の夫である一介を観察している
 一介は真面目な設計技術者そのものだ
 確か、瑞希の実家の仕事を手伝っているとか言っていたが

「伊藤一介さんでしたか・・・今日はどのようなご用件なんでしょう?」

「はい、瑞希のことが心配で・・ご相談をと」

「奥さんのこと?・・で、どの様な」

「はい、もうご承知かと思いますが
 瑞希は健康を害して、一度休職しております
 この度の異動で、本人が頑張っているのは承知しているのですが
 昨日のように、自分に原因があったとしても徹夜して仕事をするというのは
 いくら責任を感じたとしても、無理をしているのではと・・・・
 それに、5月以降は土曜日も出勤しているようで
 仕事に一生懸命な姿勢はいいのですが、妻の健康が心配で・・・」

「そうですか・・・彼女は土曜日も出勤して県民のために働いていると
 あなたに、言っているのですね?」

 新藤はやれやれといった顔を見せた



「そうじゃないんですか?所長さん」

「うーん」

「瑞希は今日も、昨夜は徹夜できなかった分を取り戻すといって、朝早くからでかけているんですよ」

「へぇー・・今日も出勤ねぇ・・」

 一介は新藤の返事に腹が立った



「所長さん!その言い方・・少し、失礼じゃありませんか!」

 この一言で、新藤の腹は決まった


「一介さん・・・あなたは、妻思いの良いご主人だ
 奥さんを大事に思っていらっしゃる・・・・・しかし」

「所長さん、何なんですか・・・怒りませんから、はっきりとわかるように」

「いや、御免なさい
 どのように、お話ししたらよいかと迷っていたのです
 あなたを傷つけたくないし、あなたは私の話を信じないだろうと・・」

「所長さん!はっきりと仰ってください
 瑞希は、弱い身体に鞭打って働いているんですよ
 それなのに、上司のあなたは妻を良くは思っていないらしい」

「判りました・・・じゃ、事実だけをお話ししましょう
 伊藤さんの上司である私は、土曜日はおろか彼女に時間外勤務を命じたことなどありませんし
 実際、土曜日に彼女が出勤していた形跡もありません
 それに、今日は休みたいと今朝方、電話があったようです」

「そ、そんな筈は・・・」

 新藤は、ショックで顔色が青くなる一介を哀れに思った
  1. 2014/11/11(火) 07:34:58|
  2. 春が来た・道明
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春が来た 第23回

 翌朝、JRの中央コンコースから出てくる男を待つ瑞希の車があった
 江島は瑞希の車に乗り込むと

 「どうだった?所長のこと何か分かったか?」

 「・・・・うーん・・いいところまで行っんだけど」

 「空振りか?」

 「うーん・・堅物?・・違うわね
  私、やっぱり怖くなった・・あんな人、初めてよ
  何か、凄いものを持っていそうなの」

 「ふん!だから言ったろう
  あいつは、普通の公務員と違うと
  なにせ、この俺を初めて怒鳴りつけた上司なんだ」

 「そうね・・・確かに
  でも・・・優しいところも見えたんだけど
  所長はどうやら、私たちに厳しい措置を考えてるの」

 「へぇー
  じゃあ、こちらももっと強力なタッグを組まないとなぁ・・・瑞希」

 「そうね・・・係長」
 


 新藤は一人、執務室で昨夜のことを思い返していた

 瑞希の運転する車が、六甲山麓のラブホテルに滑り込む
 人間を理解するには、話し込み?・・そうじゃない!
 男と女の場合は、セックスが一番の相互理解の早道だと女は言った

 自らビジネス・スーツを脱ぎ、下着だけになるとベッドに横たわった
 そして、男に見せ付けるように大胆に自慰を始めたのだ
 男の分別や理性が飛んでいく
 考え方は、天真爛漫な少女
 しかし、肢体は出産経験のある女盛りの人妻

 何としなやかな肢体なんだ・・・・・それに、この脚の肉付きの美しさは
 堪らない、触れてみたい・・・・いや、触りたい
 男が唾を飲み込む音が聞こえる

 女が目を瞑り、自慰に集中している
 形の良い乳房と女陰を細い白い指が旋律を奏でいている

 「うっ・・うん・・・うーん」


 女の目が薄く開いて、男を捜す
 其処には、男の怒張が聳えていた

 「所長・・・私を抱いて・・私の中に入ってきて」

 
 痛い、痛いぐらいに怒張が天を突き上げている
 自分の怒張を突き入れたい衝動が繰り返し襲ってくる

 「ねぇ・・私を狂わせて、ねぇ所長」

 女が手を差し延べて、男の怒張を己が女陰の入り口に誘う
 そして、怒張の先端を押し当てたところで男の意志を誘発する


 「所長・・・私をあなたの女にして、さぁ・・・あなたのものにして
  この肢体をあなたの自由にして・・・・・・・」

 男の手が女の乳房を力任せに握り潰す

 「あーん・・痛い・・・・あぁぁぁ、うぅぅぅぅ」

 先走りの露で濡れる新藤の怒張が、瑞希の女陰の奥へ突進していた


 「あん・・痛い・・・ねぇ、優しくして・・・痛い、痛いの、ねぇ・・」

 無言のまま犯すように、がむしゃらな突きを繰り返す
 ベッドの軋む音が激しく続く

 「うーん・・・あっ・・・ふぅーん、あぁぁ」

 男の腰の動きが緩やかになった
 男は女の両足首を手で持ち上げ、怒張と女陰の結合を確める
 愛液で黒光りする槍で、初恋の女性の女陰を突きまくる快感が襲ってくる
 男の舌が透き通るような白い女の脹脛から足首を舐めた

 「いやぁーん・・・もう、ねぇ・・・来て、ねぇ」


 男と女の目が交差する
 女は顎をあげ、薄目をしながらも男の目の奥を見つめている
 (来て、所長・・・・これが、私・・・・ねぇ、来て)
 そう、女の目が言っている

 新藤の怒張が一段と膨らみを増して、瑞希の女陰の奥へと突き入れられた

 「ああぁーん・・・うぅぅーん・・逝く」



 ふぅ・・危なかった

 あの時、妻から携帯に電話がかかって来なかったら・・・恐らく、このようなことに
 しっかりしろよ!新藤進よ
 相手は男女の関係に長けた強かな女だ・・・
 男を虜にする妖艶な美女だ
 一つ間違えば・・・・お前は破滅だった
 完全に、この女の手の上で遊ばれていただろう
 お前には、まだまだ何か足りない

 
 新藤は休暇が出ている二人の部下の席を睨み付けた
  1. 2014/11/11(火) 07:34:02|
  2. 春が来た・道明
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春が来た 第22回

 100万ドルの夜景の見える高台の駐車場に1台の車が止まる
 男がフロントガラスから見える街の灯を眺めながら、タバコの煙をふぅーと吐いた
 サイドブレーキを引いた女の手が、そのまま男の右手に触れる
 その右手を自らの左太腿の上に導いていく
 女は言った


「どんな人なのか?
 理解する一番の方法は、スキンシップ・・・」

「止めないか・・伊藤さん、あなたは人妻だろ
 こんなことをして、ご主人に申し訳ないと思わないのか?」

「・・・・所長、私、時々我慢ができなくなるの」

「えっ?」

「私、したくて堪らなくなってしまう時があるの・・・でも、誰とでもじゃないわ」

「う・・嘘を言っちゃ」

「嘘じゃない!
 所長は係長とのことを疑っているんでしょう?
 係長とは何もない
 いきなりキスをしてきたけど・・・引っぱたいてやったわ」

「えぇっ!」


 瑞希は新藤の右手を太腿の内側に導いていく
 新藤の手のひらに、ストッキング越しに女の柔らかい肉の感触が伝わってくる
 男の指がピクッと動く
 女の生の肌を指先が感じたのだ
 女は半身になり、向きを男の方に寄せると
 自然と男の手が、女のパンティに届く


「所長は、私が嫌いですか?」

「・・・・あなたは、私の大事な部下だ」

「こんな私・・・嫌ですか?」


 女は男の横顔を見つめ、男は空ろに正面の街の灯を眺めている
 男は返事をしない
 女は焦れて、両の太腿で男の手を挟み込み、そっと右手を男の太腿の上に忍ばせた

「止めるんだ、伊藤さん・・・そんな、風俗の女のような真似」

「風俗の女?」

「ああ、そうだ
 あなたには、毅然としたキャリアウーマンの姿が似合う
 あんな、ヤクザな係長とふざけあってる姿など見たくはない」

 瑞希の目が優しく微笑んだ
(この人、少し本音が・・・・・ふふ)


 そして、人肌で暖められた男の指先を口に含んでいく
 もう既に、殿様蛙は白蛇の術中に翻弄されだしていた
 女のしなやかな指先が男の股間へと延びていく

「あっ・・何を?」

「いいの・・そのままで・・・すべて、わたしが・・」


 男の固くなった塊を手で確めると、男の胸に顔を埋めた
 男の汗の匂いが女を雌に変えていく
 男の胸元から顎を突き出して、男に囁く


「あなたの男が、私としたいと言ってる」
  1. 2014/11/11(火) 07:32:58|
  2. 春が来た・道明
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春が来た 第21回

 瑞希はテーブルの上にある珈琲カップを見つめたまま席を立とうとしない

 新藤は瑞希が言った「意地悪」という言葉に動揺していた
 かつて、初恋の女性から同じ言葉を言われたのを思い出していたのだ
 分別のある大人の管理者の心を、思春期の若者特有の赤裸々な感情が襲っていた

「伊藤さん!私があなたに意地悪をしているって?」

「そうです・・・
 あなたは、何時も私を眺めているだけで、偶にでるのは私への指示や忠告ばかり
 初めて所長にお会いしたとき、私は素敵な上司に巡りあったと思っていました
 それなのに・・・・環境の変化に弱い私に、窓口へ移動しろなんて」

 瑞希は新藤の腕を両手で縋るように抱え込む
 すると、新藤の腕は自然と瑞希の乳房の間に挟まっていく


「所長、お願いです・・もう少し話しを聞いてください」

「あっ・・・でも、家に帰る時間が遅くなって、家族の方が心配されるんじゃ」

「私にとって大変な事を聴かされて、時間なんて気にしておれません!」

 新藤と瑞希のテーブルの近くには、他のお客も沢山いる


「わかった、わかったよ、伊藤さん・・・とにかく外へ出よう
 此処では人目もあるから・・・落ち着いて、ね」

 瑞希は新藤の腕を離そうとはしない
 腕を組み乳房を押し付けながらレジへと向かいながら
 携帯を取り出した・・・そして

「あなた・・私、瑞希
 今日、仕事で大変な間違いをしちゃって・・今夜、徹夜になりそうなの
 それで明日は休暇をもらって休養するから・・・お義母さんに宜しく言っておいて
 急なことでご免ね、あなた」

「おい、瑞希・・県は女性職員を徹夜させるのか?」

「あなた、今は男女雇用機会均等法ができて、妊娠していない限り、男も女も関係ないのよ
 それに、今度のことは私のミスだから、私が始末をしないと申し訳ないわ」

「そう、わかったよ、瑞希・・・でも、無理はするなよ」

「ありがとう、あなた・・・・じゃ」

 瑞希は電話を切ると、新藤の顔を見た
 その目は、天真爛漫な少女の目だ

(似ている・・あの娘と
 そうだったんだ・・・・初恋のあの娘と似ていたんだ、伊藤さんは・・)
  1. 2014/11/11(火) 07:32:14|
  2. 春が来た・道明
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春が来た 第20回

「駄目だよ、江藤係長は・・・全く駄目だ
 君たちは示し合わせて、休憩を取る
 まるでここの休憩室は君たち二人の休息の場、雑談の場だ
 あなたが席を立つと、彼があなたの尻を追っかけていく
 私を留守番にしてね・・・・よくやるよ、私の神聖な職場でね」

「所長、私は示し合わせてなんてしていません
 確かに、二人で休憩を取るケースは多いですが
 それは、係長がついて来るので・・・・・・・」

「なにを言うんだい・・・・見え見えなんだよ
 私が係長を怒鳴りつけた後も、二人で車の中で相談したんだろう?」

「そんなことしていません」

 この一言が、新藤の倫理観と潔癖性を更に掻き立てる


「そうなの?
 私は、嘘をつく人間は大嫌いだ
 そんな人間、当てにできないし、信用できない
 信頼関係があってこそ、協働や組織が成り立つんだ
 あなたは、人間として持たなくてはならない大事なものを失っている
 先ほどのあなたの話は全部信用ならなくなった
 どこまでが、本当の話やら・・・」

「そんな・・・所長!、勝手に決め付けないでください」

「覚悟しておきたまえ・・・
 秋には執務室の模様替えを行う・・同時に
 あなたには、県民が来られているカウンター近くの席に移ってもらう
 どうせ、江藤係長へはあなたがご注進するだろうから私からは言わない」

「所長、無理です
 私は、変化の多い窓口近くの席では健康が維持できませんし
 それに私は、窓口事務の職員として配属されたのではありません」

「それなら休職して、まずは職務に耐えうる健やかな身体にしなさい
 併せて、素直な心も取り戻して欲しい・・・
 それと・・・支所内の職員の職場配置の権限は所長の私にあるんだよ
 そんなことも知らなかったのか?
 じゃ、私はタクシーで帰るから・・・あなたも気をつけて帰りなさい
 あなたの子どもとご主人、それにご両親が待ってる・・・ふらふらしないでね」

 新藤はこれまでと、捨て台詞を残して席を立とうとした時、瑞希が呟いた



「所長の意地悪・・・」

「なに??」

「私のことをよく知らないで、そんな自分勝手な・・・所長の意地悪!」

 瑞希は、超一級の奥の手を持ち出した
  1. 2014/11/11(火) 07:31:14|
  2. 春が来た・道明
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春が来た 第19回

 夜の波間に月光が揺れている
 海は穏やかだ
 新藤と瑞希は食事を終え、珈琲を飲んでいた
 そして、瑞希が話し始めた


「所長・・実は私、ある病で月1回カウンセリングを受けています
 その病で過去に一度、休職したことがありました」

「その病って・・・心の?」

「はい・・・ストレス性の心因反応とかで」

「それが心配で・・・毎日、テンションを高くしているんだ
 そのことは、もちろんご家族の方はご存知なんだね?」

「はい、知っています
 家族は、再発しないかと心配してくれています
 それに、この不況で主人もリストラにあってしまって
 私の実家の手伝いをしているのですが、あまり元気がありません
 休日も、主人といると息が詰まりそうで、仕事があると言って家を出て
 ストレスの解消をしたりしているんです・・・・・・・・」

(ご主人と上手く行ってないんだ・・・それで、別の男と遊んでいる?)


「そう・・・大変なんだ
 でも伊藤さん、心の病なんて、必ず治るよ、心配しないで
 ご主人がリストラにね・・・でも、頑張らなくっちゃ、お子さんのためにも」

 瑞希は遠くの夜景を眺めている
 少し憂いを帯びた30代の女性の横顔が、ブルーの照明に映える


「私に話しておきたいことというのは、健康のことだったのかい?」

「はい・・それと、所長とは余りお話しする機会が無かったものですから」


 新藤は自分の妻との会話では得られない安らぎの世界の中にいた
 こんな美しい魅力のある若い女性と話をする機会はあまりない
 楽しい、実に楽しい・・心もウキウキとする
 時々見せる女性特有の仕草は、この男を若返らせ
 この女を自分に振り向かせたいという男の欲望が芽を出す

 ところが、この女とキスをしていたという男の顔が浮かび
 自然と、この男女の間に楔を打ち込もうとした
 それが、新藤を現実に引き戻していく


「そうだったのか・・・確かに、あなたとはこんな話をしていないなぁ
 ところで伊藤さん・・あなた、江藤係長とは仲がいいが
 彼は、どんな経歴の職員か知っているんだろうね?」

「私はよくは知りません
 この4月からのことしか
 でも、私の愚痴を聴いてくれて私は何かと助かっています」

(甘えているんだ、50代の男に・・でも、それで、キスをしたりするのか?)


「私もあなたや、彼のことをよく知らないから
 本庁でいろいろ聞いてきた・・・余り良くない話だったよ」

「どんなことをお聞きになったのですか?」

「それは言えない・・・余りにも酷い話で、当人にはとても話せない
 ただ私は、自分の目と耳で実際に感じたことしか信じない人間だし
 今の職場でのあなた方の執務態度を見て自分で判断しているんだが・・・」


 新藤に、人事課長から聞かされた情報が蘇り、徐々に熱くなりだした
 もうこの時点で、美しい妖艶な女との楽しい会話から完全に現実に戻ってしまった
 そして、とうとう瑞希をだらしのない部下として話し始めた
  1. 2014/11/11(火) 07:30:20|
  2. 春が来た・道明
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春が来た 第18回

新藤が支所に戻ってきたのは午後7時、もうとっくに退所時刻は過ぎていた
支所全体は消灯されていたが、所長の執務室は灯がともっている


「あっ・・伊藤さん!残っていたの?」

「はい、お待ちしていました・・・所長は必ず戻ってこられると思いましたので」

「それは待たせて御免なさい・・・食事はしたの?」

「いえ、まだです」

「お家の方は帰らなくて大丈夫なの?話しは明日でもいいよ?」

「心配いりません・・夕食は、義母さんがいますし、主人の帰りはいつも12時ぐらいですから」

「そう・・遅いんだね、君のご主人・・」


新藤の目の前に、昼間では見ることのない妖艶な女がいる
その女が頸を少し上げ、長い髪を後ろで纏める仕草をする
新藤の目は、その女の横顔、髪を撫でる指先
そして姿勢を正した胸の膨らみへと吸い寄せられていた

(この娘には不思議な魅力がある
 清純なのに、妖艶なオーラが漂う・・見ては駄目だ)


「所長・・私の話、聞いていただけますか?」

「ああ・・・いいよ、でもお腹が空いただろう?
 伊藤さん、良かったら食事をしながら話そうか?奢るよ、どう」

「そうですね・・・食事をしながらですか? ありがとうございます、では私の車で・・・・」


瑞希は帰り支度を始める
その姿を新藤が眺めている・・細い肢体が揺れる、そして白い腕が舞う

(この娘が、この女性が不貞をはたらく不埒な妻、悪女で職場を乱す職員?
 本当にそんな女だろうか・・そして、私が壊す、この私が?)
  1. 2014/11/11(火) 07:29:02|
  2. 春が来た・道明
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春が来た 第17回

次の日の朝、新藤が出勤すると
瑞希が自席で既にパソコンを開いている
今朝の瑞希は紺のビジネス・スーツ姿に長い髪を束ねていた
スカートの丈は短く
網のストッキングに包まれた白い美脚が新藤の目に飛び込んでくる


「おはようございます、所長」

「へぇ・・珍しいなぁ、こんなに早くに
 朝の挨拶なんて、久しぶりだ・・・いや、おはよう、伊藤さん」

新藤が席に着き、新聞を広げると瑞希が席の前に来る


 「所長、今日お時間がありましたら、少しお話ししたいことがありまして」

 「話が?そうだな・・
  今日は、本庁の人事課に要件があって、帰ってきてからならいいけど」

 「はい、ではお待ちしています」

席に戻る瑞希の後ろ姿を、新藤の目が再びチェックする

 (昨日の今日だ・・・少しは薬が効いたかなぁ・・服装も清楚だし)



本庁で、人事課長と新藤が顔をつき合わせている
昨日の顛末を新藤が話している

「課長、以上が昨日の顛末だ・・・
 しかし、江藤係長は見かけによらず案外、気の弱い人間で、威勢を張っているだけの胆の小さな男かもしれないな」

「ええ、彼については、強引な住民が訪れたときや地域代表者との交渉時など
 肝心な時には居なくなるとの情報もありました」

「なんだいそれは・・・・弱い女性職員とぺこぺこする男性職員だけに強い男か?
 それなのに、これまで何人もの上司が、あの男を指導しなかった訳か」

「かもしれません・・・あの江藤係長を怒鳴りつけたのは、恐らく新藤所長が初めてだと思います」

「ふーん・・・
 ところで、私は座席の配置転換を考えているんだ
 あの二人の席を離す・・・・併せて
 窓口に来られた県民の目が私の席まで見えるようにしたい
 それで、私の執務室と隣接する前の部署との間にある仕切り壁を取り除くつもりだ
 そうすれば、県民の視線もあり江藤も横柄な座り方ができなくなる」

「それは、いい考えだと思います」

「同時に、公務員としての・・いや一般社会人としても基本的なこと
 朝夕の挨拶、相応しい服装、メリハリをつけた休息の取り方など職務専念の徹底を
 文書にして所員に周知するつもりだ」

「はい・・・ただ所長
 伊藤さんは以前に休職の前歴があります・・・心の病とかで」

「心の病?・・・それは知らなかった
 じゃ、今考えているカウンター近くの席への移動は難しいな」


人事課長は暫く考えて、強く進言した

「いえ、所長、移動させましょう」

「課長!そんなことをしたら・・伊藤さんは病気が再発して・・」

「いいんですよ、所長・・・・彼女は問題ばかり起こす必要のない職員なんですから」

「しかし、家族の方からもクレームがくるんじゃ」

「その時は、職務に耐えられるように、家でしっかりと身体を直してくださいと
 決まり文句で対応すればいいと思います」

「課長・・・我が県の人事も鬼になったな
 職員を我慢強く育てないで潰すのか?
 本当にそれでいいんだな」

「ええ、やってください・・所長!彼女は治りません」

「ああ、気が重いなぁ・・・男は兎も角として、女の方は・・・」


しかし、人事課長の次の言葉が、新藤の人情を完全に消し去ってしまう

「それと所長、今朝・・匿名のメールが届いたんです
 昨日、車の中で江藤と伊藤がキスをしているのを見たと・・あれは不倫だと」

「何だと!!あの二人・・・救いようのない、まさに社会の屑だな」
  1. 2014/11/11(火) 07:28:14|
  2. 春が来た・道明
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春が来た 第16回

「やめて!クラクション鳴らすわよ!」

江藤はビクッとして手を引っ込める



「おお、怖い・・・お前という女は・・職場とここにいるお前は別人だ」

「そうかしら」

「ふん・・・でもなぁ、伊藤よ
 このままじゃ、俺たちの職場での生活が益々暮らしにくくなるぞ
 あいつをギャフンと言わせて、守ろうじゃないか今の暮らしを・・
 その対抗手段として、あいつの命令に従っている振りをする
 そして、俺たちのイチャツキ作戦で脳天を叩き、イライラさせ
 あいつに“もう、言っても駄目だ”と諦めさせる
 どう思う?・・・・・この作戦、二人の強力なタッグで上司と対抗するんだ」

「まぁ待って、係長
 私、一度・・・所長と話し合ってみる」

「なに!まさかお前、俺を」

「そうじゃないのよ、係長
 私は、よく分からないから確めたいだけよ
 今のままじゃ、所長の考えていることは掴めないでしょう
 何か、あったのよ所長に・・・・それさえ分かれば
 対応はもっと的確になるでしょう、係長」

「ふん!なら、あいつが言ったことはつぶさに教えろよ
 もし、裏切ったりしたら・・・・承知しないぞ」

「ええ、もちろん・・・何!えっ!!」

 江藤が瑞希の口に軽くキスをした


「伊藤よ、キスぐらいどうってこと無いだろう・・・お前、子持ちの人妻なんだから
 タッグを組んで闘う同志が、裏切らないように約束するんだ・・・な」

 と言うと、江藤は瑞希に被さり、再び瑞希の唇を塞ぎにかかる
 だが容赦なく、瑞希の強烈な張り手が江藤の頬に炸裂した
  1. 2014/11/11(火) 07:26:46|
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春が来た 第15回

その日の退所時刻の直前
瑞希の携帯にメールが届く・・・江藤からだ

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
いつものように車で待っていてくれ、少し話しがある
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 瑞希は新藤のいう・・・江藤のアッシーを続けていた
 瑞希にしてみれば、所長を含めた三人の執務空間
 電車通勤のヤクザ係長のご機嫌をとることで、自分の仕事がやりやすくなり
 時には食事も奢ってくれるし、愚痴も聞いてくれる
 まさに、自分を持ち上げてくれる頼もしい男になっていた
 しかし・・・
 そこにもう一人いる所長の存在を軽く考えていた
 今日の新藤のような対応をした上司は、瑞希の知り得る限り誰もいない
 直属上司の逆鱗に触れるというピンチだ・・大変な大ピンチに直面してしまった
 なぜ、こんなことに?



「あのボケ所長・・・全く、俺たちを馬鹿にしやがって、なぁ、伊藤」

 江島の第一声だ


「でも、係長・・私、所長が分からない・・
 なぜ、所長はあんなに厳しくなったんでしょうか?」

「そんなこと、知るか!」

「でも・・」

「俺が思うに・・・あれは、俺たち二人の仲がいいのを妬いているんだ、きっと」

「えっー!所長がですか?」

「おう、そうよ・・・どうだい、もっとイライラさせてやろうじゃないか」

「そんなこと、私は・・」

「まぁ、俺に任しとけって・・・伊藤よ、時々、あいつの前でこんなことをさぁ」


 瑞希の全身が硬直した
 江島の手がすっとスカートの中へ潜り込んだのだ
  1. 2014/11/11(火) 07:25:53|
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春が来た 第14回

そして、その時がきた


その日の午後の休憩のとき
私と江藤係長は何時ものように珈琲を飲み談笑し
つい、私は会話に夢中になり時間を忘れていた
突然、休息室のドアが開いた


「そこの二人!いつまで休憩しているんだ!
 この時間、窓口の対応で休み無く働いている職員もいるんだぞ
 おい、江藤係長・・・所長命令を無視しているな
 前に言ったが一度も実行していないだろう!
 エリア内の公共施設の点検をしに巡回に出ろと、それが君の職務だろ
 忘れたか?」

「忘れていませんよ、私は・・・・行きますよ、必要なときにね
 でも、あなたも毎日、暇そうに本を読んでいるだけで
 何も、していないじゃないですか?
 あなたの本音は
 ここでこうして二人でお茶しているのが、気に入らないだけだ」

「馬鹿か?お前は!」

「お前と言うな!お前と!」

「それは悪かった、係長と呼べばいいのかな
 だが、私の命令をはっきりと理解していないようなので
 改めて、再度命令するよ
 毎日1回、必ず巡回に出なさい・・・計画を立て、1年以内に全ての施設の点検を
 所長命令だぞ、江藤係長!
 それと、労働基準法が改正されて、以前のような休息時間は無くなったんだよ
 あるのは、手待ち時間のみ、要は待機時間だ
 君たちが毎日、午前と午後の2回、1時間近く珈琲タイムを取ることは許されない
 それに、私が読んでいるのは職員管理の本だ
 私の職務のための勉強だよ
 私の仕事はね、県民の期待に応えられるように部下を育成し、個々の持てる能力をいかに発揮させるか
 つまり、君や君の前で色気を振りまいている事務員を働かせるのが私の仕事なんだよ、係長・・分かったかい!」

「ふん!ここではあんたが一番えらいからなぁ・・」

「一番えらい?・・・この捻くれ者が」

この時、怒鳴り声を聞きつけた他部署の職員が駆けつけてきた


「所長・・どうかされましたか?」

「いや、ご免、ご免・・大声をだして悪かった
 今、江藤係長に再度、仕事の命令をしたところなんだ、  さぁ・・・仕事に戻ろう」


この時、私はただ、ただ・・・小さくなって震えていた
  1. 2014/11/11(火) 07:24:59|
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春が来た 第13回

瑞希は新藤所長への対応が上手くつかめない
学生の頃に両親にこっ酷く叱られた、水商売のバイトの経験を以ってしても
新藤の心を掴めないのだ
大概の男は振り向かせる自信がある瑞希だが、新藤はどうも勝手が違う

4月は、大らかで、明朗・・・そして何よりも優しさが溢れていた
ところが、5月の連休明けから様子が変わってきた
あれほど寛大であった所長が、細かいことまで叱ってくる
机の上には「上司が鬼とならねば部下は・・・」の本
時々見せる鋭い視線
江藤係長との休息時の会話に割って入って、私を馬鹿にする

優しかった所長
私のセンスを褒めてくれた所長

「今日の伊藤さん・・・素敵だよ」

所長が朝、私が席に着いた時、何気なく言ってくれたことがある
驚いたし、嬉しかった


「伊藤さんの家族は?・・・ご主人とは恋愛かい?
 へぇー、お子さんは小学4年?そんな子がいるお母さんには見えないよ」

思いやりがあり、親しく接してくれた


「これお土産・・お守りだよ、身体が弱いと聞いていたから」

それは、どこで調べたのか私の干支のお守り
ほんとに優しくて、いい人、安心できる上司・・・・・・だった
それが、今は違う
私を完全に無視している・・・・なぜなの?


そして、こんなことも・・

江藤係長が言った

「おい、伊藤・・お前、この支所で美人だとの評判が立っているぞ
 そのスタイルとその顔、その服装のセンス・・ここの男性職員の噂の的だ」

所長が口を挟む

「そうかなぁ・・人の良し悪しは外見じゃない
 人柄や知性など内から滲み出るもので決まるものだと思うけど
 見栄えで逆上せる男もいるだろうけれども
 私は、伊藤さんはちょっとなぁ・・・・」

ショックだった
人の前で、あの優しかった所長のこの言葉・・・・・忘れられない

なぜ?なぜなの・・・・所長

そして
「伊藤さん・・・いくら暇でも、することはあるだろう?
 暇な職場に移った時こそ、英気を養う絶好の機会だ、勉強したまえ
 あなたは、休憩が長すぎるんだ・・他の職員が汗を流して働いているのに
 サボリの係長と程度の悪い話題で会話に夢中とは情けない
 あなたはまだ若いんだ、メリハリをつけて休息したまえ」

「なんだ、今日のその服装は!仕事をする気がないなぁ
 ここへ、遊びにきているのか?公務員に相応しい身だしなみを考えろよ」

酷い、酷すぎる・・・・所長
  1. 2014/11/11(火) 07:21:43|
  2. 春が来た・道明
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春が来た 第12回

 江藤は4月から休暇を取っていない
 毎日、職場に出てくるのが楽しみになっているからだ
 目の前に可愛い女がパソコンを叩いている
 頸を傾げ、合間に自分の方にちらっと視線を投げかけてくる時がある
 視線が交わると、ドキッとする・・久しぶりだこの感覚は
 いい女だ・・・・いい雰囲気を持っている
 その女の顔を今日も眺めている


 あれは・・4月の歓送迎会のお開きの後、二人で駅まで歩いた

「おい、伊藤よ・・所長のことどう思う」

「所長ですか?」

「俺は今まで、職場を転々としてきた
 そして、いろいろな上司を見てきたが
みんなほぼ同じ行動、考え方、タイプだった・・・公務員気質そのもの
 俺を怖がり、無視を決め込み、裏で早期の異動をさせることを考えていた
 だが、今度の上司、新藤所長は全く違う
 俺にも声をかけ、仕事の内容を聞いてくるし
 俺を怖がらず、同じ目線で対応してくる・・・そして、仕事の指示までしてくる」

「そうですね・・・
 ただのエリートのぼんぼん所長ではなさそうですね」

「お前もそう思うか?」

「ええ・・・見ていないようで、聞いていないようで、寛大なようで
 でも、鋭く観察しているし、情報も集めているし、細かいことも言う
 何よりも、正義感が強く、誠実で潔癖、人と家庭を大事にして
 本当に、公務員の鏡とでも言えそうな人かな・・」

「俺にとっては、大変な上司が来たもんだ・・・ああ、お前にとってもかな?」

 江藤はさり気なく、瑞希の腰に手を伸ばしたが
 瑞希はその手を払いのける


「俺はこんな人間だし・・ここの職場はみんな傷のある職員ばかりいる
 お前もそうなんだろう・・・ええ、伊藤よ」

「いいえ・・私は何にもありませんよ」

「ふん、そうかい・・・だが、お前とはウマが合いそうだ
 まあ、宜しく頼むわ・・・なぁ、伊藤」

 今度は、江藤の手が瑞希のお尻に向かう
 瑞希は立ち止まり、江藤の目を見据えて言った



「係長!私はあなたが思っている様な女じゃないです」

「ふん!そうですか・・・・
 だが、伊藤よ・・・・俺たち、職場ではタッグを組んでおこうぜ
 恐らく、それが身を守る強い武器となる・・・・いいな」


 江藤は椅子にふんぞり返ったまま、再びパソコンを叩いている目の前の女を見る
 美しいだけでなく、芯のしっかりした・・・いい女だ
 ここのみんなに見せているのは・・・創りものの偽りの姿か?
 瑞希・・お前の正体なんてどうでもいい、先ずはその肢体、どんな味がするか
 俺が試食してやる
  1. 2014/11/11(火) 07:20:50|
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春が来た 第11回

  新藤は人事課からの帰りに
  以前の課で上司と部下の関係でプロジェクトを推進した女性課長の部署に足が向いていた
  このまま、苛ついた感情のままで支所に帰れなかったのだ


 「よう、課長・・お元気そうだね」

 「まぁ、新藤所長・・昇格、おめでとうございます
  お茶をお入れしましょうか?」

 「そう?じゃ・・頂くか」

 新藤はこの女性課長がお気に入りだ
 仕事はもちろんできる
 45歳でまだ独身
 気の許せるパートナーであった
 自然と話は、新しい職場の話題になっていった
 新藤はここでも、瑞希と江藤係長の様子を
 見たまま、感じたままを、率直に話していた


 「所長・・・ご熱心ですね」

 「そうかなぁ」

 「ええ、間違いなく・・・
  その話に出てくる伊藤さんという方が、羨ましい」

 「なんで?」

 「うーん
  所長がその女性に夢中なんですから」

 「えっ!私が伊藤さんに夢中?」

 「はい
  話を伺っている感じからして、所長が伊藤さんに関心を寄せていると」

 「私が伊藤さんに関心を?そんな馬鹿な
  彼女とは年も離れているし、彼女に何もしていないし、話してないし・・
  それに、彼女は子どもがいる人妻だよ・・・そんなことあり得ない」

 「いいえ
  男と女のことに、年齢差も家庭も関係ありません
  世の中にそんな例は沢山あります
  所長とは1年間、同じ職場でしたけど・・・・
  所長は私のことを女として見てくれてなかった
  なのに・・・・伊藤さんという女性にはこんなに」

 「待って!
  私があなたを女性として見ていなかったなんて、違うよ
  あなたは素敵な女性だし、仕事もよくできる良きパートナーと
  いつも思っていた・・・ただ、私は女性にそんな態度や感情を見せない男なんだ」

 「そうなんですか
  私も仕事上の感は鋭いほうですが、男女間のことは素直になれなくて・・」

 「あなたは、本当に素敵な女性で・・・私は大好きだよ
  それに、何と言ってもあなたと話していると心が和む」

 「有難うございます
  でも、その伊藤さんにはちょっと心配ですね・・所長」

 「うーん・・・
  実は、私の家内もあなたと同じ事を言った
  “あなた、ちょっとおかしいわよ”って」

 「やっぱり!それが女の感ですよ
  所長・・・奥様の言ったこと
  当たってますよ・・・・・・気をつけないと」

 「ああ、ここに寄ってよかったよ・・・有難う」


  新藤は自分自身、気が付いていない心の奥底を見通されたことに驚いた

 自分が瑞希に魅かれている?
 そのことに起因して、私が江藤に嫉妬して厳しくあたっている?
 これは厄介だ・・そんな風に他の職員に思われては大変なことになる
 本来の人事管理上の問題が、一人の女を間にした男二人の喧嘩になってしまう
 気をつけなければいけない・・・あくまで、上司からの指導なんだから
  1. 2014/11/11(火) 07:19:48|
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春が来た 第10回

人事課長は更に続ける


「その相手の男性職員もだらしの無い男で
 確か、最近・・・理由はわかりませんが離婚をしています
 その男とまだ彼女は続いていると私は思っているのですが」

「確かか?それは!
 その相手の職員は、何処の部署の誰なんだい?」

「・・・・うーん、県民・・課の・・・という男です。だらしの無い職員です」

「そ、そうなんだ・・・」

「それに、江藤係長の方も・・・・
 少し昔になりますが
 今、・・・課にいる女性職員をアッシーにしていたんですが、ある時、その女性とホテルから出てくるところを職員に見られています
 その女性職員とは、今はもう切れているようですが・・・」

「なにー!それじゃ、あの二人は・・・」

「ええ・・不道徳極まりない屑の職員です
 何処の職場にも馴染めず迷惑を掛け、組織からはみ出し、好き放題を続けています
 まるで、職場に遊びに来ているとしか思えません
 異動できる職場が見つからず、人事課もこの二人には苦慮しています
 県民にとって不要な職員で、どこかで潰れて辞めてくれるか・・事件でも起こして処分できればいいのですが・・」

「おい、おい!そんな二人が目の前の席にいるんだぞ」

「私もまさか・・伊藤さんの配置先に、江藤係長がいたとは・・」

「はぁー?」

「これまで、異動のたびに、それぞれの上司が人事課に相談に来られました
 今、所長が仰られたことと、ほとんど変わりません
 その二人が向かいあわせとは、申し訳ないことでした」

「うーん」

新藤は天井を睨みつけた、そして言った


「課長・・再度聞くが
 江藤係長と伊藤さんは特別な関係にはなりえないと言うんだな」

「ええ・・伊藤さんは前の男と続いていると思いますから
 江藤係長が手を出しても肘鉄をくらうでしょう」

「そうか・・それでこの前そんな気を感じたんだ
 でも、あの二人の馴れ馴れしい関係は何なんだろう
 周りの人を二人の間に入れないというか、周りが目に入らないという感じで
 どうして、そんな二人だけの世界を創りだせるのか・・・不思議でならない
 ああ、そうそう、課長・・
 江藤係長はうちの支所の臨時の・・という奥さんを今、アッシーに使っている
 めしを食べたり、酒をのんだりしているらしい」

「そうですか?それは初耳ですが江藤のやりそうなことです
 それで所長、人事課が手を出せるのは人事異動の時、つまり来春になりますが
 それまでは、相談しながら所長のほうで対応をお願いしたいと思います
 必ず、来春二人とも異動させますので、思い切った手を打たれてもかまいません」

「よーし・・分かった
 私の思うようにだなぁ
 あの二人は県民の敵だ、真面目に働く職員の恥じさらしだ
 全体の奉仕者という崇高な精神、県民の公僕たる使命を忘れた公務員
 私の職場に本来あるべき秩序と執務環境を構築して、部下に徹底させてみせる
 それに、自分の妻や夫を裏切って快楽に溺れる男女・・・
 天に代わって、私が可能な限りの仕置きをしてやる!」

新藤は、人事課長から聞かされた情報を鵜呑みにして、自分を鼓舞していた
  1. 2014/11/11(火) 07:19:00|
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春が来た 第9回

人事課長と新藤は真剣な表情で話し合っていた


「課長・・・全く困ったよ、あの二人・・」

「はい」

「男はヤクザのような言葉遣いの怠け者
 女はピンクサロンにいるエロ事務員
 この二人がエロ話に花を咲かせ、他の職員が影響を受け
 男性職員は落ち着きがなく、競ってエロ事務員のご機嫌取りになってしまっているようだ
 ただ、幸いにも今のところ業務にはまだ失態はないが、いずれ出るだろうし
 何よりも、私の神聖な職場の雰囲気が壊されて、緊張感を欠いているのが心配だ」

「ええ・・」

「課長・・・ここだけの話だが、あの二人は普通じゃない・・・
 ひょっとして・・・もう特別な関係にあるのではと思えてしまうぐらいなんだ」


人事課長は新藤の率直な問いかけに、暫くして

「それは無いと思います」

「えっ?私の目の前で二人だけの世界を作っているんだぞ
 それに、お昼も一緒、休憩も一緒
 話す話題はくだらないことばかり、特に男と女のアノ話に夢中なんだ
 パソコンの操作を教えてくれと言っては
 伊藤さんを側に寄せて、いちゃいちゃしながらキーボードを操作する
 肢体が触れ合っているんだ」

「うーん、でも・・彼女には別の男がいて、まだ・・・」

「なに!!今、何と言った?」

「所長がそこまで仰るので話すのですが
 彼女は以前の職場でも前歴があるのです
 相手は江藤とは別の男ですが、やっていることは全く一緒です
 その課の親睦旅行に
 この二人、もっともらしい理由をつけて参加しませんでしたが
 別のところにいるのを、職員に見られているのです」

「なんだと!」


新藤の目が怒りに溢れる
  1. 2014/11/11(火) 07:18:16|
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春が来た 第8回

5月末となり、新藤はイライラが募る

江藤係長は仕事もろくにせず
午前1回、午後1回決まって珈琲タイムを取る
それも約1時間
その休憩に、瑞希が付き合っている
瑞希は江藤の分まで珈琲を用意し、楽しく談笑の世界に入っている
机の上の電話が鳴ろうとお構い無しだ
話し声が大きくて、新藤の気分を苛立たせる
この間も、新藤が休息室に入ってみると
深い応接セットに二人は対面に腰を掛け
瑞希は丈の短いスカートから覗く長い足を何度も組みかえる
その都度、柔らかそうな太腿が新藤の位置からでも見えてしまう


(なんだ、この雰囲気は?まるでピンクサロンじゃないか!)


二人は、新藤の存在が無いかのごとく、自分達の世界、自分達の会話に没頭している
離席する時も、支所の外へ出る時も何も言わずに出て行く
まるで所長の新藤を無視しているようにも思える・・・・・・・
ある時、瑞希が本庁に用務で出かけ、江藤も一緒に出かけた
帰ってきた二人の様子が、何時もの馴れた雰囲気と異なり距離間がある


(おや・・・なんかおかしい、何時もと違う)


新藤は、江藤が女性職員のお尻を触るのを何度と無く見ていた
それとなく、セクハラ行為は特に公務員には致命傷になると話したことがあるが
江藤はお構い無しで、何処吹く風


(はーん・・・江藤め、手を出したなぁ)


しかしその後、二人の雰囲気は元に戻り、執務状況は益々おしどり夫婦のようになり、他部署の職員もその雰囲気にあてられて行った


(何か手を打たねば駄目だ・・・・もう春は過ぎたというのに色気づく雄と雌)


新藤は外から見えない三人だけの事務室でイライラが益々募る
この支所での最高責任者と言えども、素直に言うことを聞かない二人
1人対2人の構図の執務室ではなんとも手の打ち様が無く、頭を抱え込む

ここで漸く人事課へ相談を持ちかけたのだ
  1. 2014/11/10(月) 09:47:07|
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春が来た 第7回

 新藤は久しぶりに本庁に来ている
 常任委員会終了後、瑞希の異動前の所属課に顔を出した
 そこの課長は新藤と同期の桜だ


「よう、新藤・・・昇格しての新部署はどうだい・・もう慣れたか?」

「おう、慣れるも何も・・・自ら手がける仕事らしい仕事が無いからなぁ」

「それは、良いご身分で結構なこと・・・
 そらそうと、この間お宅の伊藤さんがここに来ていたが
 彼女、何かあったのか?」

 同期の桜が目を細めてにこやかに新藤を見る


「何かって?」

「見たところ・・凄く元気そうに活きいきして
 ここを出るときとは大違い、まるで別人のようでさぁ」

「えー・・・彼女、ここではそんなに元気がなかったのか?」

「ああ・・1日中パソコンの画面をボーとみているとか
 そうそう、確かここに配属された年は半年ぐらい休職していたなぁ
 職場復帰後も無気力感が漂っていて、担当の係長がぼやいていた」

「そうなの?
 私のところでは、毎日喧しいぐらいに話をして元気一杯なんだけど
 その話題がなぁ・・・・」

 新藤の顔が崩れている


「休憩時間もお昼休みも
 ファッション、車、グルメ・・・
 係長の江藤を相手に喋りまくるんだ、係長も奇声を出す始末 で・・・・毎日だぞ
 私は、弁当を食べると嫌になって直ぐに部屋を出るんだけど
 二人とも話す声が大きくて
 係長が下ネタの話をしだすと、回りの職員も同じようにガヤガヤと
 彼女、長身だろ、短いスカートで係長の目の前で足を組みかえるんだ
 すると、係長は覗く様な格好をして、それをまた回りの職員が一緒になって
 囃し立てる・・・・・・・・全く私の職場が安キャバレーのようで」

「おい、新藤・・・お前は人事管理は苦手なようだから
 早めに人事に相談しておいたほうがいいぞ
 その江藤係長は昔からなにかと有名だし、伊藤のことも情報を入れておくことだなぁ
 伊藤も厄介だが、それに加えて江藤係長もいるのか・・・」

「えっー!なに伊藤さんも厄介?」

「ああ・・早く相談をしておくことを薦めるよ」


 新藤は着任してまだ日が経っていない
 地域団体への挨拶回りや本庁の会議が重なり、人事への相談はもう少し先のことになる
  1. 2014/11/10(月) 09:46:22|
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春が来た 第6回

 今日の瑞希の服装は白いワンピースに黒のバンド
 ワンピースの下裾には黒のフリルが付いている
 
 瑞希はいつもの雑談相手が珍しく現場に出かけて居ないこともあって
 落ち着いた雰囲気でパソコンの画面に向き合ってキーボードを叩いている
 背筋を伸ばし、まるで大企業の重役秘書のようだ
 その横顔に新藤は見とれていた
 不思議な娘だ・・・・・・・いや奥さんか


「伊藤さん、ちょっといいかな」

 瑞希が新藤の顔を見る
 瑞希の目が悪戯っぽい少女の目つきになった


「実は先週の金曜日なんだけど・・退所時に、江島係長が臨職の女性の車に乗っていたんだ
 確かその前の金曜日にも同じ様に
 彼はあの奥さんに、駅まで送ってもらっているのかなぁ?」

「えー・・所長は知らなかったのですか?みんな言ってますよ
 花の金曜日!江島係長はあの奥さんとご飯を食べたり、飲みに 行ったりしてるって」

「えっ!そうなの・・・
 まさかとは思うが、二人とも所帯持ちなんだから
 余り疑われるような行動は、慎んだほうが・・・」

「所長・・・心配し過ぎですよ・・食事やお酒を飲むぐらいで」

「うーん、そうかなぁ」

「江島係長は、私の車にも乗せろって言うんですよ」

「君の車にも?」

「はい
 係長は、電車通勤でしょう
 だから、朝の出勤途上で拾ってほしいと
 でね・・この頃、駅付近で車を留めて待っているんです」

「そ、そんなことしていると・・・他の職員から同伴出勤していると言われるぞ」

「同伴出勤って?・・そんなんじゃありません!
 出勤の途中で拾っているだけです
 へへん・・・でね、所長
 それをする代りに、係長には重い荷物を運んでもらっているんです
 私、荷物を持つのは苦手でしょう・・・・助かるんです」

「そ、そう言えばそんなことが・・・」

「そのほかにも・・両手が塞がっていればドアを開けてくれるし、優しいでしょう?
 なので、パソコンが苦手な係長に代わって私がしたりして・・」

 新藤は呆れた顔になった、そして厭味を言った


「そうなんだ・・あなた達、二人はもうそんな仲に・・・
 彼は仕事をしないで、女の扱い方ばかりを磨いているからなぁ
 お昼は必ず対面していつも決まった席に座り、あなたが彼の御茶を入れる
 そして、ワイワイ話をしながら楽しく食事をする
 周りの職員の気配すら感じないかのように・・・・・・
 まるで、新婚の夫婦だ・・いや、あつあつの恋人同士かなぁ
 もしも私の妻がそんなことをしていたら、私は我慢ならないし、即・・離婚だ
 あなたのご主人は平気なのかな?それとも家では上手くごまかしているのかな?
 それに、荷物を運ぶのも、パソコンを操作するのも
 私にはいちゃつくための口実としか思えないけどねぇ」


 瑞希の目が遠くを見つめるように細くなり、新藤から視線をそらした
  1. 2014/11/10(月) 09:45:30|
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春が来た 第5回

今日も瑞希と江島が朝から雑談している


 「お前、その爪、職場でつけてて大丈夫か?俺はかまわないけどなぁ」

 「そう?これ、高かったのよ」

 白く細長い指先の爪には、模様の付いた長い爪が光っている


 「ふーん・・それに、その服も・・センスがいいし、白い肌に似合っている」

 「係長・・・上手なんだから・・」

 「どうだい・・一度飲みに行くか?」

 「うーん、どうしようかなぁ」

 「よう・・いこうぜ」


 新藤が舌打ちをした
 此れといって仕事がない新藤には、二人の雑談は自然と耳に入ってくる


 「ちょっと考えさせてね・・・係長」

 「ああ・・・」

 江島はいつものように、別室に休憩にいく
 休憩にいくと30分から1時間は戻ってこない
 新藤が瑞希に話しかける

 
「えーと・・・伊藤さん、知ってるかなぁ」

「何ですか、所長」

「江藤係長のこと・・・」

「係長のことって?」

「彼、いつもあんな態度だろう
 だから、県庁内では上司に反抗する怠け職員というレッテルが貼られていて
 それに、女の子のお尻をさわるしセクハラの常習犯でもあるという噂なんだ
 気をつけたほうがいいよ」

「でも所長
 係長は職員のゴルフ同好会の代表をしていて、メンバーにいろいろ指示したりして
 面倒見もいいし、しっかりしていますよ
 この間も、ここにメンバーが訪ねてきて、私、お茶を持って行ったら
 その人たち、係長を親分のように立てていましたし・・・
 それと・・うふ!」

「なんだい・・・それと?」

「うーん・・その人たち、私のことを褒めてくれて」

「君を褒めた?」

「もう・・係長ったら、みんなの前で私のことを可愛いとか、美人だとか・・」

「はぁ!・・・もういいよ、伊藤さん
 とにかく、彼には用心したほうがいいと思うよ」


新藤は溜息をついた

自分が席を外したとき、この二人はいったいどんな風に執務しているのか
まさか、雑談三昧?この伊藤さんが江藤係長の暇つぶしの相手方に?
こんな女性職員とやくざ係長など今までの職場で見たことが無い・・・・

新藤は再び天井を見て大きな溜息をついた
  1. 2014/11/10(月) 09:44:45|
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春が来た 第4回

 伊藤瑞希が前任の事務員との電話で騒いでいる

「なぜ私が、そんなことをしなくちゃならないんですか?」


 どうも前任者から
 毎朝、職員のために珈琲を準備して出すように言われているらしい


「インスタントの珈琲ぐらい
各自で好きな時に入れて、飲めばいいのではないですか?」

 相手が好きなようにしなさいとばかりに電話を切った


「もう!ほんとに!いきなり切るなんて」

「おう、伊藤よ・・・どうしたんだ?」

「いえ、前任者の方がいろいろと・・・」

「あの馬鹿ブスのことは放っておけ・・俺の言うことも完全に無視しやがった
 今度何か言ってきたら、俺に代われや、ばしっと言ってやる」

「よっ!係長・・・頼もしいわ」

 瑞希が江藤にVサインを出した



「それにしてもお前、今日も服装が若いなぁ・・歳はいくつだ?」

「まぁ・・20代と言いたいところですが、32歳でーす」

「ほうう、32か?・・・32にしては細くて長い外人のような、良い足してるなぁ」

「そうですか・・・?」

「それに肌の色が、透き通るように白い」

「まぁ・・係長ったら」

 瑞希は白い長い腕を耳に近づけ、長い髪を掻き揚げる
 江島はその仕草を目を細めて正面からじっと見つめている
 所長の新藤も読みかけの新聞をデスクに置き、眼鏡の奥から瑞希に視線を送る
 それに気づいた瑞希は


「あっ、そうそう・・所長、所長にお話ししときたいことがありまして」

 瑞希が座ったままで新藤に話しかける

「ああ、うん・・伊藤さん、上司に話すときは机の前まで来て、話すのが礼儀ですよ」

「あっ、すみません」


 瑞希が新藤の机の前にやって来た
 新藤の鼻に瑞希の香水の匂いが届き、うっとりとした気分になる


「あら?・・所長、うーん・・少し良くなりました」

「ええー?」

「この携帯・・携帯です」

 新藤の机の上の携帯電話には
 新らしく番号が印字された細めのテープが貼られていた
  1. 2014/11/10(月) 09:44:00|
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春が来た 第3回

私の名は新藤進50歳、定年まであと10年
この春の異動で幸運にも本県の幹部に昇格
まあ、私の実力からすれば遅すぎるぐらいだ
昇格とは言え、こんな支所に配属なんて思っても見なかった
まあ、いいや
1年、英気を養って本庁に戻ればいいんだから
それにしても、目の前の男
厄介な部下だ

県職員の中で札付きの怠け者
上司の命令に従わず、勝って気ままのやり放題
態度も横柄でこの地域住民の評判も悪そう
電話の受け応えを見ても、まるでヤクザ
今日も本庁の技術職員を怒鳴りつけていた
まったく困ったものだ
何か問題でも起こされたら、私の管理能力が問われてしまう

女の方は特に何も聞いていない
なんか幼くて可愛い感じがする
とても、子持ちの人妻とは思えない・・・まるで世間知らずのお嬢さん風
化粧は濃い目だが細身で長身、それに長い髪
時々見せるあの髪を掻き揚げる仕草には
ぞくっとくる
顔は色白で・・

あっ、いかん、いかん
何を考えているんだ、私は!


それにしても、この部屋の座席のレイアウトは何だ
支所窓口の方から見えなくなっていて、まるでこの三人の専用空間だ
それに、なぜ彼が所長の私の前の席にいるんだ?
これと言って仕事もないし
前の二人の雑談ばかりが、嫌でも聞こえてくる
何かすることを見つけないとコレじゃぼけてしまうぞ
しっかりしろ!新藤進よ
ああ、1日が長い・・・・

新藤の視線の先には瑞希の横顔が見える
  1. 2014/11/10(月) 09:43:11|
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春が来た 第2回

私の名は伊藤瑞希32歳、旦那の名は一介34歳、両親と同居で男の子が一人いる
この春の異動で本庁からこの支所に転勤
前の職場では、病気で半年間休職
その後、職場復帰したものの仕事らしい仕事はさせて貰えず
臨職の女性たちとお喋り三昧
そうしたら、こんな異動に・・・・・ああ、面白くない
遣っていけるかしら?

それにしても、目の前のこの男、ヤクザのような話し方
この支所の臨職の女性と金曜は飲み会をしているらしいし、その人のお尻もさわる
年は55歳のおっちゃんで、役職は係長
派手なスーツに髭を生やして、ほんとに変なおっちゃん
ボウーとしていて扱いやすそう
でも、早くこんなところから脱出しないと
年寄りばかりの職場なんて
私の魅力が発揮できない

所長の席の前というのがちょっと気がかり
この所長、やり手の人らしいし、真面目そう
ちょっとカラかってやれ


「新藤所長、私たちメルアドの交換しません?」

「えっ?」

「江島係長と三人で互いのメルアドを登録しておきましょうよ
 緊急時に電話するより安いし、助かると思うんですが・・・・」

「ああ、そうだなぁ・・・」

「じゃ、決まり!所長と係長の携帯だして下さい
 私がみんなの分、登録しますから」


瑞希は所長席に向かった
「所長!なんですかコレ・・・活けてないですう」

新藤所長の携帯は多機能の最新鋭だが
裏に、太字で携帯番号を印字した太目の白いテープが貼られていた
  1. 2014/11/10(月) 09:41:08|
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春が来た 第1回

 私の名は江島晃一55歳、ある県の技術職員である
就職直後の上司と衝突してから、県の出先施設を転々と異動し
ここの支所で4年目を迎える
同一職場で4年目を迎えることができるのは、今回が初めてである
理由ははっきりしている
それは今の職場が余りにも田舎で、地域の人がのんびりしていてクレームがでないこと
そして、他の同僚も病気持ちか、癖のある者か、退職目前の年寄りばかり
要は、そんな職員ばかりを集めた職場なのである
私もここで退職を迎えるか、もう1度、異動があるかというところである

この春の異動で新しい所長が赴任した
この所長はいいとこのボンボンで、まだまだ出世する男である
少なくとも2年経てば、再び本庁に昇格して戻るとの噂である

もう一人、女性の事務員が赴任してきた
私好みで、色気のある一癖ありそうな女、人妻である
着任早々、暴走族の乗るような車に乗り、派手な服装で出勤し、ギャーギャー
喋り捲る・・・・・・・・変わった女だ

私の席は所長の目の前、女の事務員の席は私の前
否が応でも顔を上げると女の顔が見える
この女、やはり癖がありそうだ


「おう・・伊藤よ、お前、昔ヤンキーだろ?」


女事務員は手の甲にクリームを塗り、摺りあわせていたが

「そんなことないです!あの車は旦那の車、私、背が高いから軽四は嫌なんです」

「ほう・・それに、お前の化粧と着ている物、派手じゃないか?」

「そうですか?私、まだまだ女、捨ててないですから・・・」


江島は笑った
こいつは面白い
これで1年間は楽しめそうだ
  1. 2014/11/10(月) 09:39:52|
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新・不貞の代償 第76回

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  1. 2014/11/10(月) 09:30:03|
  2. 不貞の代償・信定

風 ⅢⅩⅤ

頑強に無頼漢の所業に憤りを露にしていた笙子の様子に少しづつ変化が現れ始めたのを壮年管理官の目は見逃さなかった。

「どうしました・・笙子さん?いやに腰が揺れているんじゃないですか・・・生理現象でも起きましたかな?」
吊り下げられた笙子の引き伸ばされた裸体は、重力で身動きすら叶わないと言うのに、左右に見事に張り出した蜂腰が小刻みな縦振りを示し始めていた。
「何を塗ったの・・・?」
見開いた目尻を一層、険しく吊り上げて、作業を終えて空の小瓶を玩ぶ若い管理官を睨み付けた。
「へへ・・な~に、笙子に迷惑を掛けるような物じゃないから安心しな。それどころか感謝されるようなとっておきの秘密兵器さ・・へへへ」
「ど・・どこまで、卑劣なの・・身体の自由を奪った上、そんな真似までしなければ女一人扱えないなんて男として恥ずかしいと思わないの。」
「けっ!言わせておけば何処までも生意気な助だぜ・・。お望みなら今すぐに女で生まれた事を後悔させてやっても良いんだぜ。オオ笙子!覚悟は出来てるんだろうな。」
若い管理官は勢い良く立ち上がると、磔の裸体に詰め寄り抗う妻の顎先を強引に掴んで口を吸い付かせた。
「む・・ぐ!」
笙子は緊張で乾き切った厚めの唇をきつく結んで、割り裂かれまいと激しく抵抗する。
片方のつま先のみの不自由な身体で何とか肉体の接触を交わそうと必死で身を揺すると、渡された太い梁がギシギシと軋み音を響かせ括り付けられた手足の肉に浴衣布が食い込み鬱血した肌色を更に真っ赤に染め上げる。

細腰を抱え込まれ引き寄せられ、下腹部の撓みに浴衣越しの股間を押し付けられる。
出っ張りが突き立つのだろう、尻を引いて逃れようともがくのだが限界まで引き伸ばされた脚関節は、情けないくらいに微小にしか身を引くを許さなかった。
「やめて~~!」
思わず悲鳴のような抗議を発する口腔に待ちわびたとばかりにヤニ臭い舌が入り込む。
「ぐう・・むむうう・・・。」
口を汚されながら、必死に抗い首を仰け反らせるが、大きな掌で後頭部を掴まれ引き寄せられる。
粘膜同士が激しく接触し歪に形を拉げさせ、口端からドロリと唾液の帯が垂れ下がる。

笙子は自由の利かない身体を、それでも精一杯に捩じらせて何とか逃れようと儚い抵抗を繰り返す。
髪は乱れ、全身にびっしりと汗の玉を噴き出させる姿は凄惨な色合いを滲ませる。
大量に分泌される唾液を流し込まれる紅唇は激しく汚され、顎から喉元にかけて不潔な口臭の汁で濡れ光る。
「ぎゃっ!」
突然、猟姦者は小さくうめくと獲物の頭部を開放し、押さえ込んでいた掌で自らの口元を押さえた。
「貴様~~~!」
一転、両眼を吊り上げると笙子の黒髪を鷲掴んで引き摺り倒す。
「おいおい、乱暴は止せよ。言ったろう勝気な奥さんだってよ、そう易々と屈服はせんさ。」
大きく息を乱す笙子を忌々しげに睨み付けながら、若い管理官は噛まれて血の滲む舌の根を晒け出して風に当てながら吐き捨てた。
「覚えてやがれ・・百倍にして返してくれる。」

そんな雑言を聞いているのだかいないのだか笙子は項垂れ、ただ一旦開放された裸身を激しく震わせ息を乱す。
余す所なく暴き出された豊かな胸が速度を増した呼吸の度にプルプルと波打ち、盛り上がった裾野を揺すって、暗示するかのように蛍光灯の影で鳩尾を翳らせる。
  1. 2014/11/10(月) 01:25:24|
  2. 風・フェレット
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風 ⅢⅩⅣ

「ホントだ・・おっさん、あんなに膨らみ切って飛び出してたクリトリスが、皮の中で縮こまってやがるぜ。」
息が掛かる程の間近で笙子の最恥部を食い入るように見詰めながら若い管理官は好奇の声を発した。
「うむ・・皮を剥いて豆粒にもしっかり塗りつけておけよ・・それと尻の穴もな・・ふふ・・勝気な奥様がどんな表情で泣いてくれるのか想像しただけで往っちまいそうだ。」

若い管理官は笙子の下肢に対峙し跪いた姿勢で慎重に右手を走らせていた。
「おう、この女のお道具、めちゃめちゃ複雑に出来てやがるぜ・・・。」
左手で膣の左右を寛げ内側に筆を運びながら興奮したような感嘆を漏らす。
「中で無数の襞が捩り合って、でこぼこしてやがる・・突っ込んだら擦られて気持ち良くて堪らねえだろうよ・・・。こりゃ本物の上玉らしいぜ・・・。」
「そうか、そりゃあ楽しみだな・・だがよ今は見蕩れていないで、しっかり仕事をしとけ・・その襞々の一枚一枚も全部捲り上げて塗り残すんじゃねえぞ。奥の奥までビッシリ塗っておけよ。」

手にした刷毛筆は更に膣奥に刺し進められ粘膜を擽る。
源泉に忍び込む異物感に刺激を受けているのか、笙子の口からくぐもった呻きが漏れる。
「く・ふうむ・・んん・・・」
夢の世界から引き戻されるように眉間に刻み込まれた縦皺が深みを増す。
「あ・うむ・・な・何・・・。」
遂に現実に引き戻された笙子だが直ぐには現状を把握できないでいるようだった。
ただ吊り下げられ引き絞られる、両手首と膝裏に辛さが走るのだろう、辛うじて地に付く右つま先に力を加えて身を支える。
「ああ・・何・・立てない・・い・・痛い・・どうしたの・・・。」
右の太腿に深く筋肉の筋を浮かび上がらせ、何とか身体を固定しようと力みながら、薄っすら開かれた霞みがかった視線を周囲に這わせる。
「何のまね!降ろして。」
どうやら置かれている状態が確認できたのか強い語気で、眼下で胡座座りを決め込む壮年管理官を罵倒する。

「ははは・・お目覚めですね、笙子さん・・良く眠っていらっしゃいましたぞ。」
「何を言ってるの!早く降ろしなさいよ!こんな真似してただじゃ済みませんよ。」
「ほう・・ただじゃ済まない・・さっきはあんなに悦んで泣いてらっしゃったのに、自分だけスッキリしたらもうそれですか・・勝手な奥さんですね笙子さんは・・・。」
「馬鹿なこと言わないで、あれは薬のせいじゃ有りませんか・・。勝手なのはそっちの方です!」
「ふふ・・まあまあ・・それよりもっと我々と楽しみませんか・・仲良くしといた方が笙子さんのためだと思うんですがな。」
「仲良くですって・・人をこんな風に縛り付けておいて仲良くなんて出来る訳ないじゃない!」
「へっ、知れた事を抜かすんじゃねえぞ・・俺達の手で失神するほど気を遣ったのは何処の誰だったと思ってるんだ!」
丁寧な言葉で受け答えしていた壮年管理官の語気が変化した。
「ふざけないで!破廉恥な卑怯者よ・・これ以上おかしな事をなさるなら、必ず訴えますわよ。」
「ふ~ん・・手前の欲求不満を棚に上げてそう言うことを言う訳か・・なら此方にも考えが有りますよ。」

「うっ・・何・・・」
笙子は自らの身に起こっている異変にようやく感ずいたようで、目線を真下に落とした。
無言の若い管理官は成り行きの推移を観察するように手の動きを止めていたが、再びゆるゆると筆を運び始めた。
「何やってるの~~!これ以上おかしな事しないで!」
「まあまあ、笙子さん・・じきに又、素直な笙子さんに戻れますよ・・そいつがね・・戻してくれるんですよ。はははは。」
「い!やだーー!!や・・やめてよ!変態!!きっと後悔なさいますよ!」
「へっ・・後悔だと・・ま、今に分かるぜ・・俺達同様あんただって変態の素質充分だって事がね・・へへへ」
垂れ落ちる事にも最早、無頓着で刷毛筆にタップリ液体を含ませると、最後に残されたおちょぼ口にも冷え冷えとした筆先を走らせた。
  1. 2014/11/10(月) 01:24:44|
  2. 風・フェレット
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風 ⅢⅩⅢ

打ち掛けられたブランケットの下で結ぶ、握り拳に冷や汗が滲む。
知らない振りを決め込む事で、笙子の身に取り返しの付かない傷を追わせる事に成ったとしたなら、二度と顔を上げる事が出来なくなるかもしれない。
いくら己の願望が屈折した性癖に起因しているとは言え、得体の知れない危険に晒されようとしている妻を見殺しにして、夫として・・いや人として許される筈はない。
それなのに、情けなくも私は間違いなく興奮の坩堝に居る。

元来の脆弱な精力は、昼間からの連淫により当に枯れ果てている筈なのだが、嘗て私に見せたこともない激しい妻の痴態が強く脳裏に焼き付き、驚いた事に限界を迎えた筈の淫茎をカチカチに昂ぶらせている。
笙子は既に巧妙な罠によって女の性を完璧に暴き出されてはいたが、今だ性器による接触さえ受けてはいなかった。
奴らは着衣の浴衣さえ一糸乱す事無いままに、笙子を糸の切れた土偶へと追い込んだ。
その凄まじいばかりの薬効と手際、そして笙子の業の深い性に圧倒されながら狂おしいばかりの嫉妬と興奮に駆られた。

今直ぐに行動を起こさねば、到底間に合わなかった。
跪いた若い管理官は左手の指先で笙子の秘貝を割り開き、薬液のたっぷり染み込んだ刷毛筆を近づける。
痛いほど握り締めた拳はぶるぶる震え心の動揺を表す。
飛び起きて妻の窮状を救ってやりたかった・・それなのにこのまま彼等の手に朽ち果てて行く姿を最後まで見続けてもいたかった。
何故、これほどまでに興奮するのか自分でも異常に感じたが、それこそが嘘偽りのない真実だった。
救い出す・・・それが果たして可能であろうか・・。肉体労働者のように野太く逞しい肉体が威圧する。しかも相手は屈強を極めた二人連れである、どの道体力に自信のない脆弱な自分に太刀打ちできる道理は皆無だった。
胸は早鐘を打ち鳴らし、全身に冷や汗が吹き出す。
卑劣にも不可能な理由を自ら肯定づけ、倒錯した性の痛みと妖しい誘惑に自らを押し込めると、切るような嫉妬が五感を刺激する。
知らない・・・笙子も・・誰も・・私の思いなど知らずに・・・ただの情けない罠に落ちた俘囚としてしか認識してはいない・・・いや、今はそう有って欲しいとだけ強く念じていた。
  1. 2014/11/10(月) 01:24:03|
  2. 風・フェレット
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風 ⅢⅩⅡ

閉じた目蓋の長い睫毛が時折ピクリと瞬き、ぐったりと項垂れた頭が苦しげに前後に揺れる。
呆気なく気を往かされたまま意識を失った笙子は、そのまま眠りに落ちてしまったようだったが、その寝顔は少しも安らかではなく、苦痛に必死で耐えているように見えた。

「呆れたもんだぜ・・よくこんな格好で眠っていられるな。」
作業を終えた若い管理官は咥え煙草の灰を落としながら呟いた。
「薬が切れるとああ成るのさ、副作用って奴だな。」
壮年管理官は鞄から何やら取り出しながら答えた。
「成るほどな、強烈な薬効もお仕舞いって訳か・・道理で肌の色も赤みが失せてきやがったぜ。」
「まあ別に今切れたって訳じゃないがな、当に終わってたんだよ・・・。」
「へっ・・でもあんなに乱れていたじゃねえかよ・・・。」
「あれはな溜め込んでた欲求を薬で呼び起こされていただけでな・・後は効き目が切れても発情を止めてやらなければ止まらないって事だな。」
「ふ~ん・・成る程じゃさっきのアクですっきりしちまったって事かよ・・・。」
「そう言うことだな・・だから今の内に細工が必要って訳さ。」
壮年管理官は取り出した小さな群青色の薬種瓶を手渡しながら不気味な笑みを浮かべて笙子の裸体に目をやった。

がっくりと力を失った笙子の身体は部屋の中央に立て掛けられていた。
高く天上に向けて伸ばされた両腕は、奪い取られた浴衣の袖で両手首を一纏めに括られて、先ほど衣類を干した桟と同じように敷設された隣室の桟に残りの布でしっかりと固定されていた。
不安定な無意識の身体は前方に倒れるように斜行し逆海老状に胸を反らせ、首は崩れて胸前に垂れる髪が冷房の風にそよいでいる。
立ち姿勢を支えるべき下肢は左脚が大きく割られて、脇腹に腿の上部を接し膝から浴衣帯でやはり桟に縛り付けられている。
自分で支える事の叶わない正体の無い身体は立っているのではなく大股開きで桟からぶら下がっていた。
残された右脚は何とか畳に触れてはいるが、踵は浮き上がってしまっており、辛うじてつま先のみで地に着く事が出来ているに過ぎなかった。

ぶら下がる基点の肌の三点は重力をまともに受けて周囲を盛り上げながら肉に食い込み、鬱血した肌が痛々しい惨状を呈していた。
薬効が醒めたらしい全身の肌目は血の気を無くしたように青ざめ、蒼白の裸体がまるで生気を吸い取られてでもいるかのように映った。
「たっぷり塗っておけよ、一瓶空けてしまって構わんからな。」
「でもよ・・高いんだろ・・これ・・・。」
若い管理官は渡された小瓶に細い刷毛筆を突っ込みながら香りを嗅ぐ。
「ああ、目玉が飛び出るくらいな・・輸入規制で裏からしか手に入らんからな。だが心配は無用だ、これ程の上玉なら充分元は取れるからな。」
「でもよ・・やばいんだろ・・この薬・・もし壊れちまったら元も子も無くなっちまうんじゃないか。」
「ああ、多分かなりやばいだろうな。使われて放置された助が余りの苦しさで舌を噛み切っちまったって話を聞いてるよ。」
「大丈夫かよ・・。」
「まあ、そのまま放置する気は更々ないから大丈夫だろう。」
「そりゃそうだ、放置なんて勿体無い事は、息子が許してくれんだろうけどな・・。でも塗る量は加減した方が良くは無いか・・・。」

座り込んでビールをチビチビ舐めながら壮年管理官は鋭い目を笙子に向けると。
「お前だって見たろ、この女の勝気な所をよ・・正気に戻ればそう易々と屈服する玉じゃねえ・・・。無理やり犯すのは訳は無いがどうせなら徹底的に貶めなければ後々に問題が起こるかもしれんからな。」
「ふ~ん・・ま・そうだがな・・・大丈夫かな・・・。」
若い管理官は小瓶の口で刷毛筆に含ませた余分な液体を慎重に切り落としながら笙子の足元にしゃがみ込むと、惨いほど剥き出しにされた股間に顔を寄せた。
  1. 2014/11/10(月) 01:23:27|
  2. 風・フェレット
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風 ⅢⅩⅠ

汗を拭うと言う口実で用いられた浴衣は、当に投げ捨てられて無造作に笙子の腹の下に転がっていた。
拭うどころか、今やその全身は水をかぶった程にズクズクに濡れそぼり、髪の毛を額や頬にベッタリと張り付かせている。
四つん這いの姿勢を取らされ、畳を踏み締める四肢は崩れそうに力を失いかけたと思うと、逆に踏ん張るように突っ張る。
がっくりと崩れて肩の下へ沈み込んだ顔は、苦悶を訴えるかのように眉根に深い皺を刻み、ぎゅっと唇を噛み締める。
肌に纏わり付く二対の掌は、発汗の滑りを巧みに生かしながら、あくまでもソフトに毛穴をなぞるような愛撫を延々と繰り返していた。
背、腹・・・肩、首はおろか脇の下や脹脛、足首や二の腕に至るまで全身を隈なく這い回る。
豊乳の上下の縁や盛り上がる尻たぶ、腿の付け根から下腹、臍や陰毛など際どい部分にも矛先を向かわせているものの、まるで風船に水を蓄えて吊り下げたように重々しくぶら下がる乳房やバックリと開き切り果てしなく蜜を吐き出す陰部から上下に連なるラインには一向に向かおうとはしなかった。

「うむうう・・ああ・・・」
快楽の源泉に指先が近づく度に喘ぎをもらし、むづがるように腰をもじつかせるのだが、次の瞬間には強い摩擦を与えながら逆方向へと踵を返す。
その度に笙子の口からは深い溜息がもれ、折れた首を更に項垂れる。
そのような焦らしが何度、繰り返されたであろう遂に笙子の口からは絶望の悲嘆が零れた。

「ひ・・ひどい・・もう・・このままじゃ・・お・・おかしくなっちゃう・・・。」
管理官二人は顔を見合わせ満足げに頷きあった。
「笙子さん、このままおかしく成りたいですかな、それともここらで歯止めをかけましょうかねえ・・、如何なもんでしょう。」
「このままじゃ・・本当におかしく成ってしまいます・・もう勘弁して・・か・勘弁。」
哀願する言葉は泣き声で掠れる。
「勘弁ねえ・・どう言う意味なのかな・・やめてくれって事なんでしょうか・・ねえ。笙子さん。」
「い・いじわる・・言わないで・・・わ・分かってるじゃない・・そんな・・・。」
「はて、分かる・・いいや、分からんですがね・・何の事だかサッパリとねえ・・。お前分かるか。」
「いや、俺も分からねえなあ・・おかしくなっちゃう、おかしくなっちゃうって・・こっちが可笑しくなっちゃうぜ・・なあ、笙子・・一体お前はどうされたいんだよ・・ええっ!」
二人は笙子に回答を求めながらも、相変わらずゆるゆると官能を揺さぶり続ける。

「く・うう・・・」
分かり切った事なのに無慈悲にも聞き届けられないもどかしさが目の縁に涙を溢れさせる。
「さ・・さわって・・さわって下さい・・・。」
真っ赤に染まった頬を隠すように、肘を地に付き顔を両掌で覆うと噛み締めた唇を開いた。
「ほう、触って欲しいんですか・・・成るほどねえ・・・。」
「触ってやってるじゃねえか!ず~と俺達の手は塞がりっぱなしだぜ!」
強く言い放つと若い管理官は手を這わせていた陰毛を強く引っ張った。
「うう~~!い・・いたい・・いたい・・ひ・酷い・・・。」
「いい加減にしないと全部毟り取っちまうぜ!こっちだっていい加減、飽き飽きして来てるってのが分からねえか!」
「うあああ・・・・・」
一際大きな嗚咽が漏れ出て大粒の涙がぼろぼろと畳に滴った。

「お願い・・触って・・・お・・お・ち・ち・・・おちち触って・・・」
「ふっははははははは・・おちち、か・・こりゃ良いや。」
「ふ・・ふう・・・うう・・アソコも・・アソコもお願い・・・。」
「アソコだと・・あそこってなあ何処だよ・・んん・笙子。」
「お・まん・・・・・こ・・・おまん・・・こおおおおおおおおお・・・」
泣きべそを掻きながらの屈辱の告白を受けとると、両乳の麓を這っていた壮年管理官の両掌は笙子の肩を跨ぐように圧し掛かり、重く下がる乳を下から揉み潰すように鷲掴み捏ね回す。
「あ~あ・・あ~~~あああ・・・」
凄まじい善がり声を発した口元からは唾液の帯が流れ垂れ下がる。
そしてその次の瞬間には、一転して轟声はピタリと止むと奥歯を食い縛る軋み音を奏でる。
鯉の口のようにパクパクと開閉する膣口に若い管理官の中指と薬指の二本がズブリと突き刺さり、激しく吐き出されていた熱い息を詰めさせる。
笙子は噛み締めた奥歯の力で頬肉を引きつらせ、閉じた目を苦悶に歪める。

ゆさゆさと好き放題に揺さぶられる両乳は歪に変形しながら、食い込む十指にゴム毬のような弾力を伝え、
淫裂に押し入った二指は中の温水を掻き出すように、上部の襞を擦りながら抜き差しを始める。
「く・・・くく・・・」
必死で堪えている鼻腔から熱い息が漏れ、四肢はビリビリと筋肉の溝を深める。
笙子にとっては願望であった筈なのだが、絶頂へと向かおうとする本能の堰から踏み止まろうとする様は、彼女の最後の理性の抗いにも見えた。
だが、そんな笙子の頑張りも、所詮は儚い泡くずでしかなかった。

豊乳の先端で痛いくらいに尖り切っていた乳首が指の腹で押し潰され、乳房を鋭角に変形させる程の力で引っ張られ、丸々と容積を限界まで高めて充血する肉芽を弾かれて、膣に食い込む掌の空いた親指が菊のおちょぼ口に突き刺さると、項垂れた頭部は一瞬にして後方に仰け反り、汗を含んでてらつく髪を獅子の鬣の如く打ち振って、断末魔の震声を有らん限りに轟かす。
「おおおお・・おおおおおおお・・・おーーーお・・おーおーおー!!!」
絶頂と共に四つん這いの身体は崩れ落ちて、畳に這いつくばった全身は痙攣して打ち震える。
男達の歓声と嘲りの中、どうやら笙子は自失し意識が遠のいてしまったようだった。
腹這いの両脚は人の字に開き、その付け根では哀れな秘腔が大きく開いた開口部をパックリと曝していた。
  1. 2014/11/10(月) 01:22:36|
  2. 風・フェレット
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風 ⅢⅩ

嗚咽とも喘ぎとも判別の付かない微妙な音色が聞く者の過虐欲を掻き立てる。
「くうむ・・ふっふう・・う・・おう・・・。」
執拗に縁をなぞっていた指先は遂には、泥濘の壷に埋没する。

本音を吐露した笙子から、自らを律する自戒の念が失せつつ有る事は火を見るよりも明らかであった。
暗窟に消えた指先は、躊躇いがちに浅い抜き差しを暫く繰り返した後、堪え切れずに粘つく蜜を掻き分けながらズルズルと根元までも視界の端から消え失せた。
「くうう・・むむぐ・・ううう・は・はっ・・・。」
ここまで来れば、漏れ出る声が絶望からの悲嘆などではなく官能の疼きからのものであるのは明白だった。

「随分と刺激的な光景ですなあ・・笙子さん。その勢いならば御自力で解決なさってしまうかもしれませんなあ。」
「う~~む・・ふっ・・ふうう・・・。」
「早くも、お口さえ利けなくなっておしまいな様子ですな。良いのですよ我々なぞお気になさらんで派手に気を遣ってお仕舞いなさい、手間も省けようって言うもんですよ。」
「くむむう・・お・・お願い・・ひ・・灯を・・け・・消して・・・おねがい・・・」
「灯を・・このままで良いでは有りませんか、笙子さんの美しい表情を最後まで鑑賞させて頂けませんか、それこそ我々からお願いしますよ。」
「や・・い・・いけないの・・気になって・・ううう・・・」
「それは困りましたねえ、それじゃ笙子さん治まりが付かないでしょうね。」
「あああ・・お・おねがい~~・・も・・もう・・く・・苦しい・・はあああ・・・」
「わかりました・・では及ばずながらお手伝いを致しましょうかね。」
「くふう・・あ・・ありがとう・・ご・・ございます・・・」

もちろん消灯に対して礼を述べた筈だったが、立ち上がった壮年管理官は蛍光灯のスイッチには見向きもせずに、地に這いつくばる笙子の側面に歩み寄った。
気配を察した笙子は頬を畳に押し付けたまま脅えたような目線を上方に投げる。
「気の毒に・・酷い汗だ・・これでは身体が滑ってさぞ御不快でしょうな。」
言いながらその場に膝を曲げてしゃがみ込む。
「い・いえ・・それよりも・・電気を・・・電気をお願いします。」
流石に不安が胸をよぎるのであろう、すっかり姿を隠していた中指は僅かな最先端部を残して粗方を灯の光の下に現して動きを止めた。
引き抜かれた女陰部は左右の弁をすっかり割り開かれ、充血し切って真っ赤に変色した秘境までもしっかりと口を開いて中からは濃厚な濁汁をドロドロと垂れ流した。
「少し拭いて差し上げましょう、でないと冷房の冷気で風邪を引いてしまいますよ。」
「け・・結構です・・寒くはありません・・暑くて堪らないくらいなんです・・それよりも・・・」
「御遠慮は無用ですぞ、私達は手助けをして差し上げようと思っておるのですから。」
懇願を遮るように言葉を被せると、両膝立ちの低い姿勢の背を伸ばして唯一、笙子の背を覆う白地の浴衣に手を伸ばした。
「や・・ちょ・・・」
笙子は慌てたように唸ると空いている右手で壮年管理官の節くれ立った野太い手首に指を掛けたが不自由な姿勢からの制止は、何の役にも立たなかった。

笙子の意向など全く無視され、全裸を辛うじて遮っていた布切れは無慈悲に剥ぎ取られてしまった。
「い・・いやです・・恥ずかしい・・・。」
剥き出しになった白い背はビッショリと汗の玉を浮かべ妖しく上気している。
「ははは・・笙子さん、今更何が恥ずかしいのですか。こんな物が有ろうが無かろうが全部丸見えじゃないですか。」
「で・・でも・・何もないと・・・。」
役に立っていない衣類でさえ唯一の隠れ家だったのだろう。産まれたままの姿に剥かれた笙子は先程までの大胆極まりない自慰に回していた左手さえも引き篭もらせ、肩口を両腕に抱き締めて縮こまった。
「さあ笙子さん、これでちょっと汗を拭ってサッパリさせて上げましょう。な~に遠慮は要りませんぞ・・嬉しいくらいですからな・・ははは。」

壮年管理官は手にした浴衣を一纏めに丸め込むと、小刻みな震えを刻む笙子の背に沿って走らせる。
左の手で汗を拭う振りをしながら、右手は全く関係のない動きで背の肌の弾力を楽しむようにゆるゆると這い嬲る。
「ううん・・いや・・」
微妙な指先の愛撫にもじもじとした刺激を受けているのだろう背筋をピクッピクッと痙攣させる。
手指の動きは更にエスカレートして掴んだり、押し込んだりする動作を交えるが、笙子は只身を固くして耐えるのみであった。

壮年管理官はそっと後方を振り返り、若い方と何やら目配せを交わすとじっと座っていた片割れも立ち上がって先客とは逆の側面にしゃがみ込むと、おもむろに両手を笙子の脇腹に這わせた。
「い・・いやあ~~・・」
さすがに耐えかねたのか身を捩って逃れようともがいたが、回された若い方の筋肉質な両腕でウエストを引っ掴まれ、腰さえも浮かす事が出来なかった。
  1. 2014/11/10(月) 01:21:49|
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風 ⅡⅩⅨ

裸体を辛うじて薄衣で覆い隠してはいるものの、夢のように目映い白さを湛えた柔肌の大半は蛍光灯の青澄んだ照明に暴き出されていた。

膝から崩れ落ちた笙子の下肢は両足裏を天に向け、折り畳まれた膝頭を基点に八の字を描くように緩んで開け放たれ、その台座の真上には身の力を失った上体が間を割るように乗り掛かり、持ち上がった尻を突き出すかのように顔を両膝の間だの畳面に擦りつける。
蹲り丸まった背筋が規則的に隆起する様からは笙子の激しい息使いが見て取れた。
浴衣の衣は確かに身体の上に被さってはいたが、既に衣類としての役目を果たしてはおらず激しい発汗で艶めく下肢や肩口、丸々と隆起した臀部でさえも下半分を曝け出していた。

「へへ・・ドスケベマダムは一遍、気をやって更に催して自制すら効かなく成っていらっしゃるようだぜ。」
驚いた事に若い管理官の指摘通り、食み出した尻たぼの下方で見え隠れする亀裂には身体の下部から這い出た中指が腹を食い込ませているのがまともに目に入った。
桃のマニキュアを被せた白く細い指は耳を寄せれば音が聞こえてきそうな勢いで淫裂を弄り、蠢きの度に濁った色の粘液を溢れさせていた。

「なあ・・笙子さん、こうして貴方の願望を叶えて差し上げても良いと言っておる男が二人も揃っているって言うのに、ご自分で悪戯などなさらんでも宜しかろう。」
壮年管理官は猥褻な笑みを満面に乗せて、なお笙子の自発を煽り続ける。
「へへ・・聞こえてるか!笙子、満足出来るまで可愛がってやろうって言ってんだ、分かるだろあんただって生娘じゃねえんだし・・。催促ってのをどうやってしたら良いのか知らねえ何て言わせやしないぜ!」

二人の管理官は勝ち誇ったような余裕で笙子を追い詰める。
「ふう・・う・・あたし・・へ・・変・変なの・・ジンジン痺れて・・た・堪りません・・。」
消え入るような声で窮状を告げつつも弄る手指は加速され、細肩はしゃくるように小刻みに震える。
「なあ、笙子さん。男ってのはなあ・・女が股を広げればそれだけで発情できるって奴ばかりじゃ無いんですよ。ご自分の願望を満たしたいのならば、自分でもそれなりの努力ってものが必要な時だって有るんですよ。それが良く分かっていらっしゃらないから、その様に欲求不満を溜め込まなくてはならなくなってしまったのではありませんかな。」
「お・・おっしゃるい・・意味が・よ・・良く分かりません・・うくっ・・な・・ああ・・あ・な・・何を言っていらっしゃるの・・・。」
「はは・・いや、他愛の無い疑問とでも申しましょうか・・つまりですな、演出も必要と言う事でしょうかな。特に我々のように始めてお相手させて頂くのならばいざ知らず毎日毎日、顔を突き合わせる相手なら尚の事でしょうね・・。そうだなあ・・聡明な女も良いものですがね・・男は時として娼婦の如く淫らに迫られてみたいと言う願望を持つ事だって有ると言う事ですよ。」
「み・・淫ら・・に・・ですか・・ううう・・もう・充分に淫らな姿を曝しているでは有りませんか・・・。」
「ははは・・おっさんが言ってるのはな、あんたの旦那の事だ!それくらいわからねえのかよ。」
「しゅ・・主人は・・うう・・。」
「ご主人は笙子さんに充分な満足を与えていらっしゃいますかな・・。如何ですかな・・笙子さん。」
「うう・・そ・・それは・・・。」
「ノーですかな・・笙子さん。」
「は・・はい。」
笙子の口から夫婦の秘房を白状する肯定の言葉が吐かれ、それに嗚咽が重なった。
  1. 2014/11/10(月) 01:20:55|
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風 ⅡⅩⅧ

黒い浴衣帯が足元の畳表に無造作に横たわる。
浴衣の前合わせを再び掻き合わせ、その場にたたずむ笙子の眼前には二人の管理官が胡座座りで、今や遅しとショータイムのクライマックスを凝視していた。

「ああ・・そんなに近寄らないで下さい・・。本当に恥ずかしいんです。」
消え入るような声で訴える笙子の言葉は完全に無視され、ただ無言で微かな瞬きの間さえも惜しむかのように見開かれた両眼を血走らせる。
聞き入れられない事を悟ると笙子はがっくりと頭を項垂れて、両手をゆっくりと左右に押し開いた。

肘をやや折り曲げた両の手は、それぞれの掌に浴衣の前布を握り締めて大きく割り開かれた。
私の目には浴衣をマントのように大開にした笙子の後姿とみっともないほどにガタガタ震えながら裾から覗く足首の裏の腱が見て取れた。
浴衣の布地は完全に開陳し隣室の照明によって見事な身体のラインをシルエットにして浮かび上がらせている。
その内側ですっかり剥き身を晒した全裸を胡座座りでご前に陣取った二人の管理官は上体を乗り出すように齧り付かんばかりに紅顔を寄せる。

「見ろよおっさん、腿の内側ベタベタに汚してやがるぜ。」
「ふん・・相当、濃厚な匂いがするな・・。当に尋常では無いって感じだな。」
「ああ・・尋常じゃないよ。ほれオマンのビラビラをあんなに充血させて食み出させてやがる・・。」
「そのビラビラにも涎がベットリ乗っかって・・。ちょっと触ったら溢れて滴り落ちてしまいそうだな。」
「な・・俺が言った通りだろ・・この奥さん・・完璧な欲求不満だぜ。下から見てみろよ、あの豆粒・・皮を捲り上げて飛び出しちまってるぜ。」
「自分で弄くりすぎてるんじゃないかな、ありゃあ肥大症ってやつだ。」
「へへ・・風呂場でもグチュグチュやってたしなあ・・多分、主人の仕事中に毎日擦り回してたって口だろう・・。これだけのサイズにゃなかなかお目に掛かれねえぜ。」
彼らが言葉を吐く度に笙子の足元がブルブルと震える、有ること無い事をさも暴き切ったような口調で論評されるのは余程辛いに違いない。
「や・・やめて。嘘です・・そんな事はありません・・。」
「へへ・・違うって・・そう言うのか。ならちょっと検査してやるよ、ふふ・・。」
そう言うと若い管理官は股間部に寄せていた顔を更に前方に押し出した。

「う!やっ・・。」
途端に真っ直ぐに伸びていた笙子の上体が前部に折れ曲がった。
「む・・く・くう・・。」
奥歯を食い締めるような呻き声を発して腰を後方に逃そうと身を屈めるが、無骨な掌でがっちりと尻を抱え込まれ引き寄せられる。
「クウゥゥゥゥゥ・・・」
押し殺すような媚声に乗せて畳を踏み締める両の膝ががっくりと支えを失い折れ曲がって脹脛にピクピクと痙攣を起こす。
両の手で自らの股間に食い込む無頼漢の髪の毛を鷲掴むみ、押し付けるような動作さえも覗わせる。
「ほう・・笙子さん・・なかなか積極的じゃないですか、そんなに押し付けては窒息してしまいますぞ・・ふふふ。」
笙子はそんな壮年管理官の言葉は全く耳に届いていない様子で、なおも若い管理官の頭部を抱かかえる。

「ぐう・・」
ほんの数秒間の口愛であったが、笙子は首を後方に仰け反らせて言葉にもならないような言葉で呻くと、腰の戒めを外されて膝から畳に崩れ落ちてしまった。
「へへ・・おっさん、すげーぜ!オマン中が灼熱地帯だ。ドロドロの汁が吹き出して来やがる。」

畳に突っ伏して肩で息をする笙子の身体は背に纏った浴衣から肉付きの良いムッチリした両腿を剥き出した状態で不規則に痺れるような震えを見せ、強引に押し上げられ屈服させられた哀れな姿を横たえていた。
その前で勝ち誇ったような笑みを浮かべ、持ち上げられた若い管理官の顔は目から下の全てがビッショリと情の強い淫液で濡れ光っていた。
  1. 2014/11/10(月) 01:19:52|
  2. 風・フェレット
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風 ⅡⅩⅦ

「ヒュ-!そのポーズ艶かしいな・・・ビンビン来ちまうぜ。さっさとやらずに勿体つけながらゆっくりお願いしとくよ・・。笙子みたいな別嬪が羞恥で頬を赤らめてスケベそうな分厚い唇を噛み締めながらオズオズと自ら肌を晒して行く姿、下半身には最高のご馳走だぜ。へへ・・」
笙子は羞恥心を煽るような卑猥な野次に、項垂れていた首を更に深く前方に折り曲げて暫し身体を硬直させた。
辛うじて突起を浴衣の布で覆い隠した豊乳は項垂れても尚、大きく迫り出し隆起する丘を露にする。
右手でそれを庇うように抱かかえながら、左手は帯の結び目に掛けられる。
「へへ・・帯が解けたら前がパックリ開いちまうなあ・・そうすりゃ念願の笙子の産まれたまんまをやっとの事で堪能できるってわけだ・・もう堪らねえや・・。」
若い管理官は寝そべっていた身体を起こし胡座姿勢で食い入るように笙子の真ん前にかぶり付きで座す。

それがイヤでも目に入るのであろう、笙子はしきりに頭を左右に揺すり帯に掛かった手指で結び目をきつく握り締める。
「お願いです・・おっしゃらないで下さい・・恥ずかしくて・・脱げません。」
「笙子さん、あなたのそんな様子が逆にこいつを喜ばせているのはお分かりでしょう。ここは決めた覚悟のままに潔くその邪魔な浴衣を脱いでおしまいなさい、その方が何倍もあなた自身が楽なはずですから。」
壮年管理官はなおも諭すように声を掛ける。
「ああ・・ですが・・恥ずかしいんです・・こんな事は始めての経験で・・出来たら電気を消して部屋を暗くしてもらえませんか。でないと・・手が動かないんです。」
「ふむ、まあそうでしょうね・・ですが笙子さん我々はこうしてあなたに付き合って差し上げている・・と言う事は先ほども申しましたよね。そうなのですよ付き合って差し上げている訳でね・・なのにあなたは、まだそうして御自分の身の事ばかりを主張される訳ですかな・・。成るべく我々の手間を省いて無駄な時間を割愛しようとは考えられないのですかな。」
声の調子は相変わらず穏やかではあったが、その言葉の端々には言い竦めるような強引さが混ざり始めていた。

「ああ・・ですが・・つ・・辛い。」
「辛くてもやるのです・・でないと又、身に変調が来しますぞ。」
がっくり折った首で大きく息を継ぐと帯に掛けた指先に力を込めて結び目を解き始める。だが胸部に片手を回しているために、固く結んだ目はなかなか解くことが出来なかった。
「笙子さん!あなたは何を横着にやっているんですか。私達はこうしてじっと待っておると、何度言わせるお積もりなのですか!」
壮年管理官は一転して激しく責めるように強い響きで声を荒げた。
笙子は背筋をビクッと震わせ明らかな動揺を見せた。
「す・・済みません・・急いでやりますから・・」
「出来なかったら両手でやるんだ。こんな事は子供でも分かっている事ですよ!」
「は・・はい・・」
既に壮年管理官の言いなりの人形に仕立てられた笙子は胸前に掲げられた右手を左手と揃えて結び目に移動させた。
肩の位置まで下げられた浴衣の布は手の支えを失うと豊乳の重みに耐え切れずに両の頂きをすっかり覗かせてUの字型に大きく割り開かれた。
「ひょー!ぶっとんだーー!!笙子、凄い重量感だな・・へへ・・ぶるーんって音を立てて飛び出して来たじゃねーか・・立派なもんだなー!ぶるぶる底が揺れてるぜ・・へへ・・まるでババロアみたいで・・。美味そうだ・・ふへへ・・そんな立派なボインでチンチン揉み揉みしてもらいたいな・・。直ぐ出しちゃいそうだよ、興奮して・・へへへへ。それにしてもよ、乳首もでっかいなービンビンに充血しておっ立ててるじゃねえか。ビコーンって飛び出して吸って吸ってっておねだりしてるようだぜ・・。違うか・・ええ・・笙子。」
若い管理官は必要に笙子に卑猥な表現で詰め寄る。
「や・・やめて・・く・・下さい・・恥ずかしい・・。」
べそをかいたような鼻声で懇願する笙子だったが、そのような猥褻な表現に身を焦がされていた事は直ぐに証明される事になる。

「恥ずかしい・・か・・笙子さん。ですがそんな言葉にあなた自身も興奮なさっていらっしゃるのでは有りませんかな。」
「こ・・興奮・・なんて・・そんな・・ただ、は・・恥ずかしくて・・隠れてしまいたい・・。」
「ふん、そうでしょうか・・そう言いながら益々、目の縁が赤らんで上気して来ている様子がここからはっきりと見えておるんですがなあ・・。」
「だ・・だから・・は・・恥ずかしいから・・・。」
「そうでしょうな・・恥ずかしいから・・興奮する。そうですな・・笙子さん。」
「はあ・・い・・苛めないで下さい・・とにかく恥ずかしいんです・・。」
今や笙子は露にした裸体の全てを真っ赤に上気させ、私の目にもその興奮状態は伝わって来るようだった。

やがて両手を回された帯は結び目を解かれ両端が畳に垂れ下がった。
  1. 2014/11/10(月) 01:18:48|
  2. 風・フェレット
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風 ⅡⅩⅥ

「そうですね、その方が失礼はないでしょうね。私達は別段何かを望んでる訳では有りませんしね・・。週休二日のサラリーマン所帯とは違って、明日には仕事だって待っております。分かりますなあ・・・あなたが時間をかければかける程、我々とて辛く成ってくる事が・・何せ今日はこの台風でも有りますしね。私達は公園管理官ですから台風が過ぎ去った後に何が待っておるのか、奥さん・・あなたも考えれば分かる事でしょう。」

子供だましのような見え見えの演技を続けながら壮年管理官は更に笙子に媚を売ろうとしていた。
歯痒かった・・笙子とてこのような戯言に普通ならば気が付かない訳は有るまい・・。
「も・・申し訳ありません・・考えが無くて・・。笙子がいけなかったです・・自分の事しか頭に無くて・・・。」
馬鹿な・・一体何を言っているんだ・・笙子の返答に胸が悪くなってきた・・。
それ以前の状況がどうであれ、人の女房に媚薬を与えておいて何が望みなど無いだ・・・そんな事に何故気がつかないんだ・・・。
笙子は何時からこんな愚かな女に成ってしまったのか・・聡明で賢明な筈の私の良く知る笙子は一体何処へ行ってしまったと言うのか・・。
媚薬の力と言うのは人の思考能力にさえも悪影響を与えてしまうのだろうか・・。
いやまてよ・・ひょっとすると笙子も彼らの企みは充分に承知しているのかもしれない・・その上で敢えて口上を合わせ自らの願望を満たそうとしているのかもしれない・・。
畳に両手を付いて浴衣の身体を丸め込むようにへたり込む笙子にそれを問い質す事はいずれにせよ不可能であった。

「随分と辛そうですな、良ければ手をお貸ししましょうか・・。それともお決めした通りご自分で開かれますかな・・如何なさいます、こうしておっても刻々と夜は深けていっておりますぞ・・、笙子さん。」
ますます思い通りに運ぶ流れに、さぞ気を良くしているのか遂には笙子を名前で呼び始めた。
「いえ・・け・・結構ですは・・じ・・自分で・・自分で・・で・・出来ますから。」
「ほう・・安心しましたよ。結局はこちらでお脱がせする羽目に成るのかと冷や冷やしながら見ておりました。なら問題ありませんね笙子さん、一刻も早くお互いに関を取り払い悦びを分かち合いましょうぞ。」
壮年管理官はまるで名人のように一歩づつ一歩づつ笙子を巧みな話術で魔窟へと誘導して行く。
昼間、嵐が襲う以前の燦燦と照る陽の元での屈託のない笑顔を浮かべていた笙子が強い風にさらわれ我が脳裏から消え去った。

残された力を振り絞るように全体重を二本の腕に乗せると、顔に覆い被さる髪の束を左右に揺すりながら、ふらつく足で懸命に腰を持ち上げ息を乱しながらも再び立ち上がった。
二匹の淫獣はそんな笙子の苦悶の態を下方から舐めるように凝視する。
虚ろに開かれた視界にその視線が重なるのが辛いのか、頬に掛かった髪を根元から束ねるように梳き落とし顔全体を覆い隠す。
息を呑む淫獣達の喉仏が静まりかえった室内に鳴ると、深く溜息を吐き意を決したように姿勢を正し背筋を張ると体側に沿って右の掌をゆっくりと左の襟首に差し込んだ。

襟布をじっと握り締めて暫し不動の直立を見せる笙子の全身から覚悟の時を探る逡巡が覗える。
淫獣達の目は赤く充血し、瞬き一つ見せずにその一点に凝集される。
恐らくは生れ落ちて以来、最大の屈辱の中で、右手の親指を襟立てに差し込むと肩のラインに沿ってゆっくりと寛げる。

ほの白い左肩が鎖骨の線や肩甲骨、左乳上部のなだらかな曲線までもを含めて白日の元に晒される。
更に高まる淫獣達の強い視線に攻め苛まれながらも、右肩も同様に左の手によって開放される。
浴衣は辛うじて胸部の頂きを隠す高さまで落とされ、その前部のつがい目を微かに震える拳が握り固める。
剥き出された両肩は、うら白き肌目にうっすらと汗の玉を浮かべ薄桃色に上気していた。
表情を覆い隠すために前に髪の毛が梳き集められたため、私の位置から真っ直ぐに見渡せる剥き出しの項が息使いと呼応して前後に崩れる様子が堪らない色香を漂わせて見えた。
壮絶な決意で両肩を晒した笙子だったが屈辱の開陳ショーはまだ始まったばかりであった。

小刻みに震えつづける握り拳には相当の力が込められていると見え手の腹を中心に鬱血して真っ赤に染まっている。
そして淫獣達の視線が集中する中、その戒めは徐々に緩められて行った。
  1. 2014/11/10(月) 01:17:29|
  2. 風・フェレット
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風 ⅡⅩⅤ

一体どれほどの時間が経過したのだろう・・悟られぬよう目を閉じ合わせているため途方もなく長い時間のように感じられたが、実際にはさほどでもないのかもしれない。

隣室はシンと静まりかえり時折、男達の咳ばらいの音や寝返りを打つかのような夜具の摺れ音が響くだけであった。
笙子はそのまま立ち尽くした状態で放置され、淫らな好奇の視線に晒し者にされたまま一切の物音も発っしはしなかったが、やがて沈黙に耐えかねたのか遠慮がちなおずおずとした口調で弱々しい言葉を吐き出した。
「辛いです・・このままでは倒れてしまいそうです。」
「ふむ、汗がひどいな・・これだけ寒いほど冷房が行き渡っていると言うのにどうした事です。」
「あ・・暑い・・暑くて倒れそうです・・。」
その声は更にか細くうっかりすれば聞き逃してしまいそうなほどに力を失っていた。
「暑い訳はないんだ・・。限界が来てるんでしょうかねえ・・ならば尚更、早く決心なさった方が奥さんのためでも有るんじゃないですかな。我々もそれを今か今かと待っておるのですよ。」
「ああ・・無体な・・これでは良い晒し者ではありませんか・・。」
「さよう・・おっしゃる通り早く決断なさらねば、晒し者に成ってしまいましょう。奥さんの頑張りは充分にお見せ頂きましたから、ここからはもう辛抱はお止めなさい・・奥さんさえ強情を張りさえしなければ極楽が待っておるのですよ。」
「ううう・・・。」
辛いのであろう笙子のすすり泣く声が痛々しく胸に響く。

暫くべそを啜る音を零していた笙子だったが、何か身動きを始めたようで両足で畳を踏み締めるミシミシと言う音が聞き取れた。
てっきり屈服のストリップが始められたと思っていたのだが、それは私の早とちりだった。
私の顔に眩しいほどの明かりを照り掛けていた隣室の蛍光灯照明がサッと翳ると閉じ合わせた目蓋から入り込む真白い光線が一気に暗がりへと転じた。
「おい、奥さん!誰がそんな事をしろと言ったよ・・。俺達はじっとあんたの我侭に付き合ってやってるんだぜ・・いい加減あんたも素直に言われた事だけをやっちゃどうだ。仏の顔も三度までって言葉知らねえか。」
「で・・ですが・・ここが開いていると気に成って怖いんです。どうかここだけは締めさせて下さい。」
「はは・・奥さんご主人が目を覚ますのが怖いのは私達も同じなんですよ・・だから襖を開けた訳だ、そうしておけばご主人の眠りが浅くなったならちゃんと気が付く事が出来るでしょう。さあ何時までもだだっ子のような事を言わずに正面を向いて肝をお固めなさい。」
「・・・・。」
さすがに笙子も折れない訳にはいかなかったようで、途中まで引かれた襖は残りを閉ざす事無く放置された。

ところがこの笙子の行為は私に思わぬ幸運をもたらせた・・いや幸運などと言っては笙子に対して非常に不謹慎で恥ずべき発想なのかも知れないが・・兎に角、これは願ってもない事だったのである。

襖はまだ粗方、開け放たれたままでは有ったが、私の座してたたずむ場所が蔭に覆われたという事は前方の明度の高い部屋の視界から表情の細かい変化を読み取られる恐れが減少した事を意味する。
意を決すると慎重に辺りの気配に気をつけながらゆっくりと目蓋を上げてみた。
何とか物の所在が分かる程度まで細目を開くと、まず中央付近で開け放たれている襖のレールに沿うように笙子が両の手で胸前を庇い込むように交叉させて立ち尽している姿が見えた。
無言の視線が突き刺さるのであろう、しっかりと豊乳を手で覆い顎先を落として俯いている。その背筋は頭に合わせて前方に湾曲し、畳を踏み締め立つ脚はやや膝を内に折り曲げ太腿をきつく閉じ合わせて内股気味に下肢をやや開かせ尻を後方に逃がしている。
いつも胸を張り堂々と姿勢を伸ばした快活な笙子のイメージには凡そ程遠く、まるで叱られておどおどと脅えた娘のように見えた。

そうしてたたずみながら必死に耐え忍ぶ笙子の眼下には二組の夜具がのべられ、それぞれに観客の如き二人の管理官が揃って寝そべっていた。
私に近い向かって右側の夜具では若い方が肩肘を枕に付いた姿勢で両袖を抜き去った剥き出しの胸前をしきりにボリボリと掻いている。
やや斜交いに寝そべり肘で持ち上げられた上半身はまるで格闘技の選手のように堅そうな筋肉の束が巻き付いておりごつごつとした筋の影を縦横に走らせる。
また左方の夜具では年配の方が枕に頭を乗せて雑誌のような書物を右手に掲げて目を走らせていたが、その目はそこに長く止まる事はなく、ちらちらと値踏みするように上方に有る笙子の姿態を舐めるように見上げる。
この男も若い方に負けず劣らずの強固な肉体を有しているらしく雑誌を掲げるのに持ち上げられ袖から覗く上腕は見事な力瘤を形作りその径は痩せぎすの私の太腿以上の太さを持つように感じられた。
二人は非常にリラックスした様子で寝そべっているように見せてはいたが、その目には決してリラックスな
どは無く鋭く射るような視線を笙子に浴びせ掛けている。

「ああ・・・。」
突如、笙子の口からうめくような咆哮が漏れ出た。
二匹の淫獣は目を見合わせにやりとサインを送りあった。
「う・・くう・・」
胸を抱え込んでいた片方の手が思わず下にずり落ちる。
よほど生理的な苦境に立たされているのだろう、両肩がワナワナと震え膝頭を上下に擦り合わせる。
下げられた手は股間部まで辿り着くと前方の視線を忘れてでもいるかのように下腹に這い進み、しきりに手首から先全体の手の腹を使って苦痛を押さえ込みでもするかのように力一杯押し揉み始める。
そんな変調はやがて上部にまで伝わったと見えて、残された片腕で両乳を一擦りすると絶望の悲嘆を発しながらその場に腰から砕けてへたり込んでしまった。

それでも淫獣達はニタニタと蔑むような目を這わせるばかりで一言の言葉も発しようとはしなかった。
やおら上げた顔で笙子は二匹を見据えると遂には消え入るようにか細く泣き憂いた声で屈服を告げた。
「う・うう・・お・お願いです・・どうか・・これ以上苛めるのは・・苛めるのはよして・・もう・・もう・・き・・気が狂いそうです・・狂ってし・・しまう・・な・・何でも・・何でも言う通りに・・し・・します・・だから・・お・・お願い・・・。」
「ふむ・・それは大変だ・・分かりました、何とかしましょう・・その前に奥さん少々言葉に間違いが有るようですぞ。何でも言う通りにしますではなくて何かをして欲しいんでしょう奥さん自身がね、ならばそう言う風にお願いしてみては如何ですかな・・その方が我々としても気分が良いと言うものでしょう。」
「う・・くく・・」
悔しいのだろう奥歯をきつく噛み締め軋ませるような音が漏れる。
だが笙子には最早、屈辱に逆らえるだけの気力は残されてはいなかった。
「は・・はい・・も・・申し訳ありません・・しょ・・笙子は・・笙子は・・・う・・くくう・・。しょ・・笙子は・・したい・・したいの・・もう我慢が・・我慢が・・だから・・お願い・・しょ・・笙子・・笙子・・あああ・・・くくくく・・うっう・・笙子・・を・・して・・して下さい・・して・・して欲しいの・・。お願い・・お願い・・あーあああううううう。」
号泣を響かせる笙子の声に若い淫獣のけたたましい笑いが重なった。
  1. 2014/11/10(月) 01:16:31|
  2. 風・フェレット
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風 ⅡⅩⅣ

「ちょ・・よして。」
「いいじゃねえかよ・・どうせ直ぐにスッポンポンに引ん剥かれんだから・・ちょっとくらい辛抱しなよ。ネンネじゃあるめえしよ・・。」
「いやーあ・・やめて、やめて!」
「そのブックリした偉そうな出っ張りを拝ませて欲しいんだよ・・どうせ屈んだ襟元から粗方、見えてるんだし減るもんでもねえだろーが!おらっ・・こっち来いよ!」
「お願い!やめて!やめさせて下さい!」
どうやら若い管理官は強引に浴衣の襟合わせを寛げようとしている様子だった。
目を開けばその蛮行の一部始終を目視する事が可能であったが、顔全体に降り注いでいる目映い蛍光灯の光線がそれを躊躇させた・・・。目を開けば隣室から確実に狸寝入りを見透かされてしまう。
「いやーーああ!」
笙子の叫びに嫉妬心は燃え上がり切ないほどの緊張に襲われるが、股間で興奮状態を示し続ける愚息は更に硬化し痛いくらいに反り返っていた。

「おいおい、勘弁してやれや。いきなり引っ掴まれたんでは奥さんも心の準備がつくまいて・・。無論、奥さんとて肌を見せずに事が済むとは思ってはおらんだろうから、ここは穏便に一度奥さんの顔を立ててやろうや。」
「でもよ・・おっさんは良いぜ・・枯れかけてるんだろうからよ。けど俺はこうムラムラさせられたんでは収まりが付かないぜ。」
「お願いです・・そんな暴力的な行いにはどうしても躊躇いが有るんです・・女にとってこう言う事にはムードだって必要なんです・・だから無理やり犯すような真似だけは控えて下さい。でないと私・・もう応じることが出来なくなってしまいます。」
「ちっ・・歯痒いな・・偉そうに吼えやがって・・いくら拒否した所で俺がその気になりゃあ、あんた一人突っ込むくらい朝飯前なんだぜ。」
「おいおい、言葉を慎むんだ。俺達はあくまでも奥さんの欲求を取り除いてやろうとしているだけなんだ。無理やり犯そうなんて事は考えもせんし、させもしない・・立場を良くわきまえろ。」
「・・・・。」
どうやら壮年管理官の一括で若い方も渋々折れたようだった・・だが奴が何の魂胆も無く笙子の意向を汲み取る訳など有り得ようもない。これは得体の知れない何かの前触れのような気がして仕方がなかった。
恐らく笙子は気がついてはいないのだろうが・・強制ではなく自らの意思で淫らな行為に及ぶ事こそ笙子にとっていや其ればかりではなく私にとっても堪えようもない屈辱でしかないと言う事に・・。
それよりもいっそ無理やり犯されてしまった方が幾らか心も楽な筈だった。

「ふう・・やれやれ・・奥さん大変申し訳なかったね。」
「いえ・・どうもありがとうございました。」
礼を述べている・・笙子は愚かにも礼を述べている・・自身にとって最も恐れなければ成らないのは、血気にはやる若者よりもむしろ余裕しゃくしゃくで場の流れを取り仕切っているこちらの男だと言うことに一切気がつかない様子だった。

「さあ、それじゃあらためて始めようかと思うんだが・・。奥さん大丈夫ですかな。」
「ええ・・何とか・・。」
「ふん、その表情を見ておるとまだ完全と言う訳では無いようじゃな・・だが、あいつが言った通り今のままでは一向に先へ進んで行かんのでな・・それに奥さんの方とてジリジリと疼きが増して来ておろう。そこでな・・ちょっと考えたんじゃが・・全てを奥さんに委ねようかと思うんじゃ、奥さんの準備が整い次第で結構じゃから、自らその浴衣をお外し下さらんか・・無理にではなく・・奥さん自身の意思でのう。我々はそれを辛抱強く待っておるでな。」
「そ・・そんな・・」
「そりゃあそうじゃろう・・着たままって訳にはいかん・・我々とて協力しようにも奥さんに何時までも抵抗されていたんでは叶わん事、そう思うじゃろ。」
「・・・・。」
「ほれ、立ち上がって下され・・ここでじっと待っておりますでのう・・。」
妻が渋々、立ち上がるのが気配と着ずれの音で分かった。
これでは何よりも辛い、晒し者である・・笙子も自身の判断の甘さを痛感させられている筈だった。
だが、巧妙な遣り口に掛かり追いこまれた先からは容易には抜け出せそうもなかった・・・何故ならこれは全てが笙子の顔を立てると言う偽善の元に行われているのだから。
だが・・いくら巧妙では有ったとしても笙子自身に拒絶の決意さえあれば脱出は可能な筈であった。
全ては自らの意思で彼らと性行為を行うという前提の元で進められた話である、彼女さえそれを拒否すればシナリオ的には頓挫する筈である・・だが、笙子は大人しく立ち上がり好奇の視線の矢面に晒されている。
これは笙子が望んで彼らの手に己を委ねようとしている証明でも有った。勿論、始めての経験でもあり不安や罪悪感や恐れなどのマイナス感情がごちゃ混ぜになって圧し掛かり無垢な身に猛烈な躊躇いを与えてはいるであろう。
だがそこから逃げ出さないでいるのは其れにも勝る肉欲に取り付かれてしまっているからにほかなかった。
そこめで笙子を追い込むのは媚薬の影響も有ろう・・だが其ればかりとは到底思えなかった。

隣室は一転して不気味に静まり返り固唾を飲んで見守る猥雑な空気に満ちていた。
笙子は何を思い何を考えているのか・・哀れな生贄の立場が我が事のように思いやられた。
このまま何処までも無体な要求に屈せず自己の・・いや夫である私の尊厳をも守り通して欲しかった。
それなのに女身の弱さ、悲しさ、淫らさ・・これらの生業の深さに打ち負かされ、強欲に汚される姿を夢想し興奮状態は極限まで膨れ上がっていた。
  1. 2014/11/10(月) 01:15:34|
  2. 風・フェレット
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風 ⅡⅩⅢ

「へっ・・そろそろ良いかな・・美人奥様の思いも何となく分かった事だしよう。何だか可笑しくっていけねえや・・つまりえっちしたいんだよな・・な・・奥様・・へへ」
「そんな事は言ってません。私だって成りたくてこうなったんじゃありません。」
「へへ・・笑わせるなよ・・格好つけたって身体が疼いて仕方ねえんだろうが・・ええ、奥さん」
「あ・・あなた・・最低ね・・。」
「かー・・おっさん・・あんまし甘やかしすぎるから、図に乗ってやがるじゃねえかよ・・この奥方様はよ。」
「ふふ・・まあ、良いじゃないか。ケンケンせずに仲良くやろうや・・ねえ・・奥さん。」
「で・・ですが・・げ・・下品過ぎます。」
「悪かったな・・俺りゃあ産まれつき下品に出来てんだよ・・あんたは・・さぞ上流のお育ちなんだろうがよ。」
「上流だなんて・・そうは言ってはいませんは・・ですがあなたのは下品過ぎます。」
「わーったわーった・・申し訳ございません・・でもよ、ご立派な御託並べてるそのお口だがな・・ポッテリして最高に猥褻なの知ってるか?その唇で尺八吹かれたくて堪らねえんだ・・下品はお互い様だぜ。」
「そんな・・あなた本当に最低ね・・・。」
「へへ・・それに比べておっさんは優しく悩みを聞いてくれて・・さぞご満足頂いてたようだがな・・そのおっさんだってあんたがしゃくり上げる度にプルプル震えるノーブラのデカパイを横目で見ながらギンギンに勃起させてる筈だぜ。」
「おいおい、俺に振るなよ・・折角、良い雰囲気に成ってるんだから。ねえ・・奥さん。」
「で・・ですが・・私・・凄く・・不愉快で・・これって侮辱ですは・・。」
「侮辱・・そうですかな・・私はそんな気は全く有りませんよ・・ですが奥さんから挑発を受けたのは事実ですがね。」
「挑発だなんて・・誤解ですわ・・私はただ・・。」
「ただエッチしたかっただけだろ!何で自分がここに来たのか良く考えやがれ!」
「・・・・。」
「あいつはね奥さん・・口は悪いが間違ったことは言ってはいませんでしょう・・と言うよりも三人の中で一番正直だ・・そうは思いませんか。」
「でも・・・。」
「奴は奥さんとしたいと言っているのですよ、正直に言うと私だって同じです。それは奥さんが余りに魅力的だったからですよ。」
「でも・・私は人の妻なのですよ・・・。」
「そう・・人の妻ですよね・・・それも目一杯の悩みを抱えた人の妻だ・・。奥さん男にはね色んな奴が居るんですよ・・人の妻だから諦めようと考える男も居れば、人の妻だから尚更、奪い取りたいと思う男もね・・。」
「あなた方は・・後者だと・・。」
「そうです・・その通りだ・・でね・・そう思う男の大半は自身の性技に自信を持っているものなのですよ。」
「・・・・。」
「何もセックスに限った話でも有りませんが。奥さんだって、そう思われませんかな、どうせ不義をはたらくのなら楽しめなければ話にならない・・違いますかな・・・つまり、ご主人とでは満たされない何かを相手から与えられたいと考えませんかな。」
「そ・・そりゃあ・・もしそうなったら・・そう思うかもしれませんが・・・。」
「それは当然の事でしょう、ご主人とで何もかも満足なさって居るのならば不義には走りますまい。」
「はい・・。」
「それとね・・まあ、余談ではありますが、不義をはたらかれる夫にも二つのタイプが有るのをご存知ですかな・・・ひとつは・・そう、怒り狂って怒鳴り散らす夫、又ショックで落ち込んでしまう夫・・・。あともうひとつはどんな夫だと思われますか・・・。」
「あと・・ひとつ・・・わ・・分かりません。」
「ふふ・・あとひとつ・・それはね・・自分の妻が他人に寝取られて悦ぶ夫・・・。言いかえれば自分の妻が他人に寝取られる事で性的興奮を感じる夫ですよ。」
「そ・・そんな事が・・・。」
「知らなかったですか・・たくさんいらっしゃるんですよ、最近は・・・。あなたのご主人の事を言っている訳では無論ないので勘違いしないで下さいね。そんな夫達はね・・大概、性的なコンプレックスを抱え込んでいるものなのですよ・・例えば妻の欲求に応え切れなかったり、或いはご自身の性器のサイズに劣等感を抱えていたりね・・・。」
「・・・・。」
「あなたのご主人は如何ですかな・・人並みの性の能力を有されておられますかな・・・。奥さんの悩みを聞いていると、心なしか案外、当たっているようなそんな気もしないではないのですがね・・・。」
「主人の事はおっしゃらないで下さい・・私自身の事は兎も角、主人には何の罪も無いのです。それを言葉とは言え辱めるような事を喋る訳にはいきません。」
「ふふ・・まあ良いでしょう、それはおいおいに白状して頂くとして・・。そんな世界の夫達全般の話としてはですがね・・そのようなコンプレックスを抱く夫の多くはね、最初に自身の妻が他人にそれも性的に遥かに自分を凌駕する相手の手に掛かって、到底自分では不可能な程の快楽を与えられ奪い取られて行く妄想に取り付かれるのです。」
「そ・・そんな事、考えられません・・。逆です・・不可能ならば守ろうと考えるのが常識ではないのですか・・・。」
「そう・・常識なのかも知れませんな。ですがそのような夫達の多くは非常識かもしれない・・と言うよりは劣情感によってでないと興奮できなくなってしまうのですよ。つまりマゾ・・・ですな。」
「・・・・。」
「そのうち、そんな夫達の妄想はどんどんエスカレートして行くのです・・・。最後にはね妄想では満足できなくなってしまってね・・実行にうつすんですよ。分かりますか。」
「そんな・・そのご主人は、もう奥さんを愛せなくなる・・と言うことですか。」
「いえいえ、全く逆でね・・愛していれば愛しているほど興奮するのですよ・・。そんな夫達の奥さんはね、殆どが魅力的な方ばかりでね・・つまり妻が美しければ美しいほど奪い取られるショックも大きいと言う訳ですよ。マゾの男にとってはねショックこそが興奮できる材料なのですから。」
「し・・信じられません・・・。」
「でしょうね、良くは分かりませんがこんな倒錯の世界は何も夫達ばかりの話じゃなくてね・・最近は妻達の中にも夫を奪われて興奮する方もいらっしゃると聞いています。そしてねこれも夫の場合と全く同じで、こんな妻達のご主人の多くはやはり美男子であったり性的に優れた機能をお持ちの方らしいですからな。」
「女にも居るのですか・・そんな人が・・・。」
「ええ、そうらしいですね・・但し女は男と違って現実的で受身ですから人が如何こうされると言うよりも自らの快楽を追われる方が圧倒的に多いようですから、こんな方はかなり少数だと聞いておりますがね。」
「知らないことばかりで・・・。」
「無理も有りません・・・満たされない女は、人の事よりもまずは自分の事の方が先決課題でしょうから・・奥さんだって例外では有りませんからな。」

この男達はどこまで私の性癖に気がついているのだろう・・。
今こうして狸寝入りを決め込みながら聞き耳を立てている事など全て感付かれているのではないかと言う不安感に襲われる。

その時突然、目の前の闇が取り払われ蛍光灯の目映い明かりが八畳間を照らし出した。
「どうして・・何故・・主人が起きちゃう・・。」
笙子の狼狽した叫びが木霊した。
「心配ねえよ、あの睡眠薬を飲んだら何が有ろうと明日の朝までは目が覚めやしねえよ。隣は暗がりだから良くは見えねえが・・ほら、ご主人は呑気に寝息をたてて熟睡中だぜ・・自分の妻が何をくっちゃべってるかも知らずに間抜けなもんだぜ。」
「で・・ですが・・別に開けないでも問題はないじゃないですか・・・主人の目が気になって集中できません。」
「へーん・・集中ねえ・・それも心配ねえさ、俺達の手に掛かれば、すぐに旦那どころじゃ無くなっちまうからよ。楽しみにしていなよ。」
「お願い・・後生ですからそこを閉めて下さい・・罪悪感で息苦しいの。」
「いえね・・奥さん、あの薬を飲んでいれば絶対に目は覚めんのですよ・・・ですがねさっきも言ったようにマゾの夫と言うのは美しい妻を寝取られることで興奮するんですよ。美しければ美しいほど汚された時のショックは大きい・・・正に奥さんのようにね。だが心配ないご主人は決してそんな性癖の持ち主では無いと思っているのですよ・・・ですがこれ程の最上級の人妻がご主人がいらっしゃるにも拘わらず難なく我々の元にやって来れたと言うことはね・・何故なんだろうなあと考える訳ですよ。」
「主人が仕組んだと・・・。」
「そうは言いませんが、もし私があなたの夫ならこうも不用意に美しい妻を野放しにはしなかっただろうなあ・・何てね・・私は勿論、マゾの性癖など持ち合わせてはいませんからね・・反対に他人の所有物を奪い取る事にこそ生甲斐を感じる方ですからね。」
ばれている・・私の稚拙な小細工などはこの男達には筒抜けなのだろう・・。だが・・私がそれを明かせば笙子を絶望の淵に追い込むことに成ってしまう・・何が有ろうとも演技を続けなくては成らなかった。

「ねえ・・奥さん・・心配ありません・・心配ありません・・朝までぐっすり眠り込んでおりますよ・・そう・・あの薬を飲んだなら・・ふふ・・飲んでいたら・・ですがな。」
息苦しいほどの視線を感じながら、寝たふりを続ける・・頬に冷や汗の雫が垂れ落ち、危機感を募らせる。
それなのに私は、また別の事も考えてもいた・・。
立ち塞がっていた襖が開け放たれた事によって笙子の一部始終を目視する機会にも・・また巡り合えたのだから。
そして隣室からは笙子の驚いたような小さな悲鳴が聞かれた。
  1. 2014/11/10(月) 01:14:43|
  2. 風・フェレット
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風 ⅡⅩⅡ

遂に肯定を余儀なくされ切なくすすり泣く声は、辛うじて堪えていた自尊心を粉々に打ち砕かれた絶望の響きに聞こえた。

「そんなに自分を責めるもんじゃありませんよ・・奥さん・・誰にだって理性だけでは制御が効かなくなる時ってのは有るもんですよ。それにあなたは今まで自我を捨て去りご主人のために尽くして来なさった・・違いますかな。」
つい今しがたまで決して触れられたくなかったであろう、胸奥に秘めた切ない殻を力ずくで割り裂いた無情の輩は一転して、哀れみ慰めるような口調で問い掛けた。
「ううー・・・うああー・・」
笙子の嗚咽が一瞬高まると後は声にも成らずにしゃくり上げるような悲嘆が漏れる。
「辛かった・・辛かったんだね・・奥さん・・あなたは良く辛抱なさった。でもそれも今日で終わりにしようじゃあないですか・・この一夜は奥さんあなたのために神がご用意下さった特別な一夜なのかも知れませんよ。さあ、誰もあなたを責めたりはしない・・子供に返ったように素直になって偽りの仮面を脱ぎ捨てるのです。それが自己に正直な正しい生き方だと心から念じるのです。」
「う・・う・・で・・でも・・それじゃ・・しゅ・・主人にどう顔向けすれば良いというのですか・・主人は良き夫です・・良きパパで、私の大切な人なんです・・その人を裏切る事を神がお許しに成ると思われましょうか・・。」
「安心なさい・・奥さんがそう思ってさえいればご主人はあなたの物ですよ。良き夫であり父親だ・・何も変わりはしませんよ・・そうご主人は何もご存知ないのですから・・ただいくら良き夫であり父親であったとしても、男性として決して良き男では無かったのではありませんか・・。あなたは今まで通り良妻賢母を続ければ良いのです・・だが女としての開放も同時に手に入れる時なのですよ。」
「そんな身勝手が許されるとは思いません・・それは主人を愚弄する事にもなります。」
「何を馬鹿げた事を考えていらっしゃるのですか、ご主人はあなたを満足させようともなさらないのでは有りませんか・・それこそが身勝手と言わずに何と言うのです。」
「ですが・・。」
「そうでは有りますまい男と女は互いに悦びを共有する事によって関係が成り立っているとは思いませんか・・にも拘わらずご主人は一方的な快感に終始なさっている。奥さんの表情や苦悩を見ていれば全て手に取るように分かるのですよ・・。奥さんひょっとしてあなたはご主人以外に男の方をご存知では無いのでは有りませんか。」
「は・・はい・・その通りです・・私は主人しか知りません・・ですが、それがいけない事だとでもおっしゃるのですか。」
「いやいや、いけないなどとは申してはおりませんよ・・ただそれは奥さんにとっての最大の不幸なのかも知れないと・・こう申し上げたいだけです・・お分かりに成りますか。」
「不幸・・なぜ決めつけられるのですか・・。」
「ははは・・奥さん、もちろんそのような女性の全てが不幸だなどと申している訳ではありません。生涯ただ一人の配偶者と全ての悦びを分かち合えるご夫婦は幾らも有りましょう・・・ただ、奥さんあなたは果たしてそうだと言えるのですか。」
「・・・・」
「言えないのであるならば・・堪える事のみが尊いなどと言うのは、今の時代には全くの時代錯誤・・現に奥さんはご主人以外とのセックスに対する好奇心で満ちている・・そうではありませんかな。」
「そんな・・私は・・ただ疼きを止めたかっただけ・・相手は主人ではいけないと言う訳では無いですわ。」
「ふん、そうでしょうね・・でも止められないんでしょう・・ご主人では・・。」
「・・・・」
「その証拠に奥さん、あなたは今日我々二人から数々の性的な嫌がらせを受けた・・もちろん、非礼は詫びましょう・・ですがあなたはそれに嫌悪感を抱いているような演技を繰り返しながらも・・実は欲していたのではないのですか・・ご主人とは対照的な浅黒い肉体労務者風のごつごつした肉体に渇望を覚えていたのではありませんか・・・。だからこうしてここに現れた・・違いますか・・。」
「わ・・わからないの・・でも・・性的な刺激を受けたのは事実です。なぜこんな気持ちになったのか・・・。」
「ありがとう、奥さんやっと素直に話してくださいましたね・・分からないのは当然なのですよ、これは理屈では無い・・女の本能の疼きなのですから。」

妻に隠れて様子を覗う私に途方もない狼狽が襲い掛かった。
確かに私は笙子を淫獣たちの手に自ら進んで譲り渡してしまった・・そうする事で自己の倒錯する欲望を満足させようとした。
しかし、それはあくまで淫獣達が淫獣の所為によって行われる儀式のつもりでいた・・だが隣室で繰り広げられているドラマは私の想像を越えてしまっていた。
薬の罠によって自制の効かなくなった笙子が淫獣達の獣欲を満たす道具と成り果てて性を強引に搾り取られてしまったならどれほど気が楽だったかもしれない。
だが、笙子は自ら自分の淫らな欲望を白状してしまっていた・・奴等が笙子を心身ともに私から奪い取ることに成功しつつある事は事実だと述べた妻の言葉が証明していた。
  1. 2014/11/10(月) 01:13:49|
  2. 風・フェレット
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風 ⅡⅩⅠ

ピシャッ!
襖戸を閉ざす渇いた音が八畳間に響いた。
物音を避けるように注意深く引かれたようだが、立ち込めた闇と静寂と極度の緊張状態の中では微かな音でさえりんりんと耳に木霊するが如く響き渡った。

こうして笙子の姿は完全に我が視界から消え去った、だがその残像はいつまでも隔壁の前に居残っているように思えた。
いや、居残っていて欲しいと願う心が去って行った姿を打ち消したいともがいているのかもしれない。
妻は何を目にし何を感じているのか・・・見る事は叶わずとも何とかその所為を探ろうと聴覚を研ぎ澄ます。

「どうされました。奥さん・・何かご用かな。」
かなり長い沈黙が続いていたが、まず口を開いたのは壮年管理官の穏やかながらも強い威圧感を与える低音のしわがれ声だった。
だが、それも一時の事で隣室は再び重い沈黙に支配されていた。
「そうして黙って突っ立っていらしても意味が分かりませんよ・・何かご用ならそれをお聞かせ下さい。」
「そ・・そんな・・・。」
堪らず口を開いた笙子の声はか弱く震えていた。
「そんな・・ですか・・・。何か奥さんの気に触ることでも致しましたかねえ。一考に思い当たらないんですがね。」
「ひ・・ひどいですわ・・そんなおっしゃり方・・。」
「ひどいだとっ!いきなり他所の部屋に飛び込んで来といて、ひどいってのはどう言う了見だ!ええっ!」
じっと押し黙っていた若い管理官の怒声が響く。
「し・・・き・・聞こえてしまいます・・。」
「ほう・・聞こえる・・どなたにでしょうかねえ。」
「聞いてることに答えろよ!じゃなきゃ益々大きな声に成っちまうぜ。」
「しゅ・・じん・・です。」
「ほう、ご主人はお休みですか。」
「は・・はい。」
笙子の悔しそうに奥歯を噛み締める顔が目に浮かぶようだった・・ただ犯すのでは済みそうもない彼らの遣り口は、妻の尊厳さえも奪い取ろうと言う意図が見え見えであった。

「なるほど、ご主人がお休みに成るのを待って、いらっしゃった・・とこう言う訳ですかな。」
「ふふん・・旦那に知られちゃまずい用件って訳だな・・美人奥様のご用って奴は・・ふへへ」
「やめて・・やめてください・・私ばかりのせいじゃ・・あ・・ありません。」
「ほう・・それじゃあなた以外にも誰かに責任が有ると・・そんなおっしゃり方ですね。」
「ああ・・どうか後生です・・もうそれ以上、私を辱めないで下さい。」
「どう言う意味だ!俺たちゃ何もあんたに強要なんてしていない筈だぜ。」
「ひ・・ひどい・・ひどすぎます・・・。」
笙子のすすり泣くような嗚咽が漏れ出る。無理もなかった・・じわじわと真綿で締めつけられるような誘導尋問にあいながらも女の哀れな性に身を責め付けられているのだから。

「お願いです・・何も言わないで・・おっしゃるように致します・・だから・・言葉で辱めるのは、後生ですからお許し下さい。」
「致します・・ふむ・・我々は別に何も致す積りなどございませんよ。」
「ああーーー・・何故・・何故、そんな惨い・・・事を。」
「ふふ・・つまり奥さん、あんたにゃ抜き差しならねえある事情ってのが有るんだろ・・洗いざらい白状してスッキリしちまいなよ。でなきゃ困るのはあんたの方だろ。」
「まあ・・奥さん、私共もこうしてお知り合いに成れた訳だし、素直にさえ成って頂けたら、何も無下に扱おうとは考えてはおらんのですよ。」
「卑怯です・・そんなおっしゃり方・・元はと言えば全てあのお薬のせいじゃ有りませんか・・・。」
「ふーん・・全てねえ・・本当にそうかどうかハッキリさせなきゃ成らないようだな・・・おい奥さん、ちょっと部屋の電気をつけてみな。あんたの言うのが正しいのか・・それとも嘘偽りを言っているのかキチンと証明してやるから・・ほら早くしな。」
暫く押し問答のような答弁が繰り返された後、遂には笙子が折れたようで襖戸の継ぎ目から目映い蛍光灯の明かりが漏れ出した。

「ほう、こうしてじっくりと拝顔させてもらうと・・成る程奥さん・・実にお美しいですなあ。昼間は雨にずぶ濡れでメイクも剥がれてしまっていながら、あれだけ魅力的だったんですから当然と言えば当然だが・・そうしてメイクをすっかり落としてしまっていてもその美貌だ、今までにかなりの男の方を虜にしていらっしゃったんでしょうなあ。」
「そ・・そんな・・虜だなんて・・そんな事ありません。」
「いやいや・・その上その見事なプロポーションだ、振り向かない男など居りますまい。スラリと細身でいながらもその見事な張り出し具合ですから・・私のようなじじいでさえ圧倒されておりますからなあ。」
「いやです・・見・・見ないで下さい・・本当にそんな事はありません・・・。」
「いやー・・ふへへ・奥さんそれこそ、そんな事はねえだろう・・65のEカップって言ったら充分に巨乳だろ・がはははは。」
「ど・・どうして・・・。」
「これ奥さんのだろ、脱衣所に落っこちてたぜ。」
「い・・やあ・・落ちてなんているわけ有りません・・私はちゃんと洋服の下に入れましたから。」
「ふふ・・じゃ・・別の人のだね・・残念だなあ・・すっげーいい匂いがするんだ・・ホーラ・・へへ・・だから間違いなく奥さんのだと思ったんだけどな・・・。」
「いや・・やめて・・やめて下さい・・変なことしないで。」
「ひひ・・じゃやっぱり奥さんのなの・・。」
「返して・・返して下さい。」
「ひゃーははは・・お揃いの下の方はもっと良い匂いがしてたぜ・・酸っぱいような生臭いようなナ・・へへ」
「やだー・・へ・・変体・・そんな・・そんな・・。」
「まあ奥さんが相手じゃ変体にでも何でも成っちまうわなぁ・・実際。へへ・・ほーらこれだ・・ちょっとチンコで擦ったけど別に汚しちゃいないぜ。」
「うう・・・。」
「でよお・・奥さん。ここの裏っかわの当て布になあ・・何か一杯くっ付いてたぜ。」
「い・・やあー・・やめて返して。」
畳の軋む音が笙子の抵抗を伝えていた。
「おら!大人しくしねーか。今更じたばたしたって詮無いだろうが。見ろよこれ・・何でこんなに汚れてるんだ。ええ!おい!」
「やめてーえ。」
「まあまあ・・いいじゃないか返してやれよ。別に下着に用はないだろう。」
「へへ・・こうやって抵抗されるといじめてやりたくなるじゃないですか・・取り乱す美人妻ってのもなかなか乙なもんでしょ。」
どうやら壮年管理官の窘めで笙子は下着を奪い返したようだった。だが勿論それで終わった訳ではなかった。

「奥さん、さっきは俺達が薬をどうのこうの言ってたようだが、それ以前にあんた充分に発情していたんじゃないの・・それをみんな俺達のせいにしてもらったんじゃ困るぜ。それによ・・旦那は何でグウスカ眠っちまったんだ・・。それも俺達のせいだって言うのかよ・・ええ」
「そ・・それは・・。」
「どうなんだ・・お前、亭主に茶を飲ませたんじゃないのか。」
「うう・・。」
「おかしいですね。奥さん、別にご主人を眠らせなくても、ご主人に協力して貰えばよろしかったろうに・・それをワザワザ我々の勧めに従ったのは一体何故なんですかな。」
「もう・・もう許して下さい・・悪かったの・・全て私が・・・ううう・・」
「そうなのですか・・奥さん・・私は実はそうではないと思っているんですがね・・奥さんは悪くない。違いますか・・・悪いのは我々・・いえいえそうでもない。確かに私達も奥さんも少し倫理に反する行いは有ったでしょう・・だがそんな行いをさせた本当の原因は呑気に眠りこけていらっしゃるご主人に有るのではないですかな・・如何です。」
「ち・・違います・・悪いのは私なんです・・。あの人は・・あの人は・・」
「ふふ・・あの人はな・・役に立たなかったんだろ・・へへ・・違うのかよ。」
「うう・・・う。」
「泣いてちゃわからんだろーが・・ええ、おい!」
「はい・・はい・・・でもでも・・パパが悪いんじゃない・・。」
「奥さん、そうご主人は悪くは有りませんよね・・ただし・・奥さんの望みを叶える事は出来なかった・・違いますか。」
「うう・・そ・・そうです・・その通りです。」
後には笙子の号泣が尾を引くように残され、相変わらず座椅子で様子を覗う我が身は凍り付いたように身動きすら出来なかった。
  1. 2014/11/10(月) 01:12:58|
  2. 風・フェレット
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風 ⅡⅩ

「パパ・・パパ・・」
笙子は転げ落ちた湯呑を注意深く拾うとテーブルに置き、私の肩を揺り動かして数度、呼びかけた。
狸寝入りを見透かされないように注意しながら規則的な寝息を演出する。
起きないと悟ると首を擡げたばかりのペニスを手に取り、痛いほどの力を込めて握り締めた。

タイミングを充分に計った上で閉じ合わせた目蓋をゆっくりと持ち上げる。
部屋の照明は落とされ、空調の風もきわめて緩やかなものに変更されていた。
座椅子に寄り掛かったままの私の身体には薄手の布団が肩まで掛けられており、念を入れるためだろうか、足元の一端を座敷テーブルの足が踏みつけている。これによってテーブルは不安定な状態に置かれ仮に身動きをすればテーブルが軋み物音を起こす可能性が高まっていた。

笙子は窓の脇に設えられた洗面台の前に立っていた。
明かりを消した室内でここの照明だけが灯され、鏡面に笙子の顔が半分だけ映し出されていた。

台風の喧騒は既に峠を越したようで、夜の静寂を水道の流れる音のみが打ち消していた。
その水に浸された手拭が細い指先で固く搾られ、浴衣の前を肌蹴た股間の辺りを丹念に拭い清めている。
ドロドロに溶け切った残骸や肌をぬめらせる発汗を本来ならばシャワーで清めたいところなのだろうが、生憎ここには内風呂はおろかトイレや洗面室すら用意されてはいない単なる四角四面の和室なのである。
その中で申し訳程度に壁に設置された洗面台の前で、やや両膝を外に開いたはしたない中腰姿勢で懸命に膿を剥ぎ取る。
ようやく身を清め終えると、きっちり浴衣の帯を締め直して汗の玉の浮かぶ顔を洗い流し、寝乱れた髪に丹念にブラシを通しながら面の具合を鏡に映して入念な点検を施す。
大きく見開いた目で、舌先を少し覗かせて唇に湿り気を与える仕草は、とても艶かしく我が胸を締め付ける。

身支度を終えた笙子は私の元に戻り再度、肩を揺り動かして反応を探ると、意を決したように立ち上がり隣室との襖境に向かい合った。
だがなかなか踏ん切りも付かない様子で再び鏡面に対すると再度、容姿を見定めながら深い溜息を零した。
迷いが頭を駆け巡るのだろうか、立ち上がっては俯き、座しては目を閉じ眉間に指を添える。
じっと私を見つめていたり、両膝立てて抱え込み瞑想に暮れたり、逡巡は果てなく続くのかとさえ思えた。

「うっ・・」
膝を抱え込んだ姿勢で夜具に座り込み、頭を伏せたまま突如低い唸りを発す。
抱え込んだ手を腹に這わすと手の腹で腹部を圧迫する。
眉間に刻まれた皺は険しさを増し、再び薬効が身を焦がすのを知らせていた。
片時、猛烈な責め苦と戦う様を覗かせながら奥歯を軋ませる擬音を鳴らしていたが、大きく上向くと息を精一杯吸い込んで、ゆっくりと吐き出しながら音も無く立ち上がった。

笙子は再び襖と対峙すると襟元を詰め、帯をきつく締め固めると肩で大きく深呼吸をして背筋をピンと伸ばし胸を張るように姿勢を直すとゆっくりと歩を踏み出した。

その後姿は実に堂々として先程までの逡巡や苦境の様を微塵も感じさせなかったが、私の目には妻の精一杯の虚勢のように映った。
華奢なくらい細く括れたウエストに巻きつく帯が殊更に細さを強調し、母親特有に豊かに張り出した尻丘とのコントラストは見事な重量感を伝える。すっと伸びた背骨から項に続くラインは微小の歪みも生じておらずやや筋肉質な両腕の付け根や肩甲骨を包み込む青湯文字の安っぽい白色の浴衣の背は汗で張り付いている。
既に真ん前まで到達した笙子の手はゆっくりと襖の引き手に伸ばされかけたが、そこで又も躊躇うように真下に降ろされると、首を捻って私の方を振り返った。
その背を切ない思いで食い入るように見詰めていた我が目は突然の事に慌てて閉じ合わされたが、見つかったかもしれない・・と思う不安で胸は早鐘のように鼓動を高めた。

「パパ・・起きてるの・・」
やはり小声で問い掛けを返して寄越した。
緊迫した空気を切に自覚しながら、何事も無かったかのような寝息を繰り返した。
俺は・・何をやってるんだ・・起きている事を白状しさえすれば、笙子の身は・・いや・・苦悩は救われるかもしれないんだぞ・・・。
このまま境界を越えさせたならば、お前の愛した女は二度と帰って来れなくなるかもしれないんだ・・それでもお前は行かすのか・・それは何故なんだ・・・。
笙子が汚されようとしている・・それを助長するのが夫としての態度なのか・・・。
笙子が汚される様の目撃者たらんとしているのだぞ・・それとも目撃したいとでも言うのか・・・。
笙子が汚される様を目撃したら・・お前は元の自分に戻ることが出来るのか・・・。
笙子が汚される、それも自ら出向いて・・お前はそれを許すことが出来るのか・・・。
笙子が汚されたならば・・許すことが出来ると言う確証・・そんな物がある訳は無い・・・。
笙子が汚されたならば・・そればかりか嫉妬に狂うであろう・・笙子は俺にとって掛け替えのない妻であり女でもある・・・。
笙子が汚されると言う嫉妬・・笙子が汚されると言う侮辱・・笙子が汚されると言う悲しみ・・・。
そして・・笙子が汚されると言う・・興奮・・・。
興奮・・何故・・何故なんだ・・でも・・見たいのか・・・。
笙子が汚されると言う事実・・嫉妬・・見たい・・見たい・・・。
俺は頭が変に成ってしまったのか・・いや・・そうじゃない・・そうじゃない・・・。
ずっと前から・・笙子は汚されていた・・私の妄想の世界の中でずっと以前から・・笙子は汚されて・・いや・・俺が汚し続けてきたんだ・・虎に・・下山虎雄太に・・・。
笙子が汚される妄想がなければ・・俺は興奮する事が出来ないで来た・・だから・・虎が・・いつも虎が必要だった・・・。
笙子が汚される妄想・・もはや・・それは妄想では満足できなくなってしまった・・そう見たい・・・。
笙子が汚される所・・それが・・見たい・・見たい・・興奮する・・泣きたい・・泣きたいよ・・・。

「パパ・・ねえ・・パパ・・」
私はひたすら寝息を立て続けた。それがいかなる結果を産もうとしているかは理解もしている・・だが・・もう・・戻れない・・自らの性癖を呪わずにはいられなかった・・・。
呼び声をたてる笙子は、まさか私が妻を汚される場面に興奮を感じているなどとは夢にも思ってはいまい。
自分の不貞をその胸で悩み抜いたに違いない・・。
起きていながらも不貞に向かおうとする妻をたしなめない夫が居る事など考えもすまい・・。
私の様子に変化がない事を確認すると、また境に向き合った。

笙子は再び襖の引き手に手を掛けると遂に境界線を自ら乗り越えていった。
  1. 2014/11/10(月) 01:11:38|
  2. 風・フェレット
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風 ⅩⅨ

眼前で口を開いた暗空を見つめる目に焦りの色が広がる。
そしてそれは自己の不遇を嘲笑うかのようにグングンと身幅を広めながら押し寄せる錯覚を生じさせる。

相変わらずも激しく下半身を波打たせながら、せがみ続ける笙子の絶唱は猛獣の唸り声のように失意の胸に突き刺さる。
乱態と雄叫びと吹き出す情炎の熟肉に襲われる痩身は更なる無力を増幅させ、猛獣に詰め寄られる子山羊の如く竦み果てる。
妻を救い出す決意も、逆に妻によって崖っ淵へ追い込まれ、眼下に大口を開く暗空の底へ今にも突き落とされようとしているように思えた。

「ねえぇ・・どうしたのよ・・」
笙子はようやく掛け布団から抜け出すと寝乱れた髪を獅子の鬣のように逆巻かせ、隈の浮いた焦点の定まらない熱病患者のような目をようよう上げた。
無力感に冷め切った劣情を抱え込まされて座敷テーブル脇の座椅子に身を逃した私を恨めしそうに覗う。
「だめなんだ・・」項垂れた目を伏せたままこれだけ言うのが精一杯だった。

笙子は四つん這いの姿勢で夜具を抜け出すと畳面を這い無言のまま傍らまで寄り掛かると私の浴衣を両手で押し広げた。
薄い胸板に埋めた頬を徐々に摺り下げながら覗かせた舌先を肌に這わせる。
股間でいじける突起を指の腹でじゃらしながら滑らせる舌先で下腹の翳りをじょりじょりと掻き分けて中心に向かう。
「絶対・・絶対に立たせるから・・」と強い語気で告げると分厚い唇から唾液の塊を落としながらずっぽりと飲み込んだ。

笙子の口戯は実に巧みだ。たっぷり分泌された唾液を泡立てるように絡めて口腔内の舌と両頬裏とを盛んに蠢かせて、実に繊細にそして実に情熱的に激しくしゃぶり抜く。肉厚の唇は吸い付くように強く、霞めるように微弱に速度にも緩急を加えながらスライドし、厳しい吸引できりきりと吸い上げたかと思うと大きく息を吸い込んで戒めを解く。
私はいつからかこの極めて甘美な口戯の虜にされてしまい、ままに精を吹く事に無上の悦びを感じるようになっていた。だがこれこそが笙子を性的に追い遣ってしまった最大の原因でもあった。

しかし今日と言う今日は、こんな愛撫でさえも一向に効き目を得られなかった。
項垂れ縮み上がった根元は舌腹の挑発にもうねうねと逃げ惑う一方で、遮二無二含みこむ笙子の横顔にも狼狽の色が覗えた。
相変わらず粘膜を火照らせているのだろう、投げ出した私の両足の間で膝を畳み込み背を丸めて奉仕を続けながらも片方の手は、ゆるゆると上下する腰の奥に前方から差し込まれていた。

苦悶に歪めた表情で自慰を繰り返す笙子を見つめていると、最早これまで・・・との観念の情が胸を締め付けた。
そして前方の闇から、今にも血に飢えた二匹の獣が一糸纏わぬ裸体に凶悪な角を生やして現れる幻覚に襲われる。
引き立てられる笙子は私に一瞥をくれると悲しそうな目を投げ軽く一礼を返し両の手に獣の角を握り締め闇へと連れ去られた。

延々と舌を絡める笙子の唇を割り裂く塊が一角獣の角に変化すると、絶望の幻覚が嫉妬の炎を灯すと同時に息苦しいほどの興奮を呼び覚ました。
それは左右に自在に揺れ動く舌に翻弄されつづけていた愚息に押し戻す抵抗力を蘇らせつつあった。
笙子が辱められる・・狂おしいばかりの絶望感、そして灼熱の嫉妬。明らかな敗北を意味する妄想がぐるぐると脳裏を駆け巡る。
閉じた目から熱いものが込み上げてくるようだった・・だが・・これほど興奮した事は今だ嘗て経験した事さえなかった。

閉じた目を開くとそっと卓上に視線を走らせる。
笙子は芯を見せ始めた私に更に濃厚な奉仕を続け、一心不乱にしゃぶり尽くす。
目線を例の湯呑で止めると突いていた肩肘を崩しそっと掴んだ。
そして手早く茶を急須の中に捨てると空になった湯呑を胸の前に固定した。

いいのか・・自分が何をしようとしているのか分かっているのか・・。
引き返すのは今しかないんだぞ・・相手は自分よりも遥かに屈強で、しかも二人連れだ。笙子の身が移ってしまっては万に一つの奪回のチャンスもないだろう。
それでもお前は引き返すことの叶わない橋を渡ろうと言うのか・・。

自問自答を繰り返してみたが、脳裏に浮かび上がるのは獣の一突き一突きに我を忘れて鳴き狂う妻の倒錯の姿態ばかりであった。
淫水を吹き零す股座にメリメリと食い込む鋭利な凶器を思う時、我が愚直は完全に勃起状態を回復していた。

「パパ!ほら。大丈夫・・。」
笙子が嬉しそうに顔を上げるが早いか、いやほぼ同時に胸前に掲げられていた湯呑が鈍い音を立てて畳に転がった。
  1. 2014/11/10(月) 01:10:46|
  2. 風・フェレット
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風 ⅩⅧ

相変わらず踵で夜具を蹴りながら逃れようともがくのとは裏腹に、舌腹に張り付かれ汁気を啜られながら淫裂を寛げられる下腹部はやや臀部を浮き上がらせ無精髭の口元に突き出されて接触を追いかけ始め、確かなる肯定を示し出している。

「いじわる・・いじわるーー・・」とうめくように発すると断続的な喘ぎが堰を切って漏れ出した。
「うお・・おおぃぃーー・・はっ・はっ・・ふうぅーーんん」
最早、自制は利かない様子で逃げ惑っていた身体は上下に打ち振られ明らかな催促を促す。
「あーーおお・・おょょょょ・・・ねっ・ねっ・・ふ・ふさいでええええーーーー・・もう・・もう・・」
掛け布団の中から両手を伸ばして私の頭を掴み掻き毟る。

くそっ・・笙子は俺の物だ・・貴様らなんぞに渡して成るものか・・。
脳裏に二人の公園管理官の日に焼けた下品な顔が浮かんでは遠のいた。
だがその決意とは裏腹に、善がり汁やら陰毛やらがベタベタに張り付いた顔を上げて見下ろす己が股間は先程の風呂場での漏出が祟り力なく項垂れたまま黒毛に埋ずもれていた。
そうでなくても既に車中で柔らかな口と手にかかり一度解き放たれている本懐は容易に回復するとはとても思えなかった。今更ながら状況を省みない軽率な行動を悔いた。
だが今はそれを呪っている暇は無かった。
一度火が点いた笙子の下肢はブリッジするように膝を持ち上げ、駄々を捏ねるように激しく打ち振られ、その度に中心部からは湛え切れない湯滴を白いシーツに飛び散らせる。
腰の高さまで振り上げられた腰部を両腕で支えて、再び口を吸い付かせると「もうーー・・そ・そうじゃなーい・・入れてーー入れてーー入れてーー・・」と狂ったように連呼する。

下から笙子の腰を抱え込んで上方に支えながら膝立ちの姿勢で、やや直毛気味に性器に向かって流れを見せる陰毛に埋めた視線の先で隣室との襖の隙間が今や顔の半分ほどの間隔で隙間とは呼べないほどに広がっているのが覗えた。
その先は真っ暗で何も確認することは出来なかったが、舌なめずりするような男達の視線がもろに感じ取れて、前合わせを肌蹴て顔を出す脆弱な愚息を尻を落として前方からの視界から遮った。

「入れてーー・・入れてーー・・意地悪しないでーー・・おかしくなっちゃうーー・・ねえ・・入れてーー・・ねっ・・入れてーー・・」
今や笙子は完全に理性を失い欲望に取り付かれた木偶に成り果てていた。
舌先を壷口へ差し込むと満々と満ち溢れた淫汁が押し出されるように零れて口腔内に驚くほどの勢いで流れ込んできた。
そして緋貝のベロの交わいの頂点で屹立した淫核は脈を打つかのごとく蠢き媚声を搾り取る。

「やーん・・やーーん・・ちがぅちがーう・・もっとーー・もっと太いのが・・いいーいいのーーー・・」
その浮かされたうわ言のような要求は、ただ単に舌先や指での愛撫よりも互いの性器の接合を請うているに過ぎなかったのだろうが、性的に追い詰められた私の耳には全く別の辛辣な抗議の声のように響いた。
「うーん・・やーーん・・ちがぁーう・・あれぇ・・・あれ入れてー・・もっとぉ・もっと・・太いの太いのぉぉょぉ・・」
私の顔面を流れ落ちる汗の雫と笙子の熱湯がずぶ濡れにしながら、挿入していた指の本数を四本に増やして抉るように掻き混ぜた。
「あああぁぁぁぁ・・・あーあー・ぉぉっ・・おっ・おっ・・・ふっぇぇぇぇーぇぇー・・・」
大凡、嘗て聞いた事も無いような極まった喘ぎを切れ切れに発しながら、臀部に総身の力を込めて食い千切らんばかりに締めつけてくる。

「ねぇ・・ねえ・・お願い・・お願い・・・やってー・・嵌めてぇぇぇぇぇ・・・」
胸から上を掛け布団に包まれたままの姿勢で、腹部を大きく波打たせながら哀願する笙子の淫裂から、差し込まれた我が手を伝い流れ出た汁線が肘から夜具のシーツにポタポタと無限に滴る。
それはまるで真っ赤に弾けた石榴の果肉をひとつひとつ押し潰して果汁を搾り取っているような、正にそんな風に見えた。
  1. 2014/11/10(月) 01:09:51|
  2. 風・フェレット
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風 ⅩⅦ

笙子の両手に握られた湯呑は戸惑いがちに差し出されかけたが、ほぼ半ばでふらふらと湯の気を立ち上らせたまま握り締められたままとなった。

「ふぁ~眠いや・・お茶を飲んだら目が冴えちまうかもしれないな。」
わざとらしく欠伸を交えて語りかけた。
「うふ・・パッチリめ・・目を覚まして・・もう一度・飲み直す。」
口では茶を勧めるような言葉を吐いていながらも一向に私の前まで湯呑は届かなかった。
とにかく笙子自身、官能と罪悪感の狭間でもがき苦しんでいるようだった。

身の振り様を自身、決めあぐねてはいるものの、ただひとつハッキリしているのは辛うじて笙子を制御しているのは私の存在のみなのであろうし、それさえ失せてしまえば瓦解は明白であった。
反対に私さえ睡魔から身を守る事が出来たなら、大切な妻の操を失わずに済むかもしれないと言う事でもあった。
彼女の苦悶は奴らから盛られた媚薬によるものだ。だがその事態を招いた責任は少なからずも自分による所が大であった。
ならば彼女の苦悶を自ら取り除いてやることが出来たなら、全ては元通りの夫婦のまま家族のままでいられるではないか・・・。

湯呑を握り締める笙子の腕を引き剥がし、強引に手前に引いて夜具に縺れると、痛々しいほど真っ赤に充血した唇に自らの舌を割り込ませて激しく貪った。
「ふ・・ふう・・ふう。」
口を塞がれたまま笙子の鼻腔から灼熱の息が噴出す。
襟元から手を差し込んでタプタプと鼓動に合わせて波打つ豊乳に手を這わせると驚いた事に先端の勃起は普段の倍ほどの巨大さに膨れ上がっていた。乳頭を抉られると彼女は頭を背け猛烈な抵抗を示した。
「何故・・・」
「と・・となり・・となりにき・・聞こえちゃう・・」
返答を聞くなり、カーと頭に血が上った。
髪の毛を束にしてひっ掴んで再び口を割ると、太い腿を閉じ合わせている下肢を膝頭で強引に割り開き手指を中心に捻じ込んだ。
剥き出しのそこは想像通り・・いや・・想像を絶する程のドロドロの蜜を吹き零しており内股全体がヌメヌメと糸を引いていた。
既に開き切った源泉に指先をこじ入れると丸で湯に浸したかのように熱い熱を伝える。

三本の指を沈めて掻き回すとじゅるじゅると後から後から粘り付くように濃厚な膿を果てしなく湧き出させる。
それでも笙子は抵抗を収めようとはしなかった。
四肢を振り回して夜具をずり上がろうともがく上体に掛け布団を被せて簀巻き状態に押さえ込むと露出した下半身に顔を埋める。
そこは丸で男の射精を既に受け止めでもしたかのごとく糊のような白濁に塗れていた。
更に卑猥に食み出た肉唇はやはり真っ赤に充血し、完全に包皮を捲り上げた上部の陰核共々、見慣れた妻の持ち物とは思えぬほどに巨大に変形していた。
この有り様では、辛抱を続けることなど全く不可能に感じると共に、得体の知れない媚薬の恐ろしいまでの威力に愕然とさせられた。

極端な酸味と塩分で舌先にピリつくような刺激を感じながら、亀裂をなぞると舌腹に層になって愛汁が乗り上げる。
「うひー・・・・!」
パンパンに膨れ上がってつるつるに表皮をテカらせる牝芽に歯を立てると掛け布団の下から感極まった遠吠えが轟いた。
  1. 2014/11/10(月) 01:08:54|
  2. 風・フェレット
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風 ⅩⅥ

かれこれ二十分にも成ろうか。不自然な程、明るく振舞う妻と明日の予定をあれこれ話し合っていたが、ビールは一向に進まないままだった。

「このまま台風に居座ってもらった方が笙子は嬉しいんじゃないの。」
他愛のない軽口のつもりだった。と言うよりさっきは笙子自身、お陰でゆっくり出来てかえって良かったじゃない・・などと口走ってもいた。
それなのに彼女の反応は私の予想を大きく裏切って見せた。

「どう言う意味よ!嬉しいって・・そんなわけないじゃない。祐馬の事だって心配じゃないの・・。」
突然、語気を荒げた笙子の額には玉の汗が浮かび上がっていた。
「どうしたんだ、急に冗談に決まってるじゃないか。」
「ごめん・・つい・・」
口元をピクつかせ、握った手の甲が微かに震えていた。
良く見るとポッテリ厚めの唇の粘膜はメイクを落としているにも拘わらず朱を流したように赤く染まっており、耳朶や頬肉も風呂上がりのように上気している。
「ああ・・パパちょっと暑くない・・・」
「そうだな・・冷房、強めようか。」
「ううん、大丈夫・・何か私、変よね・・疲れてるから・・気にしないで。」と言いながら仕切りに豊かな胸を覆う浴衣の生地を指先で持ち上げている。
どうやら飲まされた薬が効力を発揮しだしているようだった。

以前に大衆週刊誌で身体の粘膜を火照るらせる媚薬の話を読んだ事があった・・真っ赤に変色した唇といいその記事を思い起こさせる。
だとしたら恐らく乳首の粘膜も同じように火照って生地の擦れの刺激に過敏に反応しているのだろう。
そうしているうちにも今度は折り畳んだ脚を組替えたり、腰をモゾモゾと浮かす仕草も交え始める。
両膝はゾリゾリと擦り合わされて肉付きの良い左右の太腿を盛んに上下入れかえている。
「パパ・・ビール、進まないのね・・。」
「ああ、酔っぱらうとコテンと寝てしまいそうでな。」
「あら、もうやる事も無いんだし眠ったっていいじゃない。」
「それもそうだな、だけどこのままうたた寝ってのもだらしないだろ。」
「じゃ・・」
言いかけて笙子は思い止まって口を結んだ。その目は夫の私ですらぞくっとするくらい妖艶に潤んでいて縁を桃色に染め上げた目線が卓上のポットを凝視していた。

「じゃって・・何。」
薄とぼけて聞いてみたが本意はとっくに伝わっている。
笙子の苦境が一刻の猶予も許さぬほど切迫している事は、あくまで平静よ装いながらもムズムズと引っ切り無しにモジつかせる紅潮した肌身が物語っていた。

「う・・ん・・じゃ・じゃあ・・お・茶にする・・」
呂律さえ危うくなっていると見えて言葉は切れ切れに搾り出される。
そして遂に笙子の小刻みに震える細い指先はポットの湯を急須に注ぐと、チビチビと軽い湯気を立てる液体を湯呑に注いだ。
  1. 2014/11/10(月) 01:08:06|
  2. 風・フェレット
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風 ⅩⅤ

たったひとり食堂の椅子に腰掛けて屋外の強風のしらべを聞くともなしに聞きながら自問自答を繰り返していた。
いかほどの嵐でも過ぎ去ってしまえば、後には快晴の夏空を残す。同じように我々夫婦を襲おうとしている暴風もやがては穏やかな涼風へと姿を変えてくれるのだろうか。
危険な嵐を避けようと逃げ込んだ先に更に危険な大嵐が大口を開いて待ち受けていた事に気付かなかった迂闊さを・・いや逃げ出そうと思えば逃げ出せたかもしれないにも拘わらず、あえて隙間風の侵入を見て見ぬ振りをした愚かさに気分が澱んだ。
だがそこには嵐への畏怖を感じるのと同時に吹き荒ぶ様を目視したい、相反する二つの自己が存在した。

笙子が奴らから全てを強制されたとは思えなかった、強制されて無理やりやらされるのならば何か弱みでも握られていない限りは、彼女自身が私に一服盛るなどと言うことは有り得ない事だろう。
無尽蔵に膨らんだ肉欲を抱えきれずに弾けてしまった妻の苦悩が胸を締め付ける。
猛烈な葛藤と罪の意識に苛まれているのだろうか・・そこには哀れな女の肉の性が内包されているように思えた。
恐らく笙子はひとりで向かう先を悩み抜いているに違いなかった。

「どこに干そうか・・。」
部屋に戻った私は濡れた衣類を手にぐるりを見渡した。
異常を感じさせる物はどこにも見当たらなかったが隣室との境の襖に微かな隙間が有ることを見逃さなかった。
「あの桟でいいんじゃない・・ちょと高いけど机に乗れば届くでしょ。」
言うなり笙子は夜具をずらすと座敷テーブルを移動させ上に登った。
おかしな桟だな・・思いながら壇上の笙子に衣類を一枚づつ手渡した。
その桟は床面から2メートルちょっとの高さに部屋の中央に意味もなく渡されていた。レールが彫られている訳でも装飾が施されている訳でもない単なる角材で手を伸ばせば何とか届く高さであった。
構造上の支えならば天上に打ち付ければ良い筈だったが、天上とこの桟には1メートル近い隔たりが有った。明らかに後から据え付けられた物だと思うが、その目的はさっぱり分からなかった。
「パパ、それも早く。」
最後に手元に残ったタンクトップを笙子はじれったそうに催促した。
淡いグレーの布地には雨露とは明らかに異質の染みがこびり付いていた。
手渡されたタンクトップに笙子は一瞬、目線を止めたが無言で干し終えると畳に戻った。
下着が無い事にも気付いていない訳はない筈だったが、何も触れようとはしなかった。

「お腹、膨れた。」
笙子は食事の事をあれこれ喋り出したが、例のお茶をすすめようとは一向にしなかった。
私は少しはぐらかされたような気分で試しにこう言ってみた。
「何だか喉が渇くな・・お茶、貰える。」
笙子は一瞬、ビクリと身体を引き攣らせたが、そっとポットに手をかけた。
だがなかなか茶を注ごうとはせずこんな事を言い出した。
「パパ、それよりビール飲まない・・私もちょっと喉渇いちゃって。久しぶりに二人でゆっくり出来るんだし。」
言い終わらないうちに冷蔵庫からビールのボトルを取り出すと栓を抜いてグラスに注いだ。

良く冷えた泡を飲み干しながらそっと笙子を観察した・・案の定、彼女は縁を嘗めただけでグラスはテーブル上に置きっぱなしになっている。
私も余り過ぎると自分自身に自信が持てない事もあってチビチビと嘗めるように嗜んだ。
  1. 2014/11/10(月) 01:07:09|
  2. 風・フェレット
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風 ⅩⅣ

タップリと己の欲望が張り付いたタンクトップを浴室内の床に引き伸ばして固形石鹸の泡を塗り付けた。
水気を含んだ精液はカリカリに固まって泡立て洗い流す手を梃子摺らせる。

それにしても笙子の下着は何処に消え失せたのか・・間違いなく妻は浴衣の下には何も付けてはいなかった。
すぐさま二人の公園管理官の顔が浮かんだ・・奴らのいずれかが奪い取っただろう事に疑う余地はなかった。
笙子が逃げ出した後の脱衣所で凶悪な男根を奮い立たせたままで物色する姿が目に浮かんだ。
グズグズしてはいられなかった、既にあの野獣達は妻を残した階上に消えている・・いや、最早手遅れと成ってしまったかもしれなかった。
夜具に横たえた裸身を執拗に慰める笙子の姿と、鋼のような浅黒い肉体に凶器をそびえさせた二体の獣がオーバーラップする。
このようにのんびりと洗濯をしている場合ではなかった。洗面器に水道の流水を満たすと残骸処理も不充分なままタンクトップを押し込み手早く揉み濯ぐと堅く水気を絞った。

階下から見上げると既に消燈された二階通路は薄暗く、闇が不安を増幅させる。
両手に水分をタップリ含んだ夫婦の衣類を抱えて、階段の真下に立つとここで履いていたスリッパを脱ぎ捨てた。
早鐘を打ち続ける胸を深呼吸で何とか鎮めながら素足で階段の床を踏み進む。極端に緩やかに床の軋みに注意しながらそろそろとまるで泥棒猫のように闇に身を潜める。

二階の三室のうち真ん中の我々の部屋と、奥の襖の隙間から闇に沈む廊下に真っ直ぐな光が二本伸びていた。
その真ん中の暗がりに身を秘すようにしゃがみ込んで両耳の感覚を研ぎ澄ましてじっと聞き耳を立てた。

互いの部屋からは暫く話声は聞かれなかったが時折、テーブルにグラスを置く音が静寂を裂いた。
奥の部屋ではビールを飲んでいるようでグラスの軽い音に時としてドンと重量を感じる瓶が置かれる音が混じる。
「おい、大概にしとけよ。要らん事をやってる暇はないぞさっさとやることだけやって戻ってこいよ。」
はじめに壮年の管理官の声が響いた。とそれを合図にしたようにギチギチと畳を踏みしめる音と争うような着ずれの音が声の方向とは逆の自室の方から漏れ聞こえた。
「へっ・・仕方ねえなァ・・何を格好つけてやがるんだ。べとべとのチリ紙ばら撒いてあんた限界まで催してるんだろ~が。」
若い管理官は既に笙子の傍らに座しているらしく、物音に続いて叱咤するような強い語気で言い寄る。
「だ・・だめです・・主人が・・主人が戻ります。」
笙子は辺りに気をつかうように小声でたしなめる。
「ふん、あの亭主は腑抜け野郎さ、その証拠に車の中で散々女房が辱められたって言うのに一言の抗議も出来やしない・・或いは風呂場での一件や今の状況だってとっくにご存知かもしれないぜ。」
胸を撃ち抜かれたようなショックを感じた・・この男達は私の性癖の全てを当に知り尽くしているのかもしれなかった。

「ほれ、兄貴に免じて今は辛抱しといてやるがな・・聞き分けて早く飲み込んじまいな。」
「い・・いやです・・何なんですか・・怖い。」
「へへ・・心配には及ばね~ぜ・・奥さんを天国にお連れする高価なもんだよ。普通なら勿体無くて使えないところなんだぜ・・だがよ兄貴があんたをぞっこん気に入っちまったと見えてよ・・へへ・・特別サービスって訳さ。分かったらてこずらさずに聞き分けな。」
激しく争うような物音が暫く続いていたが、強く頬を張り飛ばすような鋭い打音が轟き、静けさが戻る。

「最初から大人しく言う事を聞いてりゃ痛い目に遇わずに済んだのによ・・よ~しよし良い子だ・・へへ。ほれこのビールで飲み込め。」
「ああ・・お酒は駄目なんです・・お茶で・・。」
「ポットの茶にはご亭主用の薬が入ってるのは、奥さんだって知ってるだろ・・。それにアルコールで飲めば薬効も倍増するんだ・・自分のためだと思って、きゅ~っと一気に飲み込め。」
「む・・ぐっ・・。」
どうやら笙子の抵抗もここまでのようだった。
無理やり飲まされたのは恐らく、麻薬か媚薬の類であろう・・それが一体どれほどの効果を生むものなのか知識は全くなかったが、妻の身が安じられると同時に言いようのない興奮にかられた。
「ははは、これで準備オーケーだ。後は・・奥さん、上手く亭主にも飲んでもらうんだぜ、それも成るべく早くな・・強烈な効き目だけど効き始めるまで三十分はかかるから、奥さんの方が間に合わなくなっちまうからよ・・へへ・・頑張ってな。」
部屋どうしを仕切る襖が乱暴に閉ざされる音が響き、男達の誇笑と笙子のくぐもったような嗚咽が後に残された。
  1. 2014/11/09(日) 16:42:38|
  2. 風・フェレット
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風 ⅩⅢ

雨戸越しの窓から聞こえる揺さぶられた木々の悲鳴が大型台風の強風を伝えている。

キチンと中央に敷き詰められた夜具の上に大の字に寝そべるとそのまま寝入ってしまいそうなくらい身体はクタクタに草臥れ切っていた。
にも拘わらず大脳の片隅では妖しい倒錯感が蠢き感覚を痺れさせる。
もしもあのまま湯船から逃げ出さなければどのような事態が起こっていたのであろう・・。
まだ夜具には入らずに部屋の片隅に追いやられた座敷テーブルに肩肘を突いて、何事か思い詰めたような表情でじっと手元に視線を落とす妻、笙子の浴衣姿を眺めやる。

笙子は風呂から出て小一時間が過ぎようとしているにも拘わらず相変わらず肌を赤らめ薄っすらと汗を滲ませ、時折手にした手ぬぐいを首筋に這わせる。
台風の影響か今日は閉め切っていてもさほど暑さは感じないのだが彼女の周りにだけ暑気が立ち込めているようにさえ見えた。
長い髪を梳き上げうなじを拭うと両手の肘が高く持ち上がり、緊急避難で着ける暇の無かったノーブラの胸が前方に突き出され頂きの両突起が浴衣の薄生地を押し上げクッキリと輪郭を晒す。
その乳頭が明らかに硬くしこっているのが伸ばされ張り付いた生地の隆起で見て取れる。

どう見ても妻が平静な状態には無いことは明らかだった。
その様子は私の五感にも尋常ならぬ興奮を呼び起こしていた。
笙子は今日は元々確かに異常な程、官能を昂ぶらせてはいた・・されど性急とさえ思われた私へのアプローチは今は影を潜めている。
部屋に戻るなり先程の浴場での営みの再開を予想していた私は明らかにはぐらかされてしまっている。
彼女の胸中にはどのようなシナリオが描かれているのであろうか・・・。
その想像は私を倒錯の淵に誘い込み股間では高まりが浴衣の前合わせを突き破ろうともがき苦しませている。
その愚直の真上で腹がクウクゥ~とだらしなく音を立てる。

空腹は当に限界を超えている。何せ今日は朝飯にトーストを一枚食べたきり何も口にしていなかった。
浴場を離れて向かった食堂のテーブル上に四組の食事を目にした笙子は、食欲がないので部屋に帰りたいと言い出した。無理もなかったが彼女一人を部屋に戻す事は更に許され難い事でもあった。

「パパお腹空いてるんでしょ・・私に構わずに食べて来てよ。」
笙子は此方に向かって座り直してニッコリと微笑んで見せたがその目元が決して笑ってはいない事は永年連れ添った夫婦ならば容易く見破ることが出来た。
彼女はどう考えているのだろう・・奴らに抱かれたがっているんじゃあるまいか・・・。こんな考えが湧き上がった。
「はは・・奥さん、お顔押さえても指の間からしっかり見てたでしょ・・分かっちゃうんだな~全部・・はははは」風呂場での若い方の言葉がまざまざと蘇った。

「ね・・行って来なよ、二人とも手を付けないんじゃお爺さんに悪いし・・それにお風呂に置いて来た洋服も干しておかないと明日、困るし・・それも取って来てくれないかな。」
笙子の言う通りだった、食事はともかく衣類だけは早く干しておかなければ間に合わなくなってしまう。
取り敢えずそれだけを先に済まそうと考えると、気だるさを振り切って部屋を後にした。

階段を半ばまで降りて階上を振り返ると一転踵を返して足音を忍ばせながら再び二階へ戻ってみた。
一人になった部屋で笙子は何を考えているのか・・・どうしても気が先に向かわなかった。
予め、やや残して置いた入り口の襖の隙間から室内を覗う。

笙子は居場所を夜具の上に移して両脚を真っ直ぐに寛げて投げ出し、左腕で上体を支えて置き上がっている。
空いた右手は夜具の脇に持ち出されたボックスティッシュから数枚を抜き取ると浴衣の下肢の前合わせを肌蹴て股間を拭い清めている。
大慌てで飛び出した浴場からは上と同じく尻を包む下着も持ち出せなかったらしく、開いた股間部は漆黒の蔭りがいきなり露出された。
吸い取られて湿ったペーパーを掌で握り潰し無造作に脇に放ると、中三本の指を幾分湾曲気味に立ち上がらせて再び股間に差し入れる・・暫くの間、口元を真一文字に食い閉めながら擦っていたが、動きが下方から上方へと弄る動作に変化するにつれて見え隠れしていた指の腹は完全に飲み込まれて視界から消え失せ、にも拘わらず肘を中心に円を描くように律動する腕の動きは加速度的に激しさを増して行った。
結んだ唇は歯を立てて噛み締められ血の色を滲ませる。
堅く食い閉められているにも拘わらず絶息にも似たうめきが鼻腔から激しく漏れ出し、支えの左腕は力を失って夜具に崩れ落ちて、ただ掌だけはきつく片乳の底部を絞り締め中指の腹で勃起した突起物を埋め潰す。
「ふ・・は・ふう・・はっは・・」
血走って見開かれた両目と血の色に噛み潰された肉厚な唇、そして熱い息を吹き出しこれでもかと言わんばかりに径を広げた両鼻腔、熱病に浮かされたように高潮しビッショリと玉の汗を吹き出す絹肌。
耳には明らかに再び大量に分泌された粘液が掻き回され泡立つ湯音が届く。

妻の自慰を盗み見ながら激しく勃起した実直は臨界点を迎えつつあった。
このまま零してしまえば浴衣は二度と着れなくなってしまうだろう。
見開いた目が名残惜しげに残留しようともがく欲求を辛うじて押し止めると階段をやはり忍び足で下り脱衣所に飛び込むと一目散で妻の脱ぎ捨てられた着衣を目指した。

白のスラックスを投げ捨て、薄桃色のカーディガンを押しやり、薄グレーのタンクトップをはやる心で持ち上げたが下着は姿を消し去っていた。
握り締めた性器は嘗てないほどにカチカチに固まり鈴口からは白濁が混じり始めていた。
慌てて床に投げ捨てた笙子の着衣を這いつくばって拾い集め、スラックスの股間部を裏返しにして鼻に押し付けて、雨水を吸い込んで重く湿ったタンクトップで欲情を包むと這いつくばったままドクドクと渾身の精をぶちまけた。

倒錯的な射精感に身を震わせキツクあてがった妻の着衣を汚辱し力なく呆け切った身の耳の端で二階へと続く今しがた自分が下ってきた階段を軋ませながら上がって行く足音を微かに聞き取っていた。
  1. 2014/11/09(日) 16:41:59|
  2. 風・フェレット
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風 ⅩⅡ

「わかりました・・・それじゃ、明朝。」
帳場の赤電話の受話器を置くと首を傾げた。
爺さんの言うように、受話器は外されていたものの回線は繋がってはいなかった。
念の為にロードサービスへ此方から電話を入れてみたのだが、先方から連絡を入れたと言う記録も約束の修理時間の変更も予定にはなっていないと言う事だった。
ならば・・爺さんはどこからの電話を取り次いだと言うのだろう。
明かりが消えて真っ暗な帳場の奥へ声を掛けてみたが爺さんのいる気配は無かった。
食堂へ回ってみると、テーブルには既に夕食の用意が並べられていた。鯵の開き、冷奴、簡単なサラダに御櫃が置かれている。朝食のような簡単な食事だがこれは仕方が無いことだろう・・だが腑に落ちない事に、食事の用意は二人分ではなく四人分出されている。
可笑しな事ばかりだな・・と思いながらも、厨房の奥に声を掛けるが、やはりそこも消灯され人の気配は無い。
もう自室へ引っ込んで休んでしまったのだろうか・・何か変だな・・と少し不安を感じながら浴場へ続く廊下を引き返す。

脱衣所のドアを開くと下足場にスリッパが散乱していた。
え・・確かさっき出るときは笙子のスリッパが行儀良く揃えて置かれていた筈なのだが。
良く見ると笙子のスリッパは元の場所にキチンと置かれているのだが、それ以外に二組のスリッパが乱雑に脱ぎ散らかされているではないか。
私は慌てて、脱衣所との目隠しに下げられているカーテンに身を秘せ、気取られぬよう慎重に中を確認してみると、脱衣篭に脱がれた私と笙子の着衣以外に、やはり二着の薄緑色でお揃いの作業着がこれまた乱雑にベンチの上に脱ぎ捨てられていた。
奴らの・・その作業着は間違いなく先ほどの公園管理官の二人が着ていた物に間違い無かった。

胸の鼓動が外に聞えてしまうのではと、錯覚してしまうほど激しく高鳴った。
浴室のガラス戸越しに中の様子がぼんやりと浮き上がっている。
手前にはサッシ戸を背にした二つの背中が、かなりハッキリと浮かび上がっている。
短、長のかなり背の高さの違うがっちりした筋肉質の身体は当然のように全裸で尻の割れ目まではっきりと曝け出している、腰タオルすらも巻く事なくすっぽんぽんで仁王立ちしている。
その目線のやや前方には、先程と同じ位置でやはり此方に背を向けて浴槽の縁に腰掛けている笙子が、こちらは湯気でかなり輪郭を失ってはいる物のちゃんと見て取る事が出来た。
浴室内の雰囲気からして笙子は音を忍ばせ入り込んできた無頼漢の存在に未だ気がついてはいないようだった。
「そこで何をやってるんだ。」
若い管理官の声がハッキリと私にも聞き取れた。
「パパ~!遅~い・・。」
笙子は声の主を私と勘違いしたようだった。
返事をしながら上体を捻じって振り返った笙子の口からけたたましい悲鳴が上がった。
「なに~~!あなた達・・何してるのよ~!出てってよ!」
慌てて湯船に身を投げ落とす大きな水音が響いた。
「何してるとは俺達の台詞だ、あんたこそ男湯で何をやってやがるんだ!」
「ええ~~・・だって、お爺さんが宿泊客は私達だけだって言ったから・・。」
「何を寝ぼけてやがるんだ!俺達も今日の台風を避けてここに泊まることに成ってるんだよ。俺達が男湯で入浴して何が悪いんだ!」
「そんな・・だって・・確かに・・・。分かったから出ますから、少しだけ出ていてください・・これじゃここから出られません。」
笙子は半ば泣き声に成りながら、懇願している。
だが男達は我存ぜぬと言った態度で湯船の湯で身体を清めて、笙子の浸かっている湯に足を差し込んだ。
「や・・やあ~来ないで~。ね・・直ぐ出ます・・だから後生ですから少しだけ・・少しだけ・・あっちへ行ってて下さい。」
だが彼らは無情にも肩までどっぷりと湯に浸かって笙子を両側から挟み込んでしまった。

どうしたら良いのか皆目、判断が付かぬ間に・・笙子は奴らの手に掛かってしまうかもしれない。カーテンに包まって中の視界から身を隠すように様子を覗いながらも、足は竦んでガタガタと震えるばかりで一向に踏み込む決意がつかなかった・・。
奴らの言う通り、マナーに反し男湯に入っていたのは笙子の方なのだから。
「奥さん・・さっき面白そうな事してたな。」
「知りせん・・。」
恐らく身を庇いながら固まっているのだろう・・私は笙子が早く自分で脱出を試みる事を祈っていた。
「知らないって・・ははっ、俺ちゃんと見てたんだぜ・・。奥さん、マンズってたんだろ。」
「いや~!やめて・・ち・・ちがう・・違います。」
「ははは・・お手々の指が股に突き刺さってる所、ちゃんと見えてたぜ・・。あんた、欲求不満かよ。」
笙子の返答は聞えなくなった・・恐らく半べそをかいているのかもしれない。
「俺なあ・・美人の奥さんのあんな姿を見せつけられちゃったから今、大変なんだぜ。」と言うなり湯から勢い良く立ち上がり、笙子の正面に立ち塞がった。
「きゃ~~~!」
笙子の甲高い悲鳴が響き渡り、両手で顔を押さえるのが分かる。
「へへ・・びっくりした~・・でっかいだろ。亭主とは比べ物にならんだろ。」
「知らない・・見てません。」
「はは・・奥さん、お顔押さえても指の間からしっかり見てたでしょ・・分かっちゃうんだな~全部・・はははは」
流石に辛いと見えて笙子は覚悟を決めて立ち上がると、湯から飛び出した。
「お~・・良いオケツゥ~きゅ~て締まりそうだな・・ズッコンズッコンさせてよ~。てっぺんまで行かせてやるからよ~。」
卑猥な嘲りを背に浴室から飛び出した。

私は笙子の脱出を察知すると急いで廊下に飛び出た。
笙子も僅かの更衣時間で顔を真っ赤に上気させて転がり出てきた。
「おっ!どうした・・」
私はたった今、用事を済ませて戻ったような演技をしながら小走りに向かって来る笙子の身体を抱きとめた。
「あ・・・あなた・・・何でもない・・湯が熱くて少しのぼせちゃったみたい・・もう、出ましょう。」
笙子は肩で息をしながら項から顔にかけて真っ赤に上気させている。
着衣は借りた浴衣を羽織っただけで前は両手で閉じ合わせているだけだった。
その手に握られているだけの浴衣の紐が緊急事態の名残を伝える。
「あ・・ああ、じゃ食堂へ行こうか・・。もう用意が出来てたみたいだから。」と廊下を逆に引き返した。
浴場での出来事は笙子が切り出さない限りは黙っておこうと思ったが脱衣所に置いたままの二人の濡れた着衣が気になった・・。
あれが無ければ明日着て帰る服がなかった。ただ、今取りに戻れば奴らと当然出会うことになってしまう・・。ほとぼりが冷めてからでいいか・・ぼんやりと考えていた。
  1. 2014/11/09(日) 16:41:16|
  2. 風・フェレット
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風 ⅩⅠ



「何だかこんな明るい所で恥ずかしいね。」
笙子はずぶ濡れの着衣を脱ぎ捨て、脱衣篭に投げ込むと手拭で前を覆ったが小さな布切れで隠し切れるほどか細い肉体ではなかった。
「やだ~・・またちょっと、ついちゃったかな~・・。」
腿の辺りを擦りながら脱衣所の大鏡に裸身を映して苦笑いを見せる。
笙子は気にしているのであろうが、以前の細身の身体よりも肉が程よく付いて丸みの増した今の身体の方が男にとってはずっと魅力的に映る事だろう。
傍らに私の痩せ過ぎでガリガリの身体が映っていたが笙子の余りに肉感的な肉体と並ぶと圧倒的にみすぼらしく見えた。
浴室内は四畳半くらいの広さで家庭の風呂場と比べればかなり広いが大浴場とはとても呼べるような物ではなかった。
その奥、三割ほどを占める湯船いたっては、多少湯量は多めとは言え普通のユニットバスであった。

先に湯に浸かる笙子の頭上を越えるように湯船の縁を跨ぐと、下から股間に指が伸びてきた。
「何だよ・・。」
「何だって・・いいじゃない・・これ私のだもん。」と言って悪戯っぽく笑った。
「よせよ、どうせお前の気に入ってるようなもんじゃないんだから。」
「あっ・・やだ~、怒ってるの・・さっきの事、あんなの嘘に決まってるでしょ。パパが余りにも構ってくれないから・・たまにはちょっと苛めてみたくなるじゃない・・。」
「じゃあ・・全部、嘘だって言うのかよ。さっきの話し・・。」
「虎の事でしょ・・。馬鹿ね~信じないでよ・・あんな話。その気ならそのまま残って来るでしょ・・。私はパパが居れば・・って言うか・・ネッ・・してくれたら満足なの。でもしてくれないから・・。」
「じゃ・・ちっちゃくても良いのかよ。」
「ううん、良いかって聞かれても、私、パパのしか知らないから・・分かるわけ無いじゃない。でもね・・無視されるのって辛いの・・分かるでしょ・・自己嫌悪に陥っちゃうんだから。」
隣に並んで座り肩まで湯にどっぷりと浸かると昼間からの疲れがどっと噴き出すように感じた。
笙子によって、久々に精を搾り取られ。散々、不満の捌け口を聞かされ。台風の最中、アクシデントでずぶ濡れになり、得体の知れない公園管理官に振り回されて。一年分の労力を一辺に使わされたようにさえ思えた。

「うふ・・硬くなって来た・・。」
嬉しそうにゆるゆると私の分身に摩擦を加えながら、自らの下唇を舌先で舐め回している。
その表情は完全に発情した牝の顔に成っている。
「ここで、しちゃおうか・・。」
笙子はすっかり理性が消し飛び、制止が効かない様子だった。
「見て。」と言うと自らの股間に差し込んでいた左手を湯面に持ち上げて、指先を私の鼻先に突き出した。
その指には呆れた事に湯に浸かっていたにも拘わらずドロリと濃厚な善がり汁がたっぷりと貼り付いていた。
「もう、いつでも準備オーケーよ。今日は散々、あなたにもあいつらにも刺激されっぱなしだったから、もう限界なの・・このままだと切れちゃいそうよ。ね、お願い。」
言うが早いか腰を浮かせて私に跨ると、右手で分身を固定しゆっくりと腰を沈めた。
「あ~~・・あ・・久し振り~・・嬉しい・・。」
湯船の縁に両手を付いて腰を激しく上下させる。大きな白桃のような尻が眼下で現れたり沈んだりする度に大きく湯面が波打ち縁から溢れる。
丸々と量感を湛えながらも、きつく縊れたウエストが視覚的にも強烈な刺激を大脳に伝える。
「はう・・はう・・パパ、パパ。もっともっと激しく・・ねえ~ん。」
更なる強い接触を求めて後ろ手に私の腰を抱き締めて尻と恥骨をピッタリと密着させる。
「あ~・・あ~・・まだ・・まだよ~もっともっと・・ねえ~動いてェ~~。」
呆れた事に湯の中での連結にも拘わらずヌメヌメした分泌液が纏わり付いて包み込み、薄まって潤滑不足に陥りやすい水中性交に何の支障もきたさなかった。そればかりか沈みこんだ相臀の窪みから吐き出される白濁が湯を染め特有の臭気さえ漂わせる。

今や笙子は快感のみを求める牝に成りきって貪欲にテンションを高め切っている。
「あ~~お、あ~~おおお・・あと少しあと少しよ~~~。」
笙子の声だけが浴室に高々と木霊し、密閉された浴室ならではのエコー音が響き渡る。
「・・!」
私は狂ったように打ち振られる笙子の大尻を両手で強引に制止させ動きを封じた。
「や~~・・・何よ~・・もうちょっとなの~ねえ~。」
半べそをかいたような切羽詰った顔で私を振り返る笙子の口を掌で塞いだ。

「ご主人・・ご主人・・」
微かな呼び声は笙子の耳にも届いたようだった。
浴室の入り口は銭湯のような総ガラス張りのサッシ戸で湯気に曇ってはいる物の脱衣所の風景を全て映し出している。
そしてその中央付近に主の老人が立っているのが見えた。湯気によりその顔までは確認出来ないものの浴室の中を覗っている様子はハッキリとわかった。
「はい、何か・・。」
大きな声で返事を返す。
「いやあ・・済まんです・・あの、さっき電話されたロードサービスから電話が掛かっておるんですよ。」
「はあ・・ですが、今日は宿泊するから修理は明日の朝で良いと言っておいたんですが・・。」
「それが、台風で出動できないから明朝はかなり混雑するらしくて・・。天候さえ回復したら今夜にでも済ませておきたいらしいんじゃ・・。で、故障車の正確な位置が知りたいらしくてのう・・。」
「分かりました・・じゃあ。風呂から出たら電話を入れますよ。」
「それが・・そう言うたんじゃが・・その担当者は出先からかけてるらしくて・・電話口で待ってるから、是非、呼んで欲しいと言うんじゃ。」
「そうですか・・じゃ、直ぐ出ます・・ちょっと待ってて貰って下さい。」と言うと爺さんは脱衣所から立ち去った。

「仕方ない・・ちょっと行ってくる。」と声をかけるが、寸前でお預けを食わされた笙子はふてくされたような表情で尚も股間に手を差し込んで白濁を掻き出している。
「聞かれちゃったかなあ・・。」
「う~ん、かなり大声で泣いてたからなあ・・多分・・。」
「あんな、おじいさんでも性欲って有るかしら・・。」
「どうかなあ・・老人って言っても個人差は有るだろうし・・とにかく行ってくるよ。あまり待たせる訳にも行かないし。」
「分かったわ・・でも早く来てね・・この状態じゃ私、気が狂ってしまいそうなの・・。」
「分かったよ・・それにしても好きだなあ・・おまえ・・。」
「もう・・あなたのせいだからね・・好きになったのも・・欲求不満に成ってるのも。」
怨みがましそうな笙子を残し、手早く浴衣を身に付けた。
きちんと揃えてある二組のスリッパの一つを履くと浴室内を振り返る。
やはり湯気で曇ってはいても中に居る笙子の輪郭線はハッキリと見て取れた。
その笙子は湯船から上がり縁に腰掛け、こちらに背を向けていた。湯気に薄っすらと浮き出す、その白い肩から臀部へ続くなだらかなラインは溜息が出るほど艶めかしかった。
  1. 2014/11/09(日) 16:38:58|
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