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闇文庫

主に寝取られ物を集めた、個人文庫です。

インプリンティング 第23回

昼食に親子丼をとったのですが、妻は箸もつけません。
「どうした?食べろ。」
「典子さんに会うのだけは許して下さい。典子さんには会えないです。」
「子供みたいな事を言うな。離婚を前提の別居か何か知らないが、今はまだ夫婦だ。頭の一つも下げられないのか?もういい、その話は後だ。折角俺が注文してやった物を食べない積もりか?」
妻は一口食べましたが、また箸を置いてしまいました。
「どうして食べない?奴の言う事は何でも聞いて、あんな卑猥なパンティーまで穿いていたおまえが、俺の言う事は、おまえの身体を心配して言っている事すら聞こうとしない。本当なら、俺は稲垣や奥さんに会いたくなければ会わなくても良い立場だ。それを一緒に居てやろうと思っているのに。もう分かった。俺は出掛けるから3人で話し合え。」
すると妻は口いっぱいに頬張り、お茶で流し込む事を繰り返し、時々吐きそうになっています。
「そうだ。残さず全て食べろ。」
空腹も辛いのですが、食欲も無いのに無理やり食べさせられるのも同じ位辛く、一種の拷問ともとれます。
妻を言葉で虐めるだけで無く、身体への虐めを始めた自分が恐ろしくなりました。
夜になって稲垣から電話がかかり、既に途中まで来ていたのか、それから10分ほどで来た奥さんは、小柄で可愛い感じの方なのですが、ここに来る途中も泣いていたのか、目の回りの化粧が落ちていて、折角の可愛い顔が台無しです。
私が妻の待つ座敷に案内すると、部屋の隅でうな垂れて正座している妻を見つけて駆け寄り、前に座って妻の両肩を掴んで揺すり。
「どうして?どうして智子さんなの?どうして?」
「ごめんなさい。ごめんなさい。」
私があえて止めずにいると稲垣が。
「もう、そのぐらいにしておけ。悪いのは俺だ。」
別居の原因が奥さんの浮気では無いと確信していた私は、私と同じぐらい辛いで有ろう奥さんに対しての、横柄な口の利き方に怒りを覚え。
「悪いのは俺だ?何を格好つけているんだ?まだ女房の気を引きたくて、いい男を演じているのか?悪いのはおまえだと認めているのなら、おまえ一人で全ての責任を、今すぐにとってもらおうじゃないか。」
「どの様に責任をとらせていただけば良いですか?」
「馬鹿か?責任のとり方も分からないで、偉そうに言うな。泥棒が捕まってから、泥棒は俺だと威張っているのと何も変わらないぞ。」
「すみません。威張っていた訳では。」
「今日はどの様に責任をとって、どの様に償うのか考えて来ただろうな?」
「ご主人の気が済む様に、出来る限りの事は致しますので、どうかご提案頂けないでしょうか?」
「俺に言わせてもいいのか?出来る限りの事をしてくれるのか?それなら、おまえが何度も何度も汚した女房の身体を、以前のきれいな身体に戻してくれ。俺の壊れた家庭を元に戻せ。俺は一生この事を忘れずに、苦しんで生きなければならない。そんな人生は嫌だから、俺からこの記憶を消してくれ。時間を単身赴任の前に戻してくれ。」
その時、稲垣の奥さんは声を出して泣き崩れ、妻は私の前に来て畳に額を擦り付けながら。
「あなた、ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。」
しかし私は、そんな妻を無視して。
「おい、何とか言えよ。おれの希望を出来る限り叶えてくれるのだろ?」
「出来ません。どれも出来ないです。どうか私に出来る事にして下さい。お願いします。」
「そうか。それなら現実に出来る事を頼もう。去勢してくれ。いや、全て取ってしまって、性転換してくれ。そうすれば過去は消せなくても、今後は少し安心出来るかも知れない。どうせこの様な事が平気で出来る2人だから、今も謝りながら腹の中では舌を出しているのだろ?これからも目を盗んで会うのだろ?おまえが女になれば少しは安心出来る。これなら現実に出来る事だ。」
無理を言っているのは分かっていまが、これは私の本心なのです。
  1. 2014/10/08(水) 00:37:26|
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インプリンティング 第24回

稲垣も妻と同じ様に額を畳につけて。
「すみません。私には出来ません。」
「努力するから何でも言ってくれと言いながら、何もしてくれないのだな。俺にこれだけの苦しみを与えておきながら、銀行には知られたくない。性転換も嫌だ。おまえは本当に償う気は有るのか?おまえは何も失わないじゃないか。」
すると妻が話しに割り込んできて。
「私が悪かったです。あなたを裏切ったのは私です。あなたには私が償います。どの様な償いでもします。あなたの言う事なら何でもします。」
妻の稲垣を庇う様な言葉で更に頭に血が上り、ネクタイを持って来ると妻に投げつけて。
「それなら死んでくれ。おまえと結婚した事が人生最大の汚点だった。今からでは人生のやり直しは出来ないかも知れないが、過去の汚点だけは消し去りたい。それで首を吊って死んでくれ。
ただし、おまえの遺体なんて引き取りたくは無いから、誰にも見つからない様な所で死んでくれよ。」
妻は、体に当たってから目の前に落ちたネクタイを見詰めたまま動きません。
「何処で死のうか考えているのか?そうか、俺が無神経だった。俺が身に着けていた様な物で死にたくないか。死ぬときぐらいは、愛する人の物で死にたいよな。稲垣、おまえのベルトを渡してやってくれ。」
それを聞いた妻はネクタイを力一杯掴んだのですが、やはり動こうとはしませんでした。
「間違っても車に飛び込む様な真似はするなよ。おまえの様な人の心も持たない人間の為に、見ず知らずの人に迷惑を掛けるなよ。」
当然、妻は出来ないと言ってすぐに許しを請いながら、泣き崩れると思っていたのですが、妻はそのままの状態で動かず、涙は流していても泣き崩れる事も無かったので、私の目論見は狂い、思惑通りに事が進まないことにも腹が立ちました。
何度謝らせても私の心が晴れる事はないのですが、それでも常に謝罪の言葉を聞いていないと不安なのです。
私が次に思いついたのは娘の事でした。
「理香の事は心配するな。おまえの様な女にならない様に、俺がしっかりと育てる。」
すると妻は顔を上げて、縋る様な目で私を見詰め。
「ごめんなさい、出来ません。私には出来ません。理香を残して死ぬなんて出来ません。死ねばあなたの顔も見られなくなってしまう。許してください。他の事なら何でもします。」
「理香?今頃何を言っているのだ?今迄散々理香を放りっぱなしで、こいつに抱かれて喜んでいたおまえが、理香を残して死ねない?そんな物ただの言い訳だ。自分が死にたくないだけだ。それに、あなたの顔が見られなくなる?それも言うならこいつの顔だろ?言い間違えたのか?それともお得意のご機嫌取りか?あなたの言う事なら何でもすると言いながら、死んでくれと言えば死ねないと言う。本当にお前の言う事はその場凌ぎの嘘ばかりだな。」
その時稲垣が妻に助け舟を出し。
「お願いします。死ねなんて言わないで下さい。お願いします。」
「またまた色男のご登場か?何を偉そうに言わないでくれだ。それならおまえが代わりに死ねるのか?死ぬどころか、ちょん切る事すら出来ない奴が格好ばかりつけるな。」
その時、奥さんが一際大きな声で泣き出したので、怖い思いをさせて奥さんまで苦しめていると知り。
「奥さん、すみません。折角来て頂いたのに、俺の怒りばかりぶつけてしまって。でも奥さんもこれを見れば、私の怒りを少しは分かって頂けると思います。おい、死ぬのは許してやるから、奥さんの前に立ってスカートを捲ってみろ。」
妻は奥さんの近くまでは行ったのですが、その様な事が出切る筈も無く、ただ立ち尽くしています。
「何でもするからと言うので、死んで詫びろと言えばそれは出来ないと言う。スカートを上げて、お前達のしていた恥ずかしい行為を見てもらえと言っても、それも出来ない。何でもすると言うのは、いったい何をしてくれると言うのだ?これも嘘、あれも嘘、嘘、嘘、嘘、おまえが俺に言った事で、本当の事は何も無い。」
すると妻は顔を横に向けて目を閉じ、スカートの裾を持ってゆっくりと上げ始めました。
「もっと上げろ。パンティーが完全に出てしまうまで上げろ。」
私が後ろからパンティーを一気に下ろすと、俯いていた奥さんは顔を上げ。
「智子さん、これは?」
そう言ってから目を逸らすように、また俯いてしまいました。
「稲垣、おまえがやったのだな?おまえが剃ったのだな?」
「・・・・はい・・・・すみませんでした。」
「智子。確かこれは水着を着る為に、自分で剃ったと言っていなかったか?おまえの人生は嘘ばかりか?どうせ俺と結婚したのも嘘だったのだろ?好きでも無いのに嘘で結婚したのか?」
「違います。」
「何が違う?本当は俺と付き合う前、こいつの所に泊まった時から関係が有って、それからも、ずっと続いていたのではないのか?俺はもう何も信じられなくなった。」
私の言った事が当たっているとすれば、結婚してからも妻にはもう一つの顔が有り、私に見せていた顔が妻の全てだと、ずっと思っていた私は間抜けな道化師だった事になります。
  1. 2014/10/08(水) 00:38:35|
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インプリンティング 第25回

私が話し終わると、ずっと泣いていた奥さんが妻の前に座り。
「智子さん、本当なの?私はずっと気になっていました。あの時主人が、昨日は夜遅かったので一晩泊めたと自分から話してくれて堂々としていたし、あなたにも悪びれた様子は無かったので、主人を信じよう、智子さんを信じようと思ったけれど、ずっと私は気になっていた。あの時からの関係なのですか?もしもそうなら、私の人生は何だったのだろう。」
「ごめんなさい。典子さん、ごめんなさい。でもあの時は、典子さんを裏切る様な事はしませんでした。それだけは信じて。」
「裏切る様な事はしなかった?奥さん、こいつらの感覚では、キスはしたがそれは裏切では無いそうだ。一晩中ベッドに寝て抱き合っていたけれども、裏切った気持ちは無いそうだ。それに、健康な男と女が狭いベッドで抱き合ってキスしていても、他には何も無かったそうだ。」
奥さんは、また妻の両肩を掴んで揺すりながら。
「嘘だと言って。智子さん、キスもしなかったと言って。抱き合っていたなんて嘘だと言って。
そうでなければ、あの日からの私の人生全てが無駄に思えてしまう。」
奥さんは紙に包まれた何かを出すと、何も答えずに泣いている妻の目の前で開き。
「これは智子さんの物なの?それだけでも教えて。お願いだからこれを見て。」
妻は一瞬見たものの、すぐに顔を背けて黙っていたので、私が近くに行って見せてもらうと、それは米粒2つ分ほどの、蝶の形をした小さな金属でした。
これは私が3回目の結婚記念日にプレゼントした、イヤリングの先の花の中心に付いていた物です。
妻は可愛いと言ってよくつけてくれたのですが、片方の蝶を何処かに落として来てしまったので、なんとか修理出来ないか購入店に持って行った覚えが有ります。
「これは妻のイヤリングの先に付いていた物です。これを何処で?」
「バスルームの脱衣場です。9年前に私の親戚で不幸が有った時に、子供を連れて泊まりで実家に行っていたのですが、帰った日の夜お風呂に入ろうとした時に、脱衣場の隅に光る物を見つけました。手に取ると蝶の形をしていたので、最初は子供の玩具の何かかとも思いましたが、玩具でこの様な物が付いている物に心当たりがなく、これは何かアクセサリーの一部だと思いました。
そう思うと悪い方にしか考えは行かずに、ずっと主人に問いただそうと思って大事に持っていたのですが、結局、主人の答えを聞くのが怖くて9年間も聞けずにいました。」
奥さんは今まで稲垣に言えなかった胸の内を、熱く話し出しました。
「私はずっと自分に自信が無かった。付き合っている頃から、主人が智子さんの話をする度に、心配で仕方がなかった。智子さんから電話が掛かってきた時や、3人で食事に行った時に、私には見せた事の無い様な主人の笑顔を見る度に、不安で仕方がなかった。私は可愛くも無いし、プロポーションだって智子さんみたいに良くないし、学校だって高校しか出ていない。私なんかと、どうして付き合ってくれているのか不思議だった。どうして一流大学を出たエリートの主人が、私なんかと結婚してくれたのか不思議だった。一晩一緒にいたと言われた時から、ずっと智子さんの影に脅えていた様な気がします。でも、主人が私の事をどう思っていようとも、私が主人を愛しているのに変わりは無いのだから、例え主人が私を愛してくれていなかったとしても、一緒に居られればそれでいいと、自分を納得させていました。主人に何度か女の影を感じた時も、相手が智子さんで無ければ、ただの遊びだから我慢しようと思ってきました。でも、智子さんだけは嫌だった。主人や2人の子供達との、幸せな生活を壊される気がして怖かった。」
「典子、そんな事を思いながら・・・・・・・・すまん、許してくれ。」
その時稲垣は、私の前で初めて涙を見せました。
奥さんは私と違い、ずっと疑っては信じ、信じては疑って長い間苦しんで来たのかも知れません。
私は奥さんの話を聞きながら、9年前を思い出していました。
9年前といえば娘が生まれる前の年で、子供が出来ないで悩んでいた時期です。
私と酷く言い争った翌日の夕方に、妻が会社に電話をかけて来て、少し冷静になりたいので、家に戻らずに銀行から直接友達の家に行って愚痴を聞いてもらうので、帰りが遅くなるのから外で食事を済ませて来て欲しいと言われた事が有りました。
私も言い過ぎたと反省していて、次の日が休日だった事も有り、一つ返事で快く承諾したのですが、妻は11時を過ぎても帰って来ず、よく考えると妻にその様な事を話せる友人がいる事も知らなかった上に、当時は携帯も持っておらず連絡の取り様が無かったので、何処に行ってしまったのか心配で、ずっと寝ずに帰りを待っていました。
結局朝になっても帰って来ずに、私はいつしか眠ってしまいましたが、昼前に目覚めると妻は隣で眠っていて、その後も夕方まで死んだ様に眠り続け、目覚めてから何処に行っていたのか聞くと、友達の家で朝まで悩みを聞いてもらっていたと言いましたが、今にして思えばその友達とは稲垣の事で、その時の様子だと、一睡もせずに朝まで愛を確かめ合っていたのだと思います。
悪い事は出来ないもので、おそらく脱衣場でイヤリングを外した時に落としてしまい、これから稲垣と一つになれる事に興奮していたのか、蝶が取れてしまった事にも気付かずにいたのでしょう。
「智子、何か言ったらどうだ?イヤリングを落として来た時も、関係をもったのだな?」
私が妻に問いただしても、妻は何も反論せずにただ泣いている事から、その時にも関係が有った事を確信しました。
何も答えない妻に代わって稲垣が口を開き。
「回数では無いかも知れませんが、その時一晩だけ関係を持ちました。先に話していた、結婚前に私の所に泊まった時は、本当にキスだけです。1年前からこの様な関係に成ってしまいましたが、それより前は、本当にその一晩だけです。申し訳有りませんでした。典子、すまん。」
稲垣の顔付きや話し方から、この事は本当だと感じましたが、散々嘘をついてきた2人です。
まだ何か隠していそうで、全てを信じる事は出来ません。
何より、例え一晩だけだと言っても私を裏切っておきながら、その後何食わぬ顔で生活していた妻に対して、より強い怒りを覚えます。
  1. 2014/10/08(水) 00:39:56|
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インプリンティング 第26回

私は妻と2人だけで話したくなり。
「今後の事ですが、多少でもお互いの夫婦がどうするのか決まっていなければ、話し合いも違って来ると思うのです。来て頂いていて申し訳ないのですが、妻と2人だけで話してもいいですか?」
すると奥さんは頷いて。
「私も今、主人と2人で話し合いたいと思っていました。」
稲垣夫婦はそのまま座敷に残り、私達は寝室に行き。
「ずっと俺を騙していたのだな。身体の関係はあの時だけかも知れないが、ずっと繋がっていたのだな?」
「繋がっていた?いえ、そうかも知れません。結婚してから偶然同じ支店になるまでも、何度か電話で話したりしていました。同じ支店になってからも、関係を持ったのは1晩だけですが、2人だけで食事に行った事も有ります。理香が生まれてからは疎遠になって、連絡も取り合っていませんでしたが、支店長として彼が来た時、正直嬉しかったです。」
「あいつとはどの様な関係なんだ?お互い、そんなに好きなら、奴が婚約を破棄してでも結婚すれば良かったんだ。どうして俺と結婚した?」
「違うのです。彼とはその様な関係では有りません。あなたを愛したから結婚したし、今でも愛しているのはあなただけです。彼とは結婚したいとは思っていなかったし、ましてや抱かれたいなんて思った事は一度も有りません。」
私には妻が理解出来ません。
「それならどうして抱かれた?レイプされたのか?今回もずっと脅されていたのか?」
「違います。彼はその様な事はしません。」
「それなら聞くが、抱かれて感じなかったのか?気持ち良くならなかったのか?」
「行為中は興奮もしたし、気持ち良くもなっていました。抱かれていて凄く感じてしまいました。
ごめんなさい。でも、彼とセックスしたいなんて思った事は有りません。」
聞けば聞くほど、迷路の奥深く迷い込んで行く様な感覚です。
私は妻の言葉を何とか理解しようとしましたが、やはり訳が分からずに黙っていると、暫らく沈黙が続いた後。
「彼の言う事に間違いは無いと思っていたし、彼の言う通りにしていれば、私は幸せになれると信じていました。でも、愛しているのはあなただけです。」
その後も、妻の涙ながらに話す稲垣に対する思いを聞いていて、私にも少しだけ分かった事が有ります。
妻は父親に裏切られ、その後も男の嫌な面ばかり見せられて男性不信になりました。
その後母親や姉にも裏切られた形になり、男性不信と言うよりは、人間不信に陥っていたのかも知れません。
信じられるのは自分自身だけになってしまい、猛烈な孤独感の中、気が付くと稲垣だけが、唯一身近に感じられる存在になっていたのでしょう。
まだ自分以外の人間を信じる事の出来る、心の拠り所になっていたのかも知れません。
妻が生まれて初めて接した、真剣に妻の事を思い考えてくれる、絶対に妻を裏切らない存在だと思ってしまったのでしょう。
鳥は生まれて初めて見た動く物を、親だと思い込むと聞いた事が有ります。
それと同じ様に、稲垣は妻が接した初めての信頼出来る誠実な男で、それは次第に男女の枠を越えた、回りにいる人間とは全く違う、特別な存在だと潜在意識の中に刻み込んでしまったのかも知れません。
「上手く説明出来なくてごめんなさい。彼は違うのです。父親とも違うし、兄とも違う。結婚をしたい相手でも無いし、恋人という存在でも無い。そうかと言って友人とは全く違います。」
私が思うに、言い換えればそれら全てなのでしょう。
いいえ、神とまでは言いませんが、それらを越えた存在なのかも知れません。
もしもそうだとすると、これは夫婦の愛情や絆を遥かに越えた感情だと思え、絶望的になってしまいました。
「終ったな。俺達は完全に終ってしまったな。いや、智子の中ではずっと前から終っていたのかも知れない。離婚しよう。」
「嫌です。離婚したく有りません。私はあなたを愛しています。正直、彼に言われて数ヶ月前まで離婚を考えていました。どの様にすればあなたを少しでも傷付けずに離婚出来るか考えていました。あなたと別れて彼と再婚するには、どの様にすればよいのか真剣に考えていました。彼は今でも、私と一緒になりたいと思ってくれていると思いますが、私はあなたと別れるなんて出来ないと気付きました。自分の幸せを捨ててでも、私と理香の幸せを真剣に考えてくれている彼には言えずに、だらだらと関係を続けてしまいましたが、何が有ろうと私はあなたと別れる事など出来ないと知りました。どの様な形でもいい。あなたの側にいたい。離婚なんて言わないで下さい。それだけは許して下さい。」
「だらだらと?もう無理をするな。本当にそう思ったのなら、関係を切る事が出来たはずだ。どの様な理由が有ろうとも関係を続けた。いや、智子からは切れなかったのかも知れない。それが全ての答えではないのか?」
泣きじゃくる妻に。
「明日、出て行ってくれ。これで終わりにしよう。理香は俺が育てる。」
妻は顔を上げると、私の目を見て必死の形相で。
「それは出来ません。理香をあなたに任せる事は出来ません。あなただけに負担を掛ける事は出来ません。」
「出来るさ。理香の事を負担だなどとは思わない。それに、おまえには任せられない。おまえは今まで理香の事など考えもせずに、奴に抱かれていただろ?」
「違うの。理香はあなたの子供ではないの。彼の子供なの。あっ・・・・・・・・・。」
私は自分の耳を疑うと同時に、目の前が真っ暗になり、思考回路は停止してしまった様です。
  1. 2014/10/08(水) 00:41:04|
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インプリンティング 第27回

何処か遠い所で妻の声が聞こえます。
「あなた、ごめんなさい。あなた、ごめんなさい。」
その声は徐々に近くなり、私を戻りたくない現実へと戻してしまいます。
現実に戻れば、悲しみから気が狂ってしまうのではないかと思っていた私は、現実に戻るのが怖かったのですが、人間の脳は上手く出来ているのかも知れません。
許容量以上の悲しみが急に襲って来た時には、心が壊れてしまわない様にそれらの全てを受け付けない様にして、守ってくれているのかと思えるほど冷静な私がいました。
きっと後になってから、今以上の悲しみが襲って来るのでしょうが。
「以前から分かっていたのか?」
妻は流石にもう離婚を覚悟したのか、泣いてはいても、割とはっきりとした口調で。
「いいえ、考えた事も有りませんでした。彼から聞くまでは・・・・・・。」
「奴から聞いたのはいつだ?どうして奴に分かる?」
「彼が支店長として赴任してきて、4ヵ月ほど経った頃です。」
妻の話によると、稲垣のアパートで私と妻の血液型、娘の血液型を聞かれたそうです。
血液型で性格判断でもするのかと思い、私と妻がA型で、娘がO型だと答えると。
「やはりそうか。」
妻が、何がやはりそうなのか聞くと、稲垣は立ち上がって窓から外を見ながら。
「お互いA型の夫婦からは、A型の子供かO型の子供しか生まれない。稀にそうでは無い子供が生まれるケースも有るらしいが、そんな確率はごく僅かで無いに等しい。またA型同士の夫婦からはA型の子供が生まれる確率が高いらしいが、理香ちゃんの血液型はO型。俺もO型だ。」
妻には稲垣の言っている意味が分かり。
「そんな事は有りません。確率はそうかも知れないけれど、理香は主人の子供です。」
「どうして分かる?DNA検査でもしたのか?智子は理香ちゃんが生まれてからも、2人目が欲しくて避妊をした事が無いだろ?しかし子供は出来ない。その前だって5年も出来なかった。結局、十数年避妊しないでセックスしていて、出来たのは理香ちゃん1人だけだ。その理香ちゃんが宿った時期に私と関係をもっている。」
「でも・・・・あの時は、子供は出来ないと・・・・・・・・・・・。」
「私も最近までそう思い違いしていたが、よくよく思い出せば、出来ないのではなくて出来る可能性が低いというだけで、全く可能性が無い訳では無かった。だからその前に1度・・・・・・・
君にもそう説明した覚えが有る。」
妻が、その時期私とも関係をもっていたので、それだけでは決められないと言って食い下がると。
「私も智子も、不妊の原因は智子に有ると決め付けていたが、もしもご主人に原因が有ったとしたら?何度も言うが、ずっと避妊せずにセックスしていても、理香ちゃん以外出来なかったじゃないか。」
妻は信頼している稲垣の言葉に、次第にそうかも知れないと思う様になり、問題が大き過ぎて涙も出ずに、座り込んだまま立てなかったそうです。
それを聞いた私も、その確率が高いと思いました。
昔、子供を生めない嫁はいらないと、一方的に離縁された時代も有ったそうですが、私もそこまで酷くは無いにしても、男の勝手な考えで、妻に原因が有ると思い込んでいた時期が有りました。
思い出せば、妻が一晩外泊した後、それまで妻から誘われた事は一度も無かったのに、妻は毎晩の様に求めて来た様な記憶が有ります。
その時は無断外泊をした事で、私の機嫌をとっているのだろうと思ったのですが、今考えると、稲垣と関係をもってしまった罪悪感からしていたのか、または稲垣との間に子供が出来てしまった時の事を考えて、私の子供だと誤魔化す為に、セックスをせがんで来たのかとも思え。
「あいつとの子供が、出来てしまっても良い覚悟で抱かれたのか?それとも、あいつの子供が欲しくて抱かれたのか?」
「違います。あなたとの子供が欲しくて・・・・・・・・・・。」
私との子供が欲しくて稲垣に抱かれたとは、さっぱり意味が分かりません。
「理香の事は俺にとっては何よりも大切な事だ。俺と喧嘩して、あいつの所に行ったところから、詳しく聞かせてくれ。」
話している内に妻は、娘に会って帰って来た時の様な状態になっていて、淡々と詳しく話し出しました。
  1. 2014/10/08(水) 00:42:40|
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インプリンティング 第28回

当時妻は子供が出来ない事で、軽いノイローゼの様な状態になっていて、時々何もかもから逃げ出したい気持ちに襲われ、そのような時は、つい私に当たってしまっていたと言います。
しかし私は情け無い事に、妻が多少辛そうだと思っていても、そこまで精神的に追い込まれていたとは気付かずに、妻が私に突っ掛かってくる事が不愉快で、つい言い争いになっていました。
「特にお義母さんから、子供はまだかと言われるのが辛かったです。お義母さんは、私を実の娘の様に思っていてくれていて、悪気なんて無く、本当に心配してくれているのが分かっていただけに、余計辛かったです。それと、単純に子供が欲しかったのも有りましたが、私は一人になるのが怖かったから、どうしてもあなたの子供が欲しかった。あなたの子供を生んで、あなたとの絆をもっと強くしたかった。そうなればお義母さんとも、血の繋がりは無くても子供を通して、もっと本当の親子の様になれると思った。」
「それなら尚更、どうして稲垣と関係を持つ事になったのかが理解出来ない。本当に俺との絆を強くしたかったのなら、稲垣なんかに抱かれないだろ?言っている事と、やった事は逆の事だろ?」
銀行は昼の間も営業している為に交代で昼食をとるそうですが、私と言い争った翌日、偶然稲垣と昼休みが重なり、稲垣を見つけると隣に座って、子供が出来ない事で私との仲が、最近ギクシャクしていると話しました。
「今仕事の事で頭がいっぱいだから、一人にしてもらえないか?」
妻を女性として意識していた稲垣は周囲の目が気になったのか、素っ気無く答えると席を立ってしまい、残された妻は落胆を隠せませんでした。
稲垣の態度でより落ち込んでしまい、今夜もまた何かで私と言い争いになってしまわないか心配になり、重い気持ちで銀行を出た時に稲垣が追い掛けて来て、今日はもう少しで帰れそうなので、
喫茶店で待っていて欲しいと言われたそうです。
一度は素っ気無い態度をとられているだけに、やはり気に掛けてくれていたという喜びは大きく、私に電話をしてから喫茶店で待っていると、入って来た稲垣は座りもせずにレシートを掴んで言いました
「ここではお客さんに会うかも知れないので、要らぬ誤解を受けても嫌だから、私のマンションへ行って話そう。」
妻は稲垣の奥さんにも聞いて貰えると思い、稲垣に案内されて当時住んでいたマンションに行くとリビングに通され、ソファーに腰を下ろした時、初めて奥さんは実家に行っていて留守だと聞かされました。
疚しい関係では無いにしても奥さんに悪い気がして、一度は帰ろうと思ったのですが、じっと見詰める稲垣の目と目が合った時に、この人なら助けてくれると思ってしまい、不妊で悩んでいる事を話し、どの様にしたら夫婦の仲が上手く行くのか相談すると、何も言わずにただ妻を見詰めていた稲垣が話し出した内容は、信じ難いものでした。
「このままでは、いずれご主人との仲が取り返しのつかないほど壊れてしまう。全ての原因は子供が出来ないという事だけだ。それならば、子供が出切る様にすればいい。」
「それが出来ないから悩んでいます。お医者さんにも行きました。でも駄目なのです。」
「ご主人も行ったのか?医者は何と言っていた?」
「主人はいずれ行くと言っていて、まだ行ってくれませんが、私はホルモンのバランスが崩れていると言われたので、おそらく原因は私に有ると思います。」
「婦人科の医者をしている友人がいるのだが、智子さんの話を聞きながら彼が言っていた事を思い出していた。彼が言うには、不妊の中にも色々有って、病的な物には医学的な治療が必要だが、精神的なものも多く、その中には『慣れ』と言うのも結構有るそうだ。」
「慣れ?・・ですか?」
「ああ。動物には発情期が有って、その時に交尾をするのだが、子孫を残す目的だけで交尾をする彼らは余程の事が無い限り、ほとんどが妊娠するそうだ。そうでないと種族が絶えてしまう。ところが人間には、その様な発情期は無くて年中発情している。言い換えれば年中発情期だとも言える。いつでも妊娠可能だ。しかし、やはり人間も動物の中の一つにしか過ぎないので、体質によっては、本当の発情期にセックスしないと、ただの排卵日にしても妊娠し難い人が少なく無いらしい。」
「いつが発情期なのですか?」
「言い方が悪かったが、残念ながらどの季節が発情期だというものは無い。身体が発情期の様な状態になっている時。つまり、身体が発情している時が発情期だ。」
「では、いつ発情しているのですか?」
「新婚時代は身体も昂っていて、多くの場合、その時期は発情期に当たるらしいのだが、その後は人それぞれなので、いつが発情期なのか、いつ発情しているのかは分からないらしい。ただ問題なのが、その後発情期が来なくなってしまう場合が有る。身体が発情しなくなってしまう場合が有る。興奮や快感は普通に有るので、勿論本人は気付いていないが、夫婦間でのセックスに慣れてしまい、身体が発情期にならないケースが結構有ると言っていた。それが彼の言う『慣れ』による不妊症だそうだ。そういう人の特徴は、1番にホルモンのバランスを崩してしまっている場合が多いと言っていた。2番目が、絶えずイライラしてしまう。本人は他の理由からイライラしていると思いがちだが、本能的に子孫を残そうとしているのに、身体がその状態にならない。
身体が発情しない事のズレから来るイライラらしい。言い辛いのだが、今の智子さんは『慣れ』から来る不妊そのものだと思う。」
こんないい加減な話に、切羽詰っていた妻は真剣に耳を傾けました。
「どうすれば良いのですか?どうすれば正常になるのですか?」
「残念ながら発情を促す薬などは無いらしい。気持ちを興奮させる薬は有っても、気持ちの興奮と身体の発情とは全く異なるものらしい。」
妻は稲垣の話にのめり込み、ずっと身を乗り出して聞き入っていましたが、治療法や薬も無いと聞き、気落ちして俯いてしまうと、その時を待っていたかの様に。
「ただ、方法が無い訳では無い。他の牡と交尾をする。そうすれば、それから暫らくは発情期となる。つまり、ご主人以外の男とセックスをすればその刺激で発情し、その後2、3ヶ月は身体が発情期に入る事が多いらしい。」
「でも、その様な事は聞いた事が有りません。」
一瞬期待して顔を上げた妻でしたが、内容が内容だけにふて腐れた様にそう呟くと。
「私もそうだった。しかし彼が言うには、この様な事を発表してしまえば、不妊で悩んでいる人の浮気が増えてしまって世の中が乱れてしまうし、仮にご主人も納得してそうなった場合でも、その時は良くても、後々その事で夫婦仲が悪くなってしまう可能性が高いから発表は出来ないらしい。自分の患者にも浮気を進める事になってしまうから、とても言えないと言っていた。世間に発表出来ないのは倫理的な観点からだと思う。」
この話を事実だと思い込ませる為に、稲垣は必死になって話していましたが、妻は疑っているのではなくて、稲垣の話を信じていても、自分には出来ないと思っていたのでしょう。
「そう言われてみればニュースでも時々有るだろ?男性関係の派手な女性に限ってすぐに妊娠してしまい、子供を産んで殺してしまったとか、捨ててしまったとか。その様な女性は、それこそ絶えず発情期の状態になっていて、妊娠し易いのは事実らしい。」
何か良い方法が有るのかと、最初から興味深く聞き入っていた妻も稲垣の話が終わると、いくら子供が欲しくても、やはりその様な事は出来ないと思い、また、その様な事を出切る相手もいないので、期待が大きかっただけに落胆も大きく、溜息をつくと黙って俯いてしまいました。
この様な嘘を咄嗟に考える事が出切るほど頭の回転が速い稲垣には、妻の気持ちなど手にとる様に分かるのか。
「智子さんにその様な事が出来ないのはよく知っている。でも、君がみすみす不幸になるのを見るのは忍びない。思い切って言うが、私が相手をしても良いと思っている。私もご主人や妻の事を考えれば、とても出来ないのだが、君が幸せに成る為なら、どの様な罪でも甘んじて受ける。
私は一生罪悪感で苦しむかも知れないが、君がその分幸せに成ってくれれば、どの様な苦しみも甘んじて受ける。」
ただ妻を抱きたいだけの言葉が、妻には分かりません。
潜在意識の中に、稲垣の事を信頼出来る特別な人間だと刻み込まれてしまっている妻には、少し冷静になれば、誰にでも分かる事が分かりませんでした。
  1. 2014/10/08(水) 00:44:11|
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インプリンティング 第29回

妻の話を聞きながら、もう結果の出ている過去の事なのに、そんな嘘に騙されるなと心の中で叫んでいました。
しかし、稲垣を信頼し切っていて、その上普通の精神状態では無かった妻は、まるでインチキ宗教の教祖に騙されて行く信者の様に、稲垣の言う事を疑いもせず。
「それでは稲垣さんに悪いです。私の為に、その様な事は頼めません。」
「いや、私はずっと君の事を妹の様に、娘の様に思っていた。しかし思っていただけで、何もしてあげられなかった。君が苦しんでいた時も、話を聞いてやるだけで何も助けてはあげられなかった。」
「そんな事は無いです。沢山助けて頂きました。」
「そう言って貰えると嬉しいが、そうでは無い。今まで助けて上げられなかった分、今回は何とか力になりたい。私の様な男が相手でも良ければ、私はどの様な罰でも受ける。」
この時点では、妻はまだ少し躊躇していましたが、それは私への罪悪感からではなくて、自分の事で稲垣にも罪を負わせてしまうという、稲垣に対しての思いからでした。
妻の頭の中には、私との子供さえ出来れば、全ての問題は解決するという考え以外無く、喜ぶ私や私の母、私の父に囲まれて、赤ちゃんを抱いている自分の姿が、既に見えていたのかも知れません。
妻の頬を伝う一筋の涙を見た稲垣は、もう少しで妻は落ちると思った事でしょう。
実際、次の稲垣の話で、妻は私との破局の道を進んで行くのですから。
「今思ったのだが、こう考えたらどうだろう。これはセックス等では無い、ただの治療だと。実際智子さんとセックスしたいと思った事は無い。これは君に魅力が無いとかその様な問題では無くて、私にとってはその様な存在では無いという事だ。君もそうだと思うが、セックスの対照では無くて、それとは違う大切な存在だ。決して楽しんでセックスするのでは無いから、ご主人や妻を裏切る訳では無い。楽しむどころか今そう考えただけでも胸が苦しい。その様な気持ちでするのだから、決して裏切りなんかでは無い。これは治療だ。そう考える様にしないか?」
稲垣を信用していて、その上ノイローゼ気味だった妻は、結局、何の疑いもせずに稲垣の提案に乗ってしまいました。
稲垣の欲望を満たす為の行為なのに、逆にお礼を言いながら。
稲垣は妻の話を聞いている内に、普通の精神状態で無い事にも気付き、妻を抱く為にこの様な嘘で妻を騙したのでしょう。
最初、本当にこの様な嘘に妻は騙されたのか?この話は妻の作り話ではないかと思いましたが、話の内容は信じ難いものでも、妻の話している様子は嘘だとは思えないものでした。
妻の事を、私よりは遥かにしっかり者だと思っていて、家計は勿論の事、家の事はほとんど妻に任せ、安心して仕事に打ち込めました。
その妻がこんな事を信じ、騙されたのは、やはり信じ難い事でしたが、妻はそこまで精神的に弱っていたと言う事なのでしょうか?
それとも、私の言うしっかり者と、稲垣のような人間を信じてしまう事は、また別の事なのでしょうか?
よく考えれば、世間では多々有ることです。
病気を治す為に、高額なお布施を払う。
悩みを解決したいが為に、高額な壷を買う。
そんなニュースを聞く度に、そんな奴が本当にいるのかと思いましたが、本当に切羽詰った悩みが有る時に、実際、騙される人間は少なくないのでしょう。
心が弱っている人の、心の隙間に上手く入り込んでくる人間も少なくないのでしょう。
普通の精神状態の時には有り得ないと思う話でも、悩みを抱えていて心が弱っている時には、簡単に騙される事も有るのではないかと思うと、妻の話も有り得ない話では無いと思え、質問を続けました。
「それで、どの様なセックスをした?詳しく教えてくれ。」
私の知らない妻を知りたくて、必死の形相で聞きましたが。
「それは。・・・・・・。それは言えないです。許してください。」
最初から、すんなり話してくれるとは思っていませんでした。
聞けば怒りが増すことは分かっていて、何故この様な事を知りたいのか、自分でも分からないのですから。
逆に妻が話したくないのは、単に恥ずかしいだけなのか?
あるいは、私には言えない様な行為をしていたのか?
それとも、私に2人の愛を語り、これ以上私を怒らす事を得策では無いと思っているのか?
何より、妻と稲垣の2人だけの世界に、私に踏み込まれる事が嫌なのでは無いのかと考えると、余計に聞かずにはいられません。
  1. 2014/10/09(木) 00:44:48|
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インプリンティング 第30回

何故だか分からない、知りたいという欲望を満たす為に、咄嗟に思い付いたもっともらしい話を妻にして納得させようとしてしまいます。
そういう所は、私も稲垣と同じなのかも知れません。
「いや、俺には知る権利が有る。今まで実の子だと思って愛情を注いで来た理香が、どの様にして出来たのか知る権利が有る。そうでなければ、これからも親としてやっていけない気がする。
何処でどの様にして出来た子かも分からず、血の繋がりも無い理香と、今迄通りにはやっていく自信が無い。例え俺の子供ではなくても、どのようにして出来たのか知りたい。その日あいつに抱かれたのは一度だけか?」
妻は聞かれた事に正直に答え、私の欲求を満たせば、私が娘の事を今迄通り実の娘として接し、もしかすると離婚せずに3人で生活出来るかも知れないと勘違いしたのか、呟く様な小さな声で
答え出し。
「いいえ、朝まで何度も。ごめんなさい。」
「どうしてだ?一度で充分だろ?上手い事を言っているが、おまえも抱かれたかっただけだろ。
あいつとのセックスを楽しんでいただけだろ。」
流石に妻から進んで話せる事柄では無かったので、私の質問に答える形になってしまいましたが、事細かに答えさせたお蔭で大体の様子は分かりました。
妻は承諾したものの、いざと成るとまだ多少の躊躇いが有った為に、シャワーを浴びながら考えていると、妻が冷静に考える時間を与えたく無かったのか、突然稲垣が裸で入って来たそうです。
妻は恥ずかしさの余り、屈んで身体を隠して目を閉じました。
「恥ずかしがらないで身体をよく見せてくれ。私だって恥ずかしいんだ。しかし恥ずかしがっていては、普通の男女の関係と何ら変わりは無い。これは治療だと言っただろ?そう思う事にしようと話し合っただろ?医者の前で智子さんは、いや、智子は身体を隠すのか?その方が逆にその事を意識している様で、恥ずかしいとは思わないか?」
稲垣の魔法に掛かっていた妻は、言われるままに少し足を開いた格好で立たされて、全てを稲垣の前に晒し、稲垣は手に石鹸を付けると、妻の豊満な乳房や秘所までも、愛撫するかの様に優しく洗い出しました。
次に稲垣は、これから治療に使われる、既に硬くそそり立っている物を妻の手で丹念に洗わせてから、口に含むように要求したのですが、流石に妻が拒んでいると。
「私も智子にこの様な行為をさせたくはないが、いくら医者の友人がこの時点では発情期に入っていないので妊娠の可能性は低いと言っていても、可能性が全く無い訳ではないだろうから少し心配だ。私のが少しでも薄くなる様に、一度出しておきたいから協力して欲しい。」
「・・・・避妊具をつけてもらう訳には・・・・いかないのですか?」
「ああ、性器と性器が直に触れ合った方が、遥かにその効果は大きいらしいし、他の牡の精子の存在を身体の中に感じれば、なお効果が有ると聞いた。」
妻は、自分の為にしてくれている行為だと信じていたので、仁王立ちになっている稲垣の前に跪いて硬くなっている物を口に含み、ただ妻に色々な事をさせたいだけの要求だとは思わずに、この様な行為を長くさせたくないから、早く終る様に協力してくれと言う稲垣の言葉を信じて、言われるままに、口に含んだまま根元を手で擦ったり、二つの袋までおも口に含まされたりして、稲垣を喜ばせてしまいました。
稲垣が妻の口を弄ぶ行為は更に続き、フルートを吹くかの様に横から咥えさせたり、妻の後頭部を手で押さえて腰を突き出し、妻がむせ返るほど深く入れたりしていましたが、稲垣も限界が近くなったのか。
「出そうになって来たから、口に含んだまま頭を前後に動かしてくれ。もっと早く。よし、そのまま舌も使って。そうだ。手は下の袋を優しく撫でて。そうだ、上手いぞ。」
そうさせている内に終に限界を迎え。
「よし、もう出すぞ。もう舌を使うのはいいから、強く吸う様にして、前後の動きを早くしてくれ。もっと早く。もっとだ。もっと早く。よし、出すぞ。出すぞ。」
次の瞬間妻は、稲垣の濃い物を全て口で受けとめてしまいました。
「奴のを飲んだのか?」
「いいえ、むせてしまって吐き出しました。」
「むせていなければ飲んだという事か?」
「違います。」
最終的には、妻の全てを奪われると分かっていながら、まだこの様な小さな事に拘っている情け無い私なのです。
おそらく稲垣は、まだ子供が欲しい時期だったのか避妊具を持っておらず、妻がシャワーを浴び出してからその事に気付き、妻を妊娠させてしまわないか不安になったものの、買いに行っていては、その間に妻の気持ちが変わってしまう可能性が有るので、先に一度出しておくという様な気休めをしたのでしょうが、それと同時に妻を跪かせて思い通りに奉仕させる事で、男としての征服感を味わいたかったのだと思います。
  1. 2014/10/09(木) 00:45:56|
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インプリンティング 第31回

妻は相変わらず話したがらないのですが、それは無理も無い事だと分かっています。
仮に私が逆の立場なら、何処で会っていたかとか、会っていた回数などは話せても、どの様なセックスをしていたか等は話せないと思います。
特に相手を愛していて、それが2人の愛情表現なら尚更です。
しかし、私の知りたい欲求はまだまだ満たされずに、質問を続けずにはいられません。
妻の息遣い、喘ぎ声の1つまでも知りたくなってしまうのです。
他人から見れば未練がましい、悪趣味な事に思えるかも知れませんが、どの様に思われ様と知りたい願望が勝ってしまうのです。
質問されて、妻が言い辛そうに困った顔をすればするほど、尚更細かな事まで言わせたくなってしまうのです。
「それから寝室に行って、抱かれたのだな?どうした?答えろ。嘘をついても、後から奴に聞けば分かる事だ。」
「もう嘘をつきたくないから話せないのです。話せば話すほどあなたを傷つけ、あなたに嫌われてしまう。」
「もう充分傷付いている。理香が俺の子供では無いとまで言われたのだぞ。それ以上、何に傷付く?」
嫌うも嫌わないも妻との仲は、もうどうにも成ら無いという言葉は飲み込みました。
「そのまま・・・・・・・バスルームで・・・・・・・・。」
稲垣が洗い場に、可愛いイラストが書かれた子供用のマットを敷いて、その上に胡坐を掻いて座り、妻は稲垣に跨る格好で抱き付く様に言われたので従うと、稲垣は妻からキスをするように強要し、長いキスが終ると今度は乳首に吸い付いてきました。
この格好では、稲垣の軟らかくなってしまった物が丁度妻の秘所に当たる為、徐々にまた硬さを取り戻し、完全に硬くなると妻を下に降ろして、自分は後ろから抱きつく様な形で座り、妻の足を立膝にさせて大きく開かせ、手は後ろに回させて硬くなった物を握らせました。
次に稲垣は、左手で妻の左右の乳房を交互に揉み、右手はクリや恥穴を虐めていたのですが、妻はどうしても快感と戦ってしまい、すぐには感じなかったと言います。
「智子、喜んでするのは裏切りになるとは言ったが、治療中は何もかも忘れて感じる事だけに集中しよう。感じないと、この治療の意味が無い。何もかも忘れて乱れないと、ホルモンの分泌も悪いままだ。このままだと、裸でエッチな事をしただけになってしまう。それでいいのか?」
稲垣のこの言葉で、必死に快感を抑え込んでいた妻も堰を切った様に一気に感じ出し、狭いバスルームに響き渡る自分の恥ずかしい声で更に興奮は高まり、いつ気を遣ってしまってもおかしく無い状態になっていました。
妻は、稲垣に見られながら一人醜態を晒すのは恥ずかしく、そうかと言って稲垣の執拗な愛撫から、自ら逃げる事は出来ないぐらい感じてしまっていたので、それを避けたいが為に、稲垣の再び硬くなった物を、入れて欲しいと妻の口から要求してしまいました。
「そうか。もう欲しくなったか。それなら入れてあげるから、四つん這いに成りなさい。」
「そんな格好は恥ずかしいから出来ません。後ろも見えてしまう。」
「それならこの狭いバスルームでは無理だ。他の場所に移動する事になるが、智子はそこまで我慢出来るのかな?ここをこうされても、我慢出来るのか?」
「いや~。もうそこは許してください。我慢出来なくなってしまいます。」
稲垣は妻の気持ちなどお見通しで。
「我慢しなくてもいいぞ。私がよく見ていてあげるから、智子だけ逝きなさい。思い切り逝って、私に逝く時の顔を見せなさい。」
「そんな恥ずかしい事は嫌です。一緒に。私だけは嫌。お願い、一緒に。」
「なあ智子。感じていても、これは治療だと言っただろ?智子はこれから赤ちゃんを産む身だ。
医者が、診察台に上がって足を開けと言っても拒むのか?そんな事は恥ずかしいと言って拒むのか?それと同じ事だ。」
赤ちゃんと言う言葉で本来の目的を思い出した妻が、左手を後ろに回してお尻の穴を隠した格好で四つん這いに成ると、稲垣はすぐには入れずに、嬉しそうに硬くなった物をお尻や秘所に擦り付けて妻を焦らし、恥ずかしさに耐えられなくなった妻が、再び入れて欲しいとお願いするのを待ってから、ゆっくりと妻の中に入って行きました。
入れる時はゆっくりと動いていた稲垣も、完全に入ってしまうと最初から激しく動き、必死に耐えていた妻も、終にはお尻の穴も晒してしまい、延々と続く激しい責めに耐えられなくなって、マットに崩れ落ちてしまいました。
稲垣に見られながら、自分だけが醜態を晒すのが恥ずかしくて要求した交わりも、稲垣は一度出していた為に、結局一人だけが恥を掻いてしまうと言う結果に終りました。
それも、私にも余り見せたがらなかった恥ずかしい格好で。
  1. 2014/10/09(木) 00:47:49|
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インプリンティング 第32回

まだ終っていなかった稲垣は、妻の腰を掴むと持ち上げて、また恥ずかしい格好にさせ、今度も初めから激しく動いた為に、妻はまた稲垣を待たずに崩れ落ち、次に腰を持ち上げられた時には、妻に両腕で身体を支えるだけの力は無く、お尻だけを突き上げた格好で稲垣を奥深く受け止め、妻も同時に3度目の頂上に登り詰めました。
先に一度出させたのは、妻をじっくりと甚振る目的も有ったのかも知れません。
稲垣は一石二鳥も三鳥も考えていたのでしょう。
稲垣はやはり妊娠が心配だったのか、また妻にお尻を突き上げた体制をとらせ、今迄自分の欲望を打ち込んでいた場所に指を2本入れると、シャワーを当てながら掻き出す様な、中を洗う様な動作を繰り返していたのですが、指とシャワーの刺激で、妻はまた恥ずかしい声を漏らしてしまいました。
「おいおい、綺麗にしてやっているのに、また感じ出したのか?智子は普段の大人しい様子からは、想像もつかないほどエッチが大好きなのだな。独身の男子行員はみんな智子の事を、お淑や
かで優しくて、結婚するなら智子の様な女が理想だと言っているが、お尻を突き出して洗ってもらいながらも感じてしまい、嫌らしい声を出しているこの姿を見せてやりたいものだ。逝く時も激しいし、みんな驚くだろうな。」
とても治療をしているとは思えない言葉にも、中で動き回る二本の指の下で硬くなり、包皮から半分顔を出してしまっている小さな突起に、空いている親指で新たな刺激を加えられては、何も言い返せずに、ただ嫌らしい声を上げながら、腰をくねらす事しか出来ませんでした。
「腹が減ったから食事に行こう。」
その声で我に返ると、いつの間にかリビングのソファーに座っていました。
視線を自分の身体に向けると、パンティー1枚だけしか身に着けていません。
慌てて両手で胸を隠し、どうしてこの様な格好で座っているのか思い出してみると、あの後、指とシャワーの刺激で気を遣らされ、朦朧とした意識の中、稲垣に身体を拭いてもらってからパンティーまで穿かせてもらって、ここに連れて来られたのだと知り、羞恥心で消えて無くなりたい思いでした。
服を着てから化粧を直し、稲垣の車で結構遠く離れた場所のファミレスに行き、向かい合って食事をしたのですが、身体の隅々はおろか中までも見られ、その上何度も気を遣る姿まで見られた妻は、恥ずかしさから稲垣の顔をまともに見る事が出来ずに、食事も喉を通りません。
「食べておかないと、朝まで身体がもたないぞ。」
「えっ・・・・・・・。もう充分です。ありがとう御座いました。」
「いや、念には念を入れておこう。本当は何日か関係を持った方が効果も大きいらしいが、今までの私と智子の良い関係が壊れてしまっては嫌だから、今日限りにしておきたい。仕事で疲れている上に智子が激しいから、つい私も激しく動いてしまい体力の限界なのだが、ここまでしてしまったら、どうしても子供を授かって欲しい。子供を授かってもらわないと、私達の気持ちは違っても、ただの浮気と同じになってしまう。私も眠りたいのを我慢して頑張るのだから、智子も発情期に入れるように、何もかも忘れてより感じる様に努力して欲しい。」
稲垣は単に、関係がずるずると長引いて私や奥さんにばれるのを恐れ、この機会に出来るだけ妻の身体を楽しもうと思っただけなのでしょうが、やはり妻には稲垣の真意が見抜けずに、また感謝の言葉を言いながら、稲垣に肩を抱かれて車に乗り込みました。
稲垣の運転する車は、マンションには向かわずに逆の方向に走って行きます。
「何処に行くのですか?」
「ああ、ラブホテルに行こうと思っている。私はその様な所に行った事が無いので、恥ずかしくて気が進まないのだが、その様な所の方が現実から離れる事が出来て良いかも知れない。正直に言うと、口でして貰っていた時も智子では無くて、必死に妻だと思う様にしていた。その後も顔が見えない様に後ろからしていたので、これは智子ではなくて妻だと自分に何度も言い聞かせ、どうにか最後まで維持する事が出来たが、そうそう上手くいかない気がする。相手が智子だと意識すると罪悪感も有るし、それ以上に大切な人を壊してしまう様な気がして、智子には治療だと思えと偉そうな事を言っていたのに、私には無理な様な気がする。どう考えても智子とラブホテルはイメージが結び付かないから、そこなら智子を違った女性だと思う事が出来るかも知れな
い。」
「そんなにまでして私の為に。」
行為を始める前から硬くしていたくせに、この様な事をよく平気で言えるものだと思いましたが、それが妻には分かりません。
それに、奥さんに知られるのが嫌で、洗い流せば痕跡が残らないバスルーム以外での行為を避け、最初から、本格的な行為はラブホテルに行ってしようと計画していたと思うのですが、妻は疑いもせずにまた感謝の言葉を言っています。
ラブホテルには行った事が無いと言っておきながら、妻を乗せた車は道に迷う事無く、細い裏道を抜けて、知人に会う可能性の無い、ワンルームワンガレージのラブホテルに入って行きました。
  1. 2014/10/09(木) 00:49:22|
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インプリンティング 第33回

部屋に入ると稲垣は椅子に座って、妻をベッドの上に立たせ。
「そこで私を誘う様に、いやらしく1枚ずつ脱いでいってくれないか?」
「そんな事出来ません。恥ずかしいです。稲垣さんが脱がせて下さい。」
「私だって、智子にその様な真似はさせたくは無いさ。でも、車の中で言ったように、今は君を智子だとは思いたくない。智子だと意識すれば、私の物は役に立てないかも知れない。だから街で拾った娼婦だと思いたい。」
ただ妻に嫌らしい行為をさせたいだけで、既に硬くしている事も知らずに、言われた通り別人に成り切れば、稲垣の罪悪感を少しでも和らげる事が出切るかも知れないと思った妻は、舞台に上がったストリッパーの様に、一段高いベッドの上で、ゆっくりと1枚ずつ脱いでいきます。
しかし、上と下の恥ずかしい部分を隠す布を身に着けただけの姿になった時、ここまでは頑張れた妻も、自分だけきちんと服を着ている稲垣にじっと見られていては、自分だけが全てを晒す事は恥ずかしくて耐えられず、手が止まってしまいました。
妻の気持ちを察した稲垣は、立ち上がると服を脱ぎだしたので、妻も上だけはなんとか外したのですが、やはり最後の1枚は脱げません。
稲垣を見ると、全裸になってまた椅子に座っていたそうですが、中心で硬くそそり立った物が目に入り、顔を背けてしまうと。
「横を向かないでよく見ろ。今は智子ではなくて娼婦だ。智子が成り切ってくれないと私も駄目に成る。娼婦はこれを見たぐらいでは恥ずかしがらない。これから目を離さずに、私に全て見える様に、パンティーを脱いで大きく足を開いて欲しい。」
妻は稲垣の硬い物をじっと見詰めながら、ゆっくりとパンティーを脱ぎ、手で隠してはいましたが、徐々に足を開いていきました。
「手を退けろ。よし、今度は立膝になって、自分でそこを開いて中をよく見せてくれ。」
こんな普通では考えられない行為でも、自分の為に無理をして付き合ってくれていると思うと、従ってしまったと妻は言いましたが、私はそうでは無い様な気がします。
ラブホテルという異質な空間で、普段では有り得ないような行為を要求されている内に、妻は淫靡な世界に迷い込み、自分とは全く違った人間、それこそ娼婦になっていたのかも知れません。
稲垣の硬くそそり立った物を、じっと見詰めさせられている内に、頭の中はその事だけでいっぱいに成っていたのかも知れません。
どうしてこの様な事をしているかなどと言う、最初の目的など忘れてしまい。
「両手ではなく、片手で開けないか?出来るじゃないか。それなら開いたまま、空いた手を後ろに着いて、お尻を持ち上げて前に突き出せ。そうだ、よく見えるぞ。中まで丸見えだ。」
稲垣は椅子から立ち上がると妻に近付き、中を覗き込むようにして見ていましたが、妻がベッドに背中から崩れ落ちると自分もベッドに上がり、妻の身体の裏も表も足の指さえまでも全身に舌を這わせ、最後は妻が一番感じる小さな突起を集中して責めた為に、妻は稲垣の挿入を待たずに一人気を遣ってしまいました。
しかし稲垣は妻に休む事を許さず、すぐに妻の上に乗って来て繋がると、ゆっくりと動きながら、妻の顔をじっと見て、感じて行く時の表情を楽しんでいたのですが、達したばかりで身体が敏感になっていた妻は、そのゆっくりとした動きだけで、また気を遣ってしまったそうです。
「少し休ませて下さい。お願いします。」
「ああ、智子は休んでいていい。私が勝手に動くから。」
「それでは休めません。動かれていては・・・・・・いや・・・いや・・・・また駄目になる。
また・・また・・止めて、駄目になってしまう・・・また・・・・いや~~。」
その後も稲垣の責めは続き、妻は面白いほど気を遣り続けて、最後には放心状態になってしまい、ようやく稲垣も放出して終りました。
「この時もコンドームは着けずにしていたのか?」
「いいえ、ホテルでは着けてくれていた様です。」
「話がおかしいだろ。」
「私も帰る車の中でその事を聞いたのですが、効果が少なくなるだけで全く無い訳では無いから、付けた方が直接触れ合わない分、罪悪感が少なかったと言われました。私の中に出してしまうのは、私を汚してしまう様で、やはり嫌だったと。」
他の男の精子を身体で感じろと言っておきながら、今度は避妊具を装着しても、妻にはその矛盾が分からないのです。
ただ妊娠を心配していただけだと、誰にでも分かる事を、この様な説明で納得してしまうのです。
妻はそれほど、全面的に稲垣を信用し切っていたようです。
冷静な者が聞けば、稲垣の言っている事は最初から矛盾だらけなのに。
  1. 2014/10/09(木) 00:50:40|
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インプリンティング 第34回

私は、娘がどの様にして出来たのか知りたいから、セックスの様子を教えてくれと言い、ここまで聞き出しました。
これで娘がバスルームでの行為によって出来たと分かった訳ですから、本当ならこの先は聞かなくても良い事になります。
しかし、私の知りたい欲求は収まる事はなく、私の知らない妻が存在する事を許せません。
「朝までと言う事は、それでも終らなかったのだな?」
幸い妻は、私が何を知りたかったか等という事は忘れてしまっている様子で。
「・・・・・はい。」
何度も達してしまい、意識が朦朧としていた妻が息苦しさを感じると、裸の稲垣が上に乗って乳首に吸い付いていたので。
「もう出来ません。もう身体が動きません。」
「いいのか?智子はそれでいいのか?赤ちゃんが少しでも出来易くする為なのに、ここで止めてしまってもいいのか?」
そう言われた妻は気力を振り絞り、稲垣の欲望を身体で受け止め続けたのですが、夜が明ける頃には、流石に精も根も尽き果ててしまい、稲垣によって大きく開かされた足を閉じようともせずに、恥ずかしい部分を隠す事も無く、ぐったりと大の字になっていました。
しかし稲垣はそれでも許さず、開かれた足の間に座って、襞を摘んで大きく開いて覗き込んだり、指を入れて中の感触を楽しんだり、包皮を剥いて完全に露出させたクリを虐めたりして妻の身体を弄んでいましたが、妻の身体はたまに小さく反応するだけで声を出す事も無く、ぐったりとしていたので。
「よし、次で最後にしておこう。」
そう言うと妻の中に入って延々と一方的に動き続け、虚ろな目で天井を見詰め、微かに反応するだけの妻を見ながら放出し、長かった一夜はようやく終りました。
妻の話を聞き終わり、少し冷静になった時に思ったのが、やはりこの話は本当なのかと言う事でした。
妻の話し方からは真実を話している様に感じ、話にのめり込んで聞いていましたが、いくら普通では無い精神状態だったとは言え、この様な嘘に意とも簡単に、本当に妻は騙されたのかと言う事です。
元々稲垣の騙す様な行為など無かった場合、私と言い争いになり、ただ自棄に成っていて抱かれたのでは無いのか?
稲垣の事が好きで抱かれたかっただけでは無いのか?
ただ稲垣とセックスがしたかっただけではないのか?
もっと悪く考えれば、最初から稲垣の子供が欲しくて関係を持ったのではないのかとも思えて来ます。
次に稲垣の騙す様な行為が有った場合ですが、本当に私の子供が欲しくて、こんな事を信じだのか?
自分への言い訳に、最初から嘘だと知りながら抱かれたのでは無いのか?
最初は信じていたとしても、途中からは嘘だと気付きながら快感に負け、欲望に流されたのでは無いのか?
しかしこの様な嘘に騙された事が本当だとすると、稲垣は妻にとって想像以上に大きな存在だという事になります。
宗教的なものには結構多く有り、教祖に騙されて身体を奪われた女性も少なく無いと聞きます。
私が聞いたもっと悲惨な例では、医者にかかる事は良く無いと言われ、病気の子供を医者に診せずに死なせてしまったと言う事が有りました。
しかし、もっと悪いのは、その後も騙された事に気が付かない事です。
教祖に抱いて頂いたから、私は特別な人間に成ったとか、医者にかかっていたら、もっと痛みを伴って死んでいたと聞かされ、子供を亡くしていても尚、その事を信じている事です。
稲垣に今でも特別な感情を持っていると思われる妻も、それに近いものが有るのではないかと思えるのです。
この話が本当だとすると稲垣の体力、精力は、私には信じられないものでした。
いくら9年前で今よりは若かったと言っても40歳は過ぎています。
おそらく稲垣は以前からずっと、妻を抱きたい、征服したいと思っていて、やっと願いが叶った為に出来た所業ではないかと思います。
あの可愛い娘が実の子供ではないだけでも、死にたいほどのショックなのですが、この様に妻を騙して出来た子供かと思うと、尚更娘が不憫でなりません。
それ以上に、妻がその様には思っていない事が悔しくて仕方が無いのです。
  1. 2014/10/09(木) 00:57:33|
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インプリンティング 第35回

妻の話を聞いて、悔しさで泣きたくなっていた時、急にドアがノックされたので、稲垣夫婦が来
ていた事をすっかり忘れてしまっていた私は、一瞬ドキッとしました。
ドアを開けると奥さんがいて、その後ろには稲垣が隠れる様に立っています。
奥さんは何か言っているのか口が動いているのですが、私の耳には何も聞こえません。
私は奥さんを押し退けて、稲垣の前まで行くと思い切り殴りつけ、よろけて尻餅をついた稲垣に、
馬乗りになって殴ろうとした時、横から奥さんが稲垣の上半身に覆い被さって庇いました。
仕方なく私は稲垣から降りましたが、この時の私は鬼の様な形相をしていたと思います。
「今日はもう帰ってくれ。」
娘の事を言おうかとも思いましたが、稲垣を庇う奥さんを見ていて、何れは分かる事でも、今奥
さんをこれ以上悲しませる事は出来ないと思ってしまい、何も言わずに逃げる様にキッチンに行
きました。
静まり返った中、車のエンジン音だけが聞こえます。
やがてその音も遠退き、私はどうしてセックスの事まで、詳しく知りたいのか考えていました。
それを聞いても当然興奮などは有りません。
それどころか、聞けば聞くほど怒りを覚え、悔しさが大きくなって行きます。
それなのに全てを知りたい。
私の知らない妻が存在する事を許せない。
ほぼ離婚する事になると思っていても、知りたい欲望は消えない。
離婚するのなら、ただの『酷い女』で良い筈です。
私を裏切った『酷い女』だから別れる、それだけで良い筈です。
本当は離婚をまだ、ためらっているのかも知れません。
知りたいと言う事は、まだ妻に対しての未練が残っているのでしょう。
いいえ、未練以上に、私はもっと小さな男で、私と別れた妻が稲垣と再婚し、娘と親子3人幸せに暮らすのが、許せない感情の方が強いのかも知れません。
正直なところ、自分でも自分の気持ちがよく分からない状態です。
しばらくその様な事ばかり考えていましたが、これ自体私の逃げで、極力娘の事を考えたく無かったのです。
娘の事から逃げたかったのです。
しかし私のその様な思いとは裏腹に、考えなければ成らない時はすぐにやって来てしまいました。
暫らくして入って来た妻の手には、大きなバッグが握られています。
「あなた、ごめんなさい。私はあなたの人生を無茶苦茶にしてしまいました。私自身の幸せも、自分で壊してしまいました。今迄ありがとうございました。本当にごめんなさい。」
「理香は連れて行くなよ。理香は俺の娘だ。誰の子であろうと理香は俺の娘だ。俺から全てを奪って行く事は許さん。行くなら一人で出て行け。」
言ってしまってから、何故この様な事を言ったのか考えました。
娘を、自分の子供として育てていけるのか?
憎い稲垣と妻との子供に、今迄通り愛情を注げるのか?
妻への嫌がらせに、娘を取り上げようとしているだけでは無いのか?
しかし、何も考えずに口から出た言葉が、私の本心だと知りました。
  1. 2014/10/09(木) 00:59:59|
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インプリンティング 第36回

離婚するにしてもしないにしても、このまま別れたのでは後で必ず後悔すると思っていても、私から離婚だと言い、出て行けと言っていた手前、出て行くなとは言えません。
妻の本当の気持ちは知りたいくせに、この様な大事な局面でも自分の本心は出せないのです。
出て行かないでくれなどと言って、少しでも自分が不利になる様な事は出来ないのです。
この件についての、絶対的有利を崩したくないのです。
このまま別れてしまえば、残るのは金銭的な問題の有利不利だけで、妻をもう責める事も出来ずに、夫婦としての有利不利など無くなってしまうのに。
取り上げていた妻の携帯を渡し、口から出たのは思いとは逆の言葉でした。
「もう会う事も無いと思うから、今後の事は電話で話し合おう。」
妻は暫らく、渡された携帯を見詰めていましたが。
「理香は連れて行かせて下さい。理香と離れる事なんて出来ません。お願いします。」
これを聞いて、少しだけですが気が楽になりました。
何故なら、娘を渡さない限り妻との縁は切れないからです。
実の娘では無いにしても、今まで愛情を注いで来た可愛い娘まで、妻との駆け引きに使おうとしている自分が情けなくなります。
「本当の父親でも無いお前なんかに権利は無いと言いたいのか?奴との愛の結晶を奪うのかと言いたいのだろ?俺とは別れたいが、好きな稲垣との子供とは別れられないか。」
「違います。私はあなたとも・・・・・・・・・・。ごめんなさい、もう何を言っても信じては頂けないですね。」
妻が玄関に行くまでずっと、どの様に引き止めようか考えていたのですが、良い言葉が見つかりません。
妻はこのまま、稲垣のものになってしまうのかと思うと、悔しくて堪りません。
「おまえが行ける場所は稲垣の所しか無いはずだが、今は奥さんが来ているぞ。これから2人で奥さんを追い出すのか?」
「彼の所には二度と行きません。」
「それなら何処に行く?もう嘘はつかなくてもいい。別れるのにこれ以上、俺に嘘をついたところで同じだろ。」
「何処に行けば良いのか分かりません。私が行ける場所はどこにも無いです。駅に行って、始発を待ちながら考えます。あなたや典子さんへの慰謝料の事も有るから、何処か住み込みで働ける所でも探してみます。」
「それが本当なら、行き先も分からずに、理香を連れて行くつもりだったのか?やはり理香を連れて、稲垣の所に行くつもりだったのだろ?」
「違います。本当に彼の所には行きません。」
妻はそう言い、暫らく考えてから。
「そうですね。理香を連れて行きたいと言ったけれど冷静に考えれば、落ち着く先が決まってもいないのに、理香を引き取る事も出来ない。勝手なお願いですが、それまで理香の事をお願いします。」
「それまでも何も、理香は絶対に渡さん。お前は今迄、俺の子供では無いと分かっていながら俺の母親に預けて、あいつに抱いてもらいに行っていたのだぞ。理香の不憫さが分からないのか?」
妻が泣きながら出て行ってしまい、私の心に大きな穴が開いてしまいました。
正確に言うと娘の事が有るので、大きな穴が2つも開いてしまった状態です。
暫らくの間ぼんやりと考えていたのですが、考えれば考えるほど私の怒りは稲垣に向かい、稲垣の携帯に電話をしたのですが、出たのは奥さんでした。
「折角来て頂いたのに、帰れと言ってしまい申し訳無かったです。アパートに着いたらご主人だけ、またこちらに来てもらって下さい。」
「私もお邪魔しても良いですか?車に乗ってから主人が重大な事を告白したので、車を止めて話していて、実はまだ近くにいるのです。その事をご主人と智子さんに聞いて頂きたいのです。」
私には、奥さんの言う重大な事が娘の事だと分かっていたので、別に今更聞きたい話でも無く、奥さんがいては怒りをぶつけ難いので、本当は稲垣だけに来て欲しかったのですが。
「ええ、構いません。ただ智子は出て行ったのでいませんが。」
「えっ、何処に?」
「分かりません。駅で始発を待つと言っていたので、今頃まだ駅に向かって歩いているのか、駅に着いていたとしても始発までには、まだ何時間も有りますから、駅のベンチにでも座っているのではないかと思います。」
私が詳しい話をしたのには、奥さんの優しさに縋り、妻を連れ帰って欲しいという期待が有ったのかも知れません。
  1. 2014/10/09(木) 01:01:05|
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インプリンティング 第37回

私は気が落ち着かず、檻の中の熊の様に家の中を歩き回って待ちましたが、近くにいると言っていたはずが30分経っても来ません。
きっと妻を説得してくれているのだと期待しながら待つと、それから1時間ほど経った頃に、家の前で車の止まる音がしました。
私は余裕が有る様な振りをしたくて、慌てて居間に行くと煙草に火をつけましたが、一向に誰も入って来ません。
暫らくして奥さんの、私を呼ぶ声が聞こえたので玄関まで行くと、妻が稲垣と奥さんに支えられて立っています。
妻は遠くを見ている様な虚ろな目をしていて、私の方を見るでも無く、全体に正気が感じられません。
例え支えてくれているとしても、稲垣が妻に触れている事が気に入らず、妻を支えてから稲垣を突き飛ばし、奥さんに手伝ってもらって寝室のベッドに寝かせ。
「何が有ったのですか?」
「智子さんの前では何ですから、他の部屋で。」
妻の様子が心配で離れたくは無かったのですが、一時的なショックを受けただけなので、大丈夫だろうと奥さんに言われ、妻を残して3人で座敷に行きました。
「ショックを受けた?」
「はい。あの後、ご主人の姿が見えなくなると、この人は慌てて逃げる様に車まで走って行きました。遅れて車まで行った私が乗ろうとすると全てロックがして有り、私だと分かると開けてくれたのですが、走り出せば自動でロックされるのに、わざわざロックをしてからエンジンをかけ、様子がおかしいのでよく見ると、手足が微かに震えていて。」
おそらく稲垣は、私が怒った顔でキッチンへ行ったので、また包丁を取りに行ったと思ったのでしょう。
「余りに様子がおかしいので、どうしてご主人があの様に激しく怒り出したのか聞いたら、とんでもない事をしていた事を白状しました。それも身の危険を感じて、私の様な者に助けてもらおうと、震えながら話して来ました。殺されても文句も言えない様な事をしておきながら、もしかしたら殺されるかも知れないと言って、女の私に助けてもらおうと縋って来ました。私の100年の恋も一度に覚めました。この人は最低な男です。学生時代は勉強も出来て、今は仕事も優秀かも知れないけど、人間的には最低な人間です。私は今まで、こんな男に気に入られようと努力していたかと思うと悔しいです。こんな男に捨てられないように努力していたのかと思うとやり切れません。こんな男、私の方から捨ててやる。」
奥さんはその話になると興奮していて、妻があの様な常態になった事の説明をしてくれずに、一気に捲くし立てると、畳に伏せて泣いてしまいました。
「典子。」
稲垣が弱々しい声で奥さんを呼ぶと、奥さんは顔を上げて。
「私の事を呼び捨てにしないで。もうあなたの妻をやめます。もっと早く気付けば良かった。そうすれば私の人生も変わっていた。」
私は最初、奥さんが稲垣の事を最低の男だと言っているのは、妻との間に子供を作った事だと思いましたが、その事は妻も知っている事で、その事を奥さんに詰られたくらいでは、泣き叫んで取り乱すことは有っても、あの様な状態にはならないと思い、奥さんに質問しようとしましたが、奥さんの話は続き。
「あなたは最低な男です。妻としては勿論ですが、女としても絶対に許さない。智子さんに同情はしたく無いし許す気も無いけれど、あなたのした事は余りにも酷すぎる。同じ女性として、あなたが智子さんにした事を絶対に許さない。」
奥さんの、妻を庇うかのような言葉に困惑していると。
「この人は智子さんを騙していたのです。それも、智子さんの一番弱いところを利用する様な、もっとも下劣な騙し方で。」
「それはどの様な事ですか?奥さんもお聞きになったかと思いますが、騙して妻を妊娠させ、娘がこの男の子供で有る事を言っておられるのですか?お願いですから教えて下さい。娘が私の子供では無いと分かった今、もう何を聞かされても怖くは無いです。」
「私からはとても言えません。話すだけでも気分が悪くなる。」
そう言ってから稲垣を睨みつけて。
「あなたが言いなさい。助けを求めて私に話し、その後智子さんに話したのと同じ事を、もう一度ご主人にも話して謝りなさい。きっとそれ以外にも有るのでしょ?もう何もかも全て正直に話したら?この期に及んでまだ隠そうとするのなら、私は皆に全て話して、あなたが何処にも顔を出せない様にしてやる。銀行やあなたの友達、子供達にもあなたがどの様な人間なのか教えてやる。あなたがもっとも知られたくない、大事な大事なお母様にも全て聞かせて、どんな育て方をしたのだと言ってやる。もう離婚を覚悟したから、私は何も怖く無い。早くご主人に全て話して謝ったら?早くしなさいよ。」
奥さんは涙を流してはいても怒りは物凄く、稲垣を死ぬほど殴りたいと思って呼び付けた私は、奥さんの気迫に押されて、殴るどころか罵倒する事さえ出来ずにいました。
  1. 2014/10/09(木) 01:02:12|
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インプリンティング 第38回

私が急に殴ったのは、娘の事を妻から聞いたからだと感じた稲垣は、私の怒りの深さに脅え、穏便に済む様に、奥さんに私を説得してもらおうと全てを告白したのでしょう。
私を恐れて、私から1番離れた部屋の隅に正座していた稲垣は、奥さんの言葉で、私の顔色を伺うかの様にゆっくりと近付いてくると、少し離れたところで土下座して。
「ご主人、申し訳有りませんでした。私はずっと奥様を騙していました。若い頃から奥様が私に特別な感情を持っていると気付いていたので、それを利用してしまいました。」
「そんな事は、妻の話を聞いて知っている。それよりも、娘の事はどうするつもりだ?今更おまえの子供だと言われても、俺は納得出来ない。いや、絶対に納得しない。娘は俺の子供だ。」
「その通りです。ご主人のお子さんです。私の子供では有りません。」
「ああ、だからと言ってこの責任は重いぞ。娘は俺の子供と思って育てる。だが、おまえは絶対に許さない。命を弄びやがって。例えおまえが死んでも俺は絶対に許さない。」
「違うのです。本当にご主人のお子さんなのです。私の子供では有り得ないのです。」
私は稲垣お得意の逃げだと思い。
「どうせ妻といる時は、お互い不倫の事は気付かれない様に離婚して、本当の親子3人で再出発しようと話し合っていたのだろ?それがばれて、自分達の思い通りには離婚出来なくなったら、
今度は自分の子供では無いと言って責任逃れか?」
その時奥さんが。
「違うのです。本当にご主人のお子さんなのです。この人の話だと、確か娘さんはO型ですよね?
智子さんにはO型だと言って騙していたらしいのですが、この人はAB型です。」
一瞬、訳が分かりませんでしたが次の瞬間、声を出して泣きたいほどの喜びが湧いて来ました。
しかし、手放しで喜ぶ訳には行きません。
何故なら散々嘘をつかれていて、何が本当で何が嘘なのか分からない状態だったからです。
癌だと言われて入院し、再検査の結果、良性のポリープだったと言われ、死を覚悟していただけに、泣きたいほど嬉しいはずが、もしかすると隠さなければ成らないほど、末期の癌かも知れないと、疑っているのと同じ様な状態です。
「本当にAB型で間違い無いですか?」
「はい。」
「おまえには聞いていない。おまえの言う事は信用出来ない。」
すると奥さんが。
「AB型で間違いないです。お疑いになられるのも当然です。自宅にこの人の献血手帳が有ると思いますので、コピーをとって後日お送り致します。私を信じて下さい。」
この時、妻と稲垣の事など、もうどうでも良いと思えるほど嬉しかったのを覚えています。
そかし稲垣の前では喜ぶ事も、ましてや嬉し泣きなど出来るはずも無く、怒った顔をしながら、心の中では娘が我が子だった事の喜びを噛み締めていました。
しかし時間が経過すると、娘が私の実の子だったと言う事だけで、もう充分だと思えていた気持ちは次に移り、妻があの様な状態になったのは、それを聞いてショックを受けたのだとすると、私の子供だった事を喜ばずに、稲垣の子供で無かった事がショックであの様に成ったと思え、また私に怒りが戻って来ました。
「全て聞かせてもらおうか?」
「・・・・はい。」
そう言ったきり何も話さない稲垣に対して、妻に対する怒りまでもが向かい、髪の毛を掴んで立たせると、また殴ってしまいました。
  1. 2014/10/09(木) 01:03:26|
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インプリンティング 第39回

殴られて座り込んでしまった稲垣を、今度は蹴ってやろうと足を振り上げたのですが、その瞬間稲垣はそっと目を瞑り。
「何でも話します。全てお話します。」
そう言われたので、何故か私は振り上げた足を下ろしてしまい、そのままではばつが悪く、稲垣を足で突き倒すと胡坐を掻いて座ました。
「おまえは智子の事をどう思っている?好きなのか?若い頃からずっと好きだったのか?」
何故か私はこの様な事を聞いてしまいましたが、こんな事は真っ先に聞かなくても良い事でした。
妻の気持ちは知りたくても稲垣の気持ちなど、後で聞けば良い事でした。
しかし、聞いてしまった手前話を続け。
「婚約中にも関わらず、妻には特別優しくしたそうだが、その頃から好きだったのか?」
「いいえ、好きだとか言う気持ちでは無かったです。勿論可愛いと思い、凄く興味は有りましたが、特別好きとか言う気持ちは無かったです。」
「それならどうして妻に特別優しくした?どうして近付いた?」
「それは・・・・・・・・・・。」
稲垣が顔色を伺うかの様に奥さんを見ると。
「私も聞きたい。もう正直に何もかも話して。」
「それは・・・・・智子さんの胸が・・・・気に成って・・・・・・。」
稲垣は妻が同じ支店に配属されて以来、妻の豊満な胸が気になって仕方がなかったそうです。
そうかと言ってじろじろ見る訳にもいかず、周りに気付かれない様に時々横目で見ては、頭の中で想像を膨らませていたそうですが、ある時伝票を渡しに行くと、妻は机に向かって前屈みで仕事をしていた為に、ブラウスの胸元から胸の膨らみが少しだけ見えました。
その事で味を占めた稲垣は、何かと用を作っては妻の所に行く様になり、仕事で困っている様子が有った時などは、真っ先に行って教えながら胸元を覗き、見えない時でも直近で膨らみを見て楽しんでいた様です。
しかし周囲の目も有り、妻にばかり仕事を頼む訳にもいかず、自分ばかりが教えに行くのも不審に思われると思い、妻が自分に恋愛感情を抱いているのではないかと感じ出した頃からは、勤務時間中は無関心を装い、仕事が終ってから喫茶店などで待ち合わせ、妻の悩みを聞きながら服に包まれた妻の胸や身体を間近で見ては、想像を膨らませる様になりました。
これほど露骨には出来なくても、同じ男である私には、ここまでの気持ちは分からない訳では有りません。
私も女子社員がタイトスカートなどを穿いて来た時などは、お尻の丸みが気に成る事も有りますし、通勤時なども、夏場女性が薄着になるのは嬉しいものです。
「その頃から妻を抱きたかったのか?」
「抱きたいと言うよりは、いつも想像していた裸を見たかったです。いいえ正直に言います。出来ればそうしたかったです。私の事を好きになっていると感じていた時は、ホテルに今日は誘おう、明日は誘おうと思っていましたが、婚約していた事も有って、思うだけで結局そこまでの勇気は出ませんでした。その内これは恋愛感情を抱いているのでは無く、兄か父親の様に思っているのかも知れないと感じ、そう思うとトラブルが嫌で、余計に誘う事も出来なくなりました。」
その時奥さんが。
「智子さんを抱きたかったと言う事は、その時点で私よりも智子さんを愛していたと言う事でしょ?正直に、好きだったと言ったら。どうして私と結婚したの?その時どうして私を振ってくれなかったの?」
この時の稲垣の気持ちは分かりませんが、奥さんのこの話は少し違うと感じました。
私は男なので女性の気持ちは分かりませんが、男は好きな人がいても他の女性と出来てしまうのです。
男は出来てしまうと言い切ると、そうでない方に悪いのですが、私には出来てしまいました。
妻と付き合う前にも、何人かの女性とお付き合いした事は有りましたが、その時々相手を真剣に愛していて、身体の関係も有りながら、友達とソープに行ったりした事も有ります。
お尻を振りながら前を歩く女性を見ていて、抱いてみたいと思った事も有ります。
結婚してから妻を裏切った事は有りませんが、正直その様な気持ちが無い訳では有りません。
  1. 2014/10/09(木) 01:05:02|
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インプリンティング 第40回

奥さんは、私がいるのも忘れているかの様に、自分が疑問に思っていた事を稲垣に問い詰めだし。
「どうして好きでも無い私と付き合ったの?どうしてお母様にあれだけ反対されても、好きでも無い私なんかと結婚したの?」
「いや、付き合っていて愛していると分かったからプロポーズした。これは本当だ。」
「それなら逆を言えば、それまでは、好きでも無いのに交際を申し込み、好きでも無かったのに付き合ってくれていたという事?」
「その頃はお袋に逆らいたかっただけかも知れない。でも結婚したのは愛したからだ。典子だけを愛していたからだ。これは本当だ。」
「それなら今はどちらが好きなの?智子さんなの?私と子供まで捨てて、一緒になろうとしていたのだから、智子さんの方が好きになったのね?私の事は嫌いになったのでしょ?」
「嫌いじゃない。智子さんを好きになってしまったと思い込んでいたが、本当は典子の方が好きだったと気付いた。典子から逃げようとしていただけで、本当は典子や子供達と一緒にいたいのだと、最初ここにお邪魔した時の、典子の話を聞いていてはっきりと分かった。」
「私から逃げる?」
2人の会話を聞いていて分かった事は、稲垣は幼い頃から2人の姉と比べられながら、勉強から生活態度まで母親に厳しく育てられた様です。
優秀な姉と比べられながらも母親に褒められたくて、母親の望む通りの学校へ行き、父親も銀行マンだった為に銀行に就職しろと言われて、母親が選んだ銀行に就職し、後は母親が決めてくれる相手と結婚するだけのはずでした。
しかし、一流大学を出ていて趣味はピアノ、お茶やお花の師範の免状も持っている娘とお見合いをしろと言われた時に、ようやく自分の人生がこれで良いのか考える様になり、母親に初めて逆らって、母親の理想とは逆の、大学を出ていない習い事もした事のない奥さんと付き合ったそうです。
「口喧しいお袋や姉達に逆らいたくて、典子と付き合ったのかも知れない。お袋に決められた人生が嫌だという理由だけで、典子と付き合ったのかも知れない。お袋が理想としている女性以外なら、誰でも良かったのかも知れない。しかし、付き合っていて好きになったから結婚したのは本当だ。私はそれまで、女は皆お袋や姉の様な生き物だと思っていた。お見合い写真を見て、この女と結婚をしてもあの様な生き物が、身の回りにもう一人増えるだけだと思った。しかし典子と付き合ってみるとお袋達とは違っていた。最初は私と結婚出来る様に、優しい振りをしているのでは無いかと疑っていたが、違うと分かったから結婚したいと思った。実際結婚してからも典子は優しく、私に逆らう事も無く、常に私を立ててくれて、典子といると私は男なのだと実感出来た。」
「私だけでは無いでしょ?智子さんにも同じ様な思いを感じていた。違う?」
「そうかも知れない。でも愛していたのは典子だった。しかし・・・・・・。」
結婚当初、何でも稲垣の言う通りにしていた奥さんも時が経つにつれ、当然の事ながら全て稲垣の思う様には出来ずに、意見が食い違う事も出て来ました。
特に子供が生まれてからは、奥さんが稲垣に色々頼む事も増えたのですが、私にはそれが普通だと思えても、幼い頃からのトラウマが有り、常に女性よりも優位な位置にいたいと思っていた稲垣には、奥さんに命令されている様に聞こえたと言います。
最初は奥さんに謝る様な雰囲気だった稲垣も、次第に奥さんへの不満を訴え出し。
「セックスもそうだ。最初の頃は私がしたい時に応えてくれていた。しかし、子育てに疲れているとか何かと理由をつけて、徐々に典子主導になっていった。私はしたくなると、典子の顔色を伺っては、お願いする立場になってしまった。だから・・・・・。」
「だから何?だから智子さんを騙して浮気したと言いたいの?9年前の浮気は、私のせいだと言いたいの?私は精一杯あなたに応えていたつもりです。よく思い出して下さい。風邪気味で熱っぽい時や、子供が熱を出して前日ほとんど眠っていない時なんかに言われても、それは無理です。それなら、今回の事は何と言い訳するつもりですか?」
「典子はずっと私を疑っていた。私の帰りが遅かったり、出張が有ると必ず事細かに行動を聞いてきた。疑っていた訳が、脱衣所で拾った智子さんのイヤリングの一部だと今回分かったが、私は全て監視されているようで息苦しかった。結婚するまではお袋や姉で、今度は典子かと思った。」
「でも、結局は疑われる様な事をしていたのでしょ?あなたが何もしていなければ、この様な事にはならなかった。私に責任転嫁しないで。」
奥さんが母親の様になってきたと感じた稲垣は、何でも言う事を聞く妻に惹かれ、妻に乗り換えようと思ったのでしょう。
  1. 2014/10/09(木) 01:06:17|
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インプリンティング 第41回

稲垣と奥さんの話を聞いていた私は複雑な心境でした。
妻を愛していたのではなくて奥さんを愛していると言うのは、全て失うのが嫌で、奥さんの手前言っている事だとしても、未だに妻を愛していると言われるよりは、今後の対処がし易いと思え、私には喜ばしい事なのですが、裏を返せば、妻を真剣に愛してもいずに、私の大事な家庭を壊した事になり、それは今迄以上に許せない事でした。
稲垣の話が本当なら、この様な歪んだ理由で家庭を壊されたのかと思うと、強い怒りを覚えます。
「そんな話は帰ってから2人でしてくれ。それよりも、今回の事を聞かせろ。どうやって妻と付き合う様になった?」
稲垣は転勤が決まる前まで、行き付けのスナックに手伝いに来ていた、バツイチの女に入れ揚げていました。
お金の為に機嫌を取っていると分かっていても、その事が心地良かったと言います。
しかし奥さんは、女の影を感じてから相手は妻でないかと疑い、稲垣を問い詰める様な会話が増えていき、稲垣にはその事が煩わしく、転勤を期に単身赴任を強く望んだ事で、奥さんもそれまでの自分の態度を反省して、これを許したそうです。
いざ赴任するとそこには偶然にも妻がいて、稲垣は勝手に運命のような物を感じ、奥さんが浮気をして離婚に成りそうだと嘘をつき、同情を惹いて近付いた様です。
妻は、以前凄く世話に成ったので少しでも恩返しがしたいと言い、外で会っていて要らぬ噂を立てられては、妻に迷惑を掛けてしまうからと言う稲垣の提案に乗り、アパートへ行く様になりました。
最初は稲垣の悩みを聞くだけだったのですが、次第に先に帰る妻が食事の用意をして稲垣の帰りを待ち、一緒に食事をする事も増え、休日には掃除や洗濯にも行く様になりました
「まるで通い妻じゃないか。智子がアパートに行く様になってから、すぐに抱いたのか?」
「いいえ、身の回りの世話をしてくれていただけでした。」
「以前に関係を持った事の有る男と女が、狭い部屋に2人だけでいて、何も無かったと言うのか?正直に話せ。」
「すみません。アパートに来る様に成って一ケ月ほど経った頃から、キスの様な事は・・・・・
有りました。私の執拗な要求に負けたのか、渋々ですが応じてくれました。でも、身体の関係だけは、ご主人を愛していて娘さんにも顔向け出来ないので、いくら私の頼みでも聞けないと言って強く拒まれました。」
いくら特別な感情をもっていて、以前世話に成ったと勘違いしていたとしても、私が日本を離れてから2ヶ月ほどで、簡単にキスを許したのは許せません。
身体は許しても唇は許さないと聞いた事が有りますが、妻の場合それとは逆で、結婚している事が足枷に成っていて身体を許さなかっただけで、心は完全に許していたように感じてしまうのです。
私はこの運命の悪戯を怨みました。
私の単身赴任が無かったら、この様な事には成らなかったかも知れません。
多少稲垣との接触はあっても、毎日私の顔を見ていたら、罪悪感からこれ以上は進まなかったかも知れません。
何より、稲垣と同じ職場にならなければ、稲垣との接触も無かったでしょう。
「それなら、どの様に関係をもつ様になった?」
「それは・・・・・・・・・・・・。」
「はっきりと言いなさいよ。私や智子さんに話した事をご主人にも話なさい。もう、殴られても殺されても仕方が無いでしょ?全てあなたがしてきた事なのだから。少しぐらいは男らしく、もう腹を括ったら?」
稲垣は妻と会う度に、以前関係を持った時に見た身体が脳裏に浮かび、服は着ていても裸に見えたと言います。
稲垣自身も歳をとったせいか、腰の回りに肉が付き、以前よりも肉付きのよくなった妻のウエストを見て、乳房も以前より垂れた崩れかけた身体を想像すると、若い娘の身体よりも遥かに興奮を覚えたそうです。
抱きたいと言って断られたものの、その後も通って来てくれる妻を見ていて、何か方法が有るはずだと考え、思い付いたのが子供の事でした。
  1. 2014/10/09(木) 01:08:49|
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インプリンティング 第42回

妻も私と同じ様に、血液型からだけではなくて稲垣の話す状況からも、娘は稲垣の子供だと思い込み、翌日には体調が悪いと言って銀行も休み、アパートに来る事も有りませんでした。
妻はその翌日も銀行を休んだので、夜稲垣が電話をすると。
「この事は主人には黙っておいて下さい。お願いします。」
「それは出来ない。これは全て私の責任だ。今ご主人は大事な仕事をしておられるし、とても電話などでは話せる事ではないから、話すのは帰国してからになるが、何の責任もとらずに、このままにはしておけない。」
「それは困ります。」
「困るといわれても、このまま私の娘を他人に育ててもらう訳にはいかない。どちらにしても、今後の事を話し合いたいから、明後日の土曜日にアパートまで来てくれ。」
妻は言われた通りに、土曜の朝アパートに来たそうです。
「おまえは嘘の天才か?どうしてその様な言葉がすらすら出て来る?第一娘がO型で無かったら何と言って騙すつもりだった?」
「智子さんは忘れているようでしたが、赴任してすぐに聞いていて、3人の血液型は知っていたので、他の血液型の事までは考えなかったです。」
初めて妻がアパートに来た時に家族構成を聞いて、子供は関係を持った後に出来た娘が一人いるだけだと知り、自分の子供では無いかと心配になり、他の話しに紛れてそれと無く血液型を聞き、自分の子供では有り得ない血液型だったので、ほっと胸を撫で下ろしたそうです。
しかし妻は、久し振りに稲垣と話せる喜びで舞い上がっていたのか、一人暮らしの男のアパートに来た事で緊張していたかで、話した内容を忘れてしまっていたのでしょう。
稲垣の嘘はその場の出任せでは無く、全て用意周到に準備された物だと分かり、妻がああ言えばこう言う、ああすればこうすると色々なケースを想定し、妻を落としていったのだと思います。
「その事と、身体の関係をもつ様になった事とは、どの様な繋がりが有る?」
土曜の朝から話し合っていても、このまま私には隠しておきたいと言う妻と、私に話すべきだと言う稲垣の話は平行線のままで、次第に妻はどうしたら良いのか分からなくなり、取り乱していったそうです。
しかし稲垣にとってはこれも予定通りの事で、妻を抱くという目的を達成させる為に、妻が自分では判断出来なくなり、自分自身を見失って行くのを待っていたのです。
「2人で責任をとろう。理香ちゃんの為に、何もかも捨てて責任をとろう。」
「えっ?どういう事?」
「ご主人には悪いがお互いに離婚して、2人で理香ちゃんを育てて行こう。理香ちゃんに対して責任をとろう。今は理香ちゃんの幸せだけを考えよう。」
「私には出来ません。主人と別れるなんて出来ません。」
「私だってそうだ。離婚を考えてここに来たが、やはり妻にはまだ情が有る。それに、智子と違い私は子供達とも別れる事になる。しかし、今は自分の幸せや自分の都合を考えている時では無いと思う。私の子供達と違い、理香ちゃんはまだ小さい。理香ちゃんさえ大きくなれば、私はご主人に殺されても良いと思っている。理香ちゃんが1人で判断出来る歳になるまで育てるのが私の責任だと思う。智子も自分の幸せや世間体、罪悪感など全て捨てて、理香ちゃんの事だけ考えて欲しい。」
「それなら今迄通り、私と主人で・・・・・・・。」
「それでいいのか?智子はそれで平気なのか?ご主人は何も知らずに、自分の子供だと疑いもせず一生懸命働き、自分を犠牲にしてまで一生懸命愛情を注ぐ。智子はそれを平気で見ていられるのか?俺にはとても出来ない。それに血とは不思議なもので、血の繋がりが無いといつかギクシャクしてくるものだ。まさか自分の子供では無いなんて気付かないかも知れないが、お互いにどこかしっくりと来なくなる時が来る。理香ちゃんも最初は戸惑うだろうが、いつか私の事を分かってくれる様になる。それが血の繋がりだ。本当の親子3人で暮らそう。」
しかし、妻にはすぐに返事が出来るほど、簡単な問題では有りませんでした。
「他の生き物を見てみろ。子孫を残し、子孫を育てる事が最大の目的で、その為だけに生きているものも多い。鮭もそうだ。子孫を残す為にぼろぼろに成りながら激流を登り、子孫を残すと死んで行く。私の人生もそれでいいと思っている。ご主人に怨まれようと、妻や子供達に軽蔑されようと、世間に非難されようと、理香ちゃんさえ立派に育てる事が出来ればそれでいい。私の幸せなどどうでもいい。智子はどうだ?」
その後妻は一言も話さずに帰っていったそうですが、何も話さず、何も反論せずに帰った事で、妻を自分のものに出来ると確信したそうです。
  1. 2014/10/09(木) 01:10:06|
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インプリンティング 第43回

稲垣は、妻が決心してくれるという自信は有ったのですが、最低でも2、3日は掛かると思っていたそうです。
しかし、稲垣にとっては嬉しい誤算で、妻は翌日の昼過ぎにはアパートに来て、部屋の入り口に立ったまま。
「理香の寝顔を見ながら、一晩よく考えました。」
「決心してくれたのだな?」
妻は涙を流しながら、ゆっくりと頷いたそうです。
稲垣は妻を抱き締め、そのままベッドまで連れて行き、キスをしながら胸を触りました。
「やめて下さい。そんな事はやめて下さい。」
「どうしてだ?これから周囲の者は全て敵になる。夫婦だけでも仲良くしていなくてどうする?
父親と母親が仲良くしなくて、理香ちゃんが幸せに成れるのか?これは私達だけの為では無い。
理香ちゃんの為でも有るのだ。」
「でもまだ私達は・・・・・・・・・・。」
「ああ。ご主人や私の家族に話すのは、ご主人が帰国して落ち着いてからになる。理香ちゃんに話すのはもっと後だ。でも、今迄兄妹の様に思っていた関係が、急に夫婦の関係には成れない。
だからそれまでに、夫婦としてやって行ける様に成りたい。夫婦にとってセックスは大事な位置を占める。それに、2人で皆を説得しなければ成らなくなるから、それまでに夫婦としての絆を強くしておきたい。2人で力を合わせないと、理香ちゃんを幸せには出来ない。分かるな?」
この日、稲垣と妻は2度目の関係をもち、その後何度も何度も、絆を深め合ったのでした。
この間奥さんは話を聞きながら、ずっと声を殺して泣いていたのですが、急に顔を上げて。
「どうやって智子さんを抱いたの?どんなセックスをしていたの?」
そう言ってから奥さんは私の顔を見て、恥ずかしそうに慌てて俯いてしまいました。
私もその事が気になっていて、女で有る奥さんも同じ思いだと知り、少し安心したのですが、妻からは聞けても稲垣から聞くのは耐えられず、プライドも許しません。
「・・・・・普通に・・・・・・。」
「普通?少し待っていろ。」
私が稲垣からプレゼントされた妻の下着を取りに行くと、妻は眠っているようでした。
座敷に戻った私は、稲垣の前に卑猥な下着を放り出すと、その中から真っ赤なパンティーを手に持ち、大事な部分に空いている穴から指を出し。
「こんな物を穿かせておいて、普通にだと?おまえには何が普通なんだ?」
「いえ、すみません。以前からこの様な下着を身に着けた女性を、目の前で見てみたいと思っていましたが、妻に頼む訳にも行かず・・・・・。」
「私は知っていました。あなたにその様な趣味が有るのは知っていました。あなたの書斎に隠してあった嫌らしいビデオは、ほとんどの女性がその様な下着を着けている物だったし、その他にも、その様な下着のカタログや、インターネットからプリントアウトした、写真なんかも隠して有るのを知っていました。」
「それにしても、智子がこの様な物を素直に身に着けたとは思えない。ましてや、あの様な格好で人前に出るなど考えられない。また何か騙して穿かせたのか?」
「お聞きになったかも知れませんが、9年前と同じ様に・・・・・・・・・。」
初めの頃は、セックスの前には必ず拒むような言葉を言い、行為中も時々拒む素振りを見せていた妻も、3ヶ月もするとその様な言葉も消えて、セックスを積極的に楽しんでいるかの様に見えました。
稲垣は、もうそろそろ色々な事をさせても大丈夫だと思い、妻が一度気を遣って快感の余韻に浸っている間に、通販で買っておいた下着を持って来て、自らの手で穿かそうとしたのですが、異変に気付いた妻の激しい抵抗に合ってしまい、仕方なく断念しました。
しかし諦め切れない稲垣は9年前を思い出し、その時と同じ様に、今迄散々抱いたにも関わらず、どうしてもセックスの対象としては見られないと嘘をつき、夫婦として上手くやって行くには、セックスの時だけは違った女になって欲しいと頼み、最初は比較的大人しい物から身に着けさせて徐々に妻を慣らし、徐々に過激な下着を身に着けさせていきました。
「それにしても、自分で楽しむだけでなく、どうして人前でもあの様な恥ずかしい格好をさせた?」
「それは・・・・・・・。」
「それは何だ?」
数ヶ月前から、妻の様子がおかしいと気付いたそうです。
それは、私がいつ戻ってきてもおかしくない時期になり、妻がまた迷い出したのだと思い、もう昔の妻では無いと分からせる為に、銀行に来る時以外はあの様な格好を強要したのです。
もう私の妻では無く、稲垣のものだと分からせる為に、脅したり宥めたりしながら説得して、あの様な格好をさせたそうです。
  1. 2014/10/09(木) 01:11:23|
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インプリンティング 第44回

稲垣の話を聞いていて、妻の陰毛があの様な形に剃られていたのも、同じ理由だと思い。
「あそこの毛を剃ったのも同じ理由か?」
「はい。最初は化粧や髪型、髪の色も変えさせ、あの様な格好をさせるだけで効果が有ると思っていましたが、それらはどれも、ご主人が帰って来る前に直そうと思えば、直せる物ばかりだと気付きました。髪も切って染め直せば良いし、化粧はすぐにでも直せます。服や下着も捨てれば良い。それで不安になって。」
「智子は素直に剃らせたのか?」
「・・・・・・・・・・・・。」
「言わなくても、後で智子に聞けば分かる事だ。今おまえから聞くのと、後で智子から聞くのでは、俺の怒りも違う。話せない事は話さなくてもいい。おまえが決めろ。」
「最初はホテルで身動き出来ないように縛り、嫌がる智子さんを無視して・・・・・・・・・・すみませんでした。」
『最初は』と言う事は1度だけで無く、何度かその様な行為をされたという事です。
その時の妻の姿を想像すると不憫だと思いましたが、私を裏切っていた事とは別問題で、妻を許す事など到底出来ません。
セックスの本当の良さを覚えてしまっていた、妻の身体では仕方の無い事かも知れませんが、積極的に快感を得ようとしている姿を想像すると、妻が本当に騙されていたとしても、許す気になど成れません。
気持ちと身体は違うと思いたいのですが、妻が上になり下になり、ある時は後ろからも突かれ、自らも腰を使っている姿を想像するだけで、許す気には成れません。
「あの様な格好をさせて、この事が発覚しても良いと思っていたのか?現にお袋が妻の異変に気付いた。それに、毛を剃ってしまっては私が帰って来たらばれる恐れが有っただろ?」
「最初の頃は知られる事が1番怖かったです。いいえ、ずっと怖かった。でも、それ以上に智子さんが離れて行く事の方が怖く、その時はその時でどうにか成ると思いました。」
あの計算高い稲垣が、妻が離れて行くかも知れないと思った時、感情だけで動きました。
この事からも、やはり今は奥さんの手前言っているだけで、本当は妻の事を今でも愛していて、まだ諦めてはいないのでは無いかと疑ってしまいます。
今はじっと台風が通り過ぎるのを待っているだけで、まだ諦め切れていないのでは無いかと疑ってしまいます。
そう思うと、益々妻とは離婚出来ません。
妻があの様な状態になったのは、長年信じていた稲垣に裏切られていたと、知った事からだと想像はつきますが、この男なら、私達を欺いて少しでも穏便に済ます事が出切る様に嘘をついたとでも言い、また妻に取り入る事は容易い事でしょう。
妻に対する未練や情も有るのですがそれ以上に、誰に何と言われようとも、妻とこの男が自由になり、幸せに成る事だけは我慢出来ないのです。
稲垣は勿論ですが、もしも別れる様な事に成れば、妻にも幸せにはなって欲しくないのです。
一生後悔して、苦しんで欲しいのです。
私はそんな、くだらない男なのです。
妻があの様な状態になって寝ている事自体、妻の身勝手な甘えだと思えてきて起こしに行ったのですが、妻はベッドに寝て壁を見たまま、私を目で追う事もしません。
「おまえも座敷に来い。おまえからも聞きたい事は山ほど有る。」
やはり妻は、私の存在など気付いていないような様子で、一人言の様に呟きました。
「彼も同じだった。父や義兄と同じだった。」
そう言うとまた目を閉じて眠ってしまい、このままでは妻が壊れてしまうと感じたのですが、私にはどうする事も出来ません。
稲垣夫婦が帰り、私も少し眠っておこうと横になったのですが、色々な思いが交錯して、眠る事が出来ずに朝を迎えてしまいました。
この様な人生の一大事にも関わらず、いつまでも会社を休む訳にもいかないと、仕事の事が気になりだし、結局母に妻の事を頼んで出社しました。
この様な私を自分でも情け無く思いますが、後の生活の事まで考えてしまうのです。
妻や娘と離れる様な事にでもなれば働く意欲など無くなり、仕事など辞めてしまうかも知れないのに、会社に行ってしまったのです。
しかしこの様な状態では、まともな仕事など出切るはずも有りません。
何度か仕事を抜け出して、母に電話をして妻の様子を聞いたのですが、妻の状態は変わる事は有りませんでした。
私を気に掛けてくれている上司が昼休みに。
「どうした?家庭で何か有ったのか?」
ずばり言い当てられた私は、この上司だけには話しておこうと。
「はい。帰国してから妻と少し・・・・・・・・・。」
それだけで上司は悟ったかのように。
「そうか。俺も昔単身赴任をしていた時に、女房と色々有った。今回の事はあんな遠くに赴任させた俺にも責任が有る。君がいないのは仕事上痛いが、決着が付くまで休暇を取れ。」
「しかし・・・・・・。」
「男にとって仕事は大事だが、家庭有っての仕事だ。後は俺が上手くやっておく。」
私は上司に感謝し、言葉に甘えて急いで家に帰りました。
  1. 2014/10/09(木) 01:12:57|
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インプリンティング 第45回

家に帰るとそのまま寝室に行き、妻に何度も呼びかけたのですが、一瞬目を開くだけでまたすぐに瞼を閉じてしまいます。
「私が話し掛けても、ずっとこんな状態だよ。トイレに行く時でも、まるで夢遊病者の様だし。
一度医者に診てもらったほうが、良いのではないのかい?」
母に帰ってもらい、椅子に座ってじっと妻を見ていたのですが、昨夜は眠れなかった事も有り、知らぬ内に眠ってしまい、気が付くと窓の外は暗くなり出しています。
妻を見ると目は開いているのですが、じっと天井を見たままでした。
妻のこの様な姿を見せる事に抵抗は有ったのですが、娘を会わせてみようと思って実家に行くと、娘は私を見つけて抱き付いて来たので、私は涙を堪える事が出来ません。
手を繋いで帰る途中、娘にお母さんが病気になったと話し、それを聞いた娘は走り出したので私も後を追いました。
娘は寝室に入ると妻に駆け寄り、顔を覗き込んで。
「お母さん。お母さん、大丈夫?」
娘の声を聞いた妻は一瞬ビクッとし、夢から覚めたかの様に娘を抱き締め、稲垣夫婦に連れ帰ってもらってから初めて、声を出して泣きました。
「理香、ごめんね。ごめんね。」
今夜は私と妻の間で寝たいという娘の希望を叶え、ベッドで川の字に成って寝たのですが、娘が眠ると妻が。
「あなた、ごめんなさい。私は昨日からずっと、もう一人の自分と会っていました。もう1人の私と話しをしていました。それで分かった事が沢山有ります。聞いて頂けますか?」
私と妻は娘を残してキッチンに行き、向かい合って座りました。
「もう少し落ち着いてからの方が良いのではないか?」
「いいえ、今聞いて欲しいのです。私はずっと自分に嘘をついていました。若い頃から自分を偽って生きて来たと分かりました。今聞いてもらわないと、また自分に嘘をついてしまう。あなたにも嘘をついてしまう。」
私は聞くのが怖かったのです。
私の想像通りの事を言われるのではないかと思い、聞きたくは無かったのです。
しかし、知りたい欲望の方が勝ってしまい。
「そうか。それなら聞こう。」
「私は若い頃から、彼の事が好きだった様な気がします。彼には典子さんという婚約者がいたので、彼を兄でもない父でも無い、訳の分からない存在にしてしまっていましたが、本当は愛していたのだと思います。姉の所を飛び出して、その夜抱き締められてキスをされ、凄く嬉しかったのは彼を愛していたからだと思います。あなたと付き合う様になったのも、彼に勧められたからです。このままでは男性恐怖症に成ってしまうかも知れないから、一度デートに応じてみるのも良いかもしれないと言われたからです。」
私は稲垣の存在自体が無ければ、こんな事には成らなかったと思っていましたが、皮肉なもので、稲垣がいなければ私達が夫婦に成る事も無かった訳です。
「稲垣を忘れたくて俺と付き合ったのか?奴を忘れたい為に、好きでも無いのに俺と結婚したのか?」
いつの間にか、稲垣の奥さんと同じ様な事を訊いています。
「私は自分を変えたいから、お付き合いを承諾したと思い込んでいましたが、本当はそうだったのかも知れない。彼を忘れたくて付き合ったのかも知れない。でも結婚したのはあなたが好きになったからです。あなたを愛したからです。それだけは信じて。」
信じたいのですが、これもまた稲垣が奥さんに言った言葉と同じでした。
立場は違っても、私達夫婦と稲垣夫婦は似ているのかも知れません。
違いと言えば、奥さんは2人の関係を疑いながら、ずっと苦しんで来たのに対して、私は稲垣の存在すら知らずに、のうのうと生きて来た事です。
「9年前にあなたを裏切った時も、私は確かに精神的に少しおかしかったし、あなたと喧嘩をして自棄になってはいたけれど、彼の言う事を100パーセント信じた訳ではなかった様な気がします。彼の言う事を信じよう。あなたとの子供が欲しくて、我慢して抱かれるだけで、決して彼に抱かれたい訳では無いと自分に信じ込ませていただけで、彼の事をまだ愛していて、抱かれたかったのかも知れない。自分に対して必死に言い訳をしていただけで、彼の愛を身体で感じたかったのかも知れません。」
今まで私は嫉妬心から、妻の稲垣に対する愛をどうしても白状させたかったのです。
しかし、このように告白されると、嘘でも『私は騙されただけだった。』『私を騙し続けた稲垣が憎い。』と言って欲しかったと思いました。
  1. 2014/10/09(木) 08:50:57|
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インプリンティング 第46回

稲垣に対する奥さんの質問を聞いていた時は、奥さんの前では妻の方を愛しているとは言えるはずは無いので、そんな質問は愚問だと思っていても、いざ自分の事に成ると気に成り、やはり同じ事を聞いてしまうのです。
「ずっと稲垣が好きだったと言う事か?俺よりも稲垣を愛していたのか?」
「いいえ、あなたを愛していました。私はあなたを1番愛していました。」
やはり愚問でした。
私に面と向かっては、私よりも稲垣方を愛しているとは言えない事は分かっています。
仮に妻の言った事が本当だとしても『1番愛していた』では当然納得など出来ません。
1番という事は2番が有るのです。
『あなただけを愛している』でないと、私の心は満足しませんでした。
このままでは、今まで妻に愛情を注ぎ、妻も私だけを愛してくれていると信じて来た人生が、稲垣の奥さんが言っていた様に、全て無駄に思えてしまいます。
その時はそうでも、今は私だけを愛していると言う言葉を聞きたくて、止めておけば良いのに、質問を続けてしまいます。
「その時はそうだったのかも知れないが、今回はどうだ?今回は理香の事で騙されていたのだろ?その事で俺と別れて奴と一緒になろうと思ったのだろ?それとも、奴を愛していたのか?」
「理香があなたの子供では無いと言われた時はショックでした。理香の寝顔を見ながら考えていて、私は何を悩んでいるのだろうと思いました。普通ならあなたに許しを請い、許してもらえなければあなたと離婚して、私一人で理香を育てて行く事になると思います。選択は二つに一つしか無いと思います。しかし私は彼との再婚も考えている。彼の事が好きでなければ、この様な事を悩む事自体無いと思いました。悩むという事は、多少でも彼に対しての愛が有るのだと思いました。勿論理香があなたとの子供だと分かっていれば、離婚など考えもしませんでした。彼よりもあたへの愛情の方が遥かに大きかった。でも、理香の事考えると、彼の言う通りにした方が良いと思ってしまいました。」
この話だけでも、可也ショックだったのですが、次の話で私は奈落の底に、突き落とされてしまいます。
「昨日からもう一人の私と話しをしていて、今回も自分を正当化する為に、自分自身に嘘をついていただけで、本当は彼の事が未だに吹っ切れていなかったのだと思い知らされました。私は違う世界に行ってしまった様な状態でしたが、最初は彼に裏切られたショックからだと自分を甘やかせていました。しかしそうでは無くて、自分に嘘をつきながら自分を庇っていただけで、彼の嘘は切欠に過ぎず、彼への愛情から、あなたを裏切っていた事が分かり、その事がショックで現実の世界に戻れなかった。いいえ、戻ろうとしなかったのだと分かりました。その証拠に、理香があなたの子供では無いと、彼に言われる前からあなたを裏切っていました。これは彼への恩返だと自分を偽りながら、あなたを裏切っていました。」
何でも正直に、洗い浚い話そうとしている妻には、それがどの様な事かなど、怖くてとても訊けません。
私は、この事については軽く流したくて。
「ああ。稲垣から聞いて知っている。食事を作りに行ったり、掃除洗濯をしに行っていた事だろ?キスまではしていた事だろ?その事はもういい。」
「えっ?彼とキスはしていません。彼と関係をもってからは有りましたが、それまでは要求されても断わりました。」
「それなら稲垣が嘘をついていたと言う事か?そう言えばキスとは言わずに、キスの様な事と言っていたが、キスの様な事とはキスとは違うのか?」
「キスの様な事?あっ・・・・・・・・・・それを今から話そうと・・・・思っていました。」
これ以上まだ何か有るのかと思うと、もう聞きたくないと思いましたが、妻は私に全て正直に話そうとしていました。
  1. 2014/10/09(木) 08:52:23|
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インプリンティング 第47回

妻が稲垣のアパートに行く様になってから、2週間ほど経った日曜日に、掃除と洗濯をする約束をしていた妻がアパートに行き、チャイムを鳴らしても稲垣からの返事は有りませんでした。
当然妻が来る事は分かっているので、近くにでも行っているのだろうと思い、預かっていた合鍵で開けて入って行くと、下半身だけ裸の稲垣が椅子に座り、仕切に硬くなった物をしごいていたそうです。
妻は余りの事に、持っていたバッグを落としてしまい、両手で顔を覆いました。
「すまん、すまん。とんでもない姿を見せてしまったな。誰にも見られたく無い姿を見られてしまった。午前中に来てくれると言っていたか?私は午後に来てもらえると思い込んでいた。」
そう言いながらも、稲垣は下半身を隠そうともしないので、妻は目のやり場に困り。
「それをしまって下さい。私、帰ります。」
「悪い、悪い。そう言わないでくれ。慌てて隠しては、凄く悪い事をしていたようで、余計に恥ずかしいだろ?これでも私の、精一杯の照れ隠しなのだ。気を悪くしないで欲しい。」
急に寂しそうな顔をした稲垣はパンツとズボンを穿き、インスタントコーヒーを2人分作って妻に勧め、自分も妻の向かいに座るとコーヒーを飲みながら。
「軽蔑しただろ?当然軽蔑するよな。私自身、自分を軽蔑しているのだから。こんな歳になってこの様な行為をしているじぶんを、この様な行為をしなければならない自分を、情け無く思ってしまうのだから。」
「いいえ、軽蔑するなんて・・・・・・。」
「妻とはもう3年ほど関係をもっていない。完全なセックスレス夫婦という訳だ。私は妻を抱きたかったが、ずっと妻に拒まれて来た。妻にすれば、他に男がいたのだから当然だったのだろうが、私にもまだ性欲は有る。風俗にでも行けば良いのだろうが、お金でその様な事をするのは抵抗が有る。そうかと言って浮気をする相手も勇気も無い。結局3年間自分で処理していた訳だ。
いや、智子には嘘をつきたくは無いので正直に言うが、本当は風俗の店の前まで行った事は有る。
それも2度も。ただ、変なプライドが邪魔をして入る勇気が無かっただけだ。情けない男だろ?
どうしようもない男だろ?」
この話で妻の同情をかおうとしているのですが、やはり稲垣は嘘をつくのが上手いと思いました。
この話は勿論作り話なのですが、嘘の話の中で嘘をついたと白状する。
即ち二重の嘘をついて、この話をいかにも本当の事の様に、信じ込ませようとしているのです。
「自分でするというのは惨めなものだ。終わった後に後悔が残る。終って冷静になると、自分のしている時の姿を想像してしまい、自分に対して猛烈な嫌悪感を覚える。そのくせ食欲と同じで、性欲もどうしようもない。溜まってくると知らぬ内に自分の物を握り締めている。智子も笑えて来るだろ?笑ってもいいぞ。自分でも情けなくて笑えてしまう。」
「笑うだなんて。」
「私の人生は何だったのだろう。これから一生この様な事をしながら生きて行く。こんな人生ならもう終っても良いと思いながらも、自分で終らせる勇気も無い。」
「お願いですからそんな事を考えないで下さい。何か私に出来る事は無いですか?何か有れば言って下さい。」
妻は一般的な意味で言ったのですが、稲垣は待っていましたと言わんばかりに。
「実は、智子が来たので途中で終ってしまった。ただでも出したかったのに、途中で止めてしまったので、情けない事に、今話していても神経はあそこに行ってしまっている。恥ずかしい話なのだが、男の生理として仕方が無いのだ。でも一人で惨めに処理するのはもう嫌だ。はっきりと言うが、協力してくれないか?私を助けると思って手伝ってくれないか?こんな事は智子にしか頼めない。妻にさえ頼んだ事は無い。お願いだ。」
稲垣はこれが目的で、わざと妻にこの様な行為を見せたのでしょう。
いくら没頭していたとは言っても、狭いアパートの部屋でチャイムが鳴れば、人が来たのを気付かない訳が有りません。
「私には主人がいます。そんな事は出来ません。」
「勘違いしていないか?私もご主人を裏切らせる様な真似はさせたくない。少し手伝ってくれればいい。手伝ってもらえれば、自分一人でこそこそとやっているのでは無いので、随分気が楽になる。自分への嫌悪感も少なくなる。頼む、助けてくれ。」
稲垣の頼みは、自分でしている手を、その上から握っていて欲しいというものでした。
こんな頼みは、普通の女性なら決して聞く事は有りません。
それどころか怒って帰ってしまい、二度とここを訪れる事もないでしょう。
やはり妻には、稲垣に対する普通ではない思いが有ったのでしょう。
妻は稲垣の座った椅子の横に座り、目をしっかりと閉じて横を向き、自分の物をしごき続ける稲垣の手を握っていました。
この時は、最後は稲垣が左手に持っていたティッシュで、自分で受け止めましたが、これでは妻が最後まで目を閉じていて面白く無かったのか、次に行った時には、その様子を見なければならない様に、妻にティッシュを持たせて受け止めさせ、終わった後の処理までさせていました。
  1. 2014/10/09(木) 08:53:14|
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インプリンティング 第48回

その後稲垣の要求は更にエスカレートし、妻もその様な事を何度かさせられている内に、次第に私に対する罪悪感も薄れ、横から、前から、後ろから妻がする様になり、稲垣は何もせずに、ただ快感に浸る様になって行ったそうです。
特に後ろからする様に要求される事が多かったそうですが、これは妻との密着度も増し、妻の乳房が背中に当たって、気持ちが良かったからだと思います。
「おまえは奴のオナニーを手伝っていたということか?まさか、キスの様な事というのは?」
「ごめんなさい。」
「飲んだのか?」
またこの様な事に拘ってしまいましたが、それと言うのは、私は妻に飲んでもらった事は無かったからです。
勿論、妻に口でしてもらう行為も有りましたが、それはセックスの中の一部としてで、放出にまで至る行為では有りません。
若い時には、妻が生理中で出来ない時に、口でしてもらった事が有ったのですが、妻はティッシュに吐き出し、私も飲んでくれとは言えませんでした。
こんな事で愛情は測れないかも知れませんが、もしも飲んだとすれば、妻の稲垣に対する愛情の深さを感じてしまうのです。
「どうした?飲んだのか?」
「最初は吐き出していたのですが、吐き出されると、凄く悪い事をさせている気分になると言われて。」
「いくら世話になった恩人だと思っていたとしても、普通の女性はその様な事はしない。ましてや、飲むなどという行為は決してしない。やはりおまえは奴の事をそれだけ好きだったのだな。」
「ごめんなさい。私もそう思います。彼が可哀想に思え、彼に対する恩返しだと思い込んでいたけれど、あなたの言う様に可哀想や恩返しなどでは、あなたを裏切るあんな事までは出来なかった。彼の事も愛していたのかも知れません。彼を喜ばせたかったのかも知れません。私がしてあげる事で、彼が喜ぶ顔を見たかったのかも知れません。ごめんなさい。私は2人を愛していたのかも知れない。でも、彼よりもあなたの事を遥かに愛しています。これは本当です。」
「奴にもそう言っていたのだろ?」
「そんな事は有りません。言い訳にはならないけれど、あなたが側にいたら、決してこの様な事はしませんでした。あなたがいない事で身軽になった様な、自由になった様な気持ちだったと思います。」
「でも、それはおまえも納得した事だろ?確かに俺が単身赴任すると半ば強引に決めたが、それは理香の入学の事も有ったからだ。正直、向こうでは色々な誘惑も有った。しかし俺は全て断って我慢した。それなのにおまえはたった数ヶ月で・・・・・・・。今の俺の悔しさが分かるか?
寂しさが分かるか?信頼し切っていた妻に裏切られた男の気持ちがおまえに分かるか?」
「ごめんなさい。ごめんなさい。」
「泣いても駄目だ。おまえと稲垣だけは絶対に許さない。法律なんてどうでもいい。おまえと離婚しても、絶対に幸せにはさせない。どの様な手を使ってでも、必ず地獄に落としてやる。」
心の中で、まだ何処か妻を庇う気持ちが有った私も、これで妻とは終ってしまったと思いました。
自分の言葉が更に怒りを誘発し、どんどん気持ちが昂っていき、復讐鬼にでもなった気分です。
最初は稲垣の話を聞いて、妻は稲垣に騙されて関係をもったと思いましたが、妻の話を聞いていると、稲垣の嘘を承知で関係をもった様です。
自覚は無くても、気が付かぬ内に自分自身を偽り、稲垣の言う事を嘘と承知で騙されて、自分の罪悪感を和らげていたのだと思います。
ここまでなら、稲垣よりも妻の方が一枚上手だったという事になります。
しかしあの稲垣が、その様な妻の気持ちに気付かないはずが有りません。
結局、稲垣はそんな妻の気持ちなどお見通しで、更にその上を行き、妻が自分の要求に従い易い様に、嘘をついて切欠を与え、妻の背中を押していた様な気がします。
お互い好きな気持ちが有りながら、お互いそれを知りながら、家族や仕事を捨て切れなくて、その事を口に出す事も出来ずに、こんな駆け引きを続けていたのでしょう。
今後、妻とは同じ人生を歩んでは行けそうに有りませんが、このままでは余りに寂し過ぎます。
その寂しさを多少でも癒す事の出来る望みは、妻が数ヶ月前から変わったと言う、稲垣の言葉だけでした。
  1. 2014/10/09(木) 08:54:00|
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インプリンティング 第49回

妻とは終ってしまったと思っていても、私の選択は離婚だけでは有りません。
離婚して新しい人生を歩む。
娘のために我慢して、修復を目指す。
修復は目指せないが娘のために離婚せず、仮面夫婦になる。
離婚せずに一生虐め抜いて、奴隷のように扱う。
「稲垣が、数ヶ月前から智子の様子が変わり、智子が離れて行く様な気がしていたと言っていたが、何か気持ちの変化でも有ったのか?」
「理香が彼の子供だと思い込んでからは、彼と一緒になる事が最善だと思っていました。理香にとっても、その方が良いのかも知れないと思いましたが、本当は私が怖かっただけかも知れません。あなたに知れれば離婚になると思うと怖かった。離婚された後はどうなるのか怖かったです。私が自分で招いた事だとは言っても、何もかも無くしてしまう。それなら新しい家族を持てる方を選ぼうと、ずるい考えをしてしまいました。」
「それだけでは無いだろ?稲垣の事も愛していた。」
「その時は気付きませんでしたが、いいえ、気付こうとしませんでしたが、それも有ったかも知れません。彼よりも遥かにあなたの事を愛していても、暫らく会っていなかった事も有って、目先の愛を選んでしまったのかも知れません。一時はあなたへの罪悪感を忘れたくて、何もかも忘れたくて、私から彼を求めてしまった事も有りました。でも何故か彼との関係に違和感を覚えて来ました。私は逃げているだけで、本当に一生を共にしたいのはあなただと気付きました。例え理香が彼の子供でも、あなたと3人で暮らしたいと、はっきりと分かりました。」
「それなら何故あいつの言う通りにしていた?何故あの様な格好までさせられていた?何故断らなかった?」
「断れませんでした。理香の為に離婚を覚悟して、子供達とも別れる覚悟をした彼に悪くて断れませんでした。でも本当は、これも私のずるさで、あなたに捨てられた時の行き場所を、確保しておきたかったのかも知れない。」
これを聞いて、離婚後に稲垣との再婚も有り得ると思った私が決めたのは、離婚せずに妻を虐めて、一生私の側で償わせるという道でした。
「智子は離婚を覚悟して話したと思うが、そんなに離婚したいか?」
「えっ?ここに居させて貰えるのですか?お願いします。どの様な償いでもします。」
「勘違いするな。おまえとは普通の夫婦には戻れない。これからは全て俺の言う事を聞け。おまえに自由は無い。白い物でも俺が黒だと言えば黒だ。それでも良いならここに居ろ。決して勘違いはするなよ。これも理香の為だ。おまえの顔など見たくないが、理香の為に我慢する。」
「ありがとうございます。どの様な形でも、今の私には嬉しいです。」
私に逆らう事が有った場合は離婚を約束させ、翌日妻に離婚届を貰って来させ、離婚届の妻の欄と、私の書いた離婚条件にも署名捺印させようとすると、妻は躊躇しました。
「どうした?あいつの言う事はあんな事まで信用しようと努力したおまえが、俺の事は信用出来ないか?おまえが俺の言う事に逆らわない限り、勝手に離婚届を出す様な事はしない?」
「ごめんなさい。ただ条件が・・・・・・・。」
確かに離婚の時の条件は、裁判でもすれば全て通らない様な法外な物ばかりです。
「どこが気に入らない?全ての財産を放棄するという項目か?それとも慰謝料として1億円払うという所か?」
慰謝料が1億円など、有り得ない金額です。
しかし普通の金額では、稲垣が肩代わりする事も考えられたので、無理を承知でこの金額にしました。
「違います。理香の親権の所です。親権があなたなのは、わたしのやった事を考えれば仕方が無い事だと思います。ただ、離婚後一生会わないと言うのは・・・・・・・・。」
「そうか。おまえは今からもう、俺に逆らって離婚に成る事を考えているんだ。離婚にならない様に、一生懸命償うのかと思っていたが、今は逆らわずに、ほとぼりが冷めるのを待とうと言う考えだ。言っておくが、今も俺に逆らっている事に成るのだが?」
妻は慌てて署名しながら。
「ごめんなさい。今回だけは許して下さい。一瞬理香と会えない人生を想像してしまいました。もう絶対に逆らいません。どうか許して下さい。」
「今回だけだぞ。その事はもういいから今夜は俺の好物を作れ。言わなくても何か分かるな?」
妻は材料を買いに行き、その材料を見ただけで、私の1番好きなハンバーグだと分かりました。
妻のハンバーグは絶品で、それを食べてからは外食でも、ハンバーグを注文した事が有りません。
いかし、いざ食べようとナイフとフォークを持った時に吐き気を覚え、娘が心配する中、私は無言でキッチンを出ました。
  1. 2014/10/09(木) 08:54:51|
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インプリンティング 第50回

私は寝室に行って寝転びましたが、これは妻への嫌がらせでは無くて、稲垣の物を散々触った手で捏ねたかと思うと、身体が受け付けなかったのです。
ハンバーグだけでなくご飯でさえも、妻がその手でといだかと思うと、食べる事が出来ないのです。
娘が食べ終わり、テレビを見ている間に寝室に来た妻は。
「すみませんでした。お気に召さなかったですか?」
「ああ。確かにハンバーグは好物だ。しかし今の様な精神状態の時に、あのような油っこい物が喉を通ると思うのか?おまえは全然反省していない。もしかすると、もう終った事だと考えていないか?俺の気持ちを少しでも考えれば、あんな物は作らないはずだ。俺はカップラーメンでも食べるから、すぐに買って来い。」
「ごめんなさい。私の配慮が足りませんでした。カップラーメンなどと言わずに、何でもおっしゃって下さい。作り直します。」
「聞こえなかったのか?俺はラーメンを食べると言ったはずだ。俺には逆らわなかったのでは無いのか?智子には『はい』以外の返事は無いはずだ。すぐに買って来い。」
その後も、妻の作った物を食べられる事は有りませんでした。
その間、稲垣への復讐も考えていましたが、私が思い付く事は違法な事ばかりです。
それでも良いと思っていても、娘や私の将来を考えると現実には出来ません。
私に出来る事は慰謝料を取る事と、精々行員同士の不倫なので銀行へ訴え、稲垣の社会的地位を脅かすぐらいの事でした。
先に銀行へばらしたのでは、稲垣が困るだけの慰謝料は取れないと思い、銀行については何も触れないで、ただ慰謝料のみ文章で請求すると、次の日に電話がかかり。
「この度は申し訳ない事を致しました。慰謝料もお支払いする覚悟でいますが、5千万は余りにも法外で、高額すぎてお支払いできません。」
「法外?旦那のいる人妻を好きにしておいて、法外などという言葉がよく出てくるな。その事は法律違反だから、慰謝料が発生するのだろ?おまえから法外などと言う言葉が出てくるとは思わなかった。おまえはいくら位を考えている?」
「・・・・はい・・・・・500万を・・・・・・。」
「俺も色々調べたが、確かに500万は良い額だ。でもそれで俺の気が晴れると思っているのか?俺は今回の事で一生苦しむ。おまえは一度車を買い換えるのを我慢すれば終わりだろ?そんな事で俺は許す気になんか成れない。俺の望みは金では無い。おまえも苦しむ事だ。よし、続きは銀行で話をしよう。」
「銀行だけは許して下さい。必ずこちらから返事を致しますので、暫らく考えさせて下さい。」
そう言った稲垣からは、1週間を過ぎても返事が来ず、お金と職を天秤にかけているのだと思っていましたが、私の知らぬ所で話は違った方向へ動いていました。
2週間経ち、私が痺れを切らして銀行へいつ乗り込もうと思っていた時、稲垣の代理人を名乗る弁護士から電話が有り。
「慰謝料300万で示談にして頂けないですか?そちらが離婚されない場合、私は300万でも高いと思いますが、示談をお願いするのですからこの金額にさせて頂きました。裁判をなされても、この金額より上は無いと思います。その上弁護士費用や裁判費用で、100万はかかる。結局手元に残るのは200万がいいところです。お互いに無駄を省く為に、示談を了承して頂きたい。」
「断る。俺はお金が目的では無い。」
「それでは何が目的ですか?今の日本では復讐は認められていない。稲垣さんから聞きましたが、5千万など有り得ない。余りに常識からかけ離れていると、恐喝で訴える事も出来るかも知れない。どちらにしても、今返事を頂こうとは思っていないので、後日私と会って頂きたいのです。
今後の交渉は稲垣さんに直接せず、必ず私を通して下さい。」
この弁護士は仕事でこう言っていると分かっていても、この男まで憎くなります。
「分かりました。私も代理人を立てます。今後の話はあなたとお隣の犬とでお願いします。これでは代理人ではなくて代理犬になってしまうから駄目ですか?」
「私を侮辱するおつもりですか?」
「いいえ別に。私はあなたを奴の代理人だと認めた覚えは無い。そんな事が通るのなら、私も代理の者を勝手に決めても良いはずだ。私が奴と直接話しては駄目だと、裁判所から勧告でも出たのか?人の家庭を壊しておいて、後は顔も出さずに知らん顔はさせない。」
これが法的に通る話かどうかは別でした。
しかしこの弁護士は私の怒りも多少は理解してくれ、後日稲垣と話す場を設ける事を約束してくれました。
ただし、2人だけでは無く、この弁護士の立会いの下ですが。
  1. 2014/10/09(木) 08:55:47|
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インプリンティング 第51回

電話の後、私は稲垣の強気の訳を知りたくて、奥さんの携帯に電話をすると、稲垣夫婦の離婚が決まった事を知りました。
奥さんは怒りから、親戚や子供達にも話し、銀行へも話しに行ったそうです。
その結果出た処分が得意先への出向で、それも、小さな会社ですが常務として迎えられるそうです。
世の中などこの様なもので、悪い事をすればいつか地獄に落ちるなどと言うのは嘘で、悪い人間ほど上手く立ち回って行くのです。
向かい入れる会社も、稲垣の銀行とパイプを太くしたいのが見え見えで、全て承知で向かい入れるらしく、この事で稲垣を脅すのは無理になりました。
妻も銀行を辞めさせたので、稲垣との接点は無くなりましたが、何も怖い物が無くなり、自由になった稲垣には恐怖すら覚えます。
妻には事有るごとに散々嫌味を言って虐め、泣かせて来たのですが、思う様にならない稲垣への怒りも妻に向かい、今までしなかった性的な虐めをしようとしていたのですが、裸になる様に命じ、周囲に短い毛が生え出した逆三角形の陰毛を見ていると、稲垣を思い出し、嫌悪感を覚えてしまい触れる気にも成れません。
「なんだ?その陰毛は。久し振りに淫乱な身体を触ってみようと思ったが、汚くてとても触る気にはならない。でも、折角裸になったのだから、俺をその気にさせる様に、後ろを向いて尻を振って誘ってみろ。」
妻は逆らわなくなっていて素直に従いましたが、私はその事が面白く有りません。
逆らえば離婚だと言っておきながら、妻が嫌がり、泣きながら私に許しを請う姿が見たいのです。
「いくら俺に言われたにしても、よくもその様な真似が平気で出来るものだ。そこまでして、この家にしがみ付きたいのか?」
妻はそれでも反論せずに、唇を噛んで涙を堪えていました。
私が稲垣と会ったのは、それから3日後の事です。
私にはある考えが有り、弁護士に指定された喫茶店を断り、弁護士事務所で会う事にしたのですが、これは相手の懐に飛び込み、相手を油断させる為でした。
「慰謝料300万で示談に応じます。ただ一言謝って頂きたい。それで全て水に流すつもりで来ました。」
すると稲垣は。
「大変なご迷惑と苦痛を与えてしまいました。どうか許して下さい。」
「先日、先生の話を聞いてから後で考えていて『裁判なんかして長引かせずに、早く決着を着けて忘れ、新しいスタートを切った方がお互い幸せになれるぞ』と言ってもらっていると感じました。私も早くこの事を忘れたいので、これで終わりにしましょう。」
私が握手を求めると、稲垣は恐る恐る手を出しました。
その様子を弁護士は微笑んで見ていましたが、その微笑の中には、自分が説得をして私の考えをここまで変えさせたという、稲垣に対する自慢も有った事でしょう。
当然私は、憎い稲垣と握手をする気など無いのですが、目的の為には仕方が有りません。
「判を押す前に、今後妻と二度と連絡を取らない事と、二度と会わない事を書き足して頂けませんか?」
「その事は交渉する前に、稲垣さんに確認して有ります。稲垣さん、宜しいですね?」
稲垣は一瞬返事を躊躇いましたが、弁護士の再度の確認に頷きました。
「それと、この約束を破った時の罰則もお願いします。そうでないと、その様な約束は無いに等しくなってしまいます。私は安心して暮らしたいだけなのです。本当は気が弱いので、何か無いと不安なのです。」
どの様な罰則規定を盛り込むか聞かれ、約束に違反した時には、5千万を支払うと書き入れて欲しいと言ったところ。
「それはいくら何でも無茶です。もう少し現実的な額で無いと。」
「そうですか?それはまた連絡を取り合う事も有ると言うことですか?それなら示談にするのは考えます。追加で書き込んでもらった事も、何の意味もなくなる。もう妻と会わないのなら、5千万でも1億でも良いと思うのですが?最初から破るつもりの約束なら意味が無い。私は先生の和解案に従いたかったのですが残念です。裁判所でお会いしましょう。」
私が立ち上がると、弁護士が再度金額を下げる様に提案してきました。
私は稲垣の困る額が良かったのですが、あまり拘っても変に思われるので、結局1千万という事になりました。
この額ではあまり困らないとも思いましたが、最初からお金が欲しいわけでは無くて、稲垣を出し抜く事が出来れば、私の心も少しは癒されるのです。
  1. 2014/10/09(木) 08:56:42|
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インプリンティング 第52回

私の考えている事は違法な事だと分かっています。
しかし、不倫と同じで発覚しなければ、なんら違法行為にはなりません。
これは妻に踏み絵をさせる意味も有り、妻さえ本当の事を言わなければ、ばれる可能性も無いと思うのですが、もしも妻が私を裏切り、犯罪者になった時は妻と稲垣に対して、本当の犯罪を起こしてしまうかも知れません。
私の口座に300万振り込まれた夜、妻に通帳を見せ。
「これを見てみろ。俺がこれだけ苦しんでいるのに、稲垣は300万振り込んで終わりにするそうだ。たったの300万だぞ。これならやった者勝ちだ。」
「ごめんなさい。」
「ごめんなさいだ?おまえは気楽でいいな。まあ俺も考え方を変えれば、俺が遠くにいて使えない間の女房の穴を、300万で貸したと思えば得をしたのかも知れない。もうおまえの穴は使う気にならないから、次の男を見つけてもう少し稼がせてくれ。返事は。」
勿論私にその様な気持ちは無いのですが、流石に妻もこればかりは『はい』とは言えない様です。
「俺の苦しさが分かるか?違法行為をしたくせに今は法に守られている奴には、何も出来ない俺の辛さが分かるか?」
「私が悪いのです。ごめんなさい。」
「私が悪い?まだ奴を庇っているのか?」
「違います。そうでは有りません。」
いよいよ私の計画を妻に話す時が来ました。
「それなら俺の気持ちを少しでも楽にしてくれないか?俺の復讐を手伝ってくれないか?」
「復讐?」
「余計な事は聞かなくてもいい。おまえが言えるのは、はいと言うのか、いいえと言ってここを出て行くかだ。」
「はい・・・・お手伝い・・します。」
私が計画を話すと、妻の顔色が変わりました。
「そうだ。俺がしようとしている事は、完全な美人局だ。智子さえ裏切らなければ、絶対にばれない犯罪だ。俺だって犯罪などしたくはない。誰が俺にこの様な事をしなければ成らない様にした?」
「・・・・・私です。」
早速稲垣に電話をかけるように言うと、妻は電話の前までは行ったのですが、受話器を取ろうとはしません。
「俺のやろうとしている事はそんなに酷い事か?長年俺を騙し続けていた事よりも酷い事か?
旦那が遠い国で、家族の為に一生懸命働いている間、他の男に抱かれて涎を垂らし、腰を振っていた事よりも酷い事か?」
妻はようやく私の指示通りに電話しましたが、話し方が余りにもぎこちなく、その上途中で泣き出したので、ばれないか心配しましたが、それが返って稲垣の心を揺さぶったようです。
「奴を騙すのが泣くほど辛いか?俺を騙し、裏切る事は平気で出来たのに。」
「違います。」
「まあいい。それより奴は何と言っていた?」
「そんなに辛ければ離婚して、私の所に来いと言われました。」
「それが嬉しくて、嬉し泣きだったのか。」
「違います。あなたに、この様な事までさせてしまう事が辛かったのです。」
「本当か?それよりも金曜日はどうなった?」
「会う約束をしました。ただ、あなたに言われた様に彼のアパートでは無くて、ホテルのロビーで会う事になってしまいました。」
稲垣は私を警戒しているのでしょうが、まさか妻がこの様な事をするとは、微塵も思っていないはずです。
妻に無理やりさせている私でさえ、私の好きだった妻は、決してこの様な事は出来ない女だったと思っているのですから。
  1. 2014/10/09(木) 08:57:46|
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インプリンティング 第53回

稲垣の仕事の都合で、夜の8時に待ち合わせているのですが、まずはホテルかその近くで食事をするにしても、アパートで会うのとは違い、その後の行動が読めない為に私が見失った時の事も考えて、どこかに移動する時は、その都度トイレからでも連絡を入れるように言って有りました。
2人で会わないという約束だったので、本来ならロビーに2人でいる所に乗り込めば充分なのですが、2人だけになった時に乗り込んだ方が、より効果が有ると思ったのです。
稲垣は警戒して、最初は辺りに気を配るだろうと思い、妻よりも少し遅れてホテルに行き、その後2人を尾行する計画だったので、今日は定時に退社するはずが、この様な時に限って余分な仕事が入り、退社出来たのが8時になってしまいました。
しかし、少しはロビーで話をするだろうし、その後は食事に行くと思っていたので安心していたところ、会社を出るとすぐに携帯が鳴り。
「彼に、このホテルに部屋をとっておいたので、今からそちらで話そうと言われましたが、私はどうしたら良いですか?」
平日でないと、出張に行っていて私が不在だと騙し難い事や、翌日が休みで金曜日の方が開放的になれる事などを考えてこの日にしたのですが、それが裏目に出てしまい、計画を断念する事も考えました。
しかし、妻から悩みを聞いて欲しいと言っておいて、ここで不自然に妻が帰ると言い出しては、稲垣は警戒して、もうチャンスは無くなるかも知れません。。
「奴の言う通りにしろ。但し、奴が迫ってきても上手く逃げて、絶対に身体に触れさせるなよ。」
私はホテルに急いだのですが、早く着けたとしても3、40分はかかってしまいます。
ホテルに行く間私の脳裏には、稲垣が妻をベッドに押し倒している姿が浮かびます。
妻に嫌悪感を持っていて、私は触る事すら出来なくなっていましたが、それでも稲垣に触れられる事は許せません。
稲垣だけで無く、もう二度と私以外の男に触れられるのは嫌なのです。
計画では常に私が近くに居て、2人だけに成れる場所に入ったらすぐに妻に電話をかけ、2人で出て来るように言って、稲垣に事実をつきつける予定だったのですが、これでは私が到着するまで、何か有っても止める事が出来ません。
悪く考えると、稲垣に抱き締められてキスをされ、今の辛い立場が嫌でまた稲垣に寝返り、この計画を話してしまっているかも知れません。
気は焦るのですが、それとは逆に、タクシーに乗ったのが裏目に出て、工事渋滞などで1時間も掛かってしまい、ホテルに着いてすぐに妻の携帯に電話をかけたのですが、妻が出る事は有りませんでした。
フロントに稲垣の部屋を尋ねたのですが、教えてもらえる訳も無く、気が付くと私は家路に着いていました。
実家に預けていて娘もいない真っ暗な部屋の中で、何も考えられずに座っていましたが、何も考えてはいないはずなのに、何故か涙だけが溢れて止まりません。
少しして、人の気配を感じてそちらを見ると、暗がりの中に妻が立っていました。
「あなた・・・・私・・・・・・・。」
「帰って来たのか?泊まってくれば良かったのに。俺が抱いてやれない分、奴に朝まで可愛がってもらえば良かったのに。」
私に有るのは絶望感だけで不思議と怒りは無く、力無い小さな声で話していたと思います。
「ごめんなさい。私、抵抗しました。必死に抵抗しました。でも・・・・・。」
「いや、別にいい。これは俺が仕組んだ事だ。それより気持ち良かったか?気を遣らせてもらえたか?」
「いいえ、最後まではされていません。あなたからの電話で怯んだ時に、このままでは、ばれてしまうと言って逃げてきました。本当です。」
「それなら、どこまでされた?キスは?」
「・・・・・・。」
「裸にされたのか?乳首を吸われたか?」
「・・・・・・・・。」
「最後までいかなくても、指ぐらいは入れられたとか?」
「・・・・・・・・・。」
「全然感じなかったのか?下着を見せてみろ。」
「・・・・・・それは・・・・・・。」
私からの電話で稲垣が怯んだのではなくて、妻が我に帰ったのかも知れないと思いました。
「でも、もう彼に気持ちは有りません。彼に抱きつかれた時嫌だと思った。あなたをもう裏切りたくなかった。ずっと抵抗していたけれど、身体が・・・・・身体が・・・・・・・。」
妻の話が本当だとすると、あと10分私の電話が遅れていたら、最後まで行ってしまい、そうなると今日、妻が帰って来る事も無かったかも知れません。
「今回の計画を奴に話したのか?」
「話していません。本当です。あなた、ごめんなさい・・・・・ごめんなさい・・・・・・・。」
私は稲垣に電話をしましたが、これも怒る事無く、淡々と話していたと思います。
  1. 2014/10/09(木) 08:58:43|
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インプリンティング 第54回

次の日、稲垣は弁護士を伴って私の家にやって来ました。
「約束の違反金はこの前と同じ口座に振り込んでくれればいい。話は以上です。お帰り下さい。」
「その事ですが、今回の事は話が出来過ぎている。出張に行っているはずのご主人がいたのもおかしい。もしかしたら、これは・・・・・・・・。」
「つまり、私が妻にこの男を誘惑わせたという意味ですか?そう思うのなら訴えて下さい。それで結構です。妻の私に対する気持ちに自信が持てず、出張だと嘘をついて、妻を罠に掛けたのは事実です。その結果がこの有様です。もう何もかもが嫌になった。もう生きているのが辛い。好きにして下さい。」
「相手を疑うのも私の仕事です。そういう見方も出来るというだけで・・・・そう言わずに。」
怒るでも無く、呟く様に話す私が不気味だったのか、弁護士は焦っている様でした。
「稲垣さん、昨夜は妻がお世話になりました。妻を抱いてくれたみたいですね?妻は喜んでいましたか?妻は無理やりされたと言っていますが?それではまるで強姦だ。」
「待って下さい。私は、ただ話をしていただけだと聞いている。稲垣さん、その様な事が有ったのですか?」
「・・・・いいえ・・・・。」
私は妻を呼び。
「稲垣さん。もう一度、その様な事が有ったのか無かったのか答えて欲しい。」
「・・・・・有りましたが・・・決して無理やりでは・・・・・同意の上で・・・・・。それに、最後まではしていません。」
妻の言った、最後まではされなかったと言うのは本当のようですが、私には妻が感じてしまったた事が気になっていました。
「そうですか。肉体関係に近い事は有ったようですね。しかし、強姦と言うのはどうでしょう?
分別の有る大人の奥様が、ホテルの部屋までついて行った。しかも以前は不倫関係に有り、会おうと言い出したのも奥様からです。多少強引なところが有ったとしても、はたしてそれが強姦と言えるかどうか。」
「強姦では無く、強姦未遂になるのかも知れませんが、2人きりの密室で証人がいない事を良い事に、事実を隠し通すおつもりですか?訴えるも、訴えないも妻の問題なので、別に私にはどうでも良い事ですが・・・・・・。」
すると弁護士は少し待って欲しいと言い、稲垣を連れて外に行ってしまいました。
「今回の事は、された、していないで水掛け論になってしまう。ただ明白なのは約束を破って2人で会っていたという事です。本来は奥様の過失も大きいので満額は無理かと思いますが、約束の1千万をお支払い致しますので、それで納得していただけませんか?」
「1千万は当然です。約束を破ったら、妻と合わせて1千万と決めた訳ではない。妻には別に相応の償いをさせます。本当はお金などどうでもいい。お金よりもこの男を殺したい思いが強いのですが、娘の事を考えると、まだ刺し違える決心がつかない状態です。」
「少し待ってくれ。それは完全に脅迫ですよ。その言葉だけでも犯罪だ。」
「そうですか。それなら私は罪に問われなければならない。どうぞ訴えて下さい。もうどうなってもいい。今後生きていたところで、人生に何の意味も無いかも知れない。」
弁護士は私を責めていたと思えば、今度は宥める様に。
「そう悲観的にならずに、冷静になって下さい。最初に疑う様な発言をしたのは、仕事上色々なケースを念頭に置いて進めなければならないからです。私はそういう事も有り得ると一般的な話をしただけで、その事でも傷付けてしまったとしたら、私の不徳の致すところです。許して下さい。奥様の件は、私は相談者を擁護する立場に有るので、稲垣さんを信じて、強姦の様な事は無かったとしか言えない。しかし双方の利益を考えれば、示談にするのが好ましいと思います。どうでしょう?」
すると稲垣は弁護士に対して不満を露にし。
「そんな・・・・・。先生は私の代理人だろ。」
「稲垣さん。あなたは私にも、奥様とは二度と会わないと約束してくれましたよね?その舌の根も乾かない内に、これは何ですか?もしも奥様の方から連絡が有った時は毅然と断って、トラブルにならない様に、すぐに私に連絡しろと言いませんでしたか?お金の事まで言いたくはないが、私はあなたのお姉さんに頼まれて、お姉さんの同級生というだけで、儲けも考えずに引き受けているのですよ。これ以上まだゴタゴタするのなら、私はこの件から降りる。」
結局、稲垣が私に分割で1千万を支払い、もう妻と会えない様に、次に約束を破った時には5千万を支払うという事に署名させ、それとは別に、稲垣が妻へ解決金として五十万支払う事で決着しました。
本当は強姦が認められずに、逆に名誉毀損で訴えられようとも妻に訴えさせて、もっと稲垣を苦しめたかったのですが、私にもこの事を仕組んだ負い目が有り、妻が法廷で取り乱し、美人局をした事までばれるのを恐れてしまい一応示談としましたが、示談にした1番の理由は、私の中で急速に力が抜けて行くのを感じていたからです。
そんな中、ただ一つ嬉しかった事は、稲垣が1千万を即金で用意出来ない事でした。
離婚した事も有り、考えていたよりも稲垣の懐事情は厳しいらしく、私に分割を頼み、何度も頭を下げる姿には多少ですが心が癒されました。
  1. 2014/10/09(木) 08:59:27|
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インプリンティング 第55回

2人が帰り、妻が稲垣の愛撫に感じてしまった事で、今後どうするかを考えていると、突然妻が言い難そうに。
「あなた、その五十万は私に頂けませんか?」
妻は稲垣の奥さんから、慰謝料として百万請求されていたと知りました。
奥さんは、妻が稲垣にずっと騙されていたと思っているので、この様なケジメだけの金額で許してくれたのでしょう。
長年苦しみ、この様な結果になってしまった奥さんの気持ちを考えると、また徐々に怒りで力が漲って行くのを感じます。
「おまえは奥さんにこれだけの事をしておいて、たったの百万で済ませるつもりか?」
「典子さんに償いたいけれど、今の私には百万のお金も有りません。」
「そうだな。2人で溜めたお金は、離婚に成った時に全て放棄すると決めていたので、いつ離婚になっても不思議で無い今、おまえは一切使えない。それにしても情けない女だ。奥さんの一生を駄目にしておきながら、償いはお金でしか出来ない。しかし、そのお金すら無い。奥さんが温情を掛けてくれて、たった百万で許してくれようとしているのに、それすらもまだ五十万足りない。」
「お願いです。五十万貸して下さい。お願いします。」
「そうだな。奥さんに迷惑はかけられない。五十万貸そう。その代わり保証人を付けてくれ。おまえの様な平気で嘘をつける人間に、保証人も無く貸す気にはなれない。」
保証人など頼める相手がいない妻は、声を殺して泣いていました。
話を聞いた時から百万出すつもりでいたのですが、素直には出せません。
「保証人が無理なら、俺が選んだ所で働くか?」
「・・・・離婚は・・・・・・・・はい、働かせて下さい。」
「そうか。それなら探してきてやる。最近は熟女専門の所も結構有るそうだ。旦那の俺が言うのも変だが、智子は童顔だから化粧の仕方によっては30代前半でも通るかも知れないし、何と言っても色白で乳がでかい。その上淫乱とくれば人気が出るぞ。おまえの様な平気で嘘をつける女の方が、お客に合わせて色々な人格の女になり切れるだろうから、向いているかも知れない。稲垣に教え込まれたテクニックも有るだろうし、もしかすると、これは天職かも知れないぞ。」
「えっ・・・仕事というのは・・・・・・。」
「それで良ければ明日、百万おろして振り込んで来い。それと、その汚い陰毛は何とかしろ。よく稲垣は、そんな汚い身体を抱こうとしたな。そのままだとお客が興醒めしてしまう。そうだ、全て剃ってしまえ。その方が、おまえの大人しそうな顔と淫乱な身体とのギャップに、きっと客も喜ぶ。」
こんな事を続けていては、いつか妻が9年前の様に精神的におかしくなってしまいます。
それ以上になってしまうかも知れません。
しかし、妻に対していつまでもこの様な陰湿な事が言える私は、すでに狂っていたのかも知れません。
翌日、妻の作った物を食べる事の出来ない私は1人で食事に出掛け、少し呑んでほろ酔い加減で帰宅すると、娘が寝て静まり返った家のキッチンで、妻は啜り泣いていました。
「どうした?稲垣に会えなくて寂しいのか?」
「明日入金になる様に、あなたがお昼寝をしている間に、典子さんの口座に百万振り込ませて頂きました。」
「そうか。風呂に入るから着替えを持って来い。」
昨日の事を、まさか真に受けてはいないと思っていた私は、そのままバスルームに向かおうとしました。
  1. 2014/10/09(木) 09:15:04|
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インプリンティング 第56回

私がキッチンを出ようとした時、呼び止めるように妻が。
「昨日のお話しですが、お勤め先を探して下さい。」
「なに・・・・・・。」
「今日1日中考えていたのですが、私だけが罰を受けていない。離婚もされず変わらない生活をしている。辛いと思う時も有るけれど、それは私自身が招いた事で、辛いと思う事自体、私には贅沢な事です。どの様な辛いお仕事でもして、お金だけでも稼いで償って行かなければならない。
あなたへの慰謝料も考えると、普通のお仕事ではとても償ってはいけません。」
同情をかう為に、この様な事を言っていると思った私は。
「毛の処理はしたのだろうな?パンティーを下げて、スカートを捲って見せてみろ。」
妻のそこは幼い娘の様に陰りが有りません。
良く見えるように椅子に座らせ、足を大きく開かせると幼い娘のそことは違い、黒ずんだ襞が飛び出している分、凄く卑猥に見えます。
私の物は、妻の浮気を知って以来、初めて首を持ち上げたのですが、妻の顔を見るとまた元に戻ってしまい、黙ってバスルームに行きました。
妻の決心を知り、私は湯船に浸かりながら、何と言ってこの事態を回避するかを考えていました。
嫌がらせにせよ、私から言った事なので止めてくれとは言えません。
しかし、妻をその様な所で働かすつもりは勿論有りません。
無いどころか、そんな事は耐えられません。
結局私は、まだ妻を諦めてはいないのです。
娘の為だけで無く情け無い事に、こんな妻でもまだ愛していると知りました。
ニュースで凶悪犯と行動を共にして、逃げ回っている女を見た時、この女は何を考えているのだと思いましたが、愛は条件では有りません。
愛してしまえば、相手が凶悪犯であろうと、自分を裏切った人間であろうと、愛には関係無いと知りました。
それなら素直に、今の妻を受け止めれば良いのですが、それが私には出来ません。
それが出来ずに苦しんでいます。
その意味では凶悪犯の女よりも、自分を出せない私は駄目な人間なのでしょう。
今回は素直に、あれはただの嫌がらせだと話そうと考えていた時、今の妻は私だけを愛しているのか考えてしまいました。
この様な妻でも私が諦め切れないのと同じで、稲垣に裏切られた妻もまた、今でも稲垣の事を愛している可能性を否定できません。
そう思うと、やはり私は妻に優しくはなれないのです。
「おまえは今まで、俺に逆らわずによく耐えていると思っていた。稲垣を騙した時も素直に従った。だから今回、智子を試した。もう俺を裏切らないのか試した。自分が苦しくなった時でも、俺を裏切らないのか試した。もう俺以外の男には、絶対に抱かれないか試した。しかし今回お金の事で苦しくなり、俺が少し言っただけで、お金の為に他の男に抱かれると言う。もう俺以外の男とセックスする事は、智子にとって死ぬよりも辛い事だと思っていたが、そうではなかった。」
「では、どうやって償えば良いのですか?あなたに逆らえば償えない。あなたに従おうとしても償えない。私だって知らない男に触れられたくは無いです。好き好んでその様な仕事はしたくない。私はどうすればいいの?」
「知らない男に触られたくない?俺以外の男に触られたくないとは言わないのだな。知っている稲垣なら、触られても良いのだな?それとも、おまえとセックス出来ない俺よりも、稲垣に触られたいのか?だから感じてしまったのか?」
「違います。もう離婚して下さい。私はどうしたら良いのか分からなくなりました。お願いです。
離婚して下さい。一生懸命働いて、少しずつでも慰謝料を払って行きます。」
「やっと本音が出たな。稲垣と一緒になりたいのだろ?最初からそのつもりだったのか?それとも稲垣が離婚したので、一緒になれると思ったのか?そうか、分かったぞ。この間ホテルで俺が行く前に、その事も相談したのか。」
「違います。彼とはもう会いません。あなたに逆らえない。あなたに従っても駄目。別れる事も出来ない。私はどうしたら良いの?もう分からない。」
妻は泣きながら、走って娘の部屋に行ってしまいました。
  1. 2014/10/09(木) 09:15:57|
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インプリンティング 第57回

その日から、妻は変わってしまいました。
私の言った事に逆らわず、要求通りに何でもしてくれるのですが、今までの様に私の機嫌を取ろうとするような言動や行動は無くなり、言われた事を淡々とこなしている感じです。
顔からも喜怒哀楽の表情は消え去り、私への愛も無くなった様に感じました。
愛が無くなった様に感じると言う事は、私は意地を張っていただけで、多少なりとも愛を感じていたという事になります。
幼い娘も、私や妻の異変を感じ取っているのか会話も減り、笑う事も目に見えて少なくなり、このままでは私と妻の関係だけで無く、私と娘、娘と妻の関係さえも壊れてしまいそうです。
今まで思っていた以上に、このままでは駄目だと強く感じた私は、娘の為に離婚しないのではなくて、娘の為に離婚した方が良いのでは無いかと考える様になりましたが、やはり妻への未練が断ち切れません。
何より、妻と稲垣がまた付き合う事が出切る環境には、何が有ってもしたくは無いのです。
色々考えた末に思ったのは、このまま妻とやって行くには、妻を抱けるように成るしか無いという事でした。
口では愛を語れない分、肌で愛を感じ取ってもらおうと思ったのです。
いいえ、本当は私が妻の愛を感じたかったのかも知れません。
「服を脱いで、俺のベッドに来い。」
突然の私の言葉に妻は驚きの表情を浮かべ、その顔はすぐに泣き顔へと変わり、妻は急いでパンティー一枚だけの姿になると、ベッドに寝ている私に抱き付いてきました。
その様な妻を可愛いと思いましたが、やはりまだ妻の身体に嫌悪感をもっていて、抱き締める事も出来ません。
それどころか手で突っぱねて、引き離したい衝動に駆られてしまいます。
私はしっかりと目を瞑り、これは妻では無いと考える様にしました。
以前から可愛いと思っていた、近所の奥さんを必死に思い浮かべて、何とか乳房に触れることは出来たのですが、それは愛撫とは程遠く、これでは駄目だと思っていても、これが私の限界でした。
次の日も、また次の日も、毎日妻を誘って試みたのですが、結果は何も変わりません。
有る時は、近所の奥さん。
有る時は、我が社のマドンナ的存在の女の子。
また有る時は、妻と同じで胸が大きく魅力的な顔立ちの、数回しか会った事の無い妻の姉まで思い浮かべましたが、やはり何も変わりません。
このままでは一生駄目だと思った私は、ついに賭けに出る事にしました。
稲垣と妻とのセックスを知らない私は、想像ばかりが大きく膨らみ、その事で余計に駄目になっていると思ったのです。
しかしこれは、吉と出れば良いのですが、凶と出た場合、今よりも酷い状態に成る事は目に見えています。
「このままでは、いつまで経っても駄目だ。智子も俺とセックスがしたいか?おまえの本心を教えてくれ。」
「あなたに抱かれたい。以前の様に、あなたを私の中に感じたい。」
「それなら協力してくれ。俺の頭の中では智子と奴のセックスが、とんでもなく凄い事をしていた様に、妄想が膨れ上がってしまっている。真実を知れば、少しは良くなるかも知れない。智子は正直に、有りのままを話せる自信が有るか?」
妻もまた、セックスが私と元に戻れる近道だと感じている様で。
「それで抱いてもらえるのなら、それであなたが楽になれるのなら、何でもお話しします。」
本当は1年以上に及ぶセックスを、順序良く全て知りたいのですが、焦っていた私は気になっていた事を続けざまに尋ねました。
「おい、男の性器を何と言う?」
私の突然の質問に、妻は少し躊躇しましたが。
「・・・・オチ○チン・・・・ですか?」
「稲垣は何と呼ばせていた?違う呼び方をさせていたよな?あの日テーブルの上で感じてしまっていた時に、智子は違う言い方をした。何と言わされていた?」
「・・・・・・・・チ○ポ。」
「我を忘れてしまっていた時に、自然とその言葉が出たと言う事は、ずっと、毎回の様に言わされていたのだろ?そんな言葉をどの様に仕込まれた?」
妻は私に全て話す事が、自分に残された最後の方法だと思っている様で、私の質問に対して、その時を思い出しながら、詰まりながらですが詳しく話してくれました。
身体の関係を持ってからしばらくは、稲垣が愛撫をしてから交わるという、比較的ノーマルなセックスが続き、妻を愛撫する時などは、妻の身体を労わる様に優しく扱ってくれたと言います。
妻が逝きたい時に逝かせてくれ、硬い物を欲しくなったら、言えばすぐに入れてもらえました。
しかし、関係を持って2ヶ月を過ぎた頃から、稲垣は徐々に本性を現し始めます。
本来稲垣は、女に奉仕するのではなくて奉仕させるのが好きで、自分の思い通りに支配したかったのです。
これは幼い頃から、母親や姉に押さえつけられて来た事の反動かも知れません。
  1. 2014/10/09(木) 09:16:54|
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インプリンティング 第58回

ある土曜日の午後、稲垣のアパートに行って、いつもの様に掃除をしていると、妻のお尻や胸をじっと目で追いながら、ベッドで横になっていた稲垣が。
「いつまで掃除をしている気だ?もう掃除はいいから、ここに来い。」
「こんな昼間から、駄目です。」
「文句を言うな。智子は私の言う通りにしていればいい。今日から私に逆らう事は許さん。早く来い。」
今まで稲垣は、妻に対して比較的紳士的な態度で接していたので、妻は命令口調で話す稲垣に驚いて立ちつくしていると、稲垣は妻の腕を掴んで引き寄せ、ベッドに押し倒すと上に乗ってキスをして来ました
「待って、シャワーを使わせて下さい。」
稲垣はそう言う妻の言葉など無視して、妻のブラウスを荒々しく剥ぎ取り、妻は弾け飛ぶボタンを見た時、稲垣の豹変振りが怖くなり、稲垣に従うしか有りませんでした。
稲垣は、逆らえなくなった妻を全裸にすると、自分も急いで服を脱ぎ、全身を舐める様に命じると、自分はじっと寝ているだけで何もしません。
妻は稲垣の首筋から足の爪先まで、言われるままに舐めさせられ、その間稲垣の硬くなった物を、ずっと握らされていました。
「よし、今度は口に含め。」
命令されながらのこの様な行為は嫌だと思いながらも、口いっぱいに含まされている内に、気持ちとは裏腹に身体は感じて来てしまったそうです。
すると稲垣はそんな妻の変化を見逃さず、ようやく手を伸ばして、妻の1番感じる小さな突起をそっと触って来たので、触られた妻は、身体が感じてしまっていた為に、その少しの刺激だけでも我慢出来ずに、もう限界で有る事を稲垣に訴え続けました。
しかし、今までなら自由に逝かせてくれた稲垣が、今回は無情にも触るのを止めてしまい。
「口がお留守だぞ。誰が止めて良いと言った?」
それを聞いた妻が、夢中で硬くそそり立っている物に口や舌を使うと、稲垣はまた触ってくれるのですが、頂上に登り詰める寸前になると止められてしまいます。
「どうして?・・・お願い・・・もうお願い・・・・・。」
「また口がお留守だぞ。口を離したら、もう止めてしまうぞ。」
妻は何とか逝かせてもらおうと、また口に含むと今度は激しく頭を上下させたのですが、それでも直前で止められてしまいます。
口に含んでいても逝かせてもらえず、口での行為を中断して、その事を訴えようとすれば怒られ、妻はどうしたら思いを遂げられるのか分からずに、気も狂わんばかりの状態でした。
「智子は一人気持ち良くなるつもりか?私を気持ち良くしようとは思わないのか?」
そう言ってから稲垣が、上に跨って硬い物を自ら納めるように指示すると、その様な恥ずかしい行為が出来るはずは無いと思っていた妻は、躊躇する事も無く急いで跨り、稲垣の物を中に納めると、自ら腰を使い出してしまいました。
妻は少し動いただけで気を遣ってしまい、稲垣の胸に崩れ落ちてしまったのですが、今度は稲垣に下から腰を使われ。
「動かないで。感じ過ぎてしまう。少し待って下さい。」
そう言って稲垣の責めから逃れようとするのですが、しっからと抱き締められている為に逃れる事が出来ず、また徐々に妻の息遣いは荒くなり、腰も稲垣の腰の動きに合わせるかの様に動き出してしまうのですが、稲垣はその瞬間が来ると動くのを止めてしまいます。
「私を気持ち良くしろと言ったのに、また智子は一人で逝くつもりか?」
そう言われても妻は快感を途中で止められる事が耐えられずに、しっかりと抱き締められていて自由に成らない腰を、何とか動かそうと必死に稲垣の腕の中でもがいていました。
「仕方の無い奴だ。逝かせてやるから、私の何を智子の何処に入れられているか言ってみろ。」
もう妻には恥ずかしいなどと言っている余裕は無く、私とのセックスで言わされていた言葉を、大きな声で叫んでいました。
しかし稲垣の目的は、妻を自分だけに従う従順な女に調教する事です。
その為には、セックスをしている間だけでも、妻の中から私の存在を、全て消し去らなければなりません。
「違う。オチ○チンなどと、子供のような言い方をするな。これはチ○ポだ。それにオマ○コでは無くてオ○コだ。逝きたければ、硬いチ○ポを、智子の厭らしいオ○コに入れられていますと言ってみろ。」
稲垣のビデオで覚えたかのような言葉に、妻は逆らう事も無く、言われた言葉をはっきりと口にしていました。
「よし、今度からもそう言うのだぞ。忘れるな。」
稲垣は妻を抱き締めていた手を離すと乳房を掴み、上に押して座らせると。
「腰を前後に使え。上手いぞ。今度は上下に。そうだ、でもまだ逝くなよ。私ももうすぐ出そうだ。・・・・・・・・・よし逝ってもいいぞ。硬いチ○ポ気持ちいい。智子のオ○コ逝きますと言いながら思い切り逝け。」
妻は稲垣に言われた2つの言葉を、何度も何度も言いながら崩れ落ち、稲垣の熱い物を奥深くに注ぎ込まれました。
この日を境に2人のセックスは変わり、妻は稲垣の要求を何でも受け入れる、稲垣の従順な奴隷となってしまい、ホテルに行ってマッサージ用の大きなバイブで、気も狂わんばかりに責め続けられて失禁してしまった話。
卑猥な下着で稲垣一人の為の、ファッションショーをさせられていた話。
アパートでは、その様な下着と小さなエプロンしか身に着けることを許されず、その様な格好のまま掃除や洗濯、食事の用意をさせられ、稲垣がしたくなった時にはいつでも受け入れる事を義務付けられ、下着を着けたまま、大事な部分に開いた穴から入れられていた話。
最初は嫌なだけだった剃毛も、次第に剃られながら、濡らしてしまう様になってしまった話。
ローターを入れられたまま食事に連れて行かれ、我慢出来なくなった妻が稲垣にお願いして、店のトイレで逝かせてもらった話などを聞いて、私の賭けは失敗に終わり、妻に対する嫌悪感は更に大きくなってしまいました。
  1. 2014/10/09(木) 09:17:52|
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インプリンティング 第59回

私は自らの賭けに敗れ、追い詰められていました。
妻の作った物を食べる事も出来ず、これで完全に妻を抱く事も出来なくなった私は、妻の幸せも考える様になり、離婚と言う文字が頭から離れません。
その様な時、私の気持ちを後押しするかのように、上司に呼び止められ。
「君に行ってもらった例の現場で、不都合が生じたらしい。勿論我が社のミスでは無く、違う業者が請け負った箇所らしいのだが、その部分を修理しようと思うと、我が社の請け負った箇所にも影響が出て来るそうだ。先方は修理期間短縮の為に、慣れている君に来て欲しいと言っているが、私は他の社員を行かせようと決めた。急な事で、出発まであと4日しかないが、大体の段取りなどを君が説明してやってくれ。」
「私に行かせて下さい。」
言ってしまってから自分でも驚きましたが、これは妻との別れを決意した言葉でした。
「そうしてくれると、会社としては助かるが・・・・・・・。いや、それは駄目だ。」
「いいえ、私に行かせて下さい。行きたいのです。」
「俺が要らぬ事を言ったから・・・・・。駄目だ。君は行かせられない。」
しかし上司は、私の真剣で訴えるような目を見て。
「そうか。それなら頼む。今回は修理だけだから半年もあれば帰れる。何か不都合が出てそれ以上掛かる様なら、必ず代わりの人間を行かせる。・・・・・・すまんな。」
一度は決心したものの妻には言い出せずに、日本を発つ前日になってしまいました。
「今日は会社に行かなくても宜しいのですか?」
「ああ、またこの前の国に行く事になった。明日の朝早くに、別の業者と空港で待ち合わせている。今からその準備をするから、智子も手伝ってくれるか?」
「今度も長いのですか?」
「それを聞いてどうする?もうおまえには・・・・・いや、やめておこう。悪かった。」
私の悲壮な表情や言葉から全てを悟った妻は、泣きながら当座の下着などを揃えてくれました。
その夜、妻の欄には既に署名捺印して有る離婚届に、私も署名捺印し。
「これが2人にとって1番良い方法だと思う。慰謝料もいらないし、帰ってから財産分与もきちんとする。理香の事だが、親権は智子でいいが、帰って来てからは俺が会いたい時には自由に会わせろ。出来れば土日は一緒にいたい。詳しい取り決めは俺が帰って来てから、また相談しよう。」
「ごめんなさい・・・・全て私が・・・・・ごめんなさい。」
「いや、そんな事はもうどうでもいい。智子も自分の将来の事をよく考えて、頑張って幸せになれ。」
「ごめんなさい。私の作った物を食べないのは、私に対する嫌がらせでは無くて、身体が受け付けてくれない事も知っていました。何とか少しでも私を許してくれようと、汚れてしまった私の身体を、抱いてくれようと努力していてくれた事も知っていました。別れたく無いけれど、これ以上あなたを苦しめ続ける事は出来ないし、私からは離婚について何も言える権利は有りません。」
「俺だけで無く、この方が理香にとってもいい。勿論・・智子の為にも・・・・・・。」
「長い間ありがとう。私にはもう幸せになる権利なんて無いけれど、あなたには必ず幸せになってもらいたい。本当に今までありがとう・・・・・・・・・・・ありがとう。」
今までに見た事も無い様な、寂しそうに涙を流す妻を見ていると、私も涙を堪え切れませんでした。
「俺は明日早いので、親父とお袋には電話で話しておくから、証人の欄には親父とお袋に署名してもらって、智子が出しておいてくれ。これで智子も自由だから、この家を出たら・・・・・・・。」
稲垣の所に行くのかとは、流石に辛くて聞けませんでした。
  1. 2014/10/10(金) 01:49:05|
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インプリンティング 第60回

私は毎晩のように浴びるほど酒を呑み、休日の朝は、必ず違った女が横で寝ているという生活を送っていました。
ここは都市部ではなく、それほど大きくは無い街でしたが、それでも、その様な女性をおいている怪しげな店は三軒ほど有ったので、女の調達には困りません。
この国の女性は情熱的で腰の動きも激しく、一緒にいる間だけは、稲垣と暮らしているはずの妻の事を忘れさせてくれます。
しかし部屋に1人でいると、いくら酒を呑んでも稲垣の上で同じ様に、腰を激しく使っている妻の姿が浮かんでしまい、一人涙を流す日も少なく有りませんでした。
その様な事を繰り返していて一ケ月が過ぎた頃、私の下で働いていた現地の人間に、夜になると離婚した女性や未亡人が集まって来て、客を誘っている場所が有ると聞き、店の様に若い娘はいないが、料金も安くてサービスも断然良いと言うので行ってみると、そこには肉感的な身体の線を強調した服を着た何人もの女性がいて、中には小さな水着だけを身に着けただけの女性もいます。
私はその中から、真っ赤なパンティーが透けて見える、身体に張り付いた白いミニのワンピースを着た女性と、身振り手振りで交渉してホテルに行くと、部屋に入るなり、いきなり私のズボンとパンツを下げて口に含み、その後も朝まで私の物を離す事は有りませんでした。
その後は、ずっと彼女達のお世話に成っていましたが、話しに聞いた通り彼女達のサービスは凄く、私が出した後もすぐに口に含まれ、回復すると自ら跨り腰を激しく使われて、朝まで寝かせてはもらえません。
彼女達は後ろ盾も無く、自分で客を拾えなければ生活出来ないので、また誘ってもらえる様に、必死にサービスしていたのだと思います。
私は一時でも妻を忘れたくて、そんな彼女達に溺れていき、週末だけだった女遊びも週に2日となり、3日となった頃、化粧だけは皆と同じ様に濃いのですが、彼女達の一歩後ろにいて、目が合うと俯いてしまう普通の格好をした、妻の様な優しい目をした女性が気になり、彼女達を掻き分けて誘ってみると、その時は嬉しそうな顔をしたのですが、ホテルに入るとまた俯いてしまい、彼女達の様に自分から服を脱ごうともしません。
しかし、いざ始まってしまうと、何かを忘れたいかのように積極的に私を求め続け、喘ぎ声も大きくて凄い乱れ様でした。
私は毎回そんな彼女を誘うようになり、何度か一緒に朝を迎えている内に分かった事は、彼女は30歳で私と会う一ケ月前に夫を病気で亡くし、小さな子供が2人と病弱な母親がいる為に生活に困り、あの場所に立つ様に成ったのですが、まだ恥ずかしくて消極的だった為にお客がつかず、私が初めての客であった事です。
私は、毎日の様に彼女を誘い、終には彼女の家に転がり込んで生活する様になってしまい、薄い壁一枚隔てた隣に子供達や母親がいる事もお構い無しに、毎晩の様に妻を忘れさせてもらっていました。
その頃にはその事で、一緒に働く現地の人間に後ろ指を指されるようになっていましたが、仕事はきちんとこなしていたので、妻を失って自棄になっていた私には、何を言われようとも気になりません。
その様な生活をしていて半年が過ぎ、ようやく修理も終ったのですが、私は会社を辞めて、このままこの国に残ろうかと真剣に考えていました。
日本に帰ったところで、何も良い事は有りません。
妻と稲垣が、仲良く暮らす側で生きて行くのが辛いのです。
しかし娘の事は気になり、娘の近くで暮らしたい感情の方が勝り、一緒に暮らしていた彼女には、この国では大金と言える額のお金を渡して、帰国する事を告げました。
ところが、お金の為だけに私に尽くしてくれていると思っていた彼女が、私と別れたく無いと言って抱き付いて来て泣き叫び、私を必死に止める姿を見た時は日本に連れ帰り、一緒に暮らそうかとも思いましたが、彼女には病弱な母親を残して行く事は出来ません。
そう言うと聞こえは良いのですが、仮に母親の事が無かったとしても、情は有っても、彼女に対しての愛情は、そこまで無かったのかも知れません。
彼女にしても、心細さから誰かに頼りたかっただけで、私を愛していた訳では無かったと思います。
しかし別れは辛く、後ろ髪を引かれる思いで帰国し、真っ先に娘に会いたかったのですが、私には居場所が分かりません。
  1. 2014/10/10(金) 01:50:19|
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インプリンティング 第61回

妻の携帯に電話しても、解約されているらしく繋がらず、私の実家には何処に住んでいるのか必ず連絡を入れておく約束だったのですが、その約束も守られている自信は有りません。
しかし、今のところ他に方法も思いつかず、あまり期待もせずに実家に顔を出すと、そこには新しいピアノが置いて有りました。
「このピアノは?」
「ああ、お友達が始めたらしくて、どうしても理香ちゃんが習いたいと言うものだから、お爺さんが買ってあげた物だよ。お爺さんは理香ちゃんに甘いから。」
そう言う母も、父に負けないぐらい娘には甘いのです。
「理香はここにいるのか?智子は理香をおいて出て行ったのか?」
私はてっきり、自分達が楽しむ為には娘が邪魔な稲垣に言われ、他に行く所の無い妻は仕方なく、娘をおいて出て行ったと思いました。
「何を言っているんだい。智子さんもお前の家を出てから、ずっとここに住んでいるよ。」
「ここに住んでいる?どうして?智子は出て行く約束だったのに。」
「だから約束通り、おまえの家は出たじゃないか。その後何処に住もうと智子さんの自由だろ?」
「でも可笑しいだろ?俺と智子は離婚したのだぞ。その智子が俺の実家に住んで居たのでは、どう考えても変だろ。」
「離婚?おまえ達はもうしているのかね?証人を2人書く欄が埋まらなくて困っていたから、勝手に決めずに、おまえが帰ってから誰にするか話し合えと言っておいたから、離婚届はまだ出さずに持っていると思うよ。」
「証人は親父とお袋に頼んだはずだ。書いてくれなかったのか?」
「ああ、いざ書こうと思ったら気が変わった。あんな縁起の悪い物に名前を書いたら、良い死に方も出来無い様な気がして、私もお爺さんも断った。」
私は母の意図を測りかねました。
「理香と智子は今何処にいる?」
「時差ボケかい?時計を見てごらんよ。理香ちゃんは学校に決まっているだろ。智子さんは、お爺さんの友達がやっている部品工場で働いているよ。おまえも知っているだろ?ほら隣町の。車で通っているから5時過ぎには帰ってくるけれど、おまえとゆっくり話している時間は無いと思うよ。その後6時からコンビニの仕事が待っているから。」
「部品工場の後、コンビニ?」
「ああ。部品工場だけにしておけと言ったのだが、どうしても働きたいからと言うもので、何か有った時に無理が言える様に、おまえの同級生がやっているコンビニを、私が紹介してやったのさ。ほら、おまえが中学の時仲の良かった・・・・・。5時に起きて私達や理香ちゃんの朝食の仕度や洗濯をしてくれる。8時までには工場へ行って5時過ぎに帰り、6時までにコンビニへ行って夜中の12時まで働いて、帰って来てから夕食を食べて、その後片付けをしてお風呂に入るから、寝るのはいつも1時半を過ぎている。理香ちゃんの学校の用意で2時を過ぎる事も有る。
土曜日も休みでは無いから、ゆっくりと出来るのは日曜だけ。ゆっくり出切ると言っても夕方からはまたコンビニに行くから、たまにはゆっくりと寝坊でもすればいいのに、普段理香ちゃんに構ってやれないからと言って、早く起きてずっと理香ちゃんと一緒にいる。このままだと身体を壊すからと言っても聞かない。」
「どうして、そんな無理な事を?」
「おまえと相手の奥さんに慰謝料を払いたいそうだ。相手の奥さんには良いとして、おまえに慰謝料だなんて・・・・・・。第一おまえはまだ離婚したいと思っているのかい?」
私が日本を離れてから、妻と母の間にどの様な会話が有ったのかは分かりません。
生半可な覚悟でここまでは出来ないと思うので、妻の努力は認めます。
しかし、その事と私達の離婚の話は別で、私には上手くやって行く自信が有りません。
  1. 2014/10/10(金) 01:51:40|
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インプリンティング 第62回

母は私達の離婚を止めさせたい様でした。
最初は、可愛い孫を失いたくない想いからだと思っていましたが、それだけでは無いようです。
「どうしても離婚したいのかい?理香ちゃんの為に、おまえは己を捨てる事も出来ないのか?」
皮肉なもので、以前妻から聞いた稲垣の鮭の話を思い出しました。
鮭の様に、命を捨ててでも子孫の為に激流を傷付きながら上る。
私にも娘の為に、命を捨てる覚悟は有ります。
しかし、私と妻が我慢をして一緒にいる事が、必ずしも娘の為に良いとは思えませんでした。
「これは俺だけの為では無い。智子の為、理香の為にもその方が良いと思った。」
「本当にそうかな?智子さんから全て聞いたが、おまえが智子さんを許せないだけでは無いのかい?智子さんは一時、2人の男を愛してしまった。いくつになっても、結婚していて例え伴侶がいたにしても、誰にでも他に恋心を持ってしまう事は有るし、その気持ちまでは縛れない。しかし、そうかと言って行動に移してしまった事は、確かに許せる行為ではない。でも一度失敗をしてしまった者は、どんなに努力をしても許されないのだろうか?どんなに反省しても、もう許されないのだろうか?それはおまえが決める事だが、おまえは、おまえだけを愛している智子さんが好きだったのか?それとも、智子さんそのものが好きだったのか?智子さんにおまえ以外にも好きな人がいると、もしも結婚前に分かっていたとしたら諦めていたか?智子さんに対する愛情もそれで冷めていたか?その程度の想いだったのか?それとも、それでも良いから、何が何でも智子さんを自分のものにしたいと思っただろうか?」
母の言う事も分かるのですが、身体が拒否している今、何を言われても無理なものは無理なのです。
「相手がどう思っていようと、俺は愛しているでは駄目なのか?智子さんと話していて、支店長の事も愛したかも知れないが、今はおまえだけを愛している様に私は感じる。凄く強い愛を感じる。反省した智子さんを、今の智子さんを見られないのか?」
「お袋の言いたい事は分かる気もするが、これは裏切られた人間で無いと分からない。お袋と親父のように、愛し愛されてやってきた人間には分からない。」
「そうかい。これは一生おまえ達には言わずに、お墓の中まで持って行こうと思っていたが、昔私もお爺さんに裏切られた事が有る。」
母の告白はショックでした。
私は物心がついてからずっと、我が家はかかあ殿下で父はいつも母の後ろで笑っている、大人しい人間だと思っていました。
父は酒も呑めず、タバコも吸わない真面目で大人しい人間だと思っていました。
ところが信じられない事に、昔は大酒呑みでヘビースモーカー。
何か気に食わないことが有れば母に手を上げ、外でもすぐに他人を殴るような、荒くれ者だったそうです。
その上絶えず女の影が有り、その事を言えば暴れるので、母はいつも泣き寝入りでした。
母の話しに、私は動揺を隠し切れませんでしたが。
「・・・・でもそれは・・・・智子の浮気とは・・・・。」
「まさか、男の浮気は甲斐性で、女の浮気は裏切りだなんて言わないだろうね?」
「そんな事は言わないけれど・・・・・・・・・・。いつから親父はあの様に変わった?」
私は母の話しに、固唾を飲んで聞き入っていました。
  1. 2014/10/10(金) 01:53:08|
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インプリンティング 最終回

母はずっと父の浮気には目を瞑っていましたが、ある時、どうしても許すことの出来ない浮気を知り、気が付くと私を背負い、兄の手を引いて橋の上に立っていたそうです。
そのまま川に飛び込もうとした時、兄が泣き出し躊躇していると、私達を探し回っていた父が見つけて駆け寄り。
「俺が悪かった。死なないでくれ。おまえ達を死なせる訳にはいかない。おまえ達が死ぬぐらいなら俺が死ぬ。」
そう言うが早いか、川に飛び込んでしまいました。
幸い死に切れずに何とか岸へ泳ぎ着いたのですが、父はその日を境に一滴も酒を呑まなくなり、タバコも完全にやめて、ずっと母には気を使って来たそうです。
父は酒とタバコを止める事で母に対して、改心した自分を分かって欲しかったのだと思います。
「お袋は、よく忘れる事が出来たな。どうやったら忘れる事が出来た?」
「忘れる事なんて出来ないさ。最初の頃は何とか忘れようとしたけれど、努力しても忘れられるものでも無いし、忘れようとする事をやめたら、逆に気が楽になったよ。今でもたまに相手にも会うし、未だにその頃の事を夢に見る事も有る。」
「今でも相手に会う?」
「ああ、ここまで話したから全て話してしまうが、相手は妹の良子だよ。他の浮気は我慢出来ても、この浮気だけは許せなかった。」
「えっ、良子叔母さん?」
私は母の辛さを知りました。
私の数倍は辛かったと思います。
もしも妻の相手が私の兄だったなら、私はどうなっていたか分かりません。
「教えてくれ。どうやって2人を許した?」
「おまえには偉そうな事を言ったが、まだ許してはいないのかも知れない。ただ、それはあの頃のあの人を許していないだけで、今のお爺さんは遠に許している。あの頃とは違う人だと思っている。」
「お袋は幸せか?」
「ああ、幸せだね。死ななくて良かった、あの時別れなくて良かったと心底思っている。あの頃のお爺さんは今でも嫌いだけれど、その後のお爺さんは大好きさ。息子の前で惚気るのも嫌だが、川に飛び込んだ後のお爺さんを愛している。」
私は母の車を借りてコンビニへ行き、同級生に無理を言って妻を解雇してもらい、実家に戻ると娘はピアノのレッスンに、釣りから帰った父が連れて行ってくれていて、暫らくすると妻が帰って来ました。
「あなた・・・・・・・・・。」
私の顔を見るなり、妻の目には涙が溜まり。
「お帰りなさい、ご苦労様でした。・・・・・・・・いつ戻られたのですか?」
そう言い終ると、溢れた涙が頬を伝っていました。
「今日帰って来た。2人だけで話が有るから家に帰ろう。」
娘の事は母に頼み、妻と2人で家に帰ると向かい合って座りました。
妻を見ていると、稲垣の所には行かずに頑張って来た、袖口が油で汚れた色褪せたTシャツを着て、終始俯いている妻を愛おしく感じます。
「頑張っていたそうだな。いくら溜まった?」
「お義父さんやお義母さんはいらないと言って下さったけれど、少しですが生活費も払わせてもらっていたので、まだ百万ぐらいしか溜まっていません。あなたに借りた五十万を返すと、残り五十万しか有りません。車を勝手に借りていたけれど、あなたが帰って来たから返さないと。工場やコンビニに行くのに車がいるから、五十万で車を買うと・・・・・・・。」
「奥さんに慰謝料をいくら払うつもりでいる?」
「お金では償えないけれど、百万では余りにも少ないから、あと二百万受け取ってもらおうと思います。」
「貯金の半分は智子の物だから、それを使えば良かったのに。」
「それは、全て放棄するという約束だったから。」
「2人に借金が有っては大変だから、明日二百万下ろして振り込んで来い。後は俺に一億と二百万払え。」
「ありがとう。でもあなたへの一億はこのままではとても払えません。でも、頑張って払えるだけ払って行きますから、それで許して下さい。」
「いや、全額払ってもらう。一億と二百万払ってもらう。」
「ごめんなさい・・・・・それは無理です。」
「いや必ず払ってもらう。ずっと俺と一緒にいて、俺に尽くせ。一年二百万で雇ってやるから、今から51年間、俺の側にいて尽くせ。その前に俺が死んでも、おまえは必ずあと51年生きて、俺に尽くせ。絶対に俺よりも先に死ぬな。その為にも、もう無理をせずに体を大事にしろ。それまで離婚届は預かっておく。」


多くの感想や励まし、またはお叱りを頂きまして、ありがとうございました。
それに対する返事も書かずに、ごめんなさい。
お許し下さい、失礼致します。
  1. 2014/10/10(金) 01:54:49|
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よき妻 第1回

結婚して三年経った頃のことです。当時の私は妻の気持ちをはかりかねていました。
本当に愛されているのかどうか、いつも疑問に思っていました。
妻、瑞希は私よりも五歳年下の三十歳。すらりとした痩せ型の体型、少し冷たい印象を与える顔立ちは整っていて、まず美人といえるでしょう。
夫婦の間に子供はいません。

瑞希とは見合い結婚でした。私は見合いの席で出会ったときから、瑞希の端整な容姿や、年に似合わぬ落ち着いた物腰に惚れこんで、懸命に求婚しました。瑞希はそれを受け入れてくれました。いつものように感情の分かりにくい顔で。

結婚してすぐに分かったのですが、瑞希は妻としては非の打ち所のない女でした。元来、働くのが好きな性質であるらしく、専業主婦となってからも、家事に手を抜くことなどまったくありません。友達の主婦連と亭主そっちのけで遊び回ることも皆無です。

しかし、私は不満でした。というより、不安でした。

瑞希は表情に乏しい女です。いったい何を考えているやら、どんな気持ちでいるのやら、よく分かりません。おまけに無口です。私が気を遣ってあれこれと話しかけても、たいていは冷静で抑揚のない相槌を打つだけで、私はのれんに腕押しのような気分になります。

私は騒々しい女が嫌いだったので、瑞希のそんな静かな佇まいが最初は好もしかったのですが、結婚してしばらく経つと、あまりに妻の気持ちがつかめないことに苛立ちを感じるようになっていきました。見合い結婚ということもあり、妻が自分をどう思っているのか、本当に夫として愛しているのか、気になっていました。

夫婦間の愛情確認といえば、夜の営みもその大きな要素であると思います。しかしそれも上手くいきませんでした。
私からベッドに誘えば瑞希は否ということはありませんでしたし、彼女の裸は見た目そのもののようにすっきりとしていて、若々しい肌の手触りは最高でした。私も最初は大いに発奮して、ベッドの上ではなんとか主導権を握ろうと、あれこれと趣向をこらしたのですが、妻はそんなときでさえ至極冷静で、声をあげることもなく、私はお釈迦様の掌にのせられた孫悟空のようなむなしさを感じ、やがて冷めてしまいました。

結婚当初の私はこのうえなく幸福な人間でした。それがいつの間にか始終いらいらとした人間に変わっていったのです。それほどまで心をかき乱されるほど、私は瑞希にのぼせていたと言えるのかもしれません。しかし、不幸なことに私も瑞希ほどではないにせよ、自分の気持ちを率直に伝えることが不得手な人間でした。しかも、そのことに当時の私は気づいていませんでした。
  1. 2014/10/11(土) 03:38:34|
  2. よき妻・BJ
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よき妻 第2回

私たちの住むマンションの一室はいつも清潔に管理されていて、塵一つ落ちていません。その完璧さ、静謐な趣は、妻の人柄そのもののようでしたが、私はいつしかその家に居るときに、安らぎよりも重苦しさを感じるようになっていきました。

もともと私は品行方正には程遠い人間です。瑞希と結婚した当初は、だらしない所業とは縁を切り、よき夫になるべく努力しようと心に誓ったものですが、当時の私はそんなことさえ忘れはて、夜の街で酒や女に溺れる生活に逆戻りしはじめていました。

そんな私を見つめる妻の瞳には、さすがに沈んだ色が濃くなっていたように思います。しかしどんなときも彼女は何も言わず、自分を崩すこともありませんでした。そのことが私をますます苛立たせます。暗い孤独が私を満たし、時には八つ当たりとしか言えない怒りを妻にぶつけるようになりました。私は日々、荒んでいきました。

ある夜のことでした。仕事を終えた私は、高校時代の旧友で赤嶺という男と久々に待ち合わせて、いっしょに夜の街に繰り出しました。
この赤嶺という男は昔からどこかひとを食ったようなところがあり、一風変わった凄みを感じさせる人間でした。当時はアダルトビデオの製作などを主たる業務としている、S企画というプロダクションに勤めていました。
そんな仕事をしている男だけに、いかがわしい遊び場などには詳しく、若い頃はよく彼に付き合って悪い遊びを教わったものです。

「久々に会ったってのに、いまいち表情が暗いな。何かトラブルでも抱えているのか」
赤嶺の言葉に、私は顔をあげて彼を見返しました。酒場の暗い照明の中で、彼の鋭い目がじっとこちらを見ていました。
「分かるか。相変わらず目ざといな」
「何があったんだ」
私は赤嶺に妻との不和を話しました。
「そうか、あの奥さんがね。お前には出来すぎたひとだと思ったがなあ」
赤嶺も私の結婚式に出席してくれたので、妻のことは見知っています。
「しかし、お前も昔から女にはとことん弱い奴だな」
「お前みたいに割り切れないからだろうな」
「ふん。女なんてベッドに転がせば、なんとでもなるもんだ」
下卑た笑いを浮かべつつ、赤嶺はくっとグラスをあけました。
「たいした自信だな」
「お前こそらしくもなくメソメソしやがって。どこかおかしいんじゃないのか。それともよほど奥さんにいかれちまっているのか。たしかに美人だったけどな。美人なだけじゃなく、色気もあった」
「色気? それは眼鏡違いだぜ。あいつほど色気のない女をおれは見たことがないね」
妻のことを「あいつ」と呼んだのはその日が初めてでした。
「分かってないな。ああいう物堅い感じの女が一番そそるんだよ。とくに俺のような人間にはな」
「はっ、そんなものかな」
「そうさ。奥さんと結婚したのが、お前で残念だね。俺だったら奥さんの女としての性能を、最大限まで引き出してやれるんだがな」
女としての魅力とは言わず、性能と言ったところが、いかにも赤嶺らしい言い方です。
「ほざけ」
私は吐き捨てるように言いましたが、心の中では動揺していました。

夜遅くになって三軒目の酒場を出、さてこれからどうしようかというときでした。不意に赤嶺が言いました。
「お前の家、ここから近かったよな。次はお前の家で飲もう」
「バカを言うな。何時だと思ってる」
しかし、妻はまだ起きているだろう。私はそう確信していました。今までどんなに遅く帰っても、妻は先に寝ているなどということはありませんでした。
「いいじゃないか。たかが悪友ひとり、夜遅くに連れ込んだところで、そんなことに文句を言う女房でもないんだろ」
赤嶺は不敵な笑みを浮かべて言いました。妻もたいがい何を考えているのか分からない人間ですが、この男も相当なものです。

私はついに根負けして、赤嶺を自宅に連れて行くことにしました。

マンションに帰り着いたころには、もう深夜三時を回っていました。
鍵を回してドアを開けると、予想通り瑞希はまだ起きていて、玄関へやってきましたが、赤嶺の姿を目にして、はっと立ち止まりました。
「友達の赤嶺だ」
「どうも奥さん、お久しぶりです。結婚式以来ですな」
「きょうは久々に会ったから、これから家で飲みなおす。酒とツマミの用意を頼む」
非常識な私の言葉に、しかし瑞希はいやな顔をするでもなく、「分かりました」と一言だけ言うと、赤嶺に会釈をしてから家の奥へ消えていきました。
「たしかに相当なもんだな」
赤嶺がそっと私に耳打ちしてきました。
私は喉の奥で苦い気持ちを飲み下しました。
  1. 2014/10/11(土) 03:39:42|
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よき妻 第3回

「奥さんも我々に加わってくださいよ、男だけじゃ殺風景だ」
ツマミを運んでからまた台所に消えていきかけた瑞希に、赤嶺が声をかけました。
「わたし、お酒は」
言いながら、瑞希はそっと私を見つめてきます。
「・・・お客がそう言ってるんだ。座れよ」
私が低くそう言うと、瑞希は伏目がちにそっと私の横に座りました。
赤嶺はニヤニヤと笑いながら、そんな妻に粘っこい視線を向けていました。

私と瑞希がぎこちない様子でいるのに比べて、赤嶺は普段とまったく変わらず(話の内容はずっと紳士的でしたが)、気軽な口調であれこれと妻に話しかけます。妻は相変わらず伏目がちで、赤嶺の言葉に口数少なく答えていました。
やけ気味な私はぐいぐい酒を飲みんでいましたが、やがて気分がわるくなり、付き添おうとする瑞希をふりはらって浴室へ行きました。シャワーを浴びて戻ってくると、わずかに開いたドアから赤嶺の声が聞こえました。
「ご主人とは上手くいっていないんですか?」
私は廊下に立ち止まり、耳を澄ませました。
「・・・分かりません」
聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声で、妻が答えました。
「妙な答えですな。私は昔から彼を知っているが、どこか抜けてるものの、わるくない男ですよ。いったい何が不満なのかな」
「不満なんて・・・」
「あなたにはなくても、彼にはあるようですよ。あなたが冷たいと言っています。日常生活でも、ベッドの中でもね」
赤嶺の露骨な言葉に、私はかっとと頬を染めます。見えない妻の表情が気になりました。
「セックスはお嫌いですか?」
「・・・・・」
「ご主人では満足できない?」
「・・・・・」
妻は答えません。もはや耐え難くなった私は、居間のドアをさっと開けました。
驚く妻の顔。一方の赤嶺は平然とした表情です。
「どういうつもりだ?」
「別に。お前が聞きたくても聞けないことを、俺がかわりに聞いてやっているだけだ」
「そんなことは頼んでいない」
「じゃあ、お前は奥さんの答えを聞きたくないのか?」
私は―――答えかけて、言葉に詰まりました。
妻を見ました。
妻もまた、私を見返しています。瞳を大きく見開いて、その口は何かを訴えたがっているようにかすかに動いていました。
私は言いました。
「どうなんだ、瑞希。お前は俺では満足できないのか」
自分の声ではないような声です。
「俺では―――駄目なのか?」
「そんなことは・・・ありませんっ」
妻は答えました。陶器のような肌を赤く染め、いつになく感情のこもった声で。
「私はあなたが好きです」
「それなら何故いつも、あんなに冷ややかなんだ?」
「違うんです。ごめんなさい、違うんです。私は・・・ただ・・・」
その声には涙が混じっていました。
「ただ・・・恥ずかしくて」
そう言って妻は両手を顔に押し当ててむせび泣きはじめました。その顔は耳まで赤く染まっていました。
わたしはこのような妻の姿を初めて見ました。
「もういい。・・・きょうはもう帰ってくれ、赤嶺」
「分かった」
あっさりといって赤嶺は立ち上がりました。そしてわたしの肩をぽんっと叩くと、にやっと笑い、そのまま出て行きました。
まったくもって不可思議な男です。

私は妻のほうに向き直りました。
初めて感情を露わにした妻。その肩はいつもよりいっそう小さく、その身体はいっそう細く見えました。
私は妻へ駆け寄って抱きしめたい衝動に駆られました。しかしそうするかわりに私は言いました。
「許してくれ。瑞希はいい女だ。一方的に尽くしてもらって、俺からは何も出来なかった。そればかりか、ひどいことばかりしてしまった。俺は最低な男だ。こんな男とはもう別れたほうがいい」
泣いている瑞希の肩がぴくりと動きました。
「明日、離婚届をもらってくる。本当にすまなかった」
私はそれだけ言うと、一人、寝室へ行きました。

ベッドに何かが入ってきた感触で目が覚めたのは、何時ごろのことだったか分かりません。
ただカーテンの隙間から差し込む光は明るく、その光に照らされて、私はベッドに入ってきた妻の姿がはっきり見えました。
妻は裸でした。その瞳は涙で赤く腫れあがっていました。
何か言おうとした私の口を、瑞希の口が塞ぎました。
「ん・・・・」
キスをしたままの妻の手が、私の服のボタンを解いていきます。
私の手は自然に小ぶりで形の良い乳房へ伸びていきます。弾力のある滑らかな感触を楽しみ、その先端にある突起を親指の腹でなぞると、
「あう」
妻が小さく声をあげました。潤んだ瞳が私を見つめています。
私は衣服を脱ぎさって裸になりました。妻の細い身体を抱き寄せ、そのすべやかな肌を私の肌に重ねました。
妻の腕が私の首を抱きました。熱い息遣いとともに、私の口は再び妻の口に塞がれます。私が舌をさしいれると、妻も舌の愛撫で応えてきました。私はゆっくりとベッドに仰向けに倒れこみ、妻の身体がその上へ覆いかぶさります。やがて私の股間のものはしなやかな指につかまれ、妻の中へ導き入れられました。

「はっ・・・あっ・・・っ」

情熱的に動く妻の腰。私は右手で妻の締まった尻を掴み、左手で上下に揺れる乳房を揉みたてます。その柔らかさ、その冷たい肌の感触、そして何より今まで見たことのない、我を忘れた妻の表情に興奮をかきたてられ、やがて私は妻の中に濃くて熱い白濁をどろりと放って果てました。
  1. 2014/10/11(土) 03:40:45|
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よき妻 第4回

妻の中に出した後、私はそのまま軽く眠ってしまったようです。ふと目が覚めたときには、ベッドの中に妻の姿はありませんでした。
ぼうっとした頭で、私はベッドから起きだしました。
妻は浴室でシャワーを使っていました。
戸を開けて中へ入っていくと、妻はちらりと私を見て、また瞳を逸らしました。私はそんな妻を後ろから抱きすくめました。最初はこわばっていた妻の身体から、次第に力が抜けていくのが分かります。
「さっきは驚いた」
「・・・・・・」
「聞いてもいいのかどうか分からないが、あれはどういうつもりだったんだ?」
「・・・・・このままだとあなたが出て行ってしまう。そう思ったから」
妻は正面を向いたまま、細い声で呟くように言いました。
「私は不器用な女です。うまく喋れないし、うまく笑えないし・・・そんな私にあなたが不満を持っていることも知っていました。でもどうしても・・・恥ずかしくて」
私は常々、妻の気持ちが掴めないこと、妻が心を開いてくれないことに悩んでいましたが、妻のほうでも自分のそうした性質に悩んでいたのでした。
「あなたと結婚して、私はうれしかったんです。これからは私も変わっていけるとも思いました。でも、あなたがいろいろと気を遣ってくれているのに、私はうまくやれなくて・・・あなたを苦しませてしまって・・・」
「もういい、分かったから」
震える妻の肩をもう一度ぎゅっと抱きしめました。心臓の高鳴りが腕に伝わってきます。
妻は振り向いて私にキスをしてきました。私もそれに応えます。
しばらく抱き合って口付けを交わしてました。
むくむくと起き上がった私のペニスが腹に当たるのを感じて、妻はそのほうを見つめました。それから恐る恐ると言った感じで、勃起したものを細やかな手で掴みます。
妻はゆっくりとしゃがみこんで、いきりたった怒張を口に含もうとしました。私はそれを手で制して、
「フェラチオの経験はあるのか?」
妻は赤くなって、かすかに首を横に振りました。
「じゃあ、まだ今日はいい」
「・・・・いいんです、やらせてください」
そう言うと、妻は小さな口で私の男根を頬張りました。頭を前後に動かしながら、つたない舌使いで懸命に奉仕している妻に、私は今まで感じたことのない愛情を感じました。

その日は土曜日で会社は休みでした。私たち夫婦は週末をほとんど家から出ず、ただただベッドの中で絡まりあって過ごしました。それは今までのぎこちない時間を解きほぐすかのような、濃密なセックスの時間です。
妻の悩ましい表情、伸びやかな肢体、うねる腰、そして悦びを喰い締める仕草が、私を熱い欲望に駆り立てます。ふたりで繋がったまま、どろどろと溶けあっていく感覚は、他のすべてを忘れさせてくれました。

こうして私たち夫婦は以前よりも互いに近づきあうことが出来ました。一見、隙のない完璧さを持っていて、しかしその一方ではとても不器用で恥ずかしがりの妻を、私は深く愛しました。
そんなある日、赤嶺からの電話がかかってきたのです。
  1. 2014/10/11(土) 03:41:41|
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よき妻 第5回

妻との仲が改善されてからは、会社から寄り道することもなく帰ることが多くなっていたのですが、その日は赤嶺の誘いにのり、待ち合わせて一緒に行きつけの酒場へ行きました。

「ふうん、それで今のところは、奥さんと上手くやれているわけか」
グラスの氷をちりんと揺らしつつ、赤嶺は呟くように言いました。
「よかったじゃないか」
「まあ一応、お前のおかげかな。礼を言っとく。ありがとう」
「よせよ」
赤嶺は特有の不敵な笑みを浮かべました。
「別に俺はお前のことを考えて、あんなことを言ったわけじゃない」
「じゃあ何故」
「俺は職業柄、いろいろな女に接する機会が多いのは知ってるだろ。最近じゃ見ただけで、その女がどんな種類の人間か、だいたい分かるようになってきた」
「・・・それで?」
私は赤嶺に話しの続きを促しました。
「お前の奥さんに会って感じたんだけどさ、あんなふうに始終張りつめているというか、心に鎧をつけているような女は、結局は愛情に飢えているのが多いんだよ。頭が良すぎるせいか、自意識が強すぎるせいか、馬鹿になれなくて、男にすがったり頼ったりすることができない。それでいて強い孤独を感じている。だからいったん歯止めが外れると、どこまでも抑制がきかなくて、ずるずる男に引きずられて身を持ち崩すタイプも多い」
「たいした心理学者だな」
私が不快を滲ませて揶揄すると、赤嶺はにっと歯を見せて笑いました。
「怒るなよ。正直言えばさ、奥さんみたいなタイプの女が、俺は一番好みなんだよ。だからあのときも、お前のことをどうこうというより、ちょっと奥さんを虐めてやりたくなったのさ。どうだ? 俺の言うとおりだっただろ」
「何が?」
「前にしただろ、お前の奥さんには色気があるって話。泣いている奥さんは、すごくセクシーだと思わなかったか?」
「・・・・・・・」
たしかにあのときの妻の様子は、普段の毅然とした佇まいを知っているだけに、私には余計心を揺さぶられるものがありました。その後の妻との濃密な情事も、それまで私が知ることのなかった刺激がありました。
「そうだな」
私は赤嶺の言葉を認めました。
「そういえばお前はこうも言ったな、『俺だったら奥さんの女としての性能を、最大限まで引き出してやれる』と」
「それも当たってるぜ」
赤嶺がぬけぬけと言います。私は苦笑しました。
「ちくしょう。でも、そうかもしれない」
私が結婚後三年も分からなかった瑞希という女を、赤嶺は一瞬で彼女の中に隠されていたものを見抜いたのです。

「お、来たな。こっちだ」
赤嶺が不意に振り返って手を上げました。その視線の先には二十四、五歳くらいの若い女がいます。背が高く、目鼻立ちのはっきりした美しい女でした。
「彼女はうちの会社でモデルをやってくれている遠野明子だ。個人的にぼくの秘書のようなこともやってくれている。明子、こちらは俺の旧友の――だ。前に話したことがあるだろう」
S企画でモデルと言えばAV女優を指すとは、以前に赤嶺から聞いていました。そう思って改めて明子を見ると、たしかに彼女にはこの年頃のかたぎのOLにはない、水商売的な艶っぽさがありました。
明子はぱっちりとした瞳に色気を滲ませて、私に笑顔を向けました。
「はじめまして。遠野明子です。うちの赤嶺がいつもお世話になっています」

それからしばらく、私たちは三人で飲みながら話をしました。
「ということは明子さんは赤嶺にスカウトされて、今の仕事につくようになったわけですか。それまでは普通のOLをされていたんですね」
「そうなんです。このひと、わるいひとでしょう」
明子は口元に笑みを浮かべながら、悪戯っぽい目で赤嶺を見ました。その目は明らかに自分の愛人を見る目です。
「じゃあ明子は今の仕事が気に入ってないのかね。撮影のたびにたくさんのテクニック豊かな男に抱かれて嬉しいと言っていたのは嘘なのか」
赤嶺がからかうように言うと、明子は流石に顔を少し赤くしました。
「いやん、――さんの前で恥ずかしいことを言うのはよして」
「明子は露出症の気味もあってな、カメラの前でセックスすると余計感じるらしくて撮影のときはいつも大変なんだよ」
「いや、いや」
明子は悶えるように全身を震わせて抗議しますが、その肌は赤嶺の言葉に興奮させられてたのか、ぽうっと赤く上気したようで、それがいかにも淫蕩な空気を漂わせていました。
「たしかに赤嶺はわるい男ですが、明子さんもよい職業につかれたようですね」
私が言うと、明子は軽く睨んできました。
「まあ、――さんまで。でも本当にそうね。口惜しいけど、このひと、女を見抜く力はあるのよ」
「・・・そのようですね」
私の脳裏に妻の顔が浮かびました。
  1. 2014/10/11(土) 03:42:42|
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よき妻 第6回

「――さんの奥さんはどんな方ですの?」
すっかり酔いがまわったふうの明子が舌足らずな口調で聞いてきたのに、私が答えるより早く、
「美人で、凄く色っぽいひとだよ」
赤嶺が言いました。
「あなたがそんなに誉めるなんて珍しいわね。ひょっとしてお気に入り?」
「ああ。――が羨ましいよ」
「何言ってんだ」
私は照れてそっぽを向きました。
「お前だってこんないいひとがいるじゃないか」
私の言葉に赤嶺と明子は一瞬顔を見合わせ、そして笑い出しました。
「ははは、いやわるい。でも俺たちの関係はそんなんじゃないよ。そりゃときどきはプライベートで会ってデートもするがね。俺も明子も企業の一員で、商品としてのAVを撮る側だし、明子はそれに出演する側だ。割り切った関係だよ」
「独占欲とかはないんだな」
「ないね。だいたい男にしろ女にしろ、それぞれ特定の相手だけに縛られているのはもう古いと俺は思う。夫婦やカップル同士でスワッピングってのも、今じゃありきたりな話だろ」
「さあね。俺はお前とは違って、その辺りには詳しくないからな。簡単に割り切れるタイプでもないし」
「まあ、お前はそうだろうな」
赤嶺は真面目な顔で言ってから、ふと気がついたように明子を見ました。
「そういえば新作のサンプルはもう出来たのか?」
「きょう出来ました。ここに持ってきてます」
明子はカバンからDVDのディスクをいくつか取り出しました。
「これは明子が出ているもので、監督は珍しくおれが務めてるんだ。何枚かあるようだから、一枚お前にやるよ」
「いいのか、そんなことして」
「いいんだよ。お前、俺の関わった作品を一度も見たことないだろ。本当に友達がいのない奴だよな」
私と赤嶺のやりとりを、明子はくすくす笑いながら聞いていました。

「・・・どうしかしましたか?」
その声で私はふと我に返りました。ベッドの傍らを見ると、妻がものといたげな目で私を見つめています。シーツに半分だけ隠された裸の乳房が、艶めかしく映りました。
「いや、なんでもない」
その日は帰ってから、妻と睦みあう最中でさえ、私は赤嶺の言ったことを思い返していました。あの夜の出来事をきっかけに、日常生活でもベッドの中でもより近づくことの出来た妻。私の腕の中ですこし遠慮がちに、しかし蟲惑的に乱れる妻の姿を眺めながら、私はいまだ彼女の中に秘匿されているであろう『女』を幻視していたのでした。
たしかに赤嶺の言うとおり、彼なら私以上に妻の『女』としての性をより深く開花させられたかもしれない、と思いました。赤嶺は男の私の目から見ても魅力的な男でしたし(外見が、というよりも、その内面から仄見えるぎらぎらした雰囲気がです)、私は妻を単純に『女』としてだけ見るには彼女を愛しすぎていました。赤嶺が明子を愛するようには、私は妻を愛せないと思いました。
しかし―――。
愛しているからこそ、もっともっと妻を知りたい、もっともっと剥きだしの姿を見てみたい。そんな激しい欲望も私の中にはたしかにあったのです。
  1. 2014/10/11(土) 03:43:54|
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よき妻 第7回

そんなことがあってから、しばらく時間が過ぎました。
若い頃は孤独を好むところもあった私ですが、本当の意味で妻と生きるようになってから
は、彼女のために働き、彼女とともに過ごす時間が何よりも大事に思えるようになっていました。
不思議なことに妻を愛している自分を自覚するたびに、より深く妻を知りたいという衝動が大きくなっていきました。以前はそばにいるのに孤独を感じていて、それでも触れられない妻がもどかしくてたまらなかったのですが、そのときとはまた別の気持ち、しかも以前よりずっと強い灼けつくような衝動です。
私のまだ見ぬ妻の姿を思い描くたびに、ふっと赤嶺の顔が浮かんできて、私を動揺させることもありました。

その頃には妻との営みもだいぶ馴れたものになってきていて、ときには妻の両腕を紐で軽く縛るなど、SMめいたプレイも楽しんだりはしていました。

「痛い・・・・」
かすかに呟いて、妻は顔をうつむけます。両手を背中で縛られた彼女の乳房を隠しているのは、折り曲げた白い膝です。首筋から肩にかけての細く、淡い線が妻そのもののように繊細な美を描いています。
「強く縛りすぎたかな」
私が言うと、妻は首を横に振りました。
「大丈夫です」
そう言って見上げた妻の瞳は頼りなく潤んでいて、私の胸を妖しくざわめかせました。この従順な、柔らかい生き物。彼女はいまこの瞬間、何を考えているのだろうとふと思います。たとえ問うたとしても、真実のところはやはり謎のままでしょう。人と人との間には埋まらない隙間があるものですが、その壁となるものは互いのエゴや醜い部分ばかりでなく、互いへの愛や優しさであったりもするのだと思います。だからこそ、幸福と淋しさはいつも背中合わせなのです。
這うように近づいていった私がゆっくりと両膝を押し開いていくと、妻は
「く・・・・っ」
と小さく呻いて、いやいやするように首を振りました。
「駄目です」
「何が駄目なんだ。このままじゃできないだろ」
「せめて電気を消してください」
「いやだ、このまま瑞希を見ながらしたい」
「優しく・・・」
「してるじゃないか」
私たちはまるで愛を囁きあうようにそんな会話をかわしながら、一つに繋がりました。

そんな日々が続いていた、ある休日のことでした。妻は買い物に出かけていて、私はひとり家にいて、退屈紛れにインターネットでアダルトサイトを見ていました。素人が自身もしくは恋人の画像を投稿するサイトです。
こうしたサイトを見ていると、世の中には色々な男女がいると思わずにはいられません。投稿画像には夫が妻の裸身やプレイ中の姿などを撮ったものも多くあって、他人の性生活を覗き見る背徳的な楽しみを与えてくれます。素人が撮ったものらしく、妙に生々しい雰囲気がかえって興奮を誘います。
ある男性が撮った彼の妻の画像―――顔を両手で隠しながら、細い裸身を晒し、カメラに向かって恥ずかしそうに股を開いている―――を見ながら、私はモザイク入りのその女性の顔にいつしか妻の顔を重ねていました。
その妄想は私を激しく昂ぶらせました。恥ずかしがる妻に向かってカメラを向けながら、「もっと股を大きく開け」と命じる・・・。しかし不可解なことに妄想の中でカメラを構え、そう妻に命じているのは、私ではなく赤嶺なのでした。

ふと私は思い出して、机の引き出しから、以前赤嶺にもらったDVDを取り出してパソコンに入れました。赤嶺が監督を務め、明子が「モデル」として出ているという例のやつです。
しばらくの間、私はそのDVDに見入りました。
映像の中で明子はまだ若い男優に絡みつき、甘え、悶えます。短い時間とはいえ、自分が直接会って話した女性のセックスシーンを見るのは初めてで、そのことも興奮を誘ったのですが、より刺激的だったのは、この映像を監督しているのが、彼女の愛人である赤嶺だという事実でした。実際のところ、赤嶺が明子をどう想っているかは謎ですが、彼女が赤嶺を見る目は間違いなく愛人の目でした。その女が愛する男の前で、あられもない痴態を晒しては、淫らな声をあげて泣くのです。時折、明子の視線が相手の男優を離れ、あらぬところを見ているとき、私はその先に赤嶺がいることを想像しました。

DVDが終わりました。
私はぞわぞわと背筋を撫であげる何かを感じながら、しばらく呆然とソファに横たわっていました。そして。
そして私は立ち上がりました。赤嶺に電話をかけるためです。妻が帰ってくる前に。
  1. 2014/10/11(土) 03:44:56|
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よき妻 第8回

私と妻が休暇を利用して岐阜の温泉郷へ出かけたのは、その年の八月半ばのことでした。
妻と旅行へ行くのは新婚のとき以来でした。喧騒の街大阪を離れ、仕事も忘れて四日間ゆっくりと静かな山里で過ごすという計画に、妻も喜んでいるようでした。
難波から近鉄で二時間かけて名古屋へ到着し、それからJR高山本線へ乗り換えます。天気は快晴で、抜けるような青空には何の翳りもありません。
妻の表情も珍しく晴れ晴れとしていました。私はその顔を見て、今更に胸が痛むのを感じました。

高山の駅で降りて、城山公園を巡り高山城跡を見てから、また市街地へ戻った時のことでした。
「おい、――じゃないか」
すれ違いかけた男が声をかけてきました。赤嶺です。隣には明子がいて、これもびっくりしたように私を見つめています。
「どうしてお前がここに?」
「それはこっちが聞きたいくらいだ」
赤嶺が妻へ視線を向けました。同様に驚いた顔をしていた妻が、その瞬間恥ずかしそうに目を伏せます。それを目にして赤嶺が苦笑を滲ませた表情を私に向けました。私は軽くうなずきました。

すべて計画通りでした。私と赤嶺、それに明子は旅先で偶然出会ったことを装う計画を立てていたのです。知らぬは妻ばかりです。
「お久しぶり、――さん。それにしても驚きね」
明子は、彼女はあらかじめ赤嶺に頼まれて私たちの協力者になっていましたが、この旅では私の大学時代のサークルの後輩という設定でした。
「ああ、本当に」
「そちらの方は奥さん?」
「そうだ」
「はじめまして。わたしは遠野明子といいます。――さんとは大学のサークルが同じで、色々お世話になりました」
突然のことに困惑したようだった妻も、明子の年に似合わぬ落ち着いた物腰に普段の自分を取り戻したようで、「はじめてお目にかかります。――の妻で、瑞希と申します」と生真面目な挨拶を返しました。
「赤嶺のことはもう知っているだろう。明子は赤嶺の奥さんなんだよ。俺がふたりの間をとりもったんだ」
「そうでしたの」
「おーい、こんな道端で立ち話もなんだ。どこか休める店に入ろう」
赤嶺の号令で私たち四人は歩き出しました。

「ふうん、それにしても奇遇だな。夫婦で旅行した先が同じ場所なんて」
「あなたたち、よっぽど気が合うのね」
「よせよ、明子。こいつとは昔から因縁の仲なんだ」
「何よ、それ」
私と赤嶺、そして明子がさも和気あふれる会話を交わしているのを、妻は所在なさそうに、ただし外見にはそんな思いは出さぬように気を遣いながら静かに聞いています。適当に入った喫茶店はよくクーラーが効いていて、少し肌寒いほどでした。
「お前と奥さんは泊まる宿は決めているのか?」
赤嶺がふと思いついたように聞いてきました。
「ああ。北部の奥飛騨のほうに宿を決めてあるんだ。そこに三日間連泊してゆっくり過ごす。お前たちは?」
「じつは俺たち、行きあたりばったりでさ。なにせ飛騨へ出かけることも昨日決めたくらいだから、宿も何も考えてないんだ」
「いい加減だな」
「それでさ、もしよかったら、お前と奥さんが泊まる宿を紹介してくれないか?」
「いいけど、この季節だし、空いていないかもしれないぞ」
「電話番号は控えてあるんだろ。聞いてみてくれないか?」
「しょうがないな」
私はぶつくさ言いながら、店の外へ電話をかけに行くふりをしました。事実はすでに赤嶺たちの宿は確保されているのです。
  1. 2014/10/11(土) 03:45:50|
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よき妻 第9回

奥飛騨の宿には夕方の五時過ぎに着きました。
「僕たちの部屋は隣同士らしいぞ」
チェックインに行っていた私と赤嶺は戻ってきて、互いの相方へ言いました。
「さっき部屋の空き状況を確認したときに僕が電話をかけたものだから、宿のほうが気を遣って、僕と瑞希があらかじめ予約していた部屋を二間の部屋へ変えたんだ。四人連れと思ったんだな」
もちろんこの説明は嘘っぱちです。事実は最初に宿をとったときから、そう指定しておいたのでした。
「二つの部屋の間は襖で仕切ってあるらしいが、どうだ?」
「私はかまわないわ」
明子が即座に答えました。
妻はちらりと私を見ました。その瞳は何か言いたげであるように見えましたが、彼女の唇から出てきたのは自分もかまわないという一言でした。

私たちの泊まる部屋は決して豪奢な造りではありませんが、小奇麗でさっぱりした感じのいい和室でした。窓の外には山深い奥飛騨の緑が、都会の騒がしさに馴れた者をやさしく包むように広がっています。
「いい部屋じゃないか」
「そうですね」
妻は微笑みながら短く答えましたが、その微笑みはどこか弱々しく、無理しているような印象でした。当然でしょう。夫婦水いらずで静かな温泉郷でゆっくりと休日をとるはずが、得体の知れない夫の友人とその妻が突然現れ、襖一枚ごしの隣室に宿をとり、以後の休日をずっと一緒に過ごす気配を見せているのですから。もともと人付き合いの苦手な妻には、なおさら負担になっているはずです。しかしそれでも彼女の物腰には、無神経な夫への怒りや不満のようなものは見えず、なおさら私に罪の意識を覚えさせます。

“妻を抱いてみたくはないか?”
そんな私の非常識な提案にのった赤嶺が立てたのが今回の旅行計画でした。
目的はスワッピングです。つまり私たち夫婦と赤嶺・明子のカップル(妻には夫婦と言っていますが)が、互いに相手を代えてセックスをするのです。いかにも身持ちの堅そうな妻を堕とすために、まず夫たる私が率先して他の女性(しかも人妻)と関係する場面を見せつけ、それから赤嶺が妻を口説き落とすという計画でした。
“しかし明子さんはそんな役割を承知してくれるのか?”
“あいつがこんな面白い話を蹴るはずがない。心配はいらないよ。それより問題はお前のほうだ。覚悟はちゃんと出来ているんだろうな”
電話越しに赤嶺が低い声で確認してきました。赤嶺の言う覚悟とはもちろん、妻を赤嶺の自由にさせる覚悟のことです。
正直、計画を立てた段階では、妻が実際に赤嶺に抱かれることになるかは分かりませんし、もしそうならなかった場合、後の夫婦関係がどうなっていくのかも分かりません。また、もし妻が赤嶺に抱かれたとしても、それから先がどうなるのか、まったく予想できません。
まさに一寸先は闇、下手すると今まで築いてきた幸福すべてを失う可能性だってあるのです。それでも私は赤嶺に答えました。

「覚悟は出来ている。何が起こっても後悔はしない」

私はたしかに何かに憑かれていました。

「おーい、これから俺たち、宿の温泉へ行くんだが、そっちはどうする?」
「俺たちも行くよ」
襖越しに聞こえてきた赤嶺の声に私は答えました。
宿の背後に鬱蒼と茂る木立に臨んで、露天風呂が湯気をたてていました。近くに渓流があるのか、川のせせらぎの音も聞こえています。
私と赤嶺が先に風呂につかっていると、やがて明子が女用の更衣室から出てきました。タオルで腰を、腕で乳房を隠しているだけの姿です。私は眩しげに瞳を逸らしながら、
「瑞希は?」
と尋ねました。
「奥さま、混浴だってことご存知なかったのね。恥ずかしがってしまったみたいで、いくら説得しても出てこないの」
妻ならいかにもありそうなことです。
私は立ち上がって、女用の更衣室に近づきました。人影がひとつ、曇りガラス越しに見えています。
「瑞希」
「・・・・・・」
「早く出てくるんだ。子供じゃあるまいし、何を恥ずかしがっている。早く来い」
私はわざと冷たい口調で言いました。これからのことを考えると、心を鬼にすることはどうしても必要です。
普段とは違う私の冷酷な声音に、妻は一瞬びくりとしたようです。数分後、衣服を脱いだ妻が出てきました。
  1. 2014/10/11(土) 03:47:05|
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別れた妻・七塚 (34)
妻は銀行員・貴子の夫 (5)
夢の中・弱い男 (29)
変身・KYO (43)
変わってしまった・柴田 (27)
気持ちの置場に・レタス (23)
心の隙間・松本 (7)
薬剤師・津島正義 (49)
表裏・所 (24)
本性・拓也 (32)
蜃気楼・WR (63)
妻の想いは…?・ムーア (19)
彼方なら・マサユキ (13)
待っていてくれる紗代・呑助 (6)
水遣り・CR (73)
CRの妻・洋子 (35)
喪失・バーバラ (25)
永遠に夫婦でいるために・ルイ (11)
役員会・KYO (102)
隣の芝生・石井 (42)
留守番・赤とんぼ (15)
家主・えりまきとかげ (32)
雲の上を歩く・MMさん教えて (62)
Booby Trap・道化師 (51)
チョコレートの伯父ちゃ・思い出 (31)
立場・Retaliation (42)
白き花・男とは? (38)
黒の凱歌・TELL ME (35)
女友達と妻・KYO (49)
赦さない・・・・ヨシキリ (34)
戦い・MM (75)
誤解の代償・美鈴さんに捧げる (24)
子は鎹・種無し (10)
魔性・樹氷 (43)
品評会・ミチル (33)
帰省・N (5)
妻の同窓会・間抜けなそして幸せな夫 (37)
奈落・RHM (27)
侵略・流石川 (23)
二人の妻・桐 (93)
神の悪戯・弱い鬼 (36)
イヴとなった妻・忍兄さん (70)
インプリンティング・迷人 (64)
よき妻・BJ (26)
卒業・BJ(よき妻 第二部) (24)
卒業後・BJ(よき妻 第三部) (74)
2つの我が家・鎌田 (14)
ミコと美子・美子の夫 (21)
暗黙の了解・裏筋舐太郎 (34)
■職場関係 (591)
上司と妻・陽太 (6)
知らなかった・みつる (6)
妻の初体験・変な夫 (7)
堕ちていく天使の影・赤いかげろう (7)
私の妻・つよし (5)
僕の不貞な妻・カウニッツ (6)
招かれざる、客・使徒 (14)
屋上・古屋二太郎 (2)
デジカメ・龍 (6)
壊れかけの絆・叶 (34)
本当の妻・加藤 (17)
嫁が俺の会社の先輩に、デートの練習をした・不詳 (5)
二人の?妻・木下某 (27)
未完・修司 (19)
空白の2時間・ナガネギセブン (3)
妻・友子の不倫告白!・ヘタレ旦那! (18)
妻の浮気を知ってしまった。・美作 (2)
ピアノレッスン・悦 (5)
アルバイト・凛 (14)
元ヤクザの情婦にされた妻・574 (13)
観光温泉ホテル・公務員亭主 (16)
奥手でおとなしい妻が後輩に仕込まれた・名無し (6)
寝取られ妻が本気で妊娠まで・浩二 (5)
ナース妻を寝取られて・由美子命 (10)
写真館派遣の妻・無知な夫 (7)
私の身に起きた事実。・ファイター (10)
イケメン部下と妻・・・リュウセイ (9)
変貌する妻・雄治 (18)
僕の厄年・田舎おやじ (10)
訪問介護・サンコウシン (6)
狙われた人妻・亜紀・恋愛小説家 (7)
マラソンを愛する妻・スポーツトレーナー (3)
妻が汚れてしまった・常陸の親方 (10)
妻は専務のおもちゃだった・道騎士 (6)
妻の二人の夫・妻を愛する夫 (27)
見えない檻・生き物係り (30)
美樹がやられた・無能な夫 (41)
愛妻を・・・・川島クロード (12)
序破急・中務 (75)
月の裏側・久生 (14)
婚約者の調教動画が見つかって (12)
官舎 送別会・公務員 (5)
撮られていた妻・スネ夫 (8)
夫婦の恩返し・赤とんぼ (8)
1話完結■職場関係 (20)
■義父または近親 (65)
妻は義父のモノ・クスコ (3)
イトコと親友に、そして・・・ ・正光 (16)
巨乳妻・ゆうき (18)
家族遊戯・六郎汰 (14)
疑わしい行動・圭太 (9)
妻の絶頂・こうくん (5)
■隣人または友人 (491)
はちきれそう・ゆう (7)
仕掛けられた糸・赤いかげろう (6)
本当のこと。・一良 (14)
リフォーム・とかげ (22)
友達・悦 (13)
悪夢・覆面 (10)
ビデオ・はじめ (4)
言えない真実、言わない真実・JOE (17)
私しか知らなかった妻・一樹 (3)
妻の秘密・光一 (54)
清楚人妻 一夜の陵辱劇 ~親友に騙された~・仁 (6)
俺が負けたので、彼女が手コキした (5)
惨めな自分・子無き爺  (6)
田舎・マス夫 (16)
秘密・POST (14)
新妻の幻想・TAKA (4)
遠方よりの友・ちかこmy-love (11)
管理組合の役員に共有された妻・エス (136)
団地・妄人 (50)
抱かれていた妻・ミリン (18)
パーティー・ミチル (33)
友人・妄僧 (7)
甘い考え・白鳥 (22)
乳フェチの友人・初心者 (6)
1話完結■隣人または友人 (7)
■インターネット (54)
チャットルーム・太郎 (19)
オフ会・仮面夫婦 (10)
ターゲット・アイスマン (5)
奇妙な温泉宿・イワシ (14)
落書きの導き・マルタ (4)
1話完結■インターネット (2)
■旅先のアバンチュール (63)
バカンス・古屋二太郎 (7)
妻との旅行で・けんた (5)
無題・ざじ (10)
A温泉での忘れえぬ一夜・アキオ (18)
露天風呂での出来事・不詳 (2)
たった1度の体験・エロシ (9)
旅行・妄人 (12)
■医者・エステ・マッサージ (62)
孕まされた妻・悩める父親 (7)
とある会で。 ・けんじ (17)
亜希子・E-BOX (14)
子宝施術サービス・かえる (23)
1話完結■医者・エステ・マッサージ (1)
■借金 (56)
私達の出来事・不詳 (9)
私の罪・妻の功・山城 (9)
失業の弱みに付け込んで・栃木のおじさん (3)
変貌・鉄管工・田中 (5)
借金返済・借金夫 (5)
妻で清算・くず男 (5)
妻を売った男・隆弘 (4)
甦れ・赤子 (8)
1話完結■借金 (8)
■脅迫 (107)
夢想・むらさき (8)
見えない支配者・愚者 (19)
不倫していた人妻を奴隷に・単身赴任男 (17)
それでも貞操でありつづける妻・iss (8)
家庭訪問・公務員 (31)
脅迫された妻・正隆 (22)
1話完結■脅迫 (2)
■報復 (51)
復讐する妻・ライト (4)
強気な嫁が部長のイボチンで泡吹いた (4)
ハイト・アシュベリー・対 (10)
罪と罰・F.I (2)
浮気妻への制裁・亮介 (11)
一人病室にて・英明 (10)
復讐された妻・流浪人 (8)
1話完結■報復 (2)
■罠 (87)
ビックバンバン・ざじ (27)
夏の生贄・TELL ME (30)
贖罪・逆瀬川健一 (24)
若妻を罠に (2)
範子・夫 (4)
1話完結■罠 (0)
■レイプ (171)
輪姦される妻・なべしき (4)
月満ちて・hyde (21)
いまごろ、妻は・・・みなみのホタル (8)
嘱託輪姦・Hirosi (5)
私の日常・たかはる (21)
春雷・春幸 (4)
ある少年の一日・私の妻 (23)
告白・小林 守 (10)
牝は強い牡には抗えない。・山崎たかお (11)
堅物の妻が落とされていました・狂師 (9)
野外露出の代償・佐藤 (15)
妻が襲われて・・・ ・ダイヤ (6)
弘美・太郎棒 (11)
強奪された妻・坂井 (2)
痴漢に寝とられた彼女・りょう (16)
1話完結■レイプ (5)
■不倫・不貞・浮気 (788)
尻軽奈緒の話・ダイナ (3)
学生時代のスナック・見守る人 (2)
妻・美由紀・ベクちゃん (6)
押しに弱くて断れない性格の妻と巨根のAV男優・不詳 (8)
妻に貞操帯を着けられた日は・貞操帯夫 (17)
不貞の代償・信定 (77)
妻の浮気を容認?・橘 (18)
背信・流石川 (26)
鬼畜・純 (18)
鬼畜++・柏原 (65)
黒人に中出しされる妻・クロネコ (13)
最近嫁がエロくなったと思ったら (6)
妻の加奈が、出張中に他の男の恋人になった (5)
他の男性とセックスしてる妻 (3)
断れない性格の妻は結婚後も元カレに出されていた!・馬浪夫 (3)
ラブホのライター・され夫 (7)
理恵の浮気に興奮・ユージ (3)
どうしてくれよう・お馬鹿 (11)
器・Tear (14)
仲のよい妻が・・・まぬけな夫 (15)
真面目な妻が・ニシヤマ (7)
自業自得・勇輔 (6)
ブルマー姿の妻が (3)
売れない芸人と妻の結婚性活・ニチロー (25)
ココロ・黒熊 (15)
妻に射精をコントロールされて (3)
疑惑・again (5)
浮気から・アキラ (5)
夫の願い・願う夫 (6)
プライド・高田 (13)
信頼関係・あきお (19)
ココロとカラダ・あきら (39)
ガラム・異邦人 (33)
言い出せない私・・・「AF!」 (27)
再びの妻・WA (51)
股聞き・風 (13)
黒か白か…川越男 (37)
死の淵から・死神 (26)
強がり君・強がり君 (17)
夢うつつ・愚か者 (17)
離婚の間際にわたしは妻が他の男に抱かれているところを目撃しました・匿名 (4)
花濫・夢想原人 (47)
初めて見た浮気現場 (5)
敗北・マスカラス (4)
貞淑な妻・愛妻家 (6)
夫婦の絆・北斗七星 (6)
心の闇・北斗七星 (11)
1話完結■不倫・不貞・浮気 (18)
■寝取らせ (263)
揺れる胸・晦冥 (29)
妻がこうなるとは・妻の尻男 (7)
28歳巨乳妻×45歳他人棒・ ヒロ (11)
妻からのメール・あきら (6)
一夜で変貌した妻・田舎の狸 (39)
元カノ・らいと (21)
愛妻を試したら・星 (3)
嫁を会社の後輩に抱かせた・京子の夫 (5)
妻への夜這い依頼・則子の夫 (22)
寝取らせたのにM男になってしまった・M旦那 (15)
● 宵 待 妻・小野まさお (11)
妻の変貌・ごう (13)
妻をエロ上司のオモチャに・迷う夫 (8)
初めて・・・・体験。・GIG (24)
優しい妻 ・妄僧 (3)
妻の他人棒経験まで・きたむら (26)
淫乱妻サチ子・博 (12)
1話完結■寝取らせ (8)
■道明ワールド(権力と女そして人間模様) (423)
保健師先生(舟木と雅子) (22)
父への憧れ(舟木と真希) (15)
地獄の底から (32)
夫婦模様 (64)
こころ清き人・道明 (34)
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