主に寝取られ物を集めた、個人文庫です。
麻美に教えられるセックスは、あまりに甘美だった。由紀を失った空隙を埋めようとする防衛本能も手伝い、怒涛のごとく押し寄せる官能に亮輔はどっぷりと浸かり、溺れた。
「由紀さんのことは、もう忘れなさい。わたしがずっと傍にいてあげる。いつだって最高に気持ちよくさせてあげるから」
恍惚とした余韻の中で、熱い吐息と共に囁かれると、
(それもいいかもしれない。由紀はもう行ってしまったのだから……)
錯乱の中に、運命を受け入れようとする動きが生まれてくるのだった。
そんな心を見透かしたように、彼女は突然こなくなった。茫然自失の亮輔。しかしながら、麻美という名の他、住所も電話番号も知らされてはいない。探し出す術がなかった。
(麻美、頼む! 何もかも忘れられるあの世界へ、もう一度俺を連れてってくれ!)
味を覚えてしまった禁断の果実を不意に奪われた凄まじい飢餓感に、亮輔はのたうちまわった。
匿名の荷物が届いたのは、そんなときである。開封した亮輔は思わず息を呑んだ。
「……由紀!……」
懐かしい妻の姿がそこにあった。写真の中の由紀はカメラに向かって脚を大きく広げ、全裸のまま後ろ手に縛られている。顔が見えない男の手で、背後から豊満な乳房を揉みしだかれ、乳首を尖らせているのだ。
ぱっくりと開いた媚肉は、黒々とした巨大な肉塊に下から貫かれていた。それだけではない。その下に見える可憐な肛門には、グロテスクな浣腸器が突き刺さっている。見るも無残な凌辱の図であった。
だが、由紀がそれを嫌がっていないことは明らかだ。油を塗ったようにぬらぬらと妖しく光る肌。太股までぐっしょりと濡らしてなお溢れ出ている秘蜜。うっすらと白眼を剥き、半開きになった肉感的な唇は悦びにうち震え、よだれすら垂らしている。あえやかな歓喜の声が今にも聞こえてきそうである。
たとえようもなく淫乱な姿でありながら、写真の中の由紀はかつてないほど美しかった。
「……なんて……きれいなんだ……」
その他にも、数多くの写真が同封されていた。忘我の表情でフェラチオに勤しむ由紀。さまざまな体位で、深々と貫かれている由紀。つい半年前まで自分だけのものだった乳房が、唇が、性器が徹底的に歪められ、蹂躙されていた。
「あ……麻美じゃないか!」
もうひとつの束は、麻美のものだった。全裸にハイヒール姿でガラスに手を突き、背後から荒々しく犯されている麻美。切り裂かれたレースクィーンの衣装で股間から白濁をしたたらせている麻美。整った眉根を寄せて汗にまみれ、煩悶の表情を浮かべている麻美。彼女もまた、汚されれば穢されるほど、神々しいまでに輝いていた。
その日、亮輔は自分から去っていった二人の女の痴態を見つめ、いつまでも放心したように佇んでいた。
やがて仕事にも出かけなくなった亮輔は、電話やメールにも応じず、家に引きこもって自慰に耽るようになった。伸び放題の無精ひげ。張りを失い、土気色となった顔相。床に敷き詰められた写真に囲まれ、落ち窪んだ眼窩に異様な光が宿っている。
「へへ……由紀……またしたくなったのかい?……ああ、麻美……そんなところにいたのか……こっちへおいでよ……いっぱい愛し合おうじゃないか……また気持ちよくさせてくれよお……ひひひ」
乱雑をきわめ異臭を放ち始めた部屋からは、時おり奇声が聞こえてきた。
- 2014/07/21(月) 10:00:59|
- 背信・流石川
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あれ以来、由紀は亮輔のもとへ帰ってはいない。
「すごかったらしいぜ、亭主殿は」
麻美の報告によると、戒めを解かれた亮輔は狂ったように彼女を求めてきたのだという。
「由紀を……忘れさせてくれよ……なあ……頼むよ」
泣きながら麻美にしがみつき、乳房にむしゃぶりつき、胎内深く挿入した。
「ああ……麻美……由紀……麻美い!」
三回目の射精の後、涙の跡を残したまま憔悴しきって眠りについたそうだ。
(……可哀相な亮輔……)
あらためて込み上げる罪悪感。夫を悲嘆の深淵に突き落としたのは、妻である由紀なのだ。
「それからってもの、すっかり麻美にご執心でよ。ご自宅を訪問さしあげるたんびに、やりまくるんだと。お盛んだよなあ。ふふふ。まあ、麻美にもいろいろ仕込んだからな、夢中になるのもわかるけどよ」
「…………!」
菊交、SM、浣腸、屋外プレイ……。由紀が体験してきた妖しい世界に、亮輔も麻美に導かれて足を踏み入れたのだろうか。セックスの回数こそ人並み以上だったものの、きわめてオーソドックスだった自分たち夫婦の性生活。突然放り込まれためくるめく官能の魔力に、亮輔はたちまち魅了されたのではなかったか。
由紀がそうであったように……。
(……もう……戻れないのね)
いつか川村に捨てられたとしても、亮輔のところへ帰れるのではないか、夫は自分を待ってくれているのではないかという淡い期待が心の片隅にあった。その望みも完璧に絶たれた。
(……この男にすがって生きていくしかないんだわ、わたし……)
そして、美しく磨き抜かれた全身のあらゆる箇所を駆使し、心を込めて川村への奉仕に努めるのだった。
(……だって……今ごろは亮輔も、麻美さんと……)
しかし、由紀にそう思い込ませることも川村の巧みな姦計の一部だった。現実には、亮輔を倒錯した快楽へ没入させたあげく、麻美は彼の前から忽然と姿を消していたのである。
- 2014/07/21(月) 09:53:18|
- 背信・流石川
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夫婦の褥に見知らぬ女を招き入れて交わらせるという、常軌を逸した策略に加担したあの晩。
一服盛られた亮輔が深い眠りに落ちたのを確認すると、由紀は教えられていた携帯番号に連絡し、麻美という女を呼び寄せた。
「ひどい女ね。あなたも、わたしも……」
自嘲とも憐憫とも取れる薄い笑顔を浮かべると、麻美はハイヒールを脱いだ。
(……きれいなひと……)
静脈が透けて見える白い肌と、濡れたような黒髪のコントラスト。どこか冬の北国を想起させる、儚げでいて凛とした風情。貞操的でありながら、そこはかとなく漂う娼婦の妖しさ。雪女のイメージそのままだと由紀は思った。
昏睡する亮輔を二人がかりで寝室へ運ぶと、川村の指示に従って衣類を剥ぎ、ベッドの支柱に手足をくくりつけた。
「じゃあ、あとはまかせて。あなたは行きなさい」
麻美がスーツを脱ぎ始める。着やせする性質なのだろう、思いもよらず成熟した肢体が表われた。
「あの……よろしく……お願いします」
我ながら間抜けな言葉を返して、由紀は家を出た。
(あんなひとに迫られたら……わたしが男でも我慢できない)
それでいて、亮輔なら拒絶してくれるのでは、という期待がどこかにあった。
(わたしを愛してくれているなら……耐えて……)
自己本位な願いだということはわかっている。自身は他の男に身も心も支配され、あげくこのように悪魔的な企てに手を染めてしまった。妻として夫に何もいう資格などない。
(でも……勝手よね……わたしはあなたを信じたいの)
川村は自室でソファに寝転んでいた。下半身には何も着けず、今日も股間の逸物は反り返らんばかりに怒張している。
「ちょうど今、麻美から連絡があってな。ドッキング成功、第一回戦を終えたところだってよ」
脱力感に襲われた。夫を奪われた妻の嫉妬、拒みきれなかった夫への怒り。理性ではコントロールできない感情が湧き上がってくる。
「お、ショック受けてるみたいじゃねえか。そりゃあ酷だぜ。女房はさんざっぱら俺とやりまくってんだからよ」
「……言わないで……もう……」
由紀は長い睫を伏せたまま、ワンピースのボタンに指をかけた。
その後の交わり。由紀はいつも以上に激しく乱れ、みずから絶頂を求めて淫猥の限りを尽くした。
(今この瞬間、亮輔はあの麻美って女とセックスをしてるんだわ)
強烈な感情が渦巻き、圧倒的な刺激となって由紀の総身をあぶった。
「向こうはぼちぼち第二回戦か。バックから麻美を責めまくってるってとこかな」
川村が冷やかすように笑う。
「由紀にも……同じようにして……」
進んで獣の姿勢となり、形のいい双臀をくねらせてねだる。
「麻美はケツの穴で感じる女だからな。ブチ込んでるかも知れねえぞ、ふふ」
「お尻に……お尻にください!……大きいのでかき回して、メチャクチャにしてえっ!」
全身の穴という穴から凝縮された快楽が噴出し、どろどろに溶けてしまいそうだった。
「ねえ……言ってよ!……由紀のおま×こが一番だって……麻美なんかより全然いいって……お願いだから! 」
汗をほとばしらせながら絶叫する。自分でも何を言っているのか、わからなくなっていた。
この夜、亮輔と由紀は、それぞれに完全な形で犯された。
- 2014/07/21(月) 09:49:37|
- 背信・流石川
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それからというもの、由紀は亮輔の友人たちに次々と抱かれた。誰か一人くらいは友情という大義のもとに、
「こんなことをしちゃいけないよ」
と諌めてくれるのではと期待していた由紀だったが、逡巡の度合いに差こそあれ、途中からは皆、田崎と変わらなかった。
「最初に会ったときから、由紀ちゃんとやりたかったんだ」
初めはおずおずと、しかし一線を越えてしまえば肉片のひとかけらも残すまいとするかのごとく、男たちは由紀を徹底的に貪った。
「君が悪いんだぜ。お互い亮輔には黙っていような。それと……これからもちょくちょく頼むよ」
去り際に残す責任転嫁と保身、意地汚い淫猥の言葉まで、示し合わせたように同じだった。
「ねえ……どうしてこんなこと、させるの?」
いつものように川村の股間に跪き、唇と舌の奉仕をしながら、由紀は尋ねた。五人目となる夫の友人に今日もさんざん弄ばれ、残滓を洗い流して戻ったばかりだ。
「由紀が別の野郎に姦られてよがり狂ってると思うと興奮すんだよ」
「……よがり狂ってるなんて……由紀はもうあなたじゃないと満足できないもの……」
「ふふふ、嬉しいこといってくれるじゃねえか」
「本当よ……それに他の人と……させるなら……何もあの人の友達じゃなくたって……」
川村が指で招く。自分からつながれというサインである。由紀は待ちかねたように立ち上がり、パンティを脱ぎ捨てると怒張を中心に当て、腰を落としていく。
「おお……やっぱ、他のチンポコを咥えこんできたおま×こは感触が違うぜ。おら、もっと脚を広げろ!」
「はい……ごめんなさい……あなた……ああ!……いいわ!」
たちまち、あえやかな愉悦の声が形のいい唇からほとばしる。
「心優しい俺としてはよ、女房を寝取っちまった亮輔さんに申し訳ないって思ってんのさ。まあ、あっちのほうは麻美を送り込んでひとまず解消してやったからな。お次は友達との絆をもっと深めて“兄弟”にしてやろうと、こう思ってるわけだ。へへへ」
「ああっ!……どうして……そんな……ひいっ!……ことを……」
真に亮輔を気遣ってのことである道理がない。だが、なぜ由紀を征服するだけでは飽き足らず、夫までとことん辱めようとするのか。そもそも情の通じた女を使って強姦させた計画自体、尋常な神経のなせる業ではない。
川村の真意が、由紀には読めなかった。
- 2014/07/21(月) 09:47:16|
- 背信・流石川
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「はあ、はあ……最高だよ……俺……由紀ちゃんとセックスしてるんだ!」
熱い吐息と共に身体の上で律動を繰り返す男を、由紀は冷ややかに観察していた。
(……結局……男なんてみんな同じなのね……)
昔の女に逆レイプさせる形で夫・亮輔を慰み者にした川村が次に命じたのは、
「おまえ、旦那の友達に犯されろよ」
というものだった。
「ただ、誘うだけじゃつまらねえ。その気にさせるだけさせといて、土壇場で突き放す。そうすりゃあ、男は誰もがチンポおっ立てて襲いかかってくるぜ」
(……悔しいけど、そのとおりだったわ……)
今、由紀の秘芯を貫いている田崎は亮輔の親友だ。
「学生時代からの腐れ縁でね。まあ、本当に信頼の置ける数少ないやつだよ」
付き合っている頃、そう得意げに紹介された。それからも結婚式の前後にわたって三人でキャンプへ行ったり、夜の盛り場を練り歩いたりしたものである。
「俺はさ、亮輔と由紀ちゃんの幸せのためなら、何だってできるよ」
という青臭い台詞が口癖の、誠実を絵に描いたようだった田崎。それが……。
「突然なんだけど、亮輔のことで相談があるの」
由紀からの電話に、田崎は疑う素振りもなく応じた。川村の出現で崩壊した夫婦関係。だが、プライドの高い亮輔が、友人相手とはいえ自分から家庭の恥を晒すとは思えない。由紀の読みは当たり、田崎は何も知らずに出向いてきた。
「おいおい、由紀ちゃん。どうしたんだい? そんな艶っぽい格好で。まさか俺を誘惑しようなんて思ってるんじゃないだろうな。亮輔に怒られちゃうよ、ははは」
待ち合わせたシティホテルのラウンジ。娼婦顔負けの濃い化粧を施し、黒いタンクトップに革のミニスカート姿で現れた由紀に、田崎は目を丸くした。
「うふふ。相談なんて嘘。田崎さんと二人きりで会いたかったの」
上目遣いに見つめると、まぶしいものを眺めるようにしてから目をそらした。
「い……いやあ、まいったな。本気にしちゃうよ」
その後、ダイニングからバーに流れながら、由紀は川村から命じられたとおりに行動した。
じっと話に耳を傾けるようにして、太股を押し付ける。冗談に笑い転げながら、さりげなく乳房を腕のあたりに当てる。ノーブラの胸元が見えることを計算して前かがみになる。
やがて田崎の眼に熱っぽい、オスの光が宿り始めた。
「ああ……あんまり楽しくてわたし、呑みすぎちゃった。もう帰れそうにないな……」
酔ったふりをしてしなだれかかると、かすれた声で、
「へ……部屋をリザーブしてくるよ」
と応えた田崎。
ドアのロックと同時に抱きすくめられると、由紀はシナリオに従って激しく抗った。
「いやっ! 田崎さん、やめてっ! 」
「何を言ってるんだ、ここまできて」
「わたし、そんなつもりできたんじゃないわ!」
思わぬ反撃に、かえって劣情を刺激されたのか、田崎は血走った眼で由紀をベッドへ容赦なく押し倒した。
「なんだよ、俺に抱かれたいんだろう? 」
「あなたは……いやっ……亮輔の友達じゃない……それなのに……くっ……こんなことするなんて……」
「黙ってれば、わかりゃしないさ。おい、いい加減にしろ!」
火の出るような平手打ちに一瞬、意識が遠のく。
「こんな格好で誘ってきやがって、とんだスケベ女だぜ。そうと知ってりゃあ、もっと早くやらしてもらうんだったな」
下卑た笑みを浮かべると、ろくな前戯もなく強引に分け入ってきたのだった。
- 2014/07/21(月) 09:45:52|
- 背信・流石川
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何かが、亮輔の身体の上にあった。熱く柔らかなものだ。しばらくして、その蠢く重みが女体だと気づいた。
(……ああ……由紀……)
今宵、由紀は久しぶりに早く帰ってきてくれた。彼女の手料理を味わい、ワインを飲み、会話を楽しんだ。ほんのりと頬を赤らめた妻は以前のように饒舌で、愛らしかった。
「あのときはビックリしたわ。まだ会ったばかりなのに、あなたったら強引に誘ってくるんだもの」
思い出話に興じていると、ここ数ヵ月の悪夢など思い過ごしだったと思えてならない。安堵に酔いが重なったためか、亮輔の記憶は急速に曖昧になっていった。
そして今、夫婦の寝室で由紀が積極的に自分を求めてくれている。亮輔は感動で満たされていく思いだった。だが……どこかに違和感がある。
「ふふふ……元気なのね……」
聞き慣れない声に、現実へと引き戻された。亮輔の胸板にねっとりしたキスを降らせていた漆黒の長い髪がはねあげられ、顔があらわになる。
見知らぬ女だった。歳は由紀より二つ三つ上だろうか。切れ長の瞳に、ぽってりとした唇。透き通るような白磁の柔肌。どこか南国の香りがする由紀とは別タイプの、純和風というべき美人である。
「だ……誰なんだ……君は?」
尋ねようとして亮輔は、思うように喋れない自分に気づいた。舌だけではない。全身の神経が痺れたように歪んでいる。加えて、ベッドの四隅に手足を縛りつけられているようだ。つまり、全裸で大の字にくくられた自分に、一糸まとわぬ未知の女が絡みついているのである。
「わたし? うふふ、麻美……あなたへの贈り物の女」
そう囁くと、女は亮輔に馬乗りとなった。重たげなバストを手のひらで持ち上げ、赤子へ乳を与えるように押しつけてくる。
(……一体なぜ、こんなことが?……)
夢だと信じたい。だが、顔を包み込んでくる温かな弾力は、あまりに生々しい。
「ほら……おっぱい吸って」
拒絶したくとも、痺れた上に拘束された四肢ではままならない。呼吸路を断たれ、息苦しさについ口を開くと、ぽってりとした乳首を唇に含む結果になってしまう。
「……むむ……やめてくれ……」
ようやく言葉を発することができた。だが、身体はやはり言うことを聞きはしない。
「だめよ。今日はわたし、亮輔さんとエッチするためにきたんだから」
また女が体位を替えた。霧のかかったような意識の中、熱い吐息が下腹部へと下りていく感触だけが、陶酔感を伴いながらおぼろげに伝わってくる。
「うう……勘弁してくれ」
「ふふふ……おちんちんはこんなになってるくせに……したいんでしょ?」
舌がチロチロと亀頭を這い回る。確かに拒絶の言葉とは裏腹に、股間の逸物は猛々しく勃起していた。それが先刻、ワインに混ぜて飲まされた薬物の効果も手伝ってのことだと知らない亮輔には、恨めしい男の生理に思えた。
「……駄目だ……俺には……由紀が……」
「ふふふ……そんな義理立てしちゃって。奥さんだって、今ごろ愉しんでるわよ……」
混濁した意識に、閃光が宿った。
「……ど、どういう意味だ……」
「わたしを満足させたら、教えてあ・げ・る。だから、ねえ早くう……」
「い……厭だ。俺は誓ったんだ。由紀以外の女とは寝ないって……」
「強情ね。じゃあ、教えてあげるわ。あなた、川村って男を知ってる?」
知っているどころではない。この数ヶ月間、自分を苦しめ続けてきた名前を突然聞かされ、亮輔は絶句した。
「気づいてるかもしれないけど、奥さん、川村の女になったのよ」
「…………!」
妄想しては打ち消し、否定するそばから疑い続けてきた、妻と男の不倫関係。それをこうも明確に、しかも初対面の女から宣告されるとは…。亮輔は、果てしない闇の底へ落下していく感覚を味わった。
「それでね、他人の奥さん寝取っただけじゃ悪いから、旦那のほうも気持ちよくしてあげようって。で、わたしが寄越されたわけ」
言いながらも女の舌は蛇のように亮輔の全身を這い回る。
「今ごろ、由紀さんも川村に抱かれているはずよ。あいつったら『夫婦を同時に浮気させるダブルプレイ計画だ』なんてうそぶいてたから」
しなやかな女の指が、再び亮輔自身をしごき始めた。
(……由紀が、川村と……)
組み敷かれて凌辱されている由紀の姿を思うと、いけないと戒めながらも陰茎にますます力が漲ってくるのをどうしようもできない。
「まったく卑劣なこと考えるわよね。骨の髄まで腐った最低な男。そんなやつに関わったばかりに可哀相な由紀さん。でも、川村に一度犯されたら、もうどうにもならなくなるの。わたしも同じだから、よくわかる。あいつに『新しい女との刺激のために亭主を逆レイプしてこい』なんてメチャクチャな命令されて……。それでも逆らえずにこうやって……」
手が麻美と名乗る女の股間に導かれた。すでにそこは溢れるほどに潤っている。自由を取り戻し始めた亮輔の指は、いつしか秘芯の奥深くさまよっていた。
「うふふ。大きいわ、亮輔さん」
麻美は再び亮輔の上に跨ると狙いを定め、腰を落としていく。ツルリという感じで、亮輔の勃起は灼熱のぬめりに包まれた。
「ああ……素敵!」
「うう……俺は……信じない……くそ……信じるもんか!」
つかの間、醒めた表情になった麻美は次の瞬間、凄艶な笑みを浮かべた。
「気持ちはわかるけどね。じゃあ考えてみてよ。どうして私がこうしてここにいるのか」
「そ……それは……」
言われなくてもわかっていた。
数時間前まで隣のリビングで食事を共にし、愛らしく微笑んでいた由紀。彼女が姿を消し、麻美が寝室にいる以上、この状況を作り出す企みに由紀が加担していることは間違いない。夫が薬で眠り込んだのを見届けて打合せどおにり女を引き入れ、夫婦のベッドへ導いた。そして自分は、川村のもとへ……。
たとえ強制されて仕方なく従ったのだとしても、由紀は夫である自分ではなく、異常な計画の立案者の側についたのだ。
(……俺は……由紀に……捨てられた……)
その事実が、亮輔を完膚なきまでに打ちのめしていた。
「あっちが愉しんでるんだから、置いてけぼりにされた者同士、こっちもせいぜい愉しみましょうよ。……うんんっ……いいわ!」
きゅんと反り返る女の裸身が、由紀とダブった。憤怒、屈辱、落胆、嫉妬。あらゆる負の感情に支配され、亮輔は腰を突き上げた。
「ああ……イク、イクわ! 亮輔さん。一緒に……お願い!」
達してしまえば、かすかに残された由紀との関係をつなぎ止める絆さえ断ち切ることになる。だが、もう何もかも、どうでもよかった。亮輔は目の前でぶるぶる震える女の乳房にむしゃぶりつくと、破滅という名の秘奥に向けて突き進んでいった。
「ああっ……亮輔……麻美って呼んで!」
「……あ……麻美……麻美いっ!」
滂沱たる涙を流しながら、亮輔は絶望の中でおびただしく射精した。
<第一部 了>
- 2014/07/21(月) 09:42:02|
- 背信・流石川
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「……なあ、由紀。ちょっとおもしれえ趣向を考えついたぜ」
川村が不敵に笑ったのは、けばけばしいラブホテルのベッドで、全裸にガーターベルト姿の由紀を四つん這いで背後から責めているときだった。
「……えっ……ど、どんなこと?」
官能の波にたゆたい汗みどろになりつつ、ドキリとして由紀は振り返った。
川村に支配されてから三ヶ月。男の要求はますますエスカレートし、異常な性行為を求められることが多くなっていた。
場末のポルノ映画館の暗がりで怒張に奉仕させられた後、小便と精液の臭いが漂う男子便所で犯されたのはいつのことだったか。高層マンションの屋上で全裸にされ、ひんやりとした風に吹かれて立位のまま交わったこともある。あるときは、遊園地の観覧車の中でパンティを降ろされ、ガラス窓に手を突いてゴンドラを揺らしながら貫かれもした。深夜の公園で交わったときには、覗いていた痴漢たちの手で乳房や媚肉を弄ばれた。
今、川村の巨根が根元まで埋め込まれているのは、由紀のアヌスだった。膣には媚薬のたっぷり塗られた巨大な張り型がくわえ込まされている。その他にもSM、スカトロ、複数プレイなど、それまで自分とは無縁と思っていた暗鬱な性の世界を、由紀は川村によって次々に体験させられ、その魔力の虜となっていった。
さまざまな痴態を記録するのも川村の趣味だった。命ぜられるままに濃い化粧を施し、真紅のコート一枚のみをまとった格好で脚を大きく広げて、うっとりと自慰に耽る由紀。黒革のボンテージルックで跪き、毛むくじゃらの股間を念入りに舐める由紀。亀甲縛りに口枷を噛まされたまま、男の肩に両脚を担がれ胎内深く貫かれている由紀。あげくには強力な浣腸液を注入され、脂汗を滲ませながら大便を迸らせる瞬間まで撮影されてしまっていた。
ビデオカメラも頻繁に用いられた。川村が指示するシナリオに従い、押し入った暴漢に凌辱の限りを尽くされるOL、夫の上司に服従されられる若妻、進んで医師に身を任せる看護婦など、さまざまな役柄を演じさせられた由紀があられもない体位で凌辱される姿が撮影され、川村のコレクションとなっていく。
そのあとには決まって気絶するほど激しく蹂躪された。
(あんな写真を亮輔に見られたら……)
だが、由紀に拒絶を許さないのは、そうした脅迫ネタの存在ではなかった。身も心も完全に川村の虜となってしまった若妻は、彼との関係が露見して夫と別れることになっても仕方ないとすら思い始めていたのだ。
(それよりも……ああ……)
肛門の最奥を間断なく突き上げてくる川村の逞しさを、由紀は思った。
(もう、このセックスを忘れられない。川村さんに捨てられたくない……)
だから、どんなひどい要求をされたとしても、自分は結局従ってしまうだろう、と哀しく認めるのだった。
川村がかねて狙っていた通り、由紀はその性技に屈した美しい娼婦と化していたのである。
だが今回の川村の思いつきは、由紀の想像をおよそ凌駕するものだった
- 2014/07/21(月) 09:41:01|
- 背信・流石川
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川村の魔力を知ってしまった由紀には、夫・亮輔のセックスはまるで子供っぽいものでしかなかった。
「旦那にも、ちゃんとやらせてやんなよ。俺は博愛主義だからさ」
冷笑する川村に指示されずとも、亮輔に求められれば罪悪感も手伝って応じざるを得ない。だが、かつてはあれほど心ときめいた夫との交わりは、もはや失望しかもたらさなかった。
(川村さんのあれは、こんなもんじゃない。由紀を壊しそうに大きくて逞しいの……ああ……ほしいわ)
亮輔の硬直を受け入れながら、川村に貫かれていることを夢想して、由紀はオルガスムスに達するのだった。
「次のデートのときは、もっとスケベな格好してこいよ」
最近では言葉づかいもすっかりぞんざいになり、由紀を奴隷のように扱うこともしばしばの川村だった。
亮輔は妻が他の男たちに見られることを嫌い、おとなしめの服装でいることを望んできたのに対し、川村は由紀にとびきり淫乱な格好をさせたがった。身体の線がくっきりと浮かぶようなタイトニット。膝上数十センチの超ミニスカート。ホテルのプールへ誘われるときは当然のようにTバックのビキニを着させられる。
やがて下着をつけることすら許されなくなった。ノーブラにタンクトップ姿の由紀が、街ゆく男たちの視線を集めないわけがない。うっすらと透ける乳首のシルエットに容赦ない欲望がまとわりつく。
自分の女となった由紀が露骨な激情の視線にさらされることに、川村は満足を覚えるようだった。
電車の中でも、ノーパンにミニスカートの由紀を座席に座らせ、わざわざ脚を開くよう強要したりする。その後、二人きりになると、
「くくくく。正面に座ってたあのオヤジ、食い入るようにおまえの股間を見ていたよな。見えてたんだぜ、きっと」
などとからかいながら、いつになく冷酷な目で由紀の裸身に挑みかかるのだった。当初はそんな川村の性癖に戸惑い、やめてくれるよう懇願した由紀だったが、やがて被虐的な快感を覚えるようになっていった。
「……ああ、そうよ。見られてたわ、由紀のおま×こ……」
「ふふふ。どんなふうに」
「……この女と一発やりたいって。由紀とセックスがしたいって……ああ」
「おまえはどうだったんだ、そんな目で見られてよ」
「……すごく感じちゃった……ああ、濡れちゃったの」
などとあられもなく口走りながら、激しく燃え盛り、肉の愉悦を堪能するのだった。そこにはかつて理知的で貞淑だった由紀の姿は微塵もなかった。
- 2014/07/21(月) 09:39:55|
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北海道から帰って以来、由紀は日に日に変わっていくようだった。
亮輔が夫婦共通の知人であるカメラマンと酒を飲んだとき、下卑た笑みを浮かべて言った。
「由紀ちゃん、ますますイイ女になったよなあ。前は爽やかな美人って感じだったけど、このところ何か妖しいフェロモンが出てきたっていうか。仲間内でも『ゾクゾクしちまう』って評判だぜ。ああ、悪い悪い。亭主の前でこんなこと。だけど、結局おまえの仕込みがいいってことなんだから、怒るなよ」
確かに最近の由紀は、たおやかな風情が姿を消し、凄みのある美しさを醸している。女としての部分がにわかに強調されていく変貌ぶりは、夫である亮輔さえ時に息を呑むほどだ。研ぎ澄まされていく妻の美に夫として満足しながらも、それが他の男との情事による結果なのではないかという疑念を払拭できない。
「あの身体は、もう俺だけのものじゃないのか? 誰かに思うさま貪られているのか?」
疑心暗鬼は屈折した欲望を呼ぶ。亮輔が求めれば由紀も応じてくれるのだが、どこか受身の妻を感じざるを得ない。ますます細かくなった肌のキメ。みっしりと量感をたたえた白い乳房を凌辱するようにもみしだきながら、
(このおっぱいを他の男が愉しんでいるとしたら…)
異常な昂奮から一度の射精では飽き足らず、二度三度と妻の奥深くに荒ぶる感情を吐き出す。かつてない快感に恍惚とする一方、冷静に由紀を観察している亮輔がいた。ゆさぶられながら固く目を閉じ、まるで義務の時間が過ぎるのを待っているような彼女を。
運命を一変させる悪夢が訪れたのは、そんなある日のことだった。
- 2014/07/21(月) 09:38:39|
- 背信・流石川
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由紀の北海道行きを、亮輔は止めることができなかった。妻が、自分を口説こうしている男と、二人きりではないとはいえ一週間近く行動を共にする。夫として平常心でいられる道理がない。だが、彼は歯を食いしばって見送ったのである。
(いつか亮輔が、わたしから去っていってしまうのではないか)
意味のない不安から、別の男に抱かれようとしている由紀。
(束縛しようとすれば、由紀は俺から離れていってしまうに違いない)
物わかりのいい寛大な亭主を懸命に演じようとする亮輔。
出発の前に夫婦が腹を割って話し合いをしていれば、後の悲劇は防げたのかもしれない。
由紀不在の永い時間。亮輔は胸中にどす黒い疑心が広がるのをどうしようもできなかった。旅に出ている間、毎日電話で連絡を入れることが夫婦間の習慣となっていた。現地の天気、目にした風景、食事の内容などささやかな報告をするだけで、亮輔の心は満たされる。
それが三日目の晩、途絶えた。何度、自分から電話をかけようとしただろう。しかし、自身の嫉妬をさらけ出すことになりはしないか。そう思うと亮輔は、手にした受話器を戻すしかないのだった。
まんじりともせずに過ごした亮輔に、由紀からメールが届いたのは翌日の昼前だった。
「昨夜は夜も取材だったの。また連絡するね」
由紀にしては短い内容。
(なぜ、電話ではなくメールなのか)
もたげる疑問に(もう今日のロケが始まって、スタッフが周囲にいるんだろう)と自分を納得させようとするものの、
(それなら朝、ホテルの部屋から連絡すればよかったじゃないか)
と思えてきてしまう。行き着くところは、
(誰かがそばにいて、それができなかった)
という結論になってしまうのだ。
その後も由紀からの連絡はなかった。
最終日、とうとう堪えきれずにかけた電話。由紀の対応は明らかに不自然だった。
「あいつ、川村はどうした?」
久しぶりに妻の声を聞けた安堵と、それまで抱えてきた嫉妬が交錯し、ついに飛び出してしまった詰問。由紀の返事は期待通り、
「わたしを信じて」
というものでありながら、いつもの甘い気配がなかった。なおも話そうとする亮輔に、
「……じゃ、じゃあ、あなた。もう遅いから」
一方的に切られてしまった電話。不安は妄想を呼び、亮輔は孤独の中で悶絶した。
- 2014/07/21(月) 09:37:47|
- 背信・流石川
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亮輔にとって由紀は、三十八年間の人生における掌中の珠だった。
運命の女と出会う前、彼は自分の人生にある程度の満足を覚えていた。知らぬ者のない一流電器メーカーの商品開発職という仕事。学生時代からの付き合いで結ばれた妻・洋子。郊外ながら東京二十三区内に購入した三LDKのマンション。洋子の身体的な理由で子供にこそ恵まれなかったものの、このまま静かに歳を重ねていき、いつかそれなりに満足ができる生涯を終えるのだろうと考えていた。
だが、由紀との邂逅は、そうした人生観を瞬時にして瓦解させた。
(こんなに美しい女が現実の世界にいたなんて)
スクリーンかグラビアの中でしか目にできないはずの存在が、いきなり生身で現われた。手を伸ばせば届きそうな距離に……。気がつくと亮輔は理性を忘れ、猛然とアプローチをかけていた。届く余地などない想いだったはずが、思いがけなく由紀も亮輔を愛してくれるようになった。
その後に訪れた試練の歳月。あれほど従順だった洋子は夫の変心を知ると、般若と化した。さんざん荒れ狂った末に会社の上司に亮輔の不貞を直訴し、慰謝料をよこせと泣きわめいた。結果、亮輔は退職を余儀なくされ、貯蓄をはたき、マンションを手放したのだった。
それでも彼の心は、かつてないほど深く熱く燃え盛っていた。
(由紀と人生をやり直せるのなら、身ひとつになっても構わない)
悲願が叶い迎えた由紀との結婚式。亮輔の瞳には万感の涙があった。まばゆいほどに輝くウェディングドレス姿の新婦。周囲の羨望と嫉妬の視線。思えばこのときが、亮輔の絶頂だったのかもしれない。
変調は間もなく訪れた。
(……由紀を絶対に失いたくない……)
幸福を満喫しようとすればするほど、灼けつく想いは日に日に強まっていった。由紀が、半生で得たすべてを代価に購った女だからという理由だけではない。もはや由紀は亮輔を支配する価値観であり、生きる意味そのものとなっていたのだ。
(あんなにいい女なんだぞ。男は誰もが由紀を狙ってる。一発やりたいと妄想している)
それだけの女に愛を捧げられた誇りより、根拠のない嫉妬が先に立った。理屈ではない。美しい女を妻に迎えた男の宿命を愉しむ余裕が亮輔にはもはやなかった。
だが、それでいて狂おしい気持ちを伝えられない。
(男の、しかも九歳も年上の男のやきもちなどみっともない。呆れられ、蔑まれるに決まってるじゃないか。由紀に嫌われたら、もう俺は生きていけない)
だから亮輔は、徹頭徹尾“寛大で物わかりのいい亭主”を演じると心に誓った。
(すべてを許し、すべてを愛せる夫こそ、由紀にはふさわしい)
それが良くなかったのかもしれない。不安、怖れ、嫉妬。捌け口を失ったあらゆるエネルギーは内向し、爛熟した。
寝物語に由紀が川村のことを口にしたのは、そんなある晩のことである。言い寄ってきては退けられる哀れな男の物語と嘲笑しつつも、初めて耳にした具体的な男の名は実像となって、亮輔の心を暗く焦がした。
- 2014/07/21(月) 09:34:42|
- 背信・流石川
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由紀が北海道から戻ってから、つまり川村の女になって以来二ヵ月が過ぎた。
(ああ……わたし……またおっぱいが大きくなったみたい)
彼のマンションから、またしても朝帰りをしたある日。夫・亮輔が出かけた後の自宅で一人湯舟に浸かりながら、由紀は全身をゆっくりと愛でた。両の手でそっと乳房を包み込むだけで、痺れるような快感が駆け抜ける。
(それにしても……)
驚嘆すべきは川村の精力である。亮輔も決して弱いほうではなかった。いや、それまでに由紀が付き合ってきた何人かの男たちの淡白さに比べれば、性欲も持続力も人一倍といってよかった。だが、川村の絶倫ぶりはその比ではない。由紀の知っている川村のペニスは絶えず天を突くほどに怒張していた。
いったん果てた後でも、由紀の胎内でたちまち回復し、いわゆる抜かずの状態で立て続けに責められるのである。川村がようやく満足すると、灼熱の逸物に白い指を絡ませて気を失うように眠る。朝はといえば、すでにはち切れんばかりに充実している陰茎を唇に含まされ、念入りに奉仕することが目覚めの儀式となっていた。
由紀もまた、そうした慣習を当然のこととして受け入れ、甘えるような仕草で川村が望む行為に艶かしく励むのだった。
(……今日も……ああ……凄かった……)
つい先ほどまでの激しかった凌辱に、下半身はおろか全身が嵐に嬲られた後のように熱い余韻を宿している。
この二ヶ月で由紀の体重は四キロも落ちていた。だが、下腹部や二の腕の余分な脂肪が取れた一方で、乳房や腰まわりは蠱惑的に肉づき、元来の爽やかな色気に加えて妖艶なフェロモンが漂うようである。
以前から由紀を知っていた男たちですら、その変貌ぶりに息を呑み、他愛ない会話をしながら妄想の中で由紀を犯すようになった。川村の丹精によって、由紀は女として最も美しい時期を迎えていたのである。
自身に潜んでいたメスの官能を次々と開拓される悦び。圧倒的なオスの性に支配される被虐の心地よさ。類まれな精力が自分だけを求めてくれる優越の想い。肉体も心も川村の虜となり果てた由紀は、いつの間にか荒廃した家庭の気配にすら気づかなかった。
ほとんど空っぽの冷蔵庫。脱ぎ捨てられたまま放置された衣類。すっかり枯れてしまった植木。それらは確実に蝕まれ、壊れつつある亮輔の精神を象徴していたというのに。
- 2014/07/21(月) 09:32:05|
- 背信・流石川
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川村とは、北海道での限定した関係にするはずだった。亮輔との結婚生活を壊すつもりは毛頭なかったし、どれほど川村が求めてこようと毅然としていようと決めていた。だが、実際には東京へ帰ってきてからも、由紀は川村の誘いを断ち切れなかった。
「さあてと。今日もたっぷり可愛がってやるぜ」
仕事の打合せの後は、当然のようにホテルへ連れ込まれるようになった。行けば早くて数時間、ときには十時間以上も弄ばれることになる。
「そんなにしゅっちゅう家は空けられないわ。せめて月に一度とか、二週間に一度にしてください」
どれほど由紀が嘆願しようとも、川村はどこ吹く風だ。
もうひとつ、由紀の恐れているのが妊娠だった。まだ身ごもった経験こそないものの、亮輔との結婚前に産婦人科で検査を受け、母体として欠陥がないことは証明されている。一方で由紀はピルを受け付けない体質だった。対策は男にゆだねるしかないのだが、川村は避妊を一切しない。
「安全日のときは教えるから、それ以外はゆるして」
そんな由紀の叫びをせせら笑い、川村はいつも子宮の奥深く、密度の濃い白濁をさんざんに浴びせかけるのだった。
「本当に妊娠したらどうするの?」
「産めばいいじゃねえか、旦那のガキとしてな。腹ボテになりゃあ、それ以上妊娠の心配なんかしないで、おまえも思いっきり中出しを愉しめるってもんだ」
このままでは、いつか孕まされてしまう。不安を胸に抱えながら、一度官能の奔流に呑み込まれると我を忘れ、
「由紀を妊娠させて!」「あなたの赤ちゃんが欲しいの!」
などと絶叫してしまう由紀だった。
(もう終わりにしよう……)
何度考えたか知れない。だが、自分から別れを切り出すには、川村とのセックスはあまりに甘美すぎた。決まって気も狂わんばかりの快楽を約束してくれる川村に対して、由紀が従順な女へと変わるのにそれほどの時間はかからなかった。
もはや、主従関係は完全に逆転していた。
やがて、情事の場は川村のマンションに変わった。性処理の相手はもちろん、掃除・洗濯・食事の仕度と、あらゆる世話をさせられる。電話やメールでの呼び出しは、当初こそ平日の昼間だったが、そのうち夜間や休日にもかかってくるようになった。そのたびに由紀は亮輔にいろいろな口実を設け、後ろめたさを胸に男を訪ねるのだ。
持たされた合鍵で部屋に入ると、
「よう、お帰り。旦那とは気持ちのいいおま×こしてるかい?」
ビールを呑みながら尋ねる川村は、下半身丸出しでソファに悠然と腰掛けていることが多かった。
「……ああ……」
すでに何十回も受け入れ、そのたびに恍惚の頂点へ導いてくれる肉塊。それが隆々とそそり立つさまに、由紀はふらふらと吸い寄せられ、外出着のまま川村の股間に脚を揃えて跪くと、まず舌と唇の奉仕を始めるのが常だった。
美しく化粧を施した由紀が、頬をへこませて自分の怒張を喉元深く出し入れするさまを、川村は満足そうに見下ろす。
(ふん。可愛い女になったな)
やがて、充分に欲情が高まったところで「こいよ」とベッドへ誘う。従順にしたがう由紀。乱暴に押し倒し、荒々しく下着を剥ぎ取ると由紀の秘芯にはびっしょりと夜露が降りているのだ。そして挿入。待ちかねたように絡みついてくる熱肉の感触を味わいながら、律動を早めていく。
「あああ……川村さん! たまらないわ! 由紀、もうイッちゃう!!」
あれやこれやと淫らな体位を強制され、精も根も尽き果てた状態のまま、川村の腕の中で朝を迎えるのは何度目だろうか。
もともと急な取材や泊りがけのロケが多かったとはいえ、さすがに亮輔も不審に思っているはずだ。確実に近づいている破局の足音。だが、それでもいいとさえ、この頃の由紀は思い始めていた。
- 2014/07/21(月) 09:17:03|
- 背信・流石川
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川村はほくそ笑むと、いったん由紀から離れ、四つん這いになるよう無言で促した。電話での夫婦の会話は、まだ続いている。
「あいつ、川村はどうした?」
「……わたしがあんまりつれなくするから、機嫌悪いの。どっか飲みに行ったみたい」
亮輔に告げながら、由紀は川村の指示に素直に従った。ベッドの上に片腕をつくと、自分から双臀を川村のほうへ突き出し、脚を開いていく。
(その男に股開きながら、平気で嘘を吐く。女ってのは本当にこわいぜ)
内心あきれながらも、あの由紀をここまで自分の言いなりに調教できたことに、川村は満足していた。
「まだ、おまえに気があるのかな」
「……さあ。でも……わたしは……何とも思ってないから」
しとどに濡れた花弁がぱっくりと見えると、川村はその中心にデカ魔羅をあてがった。「……じゃ、じゃあ、あなた。もう遅いから、電話切るね」
川村の意図を悟った由紀は、慌てて告げた。
「あ、悪かった。じゃ、おやすみ」
「おやすみ、あなた」
じわりと割け入れた。たちまち待ち焦がれていたように、秘肉が絡みついてくる。
「愛してるよ、由紀」
「ゆ……由紀も、愛してる……」
通話スイッチがオフになった瞬間、川村は一気に根元まで埋め込んだ。
「ひいっ。か、川村さんっ」
「よくもコケにしてくれたな。おい!」
「ご、ごめんなさい……ああっ」
「おまえはもう、俺の女だ。いいな」
「あっ、もっと優しくして……そ、そうよ」
「誓うんだ」
「は、はいっ。由紀は……ああっ……由紀は川村さんの女です……だから、もっと」
しなやかな獣を思わせる発達した裸身を揉み絞るように、由紀は髪を振り乱して叫んだ。「俺のいうことは何でも聞くな?」
「はいっ……由紀はもう……川村さんの奴隷です……ああっ」
「よし。それじゃあ出すぞ、おま×この中に」
「あんあんっ……いっぱい、いっぱいちょうだい……」
「妊娠させてほしいと言うんだ」
「あああ……お願い……川村さんっ。由紀を妊娠させてえっ!」
「ううっ、出るぞ。はらめ、はらむんだ、由紀っ!」
夥しい量のザーメンが子宮に炸裂した瞬間、由紀の意識はすっと遠くなった。
- 2014/07/21(月) 09:16:18|
- 背信・流石川
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翌日から由紀と川村は、取材撮影を終えるとすぐに部屋にこもり抱き合った。もう遠回しの手続きなど必要なかった。互いの衣服をはぎ取るように脱がせ合うや、シャワーも浴びずに、ふたりは交わった。由紀は愉悦の表情で川村の肉棒を迎え入れた。
憧れの女をとうとうモノにした川村の欲望は衰えることを知らず、果ててはたちまち回復し、また求めてくる。由紀も旺盛に応えた。互いの性器を舐め、すすり合った。亮輔には見せたことのない淫らな体位で貫かれ、果てた。部屋の中には淫靡な音と川村の精液、由紀の愛液の匂いが混じり合って満ちていた。そのまま川村に抱かれて眠った。
そして富良野取材最後の夜がきた。由紀は、ベッドに腰掛けた川村の股間に全裸で跪き、勃起した彼のペニスを丹念に舐めている。
「俺のチンポ、おいしい?」
陰毛に顔を埋め、唇と舌での奉仕を続けながら、由紀は目だけをあげてこくりと頷いた。「由紀ちゃんが、こんなに好きものだとは思わなかったよ」
からかうように言うと、由紀は口からペニスを外した。呼吸が乱れている。
「はあ、はあ……意地悪。川村さんのせいよ。それから、この子。おっきいんだもん」
うっとりと肉棒へ視線を絡ませると、再び口に含んだ。相変わらず大きすぎて、半分も入らない。もう何十回目の奉仕になるのかもわからなくなっていた。
ベッドサイドに置いた由紀の携帯電話が鳴り出したのは、そのときだった。ぴくりと由紀の動きが止まる。
「旦那じゃないのか。心配して」
「……たぶん、そうだと思う」
「出てやれよ」
「でも……」
「じゃあ、俺が代わりに出て挨拶してやろうか。由紀のおま×こ、いただいちゃいましたって」
「もう、意地悪」
軽く睨むようにすると、由紀は裸のまま川村に背を向け、携帯電話を手に取った。
「もしもし」
「俺だよ」
受話器から暗い声が聞こえてくる。
「ああ、あなた」
「今日は早かったんだな」
「あなたが心配するから、早く帰ってきたのよ。えらいでしょ」
「まさか、男と一緒じゃないだろうな」
「何言ってんの。わたしを信じてよ」
つい今まで自分の陰茎を舐めておきながら、電話の向こうの夫に甘い声で語りかける由紀を見ているうちに、川村の中にむらむらと嫉妬がわき起こった。由紀の正面に回り込むと、つややかな脚を広げ、薄い恥毛に覆われた股間に顔をうずめた。
「あっ!」
「どうした?」
「な……何でもない。向こうの壁で何かが動いたような気がしたの」
目線でたしなめながら逃れようとする由紀の太股を押さえつけて、川村は舌を進めた。そこは熱く濡れそぼっていた。脚からゆっくりと力が抜けていく。
「あ……」
亮輔に気取られぬよう、きつく目を閉じて押し寄せる快感の波から必死に堪えようとする由紀の表情に、川村の劣情はますます刺激された。
「……と、とにかく、あなたに恥じることなんか……何もないから……」
ぽってりとした唇が半開きになり、白い歯が覗く。急にうつろになった由紀の声に、亮輔は逆に情感がこもったと受け取ったようだった。
「由紀が好きなんだよ。だから心配なんだ」
「由紀も……ああ……あなたが大好き」
(めでたい男だよな。その愛しい女房は素っ裸で他の男におま×こ舐められて濡らしてるんだぜ)
- 2014/07/21(月) 09:15:22|
- 背信・流石川
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どれくらいの時間が立っただろう。昨夜、一睡もせず抱き合ったばかりだと言うのに、川村と由紀は憑かれたように互いの身体を貪り合い続けた。今、由紀はあぐらをかいた川村の膝の上にまたがらされ、何度目かの絶頂に向けて、ひたすら肉を悶えさせている。
「俺と旦那と、どっちがいい?」
ゆっくりと突き上げながら川村が尋ねる。右手でまさぐられる豊満な乳房は、由紀の汗と川村の唾液でぬらぬらと光っていた。絡みついたふたりの陰毛は、由紀の蜜に浸っている。今晩だけですでに二回、射精している川村は、余裕をもって由紀の身体を楽しんでいる。
「あん……そんなこと、言えない……」
水を浴びたように濡れた首筋にほつれ毛をへばりつかせ、切なげに瞳を閉じた由紀。
「たのむ。正直に答えてくれよ」
「ああ……川村さんのほうが、ずっといいわ……」
「どこがいいんだ?」
「大きくて、逞しくて。セックスがこんなに素敵なんて……ああ……由紀、初めて……」
にやりと笑った川村がそのまま仰向けになると、由紀は自分から結合を深めるように馬乗りになり、狂おしく細腰を揺すり出した。理性が行動させているのではなかった。
「あうう……由紀、どうにかなっちゃう……」
「うれしいよ。由紀ちゃん」
たわわな両の乳房をぶるぶると震わせながら、自分をくわえ込み、恍惚の表情で貪欲に快感をむさぼる由紀。それは川村が夢想していた痴態をはるかに上回る妖艶さだ。
(つくづくいい女だ。もう離しゃしねえよ。この淫乱な肉体に、もっと強烈に俺のセックスを教え込んでやるぜ)
「俺が好き?」
下から乳房を揉み込みながら、誠実な若者らしい声を演じて尋ねる。
「好きよ、大好き……ああ、たまんない……もっと、由紀をめちゃくちゃにしてえ!」
由紀は白眼を剥き、頭をグラグラさせながら、悩ましい言葉を口走った。全身がどろどろに溶け出してしまいそうだった。川村の上でのたうつ由紀の裸身はしとどの汗にまみれ、飛び散る汗が玉のようである。やがて、めくるめく絶頂の瞬間が訪れた。
- 2014/07/21(月) 09:14:39|
- 背信・流石川
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その日、取材が終わるや川村は、現地に住む旧来の友人と会うというのを口実に早々に他のスタッフと別れた。もちろん、自室に戻って由紀の携帯に連絡し、呼び戻す魂胆だった。すると驚いたことに、
「わたしも、今日は食事失礼していい? 疲れたみたいで、ちょっと体調が悪いの」
由紀が言い放ったのだ。一睡もしていない疲れがあるのも事実だろうが、
(早く俺とふたりになりたがってるんだ!)
今こそ川村は確信した。
「あれえ? 何だかふたりして怪しいなあ」
カメラマンがひやかしたが、昨日までの他人行儀な雰囲気を知っている彼が、本当はまるで疑ってなどいないことは明らかだった。
いったん自室に引き上げた川村は、すぐに内線電話で由紀に連絡を入れた。
「俺。これから行っていいだろう」
「え? で、でも……」
昨夜以前にリセットされたというほどではないものの、由紀の声は硬く、よそよそしさを含んでいる。
「とにかく行くよ。話はそれから」
言うや川村は、小走りで由紀の部屋へ向かった。一刻も早く、由紀の身体に新たな自分の刻印をきざみつけなければならない。
(まだ、由紀の気持ちは揺れている。今日、もうひと押しすれば、完全に俺の女になる)
ノックをすると、少し間をおいて扉が静かに開かれた。取材中にまとっていた清楚なワンピース姿のままである。昼間、抑えていた欲情が堰を切って噴出し、川村は乱暴に由紀の身体を抱きすくめた。かぐわしい髪の香りが鼻腔を刺激する。
「あ……ちょ、ちょっと……」
「嘘なんだろう、調子が悪いなんて」
言いながらも、首筋に舌を這わせ、胸のあたりを激しくまさぐる。
「やめて。そんな、いきなり……」
あらがう由紀に構わず、川村は手をスカートに割り入れ、一気にパンティの中にまで押し進めた。そこはもう十分なほどに熱く潤っていた。
「……ほら。こんなに……俺に抱かれたいと思っていてくれたんだろ」
由紀の抵抗がやんだ。川村の背中におずおずと腕を回し、胸に顔を埋めてくる。
「……だって……」
由紀が股間を濡らすまでに自分を求めていたと知って、川村は有頂天だった。
「俺もだよ……ほら……」
手をとって屹立している怒張へと導いた。由紀はまったくなすがままだった。
「……ああ……」
甘い息をもらすと、ゆっくりと川村の股間をまさぐり始める。それだけでもう、爆発してしまいそうだ。由紀を抱き上げると、川村はベッドに横たえた。衣服を脱ぎ捨てる川村の気配を感じながら、由紀は瞳を閉じて、やがてくる充実のときを待った。
- 2014/07/21(月) 09:13:30|
- 背信・流石川
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(ああ。わたしったら、どうしちゃったんだろう)
川村の読みは正しかった。懸命に仕事に集中しようとするのだが、由紀の心はすぐに昨晩の記憶へと飛んで行ってしまうのだった。秘肉の奥深く、まだ川村の巨大な肉塊に貫かれている感覚が生々しく残っているせいかも知れない。女の最奥だけではない。限界まで押し広げられた脚の付け根。荒々しく翻弄された両の乳房。激しく打ちつけられてギシギシと悲鳴をあげた腰。全身の至る所に、官能の余韻がぶすぶすとくすぶっていた。
今朝、シャワールームで鏡に映した裸身のあちこちに、キスマークと歯形がまざまざと残っていたことを思い出す。
(あの人とのときは、こんなことなかったのに……)
夫の亮輔も性的に弱いほうではない。結婚前、男と女として付き合い出してからというもの、会えば決まってセックスをしていたのだが、あの頃は翌日に淫らな想いを引きずったり、まして仕事に差し障るようなことなどなかった。
彼の自尊心を満たそうと、
「わたし、あなたとするようになってから、エッチが好きになっちゃった」
と告げてはみても、由紀は自分がいわゆる好き者だとは思っていなかった。ときどきの体調や気分によって抱いてほしいという気持ちになることはあったが、しなければしないで、つらいとは感じない。亮輔が喜ぶだろうとそういう女を演じていただけだった。
(それなのに今日は……)
昨日まで「その他大勢」に過ぎなかった川村を見るだけで、胸の奥にジュンとした甘美な思いが湧いてくる。そして由紀の視線は、いつしか川村の股間のあたりをねっとりと這っているのだった。
(ジーンズの下にある川村さんのあれが、わたしの中いっぱいに入ってきた。あんなに大きくて、太くて……ズンてされただけでわたし、壊れちゃいそうだった……)
「ちょっと、お手洗いへ行ってきます」
襲ってきた目まいに似た感覚に、由紀はあわててトイレに駆け込んだ。個室に入り、パンティを膝まで下げると、やはり媚肉はしたたるほどに潤んでいた。
(……ああ……こんなことって……)
七年前、二十二歳の由紀が三十一歳だった亮輔と出会ったとき、彼には妻がいた。いけないと自制しつつも惹かれていく自分をどうしようもできなかった。
「他人を不幸にしたくはないけど、ひとりであなたを待ち続けるのはつらいの」
ある晩、こらえきれずにこぼした由紀の涙が、亮輔の心を決めた。以来、前妻を交えた一年余の修羅場の末に離婚し、由紀は彼との結婚を果たしたのだ。
堂々と彼の妻を名乗れることの晴れがましさ。年末年始もお盆も一緒にいられる幸せ。このまま亮輔と歳を重ねていける自分を心から誇らしく思っていた。
だがやがて、由紀の心の中には、
(いつか彼は、わたしから去っていってしまうのではないか)
という不安が巣くうようになった。亮輔は一度、糟糠の妻を捨てた男だ。もちろん、原因は自分にあり、自分を選んでくれたからこそ今日があることはわかっている。
それでも、やがて再び亮輔が若い別な女と恋に落ち、同じ選択をしないとは限らない。その漠としたおそれが、由紀を川村との不倫に走らせた一因だったのかもしれない。
川村に抱かれたのは、いわば“保険”のつもりだった。三十歳を過ぎて若さが失われつつある自覚。亮輔の心の行方を案じるだけでなく、絶えず身近で自分を“女”として崇め、賛美してくれる存在が欲しかった。だから、肉体関係は一度きり。そうすれば川村は自分を忘れられなくなるはず。そんな計算もあった。面倒くさくなれば、あっさりと捨ててしまえばいいと割り切っていたつもりだった。それが……。
「ああ……ほしい……」
気がつくと由紀は、みずからの指で花芯を愛撫していた。川村の指の動きを思い出し、再現しているつもりで、ゆっくりと膣に挿入する。
(ああ、ちがう。こんなんじゃなかったわ。川村さん……ああ……もっと……)
誰もいないトイレの一室で、由紀はぐっしょりと濡れた股間に指を差し入れ、身悶えた。
- 2014/07/21(月) 09:12:27|
- 背信・流石川
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晴れ渡った景色の中、翌日も富良野での撮影が行なわれた。新緑の景観に合わせて爽やかなライトグリーンのワンピースに身を包んだ由紀は、地元の人びとや観光客への取材をいつものように朗らかに進めている。同行のカメラマンが、
「何だか、今日の由紀ちゃん、やけに色っぽいなあ。さては昨日の夜、旦那と愛の電話でもしたんだろう。『離れてても愛してるわ、あなた』なんちゃって」
などと軽口を叩いている。そんな光景を見ながら、川村は内心得意満面だった。
(ふふ、馬鹿め。由紀は明け方まで、俺に抱かれてヒイヒイよがり泣いてたんだよ)
結局昨晩、川村は都合四度にわたって由紀を楽しんだ。正常位で膣内射精をした後、初めての褥とは思えぬような奔放な姿態を強要し、由紀から歓喜のほとばしりを搾り取ったのである。ようやく満足した川村が身体を離したときには、すでに東の空は明るみ始めていた。その後、せめてシャワーを浴びたいという由紀のために一度自分の部屋へ戻った川村は、狙い続けてきた女をものにした余韻を味わう間もなく、フロントへ降りていったのだ。
完全な徹夜開けである。だが、校了前に煙草の煙がこもる編集部で朝を迎えるときとは異なり、爽快な気分だった。何よりも、夜通しぶっ続けであの高嶺の花・由紀とセックスしたという事実が、川村を高揚させていた。
「どんなところが富良野の魅力だと思いますか」
由紀もまた、一睡もしていない疲労など微塵も感じさせずに、インタビューをしている。ワンピースの胸元を誇らしげに押し上げるふくらみ。
(あのおっぱいを、俺は思うさま揉み上げ、吸いまくったんだよな)
昨夜、さまざまな愛撫を加えていく中で、乳房が由紀にとって鋭敏な性感帯であることを川村は知った。正常位で深く挿入し、律動を続けながら舌で乳首を転がしたり、軽く歯を当ててやると、
「ああ、もっと。おっぱい、いじってえ」
かすれた声で告げながら、由紀は総身をよじらせて燃え上がるのだった。騎乗位ではペニスを最奥に受け入れながら、みずから美乳を手のひらで寄せ上げ、川村の口に乳首をふくませたりもした。
「それでは、お写真を撮りますので、こちらへお願いします」
由紀の声に我に返ると、インタビューが終わったところだった。ふと足元に落としたペンを拾おうと身を屈める由紀。自然と腰からヒップへのラインが強調される格好となった。たちまち川村の脳裏に、四つん這いの格好で突き出された、シミひとつない陶磁器のような双臀の映像がフラッシュバックした。
(あのけつを抱え込んで、俺は後ろからブチ込んだんだ)
理想的な女の曲線を描く裸身がくねくねと身悶え、顔をベッドに突っ伏した由紀の髪の毛がシーツの上で妖しいうねりを描いていた。両手を回してプルンプルンと揺れる乳房を鷲掴みにしてやると、由紀は泣き叫びながら自分から腰を揺すり出したのだった。
「もう一枚ですから。はい、ニッコリ」
カメラマンの横に立ち、長い髪をかきあげながら撮影の指示を出している由紀は、いつもと変わらず清楚で美しかった。あの女がつい数時間前まで汗みどろで自分にしがみつき、あられもない言葉を口走りながらよがり泣いていたなど、信じられない気分だった。
(昨夜のことは俺の夢だったんじゃないか)
そんな気さえする。そのとき、由紀がちらりと川村のほうを見た。視線が絡むとすぐに目を伏せる。頬がほんのり染まって見えるのは、初夏の日差しのせいだけではない。それはまぎれもなく、自分が身体を開きベッドを共にした男、自分を征服した男に女が見せる含羞の差した仕草だった。
(何もなかったように澄ました顔をしてるけど、由紀だって俺とのセックスを思い出しているに違いない。何しろあれだけ強烈に俺の味を教え込んだんだからな)
川村は、由紀の反応に大いに満足した。
- 2014/07/21(月) 09:11:46|
- 背信・流石川
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川村という担当編集者にしつこく口説かれていることを、夫の亮輔は知っている。いつだったか夫婦のセックスの後、ピロートークで男関係を問われ、ベッドに入る前に飲んだワインの酔いも手伝って告白したことがあるからだ。
「へえ……まあ、由紀は美人だもんな。……で、その……由紀の気持ちはどうなんだ?」
平静を装ってはいたが、亮輔の声はかすかに震え、瞳の奥に暗い炎が揺らいでいた。
「うふふ。ばかね、そんなことあるわけないでしょ。川村さんってタイプじゃないし、わたしが愛しているのは、リ・ョ・ウ・ス・ケ・だ・け」
甘えた声を出すと、思いがけないほど強い力で抱きしめられた。三十分ほど前に射精したばかりだというのに、硬くいきり立ったモノが、由紀の下腹部に押し付けられた。
「なんて……なんて素敵なおっぱいなんだ……」
、今、そのタイプではなかったはずの男と裸で抱き合っている。このことを亮輔が知ったら、嫉妬のあまり発狂するかも知れない。見事に発達した豊満な美乳を揉み込まれ、チュウチュウと音を立てて乳首を吸われながら、由紀はぼんやり天井を眺めていた。
(この取材旅行が決まったときから、川村さんに許してしまうつもりだったの……)
ショーツに川村の手がかかった。出発の二日前、わざわざ専門店まで買いに行き、旅行鞄に忍ばせてきたフランス製のシルク下着だった。脱がせやすいように、由紀は腰を浮かせた。
(あなた、ごめんなさい)
亮輔と結婚してから、初めて他の男と共にするベッドだった。
「あっ……」
脚が大きく割り開かれるや、川村のペニスが性急に胎内へと入ってきた。肉襞をメリメリと押し開かれる感覚に、由紀はその巨大さを知った。亮輔より、いや由紀が知っているどの男の記憶よりずっと大きい。絶息せんばかりの圧迫感である。しかし、痛みもなくすんなりと受け入れたことで、由紀は自分の秘芯が熱く濡れそぼっていたことを知った。
「うううっ、これが由紀ちゃんのおま×こなんだね。ああ、絡みついてくるよ」
焦がれ続けた由紀の秘部。その感触をたっぷりと反芻した後、川村が律動を開始した。繰り出される巧みな抽送に、由紀の口から思わず、あえやかな声がもれる。
「あああ……すごい……」
「僕のものが、由紀ちゃんの中に入ったんだね」
正常位にも関わらず、怒張の矛先は確実に由紀の子宮を突き上げてくる。これまで体験したことのない甘美な感覚は、ただ亮輔に対する裏切りの想いを振り切るためだけのものではなかった。
「あああ……そうよ……わたしと、したかったんでしょ?……あん」
思ってもみなかった挑発的な言葉を口走ったのも、ゆらゆらと妖しく燃え上がっていく由紀の官能がなせるわざだった。
「……ああ、そうだよ。ずっとこうなる日を夢見てたんだ」
「由紀の……あんっ……裸とか想像したりしてたの?……ああっ、いいっ」
何度拒絶しても、川村が自分を諦めていないことを、由紀は女の本能から知っていた。その熱っぽい視線を嫌悪しつつ、ストレートぶつけられる欲望に、女として密やかな自負を感じていたのは事実だ。それが今、三年越しの肉体関係として結実した。
「ああ、そうだよ……おっぱいとか、おま×ことか、空想してはオナッてた。……思ってた以上だ。最高だよ」
耳元で囁かれる露骨で卑猥な川村の言葉が今は耳に心地よく、由紀を一層煽り立てる効果をもたらした。突き上げられるたび、身体の奥底が灼けただれた感触に包まれ、頭の中で火花が弾けていく。
「どうして突然……ううう……許してくれたんだい?」
「…………」
亮輔の顔がちらりとよぎり、消えた。今は何もかも忘れて、川村とのセックスに身を委ねたかった。川村の頭に手を回すと、自分から唇を重ねる。官能の炎に炙られながら、すらりと伸びた脚を川村の腰に絡ませると、自分から求めるように腰を揺すり出した。
「……そんなこと…いいじゃない……由紀も……ああ、気持ちいい……」
「うう……ど、どこがだい?」
「……おま×こよ。由紀のおま×こ……ああああん」
恥ずかしい言葉を口にした瞬間、由紀の中で何かが弾けた。髪を振り乱せた凄絶な美貌と、匂うような艶めきに染まる肌がのたうつさまに、川村の欲情は一気に高まる。
「も、もっと言ってくれ!」
「川村さんとセックスして、由紀、おま×こ気持ちいいの。あああっ」
もう限界だった。一際大きなストロークを由紀の最奥に打ち込むと、川村は積年の想いを叩きつけるように、白濁の精を由紀の子宮めがけてしぶかせた。
「……素敵よ、川村さん!」
熱いほとぼしりを胎内深くに感じて、由紀はめくるめく快感に昇りつめ、無我夢中で川村の背中にしがみついた。
- 2014/07/21(月) 09:11:02|
- 背信・流石川
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思わぬ事の成り行きに、川村は小躍りしたい気分だった。
三年前、知人の紹介で初めて会った日から、川村は由紀に夢中だった。小造りな卵型の顔。しっとりと潤いを帯びたアーモンド型の双眸。ふるいつきたくなるように艶やかな唇。豊かに膨らんだ形のよいバスト。きゅんと括れたウエストから、すらりと伸びた見事な脚までのライン。何もかもが川村の好みだった。
由紀が人妻であることは知っていたが、それは川村の邪心を煽り立てる効果しかもたらさなかった。
(何とかして、あの身体を抱いてみたい)
自分の性技に、川村は自信があった。これまで彼に抱かれた女が例外なく、その卓越したセックスの虜となった事実が、彼をますます強気にしていた。
(一度でもやらせてくれれば、俺を忘れられない肉体にしてやるのに……)
だが、由紀のガードは固く、川村の誘いはこれまで何度となく退けられてきた。断固とした拒絶はしない。打合せを兼ねた食事や、それなりに苦労した仕事の打ち上げであれば参加する。だが、その先には決して足を踏み入れさせない。仕事をする人妻として当然ともいえる態度だったが、川村の目には触れなば落ちん風情に映った。
だが、さすがにその状態のまま三年も経つと、川村にも諦めに似た気持ちが強くなる。毎度の誘いは、半ば日常の挨拶と化しつつあった。
今回、六泊を共にする取材旅行でも(あわよくば)という期待がなかったわけではない。だが、それも(どうせ肩すかしに終わるのだろう)ほとんど諦めていたのだ。それが……。
(どういう風の吹き回しかは知らねえけど、このチャンスをモノにしない手はない)
衣服ごしに伝わるみっしりとした肉感。襟元からわずかに覗く胸の谷間が見せる深い闇。何もかも想像していた通りだ。その裸身を思うさま開かせ、組み敷いて身悶えさせている姿を川村はこれまでに何度となく妄想の中で楽しみ、そのたびに自慰に耽ってきた。
(もう少しだ。もう少しで夢が現実になる)
鼻をくすぐる、かすかな髪の香り。川村の陰茎は、すでに痛いほど勃起していた。
「由紀ちゃん。部屋の鍵を……」
何も言わずハンドバッグからキーを取り出し、手渡した由紀の仕草をOKのサインと受け取ったのか、川村はいそいそとドアを開け、中に入った。うかがうように由紀を振り返る。一瞬ためらった後、由紀も続いた。後ろ手に扉が閉められ、かちりとロックが降ろされた。由紀の脳裏に東京で待っている夫・亮輔の顔が浮かんだ。
(あなたが嫌いになったわけじゃない。好き。今でも大好きよ。でも、どこか満たされない気持ちが日に日に高まっていくのを止められない。もうすぐ三十歳。女としての魅力が喪われるのが怖いの。わかってくれるでしょ。許して……)
「ずっと好きだった。初めて会ったときから……。わかってたんだろう?」
由紀の心が変わるのを恐れるように、川村は行動に出た。荒々しく抱きすくめられ、いきなり唇を奪われた。執拗で容赦のないキスだった。侵入してきた舌に、口の中を舐め尽くされる。ためらう舌を巧みにからめとられ、唾液を流し込まれた。
(やっぱり、亮輔とのほうがいい)
そう思おうとするのだが、いつしか由紀のしなやかな腕は川村の背中に回されていた。頭の中がぼうっとなり、白くハレーションを起こしていく。気がつくと進んで舌を絡ませ、男の唾液を飲み下している自分がいた。
立ったまま、ワンピースのジッパーが降ろされ、ふわりと床に落ちる。続いてブラジャーのホックが外されると、八十八センチの乳房がこぼれ出た。重たげに実った、日本人離れしたバストライン。その先端に、男なら誰でもむしゃぶりつきたくなる小豆色の乳輪が息づいている。ひんやりとした外気と共に、川村の射るような視線を感じた。
「ああ、夢みたいだ。綺麗だよ、由紀ちゃん」
放心したように立ち尽くす、パンティ一枚の由紀の身体をベッドの上に横たえると、川村は慌ただしくズボンを降ろしながら、熱っぽい囁きを繰り返した。ブリーフを脱ぎ捨てると、長大な逸物がぶるんと姿を現わした。瞳を閉じている由紀には見えていない。
(すぐにこいつを、おま×こにブチ込んでやるからな。俺の女にしてやるぜ)
心のうちで舌なめずりをしながら、川村は由紀に覆いかぶさっていった。
- 2014/07/21(月) 09:10:03|
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肌の上を慌ただしくまさぐる男の愛撫に身を任せながら、由紀は夫の亮輔を思った。
(あなたが悪いのよ。わたしのせいじゃない……)
北海道・富良野のホテルの一室。嗅ぎ慣れない男の体臭が、今の状況をいやが上にも認識させる。これから別の男に抱かれようとしている自分を、由紀はどこか客観的な気持ちで見ていた。それでも豊かな肢体に潜む官能が、ゆっくりと確実に呼び醒まされていく。
結婚五年目、二十九歳になった由紀は雑誌のフリーランスのライター。出版社や編集プロダクションからの依頼で取材をし、原稿にまとめるのが基本だが、その美貌を評価され、モデルを兼任することもある。旅行雑誌『K』もそのひとつで、由紀は訪れた土地の名所でくつろぐ姿や、名物料理に舌鼓を打つ姿を写真に撮られ、誌面を飾る文章を書く。かれこれ三年続けている仕事だ。
全行程六泊の予定で訪れた北海道取材旅行の三日目。スタッフ全員で食事をした後、ホテルまで戻ってきたところで、編集者の川村が他聞をはばかるようにそっと囁いた。
「これから、ふたりだけで飲みに行こうよ。いいじゃないか、ね?」
川村が毎夜のように、自分を誘う隙をうかがっていることはわかっていた。断られても断られても、めげない男。だが今度は違った。由紀は黙って首を縦に振ったのである。むしろ、そんな由紀の反応に川村のほうが戸惑ったように見えた。
「じゃあ、十分後に一階のロビーで」
秘密めいた口調で告げられたときから、今夜は最後の一線を越えてしまうだろうという予感はあった。二軒目のカラオケボックス。横に腰掛けた川村の手がさりげなさを装って背中に回されるのを、醒めた意識の片隅でぼんやり受け止めていた。拒絶されないとわかると、川村はさらに腰へ、ついには太股の感触を味わうように撫で回し始めた。
午前一時過ぎ、再びホテルまで戻ってくると、川村は当然のように由紀の部屋のあるフロアまでついてきた。それほど酔ってはいないつもりなのに、エレベーターを出る頃には、由紀はいつか肩を抱きかかえられ、川村の肩に頭を預けていた。
- 2014/07/21(月) 09:09:07|
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