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闇文庫

主に寝取られ物を集めた、個人文庫です。

春が来た 第51回

朝早くから、沖田課長が新藤のところへ次なる標的の内偵報告に来ていた

「あの江島係長一派は、全くの下衆どもです
 内偵をすればするほど、悪事が浮かびあがってきております
 あの江島は、上司の職務命令に違反すること数知れず
 特に、同僚の女性職員へのセクハラ、暴力行為も常習で
 セクハラ、煽て、暴力・暴言のコンビネーションで精神状態を狂わせ
 相手が堕ちると、ホテルに連れ込み関係を持つという手口
 この罠に嵌った女性職員は、派手な服装になり仕事は全くの二の次
 所属長からは人事局に早期異動対象者として、報告されています
 彼は、仲間とそんな女性をオモチャにして遊んでいるようです
 ただ、その・・・・・・・・・・」

「ただ?・・・どうしたんだい」

「その・・」

「その?・・・はっきり言いなさい」

「本部長、ここから先は二人でお話ししたいのですが・・・」

沖田の視線が新藤から瑞希の方に向けられた
新藤もつられて、瑞希を見る
瑞希のパソコンを叩いている手が止まった



「彼女も関係があるのか?」

「はい、・・内偵しているうちに判明したのですが
 彼は、そこにいる・・・伊藤さんとも・・その」

瑞希が怒りに震え、沖田を睨みつける


「沖田課長さん!
 はっきりと、言っておきますが
 私と江島係長とはそのような関係ではありません
 なのに、私に関する悪い情報が伝わっているようです
 あなたが調べられた情報を私も聴く権利があると思います
 全て話してください」

新藤は平然として、窓の外を眺めている


「じゃ・・ご本人も話せということですので・・・
 江島は伊藤さんを前の職場の3ヶ月の間、まるで情婦のように扱い
 執務中でも、仲間の連中が訪れるとお茶を出させ
 彼らの前で、お尻をさわるなどのセクハラ行為を行い
 伊藤さん自身はこの事を嫌がるどころか、それに応じ媚を売る態度で接し
 それ故に、仲間連中からも周囲の職員からも江島とできていると噂され
 更にはそれを裏付ける行為として、出退所時の通勤には常に伊藤さんが車で送り迎えをするなど
 誰が見ても疑わしい行為を続け
 目撃情報として、車内で接吻行為をしているとの内部通報もされております」

「情婦だなんて!よくもそんな・・・・」

瑞希の顔は怒りで青ざめている



「本部長!・・このような女性を側に置いておくことは危険で
 即刻、秘書を解任し他部署への異動処置を進言いたします」

「それが真実なら困った事だが、瑞希君・・・反論はしないのか?」

瑞希は、目を細め新藤の足元を見つめたままだ・・

沖田は日頃から瑞希を快く思っていない
虎の威を借りる女狐
狡賢く、生き延びる女
そんな瑞希に、沖田は徹底した内偵を行っていたのだ


「本部長、反論などできるはずがありません
 全て事実でありますし、そのこと大勢の職員が見ております」

「うーん・・・沖田君、一つ確認だが
 車中での接吻行為を通報した者は、匿名だったんだろう?」

「それが、本部長
 あの福祉局の男・・・・先だって自己都合退職を申し出た男
 女に逆上せ上がりその女と情事に耽り、その事で妻から離婚され、挙句にその女から見放された男
 あの男ですよ
 どうも、江島と伊藤さんの噂を聞きつけ、ストーカー行為をしていたようです」

「そうか・・・あの男が」

瑞希は縋るような視線を、新藤に投げかける
それを感じた沖田が言い放つ


「伊藤さん
 もし、あなたが退職を希望するなら
 今、話した情報は全て無かった事として外部には漏らさない
 それが、あなたのご主人やご家族・・・なによりもあなたの為になる
 どうだい?・・・・退職を申し出るだろ?」

沖田はそうしろとばかりに瑞希を睨みつける
瑞希は視線を床に落とし、新藤は目を瞑っている
  1. 2014/11/12(水) 11:33:04|
  2. 春が来た・道明
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春が来た 第52回

沈黙が流れ、空気が淀んでいる
やっと瑞希が顔を上げた

「私は江島係長を訪ねて来られた方にお茶を出しました
 でも、その方達だけではありません
 そこにいらっしゃる新藤本部長のお客様にも、お茶をお出ししました
 江島係長が私に、執務時間中にセクハラをしていたことは
 本部長もよくご存知で、係長の来客の時だけではありません
 私は、嫌で嫌で仕方が無かったのですが、我慢しました
 江島係長はまるでヤクザ男のようで怖かったのです」

「何だって!?・・・みんなは、あなたは触られて喜んでいたと言っているぞ」

「それは違います・・・私は怖かったのです」


沖田は瑞希を甘くみていた

「朝夕、私の車での送り迎えも同じです
 係長の機嫌を取り、職場での不機嫌で粗野な態度をできるだけ
 抑えようとして、私なりにやっていたことです」

「君があの江島の態度を変えようとしてやった事だと!?」

「そうです
 でも、私も甘かった
 車の中でいきなりキスをしてくるとは思いませんでした
 男と女です、力では及ばないのはわかっていますが・・
 この時ばかりは、係長の顔を思いっきり引っ叩きました」

「ほう???・・・口は重宝だ
 では・・・あなたが情事を重ねた福祉局の色男とのことはどうなんだい」

「彼は、可哀そうな人でした
 こんな私に親切、丁寧に接してくれて、いろいろ相談にも乗ってくれて
 奥様が何にお怒りされたのか、私には判りません
 彼は、離婚直後に私に言い寄ってきました
 余りにも彼が気の毒で・・・私も感情が高ぶり、つい彼の思いを受け入れました
 その後、彼は執拗に肉体関係を迫って来ましたが、その時の一度だけ
 私にも家庭があります・・それで、諦めてもらいました」

「な、なんだと・・・」

「ですから・・・私は職場では何も悪い事をしたとは思っていません
 私は生意気で服装も派手、女性職員とも上手くコミュニケーションが取れません
 こんな私の周りに集まるのは、鼻の下を伸ばした男性職員ばかり
 それで、ますます女性職員から疎まれ、私に対して偏見を持って見られていたことは
 私も気が付いていました
 しかし、しかし・・・私は職場において叱られるような事はしていません」

「叱られるような事はしていないだと!」

「はい・・全て私の身を守るためと同情からの行動です
 周りの人が、私を偏見と好奇の目で見ているから
 沖田課長が報告されたように映ったのでしょう
 新藤本部長・・・・本部長は、私の事・・判っていただけますね」

「信じてはなりません・・・この女を」


漸く新藤が目を二人に向けた

「二人とも・・・もう、そのくらいにしときなさい
 沖田君・・・敵が本能寺になってはならない
 ターゲットは、あくまで江島係長とその仲間連中
 彼らにどんなに働きかけても、自発的に職場を去るなどとは考えられず
 我が県民も、そんな対応ではとても許さない
 彼らには、厳しく懲戒免職処分の罰が相当と思うが・・・」

「懲戒免職処分!?・・・それは、証言、証拠の少ない現状では・・」

沖田が力なく、頸を垂れる
  1. 2014/11/12(水) 11:34:06|
  2. 春が来た・道明
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春が来た 第53回

「瑞希君、どうだろう・・ここは一つ、君の力を貸してくれないか?」

「はい??」

「君なら・・あの江島係長の尻尾を掴めるだろう」

「この私に・・・証拠を掴んで来いと言われるのですか?」

「ああ、そうだ
 用心深く、狡賢い彼のことだ・・・君の身も危険にさらす事になる
 しかし・・・首尾よくいけば、ぐーたらで役立たずの職員を一網打尽にできる
 君が協力してくれるのなら、君の将来は私が絶対に保証する
 今のままでは、瑞希君は一生疑われたまま、光が射すこともない
 どうする・・・瑞希君」

「・・・・・・わかりました、やってみます・・本部長」

瑞希は新藤の本意が判らない
しかし、既に肉体関係を持った男の提案だ、その親近感が同意を促した


「よかった
 沖田君、今のこと忘れないように・・・・君が証人だ
 いいかい・・・昨日の敵は今日の友だ
 目的は一つ・・県民に対して不忠の職員の処分だ、いいね」

沖田は、瑞希との共同作戦は気に入らない・・不服そうな顔をしている
それを新藤は見逃さない

「沖田君、納得がいかないようだね?
 どうだい、今夜・・美味しい料理をご馳走するよ」

「私はそんな・・・・・わかりました本部長、お供します」


沖田が事務室に戻っていく

「本部長・・・私も、沖田課長とは上手くやっていく自信がありません」

「仕事に、好き嫌いなどと我侭は通らないよ
 命令された事を、全力で実行する・・・それしかないんだよ
 結果責任は、上司の私が負うし・・・
 君と私はもうとっくに同志だろう?」

「わかりました・・・そうですよね、ふふふ、本部長とは裏切れない同志ですね
 ・・それで、出張のことですが
 主人が了解してくれました
 お世話になっているから、私の手料理でも召し上がってもらえって」

「そう、出張がOK出たの
 それに、私にご馳走をと・・・・いいご主人だ、有難い、行かせて貰うよ」

「主人の言ったとおりになりました」

「えっ!?」

「それでは・・・この土曜日にでも
 あっ・・土曜日は本部長にはプライベートでお忙しい・・・ですよね」

瑞希の好奇の目が新藤に向けられる
新藤は笑って応えた


「もういいよ、彼女の事は気にしないで
 彼女にも、掴まさせてあげるつもりだ・・・幸せをね」
  1. 2014/11/12(水) 11:34:48|
  2. 春が来た・道明
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春が来た 第54回

ここは新藤の幼馴染のお恵が営む料理屋
新藤に沖田がお酒を注いでいる

「本部長、本当に信用していいんですかね・・・伊藤さんを」

「信用?・・・彼女と我々の間に信頼関係があるのかねぇ」

「しかし、先ほどはあんなに」

「馬鹿だなぁ、君は
 あれ位言わないと彼女は動かないだろう?
 君を証人にした意味が判っていない様だ
 しっかり頼むよ、沖田課長・・・・・」

「では・・・女狐を動かすための方便!?」

「私が瑞希君を秘書にしたのは、こんな働き方をしてもらうためだよ
 両者共倒れを狙って作戦を立てるんだよ、沖田君
 ただ、今の瑞希君は少しまともになりかけているから
 心が少し痛むが・・・・・・・・・・・」

「本部長・・・彼女にそのような配慮はご無用と思います」

新藤は笑いながら、沖田に酒を注いだ


「それはそうと・・・君、独身だったね
 結婚はしないつもりか・・・歳は、幾つだった?」

「本部長、からかわないでくださいよ
 とうとう45歳になりましたが、これはという女性には未だに・・」



すっと、静かに襖が開く
着物姿の美女が三つ指をついて、お辞儀をした
沖田はその女性の美しさに、目が釘付けとなった


「ああ、遼子ちゃん、待ってたよ
 さぁ、こちらの沖田君にお酒を注いであげて」

「はい、初めまして・・・遼子と申します
 沖田様、宜しくお願いいたします・・・・」


遼子は、沖田の側に寄ると、早速お酌をする
着物の裾から覗く白い腕と細い指
沖田は緊張している


「沖田君・・・どうした?そんなに固くなって
 この人はご主人を亡くされて、この若さで未亡人なんだ
 これほどの器量だろ・・・私は過去を忘れて再出発を勧めているんだが
 亡くなったご主人に、未だに貞操を尽くしている人なんだ」

「そうですか・・ご主人を亡くされて・・・」

「遼子ちゃんは、ここの仕事にまだ慣れないし
沖田君、良かったら・・・遼子ちゃんを贔屓にしてやってほしいんだが」

「・・・わ、私のような男でよければ」

「わっはは・・沖田君、肩の力を抜いて・・そう、抜いて
 良かった・・本当に今夜は良かった」
  1. 2014/11/12(水) 11:35:46|
  2. 春が来た・道明
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春が来た 第55回

「嫌です、進(しん)さんと別れるなんて・・・絶対に」

遼子は新藤のことを、名で呼び「進さん」と言っている
沖田が帰った後、新藤が遼子との別れ話を切り出したのだ


「遼子、聞き入れて欲しい
 亡くなったご主人が一人目、私が二人目・・・
 今夜、出会った沖田君がきっと三人目の男となって君を幸せにする
 彼は、君に一目惚れだ・・分かっただろう?
 勤勉、実直・・・・間違いなく、君を大切にする男だ
 美しい君は、亡くなったご主人を未だに想っている・・・
 ・・・彼には、君がきっとお似合いだ・・・・彼は誠実で良い男だ」

「そんな・・・そんなこと・・・私は進さんを忘れられない」


新藤が遼子を優しく抱きしめている


「私も遼子のことを忘れたりはできない
 しかし、私には妻も娘もいて、現実に家庭がある・・・
 こんな関係が続くと、君は永遠に再出発ができないし幸せになれない」

「いいえ・・私は、あなたとこうしているだけで幸せです
 それ以上のことは望んでいません・・・お願いします、そんなこと言わないで」

「そうか・・そんなに私を
 でも遼子・・・・急がなくていいから自分の将来を考えてみて欲しい、いいね」

そう言うと新藤は、遼子と唇を合わせる
舌と舌が絡み合い
今夜の遼子は男の舌を捕らえて離さない

薄明かりの中で、従順な女の裸体が浮かびあがる
男の希望で女が裸体を晒しているのだ
しなやかな腕を後ろで組まされ、豊満な乳房を突き出す
少し両脚を開き加減に後ろ姿を男に見せる
肉付きの好い臀部が男の視線を惹きつける
透き通るような輝きの乳房が揺れ、男の愛撫を誘っている

男はこの女によって強い逞しい男に成長した
女もまた、この男によって女の真の喜びを知った


「遼子・・・一人で慰めているところが見たい」

女は頸を振る
あなたにして欲しいと女の目が言っている

「駄目だ・・一人で慰めるんだ・・逝くところを私に見せてごらん」


しかたなく女は男の命令に従い自慰を始めた
蒲団の上に仰向けに寝そべり
両脚をくの字に曲げて開いていく
片手で乳房を揉み、乳首を抓る
もう片方の手が陰核に伸びていく
少しずつ、少しずつ・・・・息が荒くなっていく


「もういいだろう・・・私の上に跨りなさい」

女が焦がれるこの男の怒張が聳えている
この精で離れられない
この精で別れられない
この精で家庭を求めない
女は、静かにゆっくりと腰を落としていく・・・・
・・・愛しい男の視線は冷ややかに女の揺れる乳房を眺めていた
  1. 2014/11/12(水) 11:37:06|
  2. 春が来た・道明
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春が来た 第56回

「未曾有の経済危機からの脱出~自治体それぞれの挑戦」
 このテーマで開催されている大研修会
 そのメインホールでは、新藤が実践発表を行っていた
 新藤の取り組んでいる「人材育成~職員の意識改革とその対応」への参加者の反響は大きい
 それは、有力県の筆頭副知事内定者
 そして次期知事選の最有力候補者であるとの情報が流れていたためでもある


「お疲れ様でした」

「ああ、瑞希君ありがとう・・・君のお陰で満足のいく発表ができたよ」


実践発表を終え、ホールから出てきた新藤に瑞希が声をかけた
新藤が進み、その後に瑞希が続く

「あっ・・ちょっと、本部長待って下さい」

振り向く新藤のスーツの肩に、しなやかな手が伸びる
服に付いた糸くずをその手が摘む


「気が付くね・・・有難う」

新藤が微笑む
そして瑞希が笑顔で応える
その様子を柱の陰から見つめている女性がいた


新藤と瑞希は研修会場の高級ホテルに宿泊している
公費の旅費ではとても泊まれないホテルだが、新藤は差額を自己負担しても意に介さない
新藤は資産家だ
県職員として得る所得より、個人の財産収入の方がはるかに優っているのだ
夕食の後、今夜も新藤は瑞希をラウンジに誘っている
二人は甘いカクテルを飲み談笑していた
カウンター席の奥に座っている女性が新藤に近づいてくる

「進さん・・・楽しそうですね」


瑞希が女性の顔を見て俯いた
そして、新藤に握られていた手をそっと離す


「遼子じゃないか・・・・どうして此処に?」

「私もたまには生き抜きをと・・・それで追っかけて来ちゃた
 でも・・・お邪魔のようですね、進さん・・・・」

「そんなことないよ・・・・どう?これから私の部屋で飲みなおそうか」

「それより、進さん・・・こちらの綺麗な方はどなたですか?」

「ああ・・私の秘書で瑞希君・・いや伊藤さんだ」

「そうですか・・秘書の伊藤瑞希さん」


遼子が瑞希に鋭い視線を送る
瑞希は流石に穏やかでない
なぜこの場所にこの女性が?
感の鋭い瑞希は思った・・・・この人は私と新藤の関係を疑っている


「進さん・・・こんな綺麗な方がいつも部屋にいらっしゃるのなら
 随分とお仕事が楽しいでしょうね・・・・・・手を握ったりして」

「どうしたんだ、遼子
 疑っているのか・・・ばかだなぁ
 瑞希君の手相を視てあげていたんだよ」

「いいんです・・・そんな言い訳
 今日は帰ります・・・でも、私・・この人には進さんを絶対に渡さないから」


こんな場面になると瑞希の肝は据わっている
瑞希は女の戦いには強い
もう・・この人は私のものよ
そのような目で、遼子を一瞥すると


「本部長・・・遼子さんは帰られるそうですから
 私たちも、そろそろ部屋に戻りましょうよ・・・・
 今日はお疲れでしょうから
 私の下手なマッサージでよければ、させていただきます」

「そうだなぁ・・・少し私も酔ったようだ
 遼子・・・関西に戻ったら埋め合わせするから
 今日は、気をつけて帰りなさい
 それと、この瑞希君は優秀な秘書で、相思相愛のご主人もいる
 君が想像しているよう事は決して無いからね・・・・」


瑞希が新藤と遼子より先に席を立った
その後を追う新藤
二人を見送る遼子は、アルコール純度の高いカクテルの注文を出した
  1. 2014/11/12(水) 11:38:04|
  2. 春が来た・道明
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春が来た 第57回

「あの人、本部長のことを進さん、なんて言って・・・・ああーん」

新藤の手のひらに納まる瑞希の乳房
その乳房を愛撫する指が、勃起し始めた乳首を捻った


「なんだ?・・瑞希、妬いているのか」

「私には渡さない、だなんて・・・もうとっくにこんな関係なの・・・あうっ!」

新藤の指が今度は、瑞希の女陰を責めだした
欲情している女の陰核を剥き出しにして、二本の指で摘み、転がしている


「ねぇ、お願い・・ベッドで・・・・ねぇ、ベッドへ」

立っていられなくなった瑞希は、白いシーツが張られたベッドへと誘う
シーツに顔を擦り付け、臀部を高く突き出す
もう女の女陰は露で光っている
男は両手で女の垂れ下がる乳房を握り締め、滑らかなカーブを下り
女の揺れる腰をしっかと掴む
男の怒張が女の女陰の入り口をこね回している


薄明かりの中、枕元に置かれた携帯電話に着信の灯が燈る
瑞希の夫・・一介からだ
女は携帯電話に手を伸ばし、男はおかまい無しに怒張を突き入れた


「あなた?・・・私、瑞希
 えっ?・・・ふふふふ、そうよ・・・今、本部長にバックから責められているの」

「!!!」

女の言葉に、男の怒張は動きが止まった

「あーん、嫌!・・本部長、激しすぎる・・ねぇ、お願い・・優しくして、お願い」

男は怒張を女陰深く差し込こんだまま動きを止めている


「どーお?あなた・・・少し元気がでた?固くなってる?
 もっと、聴きたい・・・・・・でも、私、演技下手だから
 ええ!もっと聴きたいの・・しかたないわねぇ」

瑞希が振り向き、新藤に催促する
状況がようやく理解できた男の手が、女の乳房を握り潰す


「やめて、痛い!・・・そんなに強く掴んじゃ嫌・・・
 そう・・そうよ・・優しく、撫でるように
 うーん・・・・気持ちいい・・あーん・・・・・・・」

体位が変わる・・・
男が上から被さり、女の首筋に唇を這わす


「くすぐったいわ、もう・・・でも、気持ちいい
 お願い、そのまま乳首を舐めて・・・そう、そうよ
 あっ!・・・・噛んだらダメ、痛い・・・」

男の指が女の尻穴に伸びた


「や、止めて・・そこは!?・・・・えっ、ううん・・なんでもない
 あん・・あん・・うーーん・・あーーん」

男の舌が女陰を嘗め回し、溢れ出た淫汁を指に擦り付けると
少しずつ、男は女の尻穴の中に差し込んでいく
瑞希にとって初めての経験、美乳には汗が滲んでいる
演技ではない女の淫声・・・それが夫の耳に届けられていく
  1. 2014/11/12(水) 11:38:50|
  2. 春が来た・道明
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春が来た 第58回

「驚いたよ・・・あのご主人がねぇ」

「でも、それで元気になれるんなら・・・あの朝も」

瑞希の話によると
新藤を自宅に招待した翌日の朝、夫の一介は狂ったように瑞希を抱いたという
前日の夜、一介は酒に弱く、新藤を見送ることもできずに寝込んでしまっていた
接待中の新藤と瑞希の遣り取りや振る舞いが、一介の心に嫉妬に似た感情を生みだし
瑞希が新藤に抱かれている妄想に興奮し、勃起したというのだ


「私、その話を聴いて・・・見られたと思ったわ
 主人がいるのに、台所で私を裸にするんだもの・・・・本部長ったら」

「ああ、あの時は私も興奮したよ
 寝ているご主人の前で君を抱く・・・・なんか、急にそんなことをしたくなって」

「ふふふ・・本当にあなたは、我侭気侭な人」


瑞希はその時のことを思い出して笑った
もうこの男は自分の虜
夫よりも1日の中で、長く一緒にいて意識し合う男と女
夫婦以上の・・・・男女の関係
瑞希の唯一の心配は・・・・・遼子の存在

(この男の中で私は・・・・遼子さんを凌いでいるのかしら?)


瑞希は更に新藤に食い込んでいく

「本部長・・私と二人だけのときは、君は付けずに瑞希と呼び捨ててください
 私・・・・そうして欲しいんです」

「それは・・・・職場でもかい?」

「はい・・・・・・・本部長、それで・・」

瑞希の目が言っている・・・・・あなたの女なのよ・・・と


「・・どうした?」

「今夜の遼子さん、かなり怒っていらっしゃるでしょうね?」

「ああ、そうかもしれない、遼子は一途な女だから」
 
瑞希の手が新藤の太腿に伸びてくる
50歳とはいえ、筋力の衰えない男の両脚
その中心・・剛毛に囲まれた男の象徴
その象徴をしなやかな白い指が弄ぶ


「私・・我慢できない・・・
 あなたのこれで突かれている・・・別の女の人の存在」

「瑞希は、独占欲の強い女だ
 他の女とさせたくないのなら・・・常に私の精を搾り取るように、頑張るんだ・・瑞希」

「まあ・・・なんて強い言葉かしら
 ふふふふふ・・・・・じゃ、もう一度、私に下さい、お願い」


瑞希は再び男の怒張に唇を這わす


男は思った
今夜は長くなる・・・・やりたい事をやらせてもらう
そうだ・・・・・・・・この女の処女の穴を奪ってやるんだ
この女は、きっと私に捧げる筈
夫にさえ与えることなど考えていない処女の穴
それを奪う・・どうなる?瑞希
  1. 2014/11/12(水) 11:39:19|
  2. 春が来た・道明
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春が来た 第59回

今年の夏はお盆を過ぎても残暑が厳しい
関西地方は6月上旬に入梅したものの、雨はほとんど降らなかった
冷房の効いた新藤の執務室
新藤は、10月の県議会で副知事へ推薦されることとなり、現在の仕事の整理に追われていた

「美樹ちゃん・・少し休憩しようか?」

「はい・・・では、冷茶をおもちします」


瑞希の後任に秘書となった芝田美樹が、部屋から出て行く
美樹は25才、人事課からの抜擢である
背が高く、髪はロングで才色兼備の女性エリート職員であった
沖田課長が急ぎ足で入ってきた

「本部長!県警がとうとうやりましたよ・・・江島一派を一網打尽
 売春の斡旋容疑で現行犯逮捕との報告がありました
 これも、伊藤さんからの情報提供があってこそですが・・・・」

「おっ、そうか・・これで彼らは全員、懲戒免職処分だな
 それにしても・・瑞希君はよく頑張ってくれたね」


沖田が皮肉な笑いを浮かべた

「それが・・伊藤さんとは急に連絡が途切れてしまって・・・」

「瑞希君と連絡がとれない?」

「はい、江島もなかなかの曲者
 踏み込んだ時には、伊藤さんの姿が見えず
 どうやら、伊藤さんを別の組織に売り飛ばしたようで
 もしそうであれば、探し出すことは非常に難しいと」

「まさか!?そんな・・・」


新藤の言葉は驚いているが、態度は変わらない

「それじゃ、相討ち!ということか・・
 しかし裏の社会に身を売られたんじゃ、余りにも瑞希君が残酷で不憫だ・・・」

「はい・・・しかし、本部長、彼女は両刃の剣、情けは私たちの為にならず
 これも彼女に泣かされた男たちの恨み辛みが、このような結果を生んだと考えることもできます
 それに・・・・私たちにはもう手の打ちようがないかと」


美樹が部屋に戻ってきて、新藤と沖田にお茶を差し出す

この娘の指も白くて透き通るようだ
自然と、新藤の脳裏に慣れ親しんだ瑞希の肢体が浮かんできた
目の前の美樹の身につけている服が消えていく
瑞々しい乳房・・・・そして引き締まったウエスト、しなやかな長い脚
新藤が深い息を吐いた


「ところで、沖田君・・・君の結婚式の準備は万端でしょうね?」

「はい・・・本部長には仲人をお引き受けいただいて、本当に有難うございます
 この歳になって、遼子さんのような女性に廻りあうなんて、私は幸せ者です」

「ほんとうによかった・・君には、これからも私の右腕として頑張ってもらえるように
 昇進のプレゼントも用意している・・・遼子ちゃんを大切に頼むよ」

「勿論です、本部長のご恩には必ずお応えする所存です・・・宜しくお願い致します」

沖田が退室していく
頬杖した新藤の目が自然と美樹に向けられる
可愛くて良い娘だ
背筋を伸ばしパソコンを操作する姿勢
その娘の顔が瑞希とダブル
着ている服がまた・・・消えていく
形の良い乳房に、この男が舐め吸い尽くした茶色の乳首が息づいていた
  1. 2014/11/12(水) 11:40:01|
  2. 春が来た・道明
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春が来た 第60回

此処はいったい何処?
男たちの言葉使いからして関東地方に違いない
瑞希は暗い部屋のベッドの上で、両手両脚を縛られ裸で人の字に寝かされている

(まったく!!嫌んなっちゃう・・これからというのに、こんな目に遭うなんて)


瑞希は新藤の特命に従った
自己都合の退職届けを出し、江島に接近
やっとのことで掴んだ江島たちの違法行為
その証拠を沖田に知らせた直後、瑞希は此処へ連れ去られた
持ち物や衣服は全て処分され
もしもの用心として、沖田から渡されたGPS機能付きイヤリングも取り上げられた
今となっては、電源のある内に此処の場所を見つけていてくれることを願うしかない

薄暗い天井に頼りない夫の一介の顔が浮かぶ
その夫には新藤の特命のことは、口止めされ何も話していない
夫は、瑞希が毎日、県庁へ出勤しているものと思っている

(夫には・・・・話しておいた方がよかったのかもしれない)


「どんなことになっても、私が保障する」と言ってくれた新藤
 瑞希の肢体の隅々まで夫以上に知り尽くしている男
 いや、心底までも理解して信頼を寄せている上司
 そして、何よりもこれから権力の中枢に昇ろうとする勢いのある男
 ・・・この男の力を信じるしかない

(お願い・・必ず私を助け出して・・新藤本部長!)




「どうですか奥さん・・・・少しは落ち着きましたかな?」

扉が開き、若いチンピラと初老の男が入ってきた


「西の方では警察が大層ご活躍らしいよ、きっと誰かのリークだね?
 おっ!少し顔に灯がさしたみたいだね
 しかし・・・諦めが肝心だよ、警察の捜査は此処までは到底及ばない
 何故かって?
 江島とかいう・・ど素人が、あなたを本物のヤクザに売り飛ばしたんだ
 そのヤクザから我々があなたを買い取った
 我々がどんな組織の人間か・・そんなこと、ヤクザは全く関知しない
 だから、此処が発見されることはないし、助けは絶対に来ないんだ」

「そんな!?」

「でも・・考えてみれば此処もいいところなんだよ奥さん
 これからあなたを磨き上げる・・・高級な商品としてね
 美味しいバランスのとれた食事に高度なエステ、そして十分な睡眠
 そう・・・・
 家庭のしがらみや形ばかりの夫婦生活から開放され、優雅に教養も身につけながら
 知性のある強い男たちと遊ぶ・・・あなたには、快楽の日々が提供されるんだ
 ただし、あなたに価値のある期間だけだけどね・・・・・・・」

「嫌です!家族の元へ帰してください
 あなた方が私に支払った金額以上のお金を必ず用意しますから」

「ほうう・・・あなたには、スポンサーでもついているのかな?
 それは、後でじっくりと話を聴くとして・・・・・」


初老の男の萎びた指が瑞希の乳首を撥ねる

「嫌!やめて・・」

「活きがいいなぁ、奥さん
 こりゃ良い・・あなたをヒロインにして、まずはビデオを創る
 あなたのビデオを見て興奮する男たちを見たくはないかい?
 あなたを抱きたいと、精と金を惜しみなく注ぎこむ男たち
 そう・・・そんなビデオの主演女優が・・あなたなんだ
 じゃ、私が味見させてもらうよ」

初老の男は入れ歯を外し、瑞希の乳首に吸い付く
同時に、瑞希の陰核を指が嬲り始めた

これまでに何人の人妻が、この男の舌と指の洗礼を受けたことか
顔の表情から逝く時の声、そして肢体の色艶からあそこの感度まで
連れてこられた人妻の女体は徹底的に調べつくされるのだ
若い男がニヤニヤしながらビデオカメラを回している

「おうっ・・こいつは面白い・・・・奥さん、妊娠しているね!」
  1. 2014/11/12(水) 11:40:52|
  2. 春が来た・道明
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春が来た 第61回

(妊娠!?・・・まさか・・・でも、でも、それならあの人の・・・)

「近頃はやたら薬や電動機器を使って、女を嬲りたがる輩が増えてきた
 馬鹿な奴らだよ、それでは女をオモチャにはできても、真の美しさは引き出せない
 女は可愛がり褒めて育てるもんで、オモチャにするものではない」


「あっ・・嫌!」

老人の二本の指がつんつんと陰核を抓っている



「うん?・・敏感だなぁ、それに声色がそそるように良い・・
 次は、中に入れるぞ・・・・どうだい、この辺りかな?」

「あーーん・・・もう、やめて!」

「此処か?此処なんだ!・・・それにしても」



老人の口が瑞希の乳房を襲う、乳首を吸いたてる

「堪らんなあ・・・あなたが醸し出すこの色情がこんな老人をも・・その気にさせる
 この乳首に、この私が自然と吸い付いてしまう・・・・・・・」

「ねぇ、お願い・・無茶なことは止めてください
 妊娠しているなら・・・お腹の赤ちゃんに・・・・・」

「そうだった・・・妊娠しているんだった
 ふふふふ・・・しかし、飛び切りの良いネタを仕入れたもんだ
 奥さん、あなた・・もしかして、ご主人以外の男がいるね?
 ご主人一人だと、こんなに良い女には到底なれない
 惚れた男がいるんだろう?お腹の子の父親だろうなぁ・・その男が」

「・・・・・・・」

「まぁ、そんなことは・・・我々にはどうでもいいが
 一つ、いいことを教えておいてやろう
 此処では、私をあなたの惚れた男と思って尽すことだ
 それが生き延びる術・・・決して悪いようにはしない
 お腹の赤ちゃんが大事と思うなら、なお更だ・・・・」

瑞希が小さくイヤイヤと頸を振る



「おい、お前・・部屋から出てろ!
 お前にも抱かせてやるから、外で待ってろ
 今から、この奥さんと何年か振りにしっぽりと姦りたいんだ
 奥さん!・・今からが肝心だ、あなたの覚悟を見せてもらう
 この私から、精を一滴でも絞りとれたら・・・・助けてやるよ、必ずな
 奥さんと、お腹の子を賭けて頑張ってみな」


若いチンピラが渋々部屋から出て行く
老人が瑞希を縛り付けている紐を解き始めた
わが身と子を守ろうとする母の白い女体が
老人の巧妙な手管によって蹂躙され、食い尽くされていく・・・


「それにしても・・・この唇といい、この乳房といい・・」

老人の手が唇を撫で、乳房を掴む

「さあさあ・・・奥さん、まずはコレを何年か振りに立たせてみぃ」
  1. 2014/11/12(水) 11:41:47|
  2. 春が来た・道明
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春が来た 第62回

「奥さん・・・はやり相当教え込まれているな・・・真男に
 私のお尻の穴を責めて来るとは・・・流石に驚いた、いや・・感動もんだ!」


瑞希の渾身の奉仕は、この老人の「助けてやる」の一言が効いている
何年か振りに、精の放出を遂げた年老いた怒張
その怒張が、孫のような瑞希の口で清められている
老人の手は瑞希の顎から肩、そして乳房へと下る

「やはり・・・上玉だ
 奥さん、その様子じゃまだまだ足りないよね・・・男の精が!
 さて、次の注文だ
 今、待たせている、あの若いチンピラの精を全部吸い取るんだ
 あいつは一晩で三回は射精できる
 私の代役で、女に突っ込むだけしか能がない若造だけどな」

「そんな男の相手なんて、嫌です・・・あなただけで助けてやるとの約束でした」

「ああ、そのとおりだよ・・必ず助けてやる
 だが、此処にいる間は私を惚れた男と思えとも言った
 その真男の命令だ・・・・あのチンピラの精を食い尽くせ!
 搾り取る前に、奥さんがダウンしたら・・ご破産だ
 おーい・・待たせたな、この奥さんを好きにしな
 ただし、お腹に子がいることを忘れるんじゃないぞ」

「そんな・・・嫌・・」


筋肉マンのチンピラが部屋に入ってくる
扉越しに漏れてきた女の艶声で、この男の怒張の先からは涎が垂れている

「それじゃ師匠・・・相手をさせてもらいます」

「ああ・・・そうだ、お前に一つヒントをやろう
 この奥さん、立ちバックが効きそうだ
 若造!負けるんじゃないぞ、ハンディをやったんだからな!」

チンピラが瑞希にしゃぶりついていく
師匠のアドバイスに従い、忠実にバックから攻める
この若造も強兵だ
揺れる乳房を優しく撫でると思えば、強く揉みたてる
乳首を転がし撥ねる
そして、リズミカルな挿入、深く、浅く・・を継続する
だが・・・


「うーん?奥さん・・・奥さんの此処が!!あっ・・ああ」

「おい!早すぎるぞ・・・お前」

老人が目を細めた
自分の目に狂いはない
間違いなく名器の持ち主、それも誰かの手によって磨かれている
見ろよ、この腰の振りよう・・・・
男の精を欲しがる雌、精を出したがらない雄
その凌ぎあいを幾度となく経験し、術を身につけた女体
この勝負は見えていた


瑞希は第二の注文も突破し、シャワー室で肢体の汗を流している

「師匠・・・すみません・・・こんな女、初めてです」

「ああ・・・そうとも」

「師匠!こんな良い女を逃がしてやるんですか・・・残念です」

「馬鹿かお前!情でも移ったか!何年一緒にこんなことやっているんだ」

「それじゃ・・・師匠」

「ああ、そうだ・・・義理や人情や道徳など、もうとっくに無いだろうが俺たちに
 女に食らい付き、搾れるだけ搾り尽くす・・・そうだろ若造!
 ただ、奥さんの心は壊せない、そんなことしたら客が喜ばない
 身も心も組織に忠実な女に作り変えてきたんだろうが?
 考えるんだ堕ちる方法を・・・そうだ、奥さんの周りを調べて来い!関西に行け」
  1. 2014/11/12(水) 11:42:30|
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春が来た 第63回

芝田美樹が上司である新藤の横顔を眺めていた

知事の信頼が厚く、次の筆頭副知事内定者
学歴も一流、財力もある・・・・今、この男の進む道を妨げる者などいない
精力的に仕事を片付け、部下からの人望も集まっている
今、まさに天地人・・・此処に整ったというところか
だが、何故だろう・・・・仕事の合間に時折見せる「愁いの表情」
それが若い美樹には、たまらなくセクシーな大人の男に映る


「本部長、先ほどお見えになった伊藤さんは、私の前任者の・・・・」

「えっ・・ああ、瑞希君のご主人だ
 瑞希君が事件に巻き込まれたのか、行方知れずらしい・・・
 我が推進本部の力を以ってしても、見つけ出すことは不可能のようだ
 辛いことだが・・・ご主人には失踪宣告も考えておかなければならないと言っておいた」

新藤の目が、そうですかと頷く美樹の胸元に視線がいってしまう
まだ恐らく男には触れられていない若い女の乳房
この男が大事の前に、自らに科した女欲の禁止もそろそろ限界に来ていた



「ところで、美樹ちゃん・・・今夜は予定があるの?」

「はい?!はい友達と・・・うーん、でも・・・何でしょうか?」

美樹は週末には必ず、大学時代から付き合っている彼氏とデートをしていた
それに・・・新藤に対する警戒心など微塵もない



「よければ、食事でもと思って」

「お食事ですか?奢ってくれるんですね、本部長・・・・それじゃ、甘えちゃうかな」

「有難う・・それじゃ、私は若い美樹ちゃんから少し元気をもらうとしよう」

この男の先ほどの愁いは何処へ行ったか・・・新藤は美樹にウインクをした
美樹もふざけて、投げキッスを新藤に返す



ここは新藤の幼馴染のお恵が営む料亭


部屋に運ばれてきた豪華な料理を前にして、新藤と美樹が向かい合わせで乾杯をしたところだ

「進さん、お久しぶりです」

着物姿の遼子が挨拶をした


「やあ、遼子ちゃん・・・いや、もうすぐ沖田夫人か
 この度はほんとうにおめでとう・・・・・幸せ一杯で顔が輝いているよ」

「まあぁ、進さんたら」


遼子が新藤の側に侍り、お酌をする
親しげに新藤のネクタイに触れる
甘えるような仕草で、新藤に語りかける
そして、新藤の手をとり頬に当てる
美樹の存在が消えているような二人だけの世界を創りだす


(淑やかで綺麗な人!・・沖田課長の新婦になる人なんだ
 でも嫌だわ・・本部長への接し方はあまりにも節操が無さ過ぎ)
  1. 2014/11/12(水) 11:46:17|
  2. 春が来た・道明
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春が来た 第64回

遼子の親密な接客が続く・・・
自分だけが蚊帳の外で、美樹は居た堪れなくなった

「あの・・本部長・・・本部長!」

遼子が涼しげに若い美樹をチラリと見た


「どうした?美樹ちゃん」


美樹が不機嫌そうに新藤に告げる

「私、用事を思い出しました・・
 本部長にはお相手がいらっしゃいますので、お先に失礼します」

美樹がサッと席を立つ
新藤の言葉も待たずに部屋を出て行ってしまった
新藤の口がポカンと開いている


「進さん・・・ふふふ・・・ああ、面白い
 色っぽい瑞希さんの後に、今度はあんなに若い娘さんを秘書にして
 さては、悪い事を考えていたんでしょう!
 さっさと帰られちゃって・・・・ふふふふふはははは」

遼子は二人きりになったことで、より大胆になってくる
愛しい男を、あの瑞希に取られた
一人で悔しい酒を浴びるほど飲んだ
そんな心情のところに、沖田からのプロポーズ
熱心に口説かれ、断れなかった
しかし・・・自分に女の喜びを気付かせたのは・・この男だ
身も心も捧げて悔いのない、唯一人の男
やはり、離れられない・・・・どうしてもこの男の側にいたい

「進さん・・・私、もう決して妬いたりしない
 嫌な女になるのは・・・もう懲り懲り
 あなたが、どんな女性と遊ぼうとかまわない
 ねぇ・・お願い・・私もあなたの側において下さい
 それでいいの・・・私はそれだけで・・・・」


遼子の白魚の指が踊る
愛しい男の股座に伸びていく
今のこの逢瀬を逃さない、精一杯尽くして・・男の心を?ぎ止めたい

「遼子・・・お前・・」

女が男の口を吸い
男がそれに応える
互いに相手を知り尽くした男と女

遼子は新藤の部下との再婚を目前にして・・・
これが自分の運命と信じ、再び愛欲の世界へ戻っていく
  1. 2014/11/12(水) 11:47:30|
  2. 春が来た・道明
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春が来た 第65回

  美樹は料亭の玄関のところで、バッグを忘れているのに気が付いた
  どうかしているわ・・・私

  二人の部屋に取りに戻るのは躊躇したが、置いて帰るわけにもいかない
 

  廊下に、「あん・・・」と女の切ない一声が響く


  (えっ・・・なに、今の・・・・・・・)

  「あぁぁぁん・・・・うん・・・・・」


  美樹は理解した・・・襖の向こう側の状況を
  部屋にはもう入れない・・・溜息を付き、帰るために背を向けた

  「進さん・・・お願い、もっと・・ねぇ・・もっと」


  あの愁いを身に纏ったセクシーな上司
  あの人が女を抱いている・・・・どんな風に?


 「あーん・・・駄目、駄目・・・あーん・・もう」


 美樹の鼓動が激しく鳴る、熱いものが肢体に流れ出す
 手が恐る恐る、襖を押し開けた・・・・・・
 先ほどまで女の身を締めていた鮮やかな帯
 その帯が絨毯のように延び、部屋の暗闇の中で白い女体が揺れている
 男は悠然と、敷かれた蒲団の上で寝そべり
 その分厚い男の胸に手をあて、女がゆっくりと腰を降ろしていく


 「ああぁぁ・・堪らない・・・・いい」


 女が快楽を貪り始めた
 腰が浮く・・・そして、沈む・・・また、浮く、そして沈む
 美樹の視線の先には、黒光りする剛直
 女の艶液で濡れ、光り・・固く、太くそして長い
 その剛直を包み込むように、白い透き通るような・・女の白い太腿と美尻


 「進さん・・・こんな女・・・こんな私にしたのはあなた
  私、先に逝きそう・・・逝かして、いいでしょう?」


 男は応えず・・・女の顔を見つめている
 女は目を瞑り、男の剛直を膣奥深く受け入れ
 腰を緩やかに振り続け、顎を上げ天を仰いだ


 「あ、あぁぁぁぁん・・・・」


 その声が、その場から立ち去る美樹の背に覆いかぶさる
  1. 2014/11/12(水) 11:48:44|
  2. 春が来た・道明
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春が来た 第66回

 海の中の空港、そこを飛びたつジェット旅客機が瞬く間に消えていく
 県庁舎七階の副知事室から、遠くの青い水平線を眺めている男がいる
 その男の顔を、瀬戸内に沈む夕陽が赤く染める
 来春の知事選挙の本命候補者でもある、この男
 前途は揚々、しかし以前にも増して愁いは濃くなっている


「新藤副知事・・・・お帰りにはならないのですか?」

「ああ、もう少し・・・・あの海を眺めていたい」

 美樹が珈琲を差し出す
 若い秘書の白い指が新藤の視界に入る
 入れたての芳しい香りが漂った


「沖田課長さんはお気の毒でした・・・あんなに喜ばれていたのに」

「ああ・・・そうだね」

「何も・・・県を退職されなくてもよかったのに・・」

「それは無理だ・・・・彼はプライドの高い、誇り高き本県幹部職員
 知り合いに招待状を送った結婚式の直前に、花嫁に逃げられたんだ
 彼にとって・・・・・・・これは死を意味する」

「あの遼子さんには、お好きな人でもいらしたのでしょうか?」

「・・・・さぁ・・・どうだかね」


(何を惚けて・・・あなたが原因じゃない!!)

 美樹の射すような視線が、新藤の横顔に向けられる
 偶然にも、遼子と新藤の関係を知ってしまった美樹
 汚れた社会を知らない清純な女性
 そのプライドと公務員としての正義感が沸々と煮えたぎる
 この聡明であまり男経験のない美人秘書は、まだこの男の怖さを知らない


 珈琲を口につけた新藤に、差出人の名がない「親展」の手紙が目に留まる

「美樹君・・・この手紙は?」

「はい、先ほど総務課長が直接持参され副知事にと・・・」


 封を切り、文面に目を通す新藤の顔色が変わる
 退職した沖田からの手紙であった



『私に天罰が下ったのです・・・』で始る文面

 切々と心情を訴えている・・・・・
 自分は、瑞希の失踪時にGPSで彼女の居場所を知っていた
 にも拘わらず、そのことを上司の新藤に報告せず、瑞希を見捨てた
 人として、やっては為らぬ裏切り行為を自分は犯したのだ
 この度の自分と遼子との婚約解消の原因は、この悪行の報いだと
 このままでは、人として生きて行けないと思い
 県を退職し、瑞希を探したが・・・既にその場所は引き払われていた
 周辺での聞き込みから
 使用していたのは、いかがわしい男たちと恐らく瑞希と思われる若い女
 自分の力では、もはやどうする事もできず
 新藤の力をもって、瑞希を助け出してくれるように真摯に訴えているのだ



 手紙を持つ新藤の手が振るえ、目に涙が滲む
 美樹は何事かと固唾を飲んでいる


「副知事・・・どうかされましたか、副知事・・・」

「美樹君・・・これは沖田君からの手紙だ
 君は知っているね!・・・私と遼子の関係
 君は私のことを最低の人間と思っているだろうね・・そう、私は全く酷い男だ」
  1. 2014/11/12(水) 11:49:39|
  2. 春が来た・道明
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春が来た 第67回

(気付かれていた!?
 あの夜、副知事と遼子さんの情事を私が覗いていたこと・・・)


「・・・・忘れ物のバッグを取りに返った時、偶然にお二人の関係を・・」

「やはりそうだったんだ・・・翌日からの君の態度が変わったからね
 ・・・私は人でなしの最低の男だ
 誠実な部下を出汁にして、自分の出世のために女性関係を清算しようとしたと思っているだろう?
 でも、私は本当にお似合いだと思ったんだ
 結果的に、沖田君が大変不幸なことになってしまった
 それだけじゃない・・・・瑞希君も・・
 これを見てくれ、ヤクザな連中が私を脅して来た
 ・・・もう、私はおしまいだ・・・天罰だよ」


 新藤が分厚い封書を、机の引き出しから取り出した


 あの新藤が頭を抱えたまま動かない
 美樹はまず、沖田からの手紙を読み
 続いて、新藤を脅しているという封書に目を通した

 その封書の中には
 スレンダーな美女のヌード写真・・・両手をお腹にあてている
 それと、一枚に綴られた手紙があった

  『あなたの不倫相手を大切に預かっている』
   女性の名は、伊藤瑞希・・・・妊娠四ヵ月
   お腹の子の父親は新藤進・・・・あなただ!


 若い美樹はパニックになる
 素敵な大人の男・・・一度はそのように憧れもした新藤
 それが遼子ばかりでなく、前任秘書の瑞希と肉体関係を持ち、その瑞希が妊娠している?!
 憤りで頭の中が煮えくり返る
 新藤は頭を抱えたまま、先ほどから動かない
 更に文章の先を読んでいく・・・

 『あなたは、来春の知事選の準備で大変お忙しいでしょうから
  あなたに代わって、子を身ごもっている瑞希さんの世話をさせていただく
  でも心配はご無用に・・・都度、記録写真はお送りします
  あなたは、私たちの利益のためにも
  是非とも、来春の知事選には勝利していただきたい』

悪の組織が知り得た情報を、脅す相手に第一報を送ったという内容だ


「副知事・・・副知事!事実なんですか?・・・・この内容」

「・・・・・・判らないよ・・・赤ちゃんだなんて・・」

「もうなんて人なの!・人妻であった瑞希さんとも、関係を持ったのですね」

「彼女が・・彼女の方から私を・・・」



 美樹の怒りの目が、副知事の新藤を射る


「不潔!不潔よ!なんて不潔!・・・沖田さんや、瑞希さんのご主人に謝りなさいよ」

「本当に、すまないことをして、申し訳なく・・・」

「なに、私に謝っても!・・・どうにも」

「ああ・・・わかっている、でも今は誰かに謝り、心から叱って欲しいんだ」

「馬鹿ね・・本当に馬鹿・・・でも、こんな脅しに屈するわけには・・・」

「・・・・でも、駄目だ・・もう、駄目だ・・・私を助けてくれる人なんかいない」


 向かうところ敵なし、明朗で頭が切れ、精悍な男・・・
 この県のホープ、希望の星との評判を得ていた新藤が、若い秘書から叱られている
 

「あぁぁぁ、もうぅ・・・」

「だらしがないわねぇ・・・男でしょう!あなたは!
 あなたの罪は罪として、今は闘うしかないのよ・・・そして助け出すの、瑞希さんを!」

 どうしてこんな時の女は、強いのか・・・
 美樹がうろたえている大人の男を抱きしめている
  1. 2014/11/12(水) 11:50:26|
  2. 春が来た・道明
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春が来た 第68回

 新藤は若い美樹の胸に顔を埋めている
 やんちゃな小僧が、駄々を捏ねるように頸を振る


 「さあ元気を出して・・・あなたは強い男よ
  何といっても、この県の筆頭副知事・・・あなたにできないことはないはずよ」

 「・・・しかし、相手はヤクザ・・」

 「ヤクザがなんなのよ・・あなたには警察も動かせる力がある」

 「警察の力?・・・・しかし、警察がこんな私の味方になってくれるもんか!
  はやり駄目だ・・・・もうおしまいだ・・・」


 新藤の腕が美樹の柔らかな腰に回る
 顔を上げ、美樹の首筋に口を添える


 「落ち着いて!どうしたの・・・副知事!
  冷静で沈着、そしてカミソリの知恵は何処へいったの・・・・・」


 美樹は気が付いていない・・・
 今、色魔が蘇りつつあるのを
 新藤の手が美樹の尻肉の感触を味わい
 目が輝き、活きの良い若い獲物の匂いを嗅いでいることを
 美樹の耳元で、色魔が囁く

 「助けてくれ・・・美樹・・・・助けて」

 「大丈夫よ・・・絶対に・・・何とかなるわ・・・絶対」


 美樹は今でも、学生時代からの彼氏と組んで混合ダブルスのバドミントン選手だ
 足腰の筋肉は引き締まり、贅肉などは一切ない見事な肢体
 オフェンスとデフェンスの息の合ったコンビネーションで相手を圧倒し
 強烈なスマッシュを相手陣地に叩き込む
 美樹は不屈の精神力をもった女性である
 
 新藤は、駄目だ、助けてくれ・・と呟くと同時に
 美樹の肢体に手を回して、その感触を確めている
 それに、美樹は気付かない、いや・・・気付けない
 この女性はまだ男とそんな経験がない


「美樹・・・助けてくれるんだね?・・こんな私を」

「ええ・・・このままでは、表が裏に負けてしまう」

「有難う・・・美樹くん」

 新藤は体勢を変え、獲物を逃がさぬようにしっかりと女の腰を引き寄せる
 そして縋るような目で女の顔を仰ぎ、唇を求めていく・・・
 美樹の目が丸くなった瞬間・・・新藤の頬に強烈なスマッシュが叩き込まれた


「なにを考えているの!こんな時に・・・このお馬鹿さん!」
  1. 2014/11/12(水) 11:51:09|
  2. 春が来た・道明
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春が来た 第69回

時刻は午前零時を指した
地方議員選挙で与党大敗のニュースが流れている
地方選挙とはいえ首都におけるこの結果は、一時代の終焉を告げ、我が国の政治・経済・社会の大転換のうねりの序章だろうか?
それとも、無責任な連中による混沌社会の第2幕か?
いずれにしても、既存の制度や価値観の破壊が始ったと言える
大衆の意志は明らかに、我慢の限界を示していた



酔いで空ろな目をした中年の男が、居酒屋のカウンターを立った
その男を追って同じ居酒屋を出る若いチンピラがいた

「・・旦那・・・遊びませんか?・・旦那・・本当にいい女なんですぜ・・旦那」

中年の男は声の方に振り返る


「歳は30を過ぎていますが・・・・女盛りのいい女・・・ほれ、この写真」

均整のとれた女のヌード写真
バストは大きくはないが、形良く突き出ている
脚は長く、女の下腹部には多めの漆黒の繊毛が光る
両手を縛られ吊るされているようだ
酔った目が写真の女の顔に焦点をあてる

(伊藤さん?!・・・この女性、伊藤瑞希にそっくりだ)


「こ、こ、この女性・・・・」

「ええ・・まだ、この奥さんは一度もお客は取っていないんで・・・
旦那がお初になりますが、お気に入られましたっすか・・・いい女でしょう」

「どこにいるんだ!・・・この女性は」

「まぁまぁ・・旦那、夜はこれからですぜ・・・そう慌てずに」


伊藤瑞希がいた!間違いない!
渡された写真に目が張り付いている


「旦那・・・相当、気に入りましたね
 この奥さん・・訳ありでね・・・・無茶はできないんで
 その・・・逝くところをね・・・うーん・・鑑賞するってことなんですが・・」

「そんなことはどうでもいい・・・早く連れて行け・・この女性のところに」

「まぁ・・その・・うーん・・お触り程度なら何とかなんですが」

「何を言っているんだ・・・早く連れて行けと言ってるだろうが!」

「へへへ・・判りました・・・じゃ・・前金で五つ頂きましょうか」


中年の男は沖田元課長
チンピラは瑞希に逝かされたあの若造

その沖田がチンピラの後をついて行く・・・・・・・・
  1. 2014/11/13(木) 00:14:27|
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春が来た 第70回

沖田がチンピラの後をついて行く・・・

(何という偶然か・・・いや偶然であるはずがない!
 天が私にチャンスをくれたのだ・・・・罪を償い、立ち直る機会を!
 何としても助け出す・・・それが今の私の為すべき全て)

沖田はふざけた歩き方をするチンピラの背を睨みつける



「旦那・・・ここからはタクシーに乗ってもらいます・・・それと
 アイマスクをしてもらいますよ・・・場所はまだお教えできないんで・・」

「おい・・あんた
 それじゃ、出会い頭の一限さんじゃないか・・・いい女なんだろう?
 いい女だったら一度きりなんておかしくはないか!」

「まぁ、まぁ、旦那・・・そんなに熱くならないで
 さっきも言ったように、ちょっと訳ありでね・・・・お願いしますよ」



チンピラに従った沖田
今、沖田はアイマスクを付けられたまま椅子に座らされている
その沖田の耳に女の声が入ってくる

「あっああ・・あーん」

沖田の全身が固まる


「始ってますぜ・・旦那・・それじゃ・・よーく視ておくなさい」


アイマスクを外した沖田の視界に飛び込む映像
マジックミラー越しに、美女とその肢体にしゃぶりつく老人の姿
女は、先に見せられた写真と同じように、両手を縛られ天井から吊るされていた
その女が突き出す乳房
その乳房を口でほう張り、先端を舌で転がす老人
沖田の喉がなる
目が突き刺すように白く輝き揺れる女体を見つめている


「どうです?・・・・旦那・・・いい女でしょう・・・ぐっと来ますよね」

チンピラがへらへらと沖田の横顔を眺めている


「あの奥さん・・・・身篭っているんですよ・・あのお腹の中にね」

(なに!妊娠している・・・・・)

「その赤ちゃんの父親がね・・・酷い男でね・・・かわいそうに、あの奥さん」

(こいつら・・伊藤さんのご主人のことを調べているのか!)

「いろいろとお知らせしているのに、全くしらん顔
 可哀そうな奥さん・・・・そんなことも知らずに
 視てて判りますよ・・母性本能でしょうね・・お腹の赤ちゃんを気にして
 逝きたくても逝けなくて・・・・女になったり母になったりで」

「お前ら・・・それでも人間か!」

「へへへ・・・あっしらは、それで食べているんですから
 世の中にはそんな女を求める男が沢山いましてね・・・・・
 旦那、見てくださいよ・・あの奥さんの顔・・・ほら・・切ないよね
 爺さんの指が・・・ほらほら・・・奥さんのあそこを・・・」

「おい・・・もう止めろ
 私にやらせろ・・・・お金なら払う・・・いくらだ・・おい!!!」


チンピラがニヤニヤしながら沖田の顔を見る
そして、両手を広げた・・・・そう十万だと
  1. 2014/11/13(木) 00:15:37|
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春が来た 第71回

冬の訪れを待つ晩秋の京都
既に紅葉のシーズンは過ぎ、この古寺を訪れる人は疎らだった
そこに、芝田美樹がバドミントンペアの彼氏といる

「美樹・・もうシーズンオフのようだね」

「ごめんね・・・いろいろ忙しくて・・」

二人は茶店の赤い布で覆われた縁席に腰を降ろして、甘酒を楽しんでいた



「美樹・・僕たちも、ずっと先になっても・・
 あのお二人のようになれたらいいなぁ・・・・ほら、あの・・古木の先にいる」

美樹の視線の先に高齢の老人と寄り添う婦人
長い人生を生き抜き、いずれ訪れる人生の終焉・・その最後の時間を楽しむ二人
美樹が彼氏の手をそっと握り締める


「あのお二人・・・年齢は離れているが・・ほんとに感じがいい」

「ご夫婦かしら・・・夫婦であんな風になれるのかしら」

「うーん・・・夫婦でないかもしれない・・・いや、ご夫婦であって欲しいなぁ
 恋愛は夢の世界、不倫や浮気はリゾート・・しかし、夫婦、家庭は現実でアパートか?
 結婚しない人が沢山いる、熟年離婚も増えている・・・・・・・
 でも、美樹・・・僕たちはそれを乗り越えられるだろう?
 そして、あのご夫婦のように晩年の人生を安らかに楽しみたい」

「そうね・・・そうならなくっちゃね」

再び、美樹が彼氏の手を握り締める



「最近の美樹・・・少し変わったような気がするんだけど」

「そう?どんな風に・・・」

「うーん・・・僕たち学生時代からの長い付き合いだろう
 だから分かるんだ・・・一緒にいても何か別の事を考えているような
 こんなことは今までになかった・・・悩み事があるなら話してくれないか」

「ごめん・・そんな風に見えてる?・・自分では普通よ
 ただ、今の副知事の秘書の仕事に疲れているのかな?
 ほんとに・・困った人なんだから
 大人なのか子どもなのか・・・誠実なのかそうでないのか」

「うん?なんかあるんだ」

「大変な時期に・・・歳を忘れて・・・夢中になって・・・・ほんとに・・・」

「ひょっとして・・・女性かい?」

「・・・・それは、あなたにも言えない」

「やっぱりそんなところか・・・・美樹は『スマッシュ』一筋だからなぁ
 スポーツばかりしていて、僕も男と女のことはあまり分からないが
 夫だから、妻だから不道徳なことをしてはならないとなってはいても
 『恋は盲目』・・年齢など関係なく、互いに心や、肢体が惹き合うことも・・?!
 ・・・・美樹!・・・ひょっとして気になる人でも、できたのかな?」

「そんな人・・・いないわよ!」


美樹の頭の中で、『助けてくれ』と言ってしがみついてきた新藤の顔が浮かぶ
視線の先の老人の後姿が新藤の背に見え、寄り添う女性が遼子と重なる

(奥さんや遼子さんがいながら・・・私にもキスしようとするなんて・・もう、なんて人なの)
  1. 2014/11/13(木) 00:17:10|
  2. 春が来た・道明
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春が来た 第72回

県庁の一日が終わる
日中、テキパキと精力的に仕事を捌いた男の動きが止まる

「副知事・・・お茶をお入れしましょうか」

「うん・・・」

美樹はあの日以来、仕事のこと以外は新藤とは話をしていない
瑞希の安否が気になるものの、自分からは聞けないでいた


「どうぞ・・・」

「うん・・・」

新藤は無気力にお茶をすする

(思っていたとおり・・・この娘は活きの良いお嬢さんだった・・あの感触・・)

もうすぐ衆議院選挙だ
その結果次第では、国と地方の大変革が起きるというご時世に
新藤自身は来春の知事選の有力候補で大本命である

事態は深刻な状況であるにもかかわらず、この男はこんな事を考えている
それが、この男の持って生まれた性格である
この男は済んでしまったことをまったく気にしない、考えるのはこれから先のこと
将来の求めるべき姿を画き全力を尽くす
この男はそれに徹している・・・・問題は、その姿を画けるかである


(ははは・・どうも私は自分の人生の目標を他人から押し付けられているようだ
 人が好き・・地域が好きで、公務員になっただけなのに
 ああぁ・・元気がでない・・・やる気がでない・・・必要だ、エネルギーの充填が)


空ろな視線の先には、飛びきり元気な若い秘書
自然と新藤の手が美樹の肩に伸びていく・・・・・

「美樹ちゃん・・・この前はご免ね・・いろんなことが重なっててどうかしていた
 お詫びに・・食事でもどうかなぁ」

「!?・・・・・・・」

「彼氏とは上手くいってる?・・・どうだろ・・会計は私が持つから、若い人が行くところがいいなぁ・・・」


「まぁ・・・呑気なお話しで・・・それより、あの深刻な問題はどうされたのですか?
 世間知らずの私にしがみついて、助けて欲しいと言われていた・・・あの件は?」

美樹が呆れ顔で新藤を見つめている


「あー・・興味あるんだ、大人の世界の話・・・うんうん、いいよ・・その話もしよう
 兎に角、職場では堅苦しくなるし・・さぁさぁ、ね・・美樹ちゃん、出発、出発」

「わかりました・・・じゃ、私の行きたいところでよろしければ」

「そう・・そうこなくっちゃ・・・ははは、で・・どちらがご希望でしょうか?」

「はい・・・・では、遼子さんのいらっしゃるところへお願いします」

「あん!?」

美樹の肩に置かれていたセクハラ男の手が固まっている
  1. 2014/11/13(木) 00:18:10|
  2. 春が来た・道明
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春が来た 第73回

老人の手管で快楽に酔いしれる女
汗が流れ、顎は上がり、頸を振っていた女
その女は見事に化粧を施し、浴衣を着せられて畳の上に正座している
両の腕は後ろに回され、手首のところで縛られているようだ
女の前には蒲団が敷かれており、そこはまるで高級旅館の和室である
ぼんやりとした灯の中、陵辱を待つ女の姿が男の視界に入る
女は俯き・・・・目を閉じている

「師匠・・お客さんをご案内しました」

チンピラが老人に声をかける


「お客さん、どうぞお近くに・・・どうです、いい女でしょう
 私が手塩にかけて仕込んでいる奥さんでね・・・私ら以外の相手をするのは今夜が初めて
 運がいいですよ、お客さん」

沖田の視線は瑞希に釘付けだ


「お客さんのお好きなようにしていただいて結構ですが・・・・
 一つだけ注意してください・・・体位はお腹に負担のないように願います
 へへへへ・・・・赤ちゃんがいるんですよ・・・じゃ、お楽しみください」


老人たちが部屋から出て行くと
沖田は『ふー・・』と息を吐いた、そして改めて瑞希を見つめると小声で語りかける

「申し訳ないことをした、伊藤さん」

「えっ!?・・・あ、あなたは沖田課長」

この時、瑞希は出会う筈もない男の声とその姿に驚き、そして喜んだ


「酷い事をした・・・あなたの居場所を知りながら、報告せずに握りつぶした
 本当に、申し訳ない・・・・私は、命をかけて必ずあなたを助け出す!」

沖田は深々と頭を下げた
瑞希が慌てて、沖田ににじり寄る


「沖田さん、早く・・私と蒲団の中へ・・そして、私を抱いている振りをしてください
 あの人たちに疑われては、あなたの身も危ない・・・・」

「えっ、そうだった・・・ここはやつらのテリトリー、あぁぁ迂闊・・・」


風俗の遊びも知らない沖田だ
ぎこちない動作で瑞希を蒲団の中に誘い込む
職場の上司の秘書として、常に沖田に冷ややかな視線を送っていた瑞希
洒落た衣服で身を飾り、女のフェロモンを発してした女性
それ故に、ためにならぬ目狐として居場所の情報を握りつぶしたのだった

今、その瑞希と一つの蒲団の中で、浴衣のみで肌を合わせている
なんという運命か・・・その二人が俄か同志となっている
上布団を被り、抱き合っているように見せ掛け、互いの耳元で意志を伝えている

「伊藤さん・・・ここはいったい何処なんだい」

「私にもハッキリとは分からない・でもここに連れて来られる時に大きな橋を渡った気がする
 そして、船の汽笛・・そう恐らく淡路島・・そして海岸近くであるのは間違いない」

「それなら何とかなる・・・我が県内じゃないか」

「でも、あの人たちに立ち向かうには・・本部長の力が必要よ・・・
 ねぇ、あなたはここをうまく抜け出して、新藤本部長に知らせてください」

「わかった・・そうしよう・・・もう暫くの辛抱だ、伊藤さん」

「お願いします・・・沖田さん・・・あなたが頼りです・・お願いします」

瑞希は天敵であった沖田を信じ、心からの願いを伝える
沖田もまた、瑞希を救出することに全力を上げると何度も誓う


そんな二人をあざ笑うが如く
突然に、襖が開きチンピラが入ってくる

「旦那・・旦那・・・どんな按配でしょう?
 あっしが、お手伝いさせて頂きましょう・・・」
  1. 2014/11/13(木) 00:19:27|
  2. 春が来た・道明
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春が来た 第74回

チンピラに悟られぬように
慌てて、沖田は瑞希を抱きしめ首筋に唇を這わせる


「いや・・・十分楽しんでいるよ・・手伝いなんて必要ない」

「そうですかねぇ・・さっきから時間ばかり経って、何にもしていないんじゃ?」

「わ、私は前戯をゆっくりと楽しむ主義でね・・・・ほれ、このように
 そ、それにしても・・この女性の肌は綺麗なもち肌、乳房が手に吸い付いてくる」

沖田は瑞希の耳元で小さく御免と言うと、瑞希の乳房を揉み始めた


「あぁぁ・・嫌」

瑞希も沖田という救世主が現れたとはいえ、もともと生理的に合わなかった男
荒々しい乳房への愛撫に反射的に嫌悪を感じた


「いよぅ・・やっと一声でましたね・・・旦那、女の手は縛ってあるんで抵抗はできません
 あっしが上半身を受け持ちますから・・・旦那は下半身を・・へへ・・舐めてやってくださいよ」

「嫌、やめて・・・そんなの嫌・・・嫌」


もともと浴衣の下には下着などつけていない
沖田の無骨な手が、胸元から形の良い瑞希の乳房を搾り出す


「やめて・・・男が二人がかりで女を甚振るなんて・・・・そんなの嫌」

「おいおい、奥さん・・・お客さんの前で恥をかかせると、どうなるか分かってんだろうなぁ」

チンピラが瑞希の背後に回り、浴衣を腰の辺りまで力任せに剥ぎ取った
沖田はその勢いで瑞希から跳ね飛ばされ、蒲団の端に追いやられている


「何をするんだ!乱暴な・・・・私も二人っきりで楽しみたいんだよ、やめろ!」

「まあまあ、お客さん・・・この奥さん、少し我侭でね、直につけあがるんで
 こうやって、しばかないと・・・お客さんに怪我でもされては申し訳ないでしょう」



チンピラが瑞希を羽交い絞めにしている
浴衣が乱れ、白く艶やかな太腿が沖田の目に入ってくる


「堪んないでしょう・・・この白い太腿・・・そして、この絹草・・・
 どうです、お客さん・・・早く舐めてやってくださいよ、奥さんのここを」


チンピラの指が抵抗できない瑞希の太腿を割り、女の源泉を嬲る



「あぁぁぁ、嫌・・・・見ないで!」

「見ないでって?・・・奥さん、今からこのお客さんにたっぷりと女汁を吸ってもらうんだぜ
 ・・・ほら、早くお客さん・・・ここ、ここ・・・」


チンピラの指が瑞希の女陰を捏ね回した
極道が女を甚振る様を初めて見た沖田・・・・強烈だ、頭を怒衝かれている
得たいの知れない感情が沖田を襲ってくる


(舐めろよ・・そこを・・・・美味い女汁を吸い尽くすんだ)


瑞希の女陰に吸い寄せられるように、沖田が顔を近づけていく
香ばしい女の匂いが、沖田の理性を狂わせる
老人の手管で逝かされていた美女の姿がフラッシュバックする
もう少しだ・・・もう少しで、届く・・・・
  1. 2014/11/13(木) 00:20:40|
  2. 春が来た・道明
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春が来た 第75回

瑞希への縛めは両腕のみ
男の唇が女陰に接触しようとする、その瞬間
しなやかで艶のある白い太腿が、沖田の両の頬をサンドイッチにした

(はっ!?・・・息ができない)


沖田が我に返り、頭を上げた瞬間に・・・見事に暴れる女の膝が男の鼻にぶちあたる



「うわぁぁ・・・うぐぅ」

「何をするんでぃ!!この女」

沖田の顔は鼻血で染まり、唇が腫上がってくる
・・白い蒲団に鮮血が飛び散った



「お客さん・・申し訳ないことに・・その様子では続けるのは難しいかなぁ
 今日は、代金をお返ししますんで・・・なんとかご勘弁を
 その代りに、其処で
 この奥さんが次のお客さんに嬲られるところを見てってくださいな」

「いや・・・もう御免だ・・・引き揚げさせてもらうよ」

「そうですかい・・・残念だなぁ」



沖田が受けた強烈な痛みは、再びこの男の頭を冷静に戻していた


「それにしても、本当に良い肢体をしている奥さんだ・・・・」


瑞希の脚の爪先から視線を上げていく
しなやかな白い脚にも、赤い鮮血が模様を画く
その麓には黒い影・・・波打つ乳房は汗で光る
女と目が合った
女から、今の行為に対する侘びと縋るような願いが男に伝わる
それに応えるように、頷きながら誠実な視線を送り返す男


部屋を出て行く男の後姿が、瑞希には決死の覚悟で戦地に向かう兵士に見えた



「こりゃ、どうしたことか・・・・早いお帰りで」

老人が、和室から出てきた沖田に声をかける


「ああ・・・あまりにも良い女性だったんで少し油断してしまってね、この様だ
 はは、しかし、このままでは・・・もう一度会いたい、どうしたら会えるのかなぁ」


「・・・・蹴られてもなお、未練が残る・・そうなんですね・・旦那、あの肢体に」


「そうだ・・・頼む、お金ならいくらでも出す・・・もう一度だけ」


「さて、さて・・・あの奥さんは次のお客さんのために、今、身を清めている
 そして、今度は・・・お客さんに逆らえないように、足も縛り
 おまけに・・・お客の顔も見れないようにセッティングするんですよ」


「次のお客は顔を見られては困る人なんだ・・・・・・」


「ええ・・困ります・・やる事をやった後ならいいんですがね」


「ふーん、私には意味がわからないが・・・
 それより、頼むから別の日に、もう一度会わせてくれる手筈をしてくれないか」


「はぁ、はははは・・・ほんとに旦那はお人好しだ・・あんな女を助けようなんて!」


「今、な・・なんて言ったんだ・・・おい」


「旦那が助けねばならない価値のある女ですかねぇ・・・あの伊藤瑞希という奥さん
 もういい加減、目を覚ましたらどうなんだい!・・・・沖田、元課長さん」
  1. 2014/11/13(木) 01:50:29|
  2. 春が来た・道明
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春が来た 第76回

(しまった!・・・聴かれていたんだ)


沖田は、敵わぬまでも抵抗しようと、ファイティングポーズの姿勢をとった


「何ですか、その格好?・・・しかし、良い男だねぇ
 私は、益々好きになったよ・・・・沖田さん」

「喧しい・・・・何が沖田さんだ!お前らに沖田さんと言われる筋合いはない」

「まぁまぁ・・・そんなにカッカしないで
 いいですかい、よーく聴いておくんなさい・・・大事なことです
 今から話すことを聴いてもなお、あなたがあの奥さんを連れ帰るというのなら・・
 いいでしょう・・・・結構です、そうしてください
 あっしらも、極道の端くれ・・・今度の事については、腹を括っているんでね」

「なに!!・・・嘘を付け・・・そんな事、信じられるか!!」


「沖田さん・・・本当にあなたは真っ直ぐな方だ
 信じる、信じないはあなたの勝手
 だけど、今度のあっしらの山はでかい・・・歳を考えると、最後の仕事だ
 その仕事の成否をあなたが握っている・・・
 あなたの協力なしではとてもやり遂げられない・・としたら・・・わかりますよね」

「お前らの悪事に・・・私の協力がいる!?・・そんなことできるものか」



老人がその部屋の中にあるモニターのスイッチを入れる
映し出されたのは、先ほどの和室
新しい浴衣を着せられた瑞希が、チンピラに肩を抱かれて入ってきた


「ほんとに・・・涎のでる良い女ですね・・・あの瑞希奥様は
 この道のプロの私も、あの体力だけの馬鹿チンピラも、手玉にとってしまう女」



沖田の視線が、老人からモニターに映る浴衣姿の瑞希に流れる
チンピラが瑞希の手足を床柱と鴨居に縄をとおして「大の字」形に縛っていく


「あなたの元上司・・・現在は副知事の新藤さんも、手を出すのは当然の成り行き・・」


(新藤さんに限ってそんなこと・・・・・)


「あの奥さんのお腹の赤ちゃん・・・いったい誰の種なんでしょうね?沖田さん」


(何を言うんだ・・ま、まさか・・・そんなこと・・・・伊藤さんは夫のある身だ)



モニター画面の中で、瑞希がチンピラに抵抗している
チンピラが瑞希を睨みつけて、下腹のあたりに手をあてて呟いている


「あの若造が脅してますよ・・・赤ちゃんがどうなってもいいのかと
 今、あの奥さんは赤ん坊のためなら、なんでもする・・・・健気な母?
 さて、どうだか・・なんせ、子の親父は夫ではなく、お金持ちで次の知事候補ですからねぇ」

「もういい!・・そんな話
 私は、伊藤さんにした罪の償いを果たしたいだけだ・・その罪のために私も酷い目に・・」


「あなたの罪?・・・その因果で起きたあなたの不幸?ですか
 それは・・・表面上はそう取れますが・・・・
 ふふふふ・・・ほれ・・・これを見てください・・・この写真の男と女」


老人が複数枚の写真を沖田に渡す


「あっしらは、世間では極道、ヤクザと言われ、真っ当にお天道様の下を歩けない
 あの奥さんを高い金を払って仕入れ、訓練し不法な商売をさせる
ところが、同じようなことをしながら気付きもしないで繰り返す表の馬鹿人間もいる
 その写真の男は、本能のままの性獣・性魔だなぁ・・・いい女と見ると必ず手をだしてしまう
 写真の女は、その被害者第1号・・・・・名は遼子さんだ」



写真を見る沖田の顔が青ざめていく・・・・


「その被害者第1号の女性は、今、新藤に囲われている・・・・そう、あんたの元フィアンセだよ」

「うぅぅぅ・・・」


「恐らく、あんたに紹介したのは・・・単純に、この女性と清算しようとしたんだろうが」

「嘘だ・・・・それはあんまりだ・・」


「そのあんまりをしたんですよ、新藤は!・・善人面をした悪魔ですよ新藤は!
 まだ、遼子さんには良心が残っていて、それで婚約破棄ってな顛末に・・」

「・・・・あぁぁぁ・・・・嘘だ・・嘘だ・・・・・」


「あっしらはね、『盗みはすれど、非道はせず』の精神できてましてね
 あくまで、経済取引ですよ、ビジネスをしているんです
 金儲けはしても、人を陥れたり、騙したりはしない・・恨みをかっちゃ面白くねぇ
 それに比べて、新藤って旦那のやってることはお金持ちの道楽で不道徳のばら撒きだ
 どうします・・・お金を払ってあの奥さんを連れ帰るか
 それとも、あっしらと組んであの新藤を懲らしめるか・・・」



沖田を見る老人の顔が緩んだ


「旦那・・瑞希奥さんの支度が整ったようですぜ
 今夜は、あの奥さんを新婦の遼子さんと思って初夜を思い存分、楽しんでくださいな
 あなたが納得のいく趣向を凝らしていますんで・・・・・・・・・・・・」
  1. 2014/11/13(木) 01:51:42|
  2. 春が来た・道明
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春が来た 第77回

ここは京都の新藤の妾宅・・・・遼子がいる
そこへ美樹が新藤を伴ってやってきた
なんとも・・次の知事の椅子を目指す男の気概は何処へやら
ただ、言えるのは・・この男、自分は悪いことをしたという認識は未だにない
資産家の一人息子として育てられ、何不自由なく生きてきた
まるで・・・・水が流れる如く、風の吹くままである
今も、遼子の創った料理を満足顔で食している


「美樹ちゃん・・・どう?・・遼子は料理が上手い・・・美味しいだろう?」

新藤は気を遣ったつもりだが、美樹が俯く

(馬鹿かこの人は・・・もう、信じられない!?・・・私が何故ここに来たのかも理解していない)



遼子は落ち着きのある風情で、新藤にお酌をしている

「遼子さん・・・お食事の後で、二人きりでお話ししたいのですが」

「美樹ちゃん・・なんだい、私を除いて二人だけでかい?」



美樹が冷たい視線を新藤に向ける

「副知事・・・今は、緊急事態ですよ・・私は、あなたの秘書として
 私なりに状況の把握をし、あなたのために何ができるかを考えたいのです
 遼子さんのお気持ちや、知っておられることをお聞きしたいと思っているのです」

「美樹さん、有難うございます・・・新藤のこと、よろしくお願いしますね」

「じゃ・・・遼子さん、後で」


総檜造りの風呂の湯に、美樹が浸かっている
食事の後、邪魔者の新藤を追っ払い、明日の休暇も認めさせた
これで、今夜はとことん遼子から事情を聴くことができる


「美樹さん・・・私もご一緒してよろしいか?」

「えっ!一緒にですか?・・・・・・・ええ、どうぞ」


遼子がタオルで前を隠し、風呂場へと入ってくる
美樹より五歳ほど年嵩だが、色白な肌は女性の目からも美しく、妖艶だ
この女性と新藤が絡み合っていた様子が、美樹の脳裏に蘇る
遼子の艶肌に湯の玉が転げる、まだまだ美樹の若さにも劣らない
 『日本の女は三十路からよ』とはよく言ったものだ
遼子といい、瑞希といい・・共に子持ちの三十路の女性
その二人に鼻の下を伸ばして・・・ほんとうに馬鹿な上司


「美樹さん・・・背中を流しましょうか?」

遠慮する美樹を、遼子は湯船から大きな鏡の前に連れていく
風呂場にこのような鏡が据え付けてあるのは珍しい
恐らく、男女の戯れの様を刺激にして性欲を高ぶらせる目的なのだろう
その鏡の前に、二五歳の若い美樹が裸体を写す
美樹自身もスポーツで鍛えている、自分の肢体に自信があった
背中に泡を立てた、白い女の指が若い美樹の乳房の裾野に回ってくる


「前は自分で洗いますから・・・・・・・うううん・・」

もう遅い・・・・白い指が乳首を撫でた


背中には豊満な三十路の女の乳房が押し付けられている
緩やかに、軽やかに若い女の胸を洗い清める
遼子の手の動きは次第に美樹の下肢へと移動していく
  1. 2014/11/13(木) 01:52:46|
  2. 春が来た・道明
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春が来た 第78回

「美樹さん・・・私、今・・幸せよ・・・あの人と一緒だから」

遼子が美樹のすべすべした太腿にボディシャンプーを塗りながら呟く


「あの人は・・・私に・・女の艶火をつけた男の人なの」

遼子の左手は美樹の乳房を・・右手は引き締まった太腿をマッサージしながら浮遊する


「だから・・・私・・あの人とは離れられない、ずっと一緒にいたい
 恐らく・・・あの人に・・・男を目覚めさせたのは私か・・それとも、瑞希さん
 家庭生活を経験し、子どももいる・・・・分別のあるいい歳をした大人同士がね
 互いに・・・惹き寄せ合って」

遼子の手の動きが止まる
美樹の背後からそっと肩越しに頬を寄せる
その仕草や表情が正面の鏡を見つめている美樹にも伝わってくる


「私・・・あの人を愛してしまったの・・・・誰にも渡したくない」

「あっ・・・」

鏡に映るうす桃色の乳首を二本の指が挟み、摘む
もう片方の白い腕が漆黒の繊毛の中に差し込まれる

鏡に映る二人の美女
その姿は、既に年嵩の熟女が経験のない聖女を、性の世界へ引きずり込む絵だ
男の手によってではなく、同性の手で快感への扉が開かれようとしている


「うっ・・・うん・・・・やめて・・・やめて下さい」

いつの間にか、その快感が襲っている美樹は・・・そう言うと頭を垂れる
熟女の視線は、鏡の中で快感に痺れだしだ聖女の姿をじっと見つめている


「美樹さん・・・もう少し、もう少しよ・・・・私に任せて」

身体の芯から染み出す快感
それを圧しとどめようとする聖女を、女の喜びの世界に引きずり込む
遼子の研ぎ澄まされたテクニックが、ここぞとばかりに急所を攻めだす


「あぅ・・・あーん」

いいのよ、声をあげて・・・・と耳元で呟く遼子


「こんな・・・こんなの初めて・・・・あぁぁぁ」

もっと、もっと、さらけ出すのよ・・美樹さん


「あん・・・あぁぁ・・・うぅぅぅーん」

そう、そう・・・それでいいの・・女なの・・私たち


大きな鏡の中で、乳房と乳房が重なり合い
女同士の濃密なキスが始っている
熟女が聖女に施す『性の手ほどき』が開演した


「美樹さん、私からもあなたにお願いしたいことがあるの・・後で、ゆっくりと」

互いに相手を理解し
裏切ることが決してない絆を結ぶ
それを完璧なものとするのに・・・・・まだまだ、朝までたっぷりと時間はある
  1. 2014/11/13(木) 01:53:52|
  2. 春が来た・道明
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春が来た 第79回

一方、こちらは目隠しをされ浴衣姿でお客を待つ、瑞希


「おい、奥さんの支度はととのったようだなぁ」

「へい、師匠・・・・そちらがお客さんですかい?
 どうです・・・何ともいい女でしょう?へへへ」


チンピラが抵抗のできない瑞希の胸元から手を差し込み、乳房を握りつぶす


「痛い・・・」


へらへらと笑いながら、お客さんにウインクを送る
瑞希は、娼婦としてお客を取らされる無念さと緊張感で胸が張り裂けそうだ


「奥さん・・・さっきは嵌めてもらえなくて、中途半端になっちまった
 だから、今度が初仕事だよなぁ
 無賃飯ばかり食っておられては、わしらも困るんだ
 そうそう、このお客さんも先のお人と同じで、あまり女性経験がないとおっしゃる
 それで、わしらに随伴して欲しいとのご要望だ」

「嫌よ、そんなの・・・・三人がかりで私を嬲るなんて」

「奥さん、甘えてんじゃないの!・・・・まぁ、頃合いを見てわしらは消えるから・・」



じゃ・・とばかりに、チンピラが浴衣の帯を解く
チンピラ、老人そして・・再びお客として戻ってきた沖田
三人の目に、両手両脚を縛られ浴衣を羽織っただけの、瑞希の見事な裸体が晒される


「どうです?・・お客さん、この奥さんの肢体・・・肌の色、この乳房そして腰つき」



老人の鄙びた指が瑞希の肢体を滑ると
沖田が、いつの間にか口の中にたまった生唾を飲み込んだ



「さぁ・・始めようか・・・おい、若造!決して奥さんに唾をつけるんじゃねぇーぞ」

「心得てまさぁ・・・師匠」



チンピラと老人の二人がかりの色責めが始まる
瑞希の背後から乳房に手を伸ばすチンピラ
そして、老人は引き裂かれた両脚の前に腰を降ろす


沖田はまだ・・半信半疑
敵対関係であったとは言え、同じ職場で働き、上司の秘書として色香を振りまいていた人妻
信じていた上司が自分に浮気相手の女をあてがい
目の前の瑞希とも不倫をし、しかも妊娠させているという
だが、やはり・・・・信じられない


瑞希の乳房が、チンピラの指に翻弄されている
強く揉みこむかと思えば、優しく緩やかに擦られる
乳首を摘み、そして撥ねる・・・・
一方で、老人がしなやかな太腿を撫で回す
その指が、徐々に女の源泉に近づいていく
悲しいことに、逝くことを何度も経験している女体が、二人の愛撫に反応するのに時間はかからない
女の甘い声が漏れはじめた


「あん・・・ねぇ・・・・もう」


瑞希が乳揉みを受け持っているチンピラにキスをねだる



「奥さん・・・もう、舌を吸って欲しくなったのかい?」


顔を、背後にいるチンピラに寄せていく瑞希



「若造!気をつけるんだぞ・・・奥さんのペースに乗せられるな!いつも遣られているだろうが・・馬鹿が!」


師匠と呼ばれる老人の声が飛ぶ



「ところで、奥さん・・・・一つ確認しておきたいんだが
 このお腹の赤ちゃんの父親は・・・・・あんたの旦那じゃないんだろう?」

「・・・!?・・・なにを馬鹿なことを!・・・主人の子よ」


「そうかなぁ・・・第1子からじゃ開き過ぎだろう!
 それに、旦那の子でなくても・・・もう心配はいらねぇぞ」

「そ、それは・・・どういうこと?」


「ははは・・・わし等、ちょっと奥さんのこと調べたんだよ
 そしたら・・旦那は奥さんのことを諦めて新しい人生を送りたいらしい
 失踪宣告を申し立てている・・つまり、7年経てば奥さんは死んだ人と同じ扱いだ」

「そんな!!」


「もう諦めているんだ、旦那は・・・奥さんが戻ってこないと
 そんな旦那のところへ戻らずとも、ここで楽しく暮らそうや・・・なぁ、奥さん」


老人が、いよいよ瑞希の女陰を弄りだす
  1. 2014/11/13(木) 02:02:16|
  2. 春が来た・道明
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春が来た 第80回

 老人の瑞希への甚振りは続く・・・


「旦那にしてみれば、奥さんが内緒で県を退職して風俗で働いていたんだ
 ・・おまけに、裏の組織に売られたとなると・・・・こりゃ・・しんどいわ」


 老人の指が丹念に瑞希の陰核を捏ねている
 チンピラの指も同調して乳首をこね回す


「あーん・・もう・・・私を甚振りながらそんな話をするのはやめて!」



 老人とチンピラが顔を見合わせる

「お願い・・・私をここから解放して・・・そうしたら、必ず十分なお金を用意しますから」

「ほうう・・・お金をねぇ・・・だけど、奥さんの退職金ではだいぶ足りないぞ」



 身体の芯から込み上げてくる快感と闘いながら瑞希が訴える

「私には・・私には・・信頼できる上司がいるんです・・・その方が必ず」

「信頼できる上司ねぇ・・・それはひょっとしてお腹の子の父親かい?
 そうでなければ、いくらなんでも奥さんのために大金は出さないだろう?
 どうなんだい・・・ハッキリしてほしいなぁ」


「・・・・それは・・・・あーん・・・・それは・・・間違いなく・・そう」

「そうかい・・・で・・・その頼りになる上司ってのは・・・・新藤って方かい?」

「なぜ・・そんなことまで・・・・あぁぁん・・・嫌、嫌」

「やっと、ゲロしやがった・・
 だがなぁ・・その子の父親は冷てぇーぞ、わし等がお知らせしたんだが・・・
 まぁいいや、お腹の赤ちゃんは不倫の証
 それに、子どもを押さえられていちゃ縁はきれねぇ
 その子の父親が、奥さんを粗末に扱うなら・・わし等が助太刀してやるぞ
 ・・・なんせ、奥さんのからだがこんなに馴染んでいるんだ・・わし等に
 じゃこのへんで・・・・一度、気を遣るか
 ここにいらっしゃるお客さんにも逝くところを見せてサービスしとかないとなぁ
 おい、若造・・・・一気に追い込むぞ」


 老人が振り返り沖田に『ほら、言ったとおりだろ』と目配せする
 瑞希の蜜坪から引き出した指でVのサインを見せた


「おっと・・・忘れてた・・・奥さん逝く前にもう一つ教えてくれや
 わし等の調べによると・・・そう、新藤って人には女がいたよな
 確か、遼子っていう未亡人・・・・綺麗な人だ、奥さんのライバルかな?」

「り・・遼子さん!?・・・そう、遼子さん・・・でも、もうライバルじゃない
 あの人は私のもの・・・・遼子さんは・・捨てられたのあの人に
 再婚することになっていたんだけど・・・・・・あの人の部下と」

「そうなんだ・・・・色男なんだろうなぁ・・・奥さんが惚れた愛しい男はよう」


 くくく・・・
 沖田が声を噛み殺している
 握りこぶしが怒りで震えてくる
 


「もういいだろう・・・・奥さん、ご褒美だ、存分に逝くがいい・・・・このお客さんの前で
 今夜は長くなりそうだ・・・・」
  1. 2014/11/13(木) 02:03:16|
  2. 春が来た・道明
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春が来た 第81回

 こちらは京都の遼子と美樹・・・・
 
「若いはねぇ・・・・美樹ちゃん、肌がぷりぷりしている・・羨ましい」

 風呂場で、ボディマッサージで美樹をメロメロにした遼子
 今・・・美女二人は閨の中にいる


「女同士が愛し合うことも・・・悪くはないでしょう」

 遼子が美樹の可憐な乳首に、自らの乳房を重ねていく


「あーん・・遼子さん」


 遼子は美樹への愛撫を継続しながら
 遼子は新藤との出合いから、秘書となった瑞希との確執まで淡々と話し始めていた
 そして、自分が沖田の人生を狂わせたように
 瑞希が新藤の将来に災いを及ぼす魔性の女であると美樹に訴えた
 ・・このままではきっと、知事を目指す新藤の可能性を消し去ってしまう存在になると


「うーん・・」

「それで・・美樹ちゃんには進さんのボディガードになってもらいたいの
 あの人は悪女も聖女も見分けがつかない、あの人は誰にでも優しすぎる
 恐らく、瑞希さんのことを決して忘れてはいないはず・・・・それが怖いの」


 美樹は遼子が与える快感の中で、神経を研ぎ澄まし遼子の話を聴いている
 美樹にとっても、新藤の知事への転進は自らの将来を担保するものだ



「ねぇ・・遼子さん、私は何をすればいいの?・・あん」

「そうね・・・進さんの関心を決して瑞希さんに向けてはならない
 兎に角・・・来春の知事選の勝利までは完全にシャットアウトよ」

「わかりました・・・・あーん、あーん・・・もう、私」




 その頃、日本中が新たな歴史の1ページを開く

 長年、政権を担当維持してきた保守政党が衆議院選挙で壊滅的大敗
 日本国民は政治に対して、少し大人になった

 これまでの、長いものには巻かれろ的な考え方は一掃され
 旧秩序、旧慣習の絆を断ち切り、新しい者に期待を寄せる流れが顕著になった
 このことは、上辺の学歴、経験、血筋で評価されてきた人間への選挙民の反発でもある

 絶える間のない努力家、真の知恵者、広い度量と誠実な人間性
 これらを兼ね備えた者が勝ち残る世の中への扉が開かれたといえる
 そうだ・・・ほんとうに人のために政治家になる者が選ばれる時代に入った


 来春の知事選の本命候補として
 県政オール与党の会派から推薦され、一歩も二歩も前を歩いていた新藤の戦略に暗雲が漂う


 衆議院選挙の前哨戦として戦われた地方の首長選挙で連勝を続けた政党
 衆議院選挙で大勝し、これから内閣を組織し脱官僚政治をかかげる政党
 その政党が相乗り選挙から独自候補の擁立に動き始めたのだ・・・・・
  1. 2014/11/13(木) 02:04:24|
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春が来た 第82回

配達された朝刊の第1面を食い入るように見つめている老人
全国、津々浦々から初当選者の万歳の模様をテレビニュースが流す

「師匠・・・若い者が年寄りを蹴落として調子こいてますね、ははは・・ざまぁ見ろだ」

「そうだなぁ、お前ならそう感じるか・・・」


老人が紙面を捲ると、目が輝やいた
そのページには、『H県の知事選に女性ニュースキャスターを擁立』との記事が載っていた

「まだ、起きてこねぇなぁ・・・・あの二人・・・ちょっと覗いてきまさぁ」

「ああ・・・そうしろ・・・一晩の内に世の中かわっちまったぁ
 へへへ・・この風がわし等の援軍になればいいがなぁ・・・」


瑞希は昨夜、頼みの綱と信じていた沖田によって、何度も恨みの陵辱を受けたのだ
何も知らなかった沖田にしてみれば、新藤の愛人秘書への当然の行為である
ヤクザたちの手管によって、事実を語らされた瑞希
失意と無念の感情の中での陵辱は、男を手玉に取るこの女でも相当堪えたはずだ

(さてと・・・これからだなぁ)


「おはようございます・・・沖田の旦那」

「ああ・・」

「旦那にとっちゃ・・・宿敵の愛人、身代わりの新妻の味・・・満足されましたか?」

「ふん!」

「なんだか、一晩の内に男の貫禄を身につけられたようで・・落ち着いてらっしゃる」

「そうかい、そんな風に見えるかい」

「ええ、それで旦那
 まずは新聞を読んでください、面白くなってきましたぜ
 どうやら、新藤さんに女性の対抗馬が立候補しそうです」

「知事選挙に女性の対抗馬が?」

沖田は老人の差し出した新聞に目を走らせる
明らかに、変化を求める意思表示だ・・・これで社会がどう変わるか
その混乱の中でのH県の知事選挙が行われることとなる


「怨敵が国と地方は別物?と保守陣営の巻き返しの先駆けとして、立候補してくれれば
 お宝の価値が跳ね上がるんですが・・・まさか、怯むようだと困るんですが」

「うーむ・・・どうだろうか
 副知事は育ちの良い坊ちゃんだが・・・真っ直ぐな気性だから」

「ここは、わし等としても立候補表明をするまでは・・・暫く情報収集に専念しましょうぜ
 それと、瑞希奥さんの気持ちはどうなんでしょう・・・新藤さんへ味方されたんじゃ」

「それは・・・彼女の敵は・・私の元フィアンセの遼子、それが縁りを戻し
 副知事の命令で、仕事をしている間にまんまと城を乗っ取られたとなれば・・」

「なるほど、鋭いですなぁ・・・」


隣の部屋から瑞希の悲鳴が聞こえる

「いやーん・・・・もう、嫌」

「全く、あの若造・・・朝勃起の処理でもしようってかい」

老人が沖田の顔を見て笑った
  1. 2014/11/13(木) 02:28:46|
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春が来た 第83回

平成22年の正月を迎えた
新藤の執務室に叔父の県議会議長が訪れている


「進君、いよいよだ・・・・選挙準備は万端だろうな」

「叔父さん、いつも有難うございます」

「それにしても、昨年の衆議院選挙の大敗は厄介なことだ
 その影響で、県内の各種団体の中でも様子見を決め込むところもでてきている
 全くふざけた話だ・・・結婚もしていない世間知らずの女性が君の対抗馬だとは
 どうも、県連で擁立を考えたのではなく、党本部の押し付けらしい」

「叔父さん、私は県行政の実務をやってきた人間です
 政治の駆け引きなどは全くの素人、宜しくご指導ください」

「うん、わかっている・・・・それはそうと
 あっちの方は整理がついたんだろうね?」

声をひそめ、秘書の美樹に聴かれないように囁いた


「ええ・・・一つ気がかりなことがあったのですが、沙汰止みになっていまして」

「沙汰止み?」

「はい、でも心配はご無用に・・・・・」

「ふーむ・・・・
 世間知らずとはいえ、相手は風に乗り、知名度も高い人気の美人キャスターだ
 こちらの女性スキャンダルは致命傷になるぞ・・・・くれぐれも用心を怠りなくだ」


ニタッと笑って県議会議長は部屋を後にする
美樹が新藤の前にお茶を運んでくる


「美樹ちゃん・・・聞こえただろう?どうも、叔父さんは私が勝てると思っているようだ」

「はい!?・・・何と、今」

「だから・・・・私は今度の選挙では負けると言ったんだよ」

「副知事!!あなたは今言っていることと、先ほどの言葉とは違うじゃないですか・・・」

「何をいっているんだ、考えても見ろ・・・もう世の中は変わったんだ
 県民は目覚めたんだよ・・古いもの、権威とされていたもの、旧来のシガラミ
 先の選挙結果をみればわかるじゃないか・・・すべて否定され、絆など微塵もない
 風が吹いた?・・・そんなものじゃないよ、地殻変動だよ
 日本社会には神話があった、絶対下がらぬと言われた土地神話、首を切らない終身雇用などだ
 今はどうなった?それでも変わらなかったのは政治意識だけ・・それが今回動いたんだ
 その旧体制の象徴のような私が、今人気の美人キャスターに勝てる筈がない
 おまけに、いつ何時・・ヤクザなやつらが仕掛けてくるやも知れんのだ」


スポーツウーマンの美樹の拳が震えている


「全く、私はピエロだ、生贄だ、操り人形だ・・・間違いなく惨めな男になる」

「情けない・・・男、副知事!!何をくよくよと、それでもあなた・・・男なの」

「男?・・・選挙に男も女もあるもんか、君のような小娘に何がわかる」


新藤は若い美樹の前で、本音を吐いていた


「・・・もう、あなた・・・死んで腐っている!立たないんじゃないの」

「なに!?」

「哀れよねぇ、さんざ女と遊び周り後始末もできず
 ・・その因果で恐れをなし、支援者を裏切り戦うことなく、敵前逃亡ですか
 はっ、その首、今直ぐ美人キャスターの前にさっさと差し出してはいかが?
 そうすれば、あなたを買い被っている遼子さんの目も醒め
 あなたの助けを待っている瑞希さん母子も愛想が尽き、ご家族もさぞ安心されるでしょうに」


美樹もわかっている・・・
逆風の選挙戦になるのは必至、勝利するのは困難だと
だが、今さら現知事の後継と指名された男が逃げ出すことなど前代未聞
戦うしか道はないのだ
それに、県民にとって品性に問題があっても、知事の職責を果たせるのはキャリアのある新藤がベターなのだと
そして、なによりも新藤の行政手腕、県民への情熱には右に出るものはいない


「新藤副知事・・・覚悟を決めなさい
 逃げ出すことが、あなたにとってどれほどの信用を失うことになるか
 少なくとも、ご家族や遼子さん、私を含めてあなたを上司と仰いでついて来た県職員はあなたを支持しているんですよ
 結果を恐れず・・・戦うのです・・それが、あなたのとるべき道」


迷える新藤には、美樹の顔が菩薩に見えた


腹を括った男の死に物狂いの激しい選挙戦が始る

神の悪戯か、審判か・・・・相手は清純な女性キャスター
  1. 2014/11/13(木) 02:29:56|
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春が来た 第84回

全国の地方自治体の中でも五指の中に入る雄県の知事選
先手を打って、新藤は出馬の記者会見を行った


「地方分権の時代が、今まさに幕を開けようとするこの時
 県民が求める地方自治体のリーダーの資質は
 一に、信用・・二に、実績・・三に、信条
 私は、我が郷土、我が県民のため私の持つ全能力を賭して働くことをお誓いする」


漲る闘志を纏った男の出陣である
まさに、暗雲を吹き飛ばす気迫のこもった男の言葉
実年の男らしさを演出する真っ白なワイシャツに紺のスーツ
女性の目を惹きつける甘いマスクにスポーツで鍛えた精悍な肉体
背後で見守る美樹ですら、目の前の男が自信を喪失して迷える羊だったとは思えないぐらいの変身だ


(状況は厳しいとはいえ、これなら戦える・・・
 相手が鼻の下を伸ばす男の票をさらうのなら、こちらは女性票を全部いただくわ)


新藤を担ぐ人たちに、この候補者を押し立てて戦い抜く誇りを感じさせたい
私が、そのように必ずしてみせる


記者からの質問に、自信を持って信条を話す男の姿に
若い美樹の心も躍る



「副知事、お疲れ様でした・・・珈琲をお持ちします」

「美樹君、ありがとう・・私は本当に良きパートナーをもった
 君といい・・遼子といい・・・そして、瑞希」

「新藤副知事・・・・・・」

「美樹君、私の覚悟はできている・・・なんでもする、なんでも言ってくれ
 勝利できなくとも、口先ばかりの浮かれたやつらに一泡も二泡も吹かせてやる
 行政の仕事がなんたるかを叩き込んでやる・・・それが私の最後の仕事だろ?」


新藤に背を向けたまま、美樹が頷く
美樹の頬には涙が伝っていた



その翌日の朝刊を老人が眺めている


「新藤副知事、H県知事選挙に出馬表明・・・・・
 わし等もいよいよ動く時がきたようだ」

「師匠、沖田の旦那とあの奥さんは信用して大丈夫でしょうか?
 旦那が、奥さんにいろいろと吹き込んでいますが、どうも奥さん納得していないようで」

「そうかい・・・こんなになっても奥さん、新藤に惚れちまったかな
 無理もねぇか、お腹の子の父親なんだから
 それとも・・・ひょっとすると、新藤って男は・・・」


この老人もこれからの日本社会の先行きがまったく読めない
新藤が先の読める普通の人間なら、出馬はしないと踏んでいた
その場合は、従来どおりの脅しを掛けようと考えていたのだ
しかし、敗戦覚悟の出馬とは・・・・・お人好しか、大馬鹿者


(一度、会ってみるか・・・・そして、わし自身の目で人物を確かめてからでも遅くはないか・・・・・・ちっ!!沖田のやつ、女体に溺れやがって)


朝だというのに、隣の部屋から瑞希の嫌がる声が聞こえてくる

「師匠・・・また、沖田の旦那が奥さんと始めましたぜ
 こりゃ、まるで自分専用の娼婦扱いだ・・・・・・ははははは」
  1. 2014/11/13(木) 02:31:19|
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春が着た 第85回

瑞希の下腹が少し膨らみを示し、妊娠は安定期に入っている
沖田が少し黒味を帯びだした乳首を弄んでいる


「なぁ・・瑞希、もう何度もやったんだ、そんなに嫌がることはないだろう?」

「嫌なのよ、あなたが!」

「ちっ・・・なんて言い草だ、俺たちはともに新藤さんに利用され、コケにされた者同士じゃないか、仲良くしようぜ」

「もう、なにを言ってるの・・・そのことが私を抱く理由にはならない
 女の気持ちも考えないで、自分の性欲を満たそうとする男なんて最低よ
 だから・・・・ああん、やめて」


沖田が瑞希の乳首に吸い付き、指で陰核を捏ね繰り回す
新藤が遼子と知り合った頃と同じように、瑞希は沖田の格好のダッチワイフになっていた
違うところは、新藤には相手に対する思いやりがあり沖田にはそれがまだない


「ふん・・・嫌だ、嫌だと言っておきながら
 そのうちにしがみついてくるんだ・・・いやらしんだよ、君のからだ
 職場でもそうだった・・・男から見れば、誘っているように思えるがなぁ」

「それは・・・女なら誰だってそうなるのよ、あなたが好きなわけじゃない
 イヤーン、やめて」

「黙れ・・・・さあ、入れるぞ
 父違いだが、赤ちゃんに朝の挨拶だ
 たっぷりとミルクを飲ませてやるんだ、感謝しろよ」

「もう・・・嫌」



隣の部屋からは、淫靡な肉摺れの音が微かに聞こえてくる
老人は立ち上がり、チンピラを引きつれ館を後にした



その頃、新藤は自らの陣営のスタッフと詳細な戦術チェックを行っていた
昔流の地盤、看板、鞄の基盤比較だけではなく、人柄、家族構成なども検討していく


「相手候補の特徴は、何と言っても抜群の知名度と若さ、そして女性であること
 そして、政治の素人・・・・清純さを売りにして、労組を主体とした組織票に浮動票の若者票、男性票、そして女性票まで全方位で攻めて来るでしょう
 それに、党本部の重鎮の秘書がバックアップに張り付くとの情報もあります」


スタッフ幹部が問いかける

「相手の弱みはないのか?・・・テレビの女性キャスターで美人なんだ
 スキャンダルの一つや二つはきっとある」

「それが・・・・男性に対して潔癖な性格らしく、今のところ何もでてきません
 家庭環境はご母親と弟の3人家族で、父親を早く亡くし、苦学して大学を卒業
 弟の世話をしながら・・・・家の近所でもそれは評判のいい」

「もういい・・・しかし、何かあるだろう・・・弱みがある筈だ、探せ」


新藤が口を挟む

「スタッフの皆さんには、大変お世話になります
 相手候補の弱点などを叩くのは、止めておきましょう
・・・この前の総選挙で有権者がどう判断したか、それが大事です」

「副知事、生ぬるい戦い方ではこの劣勢を跳ね返すには・・・」

「いや、いいんだ・・・正々堂々と正面から戦いたい
 私だけの選挙戦ではない、たとえ結果がでなくともそれは私の責任だ
 君たちには、未来がある・・・・・次の芽を残していかねばならない」

「大丈夫よ、みんな」


美樹が元気づける

「新藤副知事は素敵な実年男性・・・・私が俳優顔負けのスタイルにしてみせるわ
 行政の実務実績、話術、態度、どれをとっても知事に相応しい
 正々堂々とお嬢さん候補と戦いましょう
 必ず、互角に渡り合える・・・・・・国の態たらくとはここは違うの」

「そうだよ・・・・美樹さんはいいことをいう
 私たちが担ぐ新藤副知事は立派な人だ、とことん戦ってやろうぜ、みんな」

「おう、そうだ、そうだ・・・副知事、体力付けておいてくださいよ・・ははは」


ミーティングが終わり、新藤と美樹が県庁舎の玄関から出てくる
新藤の目に、ボロを着て咳き込む年寄りの姿が映る
新藤は駆け寄り抱きかかえる

「大丈夫ですか?あっ、これはひどい・・美樹君、救急車だ」

「いや、待って・・・ご親切はありがたいのですが、病院はいけません」

「なぜなんです?」

「旦那さん、服が汚れます・・・もう、大丈夫です、直ぐになおります
 それに、病気じゃないし、病院が嫌がります」

美樹が新藤に耳打ちをする

「そうですか・・お体は大丈夫ですか
 それじゃ、この先に美味い飯の食堂があります
 ここで会ったのも何かのご縁でしょう
 失礼ですが、これを受け取ってください・・・・・それじゃ、お元気で」

ボロの年寄が礼を言い、立ち去る二人を見送る

(あれが新藤か・・・・・女に溺れ、出世のために部下を見捨てた新藤?)
  1. 2014/11/13(木) 02:33:03|
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春が来た 第86回

新藤が知事選出馬のため、副知事を辞職し県庁を去る時が来た


H県の知事選は、衆議院選挙での保守惨敗後、初の大型地方選挙である
夏の参議院通常選挙の前哨戦として、その情勢が全国の注目を浴びている
旧政権党の推す「前副知事」と勢いに乗る新政権党の「女性ニュースキャスター」
この構図は、先の衆議院選での大物保守候補に対する新政権党の若手ガールズの挑戦そのものである
しかし、この選挙には先の選挙とは基本的な相違がある
知事選は議会を形成する複数の議員を選ぶのではなく、一人の首長を選ぶのである
当然ながら、トップとなる人の資質・・・
中でも、昨今では特にリーダーシップと品格が最重要視されるのだ


「副知事・・・この執務室では暫くのお別れですね」

「世話になったね・・美樹君、ありがとう・・・君からは若いエネルギーを頂いたよ」

「副知事!・・・戻るんですよ、必ずこの県庁に
 あなたの行政手腕は県民の宝、本県にとってはかけがいのない人
 他人の哀しみを感じることのできる人、他人と喜びを共にできる人
 それが、あなたなのです
 必ず良い県政を実行できる人と、私は信じています
 少し、倫理観が世間の人より甘いのが玉に傷のようですが・・・・・」

「倫理観?・・・・・・君もそのように思っているんだね」

「・・・・・・・」

「私は自分の気持ちに正直なだけだよ
 それを世間がどんなに罵ろうとも、それが私の生き方なんだから・・・・・
 私は心底、遼子や瑞希君を幸せにしたいと思っているし、妻も娘たちも愛してる・・・・・
 心の中で思うだけで行動を起こさず、世間を気にして紳士を装う
 そんな眺めているだけのつまらない男なんて・・今の私にはなれない
 複数の女性を愛することが批判される社会なんて“くそ食らえだ”」


(だめだわ・・危ない・・まるで思春期の青年で分別のある大人の考えではない
 真面目な人が女に溺れて、許されない倫理観を正当化しようとして暴走している
 でも、今は闘争心、野心が必要なとき・・・・この人にはやはり女・・・・)


「副知事・・・・今は、人生をどう生きていこうかと悩んでいる時ではありません
 目前の選挙で勝ち抜くことが使命・・・あなたを担いでいる人たちのため
 あなたは、自分を捨てて戦わなければならないのですよ」

「負けを覚悟で、みんなのために戦うのか?お姫様といわれている女性を相手に・・・」

「お姫様?!・・・そうでした、ご存知ですよね、相手候補のお顔?」

「顔?・・・いや、知らない・・・私はニュース番組など見る気がしないから」



美樹の目が『シメタ』と輝く、新藤を動かすエネルギーが見つかった

「美人ですよ・・・この人に握手をされたら、必ず投票するでしょうね・・・男性なら」

「そんなに美人?・・・でも、顔やスタイルがいいだけの女性ならいくらでも」

「違いますよ・・・・・女の私ですら、惹かれますから・・そう、まさに歌劇団の男役」

「へぇー・・・そんな女性?!」



美樹が相手候補の写真を新藤に見せる

先ほどまで、悩み、迷い、無気力で死んだような目の色
その男に息が吹き返る・・・・・・・

(美人だ・・・本当に美人だ・・・私がこの女と戦う?)


「この女性は知事になる人ではなく・・・
 強くて優しい男に囲われ、愛され、援助されて幸せを掴む人
 強い男に助けを請う姿を見てみたいと思いませんか・・・
 あなたの力で、この人に女性であることの幸せを教えてあげ て・・・ねぇ、新藤知事」

「面白い・・・面白いじゃないか、美樹君」
  1. 2014/11/13(木) 02:34:19|
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春が着た 第87回

望んで立候補したわけではない女がいる

高遠優子は仕事を終え、久しぶりに弟と外食を楽しんでいた
女の身でありながら一家の大黒柱として、弟と病弱な母を養い漸く安定した家庭を築き上げた
幼い頃からのその苦労は、今振り返っても辛く苦しいものであった
父が生存していてくれたなら、どれ程人生が変わっていただろう
この女は35歳になっても、幼くして亡くした父の温かさ、力強さに憧れていた


「姉さん、いよいよだね・・・・選挙、大丈夫かい?」

「心配しないで・・・負けたりはしないわ、風は明らかに私に吹いてくるはずよ
 私はね、恵まれない環境にある子ども達やお年寄りへの支援に全力を尽くすわ」


「へぇ・・もう当選した後のことに気がいってるみたいだけど、相手候補・・
 そう、新藤っていう副知事の人、うちの会社ではかなり評判がいいんだよ
 関西ではピカイチの行政マンだって・・・・・油断するなよ、姉さん」

「そうなんだ・・・私、まだ、どんな人かあまり知らないけれど
 でも、悪い巡りあわせよね・・県職の生え抜きで前知事に見出された逸材なんでしょ」


「ああ、そうらしい・・・・それに、我が家と違って資産家のぼんぼんで苦労知らず
 副知事になる前は、県職員の怠け者退治に奮闘したらしい」

「ふーん・・・・・私が知る公務員イメージからすれば少し異色の人のようね
 でも姉さんは絶対に負けないからね・・・これでも、子どもの頃から男の子をギャフンと言わせて来たんだから・・・・ふふふふ」


「そんなこと言ってないで、早くいい男を見つけなよ・・・結婚できなくなっちまうぞ」

「はいはい・・・仰せのとおりにいたします・・・・ふふふふ」



食事を終えた姉弟は、気持ちよい弥生の夜風を肌に感じながら街路樹の歩道を歩いて行く
その先の横断歩道で信号待ちをしている杖を持ったお年寄りと、腕を組んだ父娘の姿が目に映る

(まあ、仲のよろしいことで・・・五十歳代のお父さんと二十歳代の娘さんか)



信号が青に変わる
すると、父親らしい男性がお年寄りに声をかけた

「道路を渡られるんですね・・・ご案内しましょう・・さぁ、私の肩に手を置いて」

(えっ・・・)


「目が不自由なんでしょう?遠慮はいりません・・・・どうぞ、どうぞ」

(目が見えない!?・・・・あっ、白い杖・・・これは、視覚障害者の人が持つ・・)


「有難うございます・・・それじゃ、お願いします」


道路を渡り終えると、挨拶を交わしてお年寄りと父娘が別れていく
別れ際に見せた男の笑顔に甘える幸せそうな娘の表情・・・素敵なお父さんだわ
再び娘が優しい父と腕を組み、歩いていく・・・・何と微笑ましい姿

父との触れあいの経験のない優子の脳裏に、その男のすがすがしい行為と笑顔が焼きつく

(今の日本社会にもこんなところがあるなんて・・なんと・・・素敵な、お父さん)


高遠優子の心に、弥生の風が心地よく吹き抜ける
  1. 2014/11/13(木) 02:35:10|
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春が来た 第88回

政権党大物代議士の秘書が選挙参謀として高遠優子の事務所にやってきた

「高遠さん、うちの先生はあなたにぞっこんですよ
 これからは、地方の時代であり政権が変わったことで、積極的に男女共同参画社会を推し進める好機の到来です
 あなたには、我が党の地方の顔、そして働く女性のリーダーになってもらうと」

「はい、全力で頑張りたいと思っています、宜しくご指導下さい」

「えぇえぇ、もちろんですとも・・
 しかし、美しい方とは聞いていましたが、実際にお会いしてみてなるほどと・・
 いや、これは・・失礼、でも本当にお美しい・・絶対に勝てますよ
 さて、対抗の相手候補なんですが・・・まず、これを見てください」


差し出された資料には、新藤進の経歴、家族構成、親族関係、支援する団体、そして趣味までが細かく調べられていた
優子の目が大写しにされたスナップ写真に向く・・・・自然と表情がこわばる

(この人!・・・あの時の・・あの優しいお父さんだわ)



「この人と!?・・・・私が戦う・・・・」

「えっ、ご存知なのですか?」

「いえ、面識はございませんが・・・・」

「うーん・・驚いてらっしゃる?
 無理もない、確かに強敵です
 行政手腕は一流だし、働き盛りの男性・・・弁も達者で頭もいい、それにこの容姿
 前の政権党が巻き返しをこの人に賭けてくるのも分かるというもの
 それで、我が党もあなたに出馬をお願いして、相手の息の根を断つよう指示がでたのです
 まあ、心配なさらずに・・・・あなたには時が味方している、いざとなれば党首クラスの代議士を続々と応援させます
 まさに、天下分け目の戦いの前哨戦・・・・負けられません」

「ええ・・・・・・」


その後も、選挙参謀の選挙戦の取り組みへの説明が続いた
しかし、その説明している言葉が優子には届いていない
心の中はなぜか『動揺』が駆け巡っている


その時、選挙スタッフが走り込んでくる

「今、相手候補がご挨拶にと・・・・訪ねて来ました」

「なに!?・・・新藤候補がか!!・・・ありえない」


「いえ、間違いなく、候補者ご本人と秘書の女性のお二人です
 それに・・・新聞記者の者が一緒に」

「ほぅぅぅ・・・・・敵も、然る者とはこういうことだなぁ
 高遠さん、心配ご無用です・・・私が対応します・・・あなたは、相手を観察していてください」



ドアが開き新藤と美樹、そして新聞記者が入ってくる
真っ白なワイシャツに縞のネクタイ、そして紺のスーツ
とても五十歳代とは見えない・・・日焼けした精悍なマスクにスポーツで鍛えられた身体

(やはり・・・・あの時のお父さん・・・)


「初めまして、私が新藤です・・・突然押しかけたにも関わらずお会いして下さって有難うございます
 長居は致しません・・正々堂々の戦いを致したいとの気持ちをお伝えたいと思いまして」

「でもねぇ、新藤さん・・・突然でおまけに新聞記者が同伴とは、あまりにも」


「待って!・・・良くお越しになられました新藤候補・・・私が高遠です」


優子は選挙参謀の言葉を制し、真っ直ぐに新藤を見つめて挨拶をした


「行政のプロに挑戦する素人の女です・・・・どうか、お手柔らかにお願いします」



すると、優子が新藤に真っ直ぐに歩み寄る
そして、新藤の肩に手を伸ばし、肩先についていた糸くずを摘むと記者たちのフラッシュ音が響き渡る
二人は息がかかるほどの近くで顔を見つめ合っている


「有難う、高遠さん・・・・私には無い・・女性らしい、素晴らしい心配りだ
 握手させてください、よろしいかな?」

「ええ・・・共に正々堂々の戦いを」


二人がしっかりと握手をすると再びフラッシュ音が鳴る
優子の選挙参謀は口は開いたまま立ち竦み
美樹の鋭い視線が優子を貫いていた
  1. 2014/11/13(木) 02:36:25|
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春が来た 第89回

「ふぅぅ・・・・予想以上じゃないか、美樹ちゃん・・・あれで35歳か?」

新藤と美樹は新藤陣営の選挙事務所に戻っている
すでに時刻は午前0時をまわり、つい先ほどスタッフは全員引き上げ二人きりだ


「はい・・・・・実年齢は間違いなく・・・」

「あの手に触れられた有権者は、イチコロだろうなぁ
 手の感触がぷりぷりとして・・・・・おまけに清楚な色香が漂っていて」


美樹は苛ついて来た・・・この感情はなんだ
新藤の関心が優子に没頭している・・・対抗の候補者としてではなく、女性として・・
勝気な美樹は、秘書である自分を子馬鹿にされたようで腹立たしい
優子のとったあの振舞は、明らかに新藤の秘書であるの自分への当て付けと受け取っていた


(私としたことが、何故!気付かなかったのか・・・あんな大切な場面で・・・完全に1セット取られたわ・・・・・えー・・なに!?)

美樹が我に返ると、新藤が美樹の手を取り肌の感触を確めている


「止めてください・・・あなた、私と彼女を比べているのね!!
 止めてったら・・・・もう」

「美樹ちゃん、確か、君・・・25歳だったよなぁ」

「もう・・・・・・」


美樹は新藤の手を振り払い、背を向けて立ち上がった
美樹も自分の美貌には自信がある・・・・私があの人に負けてるもんですか
美樹の中に優子への対抗心がメラメラと沸き起こってくる

「ふふふふ・・・それじゃ、十歳も離れた女の肌の違いをお見せしましょうか・・あなたに」

「・・・・美樹ちゃん、本気かい?何時ぞやの、途中でのビンタはご免だよ」


美樹が新藤に背を向けたまま、タイトスカートを足元にすとんと落とす
バドミントンで鍛えられたストレートな美脚とその先に続く程よい肉付きの臀部
その美肉が黒のパンティストッキングにつつまれ、白いパンティが浮かびあがる



H県知事選挙が告示され、激しい選挙戦が火ぶたを切る

関係支援団体への挨拶を既に済ましている新藤
県庁所在地のJR駅前で連日、通勤の会社員に政策を訴える
その足で商店街を練り歩く・・・・いわゆる桃太郎だ
買い物中の主婦に声をかけ、両手で相手の手に合わせる
新藤の機動部隊はイケメン揃いの男性“風”部隊だ
東の政令都市から西の中核都市へ
北の漁村から中部の観光都市へとまさに風の速さで移動する
新藤は訴える
「未曾有の激動の時代に、県政を素人なんかに任せられない」
「奥さん、私は頼りになる男です」と

一方の高遠候補は、若い独身女性で構成する“姫”部隊
中心部を自転車で移動し、辻演説を小まめに繰り返す
道行く通勤男性は必ずと言っていいほど、足を止める
その男性会社員たちに優子も政策を訴える
「素人だからこそできる、大胆な県政改革」
そして、「今日も一日頑張って、行ってらっしゃい」と締めくくる


選挙戦序盤の情勢は、高遠候補が一歩リードの展開である
しかし、知名度と刷新を求める風の向きを考えれば、新藤は善戦していたのである
  1. 2014/11/13(木) 02:37:30|
  2. 春が来た・道明
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春が来た 第90回

優子の選挙事務所に政権党幹事長が訪れている

「高遠さん・・初めての選挙にしては、よく頑張っているね
 事務所内の雰囲気も良いし、有権者の反応もまずまずだ・・この調子だよ
 選挙戦の中盤は、働く女性にポイントを絞っていこう
 それにしても、相手もやるなぁ・・・・イケメンを集めて女性票を狙うとは」

「そうですねぇ・・・・おそらく、付っきりの若い女性秘書の方の発案でしょうが・・
 イケメン『風』部隊と呼んでいるようです」

「はっはは・・・そうですか
 面白い、地方選挙でこんな戦いがみられるとはほんとに面白い
 しかし、こんなにも逆風があるというのに、敵さんなかなか善戦だなぁ」


優子は俯き加減に視線を落とす
あの新藤が熱っぽく有権者に語りかける・・透き通った甘く、低い声色
まさに、強敵だ


「心配しなくていいよ、優子ちゃん・・・・私が着いている
 続々と我が党の人気のある女性代議士を応援に送り込んでやる
 はっはは・・・・私には、この前の選挙で当選した新進気鋭のガールズもいる
 男性票は労組の組織票も含めていただきだよ」

「宜しく、お願いいたします」

優子は深々と大幹事長に頭を下げた



一方、新藤の事務所では美樹が次の一手を進言していた

「滑り出しは上々ですね・・・お歳の割には精力的で・・・ふふふ」

「こら、美樹ちゃん・・・・・大人をからかうもんじゃない」

「さて、相手方は続々と代議士を応援に送り込んできそうですが
 こちらには、お願いできそうな元気な代議士が見当たりません
 そこでですが・・・・・・奥さんと娘さんたちにご登場願おうかと」

「なに、私の家族を引っぱり出すのか?」

「はい、相手は独身・・・こちらは家庭持ち・・・・家庭環境はこちらが数段優っています
 良好な夫婦親子関係を有権者に見ていただき、信頼と安心感を与えていきたいと」

「ほうう・・・・それも、美樹ちゃんの発想かい」

「はい、いくら中央から応援者がきたとしても・・・・県政を与かり実行するのは
 候補者のどちらかなんです・・・・あなたか?それともあの女」

「あの女?・・・厳しいなぁ、美樹ちゃん、その言い方」

「いいんですよ、この呼び方で・・・・いずれ、姦っちゃうんでしょ?
 あなたの自慢のコレで・・・・ふふふ・・・だから、いいんですよ」


今夜も新藤陣営のスタッフはもう引き揚げている
美樹は冷蔵庫から冷えた缶ビールを取り出し、飲みはじめる
ポニーテールに纏めていたバンドを解くと、髪を気持ち良さそうに左右に振る
新藤は背後から美樹を抱きしめると、白い項に唇を這わす


「美樹がこんな女だったとは・・・・」

「私にも意地と野心はあるは・・・・絶対に負けられないあの女には」


互いの舌を貪るように、激しいキスが始った・・・・・
  1. 2014/11/13(木) 02:38:43|
  2. 春が来た・道明
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春が来た 第91回

ベッドの軋む音が聞こえる
臨月が近い妖艶な妊婦を四つん這いして、バックから犯すように怒張を突きたてる


「よくも、飽きなぇーで姦るもんだ・・・沖田の旦那は・・・ねぇ、師匠」

「これだから、素人の旦那は頼りにならない・・セックス病に侵されちまって
 放っておけ・・・・もう、止らない」

老人は、食い入るように週刊誌を読んでいる
H県知事選に続々と政権党の人気代議士が応援に駆けつけている
華やかな初当選の女性代議士の写真と候補者である人気女性キャスターが並んでいる
派手さ、華やかさとは裏腹に・・・・情勢は終盤にさしかかり、新藤が猛追している
新聞も、雑誌も・・新藤陣営の健闘に舌を巻いている
『新藤候補の行く所に美人秘書の奮闘』などと、裏ネタを暴露する記事もでた


「おい、若造・・・これは、お宝の値打ちが上がって来たぞ」

「師匠、よかったですねぇ・・・・で、いよいよ動きますかい?」

「そうだなぁ・・・・・・潮時のようだ」

「師匠・・・いくらぐらい吹っかけるんです
新藤ってやつ、セックス漬けになった、あんな女に銭を出しますかねぇ」

「相変わらず、お前は阿呆よのう・・女に銭を出すんじゃない!情報を買い取るんだよ」

「へいへい・・・・で、あの二人はどうします?」

「そうだなぁ・・・・・新藤さんの返事次第だ」



今夜も、新藤の選挙事務所は活気に包まれている
徐々に劣勢を挽回し、今や胸一つ先に出たとの情勢分析データが届いた
中央からの支援を頼らず、県会議員など地方議員の応援と自ら培ってきた縁故で戦ってきた
選挙スタッフは、闘気に包まれていた・・・あと、もう一分張りだと


「新藤候補に助けて頂いたといわれる方が、陣中見舞いにお越しですが・・」

「お名前は何とおっしゃるの?候補は大変お疲れですから・・・」

美樹が新藤にお茶を差し出しながら尋ね返す


「何でも、路上で倒れているところを助けていただいたと言われてまして、ご老人です」

「お通しして・・・会おう・・・私を支援してくれる人に会わないわけにはいかない」


鋭い眼光の老人が、杖をついて案内されてくる
美樹はその老人が発する気配に尋常でないものを感じ取って身構えている
バドミントンの試合でサーブを打つ瞬間のような緊張感が漂う

「私が新藤です・・・申し訳ないのですが、お会いしたことを忘れておりまして・・」

「そうですか・・一度、県庁舎の前で・・・そこの秘書の方もおられましたよ」

「県庁舎の前ですか・・・」

「ただ、その時、身なりはボロを纏っていましたので・・・・・
 それよりも、お手紙は副知事であられた時に、再三お送りしましたが、返事はいただいておりません」

「手紙?!」

「はい・・・あなたの当選を祈り、あなたの大切な母子をお世話している者です」

流石に、この一言で新藤の顔色が消えた
  1. 2014/11/13(木) 02:39:41|
  2. 春が来た・道明
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春が来た 第92回

つい先ほどまでの活気に満ちていた空気が凍っている
美樹は老人を睨みつけ、新藤は沈黙を続けた・・・そして
ようやく呟くように口を開く



「瑞希は出産を望んでいるのですね?」

「ほう・・・否定なされないので」


「瑞希は、瑞希は元気なのでしょうね?」

「ええ・・・母子とも健やかに
 ただ、あなたの元部下の沖田さんが瑞希さんにご執心で、纏わりついて困っております」


「居所がわからなくなっていた沖田君も一緒にいるのですか・・・
 それは、よかった」

「よかった?」


「彼は私の右腕として働いてくれた男、何も県庁を去る必要などなかった
 全ては、私の不徳からの成り行き
 その彼が、あれほど嫌っていた瑞希に執心とは
 彼もまたすべての事実を認識したということ・・・・さぞや、二人とも私を恨んで」



老人がしたり顔で笑みを浮かべる


「さすがに、全てを見通していらっしゃる
 お困りなら、二人とも、いや三人とも闇の中に閉じ込めることも出来るのですが・・」

「いや、それはできぬ、しては成らない・・・・私が人でなくなる」


(なんと!この男・・・・・誘いに乗らない?!)
 

「では・・・こちらは銭次第であなたのどのようなご希望にもお応えできますが・・」

「銭?・・そのようなもので、私の誠意は二人には伝わらない
 ただ、ひたすらに謝罪するのみだ・・・・・・・そうだったよな?美樹君」



以前、美樹が新藤に言ったことだが、突然にふられた美樹は返事のしようがない


「新藤さん!あなたが二人に謝罪するのは自由だが、私を無視されたら困りますね
 投票日まであと僅かなこの時期に、私があなたの陣中見舞いに来たことの意味を判ってもらいたいですね
 こんなことが相手陣営に知られたら、どうなるんでしょうね
 あなたが目指す知事の椅子どころか・・・あなたの家庭も人生も崩壊ですぞ」



美樹は最早、口止めしか手がないと新藤の顔を見つめた
しばし、沈黙が流れた



「知事の椅子?・・・それは私が望んでいるものじゃない
 この激動の時代に私を知事につかせたいのは、私の支持者や県民自身だ
 それに、なに・・私の人生?・私の家庭?・・・が崩壊だって?そんなことより
 今の私の一番の願いは、瑞希が戻り、沖田君が真っ当に生きていけるようにしたいんだ」

「なんだって!?」

「美樹君、110番通報だ・・・この老人を逃がすな!
 捕まえれば行方不明の瑞希の居場所が判る
 それに、沖田君もだ」

「いいんですか?・・・本当にそれで」

「いいんだ・・・これで、やっと瑞希が戻ってくる・・・美樹!!早く」


美樹が事務所にいるスタッフを大声で呼び込む


「止めろ!!そんな事したら・・・お前は破滅だぞ」
  1. 2014/11/13(木) 02:40:45|
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春が来た 第93回

老人が駆けつけた警官に手錠を嵌められる
この男も一端のヤクザ、肝が据わっている・・・もうジタバタしない
連行される途中で、新藤の方に視線を向けた


(見抜けなかった・・・女好きのぼんぼん助平親父と思っていたが、是非もない
 女がこの男の魅力に引き寄せられ、姦られる・・性獣のような精力的な強靭な体躯
 ところが・・・・頭は仏?いや聖か?
 無欲?そんな人間などいるはずがない・・この状況では自己保身に走るのが常
 なのにこの男ときたら・・・
 この歳になって、最後にとんでもない化け物に出くわしたものだ)



「新藤さん・・・私はもう歳だ、二度とお会いすることは無いだろう
 しかし残念だ・・・・あんたの行く末をこの目で見てみたかったよ
 ふん、ふふふふ・・・まあ、人生ってこんなもんだ・・・祈ってるよ、当選を・・
 あんた、獣のようだが純な人、人のようだが魔物!・・ひょっとすると・・わははははは」



パトカーのサイレンとともに老人の笑い声が遠ざかっていく
気が動転しているスタッフを引き揚げさせ、美樹は新藤の側にいる


もはや、どう足掻いてもこの選挙の勝敗は決している・・・・・・
己の撒いた種とは言え、最期は潔い態度だった
この男を叱咤激励し、肢体を触らせ唇までは許しはしたが・・美樹の夢も、もうこれまで


「私、そろそろ・・・」



帰り支度を始めた美樹の後姿を見つめている新藤の鼓動が高まる
新藤の視線が、女の肉付きの良い臀部からスラリと下る引き締まった太腿のラインへ注がれる


「美樹・・・お願いだから、今夜は側にいてくれ!」



美樹もこの男の本質をまだ理解できていない
この男の並外れた魔力的な怒張に貫かれた女・・遼子と瑞希がこの男に決して逆らえぬ女になっている理由を


「もう終わりにしましょう・・・あの女が知事になるのは癪にさわるけれど
 あなたも良くやったわ・・・劣勢を跳ね返し、ここまで追い詰めたんだもの
 でも・・・・・・・・・これまで」


美樹は新藤の方を見ることなく呟いた



「わかったよ、美樹・・・・・冷たい女だ、君は
 じゃ・・・お別れに最後のキスをしてくれないか・・・頼むよ」


「ええ・・・・いいわよ・・・楽しい夢を見させてもらったわ」



美樹が新藤に優しく抱かれ、甘く舌を吸われる
静かに、別れの儀式が始った


いつものように、美樹を抱く新藤の手が美樹の引き締まった尻肉を撫でている
美樹は目を瞑り、吸われるままに舌を新藤に預けている


(ほんとうに、この人・・・キスが上手・・・蕩けそう・・・
 夢は砕けて、夢と知りか・・・・・・・でも、今夜でお別れね
 ・・・・・・・・・なに?興奮して・・・堅いものを圧し付けちゃって!)
  1. 2014/11/13(木) 02:41:44|
  2. 春が来た・道明
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春が来た 第94回

翌朝『ヤクザ男、知事候補への恐喝及び監禁などの容疑で逮捕』の報道が流れる
詳しい内容は報道されない、警察もまだ事情聴収の最中なのだ
瑞希と沖田は救出され、昨夜の内に病院へ移されたとの情報を
新藤は今朝、聞かされていた
逮捕者は老人だけで他の仲間は姿が見えなかったという・・

報道関係者が新藤を取り囲んでいる


「新藤さん・・・投票を明後日に控えたこの時期です、是非とも有
権者が正しい審判が下せるよう、事実を伝える責務があなたにあると思います・・・どうかお話しを」

「私もそのつもりでおりました・・・すべてお話ししましょう
 ・・・実は、私がまだ副知事になる前の頃ですが・・」


「新藤候補!・・・政権党のあの幹、幹事長から急ぎのお電話です!」



突然、新藤の選挙スタッフがワイヤレスの受話器を持って駆け込んでくる
報道陣は何事かと騒然となる


「あの!?・・・幹事長から私に電話!?
 もしもし、新藤ですが・・・はい、ええ・・・えっ!それは・・少し考えさせてください・・はい、はい
 ・うーん・・・みなさん、申し訳ない・・・暫くお待ちを願います」



30分後、新藤が会見場に現れた


「みなさん、申し訳ない・・・私的な事情は別の機会にお話しすることにしました」

「逃げるんですか!・その私的な事情が有権者の投票行為の判断に必要なんですよ」


「それは分かっています・・・しかし、それより今の電話なんですが
 相手候補が公開での討論会を申し込んできました
 政策全般から私的なところまで含めて、対面形式でのね・・・
 私はこの申し出を受けねばなりません・・・私は逃げるような卑怯な男じゃない
 みなさんの知りたいことも、相手候補が間違いなく聞いてくるはず
 ・・・それで十分でしょう」



報道陣はビッグニュースとばかりに、引き揚げていく
その後姿を見送る新藤


「さぁ・・美樹!駅前に行くぞ・・・最後のお願いをするんだ」

「先ほどの電話は?」


「ああ・・・あの大幹事長が私に華やかな死に場所と機会を設けてくれた?
 違うよなぁ・・・これは起死回生のチャンスだよ
 昨夜、君が捧げてくれた聖水で我は蘇り・・だ・・・・・ははははは
 帰って来たら、昨日の続きだ・・・・・もっと、生気を頂くよ」


新藤がポンと美樹の尻をたたき
ついて来いとばかりに軽快に選挙カーに乗り込んでいく
何度も絶頂を極めさせられ、この男の精を注がれた女の腰がプリプリと左右に振れる


美樹もまた、一夜の肉交で・・・・この男の虜になっていた
  1. 2014/11/13(木) 02:42:45|
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春が来た 第95回

投票日を明日に控え
県民会館の大ホールは新藤・高遠両陣営の支持者で満席だ
まるで合衆国大統領選挙の演説会場の雰囲気そのものだ・・・・・

そして・・討論が開始された
日常生活に身近な子どもの安全、地域防犯やゴミ処理などの県民生活から小学・中学の教育問題、地域コミュニティの活性化、地域経済対策などあらゆる分野で双方の主張がぶつかり合う
弁舌は互角だが、流れは行政実務に長けた新藤候補が少しずつ高遠候補を引き離していく形勢だ


「私は長年培ってきた行政経験を活かし、県民ひとり一人の幸せを願い・・・
 全力で困難な事業に取り組んでいくことをお誓い申しあげる・・・」

理路整然と語り掛ける、バリトンの男声は聴衆を魅了し県民に勇気と希望を与える
それは静かにヒタヒタと心を侵略する・・・まるで槍衾・・・林の如くだ
対抗馬の高遠候補の政策の考え方の甘さを叩くのではなく
言ってみれば・・・逆にフォローして経験の差を浮き彫りにし
新藤の実務経験の深さを聴衆に印象付ける
新藤は父親が娘に話しかけるように・・・・・・・優子の政策をも飲み込んでいく

一方の高遠候補は、女子アナ特有の流暢な話し口調の中に
若さと情熱・・・・そして、未成熟ではあるが完成されていない人間がもつ可能性を強く訴えていく
しかし、実務経験の差は如何ともしがたく、高遠候補にしては日頃の切れが見られない

話題が漸く、候補者の家族や趣味へと移った


「皆さんにご紹介します・・・・・これまで、私の影、日向になって支えてくれた
 私の妻です・・・その隣にいるのが長女と次女・・・この家族が私の宝です」



この時、新藤が初めて高遠候補を見下した視線を送った

『あなたには、このような家族はいないだろう・・・この世で幸せを共に求め合う、愛するパートナー・・・・・どうだ、参ったか』



「羨ましい・・・素晴らしい、ご家族ですね・・・・これまで、なんの苦労もなくすくすくと・・・・本当に良いご家族」


高遠優子が、大きく息を吸った


「私、選挙前に新藤候補が下の娘さんと腕を組んで歩いているところをお見かけしました
 なんて、仲が良くて楽しそうな父と娘さん・・・・道を渡ろうとしている目の不自由な人をごく自然に当たり前のように、手助けされた素敵なお父さん・・・・でした」



「そ、そうなんだ・・・高遠さん・・・見てたんだ、あの時の様子を」

高遠陣営の支持者達は天を仰ぐ
これは駄目だ!決戦の場で言うことではない・・・我々の大将はやはり女だったと



「そんな素敵な夫であり、父親である新藤候補・・そのあなたが県民の幸せを求めて知事を目指す・・・・
 私にはわからない、どうしてそんなあなたが・・・わからない」


「わからない?・・・何がですか、高遠さん」


「どうして?どうして!
 人妻である部下を身篭らせ、腹心の部下のフィアンセを愛人としたのか
 人の為せる所業ではない酷い事をなぜしたのか」


「な・・・なんと、今・・・・・高遠さん」


新藤の表情は強張り、口が震える
会場内は騒然となり、前列に構えていた報道陣のフラッシュとシャッター音が雷光した
  1. 2014/11/13(木) 02:43:48|
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春が来た 第96回

高遠優子候補が語り続ける
それはまさに、聴衆を前にして清楚で誠実な美人キャスターの真骨頂を発揮した瞬間だ


「昨夜、ひとりの若者が情報を持ち込んできました・・・許せぬと」


会場は水を打ったように静まりかえり、優子の次の言葉を待つ


「その若者も、決してまともな生き方はしていません
 しかしそれは、恵まれない家庭環境で育ち、生きるためにヤクザな世界へ入り込んだもの
 その彼が、あなたは偽善を装い自分の家族までも騙し、悪魔の所業を重ねていると」


「ふううう・・・・・・」


新藤の額に汗が滲む



「あなたは、部下であった秘書の人妻女性を妊娠させたのですか?
 あなたは、愛人であった女性を忠実な部下に引き合わせ、結婚させようとしたのですか?
 そんなあなたが、知事になってどのように県民の真の幸せを実現するのですか?
 どうなんですか・・・・新藤候補」



新藤の愛する家族の目の前で、優子は心を鬼にしてこの男の仮面を剥ごうとしていた


「私は、私は・・・・そんなこと・・」


「していないと言うのですか!・・・新藤候補
 彼には師匠と呼んでいた親代わりの老人がいました
 社会からはみでた人生を、肩を寄せ合って生きてきた二人
 筋違いとは言え、敵討ちだと言っていましたよ・・・新藤候補」



会場に沈黙が流れる
新藤の妻は優子を睨みつけ、今にも泣き出しそうな娘をこの場から引き揚げさせようとした


「お父さん・・・・・そうなの?本当にそんなことを?」

愛娘の一途な視線が新藤の胸を突き刺す



「お父さん!お父さん!否定しないの?」

「あなた!娘のために何か言ってあげて・・・ねぇ」



会場の空気はより重く淀む
新藤は意を決するように閉じていた目を、妻と愛娘に向ける


「すまない・・・・私は職場でのことを家庭では話したくなかった
 公務とはいえ、人の心を傷つけてもしなければならない事もある
 私は、過酷な任務を部下に課し、酷い目にあっているその部下を救うことができなかった」



その時、会場の入り口の扉が開く


「いいえ!助け出してくださいました・・・・
 この激戦の選挙戦終盤で不利な立場になるにもかかわらず、暴力に屈せず・・あなたは!
 私は、そんな・・・あなたを信じてずっと待っていました」


会場にいる全ての者の耳に、女性の透き通った声が届く
  1. 2014/11/13(木) 02:44:54|
  2. 春が来た・道明
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春が来た 第97回

会場入り口の扉付近に立つ妊婦にむかって新藤は叫ぶ


「無理をするな!瑞希君・・・お腹の子に、もしものことがあったら、ご主人にお詫びのしようがない!」

「いいえ、私が信頼している上司が悪人扱いされ、お腹の子の出生に疑惑をかけられているんです!黙ってはいられません
 間違いなく・・・このお腹の子は私と主人との大切な第2子、この子の名誉のためにも疑惑を晴らしておかなければ・・・母の、母の務めです」


気迫のこもった母親の叫び
この叫びを遮ることのできる者など、この会場に存在しない
真実はどうであれ、母なる女性が我が子の父を夫であると宣言したのだ


優子のシナリオは突然の登場者に狂い始める

(瑞希さん・・・あなたは間違っている
 新藤候補のしたことを許してはならないのです・・女性として、妻として絶対に!
 どうして?あなたは妻の義心、母の真心まで売ってしまうのですか!)



予想外の展開にも、自立した強い女性のプライドが優子を怯ませたりしない


「そうなんですか・・・新藤候補とは不貞はしていないと仰るのですね・・・」


優子の視線は瑞希のその後方・・・・涼しい眼をして立っている美樹に向けられている
身重の瑞希をこの場に連れ出せたのは・・・・美樹!美樹からの働きかけ?
そのように優子は直感した・・・・・・


(少しずつ見えてくる・・・私の目の前に立っている男が、情を通じた女たちの女人柵で守られている
 ・・・・・許せぬ!この男・・・・財力と権力で女を操る!!)



「新藤候補・・・助かりましたね
 あなたがお答えになる前に、瑞希さんが否定された
 瑞希さん・・・早く病院に戻られて、養生してください
 あなたの将来にとって、本当に大切な・・大事な赤ちゃん・・・・そうでしょう!
 でも、女性として一番大切なものを失くさないように・・・お願いしますね」


瑞希が美樹に支えられ会場を去っていく
優子は青年が持ち込んだ、写真や記録ビデオを見ている
しかし、この場ではその内容を明かすことは、さすがにできない・・・・


お腹がでているとはいえ、瑞希の一段と艶を増した肢体からは周囲にえも知れぬ色香が漂う

(瑞希・・・ああ、瑞希・・よく言った・・・これで私は勝てる!)


残るは・・・・沖田と遼子のこと


「新藤候補!・・・・あなたは卑怯な人です
 自分の口からは何も言っていない・・・そんな男なのですか?
 もう一つのことは、あなたのご家族にもわかるようにお話し下さいませんか
 改めて、お聞きします
 あなたは知事になるために、、愛人の女性を部下を結婚させようとしたのですか」



新藤の愛娘が顔をあげる
目には涙が光っていた


「お父さん!・・私の好きなお父さん!お願い、お母さんに本当のことを話して!」


(えっ!なに・・・・お嬢さん・・・私は、私は・この人の心をこんなに苦しめていた・・ああぁぁ)


 この愛娘は清純で穢れを知らない・・・・優子の言葉に娘の感性が共鳴しているのだ
 新藤の娘の心からの叫びに、優子の目も涙で曇った
  1. 2014/11/13(木) 02:46:05|
  2. 春が来た・道明
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春が来た 最終回

壇上でじっと見つめ合う、父と娘
その姿は、娘を持つ父親なら一度は経験している
穢れを知らない娘との、現実の父親との対面だ
此処に来て、新藤に動揺が走る
この愛娘の清純な感性を嘘で誤魔化せるものではない


(・・・この娘と私はそんな絆でつながっている)


たとえ、聴衆は誤魔化せたとしても・・・・父娘の縁が切れる!


(・・・この娘をそんな女性に、私が育ててきたのだ)




不思議だ、この性魔、怪物が娘の発した言葉で固まっている
そして・・・・・・・・

(・・・・ふぅ・・これまでだなぁ・・・・少なくとも、真実を話し謝罪すれば
 この娘との縁が残る可能性はある・・・・みんな、すまない、それしか・・ない)



新藤の周囲の空気が落ちついてくる


「・・・・すまなかった・・・・・私は」


会場にいる全ての者が、父娘の対話に耳を澄ます
誰もが、これまでの流れと新藤の雰囲気で、父が発する次の言葉が何であるか確信していた

新藤とは逆に、優子は何故か苛立ち、動揺している・・視界にはこの父娘しか映らない

(私は・・私は・・何て酷い事をしていたのか!
 あの仲の良い、幸せな父と娘の仲を裂く・・・私が見たあの美しい父娘の仲をこの私が・・)



優子の心の中に、これまでの自分ではない新しい自分が生まれた

(駄目、駄目よ・・本当のことを言っちゃ駄目・・・・お願い!お願いだから・・)


新藤は意を決している
話し始める瞬間、優子を振り返りじっと目を見つめた
そして・・・

「・・私は、自分の選挙のために、お母さんやお前たちを利用した
 相手候補の高遠さんが持っていない、夫婦や親子の幸せな家庭を見せつけようとした
 これは、卑劣な行為だ・・・・私は男らしく、高遠さんと同じ条件で戦うべきだった
 そんな行為の報いがきた・・・みんなを苦しめてご免よ・・・・・許してほしい」


静かだが、低い落ち着いた口調で話す言葉は聴衆の心に染みる


「いいかい?・・・よーく聞いてほしい
 神に誓って、私はお母さんを泣かすようなことはしていないし、これからもしない
 私には、お前たちの笑顔が命なんだ」


会場にいる新藤の支持者はもちろん、高遠候補の支持者からも感動の泣き声が漏れる
真実がどうであれ・・・全ての者はこれでいいと思った


壇上で優子が新藤に歩み寄り、手を差し延べる
二人は無言でしっかりと握手を繰り返した
 


拍手で沸き返る県民会館の前に、黒塗りの車が主人を迎えに来た

「幹事長・・・首尾は如何でした?」

「うん・・・上々だ!
 高遠優子君は俺が見込んだとおりの候補だった
 相手の新藤候補は・・・・・・いずれ、我々の強敵になるだろう
 ふん・・面白いじゃないか・・この国は、まだまだ切磋琢磨が必要だよ
 ・・・反対に、彼を俺の跡継ぎにしてもいいなぁ
 きっと、彼は、俺を超える・・・・それを、見てみたい」

「ほうぅ・・・それほどの人物ですか?」

「うん・・・・彼は全ての人を味方にできる不思議な魅力をもっている
 一つ間違えば大変危険な人物だがなぁ・・・・だが、今のような混乱した社会では
 そんな、強い神がかりなリーダーを国民は待ち望んでいる
 ・・・・・・・・ああ、そうだ・・・これは厳命だぞ
 今回、取得した彼に関する資料は写真、ビデオなど全て破棄しろ!いいな!
 それが・・・我が国のためになる・・・・・新藤君は生かすんだ!」

・・・・・・この男にも、真の春が少し見えて来た

               完
  1. 2014/11/13(木) 02:47:15|
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春が来た ~~その後

H県の知事公室に高遠優子がいる
まさに、個性的な有力候補同士の死力を尽くした激しい選挙戦だった

(あの時、私の中に生まれたあの感情・・・・
 不貞な行為を許せる訳がない
 しかし、あの場でそのことを詫びる情けない父親の姿
 そんなものをどうして清純な娘に見せられようか
 それにしても・・・あの人、抜けしぁしぁと
 『私には、お前たちの笑顔が命なんだ』・・なんて)


この部屋の主、新藤知事が秘書の美樹を従えて、会議から戻ってきた


「お待たせして申し訳ありません、高遠さん」

「いえ・・・・それより、私へのお願いとはどのようなことでしょうか?」


「ええ、そのことで今も県議会の会派の代表に根回しに行っておりました
 実は、あなたに副知事への就任をお願いしたい」

「私に?!副知事になれと?」


「はい、あなたは暫く行政経験を積まれればきっと、良い知事になれる
 わたしは、1期限りで知事の職をあなたに譲ります
 そのつもりで、副知事への就任を承諾して頂きたい」

「それは・・・あの時、私があなたの不貞の事実を暴露しなかった返礼とでも?」


「いいえ、違う・・・我が県民は知事に私を選んだが、私はあなたの方が知事に相応しいと思うからです
 良く考えて、ご返事下さい」



優子が新藤の真意を測りかねて、目の奥を探っている
新藤の目には迷いがない・・・本心からそのように思っていると優子は感じた

「はい・・・・しばらく、考えさせて下さい」

「良い、ご返事を待っていますよ・・宜しく」



知事公室から出て行く優子の後姿を見送る新藤
その新藤の顔を美樹が見ている

「知事・・良からぬ事をお考えでは?」

「非情になれぬ不完全な善人は、悪人の餌食になる・・・・鴨がねぎを背負ってやってくるんだ
 私が、いただくよ・・・・あの美味そうな肉を」



新藤が美樹に流し目でウインクをし、抱き寄せる

「何といっても、今回の一番の功労者は君だ・・・君の働きが無ければ完全に負けていたよ」

「有難うございます、それをご理解頂ければ私は・・・・・ああぁ、あん、もう・・・」


「どうするんだい?・・彼氏は?結婚するんだろう?」

「ええ、します・・・・でも、私は知事について行きます・・・どこまでも」


「そうかい・・・私も、しばらくはこの君の肢体で満たされそうだ」

「しばらく?・・だ、なんて・・・そうは、させるものですか・・・・あうぅぅ・・」


「若いのに、なんとしたたかな女なんだ・・君は」

「あん!・・・そう、瑞希さんと沖田さんの事は心配なさらずに・・私にお任せを」

「ああ、頼む・・・・・」


県民の幸せと、夢の実現に向けて、これまで歴代の知事が真摯に執務してきた知事の公室
その神聖なる場所が偽善の気に満ち、男と女の肉の擦れ合う淫靡な音で溢れる・・・・


「ああぁぁ・・・たまらない」

 女が叫び、男が唸る

                        了
  1. 2014/11/14(金) 07:07:54|
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シーザー

Author:シーザー
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■完結名作 (1784)
別れた妻・七塚 (34)
妻は銀行員・貴子の夫 (5)
夢の中・弱い男 (29)
変身・KYO (43)
変わってしまった・柴田 (27)
気持ちの置場に・レタス (23)
心の隙間・松本 (7)
薬剤師・津島正義 (49)
表裏・所 (24)
本性・拓也 (32)
蜃気楼・WR (63)
妻の想いは…?・ムーア (19)
彼方なら・マサユキ (13)
待っていてくれる紗代・呑助 (6)
水遣り・CR (73)
CRの妻・洋子 (35)
喪失・バーバラ (25)
永遠に夫婦でいるために・ルイ (11)
役員会・KYO (102)
隣の芝生・石井 (42)
留守番・赤とんぼ (15)
家主・えりまきとかげ (32)
雲の上を歩く・MMさん教えて (62)
Booby Trap・道化師 (51)
チョコレートの伯父ちゃ・思い出 (31)
立場・Retaliation (42)
白き花・男とは? (38)
黒の凱歌・TELL ME (35)
女友達と妻・KYO (49)
赦さない・・・・ヨシキリ (34)
戦い・MM (75)
誤解の代償・美鈴さんに捧げる (24)
子は鎹・種無し (10)
魔性・樹氷 (43)
品評会・ミチル (33)
帰省・N (5)
妻の同窓会・間抜けなそして幸せな夫 (37)
奈落・RHM (27)
侵略・流石川 (23)
二人の妻・桐 (93)
神の悪戯・弱い鬼 (36)
イヴとなった妻・忍兄さん (70)
インプリンティング・迷人 (64)
よき妻・BJ (26)
卒業・BJ(よき妻 第二部) (24)
卒業後・BJ(よき妻 第三部) (74)
2つの我が家・鎌田 (14)
ミコと美子・美子の夫 (21)
暗黙の了解・裏筋舐太郎 (34)
■職場関係 (591)
上司と妻・陽太 (6)
知らなかった・みつる (6)
妻の初体験・変な夫 (7)
堕ちていく天使の影・赤いかげろう (7)
私の妻・つよし (5)
僕の不貞な妻・カウニッツ (6)
招かれざる、客・使徒 (14)
屋上・古屋二太郎 (2)
デジカメ・龍 (6)
壊れかけの絆・叶 (34)
本当の妻・加藤 (17)
嫁が俺の会社の先輩に、デートの練習をした・不詳 (5)
二人の?妻・木下某 (27)
未完・修司 (19)
空白の2時間・ナガネギセブン (3)
妻・友子の不倫告白!・ヘタレ旦那! (18)
妻の浮気を知ってしまった。・美作 (2)
ピアノレッスン・悦 (5)
アルバイト・凛 (14)
元ヤクザの情婦にされた妻・574 (13)
観光温泉ホテル・公務員亭主 (16)
奥手でおとなしい妻が後輩に仕込まれた・名無し (6)
寝取られ妻が本気で妊娠まで・浩二 (5)
ナース妻を寝取られて・由美子命 (10)
写真館派遣の妻・無知な夫 (7)
私の身に起きた事実。・ファイター (10)
イケメン部下と妻・・・リュウセイ (9)
変貌する妻・雄治 (18)
僕の厄年・田舎おやじ (10)
訪問介護・サンコウシン (6)
狙われた人妻・亜紀・恋愛小説家 (7)
マラソンを愛する妻・スポーツトレーナー (3)
妻が汚れてしまった・常陸の親方 (10)
妻は専務のおもちゃだった・道騎士 (6)
妻の二人の夫・妻を愛する夫 (27)
見えない檻・生き物係り (30)
美樹がやられた・無能な夫 (41)
愛妻を・・・・川島クロード (12)
序破急・中務 (75)
月の裏側・久生 (14)
婚約者の調教動画が見つかって (12)
官舎 送別会・公務員 (5)
撮られていた妻・スネ夫 (8)
夫婦の恩返し・赤とんぼ (8)
1話完結■職場関係 (20)
■義父または近親 (65)
妻は義父のモノ・クスコ (3)
イトコと親友に、そして・・・ ・正光 (16)
巨乳妻・ゆうき (18)
家族遊戯・六郎汰 (14)
疑わしい行動・圭太 (9)
妻の絶頂・こうくん (5)
■隣人または友人 (491)
はちきれそう・ゆう (7)
仕掛けられた糸・赤いかげろう (6)
本当のこと。・一良 (14)
リフォーム・とかげ (22)
友達・悦 (13)
悪夢・覆面 (10)
ビデオ・はじめ (4)
言えない真実、言わない真実・JOE (17)
私しか知らなかった妻・一樹 (3)
妻の秘密・光一 (54)
清楚人妻 一夜の陵辱劇 ~親友に騙された~・仁 (6)
俺が負けたので、彼女が手コキした (5)
惨めな自分・子無き爺  (6)
田舎・マス夫 (16)
秘密・POST (14)
新妻の幻想・TAKA (4)
遠方よりの友・ちかこmy-love (11)
管理組合の役員に共有された妻・エス (136)
団地・妄人 (50)
抱かれていた妻・ミリン (18)
パーティー・ミチル (33)
友人・妄僧 (7)
甘い考え・白鳥 (22)
乳フェチの友人・初心者 (6)
1話完結■隣人または友人 (7)
■インターネット (54)
チャットルーム・太郎 (19)
オフ会・仮面夫婦 (10)
ターゲット・アイスマン (5)
奇妙な温泉宿・イワシ (14)
落書きの導き・マルタ (4)
1話完結■インターネット (2)
■旅先のアバンチュール (63)
バカンス・古屋二太郎 (7)
妻との旅行で・けんた (5)
無題・ざじ (10)
A温泉での忘れえぬ一夜・アキオ (18)
露天風呂での出来事・不詳 (2)
たった1度の体験・エロシ (9)
旅行・妄人 (12)
■医者・エステ・マッサージ (62)
孕まされた妻・悩める父親 (7)
とある会で。 ・けんじ (17)
亜希子・E-BOX (14)
子宝施術サービス・かえる (23)
1話完結■医者・エステ・マッサージ (1)
■借金 (56)
私達の出来事・不詳 (9)
私の罪・妻の功・山城 (9)
失業の弱みに付け込んで・栃木のおじさん (3)
変貌・鉄管工・田中 (5)
借金返済・借金夫 (5)
妻で清算・くず男 (5)
妻を売った男・隆弘 (4)
甦れ・赤子 (8)
1話完結■借金 (8)
■脅迫 (107)
夢想・むらさき (8)
見えない支配者・愚者 (19)
不倫していた人妻を奴隷に・単身赴任男 (17)
それでも貞操でありつづける妻・iss (8)
家庭訪問・公務員 (31)
脅迫された妻・正隆 (22)
1話完結■脅迫 (2)
■報復 (51)
復讐する妻・ライト (4)
強気な嫁が部長のイボチンで泡吹いた (4)
ハイト・アシュベリー・対 (10)
罪と罰・F.I (2)
浮気妻への制裁・亮介 (11)
一人病室にて・英明 (10)
復讐された妻・流浪人 (8)
1話完結■報復 (2)
■罠 (87)
ビックバンバン・ざじ (27)
夏の生贄・TELL ME (30)
贖罪・逆瀬川健一 (24)
若妻を罠に (2)
範子・夫 (4)
1話完結■罠 (0)
■レイプ (171)
輪姦される妻・なべしき (4)
月満ちて・hyde (21)
いまごろ、妻は・・・みなみのホタル (8)
嘱託輪姦・Hirosi (5)
私の日常・たかはる (21)
春雷・春幸 (4)
ある少年の一日・私の妻 (23)
告白・小林 守 (10)
牝は強い牡には抗えない。・山崎たかお (11)
堅物の妻が落とされていました・狂師 (9)
野外露出の代償・佐藤 (15)
妻が襲われて・・・ ・ダイヤ (6)
弘美・太郎棒 (11)
強奪された妻・坂井 (2)
痴漢に寝とられた彼女・りょう (16)
1話完結■レイプ (5)
■不倫・不貞・浮気 (788)
尻軽奈緒の話・ダイナ (3)
学生時代のスナック・見守る人 (2)
妻・美由紀・ベクちゃん (6)
押しに弱くて断れない性格の妻と巨根のAV男優・不詳 (8)
妻に貞操帯を着けられた日は・貞操帯夫 (17)
不貞の代償・信定 (77)
妻の浮気を容認?・橘 (18)
背信・流石川 (26)
鬼畜・純 (18)
鬼畜++・柏原 (65)
黒人に中出しされる妻・クロネコ (13)
最近嫁がエロくなったと思ったら (6)
妻の加奈が、出張中に他の男の恋人になった (5)
他の男性とセックスしてる妻 (3)
断れない性格の妻は結婚後も元カレに出されていた!・馬浪夫 (3)
ラブホのライター・され夫 (7)
理恵の浮気に興奮・ユージ (3)
どうしてくれよう・お馬鹿 (11)
器・Tear (14)
仲のよい妻が・・・まぬけな夫 (15)
真面目な妻が・ニシヤマ (7)
自業自得・勇輔 (6)
ブルマー姿の妻が (3)
売れない芸人と妻の結婚性活・ニチロー (25)
ココロ・黒熊 (15)
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浮気から・アキラ (5)
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信頼関係・あきお (19)
ココロとカラダ・あきら (39)
ガラム・異邦人 (33)
言い出せない私・・・「AF!」 (27)
再びの妻・WA (51)
股聞き・風 (13)
黒か白か…川越男 (37)
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心の闇・北斗七星 (11)
1話完結■不倫・不貞・浮気 (18)
■寝取らせ (263)
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妻がこうなるとは・妻の尻男 (7)
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妻からのメール・あきら (6)
一夜で変貌した妻・田舎の狸 (39)
元カノ・らいと (21)
愛妻を試したら・星 (3)
嫁を会社の後輩に抱かせた・京子の夫 (5)
妻への夜這い依頼・則子の夫 (22)
寝取らせたのにM男になってしまった・M旦那 (15)
● 宵 待 妻・小野まさお (11)
妻の変貌・ごう (13)
妻をエロ上司のオモチャに・迷う夫 (8)
初めて・・・・体験。・GIG (24)
優しい妻 ・妄僧 (3)
妻の他人棒経験まで・きたむら (26)
淫乱妻サチ子・博 (12)
1話完結■寝取らせ (8)
■道明ワールド(権力と女そして人間模様) (423)
保健師先生(舟木と雅子) (22)
父への憧れ(舟木と真希) (15)
地獄の底から (32)
夫婦模様 (64)
こころ清き人・道明 (34)
知られたくない遊び (39)
春が来た・道明 (99)
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冬のお天道様・道明 (26)
灼熱の太陽・道明 (4)
落とし穴・道明 (38)
■未分類 (571)
タガが外れました・ひろし (13)
妻と鉢合わせ・まさる (8)
妻のヌードモデル体験・裕一 (46)
妻 結美子・まさひろ (5)
妻の黄金週間・夢魔 (23)
通勤快速・サラリーマン (11)
臭市・ミミズ (17)
野球妻・最後のバッター (14)
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もうひとつの人生・kyo (17)
風・フェレット (35)
窓明かり ・BJ (14)
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鎖縛~さばく~・BJ (12)
幸せな結末・和君 (90)
妻を育てる・さとし (60)
輪・妄僧 (3)
名器・北斗七星 (14)
つまがり(妻借り)・北斗七星 (5)
京子の1日・北斗七星 (6)
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